説明

変性された反応性樹脂

本発明の主題は、
a) 少なくとも1種のシアナートエステル;
b) 反応性樹脂中で微細に分散した形で含まれている少なくとも1種のポリオルガノシロキサン
を有する変性された反応性樹脂である。このように変性された反応性樹脂は、硬化されていない形で長期間貯蔵安定性であり、有利な機械的特性を有する熱硬化性樹脂に硬化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性された反応性樹脂、その製造方法及び熱硬化性プラスチックの製造のためのその使用に関する。
【0002】
反応性樹脂は先行技術において公知である。これは、加工の前に液体又は塑性変形可能であり、高分子生成反応(特に重合、重縮合又は重付加)により一般に付形加工下で熱硬化性プラスチックが生じる生成物である。この高分子生成反応により、三次元的に架橋した、硬質でかつ溶融不能な樹脂(これは熱硬化性樹脂(Duromer)といわれる)が生じる。
【0003】
架橋した反応性樹脂は、一般に良好な硬度、強度、耐薬品性及び耐熱性を有する。この有利な特性は、一般に高い架橋密度によるものである。この特性に基づいて、反応性樹脂は、例えば繊維強化プラスチックの製造のため、電気工学における絶縁材料及び注封材料の製造のため、建設用接着剤、積層材料、焼き付け塗料等の製造のために使用される。
【0004】
上記の有利な特性を生じさせるこの高い架橋度は、もちろん一連の欠点も引き起こす。熱硬化性樹脂は一般に脆性であり、特に低温での破断強さ及び衝撃強さが低い。
【0005】
反応性樹脂の機械的特性をポリオルガノシロキサンの添加により改善することは既に提案されている(EP-A-O 266 513)。
【0006】
本発明の根底をなす課題は、まだ硬化していない中間生成物として良好な貯蔵特性及び加工特性を有しかつ良好な機械特性を有する熱硬化性樹脂に加工することができる変性された反応性樹脂を提供することである。
【0007】
本発明による変性された反応性樹脂は、
a) 少なくとも1種のシアナートエステル;
b) 反応性樹脂中で微細に分散した形で含まれている少なくとも1種のポリオルガノシロキサン
を有する。
【0008】
まず、本発明の範囲内で使用されたいくつかの概念を説明する。
【0009】
シアナートエステルは−O−C=N基を有する。シアナートエステルモノマー又はプレポリマーはいわゆる3つのOCN基の環化三量化によって相互に架橋することができる。硬化反応としてのこの環化三量化は一般に高めた温度(通常で150〜250℃)で、有利に適当な第3級アミンを触媒として、例えばジアザビシクロオクタン(DABCO)又は4−ジメチルアミノピリジンの存在で行われる。この三量化は揮発性物質の脱離なしで行われるため、欠点のない注封材料を得ることができる。シアナートエステルは、硬化した熱硬化性樹脂として400℃までの高いガラス転移温度Tg及び低い誘電率を示す。このシアナートエステルモノマーは一般に2つのOCN基を有するため、三量化によって三次元的に架橋した熱硬化性樹脂を生じる。
【0010】
使用されるシアナートエステルは、特にビスフェノールのシアナートであることができる。ビスフェノールをベースとするシアナートエステルの例は、ビスフェノール−A−シアナートエステル、ヘキサフルオロビスフェノール−A−シアナートエステル、ビスフェノール−E−シアナートエステル(4,4−エチリデンジフェニルシアナートエステル)、テトラメチルビスフェノール−F−シアナートエステル、ビスフェノール−M−シアナートエステル、ビスフェノール−C−シアナートエステル及びシクロペンタジエニルビスフェノール−シアナートエステルである。他の適当なシアナートエステルは、例えばノボラックシアナートエステル又はフェノールノボラックシアナートエステルである。
【0011】
本発明により使用されたポリオルガノシロキサンについて、架橋後にゴム弾性のポリマーを形成する全てのポリオルガノシロキサンを使用することができる。このガラス転移温度Tgは、有利に−80〜−120℃である。
