説明

変色防止バリアを有する多層乾燥塗料化粧板

装飾的乾燥塗料壁フィルムは、乾燥塗料層(12)、該乾燥塗料層の片面上の感圧性接着層(18)、及び該感圧性接着剤(PSA)と反対側において該乾燥塗料層と、剥離可能な状態で接触している、剥離ライナー(20)を含む。該剥離ライナーは、該乾燥塗料層(12)と接触している、艶消し剥離コート層(22)を含む。該剥離ライナーは、該PSA側が、壁に接着された後に、該乾燥塗料層から剥ぎ取られる。該艶消し剥離コートは、該剥離ライナーが剥ぎ取られた際に、該乾燥塗料層に艶消し仕上げを転写する。該壁フィルムは、バリア層(16)を含み、塗装された壁表面からの、アゾ-型の顔料移動によって引起される、該乾燥塗料層中の着色剤の大幅な変色から、これを保護する。一態様における該バリア層は、エチレンービニルアルコールポリマー及び一態様ではウレタン材料を包含する分散されたポリマー材料を含む乾燥エマルションを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥塗料転写積層体に関連し、より詳しくは壁表面に、色彩を持つ層を適用するための、化粧板又は壁フィルムに関するものである。本発明の壁フィルムは、壁フィルムの塗装された壁表面から色彩生成層への、顔料又は染料の移動によって生じる、変色に対して抵抗性である。
【背景技術】
【0002】
装飾用の多層乾燥塗料積層体の薄いシート又は壁フィルムは、表面に色彩を適用するために、結合層、典型的には接着剤によって、塗装すべき表面に、接着によって適用することができる。この発明の壁フィルムは、従来の壁紙の代替品を与える。壁紙用糊剤を、従来の壁紙に適用し、あるいは予め糊付けした壁紙を水に浸漬する、馴染みの段階は、多大な時間を要し、面倒であり、また付随的な清浄化をも必要とする。これらの問題点は、本発明の壁フィルムによって回避され、該壁フィルムは、より一層短期間の間に、壁上に適用しまた張り替えることができる。偽装仕上げ等の特殊な色彩効果を、一回の塗布により適用でき、また該壁フィルムは、事実上消失し、結果として該壁を、クローズアップ状態で及び異なるアングルで見た場合においてさえ、容易に目に付くことがないように、継ぎ目を重ね合わせて適用することができる。壁に適用されるような、該壁フィルムは、極めて薄く、従来の壁紙よりもかなり薄いので、実質上目に付かない、重なり合った継ぎ目を持つ壁フィルムを適用することによって、部屋を、新たな色彩効果によって装飾することができ、また従来の壁紙の適用に比して、その適用工程を迅速化する。
【0003】
本発明の壁フィルムは、一般的に乾燥塗料の1又はそれ以上の化粧(装飾)層を含む、乾燥塗料転写シートを含み、該装飾層は、着色された乾燥塗料層又は着色層、透明な保護用クリアコート層、及び1又はそれ以上のプリントコートを含むことができ、該プリントコートは、必要ならば偽装パターン等の様々な視覚上のデザインを与えることができる。感圧性接着剤等の接着層は、該装飾用乾燥塗料層に適用される。
該壁フィルムの該装飾用塗料層部分は、好ましくは従来の室内壁塗料を模倣する、1又はそれ以上の着色された乾燥塗料の層を含む。該壁フィルムは、適当な表面、例えば平坦な二次元の室内壁表面に適用することができるが、このフィルムは、角部に適合し、また湾曲した壁表面に確実に固定すべく、貼り付けるのに十分に可撓性である。
壁表面内又はその上における異物又は薬物、例えば塗装された表面における顔料は、該壁フィルムの結合層内に可溶化(即ち、溶解)され、該壁フィルムの着色された色彩生成層まで移動する可能性がある。該壁フィルムの変色は、該結合層を介して、該壁フィルムの該色彩生成層内に移動する、一般的な壁塗料中に見られる有機顔料又は染料によって引起される可能性がある。例えば、一成分として黄色顔料、又はそれほど顕著ではないが、橙色又は赤色の顔料又は染料を含む壁塗料において使用される、アゾ-型の顔料は、移動して、変色を引起す可能性がある。
【0004】
本発明は、移動性のある着色成分を含む有機物質を含む可能性のある、塗装された基板表面と接触させるのに適した、多層壁フィルムを提供する。本発明は、特にこのような有機着色成分を含む、塗装された表面が、この色の移動に関する問題を回避すべく改良することのできないような状況に対応する。この問題に応えて、本発明は1又はそれ以上のバリア層を含む壁フィルムを提供し、該バリア層は、該移動性の着色物質及び特にアゾ-型の顔料を含有する物質の遮断若しくは捕獲を助ける。該バリア層は、このような塗装された表面と接触状態にある該フィルムによって引起される、該壁フィルム内の1又はそれ以上の着色層の変色を、長期間阻止する。
バリア層を該壁フィルムに組込んで、該色彩生成層の変色を、長期に渡り阻止するものの、該バリア層の付加は、該壁フィルムの他の必須の諸特性に悪影響を与えるべきではない。これら特性は、伸び率又は可撓性、及び被膜間接着を含むが、これらに限定されない。該バリア層の被膜質量(又は乾燥フィルム厚)も、該壁フィルムの全体としての厚みが、所定レベル以下にあって、使用中に該フィルムが、その重なり部分に沿って、視覚的に認識可能な継ぎ目を持つこと無しに、適用することができる限りにおいて、重要な特徴となる。
【発明の開示】
【0005】
簡単に言うと、本発明の一態様は、塗装された表面に色彩を持つ層を設けるための多層積層体を含む。この積層体は、装飾用乾燥塗料層及び該積層体を該塗装表面に接着するための、感圧性接着層を含む。この積層体は、1又はそれ以上のバリア層を含み、該バリア層は、該接着層を介して該表面から該積層体の該着色層への、変色を引起す顔料又は染料の移動を緩慢にし又は阻止する。一態様において、該バリア層は、インテリア用ラテックス塗料中の、アゾ-型顔料によって引起される変色を、緩慢にし又は阻止するであろう。
本発明の一態様は、装飾用乾燥塗料層を持つ、多層装飾用壁フィルムを含み、これは、乾燥塗料の着色層、該着色層の一方の側における感圧性接着層、及び該感圧性接着剤と対向する側における、該装飾用乾燥塗料層と剥離可能な状態で接触している剥離ライナーを含む。バリア層が、該装飾用乾燥塗料層と該感圧性接着層との間に設けられている。該感圧性接着層は、該壁フィルムを基板表面に接着するのに適している。該基板表面は、該接着層を介して移動することができ、また該乾燥塗料層を変色する、染料又は顔料を含有する塗装壁表面であり得る。使用に際して、該接着層は、圧力の適用下で、該壁フィルム該表面に接着し、該剥離ライナーは、引き剥がされて、該乾燥塗料層を露出させ、また該バリア層は、該表面から該乾燥塗料層への顔料又は染料の移動を効果的に遅延させる。
【0006】
一態様において、該バリア層は、該接着層を介して該塗装表面から該着色層への、変色を引起す成分の移動を防止し、又は大幅に遅延するのに有効な形状で、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)コポリマーを含有する、薄い可撓性の層を含む。黄色染料の移動に関する促進老化テストは、着色層と接着層との間に、このようなバリア層を全く含まない同様な壁フィルムと比較した場合に、本発明の様々な形態に関して、変色防止におけるかなりの改善を示した。該バリア層の一態様は、変性されたEVOH-を主成分とするバリアコートを含み、該バリアコートにおいては、ポリマー材料が、EVOHコポリマーと混合され、該壁フィルムのバリア特性及び他の機能上の諸特性を改善する、安定なバリアフィルムを形成する。該EVOHバリア材料が、ウレタン材料とブレンドされている、一態様では、該壁フィルムの多くの重大な機能特性が改善される。これら特性は、変色の原因となる薬物の移動に対する、改善されたバリアを提供することに加えて、伸び率及び引張強さ等の機械的特性及び層間の接着性を包含する。該バリア層は、また該着色被膜層から該接着層への、望ましからぬ成分の移動を遅延することによって、接着特性を安定化する。
【0007】
該バリア層は、アゾ-型顔料の透過を遅延する上で特に有用であり、一方、該壁フィルムの全体としての厚みを大幅に増やすことのない、低被膜質量又はフィルム厚において存在する。該バリア層の使用は、着色被膜における顔料の量を増大して、可撓性又は引張強さを失うこと無しに、フィルムの不透明性を高めるための手段を提供する。
本発明のこれらの及びその他の局面は、以下の詳細な説明及び添付した図面を参照することによって、より完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1を参照すると、壁フィルムとも呼ばれる、多層乾燥塗料転写積層体10は、表面フィルムとして使用するのに適している。該壁フィルムは、室内の壁表面に、色彩を持つ層又は特殊な色彩効果若しくはパターンを与える用途において有用であり得る。それ故、該壁フィルムは、周囲の室温条件下で、室内の壁表面に適用するのに適したものである。その上、該壁フィルムは、このような周囲室温条件に暴露された状態で、その延長された有効寿命に渡り、該色彩を持つ層を与えるという、その機能を維持することも目論まれている。該色彩を持つ層は、従来の壁塗料の持つものと同様な、耐摩耗性、耐溶剤性及び不透明性等の属性を持つ、可撓性、保護性、かつ装飾性の乾燥塗料層によって与えられる。該壁フィルムは、また塗装された室内の壁表面に対して、該表面に対する必要な接着性を与えるための特殊な処理を何ら必要とせずに、直接適用するのに適している。より一般的な用語としての該壁フィルムは、建築物表面、例えば建物の壁、建物の装備品又はアプライアンス、家具等に適用するのに適している。該壁フィルムは、また建物の室外並びに室内の壁に適用することも可能であり、また室内の壁及び室外表面の境界又は部分等に特殊な彩色処理を施すために適用することも可能である。
【0009】
該壁フィルムは、1又はそれ以上の装飾層を含み、該装飾層は、着色された乾燥塗料層12を含み、この塗料層は、分散された顔料を含む、合成樹脂結合剤を含有する。本明細書において着色層とも呼ぶ、該着色された乾燥塗料層12は、単一被膜の着色層であり得、あるいはこれは、追加の着色された乾燥塗料層被膜又はプリントコートと組合わせることもできる。該壁フィルムの装飾部分は、該着色された乾燥塗料層12の表面に接着された、光学的に透明な合成樹脂製のクリアコート層14を含むことができる。該クリアコート層は、該下部の1又はそれ以上の着色層に対する、保護性で耐摩耗性、かつ耐溶剤性のトップコートを与える。1又はそれ以上の着色層、プリントコート及び1又はそれ以上のクリアコート層を含むことができる、これらの装飾用多層乾燥塗料転写積層体を、ここでは「装飾用乾燥塗料層(decorative dry paint layer)」と呼ぶ。
【0010】
該壁フィルムは、本発明の原理によれば、さらに可撓性ポリマーのバリア層16をも含む。このバリア層16は、該クリアコート層14と対向する側における、該着色された乾燥塗料層12の上にあり、かつこれと接着している。乾燥感圧性接着層18が、該装飾用乾燥塗料層と対向する、該バリア層の一方の側にあり、かつこれと接着している。このバリア層16は、該接着層と該装飾用乾燥塗料層との間における、成分の望ましからぬ移動を阻止し、若しくは防止するのに利用される。上記の如く、このようなバリア特性は、該感圧性接着層を介して、塗装された基板表面から該装飾用乾燥塗料層への、顔料又は染料の移動を阻止又は防止することによって、望ましくない変色を減じ若しくは回避することを含む。様々な態様での該バリア層の更なる詳細を、以下に説明する。
【0011】
該壁フィルム対向する側には、可撓性で折り曲げ可能な剥離ライナー20があり、またこれは該クリアコート層14と、剥離可能な状態で接着されている。この剥離ライナー20を、該クリアコート層14の表面24に、剥離可能な状態で接着するために、該剥離ライナーは、その内側表面上に艶消し剥離コート22を持つ。使用に際して、この剥離ライナー20は、該クリアコート層から剥ぎ取られ、該装飾用乾燥塗料層が露出する。該艶消し剥離コート22は、該剥離ライナーが、該壁フィルムの残部から剥ぎ取られた場合には、該クリアコート層から分離されるが、該剥離ライナーとは接着した状態にある。該剥離ライナー20は、また該装飾層と対向する表面上に、接着性の剥離コート層26を持つ。該接着性の剥離コート層26の露出した外側表面28は、該積層体が、図2に示すようにロール形状に巻き取られた場合には、該接着層18の露出した外側表面30と、剥離可能な状態で接触させるのに適している。
【0012】
図2を参照すると、該壁フィルム10は、該接着層18の露出した外側表面30と、剥離可能な状態で接触している、該接着性の剥離コート層26の露出した外側表面28を持つように、ロール形状に自動的に巻き取られている。従って、図2に示された該壁フィルム10が、巻かれていない場合には、該剥離ライナー上の該接着性剥離コート層26は、該接着層18の露出した外側表面30とは分離しており、かつ該剥離ライナー20と接着した状態にある。該艶消し剥離コート22は、該乾燥塗料層と接着した状態にある。
