説明

変速機の制御装置および制御方法

【課題】シフト経路とセレクト経路とを有するシフトゲートに沿って運転者に操作されるシフトレバーのシフト経路上の基準位置を示す基準電圧値を、ECUの処理負荷を軽減しつつ適切に学習する。
【解決手段】HV−ECUは、サイクルタイムTCで演算を行なう。HV−ECUは、シフトレバーがセレクト経路の中央位置を通過したが否かを学習許可条件として判断し、学習許可条件の成立時点でサンプリングしたシフトセンサの出力電圧値に基づいて、基準電圧値を学習する。HV−ECUは、シフトレバーがセレクト経路の中央位置を含む周期変更開始領域ARに含まれない状態から周期変更開始領域ARに含まれる状態に変化した場合に周期変更開始条件が成立したと判断し(S302にてYES)、所定時間が経過するまで、サイクルタイムTCを通常値T2よりも短い値T1に設定する(S304)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機のシフトポジションの切り換えに用いられるシフトレバーの位置を検出する技術に関し、特に、シフトレバーの位置を学習する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、運転者によるシフトレバーの操作に従い自動変速機のシフトポジションを切り換えるシフト切換機構においては、シフトポジション切換用の動力源として電動機(たとえば直流モータ)を備えたものが知られている。
【0003】
このようなシフト切換機構によれば、自動変速機のシフトポジションを運転者によるシフトレバーの操作力によって直接切り換える一般的な切換機構のように、シフトレバーとシフト切換機構とを機械的に接続する必要がないことから、これらの各部品を車両に搭載する際のレイアウト上の制限がなく、設計の自由度を高めることができる。
【0004】
このようなシフト切換機構におけるシフトレバーとしては、モーメンタリタイプのシフトレバーが用いられる場合がある。モーメンタリタイプのシフトレバーにおいては、中立位置を起点としたシフトレバーの操作により、R、N、D、Bの走行ポジションへの切換およびPポジションからの切換が行なわれる。シフトレバーには、縦方向(シフト方向)の操作の動きを検出するシフトセンサと横方向(セレクト方向)の操作の動きを検出するセレクトセンサが設けられ、これらのセンサからの出力に基づいてシフトポジションが確定される。
【0005】
特開2005−7993号公報(特許文献1)は、モーメンタリ機能を有するシフト操作装置において運転者の要求に適切に応答する変速機のシフト操作装置を開示する。この変速機のシフト操作装置は、複数のシフト位置に到達する経路と、運転者により経路を移動するように操作されるモーメンタリ式の可動部とを備える。可動部は、運転者による非操作時には予め定められた中立位置に保持される。シフト操作装置は、可動部がシフト位置に予め定められた認識時間の間保持されることにより、運転者が要求するシフト位置を認識するための認識手段と、認識されたシフト位置に対応する動力伝達状態になるように、変速機に対する制御信号を出力するための出力手段とを含む。経路は、中立位置と、複数のシフト位置の1つである第1のシフト位置と、複数のシフト位置の1つである、中立位置と第1シフト位置との間に設けられた第2のシフト位置とを備える。第1のシフト位置にあると認識されると変速機による動力伝達状態が第1の状態に設定される。第2のシフト位置にあると認識されると変速機による動力伝達状態が第1の状態とは異なる第2の状態に設定される。シフト操作装置はさらに、経路における可動部の移動方向に応じて、認識時間を設定するための設定手段を含む。
【0006】
特開2005−7993号公報に開示されたシフト操作装置によると、運転者が変速機による動力伝達状態を第2の状態とする要求に基づく操作をして第2のシフト位置に可動部が位置する第1の場合と、中立位置に戻る際に第2のシフト位置に可動部が位置する第2の場合との、第2のシフト位置を認識する時間を別々に設定できる。そのため、可動部が第2のシフト位置に保持される時間に基づいて、運転者の要求を適切に認識できる。
【特許文献1】特開2005−7993号公報
