説明

壁紙及びその製造方法

【課題】本発明は、壁紙及びその製造方法に関するものである。
【解決手段】本発明の壁紙は、油価上昇などの要因とは関係なく低エネルギー及び低費用で製造することができ、製造、使用、火事発生又は廃棄過程で温室ガス及び有害物質を排出しない。また、本発明の壁紙は、埋め立て廃棄するときにも自然環境下で容易に分解される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PVC(poly(vinyl chloride))壁紙は、紙などの基材上にPVCをコーティングして製造された壁紙である。PVC壁紙は、シルク壁紙とも呼ばれるもので、現在最も汎用的に使用されている壁紙の一つである。しかし、前記PVC壁紙は、全量再生が不可能な化石エネルギー資源で製造されるので、今後、石油資源の枯渇などによって原材料の需給困難及び持続的な価格上昇が発生すると予想されている。また、PVC壁紙は、製造などの過程で多量の温室ガス(例えば、CO2など)を排出し、焼却廃棄又は火事発生時に環境ホルモン及び有毒ガスなどの有害物質を放出するという問題を有する。また、PVC壁紙を埋め立て廃棄する場合は、自然環境下でほぼ永久的に残存するため、大きな環境負担を誘発するようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、壁紙及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、基材シートと、前記基材シート上に形成され、生分解性樹脂を含む樹脂層とを有する壁紙を提供する。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するための他の手段として、基材シート上に、生分解性樹脂を含む樹脂組成物を使用して樹脂層を形成することを含む壁紙の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の壁紙は、油価上昇などの要因とは関係なく低エネルギー及び低費用で製造することができ、製造、使用、火事発生又は廃棄過程で温室ガス及び有害物質を排出しない。また、本発明の壁紙は、埋め立て廃棄するときにも自然環境下で容易に分解される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の多様な態様に係る壁紙を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明の多様な態様に係る壁紙を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、基材シートと、前記基材シート上に形成され、生分解性樹脂を含む樹脂層とを有する壁紙に関するものである。
【0009】
以下、本発明に係る壁紙を具体的に説明する。
【0010】
図1は、本発明の壁紙の一例示を示す図である。図1に示すように、本発明の壁紙1は、基材シート10と、前記基材シート10上に形成された樹脂層20とを含む。
【0011】
本発明の壁紙に含まれる基材シートの種類は特別に制限されない。本発明では、例えば、既存のPVC壁紙で適用されていた基材シートを含む、この分野で公知となった一般的な素材を前記基材シートとして使用することができる。本発明では、例えば、前記基材シートとして、模造紙又は不織布などを使用することができる。前記不織布の例としては、ポリエステルのような合成繊維で製造された不織布、パルプなどで製造された不織布、又はポリエステル及びパルプの複合不織布などを挙げることができるが、これらに制限されることはない。
【0012】
本発明で、前記基材シートは、坪量が80g/m2〜200g/m2の範囲にあり得る。本発明で、基材シートの坪量が80g/m2未満であると、製造、施工又は使用過程で壁紙が破れて損傷するおそれがあり、基材シートの坪量が200g/m2を超えると、壁紙が過度に重くなり、カーリング(curling)が発生することによって施工性が低下したり、樹脂層と基材シートとの界面剥離などの現象が生じるおそれがある。
【0013】
本発明で、前記基材シートの厚さは約0.1mm〜0.3mmの範囲であり得る。本発明で基材シートの厚さが0.1mm未満であると、製造、施工又は使用過程で壁紙に損傷が発生するおそれがあり、基材シートの厚さが0.3mmを超えると、施工性が低下するおそれがある。しかし、前記基材シートの厚さは、本発明の一つの例示に過ぎない。すなわち、本発明では、壁紙が適用される用途によって、前記基材シートの厚さを適宜調節することができる。
【0014】
