説明

壁構造

【課題】薄板軽量形鋼造の住宅の重量床衝撃音低減対策として、低コストでかつ衝撃低減効果を高めることができる壁構造を提供することである。
【解決手段】壁構造100においては、複数の縦枠10に石膏ボード20、21が貼り付けられ、壁構造100が形成される。当該壁構造100の振動時に振幅の大きな部分(腹部分)に対して連結部材30を縦枠10間に設け、平面部材20,21を縦枠10および連結部材30に固定させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁構造に関し、特に防音性能に優れたものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2階建て等の建築物において、上階での歩行や飛び跳ね、物の落下などにより下階で発生する衝撃音が問題となることがある。この衝撃音は床衝撃音と呼ばれ、測定方法および評価方法がJIS規格で規定されている。
【0003】
具体的に床衝撃音には、(1)子供の飛び跳ねなど重量物の落下に起因する重量床衝撃音と呼ばれるものと、(2)スプーンなど軽量物の落下に起因する軽量床衝撃音と呼ばれるものとがある。
【0004】
一般に、前者(1)は63Hzバンド(1/1オクターブバンド)など低周波数域の音が主成分であり、後者(2)は250Hzバンドおよび500Hzバンド(1/1オクターブバンド)の中周波数域から高周波数域の音が主成分であり、これら帯域の成分がL等級(JIS規格で規定されている床衝撃音遮断性能等級の呼称)を決定する。
【0005】
床構造の開発の観点から床衝撃音を低減させることは大きな課題となっている。床衝撃音は、(a)上階床に加わった衝撃力により上階床が振動し、(b)その床振動が下階の天井、壁に伝搬され、(c)その天井、壁の振動から下階室内に音が放射される、というメカニズムで発生している。
【0006】
軽量床衝撃音は、床仕上げ材の工夫などで容易に床振動(a)を低減できるので、対策は比較的簡単である。一方、重量床衝撃音は床、天井および壁のうちいずれか一つまたは総合的な構造変更など大掛かりな対策を要し、大きな技術課題となっている。
【0007】
一方、重量床衝撃音を低減する1つの手法として、特許文献1には、床梁間に高遮音パネルを設けた構造が開示されている。しかし、本構造は複雑な構造であり、施工性の悪化やコストアップが予測される。
【0008】
【特許文献1】特開2001−303708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、床構造は、もともと(対策前から)、天井構造、壁構造に比べて高剛性で重たい(=振動しにくい)ため、特許文献1のように床に対策を施す場合には、構造が複雑になったり、構造の重量やコストが大幅に増加するなど、弊害が大きくなる傾向にある。
【0010】
一方、重量床衝撃音を低減する別の手法として、壁構造の剛性を高めることにより壁の振動を低減する方法がある。例えば、互いに平行に複数配置された縦枠とその表裏両面に設けられた平面部材とからなる壁構造において、縦枠に直行するように横桟(梁状部材)を設け、枠体の剛性を向上させる。この場合、平面部材と横桟(梁状部材)との接触による騒音発生や施工工数の増加を回避するために、横桟は平面部材に接触しないように設けられる。しかし、本手法では、最終的な重量床衝撃音の発生源である壁の平面部材への補剛作用は小さいので、床衝撃音低減効果は限定的である。
【0011】
本発明の目的は、薄板軽量形鋼造の住宅の重量床衝撃音低減対策として、低コストでかつ衝撃低減効果を高めることができる壁構造を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0012】
(1)
本実施の形態にかかる壁構造は、互いに平行に配置された複数の縦枠と、複数の縦枠を連結する連結部材と、複数の縦枠の少なくとも片面に設けられ、かつ連結部材に接合された平面部材と、を含み、連結部材は、複数の縦枠および平面部材から形成される壁構造の壁上端から壁下端までの全長に対して、壁上端および壁下端のうちいずれか一方、または両方から全長の略1/4長さの位置に存在する振幅の大きい腹部分に設けられるものである。