【特許文献2】特開2007−285503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、シフトレバーの位置はシフトセンサおよびセレクトセンサの出力電圧値に基づいて判定されるが、各センサの温度特性や組付け位置のばらつきなどによって、各センサの出力電圧値は変動する。そこで、たとえば制御ユニット(演算ユニット)などによって、シフトレバーがセレクト方向移動中であることをセレクトセンサの出力電圧値に基づいて判断し、セレクト方向移動中と判断された時のシフトセンサの出力電圧値に基づいてシフトレバーのシフト方向の基準位置を示す値を常に学習することが望ましい。
【0008】
従来においては、制御ユニットの処理負荷軽減のため、このような学習を行なうための制御ユニットの演算周期(この演算周期には、各センサ値のサンプリング周期やセレクト方向移動中であるか否かの判断周期などが含まれる)を一律に長めに設定していた。そのため、たとえば運転者によって急速なレバー操作が行われた場合、学習時に既にシフトレバーがシフト方向の基準位置からずれており、学習値が適正な値に対して大幅にずれてしまう場合があった。しかしながら、特許文献1には、このような問題を解決する技術について何ら言及していない。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、処理負荷を軽減しつつ、運転者によって操作される可動部の基準位置を示す値を適切に学習することができる変速機の制御装置および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る制御装置は、各々が複数のシフト位置を有する第1経路および第2経路を含む。シフトゲートに沿って移動するように運転者によって操作される可動部を有する車両に備えられる変速機を制御する。第1経路は、第1方向に延びる。第2経路は、第1経路に接続され、第1方向とは異なる第2方向に延びる。制御装置は、第1方向の可動部の位置に応じた第1出力値を出力する第1センサと、第2方向の可動部の位置に応じた第2出力値を出力する第2センサと、第1センサと第2センサとに接続された制御ユニットとを含む。制御ユニットは、可動部が第1方向における基準位置に位置することを示す基準値と第1出力値とに基づいて、可動部の第1方向における第1シフト位置を算出する第1算出部と、第1出力値を第1周期で取得するとともに、基準値を学習するための学習条件が成立したか否かを第2出力値に基づいて第2周期で判断し、学習条件が成立した時点以降に取得された第1出力値を用いて基準値の学習を行なう学習部と、第2出力値が変化したか否かを判断し、第2出力値が変化した場合、取得周期および判断周期の少なくともいずれかの周期を、第2出力値が変化していない場合に比べて短くする周期制御部とを含む。
【0011】
第2の発明に係る制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、学習部は、第2出力値がしきい値よりも小さい値およびしきい値よりも大きい値のいずれか一方の値から他方の値に変化した時点で、学習条件が成立したと判断して基準値の学習を行なう。周期制御部は、第2出力値がしきい値を含む所定の出力範囲に含まれない値から所定の出力範囲に含まれる値に変化した時点から所定時間が経過するまで、いずれかの周期を短くする。
【0012】
第3の発明に係る制御装置においては、第2の発明の構成に加えて、しきい値は、可動部が第2経路上の中央位置にある時の第2出力値に対応する。所定の出力範囲は、可動部が第2経路上の中央位置を含む所定の領域内にある時の第2出力値に対応する。
【0013】
第4の発明に係る制御装置においては、第3の発明の構成に加えて、制御ユニットは、第2出力値に基づいて、可動部の第2方向における第2シフト位置を算出する第2算出部をさらに含む。周期制御部は、可動部が所定の領域内にないことを示す位置から所定の領域内にあることを示す位置に第2シフト位置が変化した時点で、いずれかの周期を短くする。
【0014】
第5の発明に係る制御装置においては、第4のの発明の構成に加えて、制御ユニットは、第1シフト位置と第2シフト位置とに基づいて、運転者が要求する要求シフト位置を算出する第3算出部をさらに含む。
【0015】
