説明

変性フェノール樹脂、その製造方法、フェノール樹脂組成物、耐火物組成物、鋳型用レジンコーテッドサンド、成形材料、不織布、硬化物、炭化物、活性炭

【課題】ヘキサメチレンテトラミンを別途配合する必要なく硬化させることが可能になる変性フェノール樹脂を提供する。
【解決手段】フェノール樹脂にヘキサメチレンテトラミンを反応させて変性フェノール樹脂を得る。ヘキサメチレンテトラミンがフェノール骨格に付加するなどして含有されているため、加熱すると分子中のヘキサメチレンテトラミンが分解して硬化剤として作用し、別途ヘキサメチレンテトラミンを配合する必要なく、硬化させることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性フェノール樹脂及びその製造方法に関するものであり、またこの変性フェノール樹脂を応用展開した発明に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂は安価であり、その硬化物は耐熱性や機械的特性が高いなどの特性を有しており、また酸素を遮断した雰囲気で加熱すると高い収率で炭化物が得られるなどの特性もあり、多くの用途に用いられている。
【0003】
ここで、フェノール樹脂には、熱を加えても溶融するだけで硬化しない熱可塑性のノボラック型フェノール樹脂と、熱を加えると自硬化して熱不融性になるレゾール型フェノール樹脂とがある。
【0004】
このようにノボラック型フェノール樹脂は加熱しただけでは硬化しないので、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを加えて硬化させるようにするのが一般的である。また硬化剤としてレゾール型フェノール樹脂などを用いたりすることもある。
【0005】
例えばヘキサメチレンテトラミンの場合、粉末状に調製したノボラック型フェノール樹脂に微粉砕した粉末状のヘキサメチレンテトラミンを加えて混合することによって、硬化剤として使用される。このとき、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対してヘキサメチレンテトラミンの配合量は2〜20質量部であり、混合割合が大きく異なるために、均一に混合するのが難しく、混合時間に長時間を要すると共に、混合が不均一であると硬化物の強度等の物性が低下するおそれがある。またヘキサメチレンテトラミンは吸湿性が極めて高く、ノボラック型フェノール樹脂にヘキサメチレンテトラミンを混合した粉末も吸湿し易くなり、特に雨の日や梅雨時にはブロッキング化して固化してしまう等の問題があった。
【0006】
またノボラック型フェノール樹脂にレゾール型フェノール樹脂を混合して使用することもあり、この場合はレゾール型フェノール樹脂はノボラック型フェノール樹脂の硬化剤の役割をする。しかしレゾール型フェノール樹脂による硬化作用は高いものではないで、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対してレゾール型フェノール樹脂を150〜200質量部も配合する必要があり、しかも十分に速い硬化速度を得ることが難しい。このために、ヘキサメチレンテトラミンを硬化剤として併用して配合せざるを得ないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−316237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ヘキサメチレンテトラミンを別途配合する必要なく硬化させることが可能になる変性フェノール樹脂とその製造方法、及びフェノール樹脂組成物を提供することを目的とするものであり、またこの変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物を用いて得られる耐火物組成物、鋳型用レジンコーテッドサンド、成形材料、不織布、硬化物、炭化物、活性炭を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る変性フェノール樹脂は、フェノール樹脂にヘキサメチレンテトラミンを反応させて得られたことを特徴とするものである。
【0010】
また本発明は、この変性フェノール樹脂において、フェノール樹脂がノボラック型フェノール樹脂であることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明は、この変性フェノール樹脂において、フェノール樹脂がレゾール型フェノール樹脂であることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明は、この変性フェノール樹脂において、常温で固形であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る変性フェノール樹脂の製造方法は、フェノール類とアルデヒド類を反応させて得られるフェノール樹脂の初期縮合物にヘキサメチレンテトラミンを加え、ヘキサメチレンテトラミンが開環しない温度でヘキサメチレンテトラミンをフェノール樹脂の初期縮合物に反応させることを特徴とするものである。
【0014】
また本発明は、この変性フェノール樹脂の製造方法において、ヘキサメチレンテトラミンをフェノール樹脂の初期縮合物に反応させた後、得られた含水反応物を冷凍し、この冷凍物を粉砕した後に、流動床型の乾燥装置で乾燥して、固形物として得ることを特徴とするものである。
【0015】
本発明に係るフェノール樹脂組成物は、フェノール樹脂と、上記の変性フェノール樹脂とを混合して成ることを特徴とするものである。
【0016】
また本発明は、このフェノール樹脂組成物において、フェノール樹脂がノボラック型フェノール樹脂であることを特徴とするものである。
【0017】
また本発明は、このフェノール樹脂組成物において、フェノール樹脂がレゾール型フェノール樹脂であることを特徴とするものである。
【0018】