図1は、壁フィルムの一態様を示し、そこでは該バリア層16の対向する両側は、該接着層18及び該着色層12と接触した状態にある。該壁フィルムの他の態様は、また本発明によるバリア層と共に利用できる。これらは、該壁フィルムの装飾部分が、単一被膜の着色乾燥塗料層を含むことができ、該クリアコート層を省略した点を除いて、図1の態様と同様な、多層壁フィルムを含む。この例においては、該艶消し剥離ライナーは、低光沢の表面を、該単一被膜層の露出した外側表面に転写する。該積層体の装飾部分は、また1又はそれ以上の装飾用乾燥プリントコート層を含み、該着色された乾燥塗料層と該クリアコート層との間に、様々な装飾的なプリントパターンを与えることができる。
【0013】
本発明の幾つかの態様は、該壁フィルムの様々な上部層間の被膜間接着性を改善するための、1又はそれ以上の薄い可撓性のポリマー製乾燥接着層又は結合被膜を含むことができる。このような態様の一つを、図3に示したが、そこでは、第一の結合被膜層36が、該バリア層16と該着色された乾燥塗料層12との間に配置され、また第二の結合被膜層34が、該バリア層16と該感圧性接着層18との間に配置されている。
該多層積層体は、また、支持層とも呼ばれる、可撓性の強化層(図示せず)を、該着色された乾燥塗料層と該接着層との間に含むこともできる。この例において、該バリア層は、該プリントコート層と該強化層との間に適用することができ、あるいは該バリア層は、該接着層と該強化層との間に適用することができる。該強化層は、該装飾用乾燥塗料層に対する構造的な支持手段を与えることができ、また該着色された乾燥塗料層に対して付随的な不透明性を与えることができる。該強化層は、また該着色された乾燥塗料層の値よりも高い、引張強さを持つことができる。
【0014】
本発明の壁フィルムについて使用できる、多層装飾用乾燥塗料積層体の様々な態様の例は、「変色防止バリアを持つ多層乾燥塗料化粧板(Multi-Layer Dry Paint Decorative Laminate Having Discoloration Prevention Barrier)」と題する、アベリーデニソン社(Avery Dennison Corporation)に譲渡された、2004年2月13日付出願の米国特許出願第10/779,528号に詳しく記載されている。この特許出願の内容全体を、参考としてここに組入れる。
該基板表面に適用された、該壁フィルムの部分(即ち、そのクリアコート14、着色層12、バリアコート16及び接着層18)は、所定の薄い膜厚レベルにあって、隣接する壁フィルムが、使用中に重なり合う場合に、継ぎ目の可視性を最小化する。該壁フィルムの全体としての厚みは、該フィルムの完全な状態(その艶消し剥離ライナーを除いて)で該壁に適用された場合に、好ましくは約0.076mm(約3.0ミル)未満、またより好ましくは約0.051mm(約2.0ミル)未満である。一態様において、該壁フィルムは、約0.041mm(約1.6ミル)未満の全厚みを持つ。
【0015】
該着色された乾燥塗料層12は、一般に約0.013〜約0.038mm(約0.5〜約1.5ミル)なる範囲、一態様においては、約0.013〜約0.030mm(約0.5〜約1.2ミル)なる範囲、及び別の態様では、約0.013〜約0.023mm(約0.5〜約0.9ミル)なる範囲の厚みを持つことができる。該クリアコート層の厚みは、一般に約0.0013〜約0.010mm(約0.05〜約0.4ミル)なる範囲、また一態様においては、約0.0013〜約0.0076mm(約0.05〜約0.3ミル)なる範囲であり得る。一態様において、該可撓性の装飾用乾燥塗料フィルム(クリアコート、着色層及び随意のプリントコート)の厚みは、約0.015〜約0.041mm(約0.6〜約1.6ミル)なる範囲にある。
該バリア層16は、不連続な層として形成した場合、以下においてより詳しく説明するように、約6μm(約0.25ミル)未満の厚みを持つことができる。
【0016】
該接着層18の厚みは、一般的に約0.010〜約0.025mm(約0.4〜約1ミル)なる範囲、一態様においては、約0.010〜約0.020mm(約0.4〜約0.8ミル)なる範囲、及び別の態様では、約0.01〜約0.015mm(約0.4〜約0.6ミル)なる範囲であり得る。
該剥離ライナー20の厚みは、一般的に約0.013〜約0.051mm(約0.5〜約2ミル)なる範囲、一態様においては、約0.013〜約0.038mm(約0.5〜約1.5ミル)なる範囲、及び別の態様では、約0.022〜約0.027mm(約0.85〜約1.05ミル)なる範囲であり得る。該艶消し剥離コート22の厚みは、一般的に約0.0013〜約0.0076mm(約0.05〜約0.3ミル)なる範囲、及び一態様においては、約0.0025〜約0.0051mm(約0.1〜約0.2ミル)なる範囲であり得る。
該接着性剥離コート層26の厚みは、約0.0010〜約0.0051mm(約0.04〜約0.2ミル)なる範囲にあり、一態様においては、約0.0010〜約0.0038mm(約0.04〜約0.15ミル)なる範囲にあり、及び別の態様では、約0.0010〜約0.0020mm(約0.04〜約0.08ミル)なる範囲であり得る。
上記厚み各々は、乾燥フィルムの厚みである。
【0017】
乾燥塗料層及びプリントコート
一般的にいえば、本発明において有用な塗料組成物は、固形着色材料、即ち1又はそれ以上の顔料を含み、これらは従来の壁塗料と同様に、液状媒体中に懸濁され、担体に適用され、次いで乾燥されて、可撓性の不透明な乾燥塗料フィルムとなり、これは、建築物の壁表面に保護並びに装飾的被膜を与える。
1又はそれ以上の該着色された乾燥塗料層12は、1又はそれ以上のポリマー結合剤又は樹脂及び該結合剤又は樹脂中に分散された、1又はそれ以上の顔料を含むことができる。これらの層は、該1種以上の結合剤又は樹脂を含む、溶液流延性液状塗料組成物から製造することができる。これらの組成物は、水又は1又はそれ以上の有機溶剤中に分散させることができ、また場合によっては、加工特性を制御するために、1又はそれ以上の追加の添加剤を含むことができる。一態様における該着色された乾燥塗料層は、本質的に非-繊維質であり、また薄い液状フィルムの被膜として適用され、これは、乾燥後に、可撓性の不透明な塗料フィルム層となる。この塗料層は、塗布技術、例えばリバースロール塗布を包含するロール塗布、リバースグラビア塗布を包含するグラビア印刷、スロットダイ、及び流し塗り等によって適用することができる。該着色された乾燥塗料層又は該クリアコート層又は該バリア層は、各々独立に、同時押出し及び押出し被膜を含む、1又はそれ以上の押出し層を含むことができる。
【0018】
壁塗料処方物において従来から使用されている任意の結合剤又は樹脂を使用することができる。該結合剤は、熱可塑性又は熱硬化性樹脂を含むことができる。有用な結合剤又は樹脂の例は、一般的に合成ラテックス樹脂、アクリル樹脂、ビニル、ポリエステル、アルキッド、ブタジエン、スチレン、ウレタン、及びエポキシ樹脂、並びにこれらの混合物を含む。より具体的には、該結合剤又は樹脂は、1又はそれ以上のポリスチレン;ポリエチレン及びポリプロピレンを含むポリオレフィン;ポリアミド;ポリエステル;ポリカーボネート;ポリビニリデンフルオライド;ポリ塩化ビニル;ポリビニルアルコール;ポリエチレンビニルアルコール;脂肪族及び芳香族ポリウレタンを包含するポリウレタン;ポリアクリレート;ポリ酢酸ビニル;イオノマー樹脂;及びこれらの混合物を含む。
該顔料は、装飾的被膜を製造する際に使用されている任意の顔料であり得る。これらは、不透明化顔料、例えば二酸化チタン及び酸化亜鉛、並びに当分野において公知の色味顔料を含む。フィラー顔料、例えばクレー、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、カオリンクレー及びマイカも、塗膜及び塗料処方物において伝統的に使用されている公知の量で、添加することができる。
【0019】
該溶剤は、1又はそれ以上の有機溶剤を主成分とする溶媒又は水であり得、あるいは水を主成分とする溶液を使用して、該結合剤又は樹脂と共に水性エマルションを形成することも可能である。水性の溶液は、水-アルコール混合物を含む。
使用できる付随的な成分は、湿潤剤;可塑剤;懸濁助剤;凝集剤;界面活性剤;増粘剤;シリカ等のチキソトロープ剤;ポリシロキサン化合物等の撥水性添加剤;難燃性添加剤;殺生物剤;殺菌剤;消泡剤;及び流動化剤を包含する。
該乾燥塗料層を形成するのに使用される、該液状塗料又は塗布組成物に対する該顔料の濃度は、約10〜約30質量%なる範囲、及び一態様においては、約13〜約27質量%なる範囲であり得る。該結合剤又は樹脂の濃度は、約20〜約40質量%なる範囲、及び一態様においては、約22〜約37質量%なる範囲であり得る。該水又は有機溶媒の濃度は、約30〜約70質量%なる範囲、及び一態様においては、約40〜約60質量%なる範囲であり得る。湿潤剤、懸濁剤等の追加の成分は、約5質量%までの濃度を持つことができる。該乾燥塗料層を形成するのに使用される、該塗布又は塗料組成物は、約9〜約16%なる範囲の顔料体積濃度(不揮発性成分の全体積で割った、顔料体積)を持つことができる。顔料体積濃度は、該装飾フィルムの可撓性及び適性に再配置されるその能力を調節することができる。顔料の量が多過ぎると、得られるフィルムを著しく脆弱なものとする恐れがあり、また低い顔料体積濃度は、過度に伸びたフィルムを生成する恐れがある。
該壁フィルムの該着色層を形成するのに使用できる、他の結合剤物質、無機フィラー、接着促進物質、溶剤、添加剤、及び加工助剤は、上で言及した、特許出願第10/779,528号に、さらに詳細に記載されている。
【0020】
透明クリアコート層
該クリアコート層14は、単一の被膜層又は多数の被膜を含むことができ、また該着色層において使用するための、上記のポリマー結合剤物質の何れかを含むことができる。該クリアコート層は、また上において言及した、様々な溶媒から処方することも可能であり、また上記の流込み又は塗布技術によって適用することができる。上記の如く、このクリアコート層は、押出すことも可能である。一態様において、該クリアコート層は、該壁フィルムの艶消し仕上げの光沢を下げるために、分散されたフィラー、例えばシリカを含むことができる。該クリアコート層は、耐摩耗性、水又は溶剤耐性、及び従来の塗料の靭性といった保護特性を持つ、可撓性装飾用乾燥塗料フィルムを生成するために、該着色層と協働する。該クリアコート層は、高い耐擦り傷性、耐汚染性及び/又は下部にある該着色された1又はそれ以上の乾燥塗料層に対する再塗布性を与える。該クリアコート材料は、該剥離ライナーと接着し、使用の際に該剥離ライナーから剥ぎ取るのに適しており、かつ所定レベルの表面光沢を与える。一態様において、該クリアコート層は、アクリル樹脂材料を含む乾燥トップコートを含む。
【0021】
強化層
該随意の強化層は、上記結合剤又は樹脂の何れかから製造することができる。この層は、溶液又はエマルションから製造し、また以下に記載するような任意の塗布技術を利用して適当することができる。この層は、また押出すことも可能である。該強化層は、該壁フィルムの不透明性を増強する目的で、1又はそれ以上の上記顔料を含むことができる。
感圧性接着層
該乾燥接着層18は、圧力の印加の下で、室温にて、該装飾的積層体を基板表面に結合する、感圧性接着剤(PSA)を含むことができる。一態様において、該接着層は、低い初期粘着性を持つ、再配置可能な接着剤であり、より恒久的な結合を形成する前に、該積層体の僅かな移動を可能とし、結果として設置位置の調節を可能とする。この接着剤は、室温にて抑制された粘着性の初期レベルを有し、そのため該積層体を基板表面に接着し、また該装飾用乾燥塗料層から該艶消し剥離ライナーを除去した後に、再度接着することが可能となる。該接着層は、該乾燥塗料層を該基板に永久的に結合するのに十分な時間の経過によって、引き続く接着の強化を生じる。該接着層は、該積層体が基板に適用された際に、その僅かな制限された量のみの、該基板の境界を越えるオーズを生成することによって特徴付けられる。(ここで、「オーズ(ooze)」とは、該積層体構造の端部を越えて、該接着剤が溢れ出る時間として定義される)。一態様において、オーズは全く生成されない。
【0022】
一般的にいえば、該接着剤は、感圧性;水性;水搬送性;溶剤型;紫外光及び電子ビーム硬化性接着剤;ホットメルト感圧性接着剤;水性感圧性接着剤;水系感圧性接着剤;静的(static)接着剤;静電接着剤;及びこれらの組合せからなる群から選択される。
以下に記載する本発明の一態様において、該感圧性接着剤は、架橋されたアクリル系樹脂材料、及びより具体的には架橋されたアクリル樹脂エマルションを含む。特に有用な接着剤用は、内部において架橋されたアクリル樹脂エマルションを含む。高分子量アクリル系接着剤及び外部において架橋されたアクリル系接着剤を使用して、機能特性の所定の組合せを得ることも可能である。
該アクリル系接着剤に加えて、該感圧性接着剤は、ゴム系の接着剤、ビニルエーテル接着剤、シリコーン接着剤、又はこれらの混合物を含むことができる。ホットメルト、有機溶剤系又は水性接着剤として、該壁フィルムに適用することができる。
【0023】