第6の発明に係る制御装置においては、第5の発明の構成に加えて、第1算出部は、第1周期で第1出力値を取得し、取得された第1出力値と基準値とに基づいて第1シフト位置を算出する。
【0016】
第7の発明に係る制御装置においては、第1〜6のいずれかの発明の構成に加えて、可動部は、運転者による非操作時に中立位置に保持されるモーメンタリ式の可動部である。第2経路は、一方の端部が第1経路に接続され、他方の端部に中立位置を有する。
【0017】
第8の発明に係る制御装置においては、第1〜7のいずれかの発明の構成に加えて、可動部が第2経路を移動している時の第1出力値は、第1経路における第2経路との接続位置に可動部が位置する時の第1出力値を示す特性を有する。基準位置は、第1経路における第2経路との接続位置である。
【0018】
第9の発明に係る制御方法は、第1の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基準値の学習に用いられる第1出力値を取得する第1周期および基準値の学習条件の成否を判断する第2周期の少なくともいずれかの周期を、たとえば第2出力値が変化しない場合には処理負荷の軽減が可能な通常値とし、第2出力値が変化した場合には、学習条件が成立する可能性があると予測して通常値よりも短くする。これにより、学習条件が成立する可能性があると予測される場合にのみ、通常よりも短い周期で第1出力値の取得および学習条件の成否判断が行なわれる。そのため、運転者が可動部を急速に操作しても、可動部が第1方向における基準位置に位置しない状態で学習が行なわれることが抑制される。そのため、処理負荷を軽減しつつ基準値を適切に学習することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0021】
図1は、本実施の形態に係るシフト制御システム10の構成を示す。本実施の形態に係るシフト制御システム10は、車両に搭載される変速機構2のシフトポジションを電気制御により切り換えるシフトバイワイヤシステムとして機能する。本実施の形態において、シフト制御システム10が搭載される車両として、ハイブリッド車両を一例に説明するが、少なくともアクチュエータの駆動力を用いて変速機のシフトポジションを切り換えるシフト制御システム10が搭載される車両であれば、特にハイブリッド車両に限定されるものではない。なお、本実施の形態において、変速機構2は、無段変速機構から構成される変速機であるが、有段変速機構から構成されてもよい。
【0022】
シフト制御システム10は、Pスイッチ20と、シフトレバー機構26と、HV(Hybrid Vehicle)−ECU(Electronic Control Unit)30と、パーキング制御装置(以下
、「P−ECU」ともいう)40と、アクチュエータ42と、エンコーダ46と、シフト切換機構48とを含む。
【0023】
Pスイッチ20は、変速機構2のシフトポジションをパーキングポジション(以下、「Pポジション」ともいう)とパーキング以外のポジション(以下、「非Pポジション」ともいう)とを切り換えるためのスイッチである。運転者は、Pスイッチ20を通じて、シフトポジションをPポジションに切り換える指示を入力する。Pスイッチ20はモーメンタリスイッチであってもよい。Pスイッチ20が受付けた運転者からの指示を示すP指令信号は、HV−ECU30に送信される。なお、このようなPスイッチ20以外により、非PポジションからPポジションにシフトポジションを切り換えるものであってもよい。
【0024】
シフトレバー機構26は、シフトゲート260と、シフトレバー270と、シフトセンサ22と、セレクトセンサ24とから構成される。
【0025】
シフトレバー270は、運転者による非操作時には中立位置(以下、「Mポジション」とも記載する)に維持され、運転者による操作時にはシフトゲート260に形成された通路に沿って移動されるモーメンタリタイプのシフトレバーである。なお、モーメンタリタイプのシフトレバーの構造および動作については、周知の技術であるため、その詳細な説明は行なわない。
【0026】
シフトゲート260には、前進走行ポジション(以下「Dポジション」という)、後進走行ポジション(以下「Rポジション」という)、ニュートラルポジション(以下「Nポジション」という)およびブレーキポジション(以下「Bポジション」という)などのシフトポジションに対応する位置が予め設定される。