本発明の壁紙は、前記のような基材シート上に形成された樹脂層を含み、前記樹脂層は生分解性樹脂を含む。本発明で、前記のような樹脂層は、生分解性樹脂を含むコーティング液を基材シート上に塗布し、乾燥、熟成及び/又は硬化工程を経たり、又は、生分解性樹脂を含む原料を押出、カレンダリング又はプレス工程などに適用して樹脂層を製造した後、これを基材シートとラミネートして形成することができる。
【0015】
本発明で、前記樹脂層に含まれる生分解性樹脂の種類は、自然環境下で容易に分解される特性を有し、かつ壁紙に優れた審美感及び柔軟性などの特性を与えられるものであれば、特別に限定されない。本発明で使用可能な生分解性樹脂の例としては、とうもろこし、じゃがいも又はさつまいもなどから抽出した澱粉、又は前記澱粉を醗酵させて製造した乳酸又はラクチドなどの重合体(ポリ乳酸)などのような天然高分子や、ポリ乳酸(poly(lactic acid);PLA)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)(poly(hydroxybutyric acid);PHB)、ポリ(ヒドロキシバレリアン酸)(poly(hydroxyvaleric acid);PHV)又はヒドロキシ酪酸―ヒドロキシバレリアン酸共重合体(hydroxybutyric acid/hydroxy valeric acid copolymer;PHBV)などのような微生物によって合成された高分子や、ポリ(乳酸)(poly(lactic acid);PLA)、ポリ(カプロラクトン)(poly(caprolactone);PCL)、ポリ(ブチレンサクシネート)(poly(buthylene succinate);PBS)、ブチレンサクシネート―アジペート共重合体(poly(butylenesuccinate―co−adipate);PBSA)及びブチレンアジペート―テレフタレート共重合体(poly(butyleneadipate―co―terephthalate);PBAT)などのように化学的工程を通して合成された高分子などを挙げることができ、これらのうち、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)、ブチレンサクシネート―アジペート共重合体(PBSA)及びブチレンアジペート―テレフタレート共重合体(PBAT)などの一種又は二種以上の樹脂を使用できるが、これに制限されることはない。
【0016】
本発明では、壁紙の柔軟性確保及び生分解性の向上などの観点で、前記のような生分解性樹脂のうち2種以上の複合樹脂を使用して前記樹脂層を形成することが望ましい。具体的に、本発明で、前記樹脂層は、ポリ乳酸(PLA)を含む第1の樹脂成分と、ポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)、ブチレンサクシネート―アジペート共重合体(PBSA)及びブチレンアジペート―テレフタレート共重合体(PBAT)からなる群から選択された一つ以上を含む第2の樹脂成分とを含むことができる。すなわち、本発明で、前記樹脂層は、ポリ乳酸(PLA)を必須成分として含み、ポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)、ブチレンサクシネート―アジペート共重合体(PBSA)及びブチレンアジペート―テレフタレート共重合体(PBAT)からなる群から選択された一つ以上の樹脂をさらに含むことができる。本発明で、樹脂層を前記のような複合樹脂で構成することによって、壁紙の柔軟性を極大化し、生分解性、審美性などのその他物性も優秀に維持することができる。
【0017】
本発明で、樹脂層が前記のような複合樹脂成分を含む場合、前記樹脂層は、第1の樹脂成分(PLA)100重量部に対して、10重量部〜500重量部、望ましくは10重量部〜250重量部、より望ましくは10重量部〜100重量部、最も望ましくは10重量部〜60重量部の第2の樹脂成分を含むことができる。本発明で、第2の樹脂成分の含量が10重量部未満であると、施工又は使用過程でカーリングなどが発生したり、樹脂層の柔軟性が大きく低下するおそれがあり、第2の樹脂成分の含量が500重量部を超えると、樹脂層又は樹脂成分の耐熱性が低下するおそれがある。
【0018】
本発明で、前記樹脂層は、耐熱性、耐湿性及び樹脂層を構成する成分間の相溶性の改善などの観点で、無機成分をさらに含むことができ、より望ましくは、ナノサイズの無機成分をさらに含むことができる。
【0019】
この場合、使用可能な無機成分の例としては、雲母、タルク(talc)又は粘土(例えば、ナノクレイ)などの一種又は二種以上を挙げることができるが、これらに制限されることはない。
【0020】
