説明

変圧器駆動装置

【課題】バースト動作モード時に音響ノイズを抑制することができ、かつ変圧器を安定に動作させることができる。
【解決手段】変圧器駆動装置は、ブリッジコントローラ1とブリッジ回路2とを備える。ブリッジコントローラ1は、バースト動作モード時には、電圧供給期間Tn内の最初と最後のパルス電圧Vh1,Vh2のパルス幅をそれ以外のパルス電圧のパルス幅よりも狭くし、かつ各パルス電圧の後のパルス休止期間の長さを略一定にするため、トランス3内の磁束の流れIのピーク値が最終ピーク値よりも高くなるおそれがなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器を駆動する変圧器駆動装置に関する。特に本発明では、変圧器の一次側巻線に対してパルス電圧を所定期間連続的に供給する動作と、パルス電圧の供給を所定期間停止する動作とを、交互に切替えて行うバースト動作モードを備えた変圧器駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルを組み込んだ液晶モニタや液晶TV等の液晶表示装置が急速に普及している。液晶自体は発光する性質を持たないため、液晶パネルの背後にバックライト装置を設置して液晶パネルを照明する必要がある。バックライト装置は、蛍光管や冷陰極放電管を用いて構成されることが多い。
【0003】
冷陰極放電管は、30kHz〜65kHzの高周波交流電圧により駆動される。この駆動には、例えば、ブリッジ回路と高周波変圧器(以下、トランス)が用いられる。
【0004】
トランスは、一次側巻線と二次側巻線を磁気結合したものであり、一次側巻線に流れる電流の方向を所定の周期で切替えることにより、二次側巻線に誘導電力を誘起させることができる。
【0005】
トランスの駆動方法として、一次側巻線にパルス電圧を連続的に供給する期間と、パルス電圧の供給を停止する期間とを交互に切替えるバースト動作モードを設ける場合がある。このバースト動作モードは、例えば、液晶表示装置の輝度調整を行う場合などに用いられる。バースト動作モードでは、冷陰極放電管の輝度は上述した両者の期間の比率に応じた、視覚的に中くらいの明るさとなる。
【0006】
図9はトランスをバースト動作モードで駆動した場合の一次側巻線の電圧Vとトランス内の磁束の流れIとの関係を示すグラフである。バースト動作モードでの一周期は、パルス電圧が連続的に供給される電圧供給期間Tnと、パルス電圧の供給が停止される電圧遮断期間Tfとを合わせた期間(Tn+Tf)であり、この(Tn+Tf)の期間は一定である。すなわち、バースト動作モードにおけるバースト周波数は一定である。電圧供給期間Tn内は、トランスの一次側巻線に交流電圧Vが供給される。この交流電圧Vは、一定周波数の矩形波電圧であり、例えば正の半波形により開始される。
【0007】
トランス内の磁束の流れIは、一次側巻線に供給される交流電圧Vに直ちに従うのではなく、交流電圧Vを供給してからの経過時間に応じて磁束の流れIの大きさが変化する。より具体的には、交流電圧Vの半周期の最初から、磁束の流れIが徐々に大きくなり、半周期の終りが近づくにつれて、磁束の流れIは本来のピーク値を超える場合がある。特に、電圧供給期間内の最初のパルス電圧が一次側巻線に供給されると、そのパルス電圧が終了する間際には、磁束の流れIは本来のピーク値の約2倍の大きさにまで達することもある。このような磁束の流れIの過上昇は、トランスや一次側巻線に接続されたスイッチ回路などの抵抗損失に依存するものであり、時間の経過とともに減少し、やがて消滅する。このように、一次側巻線に交流電圧Vを供給し始めてから所定期間内のみ、磁束の流れIの過上昇が生じる。
【0008】
また、電圧供給期間から電圧遮断期間に切り替わる直前の最後のパルス電圧が一次側巻線に供給されると、その後、磁束の流れIは徐々に小さくなって最終的にゼロに収束するが、トランスの誘導性成分とインピーダンスによっては、電圧供給期間の後に続く電圧遮断期間になっても、磁束の流れIが生じるおそれがある。この結果、電圧遮断期間の実質的な長さが短縮してしまう。この場合、その後に電圧供給期間が開始されるまでに磁束の流れIが完全にゼロにならないおそれもある。磁束の流れIがゼロでない状態で、次の電圧供給期間が開始されると、磁束の流れIのピークがさらに上昇する結果となる。このため、トランスの構造によっては、磁束の流れIのピークが異常に高くなってしまい、トランスコアの飽和が生じるおそれがある。