【0013】
本実施の形態にかかる壁構造においては、複数の縦枠に平面部材が貼り付けられ、壁構造が形成される。当該壁構造の振動時に壁上端および壁下端から全長の略1/4長さの位置に存在する振幅の大きい腹部分に連結部材を設け、平面部材が連結部材に固定される。
【0014】
この場合、連結部材により壁構造の振動時に特に振幅の大きな平面部材における腹部分の振動を防止することができる。したがって、壁構造の本来振幅の大きな部分が振動しないため、重量床衝撃音に対して衝撃音遮断効果を高めるとともに低コストで当該効果を得ることができる。
【0015】
(2)
連結部材は、複数の縦枠のうちの一の縦枠の壁上端および壁下端のうちいずれか一方、または両方から全長の1/4長さの位置と、一の縦枠に隣接する縦枠の壁上端および壁下端のうちいずれか一方、または両方から全長の1/4長さの位置と、を水平に接続してもよい。
【0016】
この場合、連結部材により振幅が大きい縦枠間の平面部材の部分に対して振動低減を図ることができる。すなわち、縦枠間の平面部材の部分が、上下方向の一次モードで振動した場合、上下方向の中央部が最大振幅(腹部)となり、壁上下端が最少振幅(節)となるが、壁上端および壁下端のうちいずれか一方、または両方からの長さが1/4の平面部材の部分を水平に固定することにより中央部の最大振幅を低減することができる。また、縦枠間の平面部材の部分が、上下方向の二次モードで振動した場合、壁上端および壁下端からの長さが1/4の平面部材の部分が上下方向の最大振幅となり、壁上下端と中央部とが節となるので、当該部分を水平に固定することにより最大振幅を有効に低減することができる。さらに、縦枠間の平面部材の部分が、上下方向の三次モードで振動した場合、壁上端からの距離が、壁上端から壁下端までの長さの1/6、3/6(1/2)、5/6の平面部材の部分が上下方向の最大振幅となり、壁上下端、壁上端から壁下端までの長さの2/6、4/6の平面部材の部分が節となるので、壁上端および壁下端のうちいずれか一方、または両方からの長さが1/4の平面部材の部分を水平に固定することにより1/6、3/6(1/2)、5/6の平面部材の部分の最大振幅を低減することができる。特に薄板軽量構造の住宅では、図4の重量床衝撃加振時の壁振動の速度分布測定結果によると、2次モードが主体であるので、壁上端および壁下端のうちいずれか一方、または両方からの長さが1/4の平面部材の部分が最大振幅となるため、長さが1/4の平面部材の部分を水平に固定することにより重量床衝撃音低減効果を高めることができる。
【0017】
また、従来の壁補剛構造においては、連結部材と平面部材とが接合されていない構造を用いていたため、平面部材の振動の低減効果が得られていなかった。なお、1/4の平面部材の部分は、連結部材のサイズ、平面部材のサイズ、施工性等から決定され、好ましくは長さ1/4の位置であるが、長さ1/6以上1/3以下の範囲内、および長さ2/3以上5/6以下の範囲内でも十分な効果を得ることができると考えられる。
【0018】
(3)
連結部材は、複数の縦枠のうち一の縦枠の中央部分と、一の縦枠に隣接する縦枠の両端部のうちいずれか一方、または両方と、を接続するものである。
【0019】
この場合、隣接する縦枠間平面部材の振動の腹(1/4位置)を、壁の中でも特に振幅の小さい縦枠の中央と端に接合された連結部材により固定することができるので、振幅を有効に低減することができ、重量床衝撃音低減効果を高めることができる。
【0020】
(4)
複数の縦枠の上端を懸架する上枠部材および複数の縦枠の下端を懸架する下枠部材の少なくともいずれか一方をさらに含み、連結部材は、複数の縦枠のうち一の縦枠の中央部から一の縦枠に隣接する縦枠の上端近傍の上枠部材および複数の縦枠のうち一の縦枠の中央部から一の縦枠に隣接する縦枠の下端近傍の下枠部材の少なくともいずれか一方または両方に設けられてもよい。
【0021】
