説明

変形度測定方法

【課題】検査品の変形度を簡単に測定できる変形度測定方法を提供する。
【解決手段】本発明は、検査品5における検査部52の変形度を測定する変形度測定方法を対象とする。検査部52に、平面を特定可能な3点を含む4点以上の測定位置Pを設定する一方、各測定位置Pに対応して支持部2がそれぞれ設けられた検査台11を準備する。検査品5を、その検査部52を下向きに配置しつつ、各測定位置Pを各支持部2に支持させるように載置する。その載置状態において、各測定位置Pにおける支持部2との間の間隔のうち、最大の間隔を変形度として測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検査品の検査部における平面度等の変形度を測定する変形度測定方法およびその関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
金属加工製品における所定部(検査部)の平面度を測定する平面度測定装置としては、特許文献1に示す装置が周知である。
【0003】
この装置は、装置上面に水平方向にスライド自在に設けられた下向きの平坦度測定器(レーザー式変位センサ)と、装置上面においてプレート(検査品)を支持するプレート支持ピンと、支持ピンによって支持されるプレートの重力によるたわみを防止するアクチュエータと、アクチュエータの押し上げ力を調整する圧力調整部と、測定器によって得られた距離データを演算処理して平坦度(平面度)を演算する演算処理部と、を備えている。そしてこの装置では、プレート支持ピンによってプレートを支持し、そのプレートの上面に沿って測定器を移動させつつ、測定器とプレート上面との間の距離を計測し、その距離を演算処理してプレート上面の平面度を算出するようにしている。
【特許文献1】特開平11−201748号(特許請求の範囲、図1−4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示す従来の平面度測定装置では、レーザー式変位センサを介して得られる多大な距離データを基に、複雑な演算処理を行って平面度を求めているため、平面度を求めるのが困難であるという問題を抱えている。
【0005】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、検査品における平面度等の変形度を簡単に測定できる変形度測定方法およびその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を要旨とするものである。
【0007】
[1] 検査品における検査部の変形度を測定する変形度測定方法であって、
検査部に、平面を特定可能な3点を含む4点以上の測定位置を設定する一方、各測定位置に対応して支持部がそれぞれ設けられた検査台を準備しておき、
検査品を、その検査部を下向きに配置しつつ、各測定位置を各支持部に支持させるように載置し、
その載置状態において、各測定位置における支持部との間の間隔のうち、最大の間隔を変形度として測定するようにしたことを特徴とする変形度測定方法。
【0008】
[2] 検査品を検査台に載置するに際して、検査品を検査台の上方から降下させて検査台に載置する前項1に記載の変形度測定方法。
【0009】
[3] 検査品における検査部の反対側が平坦でない形状を有している前項1または2に記載の変形度測定方法。
【0010】
[4] 検査品が金属加工品をもって構成される前項1〜3のいずれか1項に記載の変形度測定方法。
【0011】
[5] 検査品がアルミニウム製の鍛造加工品をもって構成される前項1〜4のいずれか1項に記載の変形度測定方法。
【0012】
[6] 前項1〜5のいずれか1項に記載の変形度測定方法によって検査品の検査部における変形度を測定し、その実際の変形度を、予め設定された基準の変形度と比較して、当該検査品の良否を判定することを特徴とする変形度検査方法。
【0013】
[7] 検査品における検査部の変形度を測定する変形度測定装置であって、
検査部に、平面を特定可能な3点を含む4点以上の測定位置を設定する一方、各測定位置に対応して支持部がそれぞれ設けられた検査台と、
検査品を、その検査部を下向きに配置しつつ、各測定位置を各支持部に支持させるように載置した状態で、各測定位置における支持部との間の間隔を測定する間隔測定手段と、
間隔測定手段によって測定された間隔のうち、最大の間隔を変形度として特定する変形度特定手段と、を備えたことを特徴とする変形度測定装置。
【0014】
[8] 間隔測定手段により間隔を測定する際に、検査品を検査台側に押し付ける検査品押付手段を備える前項7に記載の変形度測定装置。
【0015】
[9] 前項7または8に記載の変形度測定装置と、
変形度測定装置によって測定された実際の変形度を、予め設定された基準の変形度と比較して、当該検査品の良否を判定する良否判定手段と、を備えることを特徴とする変形度検査装置。
【0016】
[10] 前項9に記載の変形度検査装置と、