【0012】
一般式
−(R2SiO)− (1)
[式中、2つの一価の基Rは、同じ又は異なることができ、1〜18個のC原子を有する線状又は分枝したアルキル基、4〜8個のC原子を有する脂環式基、2〜4個のC原子を有する線状又は分枝したアルケニル基、フェニル又は脂肪族基中に1〜12個のC原子を有するアルキルフェニル基(この場合、前記炭化水素基はハロゲン又はヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アミノ基、エポキシ基、アルコキシ基又はアルケニルオキシ基で置換されていてもよい)、更にポリエーテル基又はポリオレフィン基及び水素を表し、この場合前記基は、直接又は酸素原子又は窒素原子を介してポリシロキサン鎖のケイ素原子と結合している]シロキサン単位から誘導されるポリオルガノシロキサンを使用することができる。
【0013】
このような基Rの例は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、ドデシル基及びオクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロオクチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基及び3−ブテニル基、エチルフェニル基、ドデシル基、更に例えばハロゲン、例えばフッ素又は塩素により部分的に置換された炭化水素を有する基、例えばクロロプロピル又は1,1,1−トリフルオロプロピル基である。この基Rの少なくとも一部は、ポリマー基からなることもでき、その際、特にポリエーテル、例えばポリエチレン−、ポリプロピレン−、ポリブチレン−又はポリヘキサメチレングリコール又はポリテトラヒドロフラン並びにこれらのエーテルのコポリマー、更にポリオレフィン、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブテン、ポリイソブテン等が挙げられる。最終的に、この基Rの一部は水素であることができる。前記ポリオルガノシロキサンの混合物を使用することも可能である。
【0014】
更に、本発明の場合に、ポリマー分子中に異なる基Rが存在するポリオルガノシロキサンを使用することも可能である。この異なる基は、シロキサン主鎖に沿って統計的に分布していることができる。有利な実施態様の場合には、本発明により適用されたポリオルガノシロキサンゴムはブロックコポリマーであり、この場合、一価の基R′及びR″はシロキサン主鎖に沿ってブロック状に配置されていて、この主鎖は一般式
−(R′2SiO)x−(R″2SiO)y− (2)
のポリマー単位から誘導され、この場合、基R′及びR″は、Rと同じ意味を表し、互いに異なり、この基R′又はR″は互いに同じ又は異なることができ、x及びyは1又はその整数の倍数である。
【0015】
良好な作用と同時に容易な入手性のために、基R、R′又はR″の少なくとも50%は、メチル基及び/又はフェニル基を表すポリオルガノシロキサンが有利である。
【0016】
本発明により変性された反応性樹脂は高い貯蔵安定性により優れている。シアナートエステル中に微細に分散したポリオルガノシロキサン粒子の分散液は、意外にも長期間にわたり安定を維持する。この貯蔵可能な状態で、このポリオルガノシロキサン粒子は有利に既に主にゴム状のポリオルガノシロキサンに架橋されていて、シアナートエステルの架橋反応は行われていないか又は場合によりわずかな程度で行われている。
【0017】
有利に、この分散したポリオルガノシロキサン粒子は、その表面に配置された反応基によってシアナートエステルと、反応又は硬化が行われた場合に反応することができる。
【0018】
本発明による反応性樹脂は、シアナートエステルを有利に40〜98質量%、更に有利に50〜98質量%含有する。有利に、更に、2〜60質量%、更に有利に2〜50質量%の含有量はポリオルガノシロキサンである。できる限り高いモジュラスを維持しながら良好な破壊工学的特性のために、濃度は有利に2〜10質量%、更に有利に4〜8質量%である。