【0009】
また、磁束の流れIのピークが高くなると、トランスコア内の歪みや磁気的な力によって、コアの機械的な長さが変化したり、コアの機械的な振動が生じ、これによって、バースト周波数の周波数帯域に依存する広い帯域の音響ノイズが発生する。このような音響ノイズが液晶モニタや液晶TV等の商用のバックライト装置で発生すると、非常に耳障りであり、ユーザに不快感を与えてしまう。
【0010】
上述した音響ノイズは、磁場の強さと磁束の流れIに強く依存するものであり、音響ノイズを削減する取り組みは従来からなされている。その一つはソフトスタートである。ソフトスタートとは、トランスの一次側巻線に供給するパルス状の交流電圧のパルス幅を徐々に広げる手法である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−300112号公報(特に図3と図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した特許文献1の手法によれば、交流電圧のパルス幅が本来のパルス幅に達するまでに数多くのパルス数を必要とするため、トランスの起動時間(スタート時間)が長くなってしまう。このため、バースト周波数を高くすると、起動時間後の電圧供給期間を短縮せざるを得ず、電圧供給期間内にパルス幅が本来のパルス幅にまで達しなくなって、バースト動作モードでの安定した動作が保証されなくなる。
【0013】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、バースト動作モード時に音響ノイズを抑制でき、かつ変圧器を安定に動作させることができる変圧器駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様によれば、互いに磁気結合された一次側巻線および二次側巻線を有する変圧器を駆動する変圧器駆動装置において、
前記一次側巻線に対してパルス電圧を連続的に供給する電圧供給期間と、前記一次側巻線への前記パルス電圧の供給を停止するバースト駆動が可能であり、前記電圧供給期間内にパルス信号を生成するブリッジコントローラと、
前記ブリッジコントローラにて生成されたパルス信号に基づいて、前記パルス電圧を生成するブリッジ回路と、を備え、
前記ブリッジコントローラは、前記電圧供給期間内の最初および最後に供給される前記パルス電圧のパルス幅が、前記電圧供給期間内の最初および最後以外の前記パルス電圧のパルス幅よりも狭くなるようなパルス信号を生成することを特徴とする変圧器駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バースト動作モード時に音響ノイズを抑制することができ、かつ変圧器を安定に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る変圧器駆動装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】ブリッジ回路2にて生成されるパルス電圧Vとトランス3内の磁束の流れIの波形の一例を示す図。
【図3】電圧供給期間Tn内の最初と最後のパルス電圧Vh1,Vh2の電圧波形を示す図。
【図4】ブリッジコントローラ1の内部構成を詳細に示した本実施形態に係る変圧器駆動装置のブロック図。
【図5】図4中の信号A〜Eのタイミング図。
【図6】マイクロプロセッサ11の処理動作の一例を示すフローチャート。
【図7】電圧供給期間Tn内に一次側巻線4に供給される最初と最後のパルス電圧Vh1,Vh2の極性がいずれも正の例を示す図。
【図8】図6に対応する信号A〜E’のタイミング図。
【図9】トランスをバースト動作モードで駆動した場合の一次側巻線の電圧Vとトランス内の磁束の流れIとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る変圧器駆動装置について、詳細に説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る変圧器駆動装置の概略構成を示すブロック図である。図1の変圧器駆動装置は、ブリッジコントローラ1とブリッジ回路2とを備えており、ブリッジ回路2には、高周波変圧器(以下、トランス)3の一次側巻線4が接続されている。トランス3の二次側巻線5には、例えば液晶表示装置のバックライト装置として用いられる冷陰極管6が接続されている。