また本発明は、このフェノール樹脂組成物において、上記のノボラック型の変性フェノール樹脂と、上記のレゾール型の変性フェノール樹脂とを混合して成ることを特徴とするものである。
【0019】
本発明に係る耐火物組成物は、耐火骨材と樹脂バインダーとを必須成分として含有する耐火物組成物であって、樹脂バインダーとして、上記の変性フェノール樹脂と、上記のフェノール樹脂組成物から選ばれる少なくとも一つを用いて成ることを特徴とするものである。
【0020】
本発明に係る鋳型用レジンコーテッドサンドは、耐火物粒子の表面を樹脂バインダーで被覆した鋳型用レジンコーテッドサンドであって、樹脂バインダーとして、上記の変性フェノール樹脂と、上記のフェノール樹脂組成物から選ばれる少なくとも一つを用いて成ることを特徴とするものである。
【0021】
本発明に係る成形材料は、上記の変性フェノール樹脂と、上記のフェノール樹脂組成物から選ばれる少なくとも一つを樹脂バインダー成分として含有して成ることを特徴とするものである。
【0022】
本発明に係る不織布は、繊維を樹脂バインダーで結合して作製される不織布であって、樹脂バインダーとして、上記の変性フェノール樹脂と、上記のフェノール樹脂組成物から選ばれる少なくとも一つを用いて成ることを特徴とするものである。
【0023】
本発明に係る硬化物は、上記の変性フェノール樹脂と、上記のフェノール樹脂組成物から選ばれる少なくとも一つを、硬化反応する温度以上に加熱して熱不融性に硬化させたことを特徴とするものである。
【0024】
本発明に係る炭化物は、上記の硬化物を、酸素を含まない雰囲気で加熱して炭化させたことを特徴とするものである。
【0025】
本発明に係る活性炭は、上記の炭化物を、賦活処理したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、フェノール樹脂にヘキサメチレンテトラミンを反応させることによって、ヘキサメチレンテトラミンがフェノール骨格に付加するなどした変性フェノール樹脂を得ることができるものである。そしてこの変性フェノール樹脂は分子中にヘキサメチレンテトラミンを含有するために、この変性フェノール樹脂あるいは、変性フェノール樹脂を他のフェノール樹脂と混合したフェノール樹脂組成物を加熱すると、分子中のヘキサメチレンテトラミンが分解して硬化剤として作用し、別途ヘキサメチレンテトラミンを配合する必要なく、硬化させることが可能になるものである。
【0027】
そしてこのような変性フェノール樹脂を用いることによって、別途ヘキサメチレンテトラミンを配合する必要なく、鋳型用レジンコーテッドサンド、成形材料、不織布、硬化物、炭化物、活性炭を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】流動床型乾燥装置の一例を示す概略図である。
【図2】実施例1のノボラック型変性フェノール樹脂、実施例2のレゾール型変性フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂にヘキサメチレンテトラミンを混合したもの、の吸湿性の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
本発明に係る変性フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類を反応触媒の存在下で反応させてフェノール樹脂を調製し、このフェノール樹脂にヘキサメチレンテトラミンを反応させて、フェノール樹脂のフェノール骨格にヘキサメチレンテトラミンを付加反応等させることによって、得ることができるものである。
【0031】
ここで、上記のフェノール類は、フェノール及びフェノールの誘導体を意味するものであり、例えばフェノールの他に、m−クレゾール、レゾルシノール、3,5−キシレノールなどの3官能性のもの、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニルメタンなどの4官能性のもの、o−クレゾール、p−クレゾール、p−ter−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、2,4又は2,6−キシレノールなどの2官能性のo−又はp−置換のフェノール類を挙げることができ、さらに塩素又は臭素で置換されたハロゲン化フェノールなども用いることができる。勿論、これらから1種を選択して用いる他、複数種のものを混合して用いることもできる。
【0032】
またアルデヒド類としては、水溶液の形態であるホルマリンが最適であるが、パラホルムアルデヒドやアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、トリオキサン、テトラオキサンのような形態のものを用いることもでき、その他、アルデヒドの一部をフルフラールやフルフリルアルコールに置き換えて使用することも可能である。
【0033】
上記のフェノール類とアルデヒド類との配合比率は、フェノール類とアルデヒドのモル比が1:0.5〜1:3.5の範囲になるように設定するのが好ましい。
【0034】
また反応触媒は、ノボラック型フェノール樹脂を調製する場合は、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、あるいはシュウ酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸などの有機酸、さらに酢酸亜鉛などを用いることができる。またレゾール型フェノール樹脂を調製する場合は、アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物を用いることができ、さらにジメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジエチレントリアミン、ジシアンジアミドなどの脂肪族の第一級、第二級、第三級アミン、N,N−ジメチルベンジルアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン、アニリン、1,5−ナフタレンジアミンなどの芳香族アミン、アンモニアなどや、その他二価金属のナフテン酸や二価金属の水酸化物等を用いることもできる。