【0019】
このポリオルガノシロキサンはこの反応性樹脂中に微細に分散している。有利に、この分散した粒子は、0.01〜50μm、更に有利に0.05〜20μm、更に有利に0.1〜5μmの平均直径を有する。
【0020】
液状のポリオルガノシロキサンの液状の反応性樹脂中での微細な分散は、エマルションの製造のために公知の全ての手段及び補助手段を用いて行うことができる。これには、分散すべき媒体中に十分に高い剪断作用を及ぼす特別な機械的ユニット、例えば撹拌機、ディソルバー、ニーダー、ローラ装置、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。微細な分散を達成するために適しているのは「Ultra-Turrax」のタイプの分散装置である。所定の分散を達成するために加えられるべき剪断力がポリシロキサンの及び反応性樹脂又は反応性樹脂混合物の粘度に依存することは自明である。特に反応性樹脂の極めて高い粘度の場合、従って、場合により相応して強力な分散機を使用して高い剪断力を加えなければならないか又は相応する温度上昇による粘度低下を生じさせなければならない。適用される高めた温度は、しかしながら分散期間の間にポリオルガノシロキサン又は反応性樹脂の顕著な架橋を生じさせてはならない。これは、自体公知のように、架橋系の適切な選択により制御することができる。
【0021】
ポリオルガノシロキサンの分散の際に所望な粒度を達成するため及び/又は得られたポリオルガノシロキサン分散液を安定化するために、所定の分散作用を有する添加剤を使用する必要があるか又は使用するのが望ましい。このシロキサン成分は基R、R′又はR″自体の部分の適切な選択により十分な分散性を有し、これらの基が有利にそれぞれの反応性樹脂と良好に相容性である化学的構造を有する場合には、分散剤添加は不要である。このように置換されたポリシロキサンを提供できないか又は手間をかけてだけ製造できる他の全ての場合には、個別の分散剤の使用は有利である。有利に、分散剤として、両親媒性構造を有する化合物が使用され、この場合、このような両親媒性の分子の基の一方の部分は、使用されたポリオルガノシロキサンと相容性であるように選択され、他方でこの基の他方の部分は、反応性樹脂又は反応性樹脂混合物と相容性であるように選択される。
【0022】
この適当な分散剤は、従って、所定の乳化剤と同様の両親媒性の構造を有する。特に、分散剤として、ポリオルガノシロキサン部分と、反応性樹脂又は反応性樹脂混合物に相容性の炭素有機部分とを有するコポリマーを使用するのが確かであり、かつ有利である。この種のコポリマーの製造は原則として公知であり、例えばW. Noll著「Chemie und Technologie der Silikone」, Weinheim 1968に詳細に記載されている。
【0023】
本発明による目的のために適した分散剤は、その分子量に関して重要ではなく、つまり分子量は広い範囲で変化することができる。有利に、300〜50000の平均分子量を有する分散剤が使用される。いずれの場合でも、選択された分散剤が分散工程の条件下でポリオルガノシロキサンと反応性樹脂との間の相界面に存在することが重要である。
【0024】
分散剤の必要な濃度は、広範囲にその有効性、ポリシロキサン並びに反応性樹脂の化学的構造及び分散条件に依存する。実際に、2〜20質量%、有利に5〜15質量%の濃度で有利な作用は達成される。
【0025】
本発明の範囲内で、特に、ポリエーテル−ポリジメチルシロキサン−コポリマーが有利である。このコポリマーのポリジメチルシロキサン割合は、有利に約25質量%である。このポリエーテル割合の中で、有利にエチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位を考慮することができ、ポリエーテル中のエチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位との有利な質量比は、約40:60である。有利な分子量範囲は、10000〜15000g/mol、更に有利に約13000g/molである。25℃でのこの粘度は有利に2000〜4000mPasである。
