説明

変性エタノールの燃焼による食品の加熱調理方法および実施用器具

本発明は、容器の中に置かれる食品の加熱調理方法に関しており、次のことを特徴とする:アルコール分少なくとも80度の変性エタノールのあらかじめ決められた容量Vを食品の上に注ぐこと、エタノールを燃え上がらせ、そしてそれを完全に燃やさせること。本発明はまた、該方法の実施のための器具にも関しており、例えば、少なくとも一つの半管(3)で形成される器具のようなものであって、該半管が、半円盤の形状の半板(4)によって各端でふさがれ、該半板それぞれが、加熱調理される食品を保持する串(2)あるいは半串(8)の誘導のための中心の切り込み(5)を含んでいるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい食品加熱調理方法および該方法の実施用器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先行技術は、多数の食品の加熱調理法が既に知られており、例えば熱を受けてからそれを食品に伝える容器(フライパン、片手鍋・・・)の中での加熱調理、および、放射(グリル)によるにせよ熱い空気の伝導によるにせよ、囲いの内部あるいはオーブンの中での加熱調理のようなものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの加熱調理法は、多量のエネルギーおよび比較的長い時間を必要とする、というのも、カロリーは、食品の外側から食品の中心の方に、比較的ゆっくりした速さで伝わるからである。
【0004】
別の面では、高周波数放射(マイクロ波)による加熱調理は、容器の介入なく食品の中心を直接に熱するが、しかし表面のグリル調理効果は可能にしない。
【0005】
バーベキューでの加熱調理法は、表面のグリル調理効果を獲得することを可能にするが、全てのタイプの食品に適しているわけではない。さらに高い温度での肉の加熱調理は、有毒な産物の出現を助長するのであり、それらは多環式芳香族炭化水素(PAH)、ベンゾピレン、および複素環式アミン(HCA)のようなもので、それぞれに、グリルで焼かれた肉のカリカリする部分において、あるいは肉に病原菌を移す発散される煙において生み出されるものである。
【0006】
別の面では、さまざまな香辛料あるいは香料を用いた直接の接触によってか、あるいは加熱調理の前のアルコール入りおよび風味をつけられたマリナードの中での漬け込みによってか、あるいはまた、加熱調理の途中のソースの中でのとろ火煮によって、食品へ芳香を移すことが既知である。
【0007】
したがって、熱しても冷たいままでも、アルコールが芳香の伝達物であることは知られている。
【0008】
アルコールはまた、食品の上で「フランベする」すなわち燃え上がることもできるが、とりわけ美的意義においてであって、この操作は食品の加熱調理をもたらすことはない。いずれにせよ、現在料理で使用されるアルコールは、ブランデー、ウォッカ、コニャックなどのタイプの酒あるいはアルコール入り液体で最大50度あるいは60度未満のアルコールを含むもの、あるいは現行の制限された価格統制を受けないあらゆるアルコールである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、食品と炎の間の直接の接触によって有毒な誘導体の産出なく食品を加熱調理するためにエタノールを使用することにあり、また、以下を特徴とする、容器の中に置かれる食品の加熱調理方法から成る:
‐アルコール分が少なくとも80度の変性エタノールのあらかじめ決められた容量Vを、食品の上に注ぐ、
‐エタノールを燃え上がらせ、そしてそれを完全に燃やさせる。
【0010】
本発明はまた、該方法の実施のために考え出される、また少なくとも一つの半管で形成される器具にも関しており、該半管は、半円盤の形状の半板によって各端でふさがれており、該半板は、それぞれが加熱調理される食品を保持する串あるいは半串の誘導のための中心の切り込みを含んでいる。
【0011】
選択できるさまざまな実施態様によると、器具は、串あるいは半串の自動回転手段、および/または脂を集めることを目的とした手段、および/または加熱調理用エタノールの連続した供給手段を含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次の付属の図を参照してなされる以降の記述のおかげで、本発明がよりよく理解されるであろう:
‐図1は、非制限例としてフライパンの中に置かれる食品の断片を示しており、該フライパンの中にエタノールの容量Vが注がれる、
‐図2および図3は、エタノールの点火およびその燃焼を示している、
‐図4は、燃焼終了後の加熱調理された食品を示している、
‐図5は、本発明による加熱調理方法の実施のための器具の、非制限的な実施態様を示している、
‐図6は、図5の器具を縦および垂直の断面図で示しており、該器具の中に串焼きが位置決めされる、
‐図7は、図5の器具を縦および垂直の断面図で示しており、該器具の中にソーセージが位置決めされる。
【0013】
本発明による新しい加熱調理方法の基本的な変形例は、容器の中に置かれる食品を断片に切り分けること、アルコール分80度を超える変性エタノールのあらかじめ決められた容量Vを食品の上に注ぐこと(図1)、そしてエタノールを燃え上がらせること(図2および図3)にある。
【0014】
エタノールが完全に消費されるとき、燃焼は終わり、そして食品の断片は瞬く間にそして完全に強火で焼かれる(図4)。
【0015】
参考までに、400gの肉あるいはソーセージあるいは甲殻類を加熱調理するために、アルコール分が95度であって、容量Vが10clであるエタノールを準備することができる。
【0016】
エタノールの燃焼は、数分続き、そして20cmから30cmさらに容器を振るならば50cmの青黄色の炎を生み出す。
【0017】
加熱調理は、食品の燃料および炎との直接の接触によって実現されるが、これは伝統的な加熱調理方法に比べて完全に新しいものであり、またバーベキューでのグリル調理を用いた場合のように有毒な物質の産出はない。
【0018】
すなわち、エタノールの燃焼は、水および炭酸ガスCO2しか生み出さない。
【0019】
加熱調理方法の変形例によると、以下のようなさまざまな仕方で獲得される風味をつけられたあるいは芳香をつけられたエタノールを使用することができる:
‐加熱調理用エタノールへの、胡椒あるいは香辛料あるいは香料の添加によるもの、
‐香草(例えば、イブキジャコウソウ属、マンネンロウなど)の煎じ、あるいは生の植物(例えば、アマトウガラシ、ニンニクなど)のエタノールの中への漬け込みによるものであり、またエタノールが芳香をとらえるように加熱調理の前になされるものである。煎じあるいは漬け込みは、例えばおよそ24時間から48時間の素早いものであることができ、またいったん芳香をつけられると、エタノールは、濾過の後でもそうでなくても、記述されたばかりの方法にしたがって食品を加熱調理するために利用されることができる。
‐工業生産タイプの香料エキス(例えば、エッセンス、濃縮オイル)を使用した香りづけによるもの。
【0020】
本発明による加熱調理方法は、それらの大きさにしたがって断片に切り分けられたりされなかったりする肉、串焼き、ソーセージ、魚、あるいは甲殻類に、並びに串焼きに、とりわけ適している。例えばまた限定的ではなく、断片は、側面が1.5cmから2.5cmの立方体の中に含まれる体積をもつ。もちろん、あまり容量が大きくない食品(揚げ物、小エビなど)あるいは薄切りに切られた食品は切り分けられる必要はない。
【0021】
好ましくはアルコール分80度を超える、また推奨されるにはアルコール分およそ95度のエタノールが使用される。
【0022】
しかしながら、アルコール分80度未満のアルコールは加熱調理に適してはいないが、それでもなおその芳香の抽出能力は保たれ、そしてそれでもなお最終的な燃料の組合わせの用途にあてられる香水エキスを準備するために利用されることができ得ようことは明らかである。
【0023】
例として、アルコール分80度のエタノール十リットルが、非常に辛いアンティル諸島のトウガラシ十キロの芳香を抽出するために使用される。アルコーラと呼ばれるこの混合物は、アルコール分96度のアルコール200リットルに混ぜられて、アルコール分95.23度のアルコール210リットルをもたらす。
【0024】
方法の利点は、とりわけ以下のようなものである:
‐食品の汁および煮汁の保存、というのも熱が断片を完全に包み込むため、
‐付加される脂のない加熱調理、
‐臭いのない加熱調理、
‐時間のかからない加熱調理(1分から5分)、
‐燃料節約型の加熱調理(4kgの食品について95度のエタノールおよそ1リットル)、
‐変性エタノールの使用、すなわち(香料の添加による)直接消費に適しておらず、また価格統制がずっと弱いもの、
‐利用される手段の単純さ、
‐焼きの後に風味および芳香を伝えるアルコーラの能力であって、これは多様な風味および味覚の種類の幅を検討することを可能にするものである、