本発明で、前記無機成分は、平均直径又は平均大きさが1.0nm〜100nmであり得る。本発明で、前記直径又は大きさが1.0nm未満であると、樹脂層内で無機成分が凝集することによって分散性が低下するおそれがあり、平均直径又は平均大きさが100nmを超えると、無機成分の添加による効果が微々たるものになるおそれがある。
【0021】
本発明で、前記のような無機成分は、生分解性樹脂100重量部に対して、5重量部〜20重量部の量で含まれる。無機成分の含量を前記範囲に制御することによって、無機成分の添加による耐熱性、耐湿性及び相溶性などの改善効果を極大化することができる。
【0022】
また、本発明の壁紙で、前記樹脂層は、可塑剤をさらに含むことができる。前記可塑剤は、樹脂層に優れた柔軟性、耐衝撃性及び溶融効率などを与えることができる。
【0023】
本発明で使用可能な可塑剤の種類は、上述した作用を行えるものであれば特別に制限されないが、環境に優しい特性を有する可塑剤であることが望ましい。本発明で使用可能な可塑剤の例としては、フタレート系化合物、クエン酸系化合物(例えば、クエン酸又はクエン酸エステルなど)、脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールなど)、グリセロールエステル、植物性オイル、変性植物性オイル、アリルフォスフェートエステル、ジアルキルエーテルジエステル、トリカルボン酸エステル、エポキシ化オイル、エポキシ化エステル、ポリエステル、ポリグリコールジエステル、アリルエーテルジエステル、脂肪族ジエステル、アルキルエーテルモノエステル及びジカルボン酸エステルなどの一種又は二種以上の混合物を挙げることができ、これらのうち、環境に優しい特性を考慮して、クエン酸系化合物、脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール、グリセロールエステル、植物性オイル又は変性植物性オイルの一種又は二種以上の混合物を使用できるが、これらに制限されることはない。
【0024】
本発明の一態様で、前記変性植物性オイルは、エポキシ化植物性オイル又はその他変性植物性オイルであり、例えば、エポキシ化大豆油、具体的には、MSO(epoxidized methyl soyate)、ELO(epoxidized linseed oil)、ESO(epoxidized soy oil)又はETO(epoxidized tall oil)などである。
【0025】
また、本発明では、前記クエン酸系可塑剤が、例えば、トリエチルシトレート(TEC、triethyl citrate)、アセチルトリエチルシトレート(ATEC、acetyl triethyl citrate)、トリプロピルシトレート(TPC、tripropyl citrate)、アセチルトリプロピルシトレート(ATPC、acetyl tripropyl citrate)、トリブチルシトレート(TBC、tributyl citrate)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC、acetyl tributyl citrate)、トリへキシルシトレート(THC、trihexyl citrate)、アセチルトリへキシルシトレート(ATHC、acetyl trihexyl citrate)又はシトレートと変性植物性オイルの混合物などであるが、望ましくは、アセチルトリブチルシトレート、より望ましくは、アセチルトリブチルシトレートと変性植物性オイルの混合物である。
【0026】
本発明の樹脂層で、前記可塑剤は、生分解性樹脂100重量部に対して、5重量部〜60重量部、望ましくは5重量部〜50重量部、より望ましくは10重量部〜50重量部、さらに望ましくは15重量部〜40重量部で含まれる。本発明で可塑剤の含量が5重量部未満であると、可塑剤の添加による物性改善効果が微々たるものになるおそれがあり、可塑剤の含量が60重量部を超えると、樹脂の軟化度が過度に増加したり、加工が難しくなるおそれがある。
【0027】
また、本発明の壁紙で、樹脂層は、加工助剤をさらに含むことができる。前記加工助剤は、溶融効率、溶融強度、粘度特性、耐衝撃性、耐熱性及び機械的強度などを改善し、本発明の樹脂層の成形性を向上させることができる。
【0028】
本発明で使用可能な加工助剤の具体的な種類は特別に制限されず、この分野で公知となっている一般的な成分を加工助剤として使用することができる。本発明で使用可能な加工助剤の例としては、メチルメタクリレート(MMA;methyl methacrylate)を含む単量体混合物の3元共重合体を挙げることができる。本発明において「3元共重合体」という用語は、メチルメタクリレートを基本成分として含み、その他に2種の単量体をさらに含む単量体混合物を重合させて製造された3成分共重合体を意味する。