この場合、複数の縦枠のうち一の縦枠の中央部から一の縦枠に隣接する縦枠の上端近傍の上枠部材および複数の縦枠のうち一の縦枠の中央部から一の縦枠に隣接する縦枠の下端近傍の下枠部材の少なくともいずれか一方または両方に連結部材が、設けられる。すなわち、上枠部材および下枠部材のいずれか一方と、縦枠の中央部(全体の約1/2の距離の位置)とが連結部材により接続される。その結果、縦枠の間の上端から1/4の距離の位置または縦枠の間の下端から1/4の距離の位置を連結部材が通るので、振幅を低減することができ、重量床衝撃音低減効果を高めることができる。
【0022】
なお、互いに平行に配置された複数の縦枠と、複数の縦枠の両面に設けられた平面部材と、複数の縦枠を連結する連結部材と、を含み、複数の縦枠は、一対の組として前記複数の平面部材に挟持された内部において千鳥状に配置され、当該一対の組の縦枠に対して連結部材が設けられ、当該一対の組の縦枠と当該連結部材とに、前記一の平面部材を接合し、他の一対の組の縦枠と当該連結部材とに前記他の平面部材を接合することを特徴とする壁構造であってもよい。
【0023】
また、平面部材を複数に積層してもよく、前記縦枠の両面に設けられた平面部材のうち一方が面した空間の音を他方が面した空間に透過させない性能(遮音性能)を維持したままで床衝撃音を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態について説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る一実施の形態に係る壁構造100の一例を示す模式的斜視図である。
【0026】
図1に示すように、壁構造100は、縦枠10、石膏ボード20,21および連結部材30を含む。
【0027】
図1に示すように、複数の縦枠10が所定の間隔で一直線上に配置され、複数の縦枠10の一の面に石膏ボード20がネジ(図5参照)で固設され、複数の縦枠10の他の面に石膏ボード21がネジ(図5参照)で固設されている。
【0028】
図1に示すように、複数の縦枠10の上端から下端までの鉛直方向における長さをHとすると、縦枠10の上端から1/4×Hの距離に連結部材30が設けられ、縦枠10の下端から1/4×Hの距離に連結部材30が設けられる。
【0029】
また、縦枠10は、C形鋼または角形鋼等の薄鋼板製形鋼からなる。また、石膏ボード20,21の代わりに木、合板、パーティクルボード、木片セメント板、木毛セメント板等の他の任意の木質系材料でもよい。
【0030】
ここで、重量床衝撃音について説明する。図2は1/1オクターブバンド毎の重量床衝撃音レベル(10dB/目盛り)を示す図であり、図3は1/3オクターブバンド毎の重量床衝撃音レベル(10dB/目盛り)を示す図である。図2および図3の縦軸は、重量床衝撃音レベル(10dB/目盛り)を示し、横軸は中心周波数(Hz)を示す。
【0031】
図2に示すように、1/1オクターブバンド毎の重量床衝撃音から、63HzバンドによりL等級が決まることがわかった。1/1オクターブバンドにおける63Hzバンドは、1/3オクターブバンドにおける50Hz、63Hz、80Hzバンドの和であり、中でも50Hzバンドにおいて高い値を示すことがわかった。すなわち、L等級を改善するには、50Hzバンドの振動を低減する必要がある。
【0032】
また、図4は重量衝撃加振時の壁振動速度分布の測定結果を示す図である。1/3オクターブバンドにおける50Hzバンドについて調査を行った。
【0033】
図4に示す測定結果は、従来の壁構造を用いて測定したものである。すなわち、図1の壁構造100から連結部材30を除いたものである。この場合、縦軸が振動速度レベル(10dB/目盛り)を示し、横軸が上端から下端にかけての位置を示す。また、図4のグラフ(黒三角)が縦枠10の位置での測定結果を示し、図4のグラフ(黒丸)が隣接する縦枠10の位置での測定結果を示し、図4のグラフ(黒四角)が縦枠10および隣接する縦枠10との中間の位置(以下、縦枠間中央位置と呼ぶ。)での測定結果を示す。