複数の検査品が格納されるとともに、検査品を変形度検査装置に順次送り込む検査品搬入装置と、
変形度検査装置により検査された検査品を順次取り込む検査品搬出装置と、を備えたことを特徴とする変形度検査設備。
【0017】
[11] 変形度測定装置によって測定された実際の変形度を、予め設定された基準の変形度と比較して、当該検査品の良否を判定する良否判定手段と、
不良と判定された検査品を他の検査品とは異なる箇所に排出する不良品排出手段と、を備える前項10に記載の変形度検査設備。
【0018】
[12] 検査品における検査部の平面度を測定する平面度測定方法であって、
検査部に、平面を特定可能な3点を含む4点以上の測定位置を設定する一方、各測定位置に対応して支持部がそれぞれ設けられた検査台を準備しておき、
検査品を、その検査部を下向きに配置しつつ、各測定位置を各支持部に支持させるように載置し、
その載置状態において、各測定位置における支持部との間の間隔のうち、最大の間隔を平面度として測定するようにしたことを特徴とする平面度測定方法。
【0019】
[13] 前項12に記載の平面度測定方法によって検査品における検査部の平面度を測定し、その実際の平面度を、予め設定された基準の平面度と比較して、当該検査品の良否を判定することを特徴とする平面度検査方法。
【0020】
[14] 検査品における検査部の平面度を測定する平面度測定装置であって、
検査部に、平面を特定可能な3点を含む4点以上の測定位置を設定する一方、各測定位置に対応して支持部がそれぞれ設けられた検査台と、
検査品を、その検査部を下向きに配置しつつ、各測定位置を各支持部に支持させるように載置した状態で、各測定位置における支持部との間の間隔を測定する間隔測定手段と、
間隔測定手段によって測定された間隔のうち、最大の間隔を平面度として特定する平面度特定手段と、を備えたことを特徴とする平面度測定装置。
【0021】
[15] 前項14に記載の平面度測定装置と、
平面度測定装置によって測定された実際の平面度を、予め設定された基準の平面度と比較して、当該検査品の良否を判定する良否判定手段と、を備えることを特徴とする平面度検査装置。
【発明の効果】
【0022】
発明[1]の変形度測定方法によれば、各測定位置における支持部との隙間のうち、最大隙間を変形度として測定するものであるため、最大隙間を測定するだけで簡単に、変形度を求めることができる。
【0023】
発明[2]の変形度測定方法によれば、検査品を検査台に自然に載置した状態、つまり変形度の測定を適切に行える姿勢(状態)に、確実に配置することができる。
【0024】
発明[3]の変形度測定方法によれば、複雑な形状の検査品に対しても、変形度を確実に測定することができる。
【0025】
発明[4][5]の変形度測定方法によれば、検査品を検査台に安定した状態に載置でき、変形度を正確に測定することができる。
【0026】
発明[6]の変形度検査方法によれば、検査品における変形度の良否を正確に判定することができる。
【0027】
発明[7]の変形度測定装置によれば、変形度を簡単に求めることができる。
【0028】
発明[8]の変形度測定装置によれば、検査品を検査台に安定させて配置することができる。
【0029】
発明[9]の変形度検査装置によれば、検査品における変形度の良否を正確に判定することができる。
【0030】
発明[10]の変形度検査設備によれば、変形度を簡単に求めることができる。
【0031】
発明[11]の変形度検査設備によれば、検査品の良品/不良品の選別を簡単に行うことができる。
【0032】
発明[12]の平面度測定方法によれば、平面度を簡単に求めることができる。
【0033】
発明[13]の平面度検査方法によれば、検査品における平面度の良否を正確に判定することができる。
【0034】
発明[14]の平面度測定装置によれば、平面度を簡単に求めることができる。
【0035】
発明[15]の平面度検査装置によれば、検査品における平面度の良否を正確に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1はこの発明の一実施形態である平面度検査装置(1)が適用された平面度検査設備を示すブロック図である。同図に示すように、本実施形態の平面度検査設備は、平面度検査装置(1)と、その検査装置(1)の上流側に配置される検査品搬入装置(6)と、平面度検査装置(1)の下流側に配置される検査品排出装置(7)と、各装置(1)(6)(7)間で検査品を移載する移載装置(8)(9)と、を備えている。そして後に詳述するように、検査品搬入装置(6)に格納された検査品としての複数のピストンボディ(5)が、移載装置(8)によって順次、検査装置(1)に搬送されて、ピストンボディ(5)における検査部の平面度(簡易平面度)が検査される。さらに検査装置(1)により検査されたピストンボディ(5)が、移載装置(9)によって順次、検査品搬出装置(7)へと搬出される。
【0037】