【0027】
シフトセンサ22は、シフトレバー270のシフト方向(図1参照)の位置に応じたシフト電圧値Vshを検出し、検出結果をHV−ECU30に出力する。
【0028】
セレクトセンサ24は、シフトレバー270のセレクト方向(図1参照)の位置に応じたセレクト電圧値Vseを検出し、検出結果をHV−ECU30に出力する。
【0029】
HV−ECU30は、Pスイッチ20、シフトセンサ22およびセレクトセンサ24からの各出力に基づいて、シフト制御システム10の動作を統括的に管理する。
【0030】
HV−ECU30は、シフトセンサ22からのシフト電圧値Vshと、セレクトセンサ24からのセレクト電圧値Vseとに基づいて、シフトゲート260におけるシフトレバー270の位置(以下「シフトポジションSP」ともいう)を判定する。このシフトポジションSPが、運転者が要求するシフトポジションである。
【0031】
HV−ECU30は、判定されたシフトポジションSPが所定時間同一のポジションに維持されると、シフトポジションSPを確定する。HV−ECU30は、確定されたシフトポジションSPがD、N、R、およびBのいずれかのポジションであると、車両情報(たとえばアクセル開度など)に基づいて要求トルクを演算し、確定されたシフトポジションおよび要求トルクに応じたトルク指令を変速機構2に送信するとともに、非P要求信号をP−ECU40に送信する。これにより、変速機構2のシフトポジションが、確定したシフトポジションに切り換えられる。
【0032】
また、HV−ECU30は、Pスイッチ20からのP指令信号を受信すると、P−ECU40に対してP要求信号を送信する。
【0033】
P−ECU40は、HV−ECU30と相互に通信可能に接続される。P−ECU40は、HV−ECU30からのP要求信号または非P要求信号を受信すると、シフトポジションをPポジションと非Pポジションとの間で切り換えるために、シフト切換機構48を駆動するアクチュエータ42の動作を制御し、現在のシフトポジションがPポジションであるか非Pポジションであるかを示す信号をHV−ECU30に送信する。
【0034】
アクチュエータ42は、スイッチドリラクタンスモータ(以下、「SRモータ」と表記する)により構成され、P−ECU40からのアクチュエータ制御信号を受信してシフト切換機構48を駆動する。なお、本発明においてアクチュエータ42は、モータにより構成されるものとして説明するが、油圧により構成されるようにしてもよい。
【0035】
エンコーダ46は、アクチュエータ42と一体的に回転し、SRモータの回転状況を検出する。本実施の形態のエンコーダ46は、A相、B相およびZ相の信号を出力するロータリーエンコーダである。P−ECU40は、エンコーダ46から出力される信号を取得してSRモータの回転状況を把握し、SRモータを駆動するための通電の制御を行なう。
【0036】
図2を参照して、シフトレバー機構26について詳細に説明する。シフトゲート260は、各々がシフト方向に沿って形成される第1シフト経路262および第2シフト経路264と、セレクト方向に沿って形成され、第1シフト経路262と第2シフト経路264とを接続するセレクト経路266とを有する。
【0037】
上述したように、シフトレバー270は、運転者による非操作時にはMポジションに維持され、運転者の操作によってシフトゲート260に形成される経路に沿って移動させられる。
【0038】
第1シフト経路262には、上端の位置にRポジションが、下端の位置にDポジションが、中央の位置(セレクト経路266との接続位置)にNポジションがそれぞれ設けられる。
【0039】
第2シフト経路264には、上端の位置(セレクト経路266との接続位置)にMポジションが設けられ、下端の位置にBポジションが設けられる。
【0040】
セレクト経路266は、第1シフト経路262のNポジションと第2シフト経路264のMポジションとを接続する。
【0041】
セレクト電圧値Vse(セレクトセンサ24の出力電圧値)は、ノイズが生じない正常時において、最小値Vseminから最大値Vsemaxまでの間で変動し、シフトレバー270がセレクト経路266の左側に位置するほど大きな値となる。