【0034】
この結果より、縦枠10および隣接する縦枠との差はほとんど見受けられず、上端、中央部、下端がそれぞれ節となり、上端と中央部との間、中央部と下端との間が腹となることがわかる。また、縦枠間中央位置においても、上端、中央部、下端がそれぞれ節となり、上端と中央部との間、中央部と下端との間が腹となっていることがわかった。すなわち、これらの縦枠10、縦枠間中央位置、隣接する縦枠においては、2次モードで振動している。また、縦枠間中央位置における振幅は、縦枠10および隣接する縦枠よりも大きくなることがわかった。これらに基づいて本願発明者は、壁構造の低減方法を見出している。
【0035】
なお、上端と中央部との間とは、以下、明細書で上端からの長さ1/4(H)であり、中央部と下端との間とは、下端からの長さ1/4(H)に相当する。
【0036】
続いて、図5は、図1に示した壁構造100の一例を示す模式的断面図である。
【0037】
図5に示すように、所定の間隔をあけて配置される縦枠10に対して、連結部材30が設けられる。この連結部材30は、縦枠10にネジ40により固定される。
【0038】
また、縦枠10には、石膏ボード20,21がネジ40により固定され、連結部材30には、石膏ボード20,21がネジ40により固定される。これにより、図4に示した上端からの長さ1/4(H)の位置および下端からの長さ1/4(H)の位置で、かつ縦枠間中央位置において発生する最大振幅を低減させることができる。
【0039】
(他の例)
次に図6は、図1および図5に示した壁構造100の他の例を示す模式的断面図である。図6における壁構造100aが図1および図5に示した壁構造100と異なるのは以下の点である。
【0040】
図6に示す壁構造100aは、両側に石膏ボード20,21を設けたのではなく、片側の石膏ボード21のみを設けた壁構造である。また、連結部材30の代わりに連結部材31を用いている。
【0041】
この場合、連結部材31は、石膏ボード21を固定することができればよく、図1および図5の石膏ボード20の方向に延在しない形状である。なお、本他の例においても図5の連結部材30を用いることとしてもよい。
【0042】
次いで、図7は壁構造100,100aにおける縦枠10と連結部材30,31との連結状態の一例を示す模式的断面斜視図である。以下、連結部材30および連結部材31のいずれか一方を用いることを前提として連結部材30,31と表現する。
【0043】
図7に示すように、縦枠10および連結部材30,31の間に、L字接続金具50が設けられる。このL字接続金具50の一方は縦枠10にネジ40により固定され、L字接続金具50の他方は連結部材30,31にネジ40により固定される。
【0044】
なお、図7において縦枠10が、C形鋼または角形鋼等の薄鋼板製形鋼からなり、L字接続金具50が形鋼からなることとしているが、これに限定されず、他の任意の形鋼または、木材でもよい。また、本実施の形態においては、L字接続金具50を用いることとしているが、これに限定されず、矩形状接続金具、他の任意の接続金具を用いることとしてもよい。
【0045】
続いて、図8は壁構造100,100aにおける縦枠10および連結部材30,31の連結状態の他の例を示す模式的断面斜視図である。
【0046】
図8に示すように、連結部材30,31の端部は、C形鋼の一対の面を延在させた後、当該面部分を内側に屈曲させたもの(以下、連結部材30aと呼ぶ)である。その屈曲させた面部分を縦枠10にネジ40により固定させることにより連結部材30aを縦枠10に固定することができる。
【0047】
なお、図8において縦枠10が、C形鋼または角形鋼等の薄鋼板製形鋼からなり、連結部材30aがC形鋼からなることとしているが、これに限定されず、他の任意の形鋼または、木材でもよい。
【0048】
次いで、図9は、壁構造100,100aにおける縦枠10および連結部材30,31の連結状態のさらに他の例を示す模式的断面斜視図である。
【0049】