この検査設備で検査されるピストンボディ(5)は図6,7に示すように、アルミニウム合金製の鍛造加工品により構成されており、カーエアコン用のスクロール型コンプレッサ部品の双頭ピストンとして用いられる。このピストンボディ(5)は、円柱体の周胴部中間に凹陥部が設けられた形状を有し、凹陥部の両側に検査部(52)(52)が設けられるとともに、凹陥部の軸心方向両側には、膨出部(55)(55)が形成されている。本実施形態ではピストンボディ(5)における検査部(52)の平面度(平面度検査用数値)を測定するが、平面度を測定するに際して、両側の検査部(52)(52)にそれぞれ3点ずつ計6点の測定位置(P)を設定して後述するように、各測定位置(P)において所定の計測を行う。なお本実施形態においては、両側の検査部(52)(52)を合わせた領域全体の平面度を検査するものであり、両側の検査部(52)(52)のそれぞれの平面度を検査するものではない。
【0038】
検査部(52)の測定位置(P)は、検査装置(1)により検査される位置である。つまり測定位置(P)はそれ自体、特有の構成を有するものではなく、検査部(52)の一部によって構成されている。なお図6,7においては発明の理解を容易にするため、測定位置(P)を黒点で図示している。
【0039】
本発明において、検査部(52)の測定位置(P)は、平面を特定可能な3点を含む4点以上の位置、換言すれば検査品等のピストンボディ(5)を3点支持可能な3点を含む4点以上の位置、または、ピストンボディ(5)等の検査品をその検査部(52)を下向きに配置した際の平面視状態において、直線上に配置されない3点を含む4点以上の位置に設定する必要がある。さらに検査精度を向上させるために、複数の測定位置(P)は互いに離散した位置に設定するのが好ましい。
【0040】
図2〜5に示すように平面度検査装置(1)は、定盤とも称される検査台(11)が設けられている。検査台(11)には、ピストンボディ(5)における両側の検査部(52)(52)に対応して、両側ブロック(12)(12)が設けられている。さらに両側ブロック(12)(12)間には、ピストンボディ(5)の膨出部(55)(55)間に対応して、中央ブロック(14)が設けられて、両側ブロック(12)(12)間における中央ブロック(14)の両側に、膨出部収容凹部(15)(15)が形成されている。
【0041】
検査装置(1)の両側ブロック(12)には、ピストンボディ(5)の各測定位置(P)に対応して、支持部としての支持ピン(2)がそれぞれ設けられている。
【0042】
各支持ピン(2)は、リニアゲージセンサ(3)のスピンドルによって構成されている。本実施形態においてニアゲージセンサ(3)は、ハード的に間隔測定手段を構成している。このリニアゲージセンサ(3)は、初期位置(初期状態)から変位量測定方向(上方向)に突出可能なスピンドル(支持ピン2)と、そのスピンドルの突出量(隙間寸法)を検出する変位量検出手段(図示省略)とを備えている。
【0043】
各スピンドル(各支持ピン2)は初期状態において、検査台(11)における両側ブロック(12)(12)の上面よりも少量上方に突出した状態にそれぞれ配置されている。なおこの初期状態において、各支持ピン(2)の先端は同一の水平面上に配置されている。
【0044】
本実施形態において、ピストンボディ(5)をその検査部(52)(52)を下向きにして両側ブロック(12)(12)に対向させた状態で検査台(11)に載置した際には、ピストンボディ(5)の測定位置(P)のみが検査台(11)の支持ピン(2)に接触支持されて、ピストンボディ(5)の測定位置(P)以外の領域は、検査台(11)に対し非接触状態となる。さらに測定位置(P)のいずれかが、支持ピン(2)に対し非接触で隙間が形成される場合には、支持ピン(2)を上方へ突出させて測定位置(P)に当接させることにより、その突出量に基づいて、測定位置(P)と初期状態の支持ピン(2)との間の隙間寸法(変位量)を測定できるようになっている。
【0045】
なおピストンボディ(5)を載置した状態においては、ピストンボディ(5)の膨出部(55)(55)が検査台(11)の膨出部収容凹部(15)(15)内に嵌合されるとともに、膨出部(55)(55)間に中間ブロック(14)が嵌合されている。
【0046】
図2,5に示すように検査装置(1)における検査台(11)の上方には、検査品押付手段としてのピストンボディ押付体(16)が設けられている。この押付体(16)は、昇降駆動自在に構成されており、下端に圧接体(17)が設けられている。そしてピストンボディ(5)が検査台(11)上に載置された状態で、押付体(16)が降下することにより、圧接体(17)がピストンボディ(5)に圧接して、ピストンボディ(5)が所定の圧力で下方に押し込まれるようになっている。
【0047】
図1に示すように検査品搬入装置(6)は、周知のパーツフィーダ等によって構成される。この検査品搬入装置(6)は、格納された多数のピストンボディ(5)を、検査台(11)に載置する際の姿勢と同じ姿勢で1列に整列させて順次、排出部(61)に排出できるようになっている。