【0035】
そして、フェノール類とアルデヒド類を反応触媒の存在下で付加縮合反応させることによって、フェノール樹脂の初期縮合物を調製することができる。この初期縮合物は水を包含した樹脂溶液であり、水を脱水しない未濃縮の、あるいはある程度脱水濃縮した含水の初期縮合物にヘキサメチレンテトラミンを添加することによって、このフェノール樹脂の初期縮合物にヘキサメチレンテトラミンを反応させるものである。
【0036】
ここで、ヘキサメチレンテトラミンを添加してフェノール樹脂と反応させる際の温度は、ヘキサメチレンテトラミンが開環して分解しない温度に設定されるものである。この温度は特に限定されるものではないが、20〜90℃程度の範囲が好ましい。
【0037】
また、上記のヘキサメチレンテトラミンは、市販の粒状や粉状のものをそのまま用いるようにしてもよく、また適量の水にヘキサメチレンテトラミンを溶解させて用いるようにしてもよい。ヘキサメチレンテトラミンの添加量は、特に限定されるものでないが、フェノール樹脂の初期縮合物100質量部に対して2〜20質量部の範囲が好ましい。
【0038】
このようにフェノール樹脂にヘキサメチレンテトラミンを反応させることによって、変性フェノール樹脂を得ることができるものである。この変性フェノール樹脂において、ヘキサメチレンテトラミンは、フェノール樹脂のフェノール骨格に付加反応して結合しているものと考えられる。
【0039】
上記のようにして得られる変性フェノール樹脂は、含水の樹脂溶液であり、この含水反応物を脱水乾燥することによって、固形の変性フェノール樹脂を得ることができる。しかし、この変性フェノール樹脂にはヘキサメチレンテトラミンが含まれているので、含水反応物として得られる変性フェノール樹脂を高温に加熱して脱水乾燥することができない。そこで本発明では凍結・乾燥をして固形化するのが好ましい。
【0040】
すなわち、上記のようにヘキサメチレンテトラミンをフェノール樹脂の初期縮合物に反応させた後、得られた含水反応物を冷凍する。この冷凍物を粉砕して含水粒状物にした後に乾燥する。乾燥は流動床型の乾燥装置を用いて行なうのが好ましい。
【0041】
図1は流動床型乾燥装置の一例を示すものであり、1は導入口であって、冷凍物を粉砕した含水粒状物が導入される。2は第1の乾燥室であってその底部には例えば1mm径程度の多数の孔が設けられた流動床3が取り付けてある。4,5,6,7は仕切り板8によって仕切ることにより、任意の数で設けられた第2、第3、第4、第5の各乾燥室であり、その底部には多数の孔が設けられた流動床9が各乾燥室4,5,6,7に共通して取り付けてある。10は最終の乾燥室7からの出口であり、受け器11に連通されている。12は送風機であって、ガス加熱機、電熱器、熱交換器などで形成されるヒーター13を介してダクト14,15によって第1の乾燥室2と第2乃至第5の乾燥室4,5,6,7とにそれぞれ接続してある。16,17はダンパである。18,19は排気管であり、第1の乾燥室2と第2乃至第5の乾燥室4,5,6,7とにそれぞれ連通して設けられ、サイクロン20を介して排風機21に接続してある。
【0042】
このように形成される流動床型乾燥装置にあって、ヒーター13より出る熱風は、例えば40〜70℃程度の比較的低温の熱風としてダクト14,15によって各乾燥室2,4,5,6,7に流動床3,9の下側から導入されている。そして導入口1より第1の乾燥室2に投入された含水粒状物は、この下側からの熱風によって吹き上げられて乾燥を受けつつ流動床を移動し、さらに仕切り板8を乗り越えたり仕切り板8の下側をくぐったりして、第2の乾燥室4から順次第5の乾燥室7へと移動する。このようにして粒状物は流動床3,9上を吹き上げられて流動しつつ乾燥を受けることになり、効率良く迅速にかつ均一に乾燥を行なうことができることになって、粒状物中の樹脂の反応を進行させてしまうようなおそれはない。このようにして乾燥が行なわれた粒状物は出口10から受け器11に排出される。各乾燥室2,4,5,6,7に導入された熱風は、排気管18,19からサイクロン20を介して排風機21によって排気されるが、排気中の微粒子はサイクロン20によって分離されて乾燥室2に戻されるようになっている。
【0043】
このようにして、比較的低温で乾燥を行なうことができ、加熱によってゲル化が生じ易い変性フェノール樹脂であっても、容易に乾燥して固体化することができるものであり、常温(例えば25℃)で固形の変性フェノール樹脂を得ることができるものである。
【0044】
ここで、フェノール類とアルデヒド類を反応させてフェノール樹脂の初期縮合物を調製するにあたって、酸性触媒を用いてフェノール類とアルデヒド類を付加縮合反応させると、ノボラック型フェノール樹脂の初期縮合物を調製することができ、これにヘキサメチレンテトラミンを反応させることによって、ノボラック型の変性フェノール樹脂を得ることができるものである。
【0045】
またフェノール類とアルデヒド類を付加縮合反応させてフェノール樹脂の初期縮合物を調製するにあたって、塩基性触媒を用いてフェノール類とアルデヒド類を付加縮合反応させると、レゾール型フェノール樹脂の初期縮合物を調製することができ、これにヘキサメチレンテトラミンを反応させることによって、レゾール型の変性フェノール樹脂を得ることができるものである。
【0046】
上記のようにして得られるノボラック型の変性フェノール樹脂にあって、ノボラック型フェノール樹脂のフェノール骨格に結合してヘキサメチレンテトラミンが含有されているので、このノボラック型の変性フェノール樹脂をヘキサメチレンテトラミンが開環して分解する温度で加熱すると、ヘキサメチレンテトラミンが分解してアンモニアとホルムアルデヒドが生成され、これらの作用でノボラック型フェノール樹脂を硬化させることができるものである。従って、ヘキサメチレンテトラミンを別途配合する必要なく、ノボラック型フェノール樹脂を硬化させることが可能になるものである。