該接着層は、またこれを覆う該塗料フィルム層の不透明性を高めるために、1又はそれ以上の顔料を含むことができ、また所定レベルの不透明性を達成するために、より薄い塗料フィルム層の使用を可能とする。上で明らかにした顔料の何れを使用することも可能である。その例は、二酸化チタン及びカーボンブラックを含む。その顔料体積濃度は、約10%までであり、一態様においては、約5〜約10%なる範囲にあり、また別の態様では、約2〜約8%なる範囲であり得る。
該壁フィルムにとって有用な感圧性接着剤は、比較的低い粘着性及び剥離力レベルを有し、また比較的低い室温における流動特性を持つ。アクリル系のエマルションPSAsは、このようなPSAsが、望ましい低粘着性、剥離力及び流動特性の組合せをもたらす、比較的高い凝集強度を持つ接着剤物質を生成するような、架橋のレベルを持つ場合に、特に有用である。該架橋レベルが適度に調節されている有用なPSAsの例は、アクリル系のエマルションPSAs、例えば純ポリマー(ブチルアクリレート又は2-エチルヘキシルアクリレート又は2-エチルヘキシルアクリレート/ブチルアクリレート)PSAs又は同様な着色されたポリマー又はコポリマー材料を包含する。
【0024】
特に有用なPSAは、内部において架橋されたアクリル系エマルションPSA、例えばブチルアクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートとの、非-粘着性の架橋コポリマーエマルションである。この接着剤は、製品No.S-3506としてアベリーデニソン社から入手できる。このPSAの着色された形態は、96.8%のS-3506接着樹脂、2.87%のUCD 1106E二酸化チタン、及び0.33%のUCD 1507Eカーボンブラックを含む。
本発明において有用であり得る他の感圧性接着剤は、米国特許出願第10.779,528号により詳細に記載されている。
バリア層
該バリア層16は、望ましからぬ変色の原因となる顔料の透過を、阻止又は遅延して、該着色層の変色又は色変移を、該壁フィルムの有効寿命の間、本質的に知覚できないレベル内に、効果的に維持する。ここに記載する促進老化テストは、通常の使用条件下で、変色に対して妥当な長期間に渡り抵抗性であることを規定するための、客観的な測定値を与える。該装飾的フィルムが、適用される通常の使用条件及び該フィルムの通常の使用条件は、一般的に約4℃(40°F)〜約35℃(90°F)、及びより特定的には約15℃(60°F)〜約27℃(80°F)なる範囲の温度として既定される室温条件である。
【0025】
通常の使用条件の下で、該壁フィルムの評価された有効寿命中に起り得る、色変移の量を近似しかつ予測するために、フィルムサンプルを、促進老化技術によりテストし、これら条件下における色変移を測定した。(より高い温度は、変色の原因となる成分の移動を促進する)。一テスト法において、色変移は、室内用ラテックステストサンプルの色と、室内用ラテックス色標準とを比較し、次いで該テストサンプル及び該標準を60℃(140°F)の環境に、約400時間(16日間)暴露することによって測定する。別の促進老化テストでは、壁フィルム及びテスト標準を、40℃から90℃までの異なる温度に、各温度にて約1,000時間暴露する。該テストサンプルは、色変移につき測定し、標準と比較して、色変移の量を測定する。
【0026】
一テストによれば、色変移は、ASTM E1164, E308及び805テスト手順の下で測定する。測定値の単位は、C.I.E.b*(黄色対青軸)である。色の変化、即ちΔb*は、該テストサンプルのb*値から、標準のb*値を差引くことにより算出する。他の色変移測定値を、色変移が、指定された範囲内にあるか否かを、決定するために利用できる。これらの色変移測定技術は、青色に塗装したサンプルにおける、モノ-アゾ顔料又は染料からの黄色成分の移動による色変移を測定することによって、色変移が、許容できる程度に低いか否かを評価する上で有用である。一態様において、該色変移は、60℃、400時間のテストが、約0.40Δb*C.I.E.カラーユニットに等しいか、又はそれ未満の色変移を発生した場合、本発明の壁フィルムとして許容できる範囲内とするのに十分に低いものと考えられる。テストは、本発明のバリア被膜に対して、少なくとも1000時間に渡り、このように低い色変移を示した。
【0027】
ここに記載した様々なテスト法は、本発明の該バリア層16が、このようなバリア層を含まない同様な壁フィルムと比較した場合に、塗装された表面から、PSA層を介し、また乾燥塗装着色層への、該アゾ-型の色成分の変移を遅延させることを明らかにした。ヘンサ(Hensa)10Gイエロー(Yellow)及びピグメントイエロー(Pigment Yellow) 74は、該壁フィルムを通して移動できる、アゾ-型顔料の例である。パイロットテストは、該バリア層が、90℃にて最低48時間暴露した際に、ヘンサ10Gイエロー及びピグメントイエロー74の、塗装された壁表面から、該壁フィルムの装飾的着色層への移動を阻止する上で有効であることを示し、一方でこのようなバリア層を含まない同様な壁フィルムは、同一の条件下で、事実上即座に変色を示した。
該バリア層16は、一般的に加水分解された、酢酸ビニルとエチレンとのコポリマー、より具体的にはエチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)コポリマーを含む。このバリア物質を含むバリア層は、フィルム形状で適用されて、アゾ-型染料の移動を、様々な促進老化テストに掛けた場合に、許容できるC.I.E.Δb*標準の範囲内に、効果的に遅延する。このようなテストは、EVOH-含有バリアが、被膜質量4gにおいて60℃における1,000時間のテストに対して、黄色染料の移動を阻止することを示した。このようなバリア特性は、0.40Δb*C.I.E.カラーユニットよりも十分に低い色変移を示す。
【0028】
本発明の一形態においては、該EVOHコポリマー製のバリア材料を、生成するバリアコートを乾燥フィルム形状にした場合に、効果的なバリア特性を持つ、改善されたEVOHを主成分とするバリア材料を与える、熱可塑性ポリマー材料とブレンドする。一態様において、該EVOH成分を、ポリウレタン材料とブレンドして、2-相系を形成する。このブレンドしたバリア材料中に含まれる固形分は、約70〜約95質量%なる範囲のEVOHと、約5〜約30質量%なる範囲の熱可塑性ウレタンとを含む。該バリア材料において使用するエチレン-ビニルアルコールコポリマーは、ニッポンゴーシェイ(Nippon Goshei)社から入手できるソアノール(Soarnol)等の市販品として入手できるものである。ソアノールD-2908が好ましいEVOH材料であり、またこれは約29モル%のエチレンを含む。一般的に好ましいEVOHコポリマー材料は、約20〜約45モル%なる範囲の平均エチレン含有率を持つであろう。一般に、該EVOHコポリマーにおけるより低いエチレン含有率(より高いビニルアルコール含有率)が、アゾ-型染料等の有機物の移動に対する、より強力なバリアをもたらす。一態様においては、水系ポリウレタンポリマーを、該EVOHとブレンドされる該ポリマー材料として使用することが好ましい。このウレタン材料は、ノベオン(Noveon)から入手できるサンキュア(Sancure) 899等の脂肪族ポリエステル熱可塑性ウレタンを含むことができる。該EVOHとブレンドされる該ウレタンを主成分とするポリマー材料は、またノベオン社のサンキュア1511等の芳香族ポリエステル熱可塑性ウレタン材料を含むこともできる。
【0029】
該ブレンドされたEVOH/ウレタンバリア材料は、好ましくは熱可塑性バリア材料であるが、該バリアの一態様において、該EVOHは、バリア特性を高めるために、架橋性物質を添加することによって変性することができる。該バリア材料の架橋は、該EVOHの水/湿分耐性の改善を可能とする。場合によっては、少量の架橋剤、例えば約2〜約10%なる範囲のポリアジリデン架橋樹脂、約3〜約6%なる範囲のメラミン-HCHO、又はこれらの混合物を添加することができる。該架橋されたバリア材料の使用は、所定の色の移動に対する耐性を得る上で有用な、バリア特性を高めることを可能とする。該バリア材料の架橋は、伸び率を減じ、かつ引張強さを高めるが、熱可塑性(架橋されていない)バリア材料と比較した場合、その差は有意なものとは考えられない。層間接着に対する悪影響を回避するためには、低架橋度が好ましい。
該EVOH樹脂材料と溶媒、例えば50%水/50%イソプロピルアルコール(IPA)混合溶媒(質量基準)とを組み合わせることによって、フィルム-形成性を生じるように、該バリア材料を加工する。該IPA部分は、該バリアフィルムが、過度に迅速に乾燥するのを防止することによって、加工を助ける、n-ブタノールに置換えることができる。純粋な水性溶媒の使用に代わる、IPA等の有機溶媒の使用は、該EVOHの安定なエマルションバリアフィルムへの加工性を改善する。50%水/50%IPAの溶媒は、該EVOH/ウレタンブレンドが、全エマルションの約16質量%を構成するようなバリア被膜を生成する。該ブレンド材料におけるこのような量の樹脂固形分は、約9〜約24質量%なる範囲で変えることができる。
【0030】
得られるバリア材料は、ダイ塗装法等の塗布法によって適用することができる。該バリアフィルムを加熱乾燥して、好ましくは約6μm以下の厚みを持つ乾燥フィルムとする。一態様において、EVOHとポリウレタン材料とのブレンドを含む、乾燥フィルム形状のバリア層は、約2.5〜約4.5μmなる範囲の乾燥膜厚を持つ。
本発明の該EVOHを主成分とするバリア層は、(1) 熱可塑性(架橋されていない)のEVOHを主成分とするフィルムを含むバリア材料;(2) EVOHが、上に記載したような架橋剤を添加することにより、架橋されているバリア材料;(3) 上記のウレタン材料等のポリマー材料とブレンドしたEVOHを含有するバリア材料;及び(4) EVOHと、ポリウレタン等のポリマー材料とのブレンドであって、該EVOH成分が、添加された架橋剤により架橋されている、該ブレンドを含むバリア材料を包含する、様々な形態で製造できる。
【0031】
該EVOHを主成分とするバリア層のこれら形態は、このようなバリア層を含まない、同様な壁フィルムと比較した場合に、変色の原因となる薬物の移動に対して抵抗する、改善されたバリア特性を生じることが示された。該バリア特性は、該PSA層を介する該着色層への黄色染料の移動に対する耐性ばかりでなく、該着色されたカラーコート層から該PSA層への成分の移動に対する耐性及び該PSA層から該カラーコート層への成分の移動に対する耐性をも含む。特に、例えば、該バリア層は、可塑剤、熱安定剤の溶剤、界面活性剤/分散剤、及び顔料等の成分の、該カラーコートから該PSA層への移動に対して抵抗することができ、また溶媒、粘着剤、フィラー、可塑剤、酸化防止剤、及び顔料の該PSA層から該カラーコート層への移動に対して抵抗することができる。テスト結果は、このバリアコートを使用した場合、該PSA層、即ち介在するバリア層が存在しない場合と比較すると、PSA性能(該PSA層の脆弱化に対する耐性)が改善されることを示した。
【0032】
主としてEVOHコポリマーからなる該バリアコートは、一般的に、該カラーコート及び該PSAに対して十分な被膜間接着性を与えるために、対向する側部に結合被膜を必要とする。このような接着性の結合被膜は、エルバサイト(Elvacite) 2042等のアクリル系樹脂、MEK及びMibK等の有機溶媒、及びアベリーデニソン社のAS346OUなどのPSA材料を、該着色層及び該バリア層間の結合被膜を得るために含むことができる。アベリーデニソンのS-3506 PSAを含む結合被膜は、該EVOHバリア層と該PSA層との間に結合被膜を与えることができる。
ポリウレタン等のポリマー材料とブレンドしたEVOHで作成したバリアフィルムは、一般に良好なバリア特性を維持し、かつ該カラーコートとPSAとの界面接着性を改善する。これらのバリア層は、広い範囲の高温度領域に渡り、老化テスト条件下に置いた場合に、該壁フィルムを介する黄色染料の移動に対して抵抗性を示す。これらの改善されたバリア特性は、該バリア層の何れかの側に結合被膜がない場合に、該熱可塑性EVOH/ウレタンバリア層を用いて実現される。該バリア層自体は、該PSAと着色層との間の良好な結合被膜として機能するように、十分なコート間接着性を与える。コート間接着性におけるこの改善は、該バリア層の何れかの側における結合被膜の必要性による、付加的なフィルム厚の増大を回避することで、全体としての壁フィルムの厚みを減じることを可能とする。さらに、このバリア層材料は、該バリア層を、コーターの一回の処理で、該着色層と該PSAとの間に適用することができる点において、改善された加工性をもたらす。
【0033】