図9に示すように、縦枠10aは、図7または図8等の縦枠10の連結部材30と結合する面の一部をコ字状に切り欠き、その切り欠きの部分の内部面を外側に屈曲させた(以下、縦枠10aと呼ぶ)ものである。その屈曲部分をC形鋼からなる連結部材30の内部に沿って入れ、ネジ40により固定することができる。
【0050】
次に、図10は、壁構造100,100aにおける縦枠10および連結部材30,31の連結状態のさらに他の例を示す模式的断面斜視図である。
【0051】
図10に示すように、連結部材30の端部は、C形鋼の一対の面を延在させた(以下、連結部材30bと呼ぶ)ものである。その延在させた面部分を縦枠10の側部に対してネジ40により固定させることができる。
【0052】
なお、第1の実施の形態においては、石膏ボード20,21により形成された空間内に部材をなんら設けないこととしているが、これに限定されず、大きな低減効果を得るために、金属、粘土、石、石膏等の塊状、または粒状体、粉状体等を設けることとしてもよい。
【0053】
また、図7,図8,図9,図10に示したいずれかの接続方法を織り交ぜて用いてもよい。さらに、ネジ40で固定することとしたが、これに限定されず、他の任意の固定方法、例えば、接着、釘等の部材を用いてもよい。
【0054】
(第2の実施の形態)
図11は第2の実施の形態における壁構造100bにおける縦枠10および連結部材の連結状態の一例を示す模式的断面図であり、図12は、図11の壁構造100bの比較例を示す模式的断面図であり、図13は第2の実施の形態における壁構造100bの他の例を示す模式的断面図である。
【0055】
図12の壁構造100zは、縦枠10,11および石膏ボード20,21,222,23を含む。また、図11に示す壁構造100bは、縦枠10,11、石膏ボード20,21,22,23および連結部材31a,31bを含む。
【0056】
図11および図12に示すように、石膏ボード20,22が積層して配置され、石膏ボード21,23が積層して配置されている。また、石膏ボード20,22および石膏ボード21,23により形成された空間内に、複数の縦枠10,11が千鳥状に配置されている。
【0057】
ここで、図12に示す壁構造100zにおいては、個々の縦枠10,11が交互に所定の間隔で千鳥状に設けられている。一方、図11に示す壁構造100bにおいては、一対の縦枠10および一対の縦枠11が交互に千鳥状に配置されている。そして、一対の縦枠10の間に連結部材31aが設けられ、一対の縦枠11の間に連結部材31bが設けられている。
【0058】
さらに、縦枠10および連結部材31aには、積層された石膏ボード20,22がネジ40により固設され、縦枠11および連結部材31bには、積層された石膏ボード21,23がネジ40により固設される。なお、図示しないが、複数の縦枠10,11および石膏ボード20,21,22,23は、壁構造100bの天井および床において別部材により連結されている。
【0059】
この場合、比較例の壁構造100z(図12)においては、連結部材31a,31bを設けることができない。仮に設けたとしても石膏ボード21,23側で生じた音が、石膏ボード21,23、縦枠11、連結部材、縦枠10および石膏ボード20,22を介して石膏ボード20,22側に透過されることとなる。
【0060】
一方、本実施の形態における壁構造100b(図11)においては、連結部材31aおよび縦枠10には一方の石膏ボード20,22のみが固定され、他方の石膏ボード21,23は直接的に接続されていない。その結果、音振動の透過を抑制することができる。したがって、遮音性能を維持しつつ、重量床衝撃音の低減を図ることができる。
【0061】
なお、第2の実施の形態においては、石膏ボード20,21,22,23により形成された空間内に部材をなんら設けないこととしているが、これに限定されず、大きな低減効果を得るために、金属、粘土、石、石膏等の塊状、または粒状体、粉状体等を設けることとしてもよい。
【0062】
また、図13に示すように図7,図8,図9,図10に示したいずれかの接続方法を用いてもよい。さらに、ネジ40で固定することとしたが、これに限定されず、他の任意の固定方法、例えば、接着、釘等の部材を用いてもよい。