【0029】
本発明では、前記単量体混合物は、3元共重合体を構成する成分であって、アルキル(メタ)アクリレートをさらに含むことができる。単量体混合物にアルキル(メタ)アクリレートが含まれる場合、アルキル(メタ)アクリレートは、メチルメタクリレートを除いた1種又は2種の単量体である。本発明で使用可能なアルキル(メタ)アクリレートの種類は特別に制限されず、例えば、炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、具体的には、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n―ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2―エチルへキシル(メタ)アクリレート又はシクルロへキシル(メタ)アクリレートを使用することができる。
【0030】
また、本発明で、前記単量体混合物は、前記成分と共に、機能性単量体、具体的には、アリル(メタ)アクリレート又は多官能性単量体をさらに含むことができる。この場合、本発明の3元共重合体は、メチルメタクリレート、アルキル(メタ)アクリレート及び機能性単量体の共重合体である。前記アリル(メタ)アクリレート又は多官能性単量体の具体的な種類は特別に制限されず、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1,3―ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4―ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート又はジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを使用することができる。
【0031】
一方、本発明で3元共重合体をなす単量体混合物がメチルメタクリレート及びアルキル(メタ)アクリレートを含む場合、前記単量体混合物は、メチルメタクリレート60重量部〜86重量部、望ましくは75重量部〜85重量部と、アルキルメタクリレート14重量部〜40重量部、望ましくは15重量部〜25重量部とを含むことができる。
【0032】
また、前記単量体混合物が、メチルメタクリレート、アルキル(メタ)アクリレート及び前記機能性単量体を含む場合、前記混合物は、メチルメタクリレート60重量部〜86重量部、望ましくは75重量部〜85重量部と、アルキルメタクリレート14重量部〜39.9重量部、望ましくは15重量部〜25重量部と、機能性単量体0.0001重量部〜0.1重量部、望ましくは0.001重量部〜0.5重量部とを含むことができる。
【0033】
前記単量体混合物に含まれるメチルメタクリレートの含量が60重量部未満であると、生分解性樹脂などとの相溶性が低下することによって加工性が悪化するおそれがあり、メチルメタクリレートの含量が86重量部を超えると、加工時に初期分散性が低下することによって発泡不均一現象などが誘発されるおそれがある。
【0034】
一方、前記単量体混合物が機能性単量体を含む場合、その含量が0.0001重量部未満であると、3元共重合体の分子量低下によって発泡性改善効果などが微々たるものになるおそれがあり、機能性単量体の含量が0.1重量部を超えると、加工効率や発泡加工性が低下するおそれがある。
【0035】
本発明で、前記のような成分からなる加工助剤は、重量平均分子量が50万〜800万、望ましくは100万〜500万である。本発明で、前記加工助剤の重量平均分子量が50万未満であると、加工助剤による物性改善効果が微々たるものになるおそれがあり、 前記加工助剤の重量平均分子量が800万を超えると、溶融効率低下などによって加工性改善効果が微々たるものになるおそれがある。
【0036】
また、本発明で、前記加工助剤は、相対粘度(rel)が4.0cp〜12.0cpの範囲にあり得る。本発明で、加工助剤の相対粘度が4.0cp未満であると、樹脂組成物の発泡性及び発泡セルの安定性が低下するおそれがあり、加工助剤の相対粘度が12.0cpを超えると、加工特性が低下するおそれがある。
【0037】
一方、本発明で、加工助剤の前記相対粘度は、例えば、所定量(例えば、0.25g)の加工助剤を、所定量の溶媒(例えば、THF、50mL)に溶解した溶液に対して、30℃の恒温槽でウベルホード(ubbelhode)粘度計などを使用して測定することができる。
【0038】