【0048】
また検査品搬出装置(7)は、周知の部品搬送装置等によって構成されており、検査済のピストンボディ(5)を順次受け取って、所定の良品排出部へと搬送するようになっている。この検査品搬出装置(7)には、不良品排出手段(71)が設けられており、詳述するように、検査装置(1)によって不良と判定されたピストンボディ(5)が搬出装置(71)に搬送される際には、当該ピストンボディ(5)が、不良品排出手段(71)によって、上記の良品排出部とは異なる不良品回収部に排出(回収)されるようになっていている。なお不良品排出手段(71)はハード的には例えば、不良と判定されたピストンボディ(5)を、不良品回収部に押し出す押出機構等によって構成されている。
【0049】
移載装置(8)は、搬入装置(6)から排出されたピストンボディ(5)を検査装置(1)の検査台(11)に移載するものである。
【0050】
移載装置(8)は図8に示すように、ピストンボディ(5)の両膨出部(55)(55)に対応して、垂直に配置される一対の移載アーム(81)(81)によって構成されている。この一対の移載アーム(81)(81)の上端部には、U字状に切り欠かれた支持部(82)(82)がそれぞれ設けられており、両支持部(82)(82)にピストンボディ(5)の両膨出部(55)(55)が支持されることにより、ピストンボディ(5)が一対の移載アーム(81)(81)に保持されるようになっている。さらに一対の移載アーム(81)(81)は、搬入装置(6)および検査装置(1)間を往復移動自在に構成されるとともに、上下方向に昇降自在に構成されている。そしてこの一対の移載アーム(81)(81)は初期状態において、搬入装置(6)における排出部(61)の下方に配置されており、その状態から上昇されると、排出部(61)に配置されたピストンボディ(5)の両膨出部(55)(55)が一対の移載アーム(81)(81)の支持部(82)(82)に支持されて、ピストンボディ(5)が一対の移載アーム(81)(81)に保持されるようになっている。さらにその保持状態で、一対の移載アーム(81)(81)が検査装置(1)の検査台(11)の上方まで移動して下方に降下すると、一対の移載アーム(81)(81)からピストンボディ(5)が検査台(11)に移載されるようになっている。
【0051】
また検査装置(1)から排出装置(7)にピストンボディ(5)を移載する移載装置(9)も上記と同様な一対の移載アーム(81)(81)によって構成されている。そしてこの一対の移載アーム(81)(81)は初期状態において、検査台(11)の下方に配置されており、その状態から上昇されると、検査台(11)からピストンボディ(5)が一対の移載アーム(81)(81)に移載されて保持されるようになっている。さらにその保持状態で、一対の移載アーム(81)(81)が搬出装置(7)まで移動して下方に降下すると、ピストンボディ(5)が一対の移載アーム(81)(81)から搬出装置(7)に移載されるようになっている。
【0052】
なお移載装置(8)(9)を構成する揺動アーム(81)は、ピストンボディ(5)を移載した後、ピストンボディ(5)の平面度検査が行われてる間にそれぞれ初期位置(初期状態)に戻るようになっている。
【0053】
一方、本実施形態において、検査装置(1)、搬入装置(6)および搬出装置(7)は、パーソナルコンピュータ等によって構成される制御装置(図示省略)をそれぞれ備えており、各制御装置によって、検査装置(1)、搬入装置(6)および搬出装置(7)の動作がそれぞれ制御される。さらに各制御装置は、通信手段を介して接続されており、各制御装置間において信号の送受信を行うことにより、検査設備全体として統括的な動作が行われて、後に詳述する動作が自動的に行われる。
【0054】
なお移載装置(8)(9)の動作は例えば、検査装置(1)や搬入搬出装置(6)(7)の制御装置によって制御するようにしても良いし、移載装置(8)(9)の動作制御用に別途、制御装置を設けるようにしても良い。
【0055】
また検査装置(1)は後述するように、各測定位置(P)での隙間を測定する処理、各隙間から最大隙間を選択し平面度として特定する処理、平面度に基づいて合否を判定する処理等を行うが、これらの処理は、制御装置の指令に従って行われる。つまり本実施形態において、ソフト的には上記の隙間を測定する処理を行う制御装置の機能(プログラム)によって隙間測定手段が構成され、上記の平面度を特定する処理を行う制御装置の機能によって、平面度特定手段(変形量特定手段)が構成され、さらに上記の合否を判定する処理を行う制御装置の機能によって良否判定手段が構成される。
【0056】