【0026】
意外にも、このようなコポリマーは、ポリシロキサンをシアナートエステル中に乳化させ、かつこのようなエマルション又は分散液を長期間安定にすることができることが判明した。
【0027】
本発明による方法において使用可能な液状の架橋されていないポリオルガノシロキサンの平均分子量は広範囲に変化することができ、一般に800〜500000の範囲内にある。この下限は、分子量の低下と共にポリオルガノシロキサンゴムの架橋密度が大きくなり、それによりその弾性率が低下することにより決定される。この効果は二官能性架橋剤の添加により所定の範囲内で弱めることができる。この上限は、分子量の増加と共にポリオルガノシロキサンの増加する粘度により与えられ、これは液体の反応性樹脂中でのこのシロキサンの望ましい微細な分散を弱める。本発明による方法の有利な実施態様の場合には、使用された架橋されていないポリオルガノシロキサン又はポリオルガノシロキサン混合物は、1000〜100000、特に有利に1200〜30000の範囲内の平均分子量を有する。この場合、このポリオルガノシロキサンは大抵の他のポリマーと同様に均一な分子量を有しておらず、程度に差はあるが広い分子量分布を有することを考慮しなければならない。
【0028】
液状のポリオルガノシロキサンを弾性のシリコーンゴム粒子に移行させる架橋剤の種類は、この架橋反応によりポリシロキサン粒子の微細な分散が本質的に損なわれずかつ反応性樹脂層中で架橋反応が行われないか又はわずかな架橋反応が行われるだけであることが保証される限り重要ではない。この前提条件が満たされる限り、ポリシロキサンエラストマーの架橋のために通常使用される全ての硬化方法、特に公知の付加法及び縮合法を適用することができる。付加架橋するポリシロキサンが有利である。
【0029】
この付加架橋の実施のために、ポリオルガノシロキサン混合物中にケイ素と直接結合する水素を有する十分な数の基、つまりSiH基、及びこのSiH基に付加(いわゆるヒドロシリル化反応)することができるオレフィン性不飽和基が存在しなければならない。最も簡単な場合には、架橋可能なポリオルガノシロキサンはビニル基を有するポリジメチルシロキサンであり、これにポリメチルヒドロゲンシロキサン1〜10%が架橋剤として添加されている。この付加架橋は、有利に室温で、場合により高めた温度、例えば60〜140℃で、貴金属触媒の存在で行われる。このために、通常では周期表の白金族の元素、例えば白金、パラジウム又はロジウムの化合物が使用される。頻繁に使用される触媒は、例えば適当な溶剤、例えばグリコールエーテル又はイソプロパノール中に溶かされたヘキサクロロ白金酸である。適当な触媒は、貴金属塩化物とビニル基を含有する有機若しくは有機ケイ素化合物との反応生成物、又は適当な担体、例えば活性炭若しくは酸化アルミニウム上に微細に分配された貴金属自体でもある。
【0030】
縮合架橋するシロキサンは、ケイ素に直接結合した容易に脱離可能な基、例えばヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシイミノ基、アミノ基、アミノキシ基又はアルキルアミド基又は水素を有する。この脱離可能な基は、ポリオルガノシロキサン自体の中に配置されているか、及び/又は特に架橋剤として添加されるシラン中に配置されていてもよい。頻繁に使用される縮合架橋するポリシロキサンエラストマーは、ヒドロキシ末端基を有するポリジメチルシロキサン及び架橋剤として添加されるトリ−若しくはテトラオルガノオキシシラン、例えばメチルトリアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシイミノ)シラン又はポリメチルヒドロゲンシロキサンからなる。縮合触媒の使用はこの場合必須であることはないが、架橋反応の時間を短縮するか又は架橋のために必要な温度を低下させる場合に推奨することができる。適当な触媒として、第1に有機重金属塩、例えばスズ、ジルコニウム、鉛及びチタンの公知のオクトアート、ラウラート、ナフテナート又はアセタートが挙げられる。
