説明

変色防止バリヤーを有する多層ドライペイント積層体

【課題】ブリード又は移行する色成分を含む有機材料を含有するペイントされた基材表面と接触するのに適する多層積層体を提供する。
【解決手段】装飾ドライペイント転写積層体は、ドライペイント層22と、ドライペイント層22の片面上の感圧接着剤層28と、感圧接着剤(PSA)から反対側にある、ドライペイント層22と剥離可能に接触している剥離ライナー30とを含んで成る。剥離ライナー30は、ドライペイント層22と接触する艶消し剥離コート層32を有する。艶消し剥離コート32は、ドライペイント層22と接着していて、保護機能を提供するだけでなく、剥離ライナー30をドライペイント層22から剥がしたときに、ドライペイント層22に装飾艶消し仕上げを転写する。この積層体は、ペイントされた表面からのモノアゾ顔料の移行によりもたらされるドライペイント層22中での顕著な変色から保護するためのバリヤー層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ドライペイント転写積層体に関し、より詳細には、積層体の発色層内に変色誘発顔料が移行するのを阻止するバリヤー層を有する多層ドライペイント装飾積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライペイント転写積層体は、伝統的な塗装に代わる手段を与える表面被覆としてこれまで使用されている。水系ペイント及び油系ペイントは、ペイント代替物としての装飾用ドライペイント転写フィルムの使用により解消できる良く知られた欠点がある。吹付け塗装により適用されるペイント系からの溶剤の揮発などの環境問題も、装飾用ドライペイント転写フィルムの使用により避けられる。
【0003】
かかる装飾用ドライペイント転写フィルムは、典型的には、当該フィルムに担持された接着剤層により基材表面に適用される。熱により活性化される又は水により活性化される接着剤の使用は、いくらかの欠点をもたらすことがあるが、かかる欠点は感圧接着剤の使用により解消され、感圧接着剤の使用によって、圧力を加えるだけで、典型的には室温で、装飾用フィルムは基材表面に適用される。内装又は外装用途向けの感圧接着剤層を有する装飾用フィルムの例は、Pattonらに対する米国特許第6,096,396号、Smithらに対する米国特許第6,086,995号、及びPaquetteらに対する米国特許第5,229,207号に開示されている。
【0004】
感圧接着剤を有する装飾用フィルムは、往々にして、当該技術分野で周知の様々な形態の再配置可能な接着剤を使用することにより表面に容易に適用できるようになっている。積層体は、まず表面に適用し、一時的に除去し、次に再配置して、接着剤により永久的結合を形成することができる。かかる再配置可能な接着剤層を有する装飾用フィルムは、例えばPaquetteらの上記第207号特許に記載されている。
【0005】
本発明は、ペイントされた表面であり得る表面と接触して配置するのに適する多層積層体を含む。顔料含有材料、例えば色素又はモノアゾ顔料を含有するペイントされた表面に重なるフィルムの場合、着色材料はその重なったフィルム内に移行又はブリードするおそれがある。これによって、完成品が変色することがある。イエロー顔料、又は程度はさほどではないが、オレンジ又はレッド顔料又は色素を一成分として含有する壁用ペイント中に使用された顔料は、壁表面から、上に重ねられたフィルムを通してフィルムの色層内に移行して、このフィルムを変色させるようなモノアゾ顔料を含むことがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ブリード又は移行する色成分を含む有機材料を含有するペイントされた基材表面と接触するのに適する多層積層体を提供し、具体的には、移行性有機色成分を含有するペイントされた表面を、色移り問題を回避するように改質することができない状況に対処する。この問題に対して、本発明は、移行性色材料、具体的にはモノアゾ顔料を含有する色材料をブロック又は捕捉するように協働する1つ又は2つ以上のバリヤー層を含有する積層体を提供する。バリヤー層は、積層体がかかるペイントされた表面と接触することによって引き起こされる積層体における着色層の変色を阻害する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
手短にいえば、本発明は、ペイントされた表面に着色層を提供するようにした多層積層体を含む。この積層体は、ペイントされた表面に重なってこれに接触する感圧接着剤を含む。積層体は、変色誘発顔料が表面から接着剤層を通して積層体の色層に移行するのを遅くするか又は停止させる1つ又は2つ以上のバリヤー層を含む。
【0008】
一実施態様において、バリヤーは内装用ラテックスペイント中のモノアゾ顔料によって引き起こされる変色を遅らせるか又は停止する。特定のポリマーから成るバリヤー層を適用することにより、且つ/又は、バリヤー層に特定の添加剤材料を添加することにより、色移りを停止するか又は著しく低減することができる。
【0009】
本発明の一実施態様は、ドライペイント層と、ドライペイント層の片面上の感圧接着剤層と、感圧接着剤層の反対側にあるドライペイント層と剥離可能に接触している剥離ライナーとを含んで成る装飾ドライペイント転写積層体を含む。ドライペイント層は、バインダーと顔料とを含む。ドライペイント層と感圧接着剤層との間には、バリヤー層が配置されている。剥離ライナーは、室温でドライペイント層から除去可能である。感圧接着剤は、室温で基材表面に積層体を接着させるようになっている。基材表面は、ブリード又は移行するおそれのある色の付いた有機材料を含有するペイントされた壁面であることができる。感圧接着剤層により、圧力を加えて基材表面に積層体を接着させる。次いで、剥離ライナーをドライペイント層から剥ぎ取る。バリヤー層は、変色誘発成分がペイントされた表面から接着剤層を通って色層へ移行するのを停止させるか或いはかなり低減する材料から形成された薄い可撓性のフィルムを含む。一実施態様において、バリヤー層は、変色誘発顔料の移行を阻止するのに十分な架橋密度を有する高分子材料、及び/又は、変色誘発顔料を捕捉するか又はその移行を遅らせることのできる分散された添加剤を含むことができる。バリヤー層は、アゾ型顔料の移行を遅延又は阻止するのに特に有用であり、そして低コート重量で、又は、装飾フィルムの全厚をさほど増大させない厚さで存在する。一実施態様において、バリヤーの厚さは、装飾フィルムの全厚(外側の剥離可能なキャリヤーフィルムを除く)の約10%以下である。
【0010】
本発明のこれらの観点及びその他の側面は、以下の詳細な説明及び添付の図面を参照することによって、より十分に理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1を参照すると、多層ドライペイント転写積層体20は、表面形成フィルムとして使用されるようになっている。多層積層体は、分散された顔料を含有する合成樹脂状バインダーを含む顔料含有ドライペイント層22を含む。本明細書中で色層とも呼ばれる顔料含有ドライペイント層22は、一般に、図1に示されるようなモノコート顔料含有層であるか、或いは、顔料含有ドライペイント層22は、後述する付加的な顔料含有ペイント層、コーティング又はプリントコートと組み合わせることができる。各場合において、多層ドライペイント転写フィルムのこれらの装飾要素を、総称して装飾ドライペイント層を呼ぶ。図1に示す実施態様において、ドライペイント層22は、上面24と下面26とを有する。多層積層体はさらに、ドライペイント層の上面24に重なってこれに接着されたドライ接着剤層28と、ドライペイント層の下面に重なってこれに剥離可能に接着された可撓性で折り畳み可能な剥離ライナー30とを含む。剥離ライナーは、ドライペイント層22の下面26に剥離ライナー30を剥離可能に接着させるために、その内面に艶消剥離コート32を有する。剥離ライナー30は、剥離力が加えられた状態で、ドライペイント層から剥ぎ取られるように構成されており、この機能を、本明細書において、キャリヤー剥離機能とも呼ぶ。剥離ライナーがドライペイント層から剥ぎ取られると、艶消剥離コート32はドライペイント層22から分離するが、しかし、剥離ライナー30には接着されたままである。剥離ライナー30はまた、ドライペイント層とは反対側の表面に、接着剤剥離コート層34を有する。接着剤剥離コート層34の露出外面38は、積層体が図2に示されたロール形態に巻取られたときに、接着剤層28の露出外面40と剥離可能に接触するようになっている。
【0012】
図2を参照すると、ドライペイント転写積層体20は、接着剤剥離コート層34の露出表面38が、接着剤層28の露出外面40と剥離可能に接触した状態でロール形態に自己巻き(self−wound)される。従って、図2に示されたドライペイント転写積層体20が巻出されると、剥離ライナー上の接着剤剥離コート層34は、接着剤層28の外面40から分離し、そして剥離ライナー30に接着したままとなる。艶消剥離コート32は、ドライペイント層に接着したまま残る。
【0013】
図3に示すドライペイント転写積層体42は、装飾ドライペイント層が、顔料含有ドライペイント層22の下面26に接着された光学的に透明な合成樹脂状クリアコート層44を含むことを除き、図1に示したドライペイント転写積層体20と同一である。この実施態様において、外側クリアコート層44は、剥離ライナー30の艶消剥離コート32と剥離可能に接触している。剥離ライナー30がクリアコート層44から剥ぎ取られると、艶消剥離コート32はクリアコート層44から分離し、そして剥離ライナー30には接着したままとなる。
【0014】
図4に示す多層ドライペイント転写積層体46は、装飾ドライペイント層がさらに顔料含有ドライペイント層22とクリアコート層44との間に装飾プリントコート層48を含むことを除き、図3に示したドライペイント転写積層体42と同一である。装飾プリントコート層は装飾プリントパターンを提供し、そして、顔料含有ドライペイント層22は、装飾ドライペイント層のための背景色と不透明性とを提供する。プリントパターン及び背景色は、外側クリアコート層44を通して見ることができる。
【0015】
図5に示す多層ドライペイント転写積層体50は、プリントコート層48と外側クリアコート層44との間に第2の装飾プリントコート層52をプリント又はコーティングできることを除き、図4に示したドライペイント転写積層体46と同一である。
【0016】
さらなるプリントコート層を使用することができる。例えば、多層積層体は最大約5つ又はそれ以上のプリントコートを含有することができ、一実施態様において、好ましくは3つ又は4つのプリントコート層が使用される。これらの層は、通常のプリント法、例えばグラビア、フレキソグラフィ、シルクスクリーン、又はインクジェットプリンティングを用いてプリント又はデザインパターンを有することができる。
【0017】
図6に示す多層ドライペイント転写積層体54の実施態様は、積層体54がドライペイント層22と接着剤層28との間に可撓性の補強層56(本明細書において支持層とも呼ぶ)を含むことを除き、図1に示した多層積層体20と同一である。補強層56は、装飾ドライペイント層のための構造支持手段を提供し、そして装飾ドライペイント層のためのさらなる不透明性を提供することができる。補強層は、ドライペイント層の引張強度を上回る引張強度を有する。
【0018】
図7は、積層体58が顔料含有ドライペイント層22と接着剤層28との間に可撓性のバリヤー層60を含むことを除き、図1に示した多層積層体20と同一である、ドライペイント転写積層体58の別の実施態様を示すものである。介在するバリヤー層は、接着剤層とペイントコート層との間の構成成分の望ましくない移行を阻害又は防止するように使用することができる。かかるバリヤー特性としては、基礎となる基材表面から接着剤層を通してドライペイント層に顔料が移行するのを阻止又は防止することによって、望ましくない変色を低減又は回避することが挙げられる。
【0019】
図6及び7の実施態様は、別個の支持(補強)層とバリヤー層とを示している。加えて、バリヤー層60は、図6の実施態様におけるある一つの層として含めることができる。この場合において、バリヤー層は、ドライペイント層と支持(補強)層との間に適用することができる。或いは、バリヤー層は、接着剤層と支持層との間に適用することもできる。
【0020】
ドライペイント層22の厚さは、一般に、約0.5〜約1.5ミル(約13〜約38μm)、一実施態様において、約0.5〜約1.2ミル(約13〜約30μm)、及び別の実施態様において、約0.5〜約0.9ミル(約13〜約23μm)であることができる。接着剤層の厚さは、一般に、約0.4〜約1ミル(約10〜約25μm)、一実施態様において、約0.4〜約0.8ミル(約10〜約20μm)、及び別の実施態様において、約0.4〜約0.6ミル(約10〜約15μm)であることができる。剥離ライナーの厚さは、一般に、約0.5〜約2ミル(約13〜約50μm)、一実施態様において、約0.5〜約1.5ミル(約13〜約38μm)、及び別の実施態様において、約0.85〜約1.05ミル(約22〜約27μm)であることができる。艶消剥離コート層の厚さは、一般に、約0.05〜約0.3ミル(約1.3〜約7.6μm)、一実施態様において、約0.1〜約0.2ミル(約2.5〜約5.0μm)であることができる。接着剤剥離コート層の厚さは、約0.04〜約0.2ミル(約1.0〜約5.0μm)、一実施態様において、約0.04〜約0.15ミル(約1.0〜約3.8μm)、及び別の実施態様において、約0.04〜約0.08ミル(約1.0〜約2.0μm)であることができる。外側クリアコート層の厚さは、一般に、約0.05〜約0.4ミル(約1.3〜約10μm)、一実施態様において、約0.05〜約0.3ミル(約1.3〜約7.6μm)であることができる。
【0021】
装飾プリントコート層の厚さは、約0.02〜約0.15ミル(約0.5〜約3.8μm)、一実施態様において、約0.02〜約0.08ミル(約0.5〜2.0μm)であることができる。
【0022】
補強層の厚さは、一般に、約0.3〜約1.4ミル(約7.6〜約36μm)であることができる。一実施態様において、その厚さは約0.3〜約1.1ミル(約7.6〜約28μm)、別の実施態様において、約0.3〜約0.8ミル(約7.6〜約20μm)、そしてさらに別の実施態様において、約0.3〜約0.5ミル(約7.6〜約13μm)であることができる。補強層が使用される場合、ドライペイント層と支持層との組み合わせの全厚は、約0.5〜約1.5ミル(約13〜約38μm)、別の実施態様において、約0.5〜約1.2ミル(約13〜約30μm)、及びさらに別の実施態様において、約0.5〜約0.9ミル(約13〜23μm)であることができる。
【0023】
バリヤー層の厚さは、約0.01〜約0.1ミル(約0.25〜約2.5μm)、一実施態様において、約0.05〜約0.1ミル(約1.3〜約2.5μm)、別の実施態様において、約0.01〜約0.02ミル(約0.25〜約0.5μm)であることができる。
【0024】
前記厚さのそれぞれは乾燥膜厚である。積層体は、その最終用途に適した任意の幅又は長さを有することができる。例えば、幅は約1〜約200cm、一実施態様において、10〜100cm、別の実施態様において、約30〜約40cmであることができる。長さは約10〜約6500メートル、一実施態様において、約15〜約1000メートルであることができる。積層体は、平らなシートの形態、又は図2に示された自己巻きロール形態を成すことができる。
【0025】
ドライペイント層
ドライペイント層は独立に1種又はそれ以上の高分子バインダー又は樹脂と1種又はそれ以上の顔料を含んで成ることができる。補強層及びバリヤー層は、1種又はそれ以上の高分子バインダー又は樹脂と、必要に応じて1種又はそれ以上の顔料を含んで成ることができる。透明な外側のクリアコート層は、1種又はそれ以上の高分子バインダー又は樹脂を含んで成ることができる。これらの層は、1種又はそれ以上の高分子バインダー又は樹脂と1種又はそれ以上の顔料(使用される場合)を含んで成る溶剤流延液体コーティング又はペイント組成物から製造できる。これらの組成物は、水又は1種若しくはそれ以上の有機溶剤に分散させることができ、必要に応じて、流動学的特性又はバリヤー特性等の特性を調節するための1種又はそれ以上のさらなる添加剤を含んでもよい。ドライペイント層、又は透明な外側のクリアコート層、あるいは補強層若しくはバリヤー層は、それぞれ独立に1又はそれ以上の押出層を含んで成っていてもよい。
【0026】
バインダー又は樹脂は、コーティング又はペイント配合物中に通常使用されているいずれのバインダー又は樹脂を含んでいてもよい。バインダーは熱可塑性又は熱硬化性樹脂を含んで成っていてもよい。バインダー又は樹脂は、合成樹脂又は天然樹脂であることができる。バインダー又は樹脂は、溶剤系コーティングとして流延可能な皮膜形成材料を含んでいても良く、あるいは一実施態様において、押出可能な皮膜形成材料であることができる。有用なバインダー又は樹脂の例としては、一般的には、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂、及びフタル酸又はフタル酸無水物樹脂、並びにこれらの混合物が挙げられる。より具体的には、バインダー又は樹脂としては、1種又はそれ以上のポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、アイオノマー樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
バインダー又は樹脂は、酢酸ビニル、塩化ビニル及び塩化ビニリデン等の単位を含有するビニル及びビニリデンポリマー又はコポリマー;エチレン又はプロピレン単位と、エーテルの酸素化若しくはハロゲン化誘導体、ブタジエン、酸素化ブタジエン、イソプレン、酸素化イソプレン、ブタジエン−スチレン、ブタジエンビニルトルエン及びイソプレン−スチレンとを含有する炭化水素ポリマー及びコポリマー;アクリル酸、メタクリル酸、それらのエステル、又はアクリロニトリルの単位を含有するポリマー又はコポリマー;不飽和物質と反応したビニル系炭化水素モノマー、例えばマレイン酸若しくはその無水物とスチレンとの反応生成物;並びに、概して、安定な水性ラテックスの形態で得られるエチレン不飽和モノマー及びポリマーの他の様々な樹脂状ゴムなどのエラストマーラテックスポリマー及びコポリマーを含んで成ることができる。バインダー又は樹脂は、塩化ビニル及び酢酸ビニルのコポリマーを含んで成ることができる。
【0028】
ポリオレフィンは、ASTM試験法1238により求めた場合に、約30未満、一実施態様では約20未満、別の実施態様では約10未満のメルトインデックス又はメルトフローレートを有すると特徴づけることができる。ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン等のポリマー及びコポリマー、又はかかるポリマー及びコポリマーの混合物のブレンドが挙げられる。
【0029】
低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレン等の様々なポリエチレンを使用することができる。ポリエチレンの場合の低密度の範囲は約0.910〜約0.925g/cm3であり、中密度の範囲は約0.925〜約0.940g/cm3であり、高密度の範囲は約0.940〜約0.965g/cm3であろう。有用な低密度ポリエチレンの一例は、Huntsmanから入手可能なRexene 1017である。
【0030】
単独で又はプロピレンコポリマーと組み合わせて使用することのできるプロピレンホモポリマーとしては、様々なプロピレンホモポリマー、例えばASTM試験D 1238、条件Lで求めた場合に約0.5〜約20のメルトフローレートを有するものなどが挙げられる。
【0031】
ポリアミド樹脂としては、一般商品名GrivoryでEMS Americal Grilon Inc.,Sumter,SC.から入手可能な樹脂、例えばCF−65、CR−9、XE−3303及びG−21が挙げられる。ポリアミド樹脂としては、また、例えばUni−Rez製品群としてUnion Camp(Wayne,New Jersey)から入手可能なもの、及びBostik,Emery,Fuller,及びHenkel(Versamid製品群として)から入手可能なダイマー系ポリアミド樹脂も挙げられる。
【0032】
ポリスチレンとしては、スチレン及び置換スチレン、例えばアルファ−メチルスチレンのホモポリマー並びにコポリマーが挙げられる。スチレンコポリマー及びターポリマーの例としては、アクリロニトリル−ブテン−スチレン(ABS);スチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN);スチレンブタジエン(SB);スチレン−無水マレイン酸(SMA);及びスチレン−メチルメタクリレート(SMMA)などが挙げられる。
【0033】
ポリウレタンとしては、脂肪族及び芳香族ポリウレタンが挙げられる。
【0034】
ポリエステルは、種々のグリコール又はポリオールと1種又は2種以上の脂肪族又は芳香族カルボン酸から調製することができる。ポリエチレンテレフタレート(PET)及びPETG(シクロヘキサンジメタノールで変性されたPET)は、Eastmanを含む種々の商業的供給元から入手可能な有用な皮膜形成材料である。例えば、Kodar 6763は、Eastman Chemicalから入手可能なPETGである。DuPontから入手可能な別の有用なポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートであるSelar PT−8307である。
【0035】
アクリレートポリマー及びコポリマー並びにアルキレンビニルアセテート樹脂(例えばEVAポリマー)を使用することができる。例として、Escorene UL−7520(Exxon)、エチレンと19.3%ビニルアセテートのコポリマー;Nucrell 699(DuPont)、11%のメタクリル酸を含有するエチレンコポリマーなどが挙げられる。
【0036】
アイオノマー樹脂(分子鎖のイオン結合を含有するポリオレフィン)を使用することができる。アイオノマーの例としては、アイオノマーエチレンコポリマー、例えばSurlyn 1706(DuPont)及びSurlyn 1702(DuPont)が挙げられる。
【0037】
ポリカーボネートも有用であり、これらは、Dow Chemical Co.(Calibre)、G.E.Plastics(Lexan)及びBayer(Makrolon)から入手可能である。
【0038】
顔料は、装飾コーティングを形成する上で使用される任意の顔料であってよい。これらの顔料としては、不透明顔料、例えば二酸化チタン及び酸化亜鉛、並びに着色顔料、例えばカーボンブラック、イエロー酸化物、ブラウン酸化物、タン酸化物、生又は焼シエナ又はアンバー、酸化クロムグリーン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、ウルトラマリンブルー、カドミウム顔料、及びクロム顔料が挙げられる。顔料としては、有機レッド、例えばアゾレッド、キナクリドンレッド及びペリレンレッド、並びに有機イエロー、例えばジアリーリドイエローが挙げられる。混合金属酸化物顔料を使用できる。充填剤顔料、例えばクレイ、シリカ、タルク、マイカ、ウォラストナイト木粉、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどを、コーティング及びペイント配合物中に伝統的に使用される通常の量で添加してもよい。
【0039】
溶剤は、有機系溶剤、例えばケトン、エステル、脂肪族化合物、芳香族化合物、アルコール、グリコール、グリコールエーテルなどであってよい。これらの例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルアセテート、ホワイトスピリット、アルカン、シクロアルカン、ベンゼン、炭化水素置換芳香族化合物(例えばトルエン、キシレンなど)、イソパラフィン系溶剤、及びこれらのうちの2種又は3種以上の組み合わせが挙げられる。或いは、水又は水を基にした溶液を使用することにより、バインダー又は樹脂とともに水性エマルジョンを形成することもできる。水を基にした溶液としては、水−アルコール混合物が挙げられる。溶剤又は水は、基材に適用されたときに、溶剤が蒸発するほどに十分に揮発性であり、バインダー又は樹脂、(もし使用するならば)顔料、及び任意の他の付加的な非揮発性成分を残す。
【0040】
使用することができる付加的な成分としては、湿潤剤;可塑剤;懸濁助剤;チキソトロープ剤、例えばシリカ;撥水剤、例えばポリシロキサン化合物;難燃剤;殺生物剤;消泡剤;及び流動剤が挙げられる。
【0041】
ドライペイント層を形成するのに使用される液状ペイント又はコーティング組成物のための顔料濃度は、約10〜約30重量%、一実施態様において、約13〜約27重量%であることができる。バインダー又は樹脂の濃度は、約20〜約40重量%、一実施態様において、約22〜約37重量%であることができる。水又は有機溶剤濃度は、約30〜約70重量%、一実施態様において、約40〜約60重量%であることができる。付加的な成分、湿潤剤、懸濁剤などの濃度は、最大で5重量%であることができる。ドライペイント層を形成する際に使用されるコーティング又はペイント組成物の、バインダーに対する顔料の容積濃度は、約5〜約35重量%、一実施態様において、約10〜約30重量%であることができる。
【0042】
ドライペイント層を形成するために使用される液状ペイント又はコーティング組成物は、周知の技術を用いてブレンドすることができる。ドライペイント層は、ペイントの単一コート又は多重コートを含んでよく、連続的な層の形態を成しており、これに対して、装飾プリント層は独立して、連続的又は不連続的な層の形態を成していてよい。ドライペイント層のために多重コートを使用する場合、それぞれのコートは同じ又は異なる配合を有していてよい。プリントコートは、ドライペイント層と同じ色又はこれとは異なる色を有していてよく、或いはプリントコートは互いに同じ色を有していてよく、或いは、これらは互いに異なる色を有していてよい。ドライペイント層を使用することにより、背景色を提供することができ、これに対してプリント層を使用することにより、所望のパターン又はデザインを提供することができる。
【0043】
a)透明なトップコート層
透明な外側クリアコート層は、単一のコーティング層又は多重コートを含んでよく、また、上記樹脂材料のいずれかを含んでよい。多重コートを使用する場合、それぞれのコートは同じ又は異なる配合を有していてよい。前述のように、外側クリアコート層は溶液流延(水性又は有機溶剤に基づく)しても、或いは、外側クリアコート層は押出してもよい。一実施態様において、外側クリアコート層は、耐擦り傷性、耐汚染性、及び/又はドライペイントフィルム層又はその基礎となる層に対する再コーティング性を高める。再コーティング性を高めることにより、別のドライペイントフィルム層又は装飾プリント層をその上に続いて適用すること、又は従来型のペイント又は装飾ドライペイントフィルムを適用することが容易になる。
【0044】
(b)補強又は支持層
補強又は支持層は、上記バインダー又は樹脂材料のいずれかから形成することができる。この層は、溶液又はエマルジョンから形成し、下記コーティング技術のいずれかを用いて適用することができる。この層は、押出すこともできる。補強層は、上記顔料のうちの1種又は2種以上を含有することにより、完成した積層体の不透明性を高めることができる。補強層が使用される場合、補強層中の顔料の濃度は最大10重量%であり、一実施態様において、約6〜約10重量%であることができる。
【0045】
ドライペイント層、外側クリアコート層又は補強層は独立して、無機充填剤、又は他の有機又は無機添加剤を含有することにより、所望の特性、例えば外観特性(クリア、不透明又は着色フィルム)、耐久性及び加工特性を提供することができる。有用な材料の例としては、炭酸カルシウム、二酸化チタン、金属粒子、繊維、難燃剤、酸化防止化合物、熱安定剤、光安定剤、紫外線安定剤、粘着防止剤、加工助剤、及び酸受容体が挙げられる。
【0046】
ドライペイント層、外側クリアコート層又は補強層のうちの1種又は2種は、少量の接着剤樹脂を含有することにより、外側クリアコート層及び/又は支持層に対するドライペイント層の接着力を増強することができる。さらに又はその代わりに、ドライペイント層と、外側クリアコート層又は補強層との間に、接着剤樹脂から成るタイコート層を使用することもできる。タイコートのための接着剤樹脂はアクリル酸樹脂接着剤であることができ、或いは、エチレン/ビニルアセテートコポリマー接着剤、例えば商品名ElvaxでDuPontから入手可能な接着剤であることができる。商品名BynelでDuPontから入手可能な接着剤を使用することもできる。
【0047】
一実施態様において、ドライペイント層、外側クリアコート層及び/又は補強層は可撓性であるが、しかし室温では非伸縮性且つ非弾性的である。
【0048】
接着剤層
乾性接着剤層は、加圧下で、室温において、装飾用積層体を基材表面に結合する感圧接着剤(PSA)を含むことができる。接着剤層は連続的又は不連続的な層であってよく、また、1種の接着剤、或いは2種又は3種以上の接着剤の混合物を含むこともできる。接着剤層は、或る幾つかの領域に比較的強い接着剤粘着レベルを有し、また別の領域には比較的弱い接着剤を有するパターン化された接着剤層であってよい。
【0049】
一実施態様において、接着剤層は、永久結合を形成する前に位置調節できるようにするために積層体のわずかな移動を可能にする低い初期粘着力を有する再配置可能な接着剤である。一実施態様において、接着剤は、当該積層体を基材表面に接着し、そして基材表面上で再配置し、続いて装飾ドライペイント層から艶消剥離ライナーを除去することを可能にする、抑制された初期粘着レベルを室温で有する。接着剤層には続いて、時間の経過により、基材にドライペイント層を永久結合するのに十分な接着力が発現する。一実施態様において、接着剤層は、積層体が基材に適用されたときに積層体の縁を超えて、制限された滲出量しか生じないことによって特徴付けされる。一実施態様において、滲出物は生成されない。
【0050】
本発明の下記一実施態様において、感圧接着剤は、架橋型アクリル樹脂材料、より具体的には架橋型アクリルエマルジョンを含む。特に有用な接着剤材料は、内部架橋型アクリルエマルジョンを含む。これらの感圧接着剤材料は、低い粘着特性、剥離特性及び流動特性と、下記示差剥離特性を提供するのに十分な、有用な(薄い)コート重量における凝集強さレベルとの有用な組み合わせを提供する。高分子量アクリル接着剤及び外部架橋型アクリル接着剤を使用することにより、機能特性の所望の組み合わせを生成することができる。
【0051】
接着剤は、ゴム系接着剤、アクリル接着剤、ビニルエーテル接着剤、シリコーン接着剤、又は2種又は3種以上の混合物を含むことができる。接着剤は、ホットメルト、溶剤系又は水系接着剤として、積層体に適用することができる。有用な接着剤材料は、主要成分として、接着剤ポリマー、例えばアクリル型ポリマー;ブロックコポリマー;天然型、再生型、又はスチレン−ブタジエンゴム;粘着付与された天然型又は合成型ゴム;エチレン及びビニルアセテートのコポリマー;エチレン−ビニル−アクリルターポリマー;ポリイソブチレン;又はポリ(ビニルエーテル)を含有することもできる。他の材料、例えば粘着付与性樹脂、可塑剤、酸化防止剤、充填剤及びワックスを接着剤に含めることができる。
【0052】
有用な感圧接着剤の説明は、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第13巻、Wiley−Interscience Publishers(New York,1988)に見いだすことができる。有用な感圧接着剤の付加的な説明は、Encyclopedia of Polymer Science and Technology、第1巻、Interscinece Publishers(New York,1964)に見いだすことができる。
【0053】
使用できる感圧接着剤としては、HM−1597、HL−2207−X、HL−2115−X、HL−2193−XとしてH.B. Fuller Company,St.Paul,Minn.から入手可能なホットメルト感圧接着剤が挙げられる。他の有用な感圧接着剤としては、Century Adhesives Coporation,Columbus,Ohioから入手可能な接着剤が挙げられる。
【0054】
シリコーン系PSA、ゴム系PSA、及びアクリル系PSAを含む従来のPSAが有用である。ホットメルト接着剤の市販されているものの別の例は、Ato Findley, Inc.(Wauwatusa,Wisconsin)によって販売されているH2187−01である。加えて、Harlanに発行された米国特許第3,239,478号明細書に記載されたゴム系ブロックコポリマーPSAを使用することもできる。かかるホットメルト接着剤についてのこの特許明細書の開示内容を本明細書に援用する。
【0055】
接着剤組成物は、1種以上の固形粘着付与剤樹脂成分を含有することができる。固形粘着付与剤とは、80℃を上回る軟化点を有するものとして本明細書中では定義される。固形粘着付与剤樹脂成分が存在する場合、接着剤成分は、約40%〜約80重量%の熱可塑性エラストマー成分、一実施態様において、約20%〜約60重量%、そして別の実施態様において、約55%〜約65重量%の固形粘着付与剤成分を含むことができる。固形粘着付与剤は、粘着力又は接着力を形成するのに十分に混合物のモジュラスを低減する。また、固形粘着付与剤、具体的には、より高分子量(例えば約2000を上回るMw)の固形粘着付与剤、及びより低い分散度を有する固形粘着付与剤(Mw/Mn=約3未満)は、ポリマーフィルム層内への移動に対して感受性がより低いことがある。フィルム層内への粘着付与剤の移行は寸法不安定性を招くおそれがあるため、感受性が低いことは望ましい。
【0056】
固形粘着付与剤樹脂としては、炭化水素樹脂、ロジン、水素化ロジン、ロジンエステル、ポリテルペン樹脂、及び特性の適正なバランスを示す他の樹脂が挙げられる。種々の有用な固形粘着付与剤、例えばArizona Chemical Companyによって商品名Zonatacで販売されているテルペン樹脂、Exxon Chemical
Companyによって商品名Escorezで販売されている樹脂などの石油炭化水素樹脂、又はGoodyear,Akron,Ohioから入手可能なWingtack
95(合成粘着付与樹脂)が市販されている。
【0057】
同時押出しされるべき接着剤混合物のモジュラスは、液状ゴム、すなわち室温で液状のゴムを組み入れることによって低下させることもできる。液状ゴムは一般に5,000以上、より多くの場合には20,000以上のMwを有する。接着剤配合物の全重量を基準として、10重量%未満、及び5重量%未満の量の液状ゴムを組み入れることによって、高分子フィルム材料と同時押出可能な接着剤が形成される。液状ゴムを組み入れることによって、粘着力及び接着力が増大した接着剤を製造することができる。液状ブロックコポリマー、例えば液状スチレン−イソプレンブロックコポリマーを使用することができる。接着剤混合物中に組み入れることができる他の液状ゴムとしては、液状スチレン−ブタジエンゴム、液状ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴムなどが挙げられる。
【0058】
接着剤層は、1種又は2種以上の顔料を含有することにより、この層に重なるペイントフィルム層の不透明性を高め、そして、所望の不透明性レベルを達成するために、より薄いペイントフィルム層の使用を可能にすることができる。先に示した顔料のいずれかを使用することができる。例としては、二酸化チタン及びカーボンブラックが挙げられる。顔料容積濃度は最大約10%、一実施態様において、約5%〜約10%であり、そして別の実施態様において、約2%〜約8%であることができる。
【0059】
接着剤組成物は、他の材料、例えば酸化防止剤、熱及び光安定剤、紫外線吸収剤、充填剤、着色剤、粘着防止剤、補強剤、及び加工助剤を含んでもよい。
【0060】
接着剤組成物は、無機充填剤、及び他の有機及び無機添加剤を含有することにより、所望の特性を提供することができる。有用な充填剤の例としては、炭酸カルシウム、二酸化チタン、金属粒子及び繊維が挙げられる。
【0061】
バリヤー層
バリヤー層は、上記アクリレートポリマー又はコポリマー、ポリビニルアルコール、エチレン及びビニルアセテートから誘導されたコポリマー、及びエチレン、ビニルアセテート及びポリビニルアルコールから誘導されたコポリマーのうちのいずれかを含むことができる。バリヤー層は、ポリビニルアルコール、ウレタン、Cymel 385(メラミンホルムアルデヒド樹脂であるとされているCytecの製品)、及びポリアジリジン(例えばトリメトール−トリスN(メチルアジリジニル)プロプリオネートであるとされているAvecia Resinsから入手可能であるNeoCryl CX100)を含むことができる。一実施態様において、ポリビニルアルコールとウレタンとの重量比は約20:80である。下記例により、バリヤー層を形成するのに使用することができる特定のコーティング組成物を例示する。
【0062】
【表1】