以上の構成の平面度検査設備において、ピストンボディ(5)の検査部(52)における平面度を検査する場合には、まず搬入装置(6)に格納された複数のピストンボディ(5)が順次排出部(61)に送り出されるとともに、排出部(61)に配置されたピストンボディ(5)が上記したように、移載装置(8)によって検査装置(1)の検査台(11)に移載される。移載されたピストンボディ(5)は、その検査部(52)の各測定位置(P)が、検査台(11)における初期状態の各支持ピン(2)に支持された状態で検査台(11)上に載置される。この載置状態では既述したように、ピストンボディ(5)における測定位置(P)以外の領域は、検査台(11)に対し非接触状態となっている。
【0057】
なお移載装置(8)によってピストンボディ(5)を検査台(11)に載置する際には、ピストンボディ(5)を検査台(11)の上方から垂直に降下させて、検査台(11)に載置することにより、後述するようにピストンボディ(5)を自然な載置状態(適切な測定姿勢)に確実に配置できて、より正確に平面度を測定することができる。
【0058】
また本実施形態においては、検査台(11)に載置されたピストンボディ(5)を少量リフトアップして降下させるリフトアップ機構を設けて、ピストンボディ(5)を検査台(11)に載置した後、リフトアップ機構でピストンボディ(5)を上下動させることによっても、ピストンボディ(5)を自然な載置状態(適切な測定姿勢)に配置することができる。
【0059】
こうして検査台(11)上にピストンボディ(5)が載置された後、押付体(16)が降下して、その押付体(16)によってピストンボディ(5)が所定の圧力で下方に押し込まれる。
【0060】
ここで本実施形態において、ピストンボディ(5)は、その測定位置(P)のみが、初期状態の支持ピン(2)に支持されるようにしているため、6点の測定位置(P)のうち少なくとも3点の測定位置(P)が初期状態の支持ピン(2)に接触している。換言すれば、検査部(52)が理想の平面でない限り、各測定位置(P)のいずれかの位置において、測定位置(P)と初期状態の支持ピン(2)との間に隙間が形成される。そこで本実施形態においては、各測定位置(P)における初期状態の支持ピン(2)との間の隙間(変位量)のうち、最大の隙間を平面度として規定している。さらにその平面度に基づいて、ピストンボディ(5)の検査部(52)における平面度の合否(良否)を判定するようにしている。
【0061】
すなわち、ピストンボディ(5)を検査台(11)に載置して押付体(16)によって押し付けた状態において、各支持ピン(2)が、各測定位置(P)に当接するまで上方へ突出移動し、その突出量に基づいて、各測定位置(P)における初期状態の支持ピン位置(初期支持位置)との間の隙間(変位量)が測定される。こうして測定された隙間のうち、最大の隙間が当該ピストンボディ(5)の平面度として特定されて、制御装置の記憶部に記憶される。
【0062】
例えば本実施形態において図7に示すように、6点の測定位置をそれぞれ「P1」〜「P6」としたき、図9に示すように各測定位置(P1)〜(P6)での隙間が「0(mm)」「0」「0」「0」「0.02mm」「0.03mm」であった場合、これらの隙間のうち、最大の隙間、つまり測定位置(P6)の隙間が、当該ピストンボディ(5)の平面度として特定されて、制御装置の記憶部に記憶される。
【0063】
こうして平面度を測定した後、検査装置の制御装置は、実測隙間から求められた実際の平面度と、予め設定された基準の平面度(しきい値)とが比較されて、実際の平面度が基準の平面度を超えない場合、換言すれば実際の平面度が基準の平面度以下の場合には、当該ピストンボディ(5)の検査部(52)における平面度が合格であると判定する。例えば図9に示すように予め設定される基準の平面度が「0.05mm」の場合には、実際の平面度が「0.03mm」であるから、基準の平面度以下となり、当該ピストンボディ(5)は合格(良品)と判定される。
【0064】
なお参考までに本実施形態において、基準の平面度(しきい値)は、0.05〜0.3mm、好ましくは0.1mm以下に設定するのが良い。
【0065】
一方図10に示すように、各測定位置(P1)〜(P6)の隙間が「0」「0」「0.03mm」「0」「0.04mm」「0.06mm」となった場合には、その最大隙間の「0.06mm」が当該ピストンボディ(5)の平面度として、制御装置に取り込まれる。そして制御装置において、実際の平面度「0.06mm」が基準の平面度「0.05mm」と比較される。この場合、実際の平面度が基準の平面度を超えているため、当該ピストンボディ(5)の平面度が不合格(不良品)と判定される。
【0066】
こうして検査装置(1)によるピストンボディ(5)の検査が完了すると、押付体(16)が上昇するとともに、各支持ピン(2)が初期状態に戻った後、ピストンボディ(5)が移載装置(6)によって搬出装置(5)へと搬送される。
【0067】
搬出装置(5)に搬送されたピストンボディ(5)は、良品(合格品)の場合には、所定の良品排出部に排出される一方、不良品(不合格品)の場合には、不良品回収部に回収される。すなわち搬出装置(7)の制御装置は、上記検査装置の制御装置からの情報に基づき、不良品排出手段(71)を制御することにより、不合格と判定されたピストンボディ(5)を、良品とは異なる所定の不良品回収部に回収させる。