該熱可塑性EVOH/ウレタンバリア層は、またバリア層を含まない壁フィルム及びアクリル樹脂を主成分とする材料又は未変性のEVOHで作成したバリアを備えた壁フィルムと比較した場合の、該壁フィルムの高い引張強さ及び伸び率によって立証されるように、フィルムの靭性における改善をもたらす。高いフィルムの靭性は、引裂き抵抗、壁上及び角部周辺に適切に配置するための可撓性及び該壁フィルムの反復的接着性を包含するフィルムの取扱い性を改善する。対向する側に結合被膜がない場合における該バリア層の使用は、可撓性を失うこと無しに、該カラーコート中に、より多くの顔料を蓄積する可能性がある。添加された顔料は、一般にフィルムの引張強さを低下する可能性があるが、該変性されたEVOH材料は、フィルムの靭性を改善し、これはさらに多くの顔料の使用を可能とし、結果として不透明性を改善する。添加された顔料は、また良好な色の整合性の達成を可能とする。
該EVOH及びポリウレタン材料を溶媒と混合して、安定なエマルションを生成するが、このエマルションは、ダイ塗布又はグラビア塗布技術によりフィルムとし、高温度にて乾燥することができる。断面の写真は、該分散されたポリウレタン材料が、乾燥状態にある該バリア層エマルションの両面に移動して、該ポリウレタン材料の境界層を形成することを示している。これらの境界又はスキン層は、該EVOHバリアと該カラーコート及び該PSAとの接着性を改善する。
【0034】
該ブレンドしたEVOH/ウレタン材料の該EVOH成分は、該エマルションに添加された少量の架橋剤により架橋することができる。様々な架橋剤がテストされ、またこのような架橋されたEVOH/ウレタンバリア材料は、良好な黄色染料の移動に対する耐性を与え、結合被膜を付加すること無しに、十分な被膜間接着性を与えることができる。この例における、該バリアコート材料の付加的な架橋は、また引張強さ等の幾つかの機械的特性を改善できるが、一般には、フィルムの靭性及び取扱い性は、該EVOH/ウレタンバリア材料の熱可塑性形態により、より一層改善される。
ウレタン以外のポリマー材料を使用して、該変性されたEVOHバリア層を製造することができる。このようなポリマー材料は、一般にポリエステル、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、及びアクリル系樹脂材料を含む。該変性用のポリマー材料を該EVOHとブレンドして、フィルムの靭性又は被膜間接着性等の幾つかの属性を改善することができる。これらの他のポリマー材料は、該EVOH中に分散させ、また乾燥フィルム形状において、バリア特性を持つ安定なエマルションを製造することができる。上記のようなバリア特性は、該EVOHを、層間接着性の改善を可能とする、移動性のポリマー材料で変性することによって、改善することができる。
【0035】
該EVOHバリア層は、2つの方法で色の移動を遅延する。その極性の高い特性のために、該EVOHは、黄色のアゾ-型の着色剤を相溶化又は可溶化することはない。該EVOHは、また結晶性であり、従って該黄色アゾ-型着色剤の、該バリアを介する移動を可能としない、網状構造を形成する。
該バリア層は、十分に低い被膜質量にて適用して、十分に薄い乾燥フィルムの厚みを持つバリアコートを生成し、結果として該多層積層体の該装飾的部分(該剥離ライナーを除く)への過度の厚みを付加することはない。一態様において、本発明のバリア層を備えた該壁フィルムは、約0.048mm(約1.9ミル)未満なる全フィルム厚(該艶消し剥離ライナーを除く)を有する。該バリア層のフィルム厚は、好ましくは該フィルムの該装飾部分の全厚みの約10%以下である。
該バリア層は、高温度における軟化に対して耐性であり、また好ましくは50℃を越えるガラス転移点を持つ。一態様において、該バリア層は、約58℃を越えるガラス転移点、Tgを持つ。
以上、該バリア層を、一般的に、該着色されたベースコート層と該PSA層との間の、別異の層としてのその用途を説明してきた。本発明の別の形態においては、ここに記載するようなバリア材料は、該壁フィルムの1又はそれ以上の他の層に配合することも可能である。例えば、該バリア材料を該着色層に配合して、該バリア特性及びここに記載したような該バリア層の、他の属性を得ることもできる。
【0036】
艶消し剥離ライナー
該剥離ライナーは、例えばポリオレフィン、ポリエステル及びこれらの組合せを含む、ポリマー材料を含むことができる。該剥離ライナーは、乾燥塗料転写フィルムの技術において公知の如く、好ましくは可撓性で、折畳み性を持ち、耐熱性で実質上非-弾性の、自己支持性を持つ一時的な担体フィルム又は流延シートから製造できる。該剥離ライナーは、好ましくは、例えばデュポン社(DuPont)の商標であるマイラー(Mylar)、又はヘキストセラニーズ(Hoechst Celanese)社のホスタファン(Hostaphan) 2000ポリエステルフィルム等として入手できる、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の、延伸したポリマーフィルムである。
該剥離ライナーは、該ライナーが、該壁フィルムを基板表面に適用する際に剥ぎ取られるまで、該壁フィルムに構造的な保全性を与える。
該艶消し剥離コート層は、該剥離コート層と該装飾的な乾燥塗料層との間に所定レベルの粘着性を与える、上に同定した結合剤又は樹脂の何れかを含むことができる。該粘着性のレベルは、該壁フィルムの製造中、及び該壁フィルムの自己巻回性の配向にて製造する工程中、その巻き出し中、及びその基板表面への適用中を包含する、該壁フィルムの通常の取扱い中に、該接着された乾燥塗料層からの、該剥離コート層の分離を防止するのに十分なレベルである。この艶消し剥離コートは、また十分な剥離特性を持ち続け、該壁フィルムを該基板に適用した後に、接着された乾燥塗料層からの分離を容易にする。
【0037】
該艶消し剥離塗布組成物は、熱硬化性樹脂材料であり、これは乾燥のために熱に暴露すると、架橋をも行い、また該剥離ライナーと永続的に結合する。一態様において、該艶消し剥離コート用の処方物は、主な架橋性樹脂、例えばメラミン樹脂を含み、これは架橋を調節し、また該ポリエステル担体フィルムに対する接着性を与える。現時点において好ましい架橋剤は、ヘキサメトキシメチル樹脂、例えばサイメル(Cymel) 303である。適当な第一の官能性樹脂は、VAGHとして知られている、中分子量塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂等のビニル樹脂である。
該艶消し剥離コートは、第二の官能性樹脂を含むことができ、これはケムポール(Chempol) 13 1501又はランキド(Lankyd) 13-1245等のアクリル-変性アルキド樹脂であり得る。該艶消し剥離コートは、さらに架橋を促進するための触媒を含む。
該艶消し剥離コート組成物の該樹脂成分は、第一の樹脂溶媒、例えばメチルイソブチルケトン(MibK)及び第二の樹脂溶媒、例えばイソプロピルアルコールと組み合わせることができる。
【0038】
該艶消し剥離コートは、該第一官能性樹脂を、該第一及び第二樹脂溶媒に溶解し、混合し、次いで該第二官能性樹脂及び第一の艶消し剤、好ましくは微細な粒状の不活性無機物質、例えば珪酸アルミニウム、又はタルク、又は微細な粒状の有機フィラー材料を含む、フィラーを添加することによって調製される。該艶消し剥離コートの一態様において、粒状物質対樹脂(又は結合剤)の比は、約0.7:1〜約1.1:1である。
使用に際して、該艶消し剥離層を乾燥し、架橋して、該担体上に化学的な艶消し被膜を形成する。この艶消し表面の光沢は、該フィラーの量及び粒径により調節される。該微細な粒子は、該艶消し剥離コートの乾燥された外側表面から突出し、微視的な不均一性を持つ表面を形成し、これは複製された微視的不均一性を、該乾燥塗料層の露出表面に転写する。
【0039】
一態様において、本発明にとって有用な艶消し剥離コート処方物は、それ程多くない量で、シリコーンを主成分とする剥離材料及び/又はワックスを主成分とする成分を含む。このような材料は、高温における剥離特性を得る上で有用であり得るが、本発明の艶消し剥離コートは、一態様において、シリコーンを主成分とする剥離材料又はワックスを主成分とする成分の不在下で、室温における剥離性、該剥離ライナーと該乾燥塗料層との密着性、及び該艶消し表面の、該乾燥塗料層の該露出した表面への移行を含む、有用な組合せを与える処方物を含む。
該艶消し剥離コートに含まれる成分の相対的な割合、及び該剥離コートを製造し、及びこれを該剥離ライナーに適用するための関連するプロセス条件は、上において言及した、米国特許出願第10/799,528号において、さらに詳細に記載されている。
該乾燥塗料層の外側表面に転写される光沢は、剥離コート処方物と、該剥離コートと接触状態にある、乾燥塗料の外側表面層の組成との組合せによって調節される。一態様において、約40光沢ユニットなる、角度85度における光沢は、ウレタン、アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂塗料層で構成される、単一コート又はベースコート/クリアコート仕上げを持つ、乾燥塗料フィルムに転写することができる。
該剥離ライナーの反対側における、該接着性剥離コート層28は、当分野において公知の任意の剥離層塗布組成物を含むことができる。シリコーン剥離層塗布組成物を使用することができる。
【0040】
該壁フィルムの加工及び使用
図1に示した該壁フィルムは、該接着性剥離コートを該剥離ライナーに適用し、次いでこれを乾燥しかつ硬化することによって製造することができる。該接着性剥離コート層の乾燥被膜質量は、約0.1〜約1.0g/m2 (gsm)なる範囲にあり、また一態様においては、約0.25〜約0.35gsmなる範囲であり得る。次に、該艶消し剥離コートを、該剥離ライナーの反対側に適用し、次いで乾燥しかつ硬化する。この艶消し剥離コートの乾燥被膜質量は、約2.5〜約6.5gsmなる範囲にあり、また一態様においては、約4.5〜約5.5gsmなる範囲であり得る。該透明な外側クリアコートを、この艶消し剥離コートに適用し、次いで、該着色した乾燥塗料フィルム層を適用する前に、これを乾燥し、かつ硬化する。このクリアコートに関する被膜質量は、約1〜約5gsmなる範囲にあり、また一態様においては、約2.5〜約3.5gsmなる範囲であり得る。該着色した乾燥塗料層を形成するための液状塗料組成物が、次に該クリアコート層に適用され、次いで乾燥若しくは硬化される。該乾燥塗料層に関する被膜質量は、約20〜約60gsmなる範囲にあり、また一態様においては、約30〜約40gsmなる範囲であり得る。次に、このバリアコートを、好ましくは約2.4〜約6.5gsmなる範囲の被膜質量にて、該乾燥塗料層に適用する。このバリアコートを乾燥した後、上記感圧性接着層を、該乾燥バリアコートに適用し、次いでこれを乾燥かつ硬化する。該接着層は、塗布技術又は転写積層法(transfer lamination)を利用して、適用することができる。該接着層の被膜質量は、約10〜約30gsmなる範囲にあり、また一態様においては、約11〜約17gsmなる範囲であり得る。次に、該乾燥塗料転写積層体20は、図2に示すように、ロール形状に巻き取ることができる。
【0041】
該壁フィルム20は、図2に示したようなロールから巻き出し、かつ同時に該壁フィルムを、覆うべき基板表面に適用することによって、使用することができる。該基板は、任意の平坦な表面を含むことができる。該平坦な表面は、壁板、プラスチックシート、金属シート、複合材等を含むことができる。該基板は、インテリア(即ち、室内)壁表面又はエクステリア(即ち、室外)表面を含むことができる。該壁フィルムは、様々な表面仕上げ、例えば張物を持つ、卵殻、サテン、半-艶加工、及び高光沢処理が施された、塗装された壁表面に適用することができる。該壁フィルムは、該基板と接触状態にある接着剤層を持つ基板上に配置される。該壁フィルムは、室温条件下にある壁に適用するのに、特に適している。必要ならば、再配置に関連して、該壁フィルムが該表面に接着するまで、圧力を印加する。次いで、該剥離ライナーを、該装飾的塗料層の前面から剥ぎ取ると、該乾燥塗料層は、該接着剤層によって、該基板に接着した状態を維持している。該乾燥塗料層は、該剥離ライナーを剥ぎ取った後には、該壁上で平坦になる。
【0042】
該壁フィルムの剥離特性は、様々な剥離系によって調節することができ、ここで該乾燥塗料層(これは、上記の透明層、着色層、及び/又は装飾的プリントコートを含むことができる)から、該艶消し剥離コートを分離するのに要する、該壁フィルムの剥離力は、該感圧性接着層から、該接着性剥離コート層を分離するに要する剥離力よりも大きい。該基板に対する接着力は、該乾燥塗料層から該剥離ライナーを分離するに要する力よりも大きい。該接着剤の剥離力及び該差動(differential)剥離系の巻き出し剥離力は、上において言及した、米国特許出願第10/799,528号において、より一層詳細に説明されている。
【0043】
例1
PETライナーを、上に記載した接着性剥離コート層に相当する、シリコーン剥離塗布層を持つ一方の側に塗布する。該シリコーン塗布ライナーの厚みは、約0.023mm(0.92ミル)であり、またミツビシ(Mitsubishi) 92ゲージSLKを含む。
該艶消し剥離コートを、コート質量4.5〜5.5gsmにて、グラビア印刷法を用いて、該剥離ライナーの他方の側に適用する。該艶消し剥離コートの処方は、以下の通りである(全ての数値は、質量部単位である):
【0044】
【表1】