【0063】
前述のように、装飾積層体に接触させる基材表面は、色成分を含有する顔料材料を有するペイントされた表面を含むことができる。これらの色成分は、装飾フィルム中に、また接着剤層を通して色層に移行し、変色を招くおそれがある。バリヤー層は、望ましくない変色誘発顔料の移行を停止又は遅延させ、この停止又は遅延は、色層の変色又は色ずれ(color shift)を装飾フィルムの有効寿命にわたって実質的に目立つことのないレベル内に維持するのに十分に行われる。装飾フィルムが適用され通常使用される通常使用条件は、約4℃(40°F)〜約35℃(90°F)、より具体的には約15℃(60°F)〜約27℃(80°F)の温度として定義される。通常使用条件下でフィルムの見積有効寿命中に発生し得る色ずれ量を概算するために、フィルム試料を、加速老化法によって試験し、そしてこれらの条件下で色ずれに関して測定した(温度が高いほど、変色を引き起こす色成分の移行が加速される)。一実施態様において、内装用ラテックス試験試料の色を内装用ラテックス色標準と比較し、次いで試験試料をほぼ400時間(16日間)にわたって60℃(140°F)環境に晒すことによって、色ずれを測定する。次いで試験試料を色ずれに関して測定し、そして標準と比較することにより色ずれ量を求める。ある試験によれば、色ずれをASTM 805試験手順に基づいて測定し、そして尺度単位は、Δb*(イエロー/ブルー)スケール上のC.I.E.色単位であるが、その他の色ずれ測定を用いて、色ずれが特定範囲内にあるかどうかを見極めることができる。これらの色ずれ測定技術は、モノアゾ顔料又は色素からイエロー色成分が移動することによって引き起こされる、ブルーペイントされた試料中の色ずれを測定することにより、色ずれが許容可能に低いかどうかを評価する上で有用である。一実施態様において、400時間にわたって60℃で試験した時に生じた色ずれが約0.30 C.I.E.Δb*色単位以下である場合、その色ずれは許容可能な範囲内にあるのに十分に低いと考えられる。
【0064】
バリヤー層は薄い可撓性の高分子フィルムを含み、このフィルムは、一実施態様において、バリヤー特性を高めるために架橋されていてもよい。バリヤー層の一実施態様は、顔料非含有アクリル樹脂状材料を含む。この樹脂状材料は、許容レベル内にまでモノアゾ顔料の移行を遅らせるのに十分な架橋密度で架橋されている。このバリヤー層の一実施態様は、メラミン樹脂で架橋された比較的低分子量のアクリルポリマーを含む。バリヤー層に適した低分子量アクリル樹脂の分子量は約100,000未満である。1つのこのような架橋型アクリルバリヤー層(実施例9においてより詳細に特定する)は、分子量約50,000のアクリルポリマー(Rohm and Haas製のAdcoat 61 WG178)である。架橋は分子量を増大させ、バリヤーコートの軟化点を高め、そして、アゾ色成分がバリヤー層を通して移行するのを遅延させる分子レベルで網状構造を形成する。
【0065】
架橋高分子材料をバリヤーコートとして使用することは、所望の遅延を生じさせる上で有用であり得るが、しかし場合によっては、樹脂状材料の架橋は、PSA層に対する接着力を低減するおそれがある。場合によっては、ベースコートとPSA層との間にタイコートを含むことが望ましい。接着力を改善することが判っている1つのタイコート層は、装飾フィルム内に使用される顔料ベースコート層と同様の材料から成る薄いコーティングを含む。このようなタイコートの一例は、実施例9に示される可塑化されたビニルタイコートである。
【0066】
PSA層は、予め形成されたバリヤーコート上にPSAを直接コーティング又は流延することにより、バリヤーコートに適用することができる。或いは、PSAを一時的なキャリヤー上に別個に流延し、次いで、キャリヤーからバリヤーコートにトランスファー貼合わせすることもできる。実験的試験から、接着剤がバリヤーコート上に直接的にコーティングされると、流延接着剤のトランスファー貼合わせと比較して、バリヤーコートと接着剤との間の接着力、及び色成分の移行に対する抵抗はより良好であることが判った。
【0067】
別の実施態様の場合、バリヤー層は熱可塑性(非架橋型又は僅かに架橋型)高分子材料から形成することができる。1つのこのような材料は、上記低分子量アクリル材料(61WG178)である。色成分の移行に対する材料の抵抗を増大させるために、微粒子充填剤材料又は添加剤をバリヤー材料中に分散させることができる。充填剤又は添加剤は、除去特性、又は、移行性顔料が接着し得るレーキ剤と同様の特性を有することができ、或いは、充填剤材料は、十分に低いレベルまで移行速度を物理的に遅らせることもできる。モノアゾ顔料の移動を低減、捕捉、又は停止することが判っている材料は、ヒュームド酸化アルミニウム、金属硫酸塩化合物及び/又は二酸化チタンを含むが、その他の金属塩、又は酸化物、又は金属化合物を使用することにより、同様の結果を生じさせることもできる。バリヤーコート内で有用なある金属化合物は、HaloxからXtain Aとして入手可能なアルミニウムジルコニウムホスホシリケートを含む。試験から、これらのタイプの充填剤又は添加剤材料を含有する低分子量熱可塑性アクリル樹脂バリヤー材料の色ずれ結果は良好であることが判った。これらの材料はまた、架橋アクリル樹脂バリヤーコート層中の色ずれをも低減する。
【0068】
バリヤーコートが、色移りを遅延させるための分散型充填剤を含有する熱可塑性樹脂材料を含む本発明の一実施態様において、バリヤーコートに分散型接着剤を添加することにより、PSA層に対する接着力を高めることができる。低分子量熱可塑性アクリルバリヤーコートは、ポリビニルピロリドンホモポリマー(PVP)を添加することによって高められた接着特性を有することができる。このバリヤーコートは、バリヤーコートに直接コーティング又はトランスファー貼合わせされたPSA層に対して良好な接着力を形成する。PVPは、システム内で使用されるアクリル系ポリマー材料及び溶剤との適合性を有し、また、PSA層に対する接着力をも高める。PVPの一供給元は、PVP K80として特定されるInternational Specialty Products(ISP)である。
【0069】
バリヤー層の別の実施態様は、望ましい制限内にまで色移りを遅らせるのに十分に高分子量を有する熱可塑性高分子材料を含む。好適な高分子量バリヤー材料の分子量は、250,000を超える。1種のバリヤー材料は、高分子量アクリル樹脂材料、例えば分子量約350,000のポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む。このバリヤー材料によって生じる色ずれの結果は、許容範囲内におさまることができ、しかもこの場合、接着促進剤又は添加剤を添加することはない。そしてバリヤー材料は、PSAに対する接着を促進するための付加的なタイコート層なしに使用することもできる。
【0070】
本発明のバリヤー層は、乾燥塗膜厚約0.05〜約0.20ミル(約1.3〜約5.0μm)を形成するのに十分に低分子量で被着される。バリヤーコートは、多層積層体の装飾部分(剥離ライナーを除く)に著しい厚さを加えないほど十分に薄い。一実施態様の場合、バリヤー層の塗膜厚は、フィルムの装飾部分の全厚の約10%以下である。
【0071】
バリヤー層はまた、高温で耐軟化性であり、一実施態様において、バリヤー層のガラス転移温度(Tg)は約60℃を上回る。
【0072】
バリヤー層及び(もし使用されるならば)隣接するタイコート層を加えることが、装飾フィルムの示差剥離特性に影響を及ぼすことはない。PSA層に対するバリヤー層の接着力は、本明細書中に記載されているようなその自己巻取り形態の積層体の引き剥がし力特性を著しく低減しないように十分である。
【0073】
艶消剥離ライナー
剥離ライナーは、独立して、紙、ポリマーフィルム、又はこれらの組み合わせを含むことができる。一実施態様において、剥離ライナーは室温において、熱安定性、非エラストマー性、且つ非伸縮性である。
【0074】
任意の重量の紙を剥離ライナーとして使用することができるが、1リーム当たり約30〜約120ポンドの重量を有する紙が有用であり、そして1リーム当たり約60〜約100ポンドの重量を有する紙が好ましい。本明細書中に使用される「リーム(ream)」という用語は3000平方フィートに等しい。
【0075】
或いは、剥離ライナーは独立して高分子フィルムを含むこともでき、そして高分子フィルムの例としては、ポリオレフィン、ポリエステル、及びこれらの組み合わせを含む。剥離ライナーは好ましくは、ドライペイント転写フィルムの当業者によく知られた可撓性で、折り畳み可能で、耐熱性で、実質的に非弾性の、自立の、一時的なキャリヤーフィルム又は流延シートから形成することができる。剥離ライナーは好ましくは延伸ポリエステルフィルム、例えば、Mylar(DuPontの登録商標)として入手可能なポリエチレンテレフタレート(PET)、又はHoechst Celanese Hostaphan 2000ポリエステルフィルムであってよい。
【0076】
積層体を基材表面に適用するときにライナーが除去されるまで、剥離ライナーは、積層体に対する構造保全性を提供する。
【0077】
艶消剥離コート層は、剥離コート層と装飾ドライペイント層との間に所定のレベルの粘着性又は接着性を提供する上記のバインダー又は樹脂のいずれかを含むことができる。装飾ドライペイント層は、着色コート層、外側クリアコート層、又は装飾プリント層を含むことができる。艶消剥離コート層の粘着レベルは、ドライペイント転写積層体を形成するプロセス中及び通常の積層体取扱い中(自己巻き配向において積層体を形成し、これを巻き出し、そしてこれを基材表面に適用することを含む)では、接着されたドライペイント層から剥離コート層が分離するのを防止するのに十分なレベルである。艶消剥離コートはまた、積層体を基材に適用したあと、剥離コート層と、接着されたドライペイント層との分離を容易にするのに十分な剥離特性を有し続ける。
【0078】
艶消剥離コート配合物は、通常の流延技術、例えばグラビア印刷により、剥離ライナーに適用することができるコーティングを含む。好ましいコーティング組成物は熱硬化性樹脂材料である。この材料はまた、これを乾燥させるための熱に曝されると、架橋した剥離ライナーに接着した表面フィルムとして永久結合する。艶消剥離コート内に含まれる固形物は好ましくは、重要な成分として1種又は2種以上の架橋剤を含むことにより、ポリエステルキャリヤーフィルムに対する乾燥済みの架橋したコーティングの良好な接着力を提供する。一実施態様において、艶消剥離コート配合物は一次架橋樹脂、例えば架橋を制御してポリエステルキャリヤーフィルムに対する接着を生じるメラミン樹脂を含む。目下好ましい架橋性樹脂は、ヘキサメトキシメチル樹脂、例えばCymel 303である。好適な一次官能樹脂は、ビニル樹脂、例えばVAGHとして知られる中分子量の塩化ビニル−ビニルアセテート樹脂である。ビニル樹脂は、艶消剥離コート中の総固形分の最大約20%の量で存在することができる。加えて、艶消剥離コートは二次官能樹脂を含むことにより、艶消剥離コートからの装飾ドライペイント層の上面の剥離を改善することができる。一実施態様において、二次官能樹脂は、アクリル変性アルキド樹脂、例えばChempol 13 1501又はLankyd 13−1245として知られる樹脂であってよい。この二次官能樹脂は、艶消剥離コートの総固形物の約1〜約16重量%である。艶消剥離コートはさらに、架橋プロセスを加速するのに適した触媒を含み、この触媒は典型的には、艶消剥離コート中の総固形分の約1〜約8重量%である。
【0079】
艶消剥離コート組成物の樹脂状成分は、好適な溶剤と組み合わされる。一実施態様において、樹脂は、一次樹脂溶剤、例えばメチルイソブチルケトン(MIBK)と混合される。MIBKは、配合物中溶剤総量の約65%〜約85%である。二次樹脂溶剤、例えばイソプロピルアルコール(IPOH)は、溶剤中樹脂の架橋を遅らせるのに有用である。二次樹脂溶剤は好ましくは溶剤総量の約5%〜約20%である。
【0080】
艶消剥離コート配合物は、一次官能樹脂を一次及び二次樹脂溶剤中に溶解させ、二次官能樹脂を一次艶消し剤と一緒に混合して、次いで好ましくは微粒子不活性無機材料を含む充填剤の形態でこれを添加することにより調製される。一実施態様において、充填剤は、平均粒子サイズ約4.8μmのケイ酸アルミニウムを含む。別の実施態様において、充填剤はタルクを含むことができる。配合物中に含有された充填剤は、艶消剥離コート中、総固形物の最大約50%である。一実施態様において、タルク充填剤材料は、艶消剥離コート中に含有された総固形物の約40%〜約50%である。微粒子充填剤は、好ましくは約100°F〜約120°Fの高温で樹脂及び樹脂溶剤ブレンド中に十分に分散される。
【0081】
使用中、艶消剥離層が乾燥して架橋すると、この層はキャリヤーシートの表面上に化学的な艶消しコーティングを形成する。艶消し表面は、充填剤の量及び粒子サイズによって制御される。微粒子は、艶消剥離コートの乾燥した外面に突出することにより、ミクロ粗さを有する表面を微視的規模で形成する。このミクロ粗さは、乾燥した外側クリアコート又はドライペイント層の露出表面に、複製されたミクロ粗さを転写する。このことは光散乱を生じさせ、その結果、装飾ドライペイント層の上面上に、艶なし又は低表面光沢艶消し仕上げをもたらす。
【0082】
一実施態様において、本発明に有用な艶消剥離コート配合物は、有意な量のシリコーン系剥離材料及び/又はワックス系成分を含有しない。かかる材料は、高温時に剥離特性を提供するのに有用であり得るが、しかし本発明の艶消剥離コートは、シリコーン系剥離材料又はワックス系成分の不在下において、室温剥離と、ドライペイント層に対する剥離ライナーの接着と、ドライペイント層の露出面への艶消表面の転写との有用な組み合わせを提供する。別の言い方をすれば、艶消剥離コートは室温で固化状態にあり、そして、(1)艶消剥離表面を形成する表面形成成分と、(2)ドライペイント層に艶消剥離表面を剥離可能に接着させるための接着成分と、(3)室温でドライペイント層との接触状態から艶消剥離表面を剥離することにより、艶消剥離表面からドライペイント層の露出面に艶消表面仕上げを転写する剥離成分と、を含有する樹脂状材料から形成される。
【0083】
一実施態様において、艶消剥離コートは固形分を基準として、約10〜約30重量%のアルキド樹脂;約10〜約30重量%のビニル樹脂;約20〜約35重量%のメラミン架橋樹脂;及び約5〜約10重量%の触媒を含む。固形分の残りは、前述のような微粒子充填剤、例えばタルクを含む。
【0084】
一実施態様において、粒子と樹脂又はバインダーとの重量比は、最大約1.1:1、一実施態様において、約0.7:1〜1.1:1、別の実施態様において、約0.7:1〜0.9:1、そして別の実施態様において、約0.9:1〜1.1:1であることができる。
【0085】
ドライペイント層の外面に転写される光沢は、剥離コート配合物と、この剥離コートと接触するドライペイントの外面層の組成との組み合わせによって制御することができる。一実施態様において、ウレタン、アクリル及び/又はビニル樹脂状ペイント層から成るモノコート又はベースコート/クリアコート仕上げを有するドライペイントフィルムに、約10光沢単位未満の85°光沢を転写することができる。好ましい剥離コートは、ミクロ粒子充填剤を含有するアクリル/ビニルブレンドを含む。別の実施態様において、ウレタン、アクリル及び/又はビニル樹脂状ペイント層から成るモノコート又はベースコート/クリアコート仕上げを有するドライペイントフィルムに、約35光沢単位未満の85°光沢測定値を転写することができる。好ましい剥離コートは、分散したミクロ粒子を含有するアクリル変性アルキド樹脂及び/又はビニル樹脂を含む。
【0086】
キャリヤーフィルム又は剥離ライナーは典型的には、供給ロール上に収容され、このロールから、キャリヤーが巻き出され、グラビア印刷ステーションに渡される。このステーションにおいて、艶消剥離コートが剥離ライナー上にコーティングされる。艶消剥離コートを含む剥離ライナーは、次いで、艶消剥離コートを乾燥させて架橋するのに十分な温度約325°F〜約350°Fで運転される乾燥炉に通される。第1段乾燥炉において、艶消剥離コートを、キャリヤーシートにこれを永久結合するのに十分に架橋させる。好ましくは、艶消剥離コートをコーティングして乾燥させ、コート重量(乾燥)を約3gsm〜約6gsmにする。
【0087】
接着剤剥離コート層は、当業者に知られた任意の剥離コーティング組成物を含んで成ることができる。シリコーン剥離コーティング組成物を使用することができる。シリコーン剥離コーティング組成物は典型的にはポリオルガノシロキサン、例えばポリジメチルシロキサンを含む。本発明において使用されるシリコーン剥離コーティング組成物は、室温硬化型、熱硬化型、又は輻射線硬化型であってよい。一般に、室温硬化性及び熱硬化性組成物は、1種以上のポリオルガノシロキサンと、かかるポリオルガノシロキサンのための1種以上の触媒(又は硬化剤)とを含む。これらの組成物は、1種以上の硬化促進剤及び/又は接着促進剤を含有することもできる。
【0088】
多層積層体内の層のそれぞれを、独立に、周知の技術を用いて適用し、乾燥させ、且つ/又は硬化させることができる。適用技術としては、グラビア、リバースグラビア、オフセットグラビア、ロール塗布、ブラッシング、ロール式ナイフ、計量ロッド、リバースロール塗布、ドクターナイフ、浸漬、ダイ塗布、スロットダイ塗布、吹付け、カーテン塗布、スライド塗布、スライドカーテン塗布、押出、同時押出、フレキソグラフィック、凸版、回転スクリーン、及びフラットスクリーンが挙げられる。一実施態様において、感圧接着剤層は、トランスファー貼合わせを用いて適用することができる。装飾プリント層は、グラビア、フレキソグラフィック、シルクスクリーン及びインクジェット印刷を含む周知の印刷技術を用いて適用することができる。熱に、又は、電離線又は非電離化学線の周知の形態に暴露することにより、適用された層を乾燥及び/又は硬化させることができる。使用することができる乾燥温度又は硬化温度は、約115℃〜約160℃、一実施態様において、約140℃〜約150℃であることができる。有用な輻射線タイプとしては、紫外線及び電子ビームが挙げられる。熱又は輻射線による乾燥及び/又は硬化のこれらの形態を発生させるための装置は当業者によく知られている。
【0089】
多層積層体の種々の層は、先に示した押出及び同時押出技術、並びに、上記米国特許第457,826号明細書(参考のため本明細書中に引用する)により詳細に記載された押出及び同時押出技術によって形成することもできる。ドライペイント層又は支持層は、図8に示したような別個の押出機、又は図9に示したようなデュアルダイ押出機を使用して、接着剤層と同時押出することができる。図8を参照すると、剥離層70はロール72から巻き出され、押出ダイ74を通過して前進し、この押出ダイ74では、剥離層70に接着剤層76がコーティングされ、次いで押出ダイ78を通過して前進し、この押出ダイ78では、接着剤76上に補強層又は支持層79がコーティングされる。結果として得られた同時押出物は引取りロール80上に集められる。図9を参照すると、剥離ライナー70はデュアル押出ダイ82を通過して前進し、この押出ダイ82では、剥離ライナー70に、同時押出しされた接着剤層84と支持層86とが同時にコーティングされる。その結果として得られた同時押出物は、引取りロール88上に集められる。
【0090】
図1に示したドライペイント転写積層体は、前記適用技術のうちの1つを用いて剥離ライナーの下面に接着剤剥離コートを適用し、次いで剥離コートを硬化させることにより形成することができる。接着剤剥離コート層のコート重量は、1平方メートル当たり約0.1〜約1グラム(gsm)であり、一実施態様において、約0.25〜約0.35gsmであってよい。次いで、艶消剥離コート層を、上記適用技術のうちの1つ(例えばグラビア)を用いて、剥離ライナーの上面に適用され、次いで乾燥又は硬化させる。艶消剥離コートのコート重量は、約2.5〜約6.5gsm、一実施態様において、約4.5〜約5.5gsmであってよい。次いで、顔料ドライペイント層を形成するための液状ペイント又はコーティング組成物を、上記適用技術のうちの1つ(例えばリバースロール又はスロットダイ)を用いて、艶消剥離コートの表面に適用し、次いで乾燥又は硬化させる。顔料含有ドライペイント層のコート重量は、約20〜約60gsm、一実施態様において、約30〜約40gsmであってよい。1つ又は2つ以上のコートを適用することができる。次いで、感圧接着剤層を、上記適用技術のうちの1つ(例えばスロットダイ)を用いて、ドライペイント層の上面に適用し、次いで乾燥又は硬化させる。感圧接着剤はコーティング技術又はトランスファー貼合わせを用いて適用することができる。感圧接着剤層のコート重量は、約10〜約30gsm、一実施態様において、約11〜約17gsmであってよい。ドライペイント転写積層体20を次いで巻取ることにより、図2に示したロール形態にすることができる。
【0091】
図3に示したドライペイント転写積層体は、図1の積層体20と同じ手順を用いて形成することができるが、但しこの場合、透明外側クリアコート層を艶消剥離コート層に適用し、次いで顔料含有ドライペイントフィルム層に適用前に乾燥又は硬化させる。次いで、ドライペイント層をクリアコート層の表面に適用する。前記適用技術のうちの1つ(例えばグラビア)を用いて、クリアコート層を適用することができる。クリアコート層のコート重量は、約1〜約5gsm、一実施態様において、約2.5〜約3.5gsmであってよい。1つ又は2つ以上のコートを適用することができる。ドライペイント転写積層体を次いで巻取ることにより、図2に示したロール形態にすることができる。
【0092】