【0031】
シロキサンエラストマーの製造のために公知の架橋方法は、線状のポリオルガノシロキサン分子の三次元的架橋を生じさせることができる連結反応により拡張することができる。このような連結反応のために必要な反応性基は、付加架橋並びに縮合架橋の公知の場合について前記したように直接ポリシロキサン主鎖に存在するだけでなく、上記式(1)及び(2)の有機基R、R′又はR″と結合されているか又はこれらの基を置換することができる他の上記の官能基と同じであることができる。
【0032】
本発明による目的を達成するために、連結の様式はそれ自体重要ではなく、本質的に三次元的に架橋したポリオルガノシロキサンが形成され、その架橋密度が一方で、この架橋生成物に弾性の特性が付与され、樹脂状の特性が付与されないために十分に低いが、他方でこの架橋生成物が最低限ゴム弾性の特性を有するために十分に高い連結の様式が適している。
【0033】
このポリオルガノシロキサンゴム粒子の平均粒度及びその粒度分布は、硬化した変性された反応性樹脂の本質的な特徴に、特に破断強さ及び衝撃強さに影響を及ぼす。従って、本発明により目指される効果を達成するために、この粒度は上記の有利な範囲内にあり、その際、この粒度の極めて狭い分布(単峰性)の代わりに広範囲な分布、例えば0.1〜5μmの全体で特に有利な範囲にわたる分布が存在する場合、有利な作用が得られる。この粒度分布は、例えばガウス分布曲線の種類の連続的な粒度分布曲線により特徴付けることができるが、これはそれぞれの狭い粒度分布を有する2つ又は3つのサイズクラスから構成されていてもよい(二峰性又は三峰性)。
【0034】
反応樹脂マトリックス中に存在する架橋したポリオルガノシロキサンゴム粒子のこの所望の粒度分布は、分散工程の間に既に架橋されていないポリオルガノシロキサン液滴の形成時に、剪断力及び場合により分散剤の選択により予め決定されかつ広範囲で制御することができる。分散の際に得られる粒度分布は後続する方法工程で特にポリオルガノシロキサンの架橋の際及び反応性樹脂の硬化の際にほとんど変化しないことに留意すべきである。しかしながら、分散の際に形成された粒子の一部が後続する方法工程で凝固又は集合し、つまりより大きな直径を有する粒子に結合する場合でも、本発明により目指される効果は可能であり、この効果は損なわれないかほとんど損なわれない。それにより、通常では多様なサイズクラスの粒子が生じ、それにより例えば二峰性又は三峰性の粒度分布が生じることができる。
【0035】
既に前記したように、硬化した変性された反応性樹脂において改善された破断強さ及び衝撃強さを達成するために、微細に分散したポリシロキサンゴム粒子が反応性樹脂と化学結合することが有利である。この結合は、有利に、ゴム粒子表面に存在する反応性基と、相応する反応性樹脂中に存在する反応性基との間の化学反応により生じ、その際、ポリシロキサン粒子の表面に存在する反応性基は、それぞれのシアナートエステルの反応性基に合わせられる。
【0036】
このポリオルガノシロキサンゴム粒子を反応性樹脂と化学的に反応させるために、この反応性基はポリオルガノシロキサンゴム粒子の表面に存在しなければならない。これは、例えば、ポリオルガノシロキサン中に含まれる基R、R′又はR″が前記に例示的に説明したような相応する反応性置換基を有することにより実現することができる。この置換基がポリオルガノシロキサンの架橋反応に不所望に影響しないことが有利である。他の可能性は、場合によるポリオルガノシロキサンの分散工程の際に使用された分散剤を、相応して少なくとも部分的に所望な又は必要な反応性基を有する分散剤に置き換えることにある。本発明による方法を用いて、これは、適当な両親媒性に構成された分散剤の選択の際に、この炭素有機構成部分が適当な反応性基を有することに留意することによって特に簡単に実現することができる。本発明による方法の有利な実施態様の場合に、従って、反応媒体としてポリオルガノシロキサン粒子と反応性樹脂又は反応性樹脂混合物と化学結合を生じさせることができる反応性基を有する炭素有機部分を有する分散剤を使用する。