【0045】
該剥離コート材料の製造において、基本物質(VAGH、アルキド及びタルク)を配合して、100部の処方物とする。その後、該サイメル303及びバイク451をブレンドし、これら材料をコーターに送った後に、これら2つの溶液を一緒に混合する。該艶消し剥離コートを、149℃にて強制通風することによって乾燥し、かつ硬化させる。
該艶消し剥離コートは、その架橋樹脂として、該メラミン(ヘキサメトキシメチル)樹脂、サイメル303を含む。該ヒドロキシ変性ポリ塩化ビニル/ポリ酢酸ビニルコポリマー(VAGH)は、第一の官能性樹脂を含み、また該アクリル変性アルキドは、第二の官能性樹脂を含む。該第一の架橋樹脂は、架橋を調節し、また該ポリエステル担体フィルムと結合する。該第二の官能性樹脂は、該艶消し剥離コートからの該乾燥塗料層(トップコート)の剥離性を改善する。該ブロックト酸触媒は、該架橋を促進し、また該タルクフィラー粒子は、該乾燥艶消し剥離コートの微細粗面(microroughness)度を調節する。
透明クリアコート層を、コート質量2.6〜3.0gsmにて、グラビア印刷法を用いて、該艶消し剥離コートに適用し、165℃にて強制通風することによって乾燥する。その乾燥フィルム厚は、約0.0023-0.0025mm(0.09-0.10ミル)なる範囲にある。このクリアコートは、本質的に熱可塑性アクリル樹脂材料、好ましくはポリメチルメタクリレートからなる。該透明トップコート層の処方(全ての数値は質量部で表されている)は、以下の通りである:
【0046】
【表2】