【0042】
シフト電圧値Vsh(シフトセンサ22の出力電圧値)は、ノイズが生じない正常時において、最小値Vshminから最大値Vshmaxまでの間で変動し、シフトレバー270がシフト方向の下側に位置するほど大きな値となる。
【0043】
HV−ECU30は、シフト電圧値Vshに基づいて、シフトレバー270のシフト方向の位置SH(以下「シフト方向位置SH」という)を算出する。具体的には、HV−ECU30は、シフトレバー270がセレクト経路266上に位置する時(すなわち第1シフト経路262の中央に位置する時)のシフト電圧値Vshを基準電圧値VCとして予め記憶し、図2に示すように、(基準電圧値VC−所定値α1)をしきい値Lo、(基準電圧値VC+所定値α2)をしきい値Hiとして、Vsh<Loのときに、シフト方向位置SHを「シフトL」と算出し、Lo<Vsh<Hiのときに、シフト方向位置SHを「シフトM」と算出し、Vsh>Hiのときに、シフト方向位置SHを「シフトH」と算出する。なお、この基準電圧値VCが、本発明の学習対象である。
【0044】
また、HV−ECU30は、セレクト電圧値Vseに基づいて、シフトレバー270のセレクト方向の位置SE(以下「セレクト方向位置SE」という)を算出する。具体的には、HV−ECU30は、シフトレバー270がセレクト経路266の中央に位置する時のセレクト電圧値Vseをしきい値Mとして予め記憶し、図2に示すように、セレクト方向位置SEを、Vse<(しきい値M−所定値β1)のときに「セレクトL」と、(しきい値M−所定値β1)<Vse<しきい値Mのときに「セレクトML」と、しきい値M<Vse<(しきい値M+所定値β2)のときに「セレクトMH」と、Vse>(しきい値M+所定値β2)のときに「セレクトH」と算出する。
【0045】
なお、(M−β1)<Vse<(M+β2)の場合(すなわちセレクト方向位置SEが「セレクトML」あるいは「セレクトMH」の場合)は、シフトレバー270が図2に示す周期短縮開始領域AR(以下、単に「領域AR」とも記載する)に含まれる場合である。この領域ARは、図2に示すように、セレクト経路266の中央位置を含み、その中央位置から所定距離だけMポジション側へ離れた位置から、所定距離だけNポジション側に離れた位置までの領域である。
【0046】
HV−ECU30は、セレクト方向位置SEとシフト方向位置SHとの組合せに基づいて、シフトポジションSPを算出する。
【0047】
HV−ECU30は、SE=セレクトLあるいはSE=セレクトMLの場合において、SH=シフトMの場合にシフトポジションSPを「Nポジション」と算出し、SH=シフトHの場合にシフトポジションSPを「Dポジション」と算出し、SH=シフトLの場合にシフトポジションSPを「Rポジション」と算出する。
【0048】
HV−ECU30は、SE=セレクトHあるいはSE=セレクトMHの場合において、SH=シフトMの場合にシフトポジションSPを「Mポジション」と算出し、SH=シフトHの場合にシフトポジションSPを「Bポジション」と算出し、SH=シフトLの場合にシフトポジションSPを「EXポジション」と算出する。なお、ノイズが生じない正常時においては「EXポジション」が算出されることはない。
【0049】
このように、基準電圧値VCは、シフトポジションSPを算出するためのシフト方向位置SHを算出する際の基準となる重要な値であるが、シフトレバー270がセレクト経路266上に位置する時(すなわち第1シフト経路262の中央に位置する時)の実際のシフト電圧値Vshは、シフトセンサ22の温度特性や組付け位置のばらつきなどによって変動する。
【0050】
そのため、HV−ECU30は、セレクト方向位置SEがセレクトMHとセレクトMLとの間で変化した(すなわちセレクト電圧値Vseがしきい値Mを跨いだ)ことを学習許可条件とし、学習許可条件の成立時にシフトレバー270がセレクト経路266上に位置している(すなわち第1シフト経路262の中央に位置している)と推定して、学習許可条件が成立した時点のシフト電圧値Vshに基づいて、基準電圧値VCの学習を行なう。
【0051】