図4に示したドライペイント転写積層体は、積層体20と同じ手順を用いて形成することができるが、但しこの場合、装飾プリント層を形成するための液状ペイント組成物を、透明フィルム層の表面に適用し、次いで、ドライペイントフィルム層の適用前に硬化させる。次いで、ドライペイントフィルム層を、装飾プリント層の表面に適用する。装飾プリント層は、前記プリント技術のいずれか(例えばグラビア、フレキソグラフィック、シルクスクリーン、又はインクジェット)を用いて適用することができる。装飾プリント層のコート重量は、約0.3〜約2gsm、一実施態様において、約0.3〜約0.7gsmであってよい。次いで、ドライペイント転写積層体を次いで巻取ることにより、図2に示したロール形態にすることができる。
【0093】
図5に示したドライペイント転写積層体は、図4の積層体と同じ手順を用いて形成することができるが、但しこの場合、第2の装飾プリント層を形成するための液状ペイント組成物を、透明フィルム層の表面に適用し、次いで、第1の装飾プリント層の適用前に乾燥又は硬化させる。第2の装飾プリント層は、前記プリント技術のいずれか(例えばグラビア、フレキソグラフィック、シルクスクリーン、又はインクジェット)を用いて適用することができる。第2の装飾プリント層のコート重量は、約0.3〜約2gsm、一実施態様において、約0.3〜約0.7gsmであってよい。ドライペイント転写積層体を次いで巻取ることにより、図2に示すロール形態にすることができる。
【0094】
図6に示したドライペイント転写積層体は、図1に示した積層体20を形成するために用いられたものと同じ手順を用いて形成することができるが、但しこの場合、補強層を、ドライペイント層に適用する。補強層は、接着剤層と同時押出しすることができ、次いで、ドライペイントフィルム層を補強層上にコーティング(例えばグラビア)することができる。ドライペイント転写積層体を次いで巻取ることにより、図2に示すロール形態にすることができる。
【0095】
図7に示したドライペイント転写積層体は、図1に示した積層体20を形成するために用いられたものと同じ手順を用いて形成することができるが、但しこの場合、バリヤー層を、ドライペイント層上にコーティングする。ドライペイント転写積層体を次いで巻取ることにより、図2に示したロール形態にすることができる。
【0096】
ドライペイント転写積層体は、単一製造ライン又は複数製造ライン、又は複数製造設備内で形成することができる。複数製造ライン又は設備の場合、積層体の部分をロール積層体として製造し、乾燥又は硬化させ、巻取り、次の製造ライン又は設備に移し、巻き出し、そしてさらに付加的な層を適用することによって処理することができる。例えば、ドライペイント層及び接着剤層は、複数ライン内で形成することができ、或いは、単一製造ライン内で順次形成することができ、或いは、同時押出法又はマルチダイコーティング法などの方法によって同時に形成することもできる。
【0097】
ドライペイント転写積層体20は、図2に示されたロールから積層体を巻き出し、それとともに積層体を、被覆されるべき基材表面に適用することにより使用することができる。基材は、任意の平らな表面を含んでよい。平らな表面としては、壁ボード、プラスチックシート、金属シート、及び複合材料などが挙げられる。基材は、内部(屋内)表面又は外部(屋外)表面を含むことがある。積層体は、艶なし、半光沢から光沢までの種々の表面仕上げを有する塗装済面に適用することができる。積層体は、接着剤層が基材と接触した状態で基材に重なるように配置される。積層体が表面に接着するまで、必要な場合には再配置を伴って、圧力が加えられる。次いで剥離ライナーを装飾用積層体の前面から剥ぎ取り、ドライペイントフィルム層を、接着剤層によって基材に接着させたままとなる。図3〜7及び図10に示されたドライペイント転写積層体も、積層体20と同様に基材表面に適用することができる。
【0098】
示差剥離系
本発明の一実施態様において、積層体の剥離特性は、図1〜7及び図10に示した実施態様において、ドライペイント層(透明層、色層又は装飾プリント層を含むことができる)から艶消剥離コート層を分離するのに必要な剥離力は、感圧接着剤層から接着剤剥離コート層を分離するのに必要な剥離力よりも大きいように制御される。
【0099】
一実施態様において、ドライペイント層(すなわち色層、クリアコート層又は装飾プリント層)から艶消剥離コート層を分離するのに必要なキャリヤー剥離力は、一般には2インチ(g/2インチ)当たり約20〜約180グラム、一実施態様において、約30〜約150g/2インチ、及び別の実施態様において、約40〜約120g/2インチであることができる。他の実施態様において、剥離力は、約50〜約100g/2インチ、約50〜約90g/2インチ、約70〜約90g/2インチ、約50〜約65g/2インチであることができる。
【0100】
一実施態様において、感圧接着剤層から接着剤剥離コート層を分離するのに必要な巻出し剥離力は一般に、約10〜約150g/2インチ、一実施態様において、約20〜約150g/2インチ、別の実施態様では、約20〜約90g/2インチ、及び他の実施態様において、約30〜約150g/2インチ、約30〜約100g/2インチ、及び約30〜約70g/2インチである。
【0101】
これらの剥離力を測定するための試験法は、ドライペイント層から又は接着剤コーテッド基材から2インチ幅の剥離剤被覆ライナーを分離するのに必要な力を測定することを伴う。この場合、この剥離剤被覆ライナーは、層又は基材に対して90°の角度を成して延び、そして1分当たり300インチの速度で引っ張られる。試験は室温で行われる。
【0102】
本発明の一実施態様によれば、装飾フィルムは示差剥離系を含む。この系は、フィルムが自己巻き形態から巻き出される一方で剥離ライナーがドライペイント層と連続的な接触状態を維持するのを可能にする。装飾フィルムが巻き出されるのに伴って、剥離ライナーのシリコーン被覆外面は、フィルムのPSA側との接触状態から優先的に解放する一方、剥離ライナーの艶消剥離コート側は、ドライペイント層との一定の接触状態を維持する。剥離ライナーとドライペイント層との接触状態は、巻き出し、基材表面への適用、及び表面上での装飾フィルムの再配置が行われている間中、剥離ライナーが装飾ペイント層から剥ぎ取られる準備ができるまで維持される。示差剥離システムは、剥離ライナーとドライペイント層とのかかる優先的な接触を維持するように構成される。なぜならば、ドライペイント層は非自立型であり、すなわちこの層はそれ自体では、又はそれ自体の構造保全性を有してはおらず、従って、例えば巻き出し、取り扱い及び再配置中に必要な構造支持を提供するためには、剥離ライナーとの接触に頼るからである。
【0103】
前述のように、剥離ライナーと艶消剥離層との間の剥離力(キャリヤー剥離力)は、剥離ライナーのシリコーンコート側とPSAとの間の剥離力(巻出し剥離力)を上回る。試験から、この「力の差」は、材料がそれぞれの界面で互いに剥ぎ取られる速度又はスピードに依存することが判った。自己巻きフィルムは使用中、種々異なる速度で巻き出されるので、示差剥離システムの目的は、キャリヤー剥離力が、使用中に通常直面する広範囲の剥離速度全体にわたって、巻出し剥離力を上回るようにすることである。一般的に、この力の差は、広範囲の速度全体にわたって維持される。使用中、新しいロールの巻出し時又はロールの表面における最初の始動中には、遅い速度に直面する。ストリップが表面に沿って下り続けると、中速から高速に直面する。一実施態様において、力差は、2インチ幅ストリップに関して、1分当たり最大約300インチの速度範囲に対して維持される。別の実施態様において、この力差は、2インチ幅ストリップに関して、1分当たり少なくとも約600インチの速度まで維持される。
【0104】
巻出し中、表面への適用中、及び表面上での再配置中にキャリヤーが剥がれるのを回避するのに加えて、スリット形成中又は巻出し中にキャリヤーが剥がれるのを防止するために、ライナーのシリコーン側からPSAを取り外すのに必要な力は、ドライペイント側からキャリヤーを剥ぎ取るのに必要な力よりも小さくあるべきである。フィルムを切断して個々のロールサイズを形成する場合には、1分当たり600インチを超える巻出し速度に直面することがあるが、しかし、試験から、かかる高い速度において、巻出し剥離力がキャリヤー剥離力を上回っても、望ましくない巻出し応答が生じることはないことが判った。
【0105】
かかる示差剥離力は、艶消剥離層又はPSA層からライナーを2インチ幅のストリップで分離することにより、測定することができる。ライナーは、1分当たり300インチの速度で90°の角度を成して引き出され、試験は室温で行われる。一実施態様において、キャリヤー剥離力は、1分当たり約6インチから1分当たり少なくとも約300インチまでの剥離速度に対して、巻出し剥離力よりも高く維持される。別の実施態様において、キャリヤー剥離力は、1分当たり約6インチから1分当たり少なくとも約300インチまでの広範囲の剥離速度全体にわたって、約45〜約65グラム/2インチの範囲内に維持される。対応する巻出し剥離力は、1分当たり約12〜約60インチのライナー剥離速度範囲全体にわたって、約20〜約40グラム/2インチの範囲内に維持される。
【0106】
試験から、キャリヤー剥離力は、広範囲の剥離速度全体にわたって比較的均一なレベルで維持されるのに対して、巻出し剥離力は、剥離速度が高まるにつれて増大し、そして、特定のより高い剥離速度レベルを上回ると、最終的にはキャリヤー剥離力を超えることがあることが判った。しかし、試験が示したところによれば、1分当たり約300インチを上回る剥離速度の場合、キャリヤー剥離力を超える巻出し剥離力は、自己巻き装飾フィルムの通常使用条件においては、艶消剥離層から剥離ライナーが早期に剥離するという不都合な影響を及ぼすことはない。
【0107】
PSAの組成をドライペイント層と調和させることにより、所望の示差剥離特性を形成する。PSAのために使用される特定の配合は、巻出し剥離応答に影響を与えることができる。加えて、艶消剥離層と接触するドライペイント層の組成も、剥離特性に影響を与えることができる。一実施態様において、キャリヤー剥離力が相対的に高い場合、巻出し剥離力は相対的に低いことが望ましい。しかし、キャリヤー剥離力の絶対的大きさには制限がある。低い巻出し剥離力と比較してかなり高いキャリヤー剥離力を形成すると、巻出し中及び基材表面への適用中に、キャリヤーとドライペイントフィルムとの所望の接触を維持することはできるものの、キャリヤー剥離力が余りにも高い場合には、積層体のPSA側が基材表面に固定されたあと、ドライペイント層から剥離ライナーを適正に剥離するのが難しい場合がある。キャリヤー剥離力が余りにも高い場合には、使用者にとって、ペイントフィルムからライナーを最初に剥ぎ取るのが難しくなることがあり、或いは、剥離ライナーを取り除くという作業がドライペイント層と基材との結合に打ち勝ち、その結果、表面からドライペイント層が剥がれるおそれがある。
【0108】
従って、本発明の別の目的は、キャリヤー剥離力が、広範囲の剥離速度全体にわたって巻出し剥離力よりも大きいがしかし、キャリヤー剥離力レベルは或る特定の最大力レベルを下回るように維持されるような示差剥離システムを形成することである。一実施態様において、好ましいドライペイント層は、実施例7及び9に記載されたような透明の外側クリアコート層を含む。実施例7及び9において、外側層は、溶剤流延アクリル樹脂材料を含む。このトップコートは、艶消剥離ライナーが外側層から剥ぎ取られるときに、有用なキャリヤー剥離力レベルに加えて、仕上げフィルムにおける耐磨耗性及び耐汚染性及び再ペイント適性という利点を提供する。この実施態様における艶消剥離コートの組成物は、実施例7又は9のアルキド/ビニル/メラミン樹脂組成物を含み、そしてPSAの組成物は、実施例7又は9の接着剤配合物を含む。この実施態様において、アクリル系ペイント層から剥ぎ取られる場合のキャリヤー剥離力は、2インチ当たり約45〜約65グラムの範囲内に維持される。対応する巻出し剥離力は、1分当たり約12〜少なくとも約60インチのライナー剥離速度の範囲全体にわたって、2インチ当たり約20〜約40グラムの範囲内に維持される。アクリル系外側クリアコート層と関連するより低いキャリヤー剥離力レベル、すなわち2インチ当たり約65グラム未満のレベルが、広範囲の使用条件及びキャリヤー剥離速度にわたって剥離ライナーを使用者が容易に取り除けるように十分に低いキャリヤー剥離特性を提供することが観察されている。
【0109】
巻出し剥離力応答を低下させることにより、キャリヤー剥離力を前述のより望ましいレベルまで低下させることができる。本発明で使用されるPSAは好ましくは、剥離レベル及び粘着レベルを低下させる内部架橋型感圧接着剤である。一実施態様において、例えば実施例9の内部架橋型アクリレート系コポリマーエマルジョンPSAは、前述したような、より望ましい低いレベルでキャリヤー剥離応答をもたらす艶消剥離コーティングの使用を可能にするのに十分に低い巻出し剥離レベルを提供する。より軟質の非架橋型(又は軽度架橋型)感圧接着剤を使用すると、使用中に望ましくない縁部滲出特性を招くおそれがあり、しかもこれに加えて、かかる接着剤がもたらす剥離レベル及び粘着レベルは高くなることがあり、これにより、巻出し剥離力は、キャリヤー剥離力に向かって望ましくなく増大する。
【0110】
艶消剥離コート組成物がキャリヤー剥離力レベルを制御することもできる。実施例7及び9の艶消剥離コート配合物において、メラミン架橋剤を使用することにより、キャリヤー剥離力レベルを制御することができる。アルキド樹脂及び低分子ビニル樹脂の含量を制御することにより、剥離力を低くすることもできる。これらの成分の有用な組み合わせによって、剥離ライナーに対する所望の室温接着力と、ドライペイント層表面から剥離層を剥ぎ取るときの所望の剥離力応答とを生成することができる。剥離コート組成物はまた、転写される艶消し表面の均一性及び光沢レベルを制御する。
【0111】
上述のように、PSAの粘着レベル又は剥離レベルも、積層体が固定される表面に関して制御される。すなわち、PSAは乾燥形態において、シリコーン被覆剥離ライナーからの低い巻出し剥離力を有さなければならないが、しかしまた、基材表面に適正に接着するのに十分な粘着レベルを有し、そして十分な再配置可能性を提供しなければならない。
【0112】
本発明にとって有用な感圧接着剤は、粘着力及び剥離力のレベルが比較的低く、そして室温流動特性が比較的低いことを特徴とする。かかる接着剤は、これがあまりにも軟質である場合、巻出し力を望ましくなく高め、そしてペイントフィルムの再配置に不都合な影響を与えるおそれがある。アクリルエマルジョンPSAは、かかるPSAの架橋レベルが、低い粘着特性、剥離特性及び流動特性の所望の組み合わせをもたらす比較的高い凝集強さを有する接着剤材料を形成するレベルである場合に、特に有用である。架橋レベルを好適に調節することのできる有用なPSAの例としては、アクリルエマルジョンPSA、例えば純粋ポリマー(ブチルアクリレート若しくは2−エチルヘキシルアクリレート又は2−エチルヘキシルアクリレート/ブチルアクリレート)PSA、又は同様の顔料含有ポリマー及びコポリマー材料が挙げられる。
【0113】
本発明にとって特に有用なPSAは、内部架橋型アクリルエマルジョンPSA、例えば、ブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの非粘着付与架橋コポリマーエマルジョンである。この特定の接着剤は、架橋レベルを制御する架橋剤を含有し、この架橋剤は、低い粘着特性、剥離特性及び流動特性と、有用な低コート重量における比較的高い凝集強さとの所望の組み合わせをもたらす。この接着剤は、Avery Dennison Corporationから製品番号S−3706として、又はその顔料形態において、製品番号S−3526として入手可能である。
【0114】
他の多官能性アクリル系ポリマー及びコポリマー材料を使用することにより、架橋された形態において同様の接着特性を生じさせることができる。加えて、本発明の他の好適な感圧接着剤は、高分子量アクリルエマルジョン接着剤を含むことができる。かかる高分子量接着剤は、十分に高い凝集強さにおいて低い粘着特性、剥離特性及び流動特性を生じさせる際に、架橋型接着剤と同様に挙動することができる。外部架橋剤を使用することにより、かかる感圧接着剤材料において所望のレベルの架橋を提供することもできる。
【0115】
別の有用な接着剤は、製品S−3000としてAvery Dennisonから入手可能な高分子量架橋型アクリルエマルジョン接着剤(ブチルアクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート)である。
【0116】
前述のように本発明に有用なPSAは、ひとつには、シリコーン被覆剥離ライナーとの接触状態から剥離するときに、キャリヤー剥離力よりも低い巻出し剥離力を形成する接着剤として特徴付けられる。PSAはまたひとつには、基材、例えば艶なしペイント、光沢ペイント、下塗り済乾式壁又はステンレス鋼へのその接着レベルによって特徴付けられる。一実施態様において、PSA配合物を制御することにより、低い粘着レベルを生じさせることができる。この低い粘着レベルは、ループ粘着値が約0.8〜約2.4lbs/インチの範囲内にあることによって特徴付けられる。この場合、接着剤はステンレス鋼に対する接着力に関して測定され、標準コート重量15gsmで2ミル(50μm)のPETフェイスストックに貼合わされる。
【0117】
別の実施態様において、PSA配合物を制御することにより、低レベルの90°剥離力接着を生じさせることができる。かかる剥離力接着は、2ミル(50μm)PETの場合にステンレス鋼に対する15分剥離力接着が、0.80〜1.5lbs/インチの範囲であること、又は艶なし塗装済面の15分剥離力接着が、0.05〜0.30lbs/インチであること、又は光沢塗装済面に対する15分剥離力接着が、0.20〜0.40lbs/インチであることによって特徴付けられ、この場合、接着剤は剥離ライナーキャリヤーを有するドライペイント転写フィルムに貼合わされる。
【0118】
別の実施態様において、PSAを調節することにより、後述するとおりの24時間目の90°剥離力接着値によって特徴付けられる低い剥離力を生じさせることができる:乾式壁0.30〜0.50lbs/インチ;艶なしペイント0.40〜0.65lbs/インチ;及び光沢ペイント0.60〜0.90lbs/インチ。
【0119】
PSAは、室温におけるその所望の低流動特性によって特徴付けることもできる。かかる特性は、そのWPI(可塑性)値によって測定することができる。このWPI値は、一実施態様において、約3.2〜約3.8mmである。
【0120】
所望のPSAは、十分な凝集強さレベルも有する。この凝集強さレベルは、接着剤が高い粘着レベルの存在なしにペイントフィルムを壁に永久結合するのを可能にする。架橋レベルはかかる凝集強さをもたらすことができ、また、一実施態様において、凝集強さは、1,000分を上回る剪断値によって測定される(500g 1/4平方インチ、20分間一時停止、2ミル(50μm)PET上に直接コーティングして5分間にわたって120℃で乾燥させた14〜16gsmコート重量)。
【実施例】
【0121】
実施例1及び2
ポリエチレンテレフタレート(PET)剥離ライナーの片面に、接着剤剥離コーティング層に相当するシリコーン剥離コーティングをコーティングした。この剥離剤被覆ライナーの厚さは0.92ミル(23μm)であり、Mitsubishi 92ゲージSLKとしても知られている。
【0122】
グラビアを使用して、コート重量6.5〜7.75gsmで剥離ライナーの他方の側に艶消剥離コートを適用した。艶消剥離コートの配合は下記の通りである:26重量部のメチルイソブチルケトン、6重量部のイソプロパノール、34.8重量部のLankyd 13−1425(アクリル変性アルキドであるとされているAkzo Resinsによって供給される製品)、2.6重量部のElvacite 2042(ポリエチルメタクリレートポリマーであるとされているLucite Internationalから提供された製品)、30重量部のMicrotalc MP 15−38(タルク体質顔料であるとされているBarretts Mineralsから提供された製品)、2.5重量部のCycat 4040(パラトルエンスルホン酸であるとされているCytecから提供された製品)、8.7重量部のCymel 303(メラミン樹脂であるとされているCytecから提供された製品)。艶消剥離コートを、温度149℃の強制熱風を用いて乾燥させ、これにより、樹脂を架橋し、そして艶消しシリコーンコートをポリエステルキャリヤに結合させた。タルク粒子は、乾燥した艶消剥離コートの表面から突出することにより、ミクロ粗面を形成する。
【0123】
グラビアを使用して、艶消剥離コートにコート重量2.7〜2.9gsmで透明クリアコート層を適用し、そして、温度120℃の強制熱風を用いて乾燥させた。クリアコート層の配合は下記の通りである:46.7重量%のメチルエチルケトン、31.3重量%のトルエン、11重量%のVYNS(5〜20重量%のビニルアセテートを含有する塩化ビニル/ビニルアセテートコポリマーであるとされているUnion Carbideの製品)、及び11重量%のVitel 2200B(ポリエステルコポリマーであるとされているBosticの製品)。
【0124】
下記ペイント組成物を使用して、一方は実施例1、そして他方は実施例2のために、クリアコート層上にドライペイント層を形成した。実施例1のドライペイント層は濃褐色の色調を呈し、実施例2のドライペイント層はオレンジパステルの色調を呈した。下記表において、全ての数値は重量部である。
【0125】
【表2】