【0047】
米国特許出願第10/779,528号に記載されたものと同様な、印刷インキ処方の、1又はそれ以上の装飾的プリントコートを、該透明トップコート層上に印刷し、乾燥する。
以下のようなペイントコート組成物は、エポキシ安定剤を含む、可塑化されたビニル化合物を主成分とする着色カラーコートを含む。このペイントコートは、被膜質量33.0〜36.0gsmにて、ロール塗布法を用いて、該装飾的プリント層上に塗布し、105℃の加熱空気で乾燥し、カラーコート層を形成する。その乾燥フィルム厚は、約0.017-0.019mm(0.65-0.73ミル)なる範囲にある。以下の表において、全ての数値は質量部で表されている:
【0048】
【表3】

【0049】
バリアコートを、85gsmの水及び85gsmのイソプロピルアルコールを含む溶媒混合物を、ミキサ及び還流冷却器を備えた反応器に投入することにより調製する。混合しつつ、ペレット形状の、30gsmのソアーノール(Soarnol) D-2908 EVOHを、この溶媒混合物に添加する。この混合物を、約80℃なる温度まで加熱し、この混合物が透明な溶液となるまで、約3〜4時間に渡りこの温度を維持する。次いで、該溶液を、室温、即ち約25℃まで冷却し、引続き21.4gsmの液体形状にあるサンキュア899ポリウレタンを、後-添加して、攪拌下に該EVOHと徐々にブレンドする。これは、2-相型の熱可塑性液状エマルションを生成し、そこでは該ポリウレタン樹脂が、約20部のウレタン対80部のEVOH(質量基準)なる固形分比で、該水性/イソプロパノール溶液中に分散されている。この被膜は、まず塗布し、次いで70℃にて約5分間オーブン乾燥することによって、該着色されたベースコートに適用する。この被膜は、好ましくはダイ塗布技術によって適用して、厚み約2.5〜約4.5μmの乾燥フィルムを形成する。
次に、着色された感圧性接着剤層を、被膜質量13〜16gsmにて、担体に適用する。該PSAの乾燥フィルム厚は、約0.011mm(約0.45ミル)〜約0.014mm(約0.55ミル)なる範囲にある。このPSAを、次に転写積層法によって、該バリアコートに適用する。該PSAは、製品番号S-3526の下で、アベリーデニソン社から入手することができ、該PSAの処方は、以下の通り(数値は質量部で表されている)である:
【0050】
【表4】

【0051】
本例の化粧板の乾燥フィルム厚は、好ましくは約0.033〜約0.041mm(約1.30〜約1.60ミル)なる範囲にある。ここに記載した例においては、組合されたトップコート、プリントコート、カラーコート、バリアコート及びPSAの乾燥フィルム厚は、約0.034〜約0.038mm(約1.35〜約1.51ミル)なる範囲にある。
例2
該艶消し剥離コートのもう一つの態様は、以下の処方を持ち、そこでは、分散剤は省略され、また触媒はアンブロックト(unblocked)触媒に変更されている(数値は質量部で表されている):
【0052】
【表5】

【0053】
場合により、以下の中間体処方物を添加することにより、この剥離コート処方物における剥離特性及び光沢を調節することができ、該中間体処方物において、艶消し中間体は、光沢を下げるよう調節するのに使用し、かつビヒクル中間体を、光沢を上げるよう調節するのに使用する。