【0063】
(第3の実施の形態)
図14は、第3の実施の形態に壁構造100cの一例を斜視した模式的透視図であり、図15は、図14の壁構造100cの石膏ボード20,21を取り外した状態を示す模式的正面図であり、図16は、図14の壁構造100cを示す模式的上面断面図である。
【0064】
図14に示すように、壁構造100cは、複数の縦枠10、石膏ボード20、21、連結部材30c,30dを含む。
【0065】
図14に示す連結部材30cの一端が複数の縦枠10の上端に接続され、連結部材30cの他端が複数の縦枠10の中央部(全高さをHとすると、1/2×Hの高さ、図15参照)に接続される。
【0066】
一方、連結部材30dの一端が複数の縦枠10の下端に接続され、連結部材30dの他端が複数の縦枠10の中央部(全高さをHとすると、1/2×Hの高さ図15参照)に接続される。そして、複数の縦枠10の一面に石膏ボード20が設けられ、複数の縦枠10の他の面に石膏ボード21が設けられる。
【0067】
したがって、複数の縦枠10の中間における上端から1/4の位置PA(図15および図16参照)および下端から1/4の位置PA(図15および図16参照)において石膏ボード20,21の振動を抑制することができるので、石膏ボード20,21から発生する音を有効に低減することができる。
【0068】
次に、図17は、図14における壁構造100cの上端に部材15を設けた状態の一例を示した模式的斜視図である。
【0069】
図17に示すように、縦枠10の上端を懸架するように、部材15が設けられる。この部材15は、C形鋼等の薄鋼板製形鋼からなる。なお、縦枠10の上端のみに部材15を設けることとしたが、これに限定されず、下端にのみ設けてもよく、上端および下端の両方に設けることとしてもよい。
【0070】
また、図17の第3の実施の形態における部材15を設けた場合の連結部材30cに対して、比較例として筋交いと呼ばれる部材を設ける場合がある。この筋交いは、一方の柱およびその上側の部材(柱の上端と柱の上端の端部を接続する部材)の交点と、他方の柱およびその下側の部材(柱の下端と柱の下端の端部を結ぶ部材)の交点とを接続する部材である。具体的に筋交いは、複数の縦枠10をまたいで配置されるものである。したがって、本発明とその使用することの目的が異なる。さらに、“筋交い"は強度部材としての本来の目的のために、前述の交点を接続する必要があるが,本発明の連結部材30cは“縦枠"の上下端の近傍であっても同様の効果を得ることができる。
【0071】
以上のように、第1の実施の形態から第3の実施の形態における壁構造100,100a,100bおよび100cにおいては、連結部材30,31により壁構造100,100a,100bおよび100cの振動時に振幅の大きな腹部分、すなわち、壁上端から壁下端までの長さ(H)に対して、壁上端および壁下端のうちいずれか一方、または両方から長さ1/4(H)の位置の振動を防止することができる。その結果、薄板軽量形鋼造の住宅の重量床衝撃音低減対策として、低コストでかつ衝撃音低減効果を高めることができる。
【0072】
また、図4の重量床衝撃加振時の壁振動の速度分布測定結果に示すように、壁上端および壁下端からの長さが1/4の平面部材の部分が最大振幅となるため、長さが1/4の平面部材の部分を固定することにより重量床衝撃に対して大きな衝撃音低減効果を得られることがあきらかである。なお、1/4の平面部材の部分は、連結部材のサイズ、平面部材のサイズ、施工性等から決定され、好ましくは長さ1/4の位置であるが、長さ1/6以上1/3以下の範囲内、および長さ2/3以上5/6以下の範囲内でも十分な効果を得ることができると考えられる。
【0073】
上記第1から第3の実施の形態においては、複数の縦枠10,10a,11が複数の縦枠に相当し、石膏ボード20,21,22,23が平面部材に相当し、連結部材30,31,31a,31b,31c,31dが連結部材に相当し、壁構造100,100a,100bおよび100cが壁構造に相当し、点PAが振幅の大きな部分および長さ1/4Hに相当し、部材15が上枠部材および/または下枠部材に相当する。