【0047】
また、上記のようにして得られるレゾール型の変性フェノール樹脂にあって、レゾール型フェノール樹脂のフェノール骨格に結合してヘキサメチレンテトラミンが含有されているので、レゾール型フェノール樹脂の硬化速度を高めることができるものである。またこのレゾール型の変性フェノール樹脂をノボラック型フェノール樹脂に配合することによって、レゾール型フェノール樹脂をノボラック型フェノール樹脂の硬化剤として作用させることができるが、本発明のレゾール型の変性フェノール樹脂には分子中にヘキサメチレンテトラミンが含有されている。従って、レゾール型フェノール樹脂が硬化剤として作用する他に、分子中に含有されるヘキサメチレンテトラミンも硬化剤として作用し、ノボラック型フェノール樹脂を迅速に硬化させることができるものである。従って、ヘキサメチレンテトラミンを別途配合する必要がなくなるものである。
【0048】
上記の本発明に係るノボラック型の変性フェノール樹脂や、レゾール型の変性フェノール樹脂は、それぞれ単独で用いることができる他、上記のようにノボラック型フェノール樹脂と本発明に係るレゾール型の変性フェノール樹脂を混合したフェノール樹脂組成物として用いることもできる。また同様に、ノボラック型フェノール樹脂と本発明に係るノボラック型の変性フェノール樹脂を混合したフェノール樹脂組成物、レゾール型フェノール樹脂と本発明に係るレゾール型の変性フェノール樹脂を混合したフェノール樹脂組成物、レゾール型フェノール樹脂と本発明に係るノボラック型の変性フェノール樹脂を混合したフェノール樹脂組成物として用いることもでき、さらに本発明に係るノボラック型の変性フェノール樹脂と本発明に係るレゾール型の変性フェノール樹脂を混合したフェノール樹脂組成物として用いることもできる。
【0049】
また上記の本発明に係る変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物において、他の硬化剤を併用することも可能である。例えばノボラック型フェノール樹脂の硬化剤として、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、トリオキサン、テトラオキサン、アセタール樹脂などを挙げることができ、レゾール型フェノール樹脂の硬化剤として、ノボラック型フェノール樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、有機エステル、アルキレンカーボネートなどを挙げることができる。また硬化触媒として、塩酸、硫酸等の無機酸、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等の無機化合物、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、キシレンスルホン酸等の有機酸を配合することもできる。さらに骨材を配合する場合、接着性向上のために、γ−アミノプロピルロチエトキシシラン、γ−(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤を添加して使用することができる。あるいは、滑剤としてステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛なども添加することができる。
【0050】
次に、上記のようにして得られる本発明の変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物の用途を説明する。
【0051】
耐火レンガなどの耐火物を成形するために用いられる耐火物組成物は、耐火骨材と樹脂バインダーとを必須成分として含有して調製されるが、この樹脂バインダーとして、本発明の変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物を用いることができるものである。
【0052】
ここで、耐火骨材にフェノール樹脂バインダーを混合して耐火物組成物を調製するにあたって、ヘキサメチレンテトラミンを硬化剤として添加する場合には、ヘキサメチレンテトラミンの分散性が悪いため、長時間を要して混練しても均一に分散させることが難しく、得られた耐火物の物性にも問題が生じやすい。
【0053】
これに対して、本発明の変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物には、フェノール樹脂の骨格に結合した状態でヘキサメチレンテトラミンが含有されているので、ヘキサメチレンテトラミンは変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物とともに耐火物組成物中に均一に分散されることになるものであり、安定して高い物性を有する耐火物を成形することができるものである。
【0054】
シェルモールドなどの鋳型の製造に用いられるレジンコーテッドサンドは、シリカなど耐火物粒子の表面を樹脂バインダーで被覆することによって調製されるが、この樹脂バインダーとして、本発明の変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物を用いることができるものである。
【0055】
ここでレジンコーテッドサンドの製造は、一般に、フェノール樹脂の溶融温度以上の130〜160℃に加熱した耐火物の粒子をミキサーに投入し、ここに粒状のフェノール樹脂を0.7〜3.0質量%程度の量で加え、数十秒程度混練した後に冷却することによって、耐火物粒子の表面にフェノール樹脂バインダーを被覆させるようして行なわれている。そしてヘキサメチレンテトラミンを硬化剤として添加する場合には、耐火物粒子の表面をフェノール樹脂バインダーで被覆した後、ヘキサメチレンテトラミンの水溶液をさらにミキサーに添加することによって、ヘキサメチレンテトラミンを被覆するようにしている。しかし、ヘキサメチレンテトラミンの添加量は僅かであるので、ヘキサメチレンテトラミンを均一に被覆させることは難しく、レジンコーテッドサンドを用いて作製した鋳型の物性に問題が生じ易い。