【0126】
実施例1の顔料対バインダー容積比は10%であり、そして実施例2ではこの比は27%である。上記ペイント配合物を、リバースロールコーターを使用して、クリアコート層に適用し、そして温度135℃で乾燥させることにより溶剤を除去した。ドライペイント層のそれぞれの乾燥膜厚は0.7ミル(18μm)であった。
【0127】
次いでトランスファー貼合わせを用いて、コート重量14〜20gsmでドライペイント層に顔料含有感圧接着剤を適用することにより、感圧接着剤層120に相当する接着剤層を用意した。接着剤は、製品番号S−692NでAvery Dennison Corporationから入手可能なエチルヘキシルアクリレート系PSAであり、また感圧接着剤の配合は下記の通りである:70〜90重量%の2−エチルヘキシルアクリレート、1〜10重量%のアクリル酸、10〜20重量%のメチルアクリレート、3.7% UCD 1106E(二酸化チタン分散体濃厚物であるとされているRohm and Haasの製品)、及び0.3重量%のUCD 1507E(カーボンブラック分散体濃縮物であるとされているRohm and Haasの製品)。
【0128】
実施例3
下記液状ペイント組成物を使用することによりドライペイント層を形成したことを除き、実施例1及び2のために用いた手順を繰り返した。下記表において、全ての数値は重量部である。
【0129】
【表3】