【0037】
他の可能性は、反応媒体として利用される添加剤を使用することにより生じる。シリコーンゴム粒子と樹脂マトリックスとの目指される化学的結合を保証するために、このような反応媒体は付加的にシリコーンゴム粒子に結合する化学的原子団も有していなければならない。ポリオルガノシロキサンゴム粒子と反応性樹脂との間のこのような反応性媒体として、有利にオルガノアルコキシシラン及び/又はポリオルガノシロキサン及びシアナートエステルに適合した反応性基を有するオルガノ−シリコーン−コポリマーが使用される。適当なオルガノアルコキシシランは、例えばビニルトリメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどである。この目的のために適しているオルガノ−シリコーン−コポリマーは、原則として前記した分散剤と同様に構成することができる。適当なオルガノ−シリコーン−コポリマーの例は、低分子のシラノール末端ポリジメチルシロキサンとジグリシジルエーテル、ヒドロキシカルボン酸又はヒドロキシ末端基並びにカルボン酸末端基含有ポリエステル、芳香族ポリヒドロキシ化合物等とからなる縮合生成物である。更なる可能性は、ポリメチルヒドロゲンシロキサンを、所望の反応性基に加えてさらにオレフィン性二重結合を有する化合物、例えばアリルグリシジルエーテル、アリルアルコール、α−アルケンアルコールから出発するポリエーテル、メタクリル酸アリルエステル、2−ヒドロキシエチルアクリラート、マレイン酸無水物等によりヒドロシリル化することにより生じる。このコポリマーの製造は当業者に周知である。
【0038】
ポリオルガノシロキサンゴム粒子を反応性樹脂マトリックスに化学的に結合させる反応は、有利に変性された反応性樹脂の更なる加工の前又は加工の際に実施され、この場合、実施の形式及び条件は関与する反応体の種類に大幅に依存する。最も簡単な場合には、所望の反応を生じさせるために相応する温度上昇で十分である。他の可能性は、ポリシロキサン粒子の反応性基との反応が可能である成分、例えば前記した反応媒体、又はこの反応を触媒する成分をこの反応性樹脂に添加することにある。この場合、添加されるべき反応成分又は触媒作用する成分は、反応性樹脂の硬化反応を生じさせる相応する成分と同じであることができる。この場合、この反応性樹脂を付形プロセス後に硬化させる際に、この化学結合反応を、有利に場合によりこの硬化と同時に実施する。
【0039】
本発明の主題は、更に、本発明による変性された反応性樹脂の製造方法であり、これは請求項18から21に定義されている。この方法の観点は、反応性樹脂の特性の議論との関連で上記に既に論じられている。
【0040】
この方法の観点により、このポリオルガノシロキサンをまずシアナートエステル中に又はシアナートエステルの一部中に分散させ、引き続きこのポリシロキサンのための架橋剤を添加することができる。例えば、いわゆる触媒が添加されたポリシロキサン(例えば既に白金触媒を含有する)を、シアナートエステルの一部分中に分散させ、引き続きこのシアナートエステルの他の部分を添加し、最終的にこのポリシロキサン用の架橋剤を添加することも可能である。引き続き、既に分散されたポリシロキサン粒子のポリシロキサンゴムへの架橋が開始する。
【0041】
本発明は、次に実施例を用いて記載される。
【0042】
次の出発材料が使用された:
Primaset LECy: (4,4′−エチリデンジフェニルジシアナート, Lonza Ltd.)