‐肉を、切り分けられたものもそうでないものも、火を通すことなく表面を強火で焼くために、この方法を利用することが可能であること、
‐殺菌効果をもつ熱の強い発散。
【0025】
最後に、変性エタノールが、現行の法制により消費に適さないとされた、また甘い植物の発酵によって獲得されるエチルアルコールであることをもう一度言う。本発明はしたがって、変性エタノールの新しい商業販路、とりわけ、非制限的だが、サトウキビ、テンサイなどから獲得される変性エタノールの商業販路を提供する。
【0026】
本発明はしたがって、食品とエタノールとの間での燃焼での直接接触によって食品を加熱調理するために、エタノールのHV(発熱量)を利用することにある。
【0027】
この燃焼は、したがって液体の媒質(エタノール)で実行され、また前記液体が、有毒な残留物のあらゆる形成を避ける燃焼によって完全に使い果たされると、すぐに終わる。
【0028】
本発明による加熱調理方法の実施例のための器具が、以下に記述される。
【0029】
この非制限実施例は、串焼きあるいはケーシングに詰められた食品、例えばソーセージ、の加熱調理に関するものである。
【0030】
以降に、図5および図6を参照して串焼きの加熱調理が記述される。
【0031】
串焼き(1)は、軸あるいは串(2)に数珠つなぎにされる肉、野菜、魚、内臓などの立方体で作られる伝統的な串焼きであり、また通常の規格から外れた大きさ(1キログラム、さらにそれ以上)をもつことができるものである。
【0032】
串焼きが熱の放射による加熱調理法を受けるグリルでの伝統的な加熱調理とは反対に、エタノールでの加熱調理法は、燃え上がるエタノールとの直接の接触によって、串焼きに含まれる食品を加熱調理することを可能にする。
【0033】
この技法のために、串焼きは半管(3)の内部に位置決めされるが、該半管は、ステンレス鋼、あるいは温度の面でも公衆衛生の質の面でも応えることができる材料のものである。
【0034】
中で串焼きが位置決めされる半管(3)は、半管と同じ材料の半円形の板(4)によって、気密の槽を形成するように、各端でふさがれる。
【0035】
半円筒の各端は、中心の切り込み(5)を含み、該切り込みは、串焼きが正確に心出しされるように、串焼きを誘導するようになるものである。
【0036】
半円筒は、加熱調理される串焼きの大きさによって決められる直径および長さをもつ。
【0037】
この加熱調理方法を利用する将来の器具の開発は、半円筒が、取り外し可能で、直径も長さもさまざまな大きさとなるであろうことを、今日からすでにもう前提としている。
【0038】
いわゆる加熱調理に関して、加熱調理される食品の串焼きは、串焼きに適合した直径および長さの半円筒の中に位置決めされる。
【0039】
適合したということで、串焼きが半円筒内で最大の空間を占めなければならないが、
しかし、串焼きの回転を妨げることになりかねないので半円筒に接触することなく、串焼き自体が自由に回転することができる、ことが意味される。
【0040】
操作者は、串焼きがそれ自体が自由に回転することができることを一旦確認すると、串焼きの大きさ並びに望まれる加熱調理の度合いによって決定される芳香をつけられたエタノールの容量(6)、例えば2cm3から3cm3、で、半円筒を満たす。
【0041】
操作者は、手動かあるいは自動手段によって、エタノールの点火を行う。
【0042】
一旦エタノールが点火されると、操作者は、手動かあるいは自動手段によって串焼きを回転させるが、このために串(2)に機械化を準備することができる。
【0043】
回転する串焼きは、そのとき半円筒の下部分においてエタノールが染み込むことになり、そして、串焼きの上部分が浸されていない状態のとき、空気の酸素に接触して燃焼の状態に入ることになる。エタノールの燃焼が完了するとき、串焼きは加熱調理される。
【0044】
このタイプの装置の来るべき発達が、同じ器具に複数の半円筒を準備することにより、同時にさまざまな大きさの複数の串焼きを加熱調理することを可能にする器具に至るであろうことに注目すべきである。
【0045】
さらに、伝統的な料理におけるように、軸あるいは串(2)を、串刺し用の爪付きの二つの非常に小さい串(8)に取り換えて、ソーセージ(7)をこの仕方で加熱調理することが可能である(図7参照)。
【0046】
最後に、半円筒に改善がもたらされて、連続してエタノールを提供することができるように、あるいはエタノールでの加熱調理から発する脂を集めることを目的としたより小さい半円筒の組合わせによって半円筒の形状を改善することができるようになることができることは確かである。