【0130】
前記ペイント組成物は薄青色を呈した。ドライペイントフィルム層の乾燥膜厚は、0.6〜0.8ミル(15〜20μm)であった。
【0131】
実施例4
PET剥離ライナーの一方の側に、接着剤剥離コート層に相当するシリコーン剥離コーティングをコーティングした。剥離コートライナーの厚さは0.92ミル(23μm)であった。
【0132】
グラビアを使用して、コート重量4.4〜4.6gsmで剥離ライナーの他方の側に艶消剥離コート層を適用した。艶消剥離コートの配合は下記の通りである:50.54重量部のメチルイソブチルケトン、7.84重量部のイソプロパノール、8.93重量部のLankyd 13−1425、10.68重量部のVAGH(ヒドロキシ変性ポリ塩化ビニル/ポリビニルアセテートコポリマーであるとされているUnion Carbideの製品)、22重量部のMicrotalc MP 15−38、2重量部のCycat 4040、及び6.8重量部のCymel 303。温度149℃の強制熱風を用いて、艶消剥離コートを乾燥させた。
【0133】
グラビアを使用して、コート重量1.3〜2gsmで艶消剥離コートに透明外側クリアコート層の第1コートを適用し、そして温度120℃の強制熱風を用いて乾燥させた。乾燥膜厚は0.05〜0.1ミル(1.3〜2.5μm)であった。この第1クリアコート層の配合は下記の通りであった:41.5重量%のメチルエチルケトン、41.5重量%のメチルイソブチルケトン、及び17重量%のElvacite 2042(ポリメチルメタクリレートとして特定される、Lucite Internationalの製品)。
【0134】
グラビアを使用して、第1透明層にコート重量1.0〜1.5gsmで透明コート層の第2コートを適用し、そして温度120℃の強制熱風を用いて乾燥させた。乾燥膜厚は0.03〜0.1ミル(0.76〜2.5μm)であった。この第2透明フィルム層コート層の配合は下記の通りであった:41.5重量%のメチルエチルケトン、41.5重量%のメチルイソブチルケトン、及び17重量%のVYHH(5〜20重量%のビニルアセテートを含有する塩化ビニル/ビニルアセテートコポリマーであるとされているUnion Carbideの製品)。
【0135】
コート重量3.0〜3.2gsmで、第2透明クリアコート層上に装飾プリント層をプリントし、そして温度120℃の強制熱風中で乾燥させた。この装飾プリント層のペイント組成物は下記配合を有する(全ての数値は重量部である):
【0136】
【表4】