【0019】
ブリッジコントローラ1は、電圧供給期間Tnにおいて、トランス3の一次側巻線4に対して加えられる複数のパルス電圧の元となる信号(パルス信号)を生成する。ブリッジ回路2は、ブリッジコントローラ1にて生成された信号に基づいてパルス電圧を生成して、一次側巻線4に供給する。
【0020】
図2はブリッジ回路2にて生成されるパルス電圧Vとトランス3内の磁束の流れIの波形の一例を示す図である。図示のように、本実施形態は、電圧供給期間Tn内の最初と最後のパルス電圧Vh1,Vh2のパルス幅を、それ以外のパルス電圧Vfのパルス幅よりも狭くしている。最初と最後のパルス電圧Vh1,Vh2のパルス幅はそれ以外のパルス電圧Vfのパルス幅の半分に設定すると良いが、必ずしも半分でなくてもよい。
【0021】
電圧供給期間Tn内の最初のパルス電圧Vh1のパルス幅を狭くすることにより、磁束の流れIのピーク値7が常に略一定となり、図9で示したように、磁束の流れが最終的なピーク値の2倍程度にまで上昇する不具合は起きなくなる。
【0022】
磁束の流れIのピーク値を抑制できる理由は、図9で示したように、パルス電圧Vのパルス幅が長いほど磁束の流れIが大きくなる性質があることから、パルス幅を狭くすれば、磁束の流れIのピーク値は確実に低くなるためである。
【0023】
また、電圧供給期間Tn内の最後のパルス電圧Vh2のパルス幅を狭くすることにより、電圧供給期間Tnの終了間際での磁束の流れIのピーク値が抑制されて、その結果として磁束の流れIが電圧供給期間Tn内にほぼゼロに収束し、図9で示したように、電圧遮断期間Tf内に入っても磁束の流れIが発生し続ける不具合が起きなくなる。
【0024】
また、本実施形態では、パルス電圧が発生して、次のパルス電圧が発生するまでのパルス休止期間の長さを略一定にしている。すなわち、パルス休止期間が略一定になるように、電圧供給期間Tn内の最初のパルス電圧のタイミングを設定する。また、電圧供給期間Tn内の最後のパルス電圧Vh2が消滅した後、パルス休止期間が経過した後に電圧遮断期間Tfに切替える。以下、各パルス電圧の波形を図3を用いて詳細に説明する。同図の各波形は、極性が正の場合の波形であり、これらの波形Vf、Vh1、Vh2は後述するマイクロプロセッサから生成されるパルス信号の波形F、H1、H2に一致する。
【0025】
図3(a)は全幅のパルス電圧Vfの電圧波形であり、電圧供給期間Tn内の最初と最後以外のパルス電圧Vfの電圧波形である。図3(b)は最初のパルス電圧、図3(c)は最後のパルス電圧Vh2の電圧波形をそれぞれ示している。ブリッジ回路2が生成するパルス電圧Vとブリッジコントローラ1が生成するパルス信号は同期しているため、図3では、パルス信号の符号を括弧書きで示している。
【0026】
電圧供給期間Tnは、それぞれ一つのパルスを含む周期的なパルス単位期間Tで区切られる。ブリッジコントローラ1内のマイクロプロセッサ11は、電圧供給期間Tn内の最初のパルス単位期間において、図3(b)に示すような、第1のパルス幅WHの第1のパルス信号H1を出力し、続く複数のパルス単位期間において、同図(a)に示すような、第1のパルス幅WHより広い第2のパルス幅Fの第2のパルス信号Fを出力し、最後のパルス単位期間において、同図(c)に示すような、前記第2のパルス幅Fより狭い第3のパルス幅(ここでは第1のパルスと同じパルス幅WH)の第3のパルス信号H2を出力する。図3(b)と図3(c)を見ればわかるように、最初のパルス単位期間Tに生成される第1のパルス信号H1は、パルス単位期間T内の後半側にパルスを含んでおり、最後のパルス単位期間Tに生成される第2のパルス信号H2は、パルス単位期間T内の前半側にパルスを含んでおり、パルスの生成タイミングが互いに異なっている。
【0027】
ブリッジコントローラ1は、第1〜第3のパルス信号H1,F,H2からなるパルス信号を含む信号Aを出力する。ブリッジ回路2はこの信号Aに同期させてトランス3の一次側巻線4に加えるパルス電圧を生成する。上述したように、第1のパルス信号H1と第2のパルス信号H2ではパルスの生成タイミングが異なるため、最初のパルス電圧Vh1は、全幅のパルス電圧Vfの後半側半分のタイミングで生成され、最後のパルス電圧Vh2は、全幅のパルス電圧Vfの前半側半分のタイミングで生成される。