この学習の際、従来においては、HV−ECU30の処理負荷軽減のため、HV−ECU30の演算周期(サイクルタイム)TCを一律に長め(たとえば8ms程度)に設定していた。そのため、たとえば運転者によって急速なレバー操作が行われた場合、HV−ECU30が学習許可条件の成立を判断した時点あるいは学習許可条件の成立判断後にシフト電圧値Vshをサンプリングした時点で、既にシフトレバー270がセレクト経路266上に位置しない(すなわち第1シフト経路262の中央に位置しない)ことが場合が考えられる。このような場合、学習値は適正値とならない。
【0052】
この問題を解決するために、本発明は、学習許可条件が成立する可能性があるか否かを予測し、学習許可条件が成立する可能性があると予測された場合に、HV−ECU30のサイクルタイムTCを通常値T2(たとえば8ms程度)よりも短い値T1(たとえば1ms程度)に変更する点に特徴を有する。
【0053】
具体的には、HV−ECU30は、セレクト電圧値Vseに基づいてシフトレバー270が上述した領域ARに含まれていない状態から領域ARに含まれる状態に変化したか否かを判断し、領域ARに含まれる状態に変化した時点から、学習許可条件が成立する可能性がある(すなわちセレクト電圧値Vseがしきい値Mを跨ぐ可能性がある)と予測して、所定時間が経過するまで、サイクルタイムTCを通常値T2よりも短い値T1に変更する。
【0054】
図3に、本実施の形態に係るHV−ECU30の機能ブロック図を示す。HV−ECU30は、A/Dコンバータ310と、演算処理部320と、記憶部330とを含む。
【0055】
A/Dコンバータ310は、シフトセンサ22からのシフト電圧値Vshと、セレクトセンサ24からのセレクト電圧値Vseとを受信し、各センサが検出した電圧値(アナログ値)をディジタル値(以下「A/D値」とも記載する)に変換して演算処理部320に送信する。なお、以下においては、区別して説明する場合を除き、シフト電圧値Vshおよびセレクト電圧値Vseはディジタル値を示すものとするが、アナログ値であってもよい。
【0056】
記憶部330には、各種情報、プログラム、しきい値M、マップ等が記憶され、必要に応じて演算処理部320からデータが読み出されたり、格納されたりする。なお、記憶部330に記憶される情報には、演算処理部320から送信された、シフト電圧値Vsh、セレクト電圧値Vse、学習対象である基準電圧値VC、およびシフトポジションSPの各履歴なども含まれる。
【0057】
演算処理部320は、シフトポジション算出処理部321と、周期タイマ322とを含む。
【0058】
シフトポジション算出処理部321は、周期タイマ322で設定されたサイクルタイムTCで、シフトポジションSPの算出処理を行なうとともに、上述した基準電圧値VCの学習処理を行なう。
【0059】
シフトポジション算出処理部321と、周期タイマ322とは、いずれも演算処理部320であるCPUが記憶部330に記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
【0060】
図4に、シフトポジション算出処理部321の機能ブロック図を示す。シフトポジション算出処理部321は、シフト方向位置算出部321Aと、セレクト方向位置算出部321Bと、ラッチ処理部321Cと、シフト方向学習判定部321Dと、シフト方向学習値算出部321Eと、ラッチ処理部321Fと、シフトレバー位置算出部321Gと、周期設定部321Hとを含む。
【0061】
なお、シフトポジション算出処理部321の各機能は、上述したように、周期タイマ322で設定されたサイクルタイムTCで各センサ値をサンプリングしたり所定値の算出を行なったりする。以下の説明においては、今回のサイクルをn回目とし、n回目のサイクルでサンプリングあるいは算出されたシフト電圧値Vsh、セレクト電圧値Vse、シフト方向位置SH、セレクト方向位置SE、シフトポジションSPを、それぞれVsh(n)、Vse(n)、SH(n)、SE(n)、SP(n)と記載する。また、前回のサイクルでサンプリングあるいは算出されたシフト電圧値Vsh、セレクト電圧値Vse、シフト方向位置SH、セレクト方向位置SE、シフトポジションSPを、それぞれVsh(n−1)、Vse(n−1)、SH(n−1)、SE(n−1)、SP(n−1)と記載する。
【0062】