【0068】
このように本実施形態の検査設備においては、上記のピストンボディ(5)の検査および良品/不良品の選別が順次連続して行われる。
【0069】
以上のように本実施形態の検査設備における平面度検査装置(1)によれば、ピストンボディ(5)の各測定位置(P)と、各測定位置(P)を支持する各支持ピン(2)との間の隙間を測定し、各隙間のうち最大隙間寸法を平面度として用いるものである。このように各測定位置(P)における最大隙間を選定するだけで、平面度を特定することができるため、従来のように各測定位置での多数の位置データを基に複雑な演算処理を行って、平面度を算出する場合と比較して、平面度を簡単に測定することができる。
【0070】
さらに本実施形態においては、測定された平面度を基準の平面度と比較して、良否を判定するものであるため、良否判定を確実に行うことができる。
【0071】
また本実施形態においては、ピストンボディ(5)を、その検査部(52)を下向きに配置して、6点の測定位置(P)を支持ピン(2)に支持させるものであるため、ピストンボディ(5)を拘束せずに載置するだけで、少なくとも3点以上の測定位置(P)が支持ピン(2)によって支持されて、平面度(隙間)を測定可能な状態となる。つまりピストンボディ(5)を載置しただけの自然載置状態が、平面度測定に適切な姿勢となるため、ピストンボディ(5)を適切な測定姿勢に簡単かつ確実に配置することができ、平面度の測定をより一層簡単かつスムーズに行うことができる。
【0072】
詳述すると、従来の平面度測定装置(特開平11−201748号参照)のように、検査部(検査面)を上向きに配置した状態で、その上向き検査面の平面度を測定する場合には、検査品を確実に拘束した状態で測定する必要があるが、この場合には、検査品を適切な測定姿勢に調整することが困難であり、平面度の測定が困難になってしまう。特に本実施形態のように、検査部(52)の反対側の面が平坦でない複雑な三次元形状のピストンボディ(5)を検査するような場合、従来の平面度測定装置では、ピストンボディ(5)をその検査部(52)を上向きに配置した上で、適切な姿勢に拘束することは実際上不可能であり、平面度を正確に測定することはできなかった。
【0073】
これに対し、本実施形態においては既述したように、ピストンボディ(5)を検査台(11)に載置するだけで、ピストンボディ(5)が適切な測定姿勢にほぼ自動的に載置することができる。このためピストンボディ(5)のように複雑な三次元形状の検査品であっても、適切な測定姿勢に簡単かつ確実に設置することができ、より一層正確に平面度を測定できて検査精度を向上させることができる。
【0074】
さらに本実施形態において、ピストンボディ(5)を検査台(11)に載置する際に、ピストンボディ(5)を検査台(11)の上方から垂直下方に降下させて載置する場合や、あるいはピストンボディ(5)を検査台(11)に載置した後、リフトアップ機構により上下動させたりする場合には、ピストンボディ(5)を検査台(11)に自然に安定する状態、つまり適切な測定姿勢に、より確実に配置できて、より一層測定精度を向上させることができる。
【0075】
しかも本実施形態のピストンボディ(5)は、アルミニウム製鍛造加工品により構成されるため、十分な重量を有している。このため、ピストンボディ(5)を検査台(11)に載置した際に、高重量によって、所定の測定位置(P)が、対応する支持ピン(2)に確実に接触し、平面度の測定をより一層正確に行うことができる。
【0076】
また本実施形態においては、各測定位置(P)と初期状態の支持ピン(2)との間の隙間を測定する際には、ピストンボディ(5)を押付体(16)によって上方から押し付けてピストンボディ(5)の位置を安定させているため、隙間測定時にピストンボディ(5)が位置ずれしたり、微動したりするのを確実に防止でき、より高い測定精度を得ることができる。
【0077】
なお上記実施形態においては、検査品(ピストンボディ)における検査部(52)の平面度を検査する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明は以下に示すように、平坦でない検査部の変形度(変位度)を測定/検査する場合にも適用することができる。
【0078】
すなわち図11,12はこの発明の変形例である変形度検査装置(101)を示す斜視図、図13はその変形度検査装置(101)によって検査される検査品(105)を示す斜視図である。この変形例においては、検査品(105)は、検査部(52)が段付形状に形成されており、高段面の4箇所と低段面の4箇所において計8点の測定位置(P)が設定されている。
【0079】