【0028】
図3(b)に示すタイミングで最初のパルス電圧Vh1を生成することにより、各パルス電圧の間のパルス休止期間を略一定にすることができる。パルス休止期間が略一定になると、図2に示すように、トランス3内の磁束の流れIの波形はほぼ対称的な形状となり、ピーク値の大きさは略一定となる。
【0029】
また、図3(c)に示すタイミングで最後のパルス電圧Vh1を生成することにより、その後にパルス休止期間が経過した後に電圧遮断期間Tfに移行させることができる。これにより、電圧遮断期間Tfに入る前に、磁束の流れIをほぼゼロに収束させることが可能となる。
【0030】
上述したパルス電圧は、ブリッジ回路2で生成されるが、ブリッジ回路2はブリッジコントローラ1が生成した信号に同期して、直流レベルの変換を行ってパルス電圧を生成するため、実質的にはブリッジコントローラ1がパルス電圧のタイミング制御を行う。そこで、以下では、ブリッジコントローラ1の動作について詳細に説明する。
【0031】
ブリッジコントローラ1は、ソフトウェアまたはハードウェア、あるいはソフトウェアとハードウェアを組合わせて構成することができる。本実施形態では、ブリッジコントローラ1内において、パルス信号に対応する基本的な波形データをソフトウエアにより生成し、一部をハードウェアで構成した例について説明する。
【0032】
図4はブリッジコントローラ1の内部構成を詳細に示した本実施形態に係る変圧器駆動装置のブロック図、図5は図4中の信号A〜Eのタイミング図である。図4のブリッジコントローラ1は、マイクロプロセッサ11と、ANDゲート12,13と、インバータ14と、ROM20とを有する。
【0033】
マイクロプロセッサ11は、例えば図6に示すフローチャートに従って、図5(a)と図5(b)に示すようなタイミング波形の信号A,Bを生成する。信号Aはブリッジ回路2がパルス電圧Vh1、Vf、Vh2を生成するタイミングを規定する信号であり、信号Bはトランス3の一次側巻線4を駆動するパルス電圧の極性を規定するトグル信号である。
【0034】
信号Aは、電圧供給期間Tn内に出力される複数のパルス信号であり、最初のパルス信号H1はパルス幅が半幅であり、その後(N−2)個のパルス信号Fはパルス幅が全幅であり、最後のパルス信号H2はパルス幅が半幅である。これら一連のパルス信号は、図3に示すように周期Tのパルス単位期間にそれぞれ出力されるが、各T内においてパルスの前後にはパルス休止期間が設けられている。ここで、周期Tの各パルス信号を上記のような順で出力してつなげた場合、各パルス信号の間のパルス休止期間は略一定である。信号Bは、信号Aの周期Tの2倍の周期で出力されるトグル信号である。信号Bは、信号Aを基に、ブリッジ回路2にてトランス3に加える電圧の極性の正負を切り替えるために用いられる。信号Aに含まれるパルス信号は、電圧供給期間Tnのみ生成され、電圧遮断期間Tf内は常にローレベルとされる。
【0035】
以下、図6のフローチャートに従ってマイクロプロセッサ11の処理動作を説明する。なお、図6のフローチャートは、ROM20に格納されたプログラムであり、マイクロプロセッサ11はこのプログラムを読み出して実行する。
【0036】
まず、電圧供給期間Tn内のパルス信号の数を計測するための変数kを「1」に初期設定する(ステップS001)。そして、半幅のパルス信号H1を生成する(ステップS002)。
【0037】
次に、変数kを「1」だけインクリメントする(ステップS003)。そして、変数kが電圧供給期間Tn内のパルス信号の総数Nに達したか否かを判定する(ステップS004)。まだ達していなければ、パルス信号を生成してからパルス休止期間を経過した後に、全幅のパルス信号Fを生成する(ステップS005)。そして、ステップS003に戻る。
【0038】
上述したステップS004で、変数kが総数Nに達したと判定されると、半幅のパルス信号H2を生成する(ステップS006)。
【0039】