【0137】
コート重量0.8gsmで、前記装飾プリント層に付加的な装飾プリント層をプリントし、そして温度120℃の強制熱風中で乾燥させた。この装飾プリント層のために使用されたペイント組成物は下記配合を有する(全ての数値は重量部である):
【0138】
【表5】

【0139】
コート重量30〜32gsmで、2つの乾燥済プリントコート層に下記プリント層をプリントし、そして温度120℃の強制熱風中で乾燥させることにより、ドライペイントを用意した。下記表において、全ての数値は重量部である。
【0140】
【表6】

【0141】
トランスファー貼合わせを用いて、コート重量17gsmで、ドライペイント層上に顔料含有感圧接着剤を適用することにより、感圧接着剤層に相当する接着剤層を用意した。感圧接着剤の配合は下記の通りである:ブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの架橋型コポリマーを含有する96重量%の非粘着付与アクリルエマルジョン、3.7重量%のUCD 1106E、及び0.3重量%のUCD 1507E。
【0142】
実施例5
PET剥離ライナーの一方の側に、シリコーン剥離コーティングをコーティングする。この剥離剤被覆ライナーの厚さは0.92ミル(23μm)である。
【0143】
グラビアを使用して、コート重量4.4〜4.6gsmで剥離ライナーの他方の側に艶消剥離コートを適用した。温度149℃の強制熱風を用いて、艶消剥離コートを乾燥させる。艶消剥離コートの配合は下記の通りである(全ての数値は重量部である)。
【0144】
【表7】

【0145】
リバースロールコーターを使用して、コート重量13gsmで艶消剥離コートに透明クリアコート層を適用し、そして温度120℃の強制熱風を使用して乾燥させる。乾燥膜厚は0.4ミル(10μm)である。透明クリアコート層の配合は下記の通りである(全ての数値は重量部である):
【0146】
【表8】

【0147】
コート重量1gsmで、上記透明フィルム層に装飾プリント層をプリントし、温度120℃の強制熱風中で乾燥させた。この装飾層のために使用されるペイント組成物は下記配合を有する(全ての数値は重量部である):
【0148】
【表9】

【0149】
コート重量66gsmで、装飾プリント層上に下記ペイント組成物をコーティングし、そして温度138℃の強制熱風中で乾燥させることにより、ドライペイント層を形成した。下記表において、全ての数値は重量部である:
【0150】
【表10】

【0151】
トランスファー貼合わせを用いて、コート重量15−20gsmで、ドライペイント層上に感圧接着剤を適用することにより、接着剤層を用意した。感圧接着剤は非粘着付与アクリルエマルジョンであった。感圧接着剤の配合は下記の通りであった:70〜90重量%の2−エチルヘキシルアクリレート、1〜10重量%のアクリル酸、及び10〜20重量%のメチルアクリレート。
【0152】
実施例6
PET剥離ライナーの一方の側に、シリコーン剥離コーティングをコーティングした。この剥離剤被覆ライナーの厚さは0.92ミル(23μm)であった。
【0153】
グラビアを使用して、剥離ライナーの他方の側に、艶消剥離コートを適用した。温度148.9℃の強制熱風を用いて、艶消剥離コートを乾燥させた。艶消剥離コートをコート重量4.0〜5.0gsmで適用した。艶消剥離コートの配合は下記の通りである(全ての数値は重量部である)。
【0154】
【表11】

【0155】
2ミル(50μm)byrdバーを使用して、コート重量30gsmで艶消剥離コートに透明クリアコート層を適用し、そして温度126.7℃の強制熱風を使用して乾燥させた。透明フィルム層の配合は下記の通りである(全ての数値は重量部である):
【0156】
【表12】

【0157】
コート重量96gsmで、透明クリアコートフィルム上に下記ペイント組成物をコーティングし、そして温度126.7℃の強制熱風中で乾燥させることにより、ドライペイントフィルム層を形成した。下記表において、全ての数値は重量部である:
【0158】
【表13】