【0054】
【表6】

【0055】
該分散剤は、10質量部のEFKA 5055及び90質量部のMibKを含む。
【0056】
【表7】

【0057】
例3
テストパネルを製造し、色変移につきテストし、(1) バリアコートを含む例1と同様な壁フィルム;及び(1) バリアコートを含まない同様な壁フィルムについて、色変移の比較を行った。テストフィルムを、中間イエロー(ハンサイエロー(Hansa Yellow) 10G及びダラマーイエロー(Dalamar Yellow) PY74)を塗布した表面に適用し、促進老化条件下に置いた。該テストフィルムは、該塗装された表面から、該PSA層を介して該テストサンプルの着色層に移る、アゾ-型着色成分の移動によって生じる変色(色変移)について測定を行った。これらのテストパネルは、分散された白色顔料を含有する、可塑化されたビニル化合物を主成分とする塗料層を含む、乾燥塗料着色層を用いて調製した。該S-3506 PSAを、この着色層に適用した。これらのテストパネルは、2.5gsmのEVOH/ウレタンバリア層を含む白色壁フィルム、6.5gsmのEVOH/ウレタンバリア層を含む白色壁フィルム、及びバリア層を含まない白色壁フィルムを含んでいた。これらの変性されたEVOHバリア層は、熱可塑性であった。該バリアコートに対して、結合層は全く使用しなかった。該EVOH/ウレタンの比は、80/20であった。該中間イエローを塗布した表面は、ベール(Behr) 1300ディープベース(約37.45g中間イエロー/L(5オンス中間イエロー/ガロン)を用いて調製し、約0.19mm(7.5ミル)なる湿潤被膜状態で、約0.076mm(3ミル)のポリエステルに適用した。この塗料被膜は、室温にて最低3時間乾燥させ、次いで約121℃(250°F)にて5分間の強制的通気によって乾燥させた。C.I.E.テスト手順を利用して、様々な高いテスト温度及び室温に暴露したテストパネルにつき、予備硬化時間間隔で、Δb*色変移を測定した。これらのテストにおいて使用した装置は、マクベスカラー-アイ(Macbeth Color-Eye) 7000であり、光源及び幾何形状:D65, 10度で観測及び反射光を排除した。これらのテストは、以下のような結果を与えた:







【0058】
【表8】

【0059】
【表9】

【0060】
【表10】

【0061】
これらのテストデータは、該EVOHを主成分とするバリアコートが、1000時間までの促進色変移テストに対して、十分に0.40Δb*基準以内の、色変移に対する抵抗性を示した。被膜間接着性も、付加的な結合被膜無しに、良好であった。
例4
様々なテストパネルについて、比較テストを行って、色変化の時間との関連性を測定した。該テストパネルは、クイックテスト法を用いてテストする。該テスト法は、艶消し剥離層、トップコート及び白色顔料配合ベースコートを含む壁フィルム構成を用いて開始する。このフィルムを、真空ホルダに配置し、テスト下にある該バリア層を、該ベースコート上に塗布する。このバリア塗布フィルムを70℃のオーブン温度にて5分間乾燥する。該バリアコートを、PETライナーを含むS-3506 PSAと積層する。次いで、該PETライナーを剥取り、黄色染料を塗布したPETフィルムを、該PSAと積層する。この完成した構造物を、80℃のオーブン内に約12時間置き、次に該白色フィルムの色濃度を、トビアス(Tobias) 1Q等の色濃度測定装置により測定して、変色を決定する。以下のテストの測定値は、様々な時間間隔に関する、90℃における黄色染料テストの色濃度を示す。テストパネル(A〜Gと同定)を以下の表に示す:
【0062】
【表11】

A:80 EVOH/20 PU;熱可塑性;結合被膜なし;
B:80 EVOH/20 PU;3%サイメル(Cymel)、10%ポリアジリジンで架橋;反対側において結合被膜を使用した;
C:80 EVOH/20 PU;5%ポリアジリジンで架橋;
D:EVOHのみ;
E:70 PU/30 PVA;
F:アクリル樹脂のみ及び結合被膜;
G:バリアなし。
【0063】
例5
色濃度を測定するための実験室用テストサンプルを注型し、かつ70℃にて5分間オーブン乾燥した。テスト下にある該壁フィルムは、前の例において説明したものと類似していた。一連のテストにおいて、該バリアコートは、逆コンマ(reverse comma)塗布技術によって適用した。該バリアコートは、80%EVOH/20%PU及び水50/IPA50溶媒からなっていた。バリア層を持たないコントロールサンプルに加えて、90℃における黄色染料の色濃度テストを、約2.2〜約7.2gsmなる範囲の、様々なコート質量を持つサンプルに対して、様々なレベルで架橋された、該EVOH成分を含むバリアコートに対して、また熱可塑性を持つ(架橋されていない)バリアコートに対して行った。例3におけるテストサンプルA、B及びCが、これら実験室用テストサンプルに関する染料テスト結果を示す。同様なバリア材料に関する別の実験室テストを、ゾーン温度約74℃(165°F)、約93℃(200°F)及び約107℃(225°F)にて、20fpm及び40fpmにて、ダイ塗布技術によって行った。実験室テストは、また2fpmにて、ゾーン温度約74℃(165°F)、約93℃(200°F)及び約107℃(225°F)にて、溶媒系:水50/IPA34/n-ブタノール16を用いて、グラビア塗布技術によっても実施した。これらの実験室テストは、以下のようにまとめられる:
【0064】
(1) バリアコートの付加は、黄色顔料の色の移動に対する、大幅に改善された抵抗性を発生する。バリアがない場合、これらのテストは、0.02なる色濃度までの、黄変が観測されるまでに、90℃において僅かに2時間を要するに過ぎないことを示した。黄色顔料の移動に対する、長期間に及ぶ抵抗性は、またアクリル系樹脂製のバリア層と比較した場合に、改善されている。
(2) ダイ塗布技術は、良好なフィルム加工条件を与えた。幾分かのIPAと置換えるための、n-ブタノールの添加は、リバースグラビア塗布技術を利用した場合に、加工性を改善する。グラビア塗布は、一般にその形成される層の薄さのために、良好なフィルム形生成をもたらす。
(3) 該被膜質量が大きいほど、黄色染料の移動を阻止する際の、バリア特性はより良好である。しかし、より大きな被膜質量は、貧弱なバリアフィルム性能を結果する可能性がある。約2.5〜約4.5μmなる範囲の、該バリア層の乾燥フィルムの被膜厚は、良好なフィルム性能をもたらす。溶媒比率の低い溶液による、大きな被膜質量は、乾燥中にフィルムの収縮又は膨れの発生をもたらす恐れがある。より良好な結果は、大きな被膜質量及び高い固形分含量によって達成される。
【0065】
同一のテストパネル群について、該壁フィルムの機械的諸特性に及ぼす、バリア層の効果を測定するためにテストを行った。コントロールサンプル(バリア層を含まない)及び2.2〜7.2gsmなる範囲で変動する被膜質量を持つ80%EVOH/20%PUフィルムについて、熱可塑性EVOH/PUバリアを持つフィルムについて、及び様々なレベルの架橋度を持つEVOH/PUフィルムについて、比較テストを行った。これらテスト結果は、一般に、コントロールフィルムに対するより低い測定値に比して、様々な被膜質量における上記両者のフィルムについて、応力(ヤング率)及び歪の測定値における改善を示した。一つの例外は、高い被膜質量(7.2gsm)を持つ熱可塑性のEVOH/PUフィルムであった。このテストパネルは、低い応力測定値と、過度に高い伸び率を有していた。架橋したEVOH/PUバリアコートを持つフィルムは、良好なバリア特性を与えたが、フィルムの取扱いに必要なフィルムの可撓性及び引裂き抵抗は、一般的に伸び率と引張強さ(フィルムの靭性)の良好な組合せを持つ、熱可塑性のEVOH/PUバリア層を備えたフィルムについて改善された。一態様において、良好なフィルムの可撓性及び取扱い性は、50%を越える破断点伸びを有するフィルムについて与えられる。
例6
上に記載したものと同一の、様々なEVOH/ウレタン組成を持つバリア層を備えた、壁フィルムについてテストを行って、表面エネルギー及びフィルム性能を決定し、以下のような結果を得た:






【0066】
【表12】

【0067】
これらのデータは、該被覆工程中、該ポリウレタンエマルションは、該被覆表面に移動する傾向があり、結果的に該着色層との接着性及び該PSA層との接着性を改善する傾向を持つ、表面エネルギーを改善する。該EVOH/PUバリアに由来するフィルムの性能は、一般に約15%を越える、またより具体的には約15%〜約40%なる範囲のポリウレタン含有率によって改善される。テストデータは、約20%のポリウレタン含有率において、最良の全体としての性能を示した。
例7
バリアコートを持つ又はこれを含まない、壁フィルム構成について、テストを行った。これらテストでは、該PSA層、バリア層を含むフィルム、及びバリア層を含まないフィルムに関する剥離値について測定した。これらのテストサンプルは、80%EVOH/20%PUバリア層及びAE-3506として同定されたアベリーデニソンPSAを含んでいた。該カラーコートにおける顔料/体積濃度(PVC)とは、該処方物における非-揮発性成分の全体積に対する、顔料の体積を意味する。テストサンプルは、室温にて及び約60℃(140°F)にて老化させた。これら剥離テストは、ステンレススチール及び灰色の平坦塗装されたドライウォール両者について行った。剥離テストは、約4.54kg(10 lb)のローラー及び15分なる滞留時間にて、90度における剥離によって行った。以下に示すテスト結果において、剥離力の単位はg/cm(g/in)である。
【0068】
【表13】








【0069】
【表14】

【0070】
これらのデータは、図4に示したグラフに、より良好に示されている。
これらのテストデータは、一般に該壁フィルムバリアの付加が、バリアを含まないテストサンプルに比して、著しく高い剥離値を与えることを示している。このバリアは、該着色層から該接着層への汚染物質の移動を防止する上で、効果的であるものと考えられる。より具体的には、該バリアは、可塑剤及び熱安定化剤等の成分の、該着色層から該PSA層への移動を防止して、該PSA層の接着特性をより効果的なものとするものと考えられる。
例8
該装飾的フィルムのバリア特性及び他の機械的特性が、前に記載した脂肪族ポリウレタン(サンキュア899)以外のポリマー樹脂添加剤によって変性されたEVOHバリアコートによって維持できるか否かを決定するために、実験室テストを行った。ベースウエブとして、例1と同様なベタ青色のカラーコート(24%の顔料体積濃度を持つ)及び該バリアコートとして、80%EVOH/20%ポリマーについて、以下のテストを実施した。コントロールフィルムは、該バリアコートを含まない、同一のベースウエブ(クリアコート、カラーコート、PSA)であった。該バリアコートの熱可塑性形態のものを、テストした。
【0071】
【表15】