マイクロプロセッサ11は、上述したステップS002,S005,S006で生成されたパルス信号H1,H2,Fを、図5(a)の信号Aとして出力する。また、マイクロプロセッサ11は、信号Aの出力に同期させて、図5(b)に示す信号Bを出力する。
【0040】
ステップS006でパルス信号H2を生成した後、パルス休止期間を隔てて電圧遮断期間Tfに移行する(ステップS007)。
【0041】
電圧遮断期間Tfの経過後、バースト動作モードによるバースト駆動を終了するか否かを判定し(ステップS008)、終了しない場合はステップS001に戻り、終了する場合は図6の処理を終了する。
【0042】
図6のステップS002、S005およびS006でパルス信号を生成する際、各処理を行うたびにタイマ等を用いて、半幅および全幅のパルス信号を生成してもよいが、予め半幅および全幅のパルス信号に対応するデジタルデータをメモリ等に記憶しておき、必要に応じてメモリから読み出してもよい。即ち、第1〜第3のパルス信号H1,F,H2に対応する、図3に期間Tで示した範囲のディジタルデータをメモリに格納しておき、上記のように選択して順次出力するとよい。
【0043】
図1のANDゲート12,13は、信号Aと信号Bの論理積信号を生成する。この結果、ANDゲート12,13は、図5(c)に示す信号Cを生成する。一方、ANDゲート12,13は、信号Aと信号Bの反転信号との論理積信号を生成する。この結果、ANDゲート12,13は、図5(d)に示す信号Dを生成する。
【0044】
ブリッジ回路2は、ブリッジコントローラ1で生成された信号C,Dを用いて、図5(e)に示す信号Eを生成する。この信号Eは、信号Cを正極性で、かつ信号Dを負極性で合成した電圧信号である。即ち、ブリッジ回路2は、信号Cがハイレベルのとき信号Eが正極性のパルスとなるようにトランス3を駆動し、信号Dがハイレベルのときに信号Eが負極性のパルスとなるようにトランス3を駆動して、信号Eの電圧を生成する。信号Eに含まれる正極性および負極性のパルス電圧は、電圧供給期間Tn内に出力され、電圧遮断期間Tf内は信号Eの電圧レベルは接地電圧となる。
【0045】
ブリッジ回路2の内部構成には特に特徴はないため、本明細書では詳細な説明は省略するが、例えば、エンハンスト型FETやコンデンサなどを用いて構成することができる。ブリッジ回路2の回路方式は、フルブリッジ回路2とハーフブリッジ回路2のどちらでもよい。
【0046】
図2では、電圧供給期間Tn内に一次側巻線4に供給される最初のパルス電圧Vh1の極性が正で、最後のパルス電圧Vh2の極性が負の例を示したが、最初と最後のパルス電圧Vh1,Vh2の極性が同じでもよい。例えば、図7は電圧供給期間Tn内に一次側巻線4に供給される最初と最後のパルス電圧Vh1,Vh2の極性がいずれも正の例を示す図である。図7の場合も、最初と最後のパルス電圧Vh1,Vh2のパルス幅はそれ以外のパルス電圧のパルス幅よりも狭く設定されており、パルス休止期間も略同一である。これにより、図7の磁束の流れIのピーク値はほぼ一定となり、ピーク値が急上昇する不具合が起きなくなる。
【0047】
図2と図7のいずれの場合も、電圧供給期間Tn内の最後のパルス電圧Vh2が一次側巻線4に供給された後、パルス休止期間を挟んで電圧遮断期間Tfに移行するため、磁束の流れIは電圧供給期間Tn内にほぼゼロに収束する。
【0048】
ブリッジコントローラ1にて図8に示すような信号波形の信号C’とD’を生成するとき、図7に示す電圧波形信号E’が得られる。一つの電圧供給期間Tnにおけるパルス単位期間Tの数Nが偶数のときは、各信号波形は図5のようになり、トランス3の一次側巻線4に供給される電圧波形は図2のようになる。一方、Nが奇数のときには、各信号波形は図8のようになり、トランス3の一次側巻線4に供給される電圧波形は図7のようになる。
【0049】
このように、第1の実施形態では、バースト動作モードでトランス3を駆動する際、一次側巻線4に供給されるパルス電圧のパルス幅を常に一定するのではなく、電圧供給期間Tn内の最初と最後のパルス電圧Vh1,Vh2のパルス幅をそれ以外のパルス電圧のパルス幅よりも狭くし、かつ各パルス電圧間のパルス休止期間の長さを略一定にするため、トランス3内の磁束の流れIのピーク値が最終ピーク値よりも高くなるおそれがなくなる。したがって、トランス3から発生される音響ノイズを抑制できる。
【0050】