本発明で、前記のような加工助剤を製造する方法は特別に制限されず、例えば、上述した単量体混合物を使用した溶液重合、光重合、塊状重合(bulk polymerization)、懸濁重合(suspension polymerization)又は乳化重合(emulsion polymerization)などを通して加工助剤を製造することができる。
【0039】
特に、本発明では、上述した各条件を満足する加工助剤の製造のために、前記乳化重合を使用して加工助剤を製造することが望ましい。本発明で、前記のような乳化重合は、この分野で公知となっている一般的な乳化剤、重合開始剤又は酸化還元触媒などを使用して行うこともできる。
【0040】
本発明で、前記のような加工助剤は、生分解性樹脂100重量部に対して、1重量部〜60重量部、望ましくは2重量部〜40重量部、より望ましくは5重量部〜30重量部で含まれる。本発明で加工助剤の含量が1重量部未満であると、加工助剤による物性改善効果が微々たるものになるおそれがあり、加工助剤の含量が60重量部を超えると、溶融効率低下などによって加工性が低下するおそれがある。
【0041】
本発明の壁紙で、樹脂層は、滑剤をさらに含むことができる。滑剤は、本発明の樹脂層の成形時にカレンダーローラーなどの金属設備の表面を潤滑させて流動性を改善し、金属設備と樹脂の粘着を防止し、スリップ性を向上させ、溶融粘度を調節し、成形加工性を改善することができる。
【0042】
本発明で使用可能な滑剤の種類は、上述した作用を行うものであれば特別に制限されず、例えば、ステアリン酸又はステアリン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、又は亜鉛塩)や、エステル又はアミド形態の合成ワックスや、モンタンワックス、パラフィンワックス又は鉱油などの炭化水素や、シリコンなどを滑剤として使用することができる。
【0043】
本発明の樹脂層は、前記滑剤を生分解性樹脂100重量部に対して、0.01重量部〜30重量部、望ましくは0.1重量部〜20重量部、より望ましくは1重量部〜10重量部の量で含むことができる。本発明で滑剤の含量が0.01重量部未満であると、滑剤の添加による成形性改善効果が微々たるものになるおそれがあり、滑剤の含量が30重量部を超えると、インクとの接着力低下で壁紙の印刷適性が悪化したり、層間接着力の低下で他の層との合板が難しくなるおそれがある。
【0044】
また、本発明の樹脂層はフィラーをさらに含むことができる。前記のようなフィラーは、本発明の樹脂層の強度増加、加工性向上、安着性付与及び原材料費節減などを目的にして付加することができる。
【0045】
本発明で使用可能なフィラーの具体的な種類は特別に制限されず、炭酸カルシウム、シリカ又はアルミナなどの無機系フィラー、又は、木質系フィラー(例えば、木粉、木チップ)、コルク、ケナフ又はパルプなどの有機系フィラーの一種又は二種以上の混合を使用することができる。特に、本発明では、有機系フィラー及び無機系フィラーの混合、望ましくは炭酸カルシウム及び木粉の混合フィラーを使用することができ、必要に応じては、製品の軽量化及び原材料費の節減などを目的にしてパーライト(perlite)などの軽量無機系フィラーやエアロゾル(aerosol)などの軽量有機系フィラーをさらに使用することができる。前記のようなフィラーは、生分解性樹脂との相溶性に優れ、樹脂層内に均一に分散される。また、前記フィラーは、特に可塑剤との親和性に優れ、可塑剤の溶出を抑制できるので、樹脂層内での可塑剤の含量を相対的に高く設定することができ、また、柔軟性に優れた製品を製造することができる。
【0046】
本発明の樹脂層で、前記フィラーの含量は、適用用途によって変わり、例えば、生分解性樹脂100重量部に対して、1,200重量部以下、望ましくは300重量部〜1,000重量部、より望ましくは500重量部〜800重量部の範囲内に調節することができる。本発明でフィラーの量が過度に少ないと、加工性、原材料費節減、安着性及び強度増加効果が微々たるものになるおそれがあり、その反対に、フィラーの量が過度に多くなると、樹脂などの他の成分の結合力が低下し、加工性が低下するおそれがある。
【0047】
また、本発明の樹脂層は、用途によって、例えば、酸化防止剤、紫外線安定剤、発泡剤、架橋剤又は顔料などの一種又は二種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0048】