【0056】
これに対して、本発明の変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物には、フェノール樹脂の骨格に結合した状態でヘキサメチレンテトラミンが含有されているので、ヘキサメチレンテトラミンは変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物とともに耐火物粒子の表面に均一に被覆されることになるものであり、安定して高い物性を有する鋳型を成形することができるものである。
【0057】
射出成形、トランスファー成形、圧縮成形などの成形に用いられる成形材料は、フィラー等と樹脂バインダーとを混練することによって調製することができるが、この樹脂バインダーとして、本発明の変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物を用いることができるものである。
【0058】
ここで成形材料は、一般に、フェノール樹脂を木粉等のフィラーなどとドライブレンドし、これを80〜140℃に加熱したロールの間に何回か通過させることによってロール混練して調製されるが、ヘキサメチレンテトラミンを添加してドライブレンドしているときには、分散性の悪いヘキサメチレンテトラミンを均一に混合するために、ロールに通す回数を多くしなければならない。しかし、ロールに通す回数を増やすと、反応が開始するおそれがあるため、少ない回数に抑える必要があり、成形材料中のヘキサメチレンテトラミンの分散性が悪くなって、硬化反応が不均一になり、成形して得られる成形品の物性に問題が生じ易い。
【0059】
これに対して、本発明の変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物には、フェノール樹脂の骨格に結合した状態でヘキサメチレンテトラミンが含有されているので、ヘキサメチレンテトラミンは変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物とともにフィラーと均一に混練されることになるものであり、成形材料を均一に硬化反応させることができ、均質で安定して高い物性を有する成形品を成形することができるものである。
【0060】
不織布は、繊維を水に分散させると共に樹脂バインダーを水中に分散させ、このスラリーを抄造して乾燥することによって、繊維を樹脂バインダーで結合させたものとして得ることができるが、この樹脂バインダーとして、本発明の変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物を用いることができるものである。
【0061】
ここで、フェノール樹脂の硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを用いる場合、繊維や樹脂バインダーを分散させたスラリーにヘキサメチレンテトラミンを添加することになるが、ヘキサメチレンテトラミンは水に容易に溶解するので、スラリーを抄造しても水と共に流れ落ちて抄造物に残らない。このためフェノール樹脂バインダーの硬化不足によって不織布の強度が低下するおそれがある。
【0062】
これに対して、本発明の変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物には、フェノール樹脂の骨格に結合した状態でヘキサメチレンテトラミンが含有されているので、スラリーを抄造した際に、ヘキサメチレンテトラミンは変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物と共に抄造物に残ることになるものであり、フェノール樹脂バインダーが十分に硬化し、強度の高い不織布を得ることができるものである。
【0063】
そして、上記の成形材料を成形して、フェノール樹脂が硬化反応する温度以上に加熱して熱不融性に硬化させることによって、硬化物を得ることができる。また、上記の変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物を、フェノール樹脂が硬化反応する温度以上に加熱して熱不融性に硬化させることによっても、硬化物を得ることができる。
【0064】
フェノール樹脂は酸素を遮断した雰囲気で加熱すると高い収率で炭化物を得ることができる。従って、フェノール樹脂の硬化物をこのように酸素を遮断した雰囲気で加熱して得られる炭化物は、天然のヤシ殻を炭化させたヤシ殻活性炭などに比べても、炭化物純度が高いものであり、またポアー径が均一であり、かさ密度が安定しているために充填性が良好であるなどの特長を有する。
【0065】
そしてフェノール樹脂として本発明の変性フェノール樹脂やフェノール樹脂組成物を用いる場合、ヘキサメチレンテトラミンはフェノール樹脂骨格に均一に結合されているために、硬化物は均質であって、この硬化物から得られる炭化物も均質な品位の高いものとなるものである。
【0066】
ここで、酸素を遮断した雰囲気とは、フェノール樹脂が酸化されない雰囲気であればよく、例えばアルゴン、ヘリウム、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に設定することができる。また加熱条件は、400〜3000℃、1〜100時間に設定するのが好ましい。
【0067】
また、この炭化物の比表面積や細孔容積をさらに大きくする賦活処理を行なうことによって、活性炭を得ることができる。賦活処理は、水蒸気や二酸化炭素等を用いた気相賦活法、溶融水酸化カリウム等を用いた薬液賦活法などで行なうことができる。
【0068】
上記の炭化物や活性炭は、吸着剤、電池用負極材などに使用することができる。
【実施例】
【0069】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0070】
(実施例1:ノボラック型の変性フェノール樹脂の製造)