また変形度検査装置(101)の検査台(11)は、検査品(105)をその検査部(52)を適合状態に載置できるように、検査部(52)の形状に倣って段付形状に形成されており、検査品(52)の各測定位置(P)に対応して、検査台(11)に支持部としての支持ピン(2)が設けられている。各支持ピン(2)は、上記実施形態と同様に、リニアゲージセンサ(3)のスピンドルによって構成されており、初期状態では各支持ピン(スピンドル)が、検査台(11)の検査品載置面よりも所定量上方に突出した状態にそれぞれ配置されている。
【0080】
この変形例において他の構成は、上記実施形態と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一または相当符号を付して重複説明は省略する。
【0081】
この変形度検査装置(101)においては、検査品(105)がその検査部(52)を下向きに配置した状態で検査台(11)に載置される。この載置状態では上記実施形態と同様に、8点の測定位置(P)のうち、少なくとも3点以上の測定位置(P)が支持ピン(2)に接触支持される。そして各測定位置(P)の支持ピン(2)が作動して、各測定位置(P)と初期状態の支持ピン(2)との隙間寸法(変位量)が測定されるとともに、その隙間寸法のうち最大の隙間寸法が変形度(変形検査用数値)として用いられる。
【0082】
こうして測定された変形度が、予め設定された基準の変形度と比較されて上記実施形態と同様に、当該検査品(105)における変形度の良否が判定される。その後必要に応じて上記と同様に、良品と判定された検査品(105)は所定の良品排出部に搬出される一方、不良品と判定された検査品(105)は所定の不良品回収部に回収される。
【0083】
このように本発明においては、検査部が平坦面の検査品の平面度に限られず、検査部が平坦でない検査品の変形度も測定/検査することが可能である。
【0084】
一方、上記実施形態等においては、測定位置(支持部)を6点または8点設ける場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明は、検査部に測定位置を4点以上設定すれば、どのような検査品でも測定/検査することができる。
【0085】
また上記実施形態においては、支持ピン(2)を隙間測定手段としてのリニアゲージセンサの一部(スピンドル)によって構成しているが、それだけに限られず、本発明においては、支持ピン(支持部)と、リニアゲージセンサ等の隙間測定手段とを別々に設けるようにしても良い。
【0086】
さらに上記実施形態においては、隙間測定手段として、リニアゲージセンサ等の接触式の変位センサを用いているが、本発明においては、接触式の隙間測定手段(変位センサ)であっても、非接触式の隙間測定手段(変位センサ)であっても使用することができる。例えば本発明においては、隙間測定手段として、静電容量式変位センサ、レーザ式変位センサ、渦電流式変位センサ、超音波式変位センサ等も用いることができる。
【0087】
また本発明おいて、測定/検査される検査品の素材は、特に限定されるものではなく、例えばアルミニウム(その合金を含む)以外の金属素材からなるものや、金属以外の素材からなるものにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
この発明は、鍛造加工品等の検査品における平面度等の変形度を測定する際の変形度測定方法に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】この発明の実施形態である平面度検査装置が適用された平面度検査設備を示すブロック図である。
【図2】実施形態の平面度検査装置を検査品を設置した状態で示す斜視図である。
【図3】実施形態の平面度検査装置を検査品を設置しない状態で示す斜視図である。
【図4】実施形態の平面度検査装置を検査品を設置せずに支持ピンを突出させた状態で示す斜視図である。
【図5】実施形態の平面検査装置を示す側面図である。
【図6】実施形態の平面度検査装置で検査されるピストンボディを示す斜視図である。
【図7】実施形態で検査されるピストンボディを示す下面図である。
【図8】実施形態の検査設備に採用された移載装置を示す斜視図である。
【図9】実施形態の平面度検査装置によって検査された良品のピストンボディの検査データ表を示す図である。
【図10】実施形態の平面度検査装置によって検査された不良のピストンボディの検査データ表を示す図である。
【図11】この発明の変形例である変形度測定装置を示す斜視図である。
【図12】変形例の変形度測定装置を検査品を設置した状態で示す斜視図である。
【図13】変形例の変形度測定装置によって検査される検査品を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0090】
1…平面度検査装置(平面度測定装置)
11…検査台
16…ピストンボディ押付体(検査品押付手段)
2…支持ピン(支持部)
3…リニアゲージセンサ(間隔測定手段)
5…ピストンボディ(検査品)
6…検査品搬入装置
7…検査品搬出装置
71…不良品排出手段
101…変形度検査装置(変形度測定装置)
105…検査品