また、本実施形態では、電圧供給期間Tn内の最後のパルス電圧Vh2を一次側巻線4に供給してからパルス休止期間を挟んで電圧遮断期間Tfに切替えるため、電圧供給期間Tn内にトランス3内の磁束の流れIをほぼゼロに収束させることができ、電圧遮断期間Tfが短くても安定動作が可能となり、バースト周波数の高速化が可能となる。
【0051】
図4および図5では、マイクロプロセッサ11を用いてソフトウェアにより信号A,Bを生成する処理を説明したが、ASIC等のハードウェアで信号A,Bを生成してもよい。また、図4では、ANDゲート12,13とインバータ14により信号C,Dを生成しているが、信号C,Dの生成までを含めてマイクロプロセッサ11で行うようにして、ブリッジコントローラ1の内部構成をさらに簡易化してもよい。
【0052】
このように、ブリッジコントローラ1の主要な動作は、ソフトウェアで実現することが可能である。これにより、ブリッジコントローラ1の内部構成をワンチップマイコンなどの小規模の回路規模で実現でき、部品コストの削減と変圧器駆動装置の小型化が図れる。また、ROM20をEEPROMなどの書き換え可能なメモリとし、内部のプログラムあるいはプログラムを実行する際に用いられるパラメータを更新することで、バースト周波数や電圧供給期間Tn内のパルス電圧の数などを任意に変更でき、種々のサイズのトランス3等に適用可能となる。このようなプログラムの更新を入力装置を介して行えるようにしてもよい。
【0053】
上述した第1および第2の実施形態では、バースト動作モードでの電圧供給期間Tn内の最初と最後に一次側巻線4に供給されるパルス電圧のパルス幅を他のパルス電圧のパルス幅よりも狭くする例を説明したが、最初と最後のパルス電圧Vh1,Vh2のパルス幅は必ずしも半幅である必要はない。例えば、全幅の0.4〜0.6のパルス幅であれば、磁束の流れIのピーク値を抑制する効果が得られる。
【0054】
上述した第1および第2の実施形態は、バースト動作モードでトランス3を駆動する例を説明したが、バースト動作モードの他に、トランス3の一次側巻線4に定常的に交流電圧を供給する定常動作モードを設けてもよい。このようなバースト動作モードと定常動作モードの2つを設けることは、本発明の変圧器駆動装置を液晶モニタや液晶TV等の液晶表示装置のバックライト装置で用いる場合に特に有効である。例えば、液晶表示装置に表示する画像の種類や周囲の明るさによって、強く発光させる必要がある場合は定常動作モードで駆動し、あまり明るくする必要がない場合はバースト動作モードで駆動して省電力を図ることが考えられる。
【0055】
バースト動作モードと定常動作モードの選択は、ユーザが自ら行えるようにしてもよいし、自動化してもよい。自動化する場合は、液晶表示装置に送られてくる映像信号の内容を解析したり、周囲の明るさを検知するセンサの検出信号を取得したりして、自動的にモードを選択することが考えられる。ユーザが自らモード選択を行う場合は、液晶表示装置のメニュー画面にモード選択ボタンを表示させてもよいし、あるいはモード選択用の物理的な選択ボタンを設けてもよい。
【0056】
ブリッジコントローラ1は、定常動作モード時には、電圧遮断期間なしで、例えばバースト動作モード時の全幅のパルス信号が連続して一時側巻線4に供給されるように、全幅のパルス信号Fを連続的に生成する。
【0057】
上述した第1および第2の実施形態では、トランス3の二次側巻線5に冷陰極管6を接続する例を示したが、二次側巻線5に誘起された電力により駆動される対象物は冷陰極管6に限定されず、交流駆動される種々の電気機器が対象となりうる。
【0058】
上述したように、本発明に係る変圧器駆動装置の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、変圧器駆動装置の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0059】
また、変圧器駆動装置の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0060】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 ブリッジコントローラ
2 ブリッジ回路
3 高周波変圧器(トランス)
4 一次側巻線
5 二次側巻線
6 冷陰極管