【0159】
次いでトランスファー貼合わせを用いて、コート重量17gsmで、ドライペイント層上に感圧接着剤を適用することにより、感圧接着剤層に相当する接着剤層を用意した。感圧接着剤の配合は下記の通りである:ブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの架橋型コポリマーを含有する96重量%の非粘着付与エマルジョン、3.7重量%のUCD 1106E、及び0.3重量%のUCD 1507E。
【0160】
実施例7
PET剥離ライナーの一方の側に、シリコーン剥離コート層をコーティングする。この剥離剤被覆ライナーの厚さは0.92ミル(23μm)であった。
【0161】
グラビアを使用して、コート重量4.4〜4.6gsmで剥離ライナーの他方の側に艶消剥離コート層を適用した。艶消剥離コートの配合は下記の通りである:50.54重量部のメチルイソブチルケトン、7.84重量部のイソプロパノール、8.93重量部のLankyd 13−1425、10.68重量部のVAGH(ヒドロキシ変性ポリ塩化ビニル/ポリビニルアセテートコポリマーであるとされているUnion Carbideの製品)、22重量部のMicrotalc MP 15−38、2重量部のCycat 4040、及び6.8重量部のCymel 303。温度149℃の強制熱風を用いて、艶消剥離コートを乾燥させた。
【0162】
グラビアを使用して、コート重量12〜16gsmで艶消剥離コートに透明外側クリアコート層を適用し、そして温度165℃の強制熱風を用いて乾燥させた。乾燥膜厚は0.35〜0.5ミル(8.9〜13μm)であった。この透明フィルムコート層の配合は下記の通りである(全ての数値は重量部である):
【0163】
【表14】

【0164】
コート重量0.3〜1.2gsmで、透明コーティング層上に装飾プリント層をプリントし、そして温度105℃の強制熱風中で乾燥させた。この装飾プリント層のために使用されたペイント組成物は下記配合を有する(全ての数値は重量部である):
【0165】
【表15】

【0166】
コート重量0.3〜1.2gsmで、前記プリント済装飾層上にさらなる装飾プリント層をプリントし、そして温度105℃の強制熱風中で乾燥させた。この装飾プリント層のために使用されたペイント組成物は下記配合を有する(全ての数値は重量部である):
【0167】
【表16】

【0168】
コート重量6〜10gsmで、装飾プリント層上に下記ペイント組成物をコーティングし、そして温度105℃の強制熱風中で乾燥させることにより、ドライペイントフィルム層110に相当するドライペイント層を形成した。下記表において、全ての数値は重量部である:
【0169】
【表17】

【0170】
次いでトランスファー貼合わせを用いて、コート重量17gsmでドライペイント層に顔料含有感圧接着剤を適用することにより、感圧接着剤層120に相当する接着剤層を用意する。感圧接着剤層の配合は下記の通りである:ブチルアクリレートとエチルヘキシルアクリレートとの架橋型コポリマーを含有する96重量%の非粘着付与アクリルエマルジョン、3.7重量%のUCD 1106E、及び0.3重量%のUCD 1507E。
【0171】
実施例8
PET剥離ライナーの一方の側に、接着剤剥離コート層に相当するシリコーン剥離コーティングをコーティングした。この剥離剤被覆ライナーの厚さは0.92ミル(23μm)であった。
【0172】
グラビアを使用して、コート重量4.4〜4.6gsmで剥離ライナーの他方の側に、艶消剥離コートを適用した。艶消剥離コートの配合は下記の通りであった:50.54重量部のメチルイソブチルケトン、7.84重量部のイソプロパノール、8.93重量部のLankyd 13−1425、10.68重量部のVAGH(ヒドロキシ変性ポリ塩化ビニル/ポリビニルアセテートコポリマーであるとされているUnion Carbideの製品)、22重量部のMicrotalc MP 15−38、2重量部のCycat 4040、及び6.8重量部のCymel 303。温度149℃の強制熱風を用いて、艶消剥離コートを乾燥させた。
【0173】
コート重量0.3〜1.2gsmで、艶消剥離コート上に装飾プリント層をプリントし、そして温度105℃の強制熱風中で乾燥させる。この装飾プリント層のペイント組成物は下記配合を有する(全ての数値は重量部である):
【0174】
【表18】

【0175】
コート重量0.3〜1.2gsmで、前記プリント済装飾層上にさらなる装飾プリント層をプリントし、そして温度105℃の強制熱風中で乾燥させた。この装飾プリント層のために使用されたペイント組成物は下記配合を有する(全ての数値は重量部である):
【0176】
【表19】

【0177】
輪転グラビアを使用して下記ペイント組成物を装飾プリント層上にコート重量5〜16gsmでコーティングし、そして温度105℃の強制熱風中で乾燥させることにより、ドライペイント層を形成した。下記表において、全ての数値は重量部である:
【0178】
【表20】

【0179】
ロールコーティングを用いて、コート重量20〜30gsmで上記ドライペイント層に下記コーティング組成物をコーティングし、温度105℃の強制熱風中で乾燥させることにより、支持層又は補強層を形成した。下記表において、全ての数値は重量部である:
【0180】
【表21】

【0181】
次いでトランスファー貼合わせを用いて、コート重量17gsmで支持層180に相当する被覆層に、顔料含有感圧接着剤を適用することにより、感圧接着剤層120に相当する接着剤層を用意する。感圧接着剤層の配合は下記の通りである:ブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの架橋型コポリマーを含有する96重量%の非粘着付与アクリルエマルジョン、3.7重量%のUCD 1106E、及び0.3重量%のUCD 1507E。
【0182】
実施例9
図10は、装飾用積層体89が剥離ライナー30上に続いてコーティングされたドライペイント層を含む本発明の一実施例を示すものである。剥離ライナー30は一方の側に艶消剥離コート32と、ドライペイント層とは反対側に接着剤剥離層34とを含む。ドライペイント層は外側クリアコート層44と、1つ又は2つ以上の装飾プリントコート48と、色層22とを含む。色層にはバリヤー層60が結合されており、バリヤーコート及びPSA層28には、タイコート90が結合されている。
【0183】
PETライナーの一方の側に、接着剤剥離コート層に相当するシリコーン剥離コーティングをコーティングした。シリコーン被覆ライナーの厚さは、0.92ミル(23μm)であり、Mitsubishi 92ゲージSLKを含む。
【0184】
グラビアを使用して、コート重量4.5〜5.5gsmで剥離ライナーの他方の側に、艶消剥離コートを適用した。艶消剥離コートの配合は下記の通りである(全ての数値は重量部である):
【0185】
【表22】

【0186】
剥離コート材料を調製する際に、ベース材料(VAGH、アルキド及びタルク)を100部の配合で混合する。Cymel 303及びByk 451を後でブレンドし、そして材料をコーターに供給したあと、2種の溶液を一緒にブレンドした。温度149℃の強制熱風を用いて、艶消剥離コートを乾燥させた。
【0187】
艶消剥離コートはその架橋樹脂として、メラミン(ヘキサメトキシメチル)樹脂Cymel 303を含む。ヒドロキシル変性ポリ塩化ビニル/ポリビニルアセテートコポリマー(VAGH)は、一次官能性樹脂を含み、アクリル変性アルキドは二次官能性樹脂を含む。一次架橋樹脂は架橋を制御し、そしてポリエステルキャリヤーフィルムに結合する。二次官能性樹脂は、艶消剥離コートからのドライペイント層(トップコート)の剥離を改変する。ブロックされた酸触媒は、架橋プロセスを加速し、そして充填剤粒子、タルクは、乾燥艶消剥離コートのミクロ粗さの程度を制御する。
【0188】
グラビアを使用して、コート重量2.6〜3.0gsmで艶消剥離コートに透明外側クリアコート層を適用し、そして温度165℃の強制熱風を用いて乾燥させた。乾燥膜厚は0.09〜0.10ミル(2.3〜2.5μm)であった。クリアコートは実質的に熱可塑性アクリル樹脂材料、好ましくはポリメチルメタクリレートから成っている。透明トップコート層の配合は下記の通りである(全ての数値は重量部である):
【0189】
【表23】

【0190】
前述の実施例において記載されたものと同様のプリント用インク配合物を有する1つ又は2つ以上の装飾プリントコートを、透明トップコート層上に前述の手順に従って、次にプリントした。
【0191】
下記ペイントコート組成物は、エポキシ安定剤を有する可塑化ビニル系顔料含有ベースコートを含む。コート重量33.0〜36.0gsmでロールコーティングを用いて、装飾プリント層上にタイコートをコーティングし、そして温度105℃の強制熱風中で乾燥させることにより、色コート層を形成した。乾燥膜厚は0.65〜0.73ミル(17〜19μm)である。下記表において、全ての数値は重量部である:
【0192】
【表24】

【0193】
下記のバリヤーコート層を乾燥カラーコート層に1.5〜2.0gsmでコートした。全ての数値は重量部である:
【0194】
【表25】

【0195】
バリヤー層は架橋型アクリル樹脂材料を含む。架橋型アクリル樹脂材料をグラビアによって適用し、そして温度149℃の強制熱風を用いて乾燥させた。バリヤー層の乾燥膜厚は0.05〜0.07ミル(1.3〜1.8μm)であった。
【0196】
前述のように、バリヤー層は、積層体の色生成層内への変色誘発顔料の移行を阻止又は防止するための手段を提供する。
【0197】
乾燥済バリヤー層に、下記タイコートをコーティングする。全ての数値は重量部である:
【0198】
【表26】

【0199】
タイコートはコート重量2.8〜3.3gsm、そして乾燥膜厚約0.05〜0.06ミル(約1.3〜1.5μm)でコーティングした。タイコートはバリヤー層と感圧接着剤層との間の接着力を高める。タイコートは色コートの変化形である。このシステムにおいて、バリヤー層は色コートに接着し、そしてPSAは同様の色コートに良好に接着するので、タイコートは、色コートとPSAとの良好な接着を可能にするその能力に関して選択される。タイコートの顔料成分は、バインダーを有用なレベルにまで硬化する。
【0200】
この実施例の装飾用積層体の乾燥膜厚の好ましい範囲は、1.30〜1.60ミル(33〜41μm)である。この記載の例の場合、トップコートと色コートとバリヤーコートとタイコートとPSAとの組合せの乾燥膜厚は、1.35〜1.51ミル(34.3〜38.4μm)である。
【0201】
次いでコート重量13〜16gsmで、顔料含有感圧接着剤層をキャリヤーに適用する。PSAの乾燥膜厚は約0.45〜0.55ミル(約11〜14μm)である。次いでPSAをトランスファー貼合せによってタイコートに適用した。PSAはAvery Dennison Corporationから製品番号S−3526として入手可能であり、PSAの配合は下記の通りである(全ての数値は重量部である):
【0202】
【表27】