【0047】
いずれにせよ、串焼き(あるいはソーセージ)と閉められる半管の形状のその容器との間の空間が少なく、例えばおよそ1mmから3mmで、あらかじめ決められる加熱調理の容量についてアルコールの高さを増すように、また炎の高さを減らすようになることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】非制限例としてフライパンの中に置かれる食品の断片を示す図である。該フライパンの中にエタノールの容量Vが注がれる。
【図2】エタノールの点火およびその燃焼を示している図である。
【図3】エタノールの点火およびその燃焼を示している図である。
【図4】燃焼終了後の加熱調理された食品を示している図である。
【図5】本発明による加熱調理方法の実施のための器具の、非制限的な実施態様を示している図である。
【図6】図5の器具を縦および垂直の断面図で示した図である。該器具の中に串焼きが位置決めされる。
【図7】図5の器具を縦および垂直の断面図で示した図である。該器具の中にソーセージが位置決めされる。
【符号の説明】
【0049】
1 串焼き
2 串
3 半管
4 半円形の板
5 切り込み


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の中に置かれる食品の加熱調理方法であって、次のことを特徴とする方法:
‐アルコール分少なくとも80度の変性エタノールのあらかじめ決められた容量Vを、食品の上に注ぐこと、
‐エタノールを燃え上がらせ、そしてそれを完全に燃やさせること。
【請求項2】
エタノールが、推奨されるには94度と96度の間であるアルコールを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分の漬け込みあるいは煎じによってエタノールにあらかじめ風味をつけることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
成分が、香草、生の植物、香辛料、薬味、野菜、花の中から選ばれることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
食品をあらかじめ断片に切り分けることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
断片が、側面が1.5cmから2.5cmの立方体の中におおよそ含まれる体積をもつことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
容量Vが、およそ4kgの食品について95度のエタノール1リットルの割合にしたがって、加熱調理される食品の総量に対して決定されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載の方法の実施のために考え出されることを特徴とし、また、少なくとも一つの半管(3)で形成され、該半管が、半円盤の形状の半板(4)によって各端でふさがれ、該半板それぞれが、加熱調理される食品を保持する串(2)あるいは半串(8)の誘導のための中心の切り込み(5)を含んでいることを特徴とする、食品の加熱調理のための器具。
【請求項9】
串あるいは半串の自動回転手段を含むことを特徴とする、請求項8に記載の器具。
【請求項10】
脂を集めることを目的とした手段を含むことを特徴とする、請求項8または9に記載の器具。
【請求項11】
加熱調理用エタノールの連続した供給手段を含むことを特徴とする、請求項8から10のいずれか一つに記載の器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−526993(P2006−526993A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516278(P2006−516278)
【出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001437
【国際公開番号】WO2005/002406
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505458430)
【氏名又は名称原語表記】UHRIG,Eric
【出願人】(505458441)
【氏名又は名称原語表記】PROBST,Laurent
【Fターム(参考)】