11 マイクロプロセッサ
12,13 ANDゲート
14 インバータ
20 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに磁気結合された一次側巻線および二次側巻線を有する変圧器を駆動する変圧器駆動装置において、
前記一次側巻線に対してパルス電圧を連続的に供給する電圧供給期間と、前記一次側巻線への前記パルス電圧の供給を停止する電圧遮断期間とを交互に切替えるバースト駆動が可能であり、前記電圧供給期間内にパルス信号を生成するブリッジコントローラと、
前記ブリッジコントローラにて生成されたパルス信号に基づいて、前記パルス電圧を生成するブリッジ回路と、を備え、
前記ブリッジコントローラは、前記電圧供給期間内の最初および最後に供給される前記パルス電圧のパルス幅が、前記電圧供給期間内の最初および最後以外の前記パルス電圧のパルス幅よりも狭くなるように前記パルス信号を生成することを特徴とする変圧器駆動装置。
【請求項2】
前記ブリッジコントローラは、前記電圧供給期間内の最初および最後に供給される前記パルス電圧のパルス幅が、前記電圧供給期間内の最初および最後以外に供給される前記パルス電圧のパルス幅の1/2となるように前記パルス信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の変圧器駆動装置。
【請求項3】
前記電圧供給期間は、それぞれ一つのパルスを含む周期的なパルス単位期間で区切られており、
前記ブリッジコントローラは、前記電圧供給期間の最初のパルス単位期間において、第1のパルス幅のパルスが前記最初のパルス単位期間内の後半側に含まれるように第1のパルス信号を生成し、続く複数のパルス単位期間において、第1のパルス幅より広い第2のパルス幅の第2のパルス信号を生成し、最後のパルス単位期間において、前記第2のパルス幅より狭い第3のパルス幅のパルスが前記最後のパルス単位期間内の前半側に含まれるように第3のパルス信号を生成することを特徴とする請求項1または2に記載の変圧器駆動装置。
【請求項4】
前記ブリッジコントローラは、前記電圧供給期間内の個々のパルス電圧間のパルス休止期間が略等しくなるように前記パルス信号を生成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の変圧器駆動装置。
【請求項5】
前記ブリッジコントローラは、前記電圧供給期間および前記電圧遮断期間を持つバースト動作モードと、前記電圧遮断期間なしで連続的に前記パルス電圧を前記一次側巻線に供給する定常動作モードとを切替可能であり、前記バースト動作モードでは、前記電圧供給期間内の最初および最後に供給される前記パルス電圧のパルス幅が、前記電圧供給期間内の最初および最後以外の前記パルス電圧のパルス幅よりも狭くなり、前記定常動作モードでは、前記パルス電圧のパルス幅が一定になるように前記パルス信号を生成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の変圧器駆動装置。
【請求項6】
前記ブリッジコントローラは、前記定常動作モードにおける前記パルス電圧のパルス幅が、前記バースト動作モードにおける前記電圧供給期間内の最初および最後以外に供給される前記パルス電圧のパルス幅と略等しくなるように前記パルス信号を生成することを特徴とする請求項5に記載の変圧器駆動装置。
【請求項7】
前記二次側巻線に誘起された誘導電流により冷陰極管を駆動することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の変圧器駆動装置。
【請求項8】
前記二次側巻線に誘起された誘導電流により平面表示装置のバックライトを駆動することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の変圧器駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−11730(P2010−11730A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146892(P2009−146892)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】