AROCY L 10: (4,4′−エチリデンジフェニルジシアナート, Huntsman Advanced Materials (Europe)
乳化剤:ポリエーテル−ポリメチルシロキサン−コポリマー ポリジメチルシロキサン割合25質量%、EO/PO単位の比率40/60、MW13000g/mol、25℃での粘度3000mPas
シリコーン−VM:α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン99.5質量%及び2−プロパノール中のヘキサクロロ白金酸の1%溶液0.5質量%からなるマスターバッチ
架橋剤:α,ω−ジ(トリメチルシリル)ポリメチルヒドロゲンシロキサン。
【0043】
実施例1
10Lの実験室ディソルバー中で、Primaset LECy 2500g及び乳化剤660gを装入し、真空中で500/minで撹拌しながら5分間混合した。
【0044】
引き続き、Silikon VM 2600gを添加し、25分間分散させた(真空中で500/min)。次の工程で、Primaset LECy 2500gを添加し、もう一度15分間分散させた。引き続き、架橋剤66.7gを添加し、更に10分間分散させた。
【0045】
なめらかな、白色〜帯黄色の分散液が得られた。
【0046】
この得られた分散液を、貯蔵安定性の試験のために14日間20℃で貯蔵した。
【0047】
次の粘度が測定された(コーンプレート粘度計、25℃)。
【0048】
Primaset LECy:80mPas
製造直後の変性された反応性樹脂:500mPas
20℃で14日後の反応性樹脂の粘度:630mPas。
【0049】
14日間の貯蔵の後の極めてわずかな粘度上昇は、貯蔵安定性に変性された反応性樹脂が得られたことを証明する。
【0050】
実施例2
10Lの実験室ディソルバー中で、AROCY L 10 2500g及び乳化剤660gを装入し、真空中で500/minで撹拌しながら5分間混合した。
【0051】
引き続き、Silikon VM 2600gを添加し、25分間分散させた(真空中で500/min)。次の工程で、AROCY L 10 2500gを添加し、もう一度15分間分散させた。引き続き、架橋剤66.7gを添加し、更に10分間分散させた。
【0052】
なめらかな、白色〜帯黄色の分散液が得られた。
【0053】
この得られた分散液を、貯蔵安定性の試験のために14日間20℃で貯蔵した。
【0054】
次の粘度が測定された(コーンプレート粘度計、25℃)。
【0055】
AROCY L 10:80mPas
製造直後の変性された反応性樹脂:710mPas
20℃で14日後の反応性樹脂の粘度:1000mPas。
【0056】
14日間の貯蔵の後の極めてわずかな粘度上昇は、貯蔵安定性に変性された反応性樹脂が得られたことを証明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 少なくとも1種のシアナートエステル;
b) 反応性樹脂中で微細に分散した形で含まれている少なくとも1種のポリオルガノシロキサン
を有する変性された反応性樹脂。
【請求項2】
前記シアナートエステルは、ビスフェノールベースのシアナートエステル及びノボラックベースのシアナートエステルからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1記載の変性された反応性樹脂。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサン粒子はその表面に配置された反応性基によって前記シアナートエステルと反応することができることを特徴とする、請求項1又は2記載の変性された反応性樹脂。
【請求項4】
シアナートエステルを40〜98質量%、有利に50〜98質量%含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の変性された反応性樹脂。
【請求項5】
ポリオルガノシロキサンを2〜60質量%、有利に2〜50質量%含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の変性された反応性樹脂。
【請求項6】
前記ポリオルガノシロキサン粒子は、0.01〜50μm、有利に0.05〜20μm、更に有利に0.1〜5μmの平均直径を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の変性された反応性樹脂。
【請求項7】
前記ポリオルガノシロキサンは、一般式
−(R2SiO)− (1)