シフト方向位置算出部321Aは、サイクルタイムTCでシフト電圧値Vshをサンプリングする。シフト方向位置算出部321Aは、今回のサイクルでサンプリングしたシフト電圧値Vsh(n)に基づいてシフト方向位置SH(n)を算出する。具体的には、シフト方向位置算出部321Aは、ラッチ処理部321Fによって前回あるいはそれ以前のサイクルで記憶部330に記憶された前回の基準電圧値VC(N−1)を読み出し、VC(N−1)−α=Lo、VC(N−1)+β=Hiとして、Vsh(n)<LoのときにSH(n)=シフトL、Lo<Vsh(n)<HiのときにSH(n)=シフトM、Vsh(n)>HiのときにSH(n)=シフトHと算出する。算出されたSH(n)は、シフトレバー位置算出部321Gに送信される。
【0063】
セレクト方向位置算出部321Bは、サイクルタイムTCでセレクト電圧値Vseをサンプリングする。セレクト方向位置算出部321Bは、今回のサイクルでサンプリングしたセレクト電圧値Vse(n)に基づいてセレクト方向位置SE(n)を算出する。具体的には、セレクト方向位置算出部321Bは、Vse<(M−β1)のときにSE(n)=セレクトL、(M−β1)<Vse<MのときにSE(n)=セレクトML、M<Vse<(M+β2)のときにSE(n)=セレクトMH、Vse>(M+β2)のときにSE(n)=セレクトHと算出する。算出されたSE(n)は、シフト方向学習判定部321D、シフトレバー位置算出部321Gおよび周期設定部321Hに送信されるとともに、ラッチ処理部321Cによって記憶部330に記載される。
【0064】
シフトレバー位置算出部321Gは、シフト方向位置SH(n)とセレクト方向位置SE(n)とに基づいて、シフトポジションSP(n)を算出する。具体的には、シフトレバー位置算出部321Gは、SE(n)=セレクトLあるいはSE(n)=セレクトMLの場合において、SH(n)=シフトMであるとSP(n)=N、SH(n)=シフトHであるとSP(n)=D、SH(n)=シフトLであるとSP(n)=Rと算出する。シフトレバー位置算出部321Gは、SE(n)=セレクトHあるいはSE(n)=セレクトMHの場合において、SH(n)=シフトMであるとSP(n)=M、SH(n)=シフトHであるとSP(n)=B、SH(n)=シフトLであるとSP(n)=EXと算出する。なお、SP(n)は、図示しないシフトポジション確定部に送信される。
【0065】
シフト方向学習判定部321Dは、今回のサイクルで算出されたセレクト方向位置SE(n)と前回のサイクルで算出されたセレクト方向位置SE(n−1)とのいずれか一方がセレクトMHでありかつ他方がセレクトMLであるか否かを(すなわちセレクト電圧値Vseがしきい値Mを跨いだか否か)を学習許可条件として判断し、判断結果をシフト方向学習値算出部321Eに送信する。
【0066】
シフト方向学習値算出部321Eは、サイクルタイムTCでシフト電圧値Vshをサンプリングする。シフト方向学習値算出部321Eは、今回のサイクルで学習許可条件が成立したと判定された場合に、今回のサイクルでサンプリングしたシフト電圧値Vsh(n)を用いて基準電圧値VCの学習値を算出する。算出された学習値は、N回の基準電圧値の学習値VC(N)として、ラッチ処理部321Fによって記憶部330に記載される。
【0067】
なお、学習許可条件が成立したと判定された時点とシフト電圧値Vshのサンプリング時点とが一致しない場合には、学習許可条件が成立したと判定された後、最も早いタイミングでサンプリングしたシフト電圧値Vshを用いて基準電圧値VCの学習を行なうようにしてもよい。
【0068】
シフト方向学習値算出部321Eは、学習許可条件が成立しない場合に、基準電圧値VCの学習値の算出を行なわない。
【0069】
周期設定部321Hは、予め定められた周期変更条件が成立したか否かを判断し、予め定められた周期変更条件が成立した時点から、所定時間(たとえば32ms程度)が経過するまで、サイクルタイムTCを通常値T2よりも短い値T1に設定し、サイクルタイムTCをT2からT1に変更させる制御信号を周期タイマ322に送信する。
【0070】