反応容器にフェノール940質量部、37質量%濃度のホルマリン650質量部、触媒としてシュウ酸4.2質量部を仕込み、攪拌を開始した後、約60分を要して沸騰還流させ、そのまま4時間、付加縮合反応させた。次に脱水を開始して、内温が115℃になるまで脱液を行ない、次いで冷却を開始して、70℃まで冷却を行なった。
【0071】
次にこれに、予め水60質量部にヘキサメチレンテトラミン113質量部を加えて混合溶解した水溶液を添加し、15分間攪拌して反応させた。このとき、内温は60℃にまで下がった後、発熱して68℃まで上昇した。このことから、ヘキサメチレンテトラミンによる付加反応が生じたものと考えられる。
【0072】
この後、反応生成物をステンレス製のバットに払い出して、このバットを−15℃にセットした冷凍庫に入れて冷凍した。次にこの冷凍物を粗砕機で2mm以下の粒径に粗砕し、粗砕後直ちに図1の流動床型乾燥装置で乾燥した。
【0073】
このようにして、微黄濁色のノボラック型の変性フェノール樹脂を得た。このノボラック型変性フェノール樹脂においてヘキサメチレンテトラミンの含有量は12質量%であった。またこのノボラック型変性フェノール樹脂は粒径10μm以下の粉末にして使用した。
【0074】
上記のようにして得たノボラック型変性フェノール樹脂について、軟化点、150℃におけるゲル化時間、固定炭素量をJIS K6910に準拠して測定した。その結果、軟化点は88℃、ゲル化時間は49秒、固定炭素量は56.2質量%であった。
【0075】
(比較例1:ノボラック型フェノール樹脂の製造)
上記の実施例1において、フェノールとホルマリンを付加縮合反応させた後、内温が200℃になるまで脱液を行ない、ヘキサメチレンテトラミンを反応させることなく、バットに払い出し、冷却して粉砕することによって、ノボラック型フェノール樹脂を得た。
【0076】
このノボラック型フェノール樹脂において、軟化点は84.3℃、ヘキサメチレンテトラミンを12質量%混合したときのゲル化時間は57秒、固定炭素量は53.1質量%であった。
【0077】
(実施例2:レゾール型の変性フェノール樹脂の製造)
反応容器にフェノール564質量部、37質量%濃度のホルマリン681質量部、触媒として25質量%濃度のアンモニア水163質量部を仕込み、攪拌をしながら、約60分を要して65℃まで昇温させ、この温度で5時間反応させた。次に0.02MPa(150トール)まで減圧して、450mlの脱液をした。
【0078】
この後、常圧に戻し、予め水100質量部にヘキサメチレンテトラミン55質量部を加えて混合溶解した水溶液を加えて、30分間攪拌して反応させた。
【0079】
この後、反応生成物をステンレス製のバットに払い出して、このバットを−15℃にセットした冷凍庫に入れて冷凍した。次にこの冷凍物を粗砕機で2mm以下の粒径に粗砕し、粗砕後直ちに図1の流動床型乾燥装置で乾燥した。
【0080】
このようにして、黄色透明のレゾール型の変性フェノール樹脂を得た。このレゾール型変性フェノール樹脂においてヘキサメチレンテトラミンの含有量は10質量%であった。
【0081】
またこのレゾール型変性フェノール樹脂において、軟化点は84.6℃、ゲル化時間は125秒、固定炭素量は50.4質量%であった。
【0082】
(比較例2:レゾール型フェノール樹脂の製造)
上記の実施例2において、ヘキサメチレンテトラミンと反応させることなく、バットに払い出し、後は上記と同様に冷凍、流動床型乾燥装置による乾燥を行なうことによって、レゾール型フェノール樹脂を得た。
【0083】
このレゾール型フェノール樹脂において、軟化点は83℃、ゲル化時間は105秒、固定炭素量は46.7質量%であった。
【0084】
上記の実施例1のノボラック型変性フェノール樹脂、実施例2のレゾール型変性フェノール樹脂、比較例1のノボラック型フェノール樹脂にヘキサメチレンテトラミンを12質量%混合したものを、それぞれステンレス製バットの上に広げ、92%RHの高湿雰囲気に放置して、それぞれの質量変化を測定した。結果を図2に示す。
【0085】
図2にみられるように、比較例1のノボラック型フェノール樹脂にヘキサメチレンテトラミンを混合したものは、質量増加の変化率が大きい。これは、主としてノボラック型フェノール樹脂に混合したヘキサメチレンテトラミンが吸湿したことによるものである。一方、実施例1や実施例2にもヘキサメチレンテトラミンが含有されているが、質量増加率は大幅に低下している。このことは、実施例1や実施例2では、ヘキサメチレンテトラミンは混合された状態ではなく、フェノール樹脂のフェノール骨格にヘキサメチレンテトラミンが付加するなどして、フェノール樹脂にヘキサメチレンテトラミンが化学結合していることを意味すると、考えられる。
【0086】
(実施例3〜17、比較例3〜7)
実施例1,2の変性フェノール樹脂、比較例1,2のフェノール樹脂を組み合わせて混合し、また比較例1,2のフェノール樹脂にヘキサメチレンテトラミンを混合し、フェノール樹脂組成物を調製した。そしてこれらのフェノール樹脂組成物について、150℃におけるゲル化時間と固定炭素量を測定し、結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
表1にみられるように、各実施例の変性フェノール樹脂は、長い時間を要することなくゲル化させることができ、別途ヘキサメチレンテトラミンを配合する必要がないことが確認された。
【0089】
(実施例18〜21、比較例8〜9)
耐火骨材として、電融マグネシア(MgO含有率98.3質量%)80質量部、天然黒鉛(固定炭素量98質量%)18質量部、Al粉末2質量部を用いた。
【0090】
そしてこれをミキサーに投入すると共に、実施例1,2の変性フェノール樹脂、比較例1,2のフェノール樹脂、エチレングリコール、ヘキサメチレンテトラミンを表2の配合量で投入し、10分間混練した後に払い出すことによって、耐火物組成物として、湿潤状態の混練物を得た。
【0091】