P…測定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査品における検査部の変形度を測定する変形度測定方法であって、
検査部に、平面を特定可能な3点を含む4点以上の測定位置を設定する一方、各測定位置に対応して支持部がそれぞれ設けられた検査台を準備しておき、
検査品を、その検査部を下向きに配置しつつ、各測定位置を各支持部に支持させるように載置し、
その載置状態において、各測定位置における支持部との間の間隔のうち、最大の間隔を変形度として測定するようにしたことを特徴とする変形度測定方法。
【請求項2】
検査品を検査台に載置するに際して、検査品を検査台の上方から降下させて検査台に載置する請求項1に記載の変形度測定方法。
【請求項3】
検査品における検査部の反対側が平坦でない形状を有している請求項1または2に記載の変形度測定方法。
【請求項4】
検査品が金属加工品をもって構成される請求項1〜3のいずれか1項に記載の変形度測定方法。
【請求項5】
検査品がアルミニウム製の鍛造加工品をもって構成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の変形度測定方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の変形度測定方法によって検査品の検査部における変形度を測定し、その実際の変形度を、予め設定された基準の変形度と比較して、当該検査品の良否を判定することを特徴とする変形度検査方法。
【請求項7】
検査品における検査部の変形度を測定する変形度測定装置であって、
検査部に、平面を特定可能な3点を含む4点以上の測定位置を設定する一方、各測定位置に対応して支持部がそれぞれ設けられた検査台と、
検査品を、その検査部を下向きに配置しつつ、各測定位置を各支持部に支持させるように載置した状態で、各測定位置における支持部との間の間隔を測定する間隔測定手段と、
間隔測定手段によって測定された間隔のうち、最大の間隔を変形度として特定する変形度特定手段と、を備えたことを特徴とする変形度測定装置。
【請求項8】
間隔測定手段により間隔を測定する際に、検査品を検査台側に押し付ける検査品押付手段を備える請求項7に記載の変形度測定装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の変形度測定装置と、
変形度測定装置によって測定された実際の変形度を、予め設定された基準の変形度と比較して、当該検査品の良否を判定する良否判定手段と、を備えることを特徴とする変形度検査装置。
【請求項10】
請求項9に記載の変形度検査装置と、
複数の検査品が格納されるとともに、検査品を変形度検査装置に順次送り込む検査品搬入装置と、
変形度検査装置により検査された検査品を順次取り込む検査品搬出装置と、を備えたことを特徴とする変形度検査設備。
【請求項11】
変形度測定装置によって測定された実際の変形度を、予め設定された基準の変形度と比較して、当該検査品の良否を判定する良否判定手段と、
不良と判定された検査品を他の検査品とは異なる箇所に排出する不良品排出手段と、を備える請求項10に記載の変形度検査設備。
【請求項12】
検査品における検査部の平面度を測定する平面度測定方法であって、
検査部に、平面を特定可能な3点を含む4点以上の測定位置を設定する一方、各測定位置に対応して支持部がそれぞれ設けられた検査台を準備しておき、
検査品を、その検査部を下向きに配置しつつ、各測定位置を各支持部に支持させるように載置し、
その載置状態において、各測定位置における支持部との間の間隔のうち、最大の間隔を平面度として測定するようにしたことを特徴とする平面度測定方法。
【請求項13】
請求項12に記載の平面度測定方法によって検査品における検査部の平面度を測定し、その実際の平面度を、予め設定された基準の平面度と比較して、当該検査品の良否を判定することを特徴とする平面度検査方法。
【請求項14】
検査品における検査部の平面度を測定する平面度測定装置であって、
検査部に、平面を特定可能な3点を含む4点以上の測定位置を設定する一方、各測定位置に対応して支持部がそれぞれ設けられた検査台と、
検査品を、その検査部を下向きに配置しつつ、各測定位置を各支持部に支持させるように載置した状態で、各測定位置における支持部との間の間隔を測定する間隔測定手段と、
間隔測定手段によって測定された間隔のうち、最大の間隔を平面度として特定する平面度特定手段と、を備えたことを特徴とする平面度測定装置。
【請求項15】
請求項14に記載の平面度測定装置と、
平面度測定装置によって測定された実際の平面度を、予め設定された基準の平面度と比較して、当該検査品の良否を判定する良否判定手段と、を備えることを特徴とする平面度検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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