本発明では、図2に示すように、壁紙2が、前記樹脂層20上に形成された印刷層30をさらに含むことができる。このように、印刷層30をさらに形成することによって、壁紙に多様な模様又は色相を与えることができ、これによって、壁紙の審美性を向上させることができる。本発明で、印刷層を形成する方法は特別に制限されず、例えば、デジタル実写印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷又はロータリー印刷などのような公知の方法を使用して印刷層を形成することができる。
【0049】
また、本発明の壁紙では、前記樹脂層又は印刷層にエンボスパターンを与えることができる。このようにエンボスパターンを与えることによって、壁紙の立体感を向上させることができる。本発明で、前記エンボスパターンを形成する方法は特別に限定されず、例えば、樹脂層又は印刷層をパターンが形成されたローラーでローリング処理したり、又は、樹脂層などに適切な発泡剤などを配合した後、発泡及びゲル化(gelling)工程などを経てエンボスパターンを形成することができる。
【0050】
本発明で、前記のような壁紙を製造する方法は特別に制限されない。本発明では、例えば、既存のPVC壁紙の製造工程を適宜採用することによって前記壁紙を製造することができる。
【0051】
本発明で、前記壁紙の製造方法は、例えば、基材シート上に生分解性樹脂を含む組成物を使用して樹脂層を形成することを含むことができる。
【0052】
本発明の方法で、生分解性樹脂を含む組成物を使用して樹脂層を形成する方法は特別に制限されない。
【0053】
本発明では、例えば、公知の手段を使用して基材シートを供給しながら、前記基材シート上に生分解性樹脂を含む組成物を適切な厚さでコーティングし、乾燥、熟成又は硬化工程を経て樹脂層を形成することができ、この過程で必要に応じて適切な発泡又はゲル化工程をさらに行うこともできる。
【0054】
前記生分解性樹脂を含む組成物又はコーティング液は、目的とする生分解性樹脂、可塑剤及びその他添加剤を配合し、その粘度を溶剤などを使用して調節することによって製造することができる。
【0055】
また、生分解性樹脂を含む組成物又はコーティング液を基材シートにコーティングする方法は特別に制限されず、例えば、ナイフコーター又はロールカッターなどの手段を使用してコーティングを行うことができる。
【0056】
また、本発明では、生分解性樹脂含有組成物を押出成形、中空成形、プレス成形又はカレンダリング成形などに適用してフィルム又はシートに製造し、これを基材シートと合板する方法で樹脂層を基材シート上に形成することもできる。例えば、Tダイ押出工法で前記組成物を使用してフィルム又はシートを製造すると共に、前記フィルム又はシートの製造後又は製造と同時に、これを基材シート上に合板する方式で樹脂層を形成することもできる。
【0057】
本発明で、前記のような工程後に乾燥、熟成又は硬化工程を行う条件は特別に制限されず、使用された組成物の組成などを考慮して適宜選択することができる。
【0058】
また、本発明では、前記樹脂層の形成過程で供給される基材シートに所定の応力を加え、基材シートがぴんと引っ張られた状態で工程に適用されるようにすることができる。このような過程を経ることによって、より効率的に塗布工程を行うことができる。この過程で基材シートに応力を与える方法は特別に限定されず、例えば、EPC(Edge Point Control)などの公知の機器を使用して基材シートに応力を与えることができる。
【0059】
また、本発明では、基材シート上に樹脂層を形成した後、前記樹脂層に印刷工程を行い、印刷層を形成する工程をさらに行うことができる。このとき、印刷層を形成する方法は特別に限定されず、例えば、上述したような各種の印刷工法を適用することができる。
【0060】
また、本発明では、前記印刷層の形成前又は形成後に、樹脂層又は印刷層にエンボスパターンを与える工程をさらに行うことができる。本発明でエンボスパターンを与える方法は特別に限定されず、例えば、樹脂層内に発泡剤などの添加剤を添加した後、発泡及びゲル化したり、又はエンボスパターンが形成されたロールを用いてローリングする方法などを使用することができる。ローリングを通してエンボスパターンを壁紙に与える場合、ローラーとしては、通常の加圧ローラー又はスチールローラーなどを使用することができる。また、ローリング工程時には、ローラーの左右圧力を同一に制御し、壁紙の左右の厚さ偏差を最小化することが望ましいが、これに制限されることはない。すなわち、本発明では、必要に応じて壁紙の左右などに厚さ偏差を誘導することもできる。
【0061】
以下、本発明に係る実施例を通して本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が下記の実施例に制限されることはない。
【0062】
実施例1.