次に、この混練物を調製した翌日(1日後)に、油圧プレスを用いて147MPa(1500kgf/cm)の圧力で成形し、得られた成形物を200℃で2時間、加熱硬化させることによって耐火物レンガを得た。このレンガについて、かさ比重、曲げ強さを測定した。またレンガから50×50×50mmのテストピースを切り出し、コークスブリーズ中で1400℃、3時間還元焼成した後の気孔率を測定した。結果を表2に示す。
【0092】
また、上記の混練物をスレンレスバットに開放状態で室内に1週間放置して養生した後、同様に耐火物レンガを成形して、かさ比重、曲げ強さを測定した。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
表2にみられるように、各実施例のものは、曲げ強さが高く、比較例より高い物性を有するものであった。
【0095】
(実施例22〜26)
耐火物粒子としてフラタリーけい砂とパールけい砂を用いた。そして145℃に加熱したフラタリーけい砂15kgとパールけい砂15kgをワールミキサーに入れ、実施例1,2の変性フェノール樹脂、比較例1,2のフェノール樹脂を表3の配合量で加え、30秒間混練した後、さらに水450gを添加し、砂粒が崩壊するまで混練した。次いで、ステアリン酸カルシウム30gを添加して30秒間混練した後、これをワールミキサーから払い出し、エアレ−ションを行なって冷却することによって、けい砂の表面にフェノール樹脂を1.5質量%の被覆量で被覆したレジンコーテッドサンドを得た。
【0096】
このとき、混練中のホルムアルデヒド臭は弱いものであり、またさらさらと流動性が良好なものであった。
【0097】
(比較例10〜11)
比較例1,2のフェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンを表3の配合量で加えるようにした他は、上記(実施例22〜26)と同様にしてレジンコーテッドサンドを得た。尚、比較例10は、予めヘキサメチレンテトラミンを水に溶解して加えるようにした。また混練中のホルムアルデヒド臭は強いものであった。
【0098】
上記のようにして実施例22〜26、比較例10〜11で得たレジンコーテッドサンドについて、融着点をJACT試験法C−1に準拠して測定し、結果を表3に示す。
【0099】
またこれらのレジンコーテッドサンドを用い、JIS K6910の曲げ強さ試験法に従って鋳型用の試験片を造型し、この試験片について曲げ強さを測定した。結果を表3に示す。
【0100】
また、これらのレジンコーテッドサンドを、予め150℃に加熱した20×10×80mmのキャビティを有する金型に吹き込んで充填し、このキャビティ内に、0.4MPaの飽和水蒸気を設定温度350℃に加熱して調製した過熱水蒸気を0.18MPaの圧力で30秒間吹き込んだ(吹き出し温度220℃、流量45kg/h)。このようにして造型した鋳型用の試験片について、JIS K6910の曲げ強さ試験法に準拠して曲げ強さを測定した。結果を表3に示す。
【0101】
【表3】

【0102】
表3にみられるように、各実施例で作製した鋳型は強度が高く、また各実施例では造型中の悪臭が少ないものであった。
【0103】
(実施例27〜31)
木粉50質量部に、実施例1,2の変性フェノール樹脂、比較例1,2のフェノール樹脂を表4の配合量で加え、さらに内部離型剤としてステアリン酸亜鉛を1質量部加え、これを混合した後、90〜110℃の温度でロール混練し、さらに粉砕することによって、成形材料を得た。
【0104】
(比較例12〜13)
木粉50質量部に、比較例1,2のフェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンを表4の配合量で加え、さらに内部離型剤としてステアリン酸亜鉛を1質量部加え、これを混合した後、90〜110℃の温度でロール混練し、さらに粉砕することによって、成形材料を得た。
【0105】
実施例27〜31、比較例12〜13で得た成形材料を、予め150℃に加熱した、130mm×150mmのキャビティを有する金型に入れ、これを圧力15MPa、加圧時間15分の条件で成形した。この成形品から厚さ2mm、幅20mm、長さ7cmの短冊状の試験片を切り出した。
【0106】
またこの成形品を150℃に設定した熱風循環式乾燥機中で6時間熱処理した後、厚さ2mm、幅20mm、長さ7cmの短冊状の試験片を切り出した。
【0107】
そして(株)島津製作所製のオートグラフ「AG−10TA」を用い、支点間距離64mm、荷重速度2mm/minの条件で、熱処理前と熱処理後の試験片について、曲げ強さを測定した。結果を表4に示す。
【0108】
【表4】

【0109】
表4にみられるように、各実施例の成形品は曲げ強度が高いものであった。
【0110】
(実施例32〜33)
天然黒鉛(純度98質量%、平均粒子径30μm)75質量部、アラミドパルプ10質量部、PET繊維(12T×5mm)5質量部、実施例1,2の変性フェノール樹脂を表5の配合量で、20倍量の水に分散させ、スラリーを調製した。そしてこのスラリーを手抄き法で、秤量300g/m、厚さ0.50〜0.55mmに抄造し、50℃の熱風循環式乾燥機中で乾燥させて不織布を得た。
【0111】
次に不織布から幅25mm、長さ80mmの寸法を切り出し、これを12枚重ねにして、油圧プレスを用いて熱盤温度170℃、成形圧力40MPa、5分間の条件で成形した。そしてこの成形板を幅20mmに切り出し、(株)島津製作所製のオートグラフ「AG−10TA」を用い、曲げ強さ、曲げ弾性率、曲げ歪みを測定した。結果を表5に示す。
【0112】
(比較例14)
比較例1のフェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンを表5の配合量で加えるようにした他は、上記(実施例32〜33)と同様にした。
【0113】
【表5】

【0114】
表5にみられるように、比較例14の曲げ強度は実施例32〜33のものの1/4以下である。これは、フェノール樹脂の硬化剤としてスラリーに添加したヘキサメチレンテトラミンが水に溶解して、抄造の際に水とともに殆どが抜けてしまい、不織布に残らないためであると考えられえる。