【0072】
該810テープテストは、約10.2cm(約4インチ)の3M 810テープを使用し、該バリアコートに押し当て、次いで該テープを即座に引き剥がす、単一診断接着テストである。何も剥離されなかった場合、接着は良好である。
これらテストの結果は、以下のようにまとめることができる。
(1) EVA、アクリル樹脂又は芳香族ポリエステルポリウレタンのエマルション型は、脂肪族ウレタンに加えて、EVOHバリア変性材料として使用することができる。
(2) 90℃にて4日間後に、黄色染料の移動は観測されなかった(迅速黄色染料テストを利用)。
(3) 該バリアコートは、被膜質量約5〜6gsmなる範囲において、ベースウエブの伸び率/引張強さ(可撓性)を、大幅に高めることができる。
(4) テストした全ての材料は、該カラーコートに対する良好な接着を与えた。
【0073】
フィルムの引張強さ及びヤング率に関するテストは、16%なる顔料体積濃度において、バリアコートを含まない同一のベースウエブと比較して、該バリアフィルムの全ての変形体が、より高い靭性を持つフィルムを生成した。
以上、本発明を、室内建築用途用の壁フィルムとして使用される、多層積層体について説明してきたが、該積層体は、また他の用途においても有用である。これらは、室外建築用途、例えばサイディングパネル及び壁表面材;室外装飾用品目及び看板; 自動車室内装飾用及び機能的用途、例えばダッシュボード及びパネル;自動車ボディー部品、トリム部品おパネル等の自動車室外用途等を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の原理に従う、多層乾燥塗料転写積層体の、一態様を示す、模式的な断面図である。
【図2】ロール形状に自動的に巻回された、本発明の乾燥塗料転写積層体を、模式的に示す図である。
【図3】本発明のもう一つの態様を示す、模式的な断面図である。
【図4】例7に示したデータを示す、グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に色彩を持つ層を適用するための、多層化粧板であって、該化粧板が、
樹脂結合剤と顔料とを含有する、着色層を含む、可撓性の装飾用乾燥塗料層、
該装飾用乾燥塗料層の表面上に設けられ、また該化粧板を基板表面に接着するのに適した、感圧性接着層、及び
該接着層と該着色層との間に配置される、薄い、可撓性のバリア層を含み、該バリア層が、該接着層を介する、該基板の塗装された表面から該着色層までの、変色を引起す顔料の移動を遅延させる、乾燥フィルム型のエマルションを形成する、エチレンビニルアルコール材料を含む、ことを特徴とする、上記多層化粧板。
【請求項2】
該バリア層が、60℃にて少なくとも400時間に渡り、約0.40Δb*C.I.E.カラーユニット未満なる色変移を生じる、請求項1記載の物品。
【請求項3】
該バリア層が、該着色層から該接着層への成分の移動により引起される、該接着層の劣化を遅延する、請求項1記載の物品。
【請求項4】
該バリア層が、約50℃を越える、ガラス転移点(Tg)を持つ、請求項1記載の物品。
【請求項5】
該バリア層の材料が、アゾ-型の、変色を引起す顔料の移動を阻止する、請求項1記載の物品。
【請求項6】
該バリア層が、分散されたポリマー材料とブレンドされた、エチレンビニルアルコールを含有する、エマルションを含む、請求項1記載の物品。
【請求項7】
該分散されたポリマー材料が、ウレタン材料を含む、請求項6記載の物品。
【請求項8】
該バリア層が、別の接着結合層の存在しない状態で、該感圧性接着層及び該着色層両者と接触している、請求項6記載の物品。
【請求項9】
該エチレンビニルアルコール成分が、熱可塑性であるか、あるいは架橋されている、請求項6記載の物品。
【請求項10】
該分散されたポリマー材料が移動して、該バリア層の一方の側において、境界層を形成する、請求項6記載の物品。
【請求項11】
基板表面に色彩を持つ層を適用するための、多層化粧板であって、該化粧板が、
樹脂結合剤と顔料とを含有する、着色層を含む、可撓性の装飾用乾燥塗料層、
該装飾用乾燥塗料層の表面上に設けられた、感圧性接着層、及び
該接着層と該着色層との間にある、薄い可撓性のバリアコートを含み、該バリアコートは、エチレンビニルアルコールコポリマーのエマルション及び乾燥フィルム型の移動性ポリマー材料から作られていて、該移動性ポリマー材料によって形成される内部境界層を備えた、安定なエマルションとしてのバリア層を与え、該バリア層及びその内部境界層は、該接着層を介する、該基板の塗装された表面から該着色層への、変色を引起すアゾ-型の顔料の移動を阻止するのに有効であり、該基板の塗装された表面からの顔料の移動を阻止し、室温条件化での該着色層における顕著な色彩変化の発生を防止するに十分である、ことを特徴とする、上記多層化粧板。
【請求項12】
該移動性ポリマー材料が、ウレタン材料を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
該バリア層のエマルションが、熱可塑性であるか、あるいは架橋されている、請求項11記載の方法。
【請求項14】
基板表面に色彩を持つ層を適用するための、多層化粧壁フィルムであって、該壁フィルムが、
樹脂結合剤と顔料とを含有する、着色層を含む、可撓性の装飾用乾燥塗料層、
該乾燥塗料層の表面上に設けられ、また基板表面に該積層体を接着するのに適した、感圧性の接着層、
該接着層と対向する該乾燥塗料層の表面上に設けられた剥離ライナー、ここで該感圧性接着層が、該積層体を該基板表面に接着し、かつ該剥離ライナーが、該装飾用乾燥塗料層から剥離された場合に、該乾燥塗料層から剥離できるこの剥離ライナーは、該装飾用乾燥塗料層の外側表面を露出し、及び
該接着層と該着色層との間に設けられた、薄い可撓性のバリア層を含み、該バリア層は、エチレンビニルアルコール材料で作られており、この材料は、その乾燥フィルム状態において、該接着層を介する、該基板の塗装された表面から該着色層までの、変色を引起す顔料の移動を阻止し、室温条件下にて、該着色層において発生する、該顔料によって引起される、顕著な色彩変化の発生を遅延するに十分である、ことを特徴とする、上記多層化粧壁フィルム。
【請求項15】
該バリア層の材料が、アゾ-型の変色を引起す顔料の移動を阻止する、請求項14記載の物品。
【請求項16】
該バリア層が、エチレンビニルアルコールを含有するエマルション及び分散されたポリマー材料を含む、請求項14記載の物品。
【請求項17】
該分散されたポリマー材料が、ウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン酢酸ビニルコポリマー、及びこれらの組合せを含む群から選択される、請求項16記載の物品。
【請求項18】
該バリア層が、別の接着結合層の存在しない状態で、該感圧性接着層及び該着色層両者と接触している、請求項17記載の物品。
【請求項19】
該装飾用乾燥塗料層が、約0.015〜約0.041mm(約0.6〜約1.6ミル)なる範囲の乾燥フィルム厚みを有し、壁塗料として機能するのに十分な装飾性、保護性及び不透明性を与える、請求項14記載の物品。
【請求項20】
基板表面に色彩を持つ層を適用するための、多層化粧板であって、該化粧板が、
樹脂結合剤と顔料とを含有する、着色層を含む、可撓性の装飾用乾燥塗料層、
該装飾用乾燥塗料層の表面上に設けられ、また基板表面に該積層体を接着するのに適した、感圧性接着層、
該接着層と対向する該装飾用乾燥塗料層の表面上に設けられた剥離ライナー、ここで該感圧性接着層が、該積層体を該基板表面に接着し、かつ該剥離ライナーが、該乾燥塗料層から剥離された場合に、該装飾用乾燥塗料層から剥離できるこの剥離ライナーは、該乾燥塗料層の外側表面を露出し、及び
該接着層と該着色層との間に設けられた、薄い可撓性のバリア層を含み、該バリア層は、エチレンビニルアルコール材料で作られており、この材料は、その乾燥フィルム状態において、該接着層を介する、該基板の塗装された表面から該着色層までの、変色を引起すアゾ-型顔料の移動を阻止し、該バリア層が、60℃にて少なくとも400時間に渡り、約0.4Δb*C.I.E.カラーユニット未満なる色変移を生じることを特徴とする、上記多層化粧板。
【請求項21】
該バリア層が、エチレンビニルアルコールを含むエマルション及び分散されたポリマー材料を含み、該ポリマー材料が、該バリア層の、該接着層及び該着色層に対する接着性を改善する、請求項20記載の物品。
【請求項22】
該分散されたポリマー材料が、ウレタン材料を含む、請求項21記載の物品。
【請求項23】
該バリア層が、別の接着結合層の存在しない状態で、該感圧性接着層及び該着色層両者と接触している、請求項21記載の物品。
【請求項24】
基板表面に色彩を持つ層を適用するための、多層化粧壁フィルムであって、該壁フィルムが、
樹脂結合剤と顔料とを含有する、着色層を含む、可撓性の装飾用乾燥塗料層、
該乾燥塗料層の表面上に設けられ、また基板表面に該壁フィルムを接着するのに適した、装飾用感圧性接着層、及び
該接着層と該着色層との間に設けられた、薄い可撓性のバリア層を含み、該バリア層は、エチレンビニルアルコールコポリマーのエマルション及び熱可塑性又は架橋された乾燥フィルム形状の何れかにある、分散されたウレタン材料を含み、該乾燥フィルム状態にあるウレタン材料は、該接着層を介する、該基板の塗装された表面から該着色層までの、変色を引起す顔料の移動を低下する、ことを特徴とする、上記多層化粧壁フィルム。
【請求項25】
該バリア層の材料が、60℃にて少なくとも400時間に及び、約0.4Δb*C.I.E.カラーユニット未満なる量に、アゾ-型の変色を引起す顔料の移動を阻止する、請求項24記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−518816(P2008−518816A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540052(P2007−540052)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/039890
【国際公開番号】WO2006/052698
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(596012261)エイベリ・デニソン・コーポレイション (14)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】