【0074】
本発明は、上記の好ましい第1の実施の形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る一実施の形態に係る壁構造の一例を示す模式的斜視図
【図2】1/1オクターブバンド毎の重量床衝撃音レベルを示す図
【図3】1/3オクターブバンド毎の重量床衝撃音レベルを示す図
【図4】重量衝撃加振時の壁振動速度分布の測定結果を示す図
【図5】図1に示した壁構造の一例を示す模式的断面図
【図6】図1および図5に示した壁構造の他の例を示す模式的断面図
【図7】壁構造における縦枠および連結部材の連結状態の一例を示す模式的断面斜視図
【図8】壁構造における縦枠および連結部材の連結状態の他の例を示す模式的断面斜視図
【図9】壁構造における縦枠および連結部材の連結状態のさらに他の例を示す模式的断面斜視図
【図10】壁構造における縦枠および連結部材の連結状態のさらに他の例を示す模式的断面斜視図
【図11】第2の実施の形態における壁構造における縦枠および連結部材の連結状態の一例を示す模式的断面図
【図12】図11の壁構造の比較例を示す模式的断面図
【図13】第2の実施の形態における壁構造の他の例を示す模式的断面図
【図14】第3の実施の形態に壁構造の一例を斜視した模式的透視図
【図15】図14の壁構造の石膏ボードを取り外した状態を示す模式的正面図
【図16】図14の壁構造を示す模式的上面断面図
【図17】図14における壁構造の上端に部材を設けた状態の一例を示した模式的斜視図
【符号の説明】
【0076】
10,10a,11 複数の縦枠
15 部材
20,21,22,23 石膏ボード
30,31,31a,31b,31c,31d 連結部材
100,100a,100b,100c 壁構造
PA 点(長さ1/4(H))

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置された複数の縦枠と、
前記複数の縦枠を連結する連結部材と、
前記複数の縦枠の少なくとも片面に設けられ、かつ前記連結部材に接合された平面部材と、を含み、
前記連結部材は、前記複数の縦枠および前記平面部材から形成される壁構造の壁上端から壁下端までの全長に対して、前記壁上端および前記壁下端のうちいずれか一方、または両方から全長の略1/4長さの位置に存在する振幅の大きい腹部分に設けられたことを特徴とする壁構造。
【請求項2】
前記連結部材は、前記複数の縦枠のうちの一の縦枠の前記壁上端および前記壁下端のうちいずれか一方、または両方から全長の1/4長さの位置と、前記一の縦枠に隣接する縦枠の前記壁上端および前記壁下端のうちいずれか一方、または両方から全長の1/4長さの位置と、を水平に接続することを特徴とする請求項1記載の壁構造。
【請求項3】
前記連結部材は、前記複数の縦枠のうち一の縦枠の中央部分と、前記一の縦枠に隣接する縦枠の両端部のうちいずれか一方、または両方と、を接続することを特徴とする請求項1記載の壁構造。
【請求項4】
前記複数の縦枠の上端を懸架する上枠部材および前記複数の縦枠の下端を懸架する下枠部材の少なくともいずれか一方をさらに含み、
前記連結部材は、前記複数の縦枠のうち一の縦枠の中央部から前記一の縦枠に隣接する縦枠の上端近傍の上枠部材および前記複数の縦枠のうち一の縦枠の中央部から前記一の縦枠に隣接する縦枠の下端近傍の下枠部材の少なくともいずれか一方または両方に設けられたことを特徴とする請求項1記載の壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−175003(P2008−175003A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10660(P2007−10660)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】