【0115】
(実施例34)
実施例1のノボラック型変性フェノール樹脂をステンレス製のバットの上に広げ、予め100℃に庫内温度を設定した乾燥機中に入れて10時間養生し、さらに120℃で5時間養生することによって、ノボラック型変性フェノール樹脂を不溶不融状態に硬化させた硬化物を得た。
【0116】
次にこの硬化物を冷却した後、0.5mmの篩い網を備えたハンマークラッシャーで粉砕して、硬化物の粒子を得た。
【0117】
そしてこの硬化物粒子を窒素雰囲気下、100℃/hの昇温速度で800℃まで昇温し、800℃で3時間保持する条件で熱処理することによって焼成し、フェノール樹脂炭化物の粒子を得た。この炭化物の収率は57.2質量%であった。
【0118】
(実施例35)
実施例2のレゾール型変性フェノール樹脂を用いるようにした他は、上記(実施例34)と同様にしてフェノール樹脂炭化物の粒子を得た。この炭化物の収率は51.5質量%であった。
【0119】
(比較例15)
比較例2のレゾール型フェノール樹脂を用いるようにした他は、上記(実施例34)と同様にしてフェノール樹脂炭化物の粒子を得た。この炭化物の収率は52.1質量%であった。
【0120】
上記の実施例34〜35、比較例15で得たフェノール樹脂炭化物を、水蒸気流量5ml、窒素流量2l/minの流速で流通されるロータリーキルンの通される水蒸気と窒素の混合ガス雰囲気下、850℃で2時間処理することによって賦活し、活性炭を得た。
【0121】
このようにして得られた活性炭について、比表面積をQUANTACHROME社製比表面積測定装置「NOVE2000」により、BET多点法で測定した。結果を表6示す。
【0122】
【表6】

【0123】
表6のように、各実施例の活性炭は比較例のものよりも比表面積が大きく、吸着性能が高いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂にヘキサメチレンテトラミンを反応させて得られたことを特徴とする変性フェノール樹脂。
【請求項2】
フェノール樹脂がノボラック型フェノール樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の変性フェノール樹脂。
【請求項3】
フェノール樹脂がレゾール型フェノール樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の変性フェノール樹脂。
【請求項4】
常温で固形であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の変性フェノール樹脂。
【請求項5】
フェノール類とアルデヒド類を反応させて得られるフェノール樹脂の初期縮合物にヘキサメチレンテトラミンを加え、ヘキサメチレンテトラミンが開環しない温度でヘキサメチレンテトラミンをフェノール樹脂の初期縮合物に反応させることを特徴とする変性フェノール樹脂の製造方法。
【請求項6】
請求項5の変性フェノール樹脂の製造方法において、ヘキサメチレンテトラミンをフェノール樹脂の初期縮合物に反応させた後、得られた含水反応物を冷凍し、この冷凍物を粉砕した後に、流動床型の乾燥装置で乾燥して、固形物として得ることを特徴とする変性フェノール樹脂の製造方法。
【請求項7】
フェノール樹脂と、請求項1乃至4のいずれかに記載の変性フェノール樹脂とを混合して成ることを特徴とするフェノール樹脂組成物。
【請求項8】
フェノール樹脂がノボラック型フェノール樹脂であることを特徴とする請求項7に記載のフェノール樹脂組成物。
【請求項9】
フェノール樹脂がレゾール型フェノール樹脂であることを特徴とする請求項7に記載のフェノール樹脂組成物。
【請求項10】
請求項2に記載の変性フェノール樹脂と、請求項3に記載の変性フェノール樹脂とを混合して成ることを特徴とするフェノール樹脂組成物。
【請求項11】
耐火骨材と樹脂バインダーとを必須成分として含有する耐火物組成物であって、樹脂バインダーとして、請求項1乃至4に記載の変性フェノール樹脂と、請求項7乃至10に記載のフェノール樹脂組成物から選ばれる少なくとも一つを用いて成ることを特徴とする耐火物組成物。
【請求項12】
耐火物粒子の表面を樹脂バインダーで被覆した鋳型用レジンコーテッドサンドであって、樹脂バインダーとして、請求項1乃至4に記載の変性フェノール樹脂と、請求項7乃至10に記載のフェノール樹脂組成物から選ばれる少なくとも一つを用いて成ることを特徴とする鋳型用レジンコーテッドサンド。
【請求項13】
請求項1乃至4に記載の変性フェノール樹脂と、請求項7乃至10に記載のフェノール樹脂組成物から選ばれる少なくとも一つを樹脂バインダー成分として含有して成ることを特徴とする成形材料。
【請求項14】
繊維を樹脂バインダーで結合して作製される不織布であって、樹脂バインダーとして、請求項1乃至4に記載の変性フェノール樹脂と、請求項7乃至10に記載のフェノール樹脂組成物から選ばれる少なくとも一つを用いて成ることを特徴とする不織布。
【請求項15】
請求項1乃至4に記載の変性フェノール樹脂と、請求項7乃至10に記載のフェノール樹脂組成物から選ばれる少なくとも一つを、硬化反応する温度以上に加熱して熱不融性に硬化させたことを特徴とする硬化物。
【請求項16】
請求項15に記載の硬化物を、酸素を含まない雰囲気で加熱して炭化させたことを特徴とする炭化物。
【請求項17】
請求項16に記載の炭化物を、賦活処理したことを特徴とする活性炭。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−21093(P2011−21093A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166834(P2009−166834)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000115658)リグナイト株式会社 (34)
【Fターム(参考)】