【0203】
実施例10
本明細書中に記載された種々のペイントフィルムのByk−Mallinckrodt光沢計で求められた光沢測定値は、下記光沢示度をもたらした:
(1)剥離コート−− 14.5:1の比でElvacite 2899/VYNS、Cymel 303を含むポリマーに対するタルクの比が1.0〜1.1:1の標準範囲のミクロタルクを有する、
トップコート−− なし
色コート−− 1:3の比でRohm and Haas Acryloid B72/VYHH
60°における光沢−− 3.4
85°における光沢−− 8.8
(2)剥離コート−− タルクとCymel 303を有するポリマーとの比が1.0〜1.1:1の標準範囲のミクロタルクを有する、比14.5:1のElvacite 2899/VYNS
トップコート−− Rucothane CO A 5002Lウレタンポリマー
色コート−− 1:3の比でRohm and Haas B72/VYHH
60°における光沢−− 4.9
85°における光沢−− 8.5
(3)模造レザー仕上げを有するフィルム
剥離コート−− Cymel 303、及びタルクとポリマーとの比が1.0〜1.1:1の標準範囲のミクロタルクを有するアクリル変性アルキド
トップコート−− 1:1の比でElvacite 2042及びVYHH/Vitel 220B
60°における光沢−− 2.2
85°における光沢−− 32.4
(4)実施例7及び9に従って調製された剥離コートと透明トップコート層とを有するフィルムは、85°において約26〜約30の光沢示度をもたらした。
【0204】
実施例11
巻出し剥離力に対するキャリヤー剥離力に関して、「力の差」を測定するために、2インチ幅×12インチ長のストリップで試料を形成することにより、装飾フィルムロールの巻出しをシミュレートした。試験にかけた構造体は、透明トップコート、顔料含有色層、露出したフィルムのPSA側を有するPSA層、及びPETフィルムを含む剥離ライナーを有する図3の実施態様から構成した。PETフィルムは、トップコートと接触した艶消し剥離コートと、剥離ライナーの反対側に形成された露出シリコーン剥離コートとを有する。他の試験では、構造は図10に示したものと同様であり、同じ構造がバリヤー層とタイコート層とを含んだ。
【0205】
一比較試験では、透明トップコート、色コート及びPSA層の組成は、概ね実施例7及び9に記載されている通り、Avery Dennison S−3506 PSA層(Avery S−3526接着剤の顔料非含有形態)を含む試験試料を使用した。他の試験試料の場合、実施例1と同様の色コート及びトップコート配合物を、Avery S−3506 PSA層との組み合わせで用いた。更なる試験試料において、構造体は、S−692N接着剤として特定される異なるAvery Dennison PSAと一緒に、実施例1のトップコート及び色コート配合物を含んだ。
【0206】
試験は、ドライペイント層から艶消し剥離層を剥離、そして、試料のPSA部分から剥離ライナーのシリコーン側を剥離することを伴った。試験は室温で実施した。1つの試験では、別個の接着テープを試験試料の側に取り付けることにより、それぞれの界面における剥離力を試験した。この場合、それぞれのテープは対向方向に、試料に対してそれぞれ90°の角度を成して延びる。試験は、調節可能な剥離速度を有する運動可能なスレッド上で行った。この剥離速度は、一実施態様において、1分当たり12インチという低い速度から1分当たり1200インチまで段階的に変化させた。剥離力を漸進的な速度インターバルで測定し、力対剥離速度の比較プロファイル上でプロットした。
【0207】
試験結果から、キャリヤー剥離力は、広範囲の剥離力全体にわたってかなり均一であるのに対して、巻出し剥離力は、低速でキャリヤー剥離力を下回る傾向があるが、しかし、巻出し剥離力はより高速になるとキャリヤー力を最終的に上回ることが判った。試験によって得られたそれぞれのプロファイルは、巻出し剥離力がキャリヤー剥離力に達してこれを上回るクロスオーバー剥離速度によって特徴付けられた。一般的に言えば、最良の巻出し応答を生じさせる自己巻きロールは、1分当たり100インチに至るまでの速度で、巻出し剥離力を上回るキャリヤー剥離力を維持した。試験結果から、S−692N PSAにおける巻出し力は、S−3506 PSAよりも迅速にキャリヤー剥離力に接近し、そしてS−3506 PSAよりも著しく低い移行速度でキャリヤー剥離力を上回ることが判った。S−3506 PSAは、S−692N PSAと比較して優れた巻出し性能を有した。かかる優れた巻出し性能は、S−3506を含有するフィルムの自己巻きロールが、ドライペイント層から剥離ライナーを早期に剥離することなしに巻き出されるのに対して、S−692N PSAを含有するフィルムロールが信頼性のない剥離応答を示すことによって特徴付けられた。
【0208】
S−3506 PSAがS−692N PSAよりも低い粘着レベルを示し、そしてS−692N PSAよりも小さな常温流れを有することが観察された。このことは、S−3506 PSAがS−692N PSAよりも低い粘着レベル及び低い常温流れを生じさせる内部架橋型構造を有することに起因する。S−692N PSAは内部架橋型ではなく、より高い粘着レベル並びにより高い常温フローを有した。PSA特性におけるかかる差により、非架橋型PSAは架橋型PSAと比較して、剥離ライナーのシリコーン側により強く粘着することになり、そして巻出し剥離力はあまりにも高いレベルまで上昇し、信頼性のない巻出し応答が生じることになる。架橋型PSAは、より望ましい(より低い)巻出し剥離力レベルを生じさせる。
【0209】
実施例12
バリヤーコートを含有する試験パネルを調製し、そして色ずれに関して試験した。試験パネルは、実施例9の色層と同様のブルー色層と、実施例9において使用されたPSAと同様の架橋型アクリルPSA層、AveryのS−3506とを含んだ。試験フィルムをイエロー(Hansa Yellow 10G)ペイントされた表面に適用し、そして、加速老化させた。試験フィルムを、塗装済面からPSA層を通して試験試料の色層に移るアゾタイプ色成分の移行によって生じる変色(色ずれ)に関して測定した。試験パネルは、分散型ブルー顔料を含有する可塑化ビニル系ペイント層を含むドライペイント色層を使用することにより、調製した。S−3506 PSAを色層に適用した。3ミル(76μm)のポリエステルに7.5ミル(190μm)湿潤コーティングが適用されたBehr 1330ディープベース(ベース1ガロン当たり5オンスのミディアムイエロー)を使用して、ミディアムイエローで塗装された基材を調製した。ペイントコートを室温で最低3時間乾燥させ、次いで250°Fで5分間にわたって強制的に空気乾燥させた。C.I.E.試験手順を用いて、60℃で試験パネルについてΔb*変色を測定した。
【0210】
下記表はこれらの試験手順を用いて、色ずれに関して評価された6つの別個のバリヤーコーティングを示す。試験試料1は架橋された低分子量アクリルバリヤーコートであり;試験試料2及び3は、色移りを低減するための充填剤又は添加剤材料を含む熱可塑性低分子量アクリルバリヤーコートであり;試験試料4及び5は、充填剤又は添加剤材料を含むが、しかし接着促進剤としてPVPをも含む熱可塑性低分子量アクリルバリヤー層であり;そして、試験試料6は、いかなる添加剤、充填剤又は接着促進剤も存在しない、高分子量熱可塑性アクリルバリヤーコートであった。それぞれの試験試料中に含めた材料は、重量部で示されている。
【0211】
【表28】

【0212】
試験試料#1〜#6の下記試料結果は、直接コーティング及びトランスファー貼合わせの両方によって適用されたPSAの色ずれデータを示す。
【0213】
【表29】

【0214】
試験試料#1の架橋型アクリルバリヤーコートを下記タイコートと一緒に使用して、同様の試験を実施した(重量部)。
【0215】
【表30】

【0216】
タイコートを有する製品を401時間にわたって60℃で試験した。色ずれ測定のための試料をロール全体にわたって採取した。0.24Δb*変色の平均が、標準偏差0.06を伴って得られた。接着剤をトランスファー貼合わせによって適用し、バリヤーコートと感圧接着剤との接着力を高めるためにタイコートが必要となるため、タイコートをこの試験において使用した。
【0217】
同様のバリヤーポリマー試験を行った。これらの試験の場合、C.I.E.Δb*色ずれを種々異なる試験試料に関して測定し、次いで16日間にわたって60℃で生じる変色を評価した。
【0218】
【表31】

【0219】
これらの試験から全体的に観察されたのは、低分子量アクリルバリヤー層の架橋が、良好な色ずれ改善を許容可能な範囲内にもたらすことである。二酸化チタン、酸化アルミニウム及び同様の金属化合物及び酸化物及び塩を添加することにより、熱可塑性高分子バリヤー層及び架橋型高分子バリヤー層双方のバリヤー特性がさらに改善される。
【0220】
本発明を、屋内建築用途のための壁フィルムとして使用される多層積層体に関して説明してきたが、しかしこの積層体は、他の用途でも有用である。これらの用途は屋外建築用途、例えばサイディングパネル及び壁面;屋外装飾物品及び標識;自動車用内装用途及び機能用途、例えばダッシュボード及びパネル;自動車外装用途、例えば自動車ボディ部品、外装部品及びパネルを含む。
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1】図1は、本発明の原理に従って、多層ドライペイント転写積層体の一実施態様を概略的に示す断面図である。
【図2】図2は、ロール形態に自己巻きされたドライペイント転写積層体を示す概略図である。
【図3】図3は、積層体内に含まれるドライペイント層の別の実施態様を概略的に示す断面図である。
【図4】図4は、ドライペイント層のさらに別の実施態様を概略的に示す断面図である。
【図5】図5は、図4のドライペイント層の別の実施態様を概略的に示す断面図である。
【図6】図6は、支持層を含む実施態様を概略的に示す断面図である。
【図7】図7は、バリヤー層を含む実施態様を概略的に示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の一実施態様において使用される支持層と接着剤層とを同時押出しする方法を示す概略図である。
【図9】図9は、本発明の別の実施態様において使用される支持層と接着剤層とを同時押出しする方法を示す概略図である。
【図10】図10は、ドライペイント層と、バリヤー層と、接着剤層のためのタイコートとを含む本発明の一実施態様を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に着色層を適用するための多層装飾積層体であって、
バインダー及び顔料を含む色層を含んで成り、上面及び下面を有するドライペイント層と、
前記ドライペイント層の前記上面に重なっている感圧接着剤層であって、当該積層体を室温で基材表面に接着させるようになっている感圧接着剤層と、
前記ドライペイント層の前記下面に重なっている剥離ライナーであって、圧力を加えて前記感圧接着剤層により当該積層体を前記基材表面に接着させ、前記剥離ライナーを前記ドライペイント層から剥がしたときに、前記ドライペイント層の外面を露出させるために室温で前記ドライペイント層から除去可能である剥離ライナーと、
前記接着剤層と前記色層との間に配置された薄い可撓性のバリヤー層であって、移行する変色誘発顔料によって誘発される顕著な変色が室温条件下で前記色層内で生じるのを実質的に防止するのに十分に、前記基材のペイントされた表面から前記接着剤層を通って前記色層への、前記変色誘発顔料の移行を阻止するか或いは移行しているかかる顔料を捕捉する材料から形成されたバリヤー層と、
を含んで成ることを特徴とする多層装飾積層体。
【請求項2】
前記バリヤー層の材料が、移行するモノアゾ変色誘発顔料を阻止又は捕捉する請求項1に記載の物品。
【請求項3】
基材表面に着色層を適用するための多層装飾積層体であって、
バインダー及び顔料を含む色層を含んで成り、上面及び下面を有するドライペイント層と、
前記ドライペイント層の前記上面に重なっている感圧接着剤層であって、当該積層体を室温で基材表面に接着させるようになっている感圧接着剤層と、
前記ドライペイント層の前記下面に重なっている剥離ライナーであって、圧力を加えて前記感圧接着剤層により当該積層体を前記基材表面に接着させ、前記剥離ライナーを前記ドライペイント層から剥がしたときに、前記ドライペイント層の外面を露出させるために室温で前記ドライペイント層から除去可能である剥離ライナーと、
前記接着剤層と前記色層との間に配置された薄い可撓性のバリヤー層であって、前記基材のペイントされた表面から前記接着剤層を通って前記色層への、アゾ型変色誘発顔料の移行を阻止するか或いは移行しているかかる顔料を捕捉する材料から形成されており、前記剥離ライナーを除いた当該装飾積層体の全厚の約10%以下の乾燥膜厚を有するバリヤー層と、
を含んで成ることを特徴とする多層装飾積層体。
【請求項4】
基材表面に着色層を適用するための多層装飾積層体であって、
バインダー及び顔料を含む色層を含んで成り、上面及び下面を有するドライペイント層と、
前記ドライペイント層の前記上面に重なっている感圧接着剤層であって、当該積層体を室温で基材表面に接着させるようになっている感圧接着剤層と、
前記ドライペイント層の前記下面に重なっている剥離ライナーであって、圧力を加えて前記感圧接着剤層により当該積層体を前記基材表面に接着させ、前記剥離ライナーを前記ドライペイント層から剥がしたときに、前記ドライペイント層の外面を露出させるために室温で前記ドライペイント層から除去可能である剥離ライナーと、
前記接着剤層と前記色層との間に配置された薄い可撓性のバリヤー層であって、当該バリヤー層はアクリル系樹脂状材料と微粒子状添加剤とを含み、前記微粒子状添加剤が、前記基材のペイントされた表面から前記接着剤層を通って前記色層への、変色誘発顔料の移行を低減するか或いは移行しているかかる顔料を捕捉する量で、前記アクリル系樹脂状材料中に分散された金属化合物、金属酸化物及び/又は金属塩を含んで成る、バリヤー層と、
を含んで成ることを特徴とする多層装飾積層体。
【請求項5】
前記バリヤー層の材料が、移行するモノアゾ変色誘発顔料を阻止又は捕捉する請求項4に記載の物品。
【請求項6】
基材表面に着色層を適用するための自己巻きされた多層積層体であって、
バインダー及び顔料を含む色層を含んで成り、上面及び下面を有するドライペイント層と、
前記ドライペイント層の前記上面に重なっている感圧接着剤層であって、当該積層体を室温で基材表面に接着させるようになっている感圧接着剤層と、
前記ドライペイント層の前記下面に重なっている剥離ライナーであって、前記ドライペイント層の下面に剥離可能に接着された艶消剥離コートと、前記ドライペイント層の反対側の当該剥離ライナーの片面上にある接着剤剥離コート層とを有し、当該剥離ライナー及び前記艶消剥離コートが室温で前記ドライペイント層から剥離可能である剥離ライナーと、
前記接着剤層と前記色層との間に配置された薄い可撓性のバリヤー層であって、当該バリヤー層は、当該積層体の接着面が接着されているペイントされた表面からの変色誘発顔料の移行を阻止するか或いは移行しているかかる顔料を捕捉する材料から形成され、前記バリヤーの材料は、移行する前記顔料によって誘発される顕著な変色が室温条件下で前記色層内で生じるのを実質的に防止するようになっている組成物から作られている、バリヤー層と、
を含み、
前記艶消剥離コートは、圧力を加えて前記感圧接着剤層により当該積層体を前記基材表面に接着させ、前記剥離ライナーを前記ドライペイント層から剥がしたときに、前記ドライペイント層の露出面に艶消仕上げを転写すること、
当該積層体は、前記感圧接着剤層が前記接着剤剥離コート層と接触した状態でロールに自己巻きされるようになっていること、及び
前記接着剤剥離コート層及び前記感圧接着剤層は、それらの間で、前記艶消剥離コートと前記ドライペイント層の間のキャリヤー剥離力よりも低い巻出し剥離力を有しているため、当該積層体がそのロール形態から巻き出されるときに前記接着剤剥離コートが前記ライナーを前記感圧接着剤層との接触から優先的に解放する一方で、当該積層体がそのロール形態から巻き出されるときに前記艶消剥離コートが前記ドライペイント層との接触を保つこと、
を特徴とする自己巻きされた多層積層体。
【請求項7】
前記バリヤー層の材料が、移行しているモノアゾ変色誘発顔料を阻止又は捕捉する請求項6に記載の物品。
【請求項8】
基材表面に着色層を適用するための多層装飾積層体の製造方法であって、
バインダー及び顔料を含む色層を含み、上面と下面とを有するドライペイント層を剥離ライナー上に形成し、
前記ドライペイント層の前記上面に、室温で基材表面に前記積層体を接着させるようになっている感圧接着剤層を適用し、
移行するアゾ型変色誘発顔料によって誘発される顕著な変色が室温条件下で前記色層内に発生するのを実質的に防止するのに十分に、前記基材のペイントされた表面から前記接着剤層を通って前記色層への、前記変色誘発顔料の移行を阻止するか或いは移行しているかかる顔料を捕捉する材料から形成された、薄い可撓性のバリヤー層を、前記接着剤層と前記色層との間に適用すること、
を含み、
前記剥離ライナーは前記ドライペイント層の前記下面に重なっており、前記剥離ライナーは、圧力を加えて前記感圧接着剤層により前記積層体を前記基材表面に接着させ、前記剥離ライナーを前記ドライペイント層から剥がしたときに、前記ドライペイント層の外面を露出させるために室温で前記ドライペイント層から除去可能であることを特徴とする多層装飾積層体の製造方法。
【請求項9】
前記接着剤層が前記バリヤー層上に直接コーティングされる請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−6713(P2009−6713A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−173436(P2008−173436)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【分割の表示】特願2006−501156(P2006−501156)の分割
【原出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【出願人】(595100646)アベリー・デニソン・コーポレイション (6)
【氏名又は名称原語表記】Avery Dennison Corporation
【出願人】(505307622)プロクター アンド ギャンブル (3)
【Fターム(参考)】