[式中、2つの一価の基Rは、同じ又は異なることができ、1〜18個のC原子を有する線状又は分枝したアルキル基、4〜8個のC原子を有する脂環式基、2〜4個のC原子を有する線状又は分枝したアルケニル基、フェニル基、又は脂肪族基中に1〜12個のC原子を有するアルキルフェニル基(この場合、前記炭化水素基はハロゲン又はヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アミノ基、エポキシ基、アルコキシ基又はアルケニルオキシ基で置換されていてもよい)、更にポリエーテル基又はポリオレフィン基及び水素を表し、この場合前記基は、直接又は酸素原子又は窒素原子を介してポリシロキサン鎖のケイ素原子と結合している]シロキサン単位から誘導されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項記載の変性された反応性樹脂。
【請求項8】
前記ポリオルガノシロキサンはブロックコポリマーであり、この場合、一価の基R′及びR″はシロキサン主鎖に沿ってブロック状に配置されていて、この主鎖は一般式
−(R′2SiO)x−(R″2SiO)y− (2)
のポリマー単位から誘導され、その際、基R′及びR″は、Rと同じ意味を表し、互いに異なり、この基R′又はR″は互いに同じ又は異なることができ、x及びyは1又はその整数の倍数であることを特徴とする、請求項7記載の変性された反応性樹脂。
【請求項9】
前記基R、R′及びR″の少なくとも50%はメチル基及び/又はフェニル基であることを特徴とする、請求項7又は8記載の変性された反応性樹脂。
【請求項10】
更に少なくとも1種の分散剤を含有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の変性された反応性樹脂。
【請求項11】
前記分散剤の含有量が2〜20質量%、有利に5〜15質量%であることを特徴とする、請求項10記載の変性された反応性樹脂。
【請求項12】
前記分散剤は、両親媒性構造を有する化合物を有し、その際、このような両親媒性の分子の基の一方の部分は使用されたポリオルガノシロキサンと相容性であるように選択され、他方で前記基の他方の部分は前記シアナートエステルと相容性であるように選択されることを特徴とする、請求項7又は8記載の変性された反応性樹脂。
【請求項13】
前記分散剤は、ポリオルガノシロキサンとポリエーテルとからなるコポリマーを有することを特徴とする、請求項12記載の変性された反応性樹脂。
【請求項14】
前記分散剤は、ポリメチルシロキサンとポリエーテルとからなるコポリマーを有することを特徴とする、請求項13記載の変性された反応性樹脂。
【請求項15】
前記コポリマーのポリエーテル成分はエトキシ単位及び/又はプロポキシ単位を有することを特徴とする、請求項14記載の変性された反応性樹脂。
【請求項16】
前記ポリオルガノシロキサン用の架橋剤を含有することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の変性された反応性樹脂。
【請求項17】
前記架橋剤はポリオルガノヒドロゲンシロキサン、有利にポリメチルヒドロゲンシロキサンを有することを特徴とする、請求項16記載の変性された反応性樹脂。
【請求項18】
次の工程:
a) シアナートエステルとポリシロキサンとを混合する工程;
b) 前記ポリシロキサンを前記シアナートエステル中に乳化させる工程;
c) 微細に分散されたポリオルガノシロキサンを少なくとも部分的に架橋させる工程を特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載の変性された反応性樹脂の製造方法。
【請求項19】
工程a)及び/又はb)において付加的に分散剤が添加されることを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
付加的にポリオルガノシロキサン用の架橋剤が添加されることを特徴とする、請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
ポリオルガノシロキサンをまずシアナートエステル中で乳化させ、引き続きポリオルガノシロキサン用の架橋剤を添加することを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
熱硬化性樹脂の製造のための、請求項1から17までのいずれか1項記載の変性された反応性樹脂の使用。

【公表番号】特表2011−514926(P2011−514926A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−549091(P2010−549091)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/052152
【国際公開番号】WO2009/109482
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【出願人】(510241270)ナノレジンズ アクチエンゲゼルシャフト (1)
【氏名又は名称原語表記】Nanoresins AG
【住所又は居所原語表記】Charlottenburger Strasse 9, D−21502 Geesthacht, Germany
【Fターム(参考)】