【0063】
ポリ乳酸(PLA)及びブチレンアジペート―テレフタレート共重合体(PBAT)を9:1の重量比(PLA:PBAT)で含む生分解性樹脂100重量部に対して、無機成分(ナノクレイ)10重量部を配合し、安定剤などのその他添加剤を適宜配合して樹脂組成物を製造した。続いて、製造された樹脂組成物をTダイ押出工法に適用して樹脂層を製造し、製造された樹脂層を坪量が100g/m2である基材シート(模造紙)に合板した。その後、樹脂層にグラビア工法で印刷層を形成し、予熱されたエンボスロールを使用してエンボスパターンを形成することによって壁紙を製造した。その後、製造された壁紙に対して、ISO243に規定された方法にしたがって剛性(stiffness)を測定した。測定の結果、製造された壁紙の幅方向(壁紙生産ラインでローラーと水平をなす方向)の剛性は約26.8gf・cmで、長さ方向(前記幅方向と垂直方向)の剛性は約30.8gf・cmであった。これと同一の測定結果から、本発明の場合、生分解性樹脂を使用して優れた柔軟性及び審美性などの物性を有する壁紙を製造できることを確認することができた。
【0064】
実施例2.
【0065】
生分解性樹脂として、ポリ乳酸(PLA)及びブチレンアジペート―テレフタレート共重合体(PBAT)を7:3の重量比(PLA:PBAT)で含む複合樹脂を使用したことを除いては、実施例1と同一の方式で壁紙を製造した。製造された壁紙に対して、実施例1と同一の方式で剛性を測定した結果、幅方向の剛性は約18.3gf・cmで、長さ方向の剛性は約20.9gf・cmであることから、本発明の方法によって、柔軟性及び審美感などに優れた壁紙を製造できることを確認することができた。
【符号の説明】
【0066】
1、2:壁紙、10:基材シート、20:樹脂層、30:印刷層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、前記基材シート上に形成され、生分解性樹脂を含む樹脂層と、を有する壁紙。
【請求項2】
前記基材シートが模造紙又は不織布である、請求項1に記載の壁紙。
【請求項3】
前記基材シートの坪量が80g/m2〜200g/m2である、請求項1に記載の壁紙。
【請求項4】
前記基材シートの厚さが0.1mm〜0.3mmである、請求項1に記載の壁紙。
【請求項5】
前記生分解性樹脂が、澱粉、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ヒドロキシバレリアン酸)、ヒドロキシ酪酸―ヒドロキシバレリアン酸共重合体、ポリ乳酸、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ブチレンサクシネート)、ブチレンサクシネート―アジペート共重合体及びブチレンアジペート―テレフタレート共重合体からなる群から選択された一つ以上である、請求項1に記載の壁紙。
【請求項6】
前記生分解性樹脂は、ポリ乳酸を含有する第1の樹脂成分と、ポリ(ブチレンサクシネート)、ブチレンサクシネート―アジペート共重合体及びブチレンアジペート―テレフタレート共重合体からなる群から選択された一つ以上を含む第2の樹脂成分と、を含む、請求項1に記載の壁紙。
【請求項7】
前記樹脂層は、前記第1の樹脂成分100重量部に対して、10重量部〜500重量部の前記第2の樹脂成分を含む、請求項6に記載の壁紙。
【請求項8】
前記樹脂層は、雲母、タルク及び粘土からなる群から選択された一つ以上の無機成分をさらに含む、請求項1に記載の壁紙。
【請求項9】
前記無機成分の平均直径が1.0nm〜100nmである、請求項8に記載の壁紙。
【請求項10】
前記樹脂層は、前記生分解性樹脂100重量部に対して5重量部〜20重量部の前記無機成分を含む、請求項8に記載の壁紙。
【請求項11】
前記樹脂層は可塑剤をさらに含む、請求項1に記載の壁紙。
【請求項12】
前記樹脂層は加工助剤をさらに含む、請求項1に記載の壁紙。
【請求項13】
前記樹脂層は滑剤をさらに含む、請求項1に記載の壁紙。
【請求項14】
前記樹脂層はフィラーをさらに含む、請求項1に記載の壁紙。
【請求項15】
前記樹脂層の表面に形成された印刷層をさらに含む、請求項1に記載の壁紙。
【請求項16】
前記樹脂層にエンボスパターンが与えられている、請求項1に記載の壁紙。
【請求項17】
基材シート上に、生分解性樹脂を含む樹脂組成物を使用して樹脂層を形成することを含む壁紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−506502(P2012−506502A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533114(P2011−533114)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006232
【国際公開番号】WO2010/050730
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(509286787)エルジー・ハウシス・リミテッド (49)
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
【住所又は居所原語表記】20,Yoido−dong,youngdungpo−gu,Seoul150−721,Republic of Korea
【Fターム(参考)】