たとえば、予め定められた周期変更条件は、シフトレバー270が領域ARに含まれない状態から含まれる状態に変化した(すなわち、SE(n−1)=セレクトLかつSE(n)=セレクトML、あるいはSE(n−1)=セレクトHかつSE(n)=セレクトMH)という条件に設定される。すなわち、周期設定部321Hは、シフトレバー270が領域ARに含まれる状態に変化した時点から、学習許可条件が成立する可能性がある(すなわちセレクト電圧値Vseがしきい値Mを跨ぐ可能性がある)と予測して、サイクルタイムTCを通常値T2よりも短い値T1に設定する。
【0071】
なお、本実施の形態においては、周期設定部321Hがシフトポジション算出処理部321の全機能のサイクルタイムを一律に変更する場合について説明するが、周期設定部321Hが少なくともシフト方向学習判定部321Dによる学習許可条件の判定周期、およびシフト方向学習値算出部321EによるVshのサンプリング周期の少なくともいずれかを変更するものであれば、必ずしも他の機能のサイクルタイムを変更するものでなくてもよい。
【0072】
また、本実施の形態においては、セレクト方向位置SEを、セレクトL、ML、MH、Hの4つに分類し、このセレクト方向位置SEに基づいてシフトレバー270が領域ARに含まれるか否かを判断する場合について説明するが、シフトレバー270が領域ARに含まれるか否かの判断手法はこれに限定されない。たとえば、セレクト方向位置SEに代えてセレクト電圧値Vse(n)に基づいて直接判断するようにしてもよい。
【0073】
また、本実施の形態においては、セレクト方向位置SEを、セレクトL、ML、MH、Hの4つに分類し、このセレクト方向位置SEに基づいてシフトレバー270が領域ARに含まれるか否かを判断する場合について説明するが、シフトレバー270が領域ARに含まれるか否かの判断手法はこれに限定されない。たとえば、セレクト方向位置SEに代えてセレクト電圧値Vse(n)に基づいて直接判断するようにしてもよい。
【0074】
また、本実施の形態においては、周期変更条件を、シフトレバー270が領域ARに含まれない状態から含まれる状態に変化したという条件に設定したが、周期変更条件はこれに限定されない。たとえば、周期変更条件を、シフトレバー270がセレクト経路266上で移動した(すなわちセレクト電圧値Vseが変化した)という条件にしてもよい。
【0075】
図5を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるHV−ECU30がシフトポジションを算出する際に実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、このプログラムは、上述したように、周期タイマ322で設定されたサイクルタイムTCで繰り返し実行される。
【0076】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、HV−ECU30は、今回のサイクルでのシフト電圧値Vshおよびセレクト電圧値Vseのサンプリングを行なう(すなわち、シフト電圧値Vsh(n)、セレクト電圧値Vse(n)を検出する)。
【0077】
S102にて、HV−ECU30は、記憶部330に記憶されている前回の基準電圧値VC(N−1)を読み出す。
【0078】
S104にて、HV−ECU30は、シフト電圧値Vsh(n)と前回の基準電圧値VC(N−1)とに基づいて、シフト方向位置SH(n)を算出する。HV−ECU30は、上述したように、VC(N−1)−α1=Lo、VC(N−1)+α2=Hiとして、Vsh(n)<LoのときにSH(n)=シフトL、Lo<Vsh(n)<HiのときにSH(n)=シフトM、Vsh(n)>HiのときにSH(n)=シフトHと算出する。
【0079】
S106にて、HV−ECU30は、セレクト電圧値Vse(n)に基づいて、セレクト方向位置SE(n)を算出する。HV−ECU30は、上述したように、Vse<(M−β1)のときにSE(n)=セレクトL、(M−β1)<Vse<MのときにSE(n)=セレクトML、M<Vse<(M+β2)のときにSE(n)=セレクトMH、Vse>(M+β2)のときにSE(n)=セレクトHと算出する。
【0080】
S108にて、HV−ECU30は、シフト方向位置SH(n)とセレクト方向位置SE(n)とに基づいて、シフトポジションSP(n)を算出する。HV−ECU30は、上述したように、SE(n)=セレクトLあるいはSE(n)=セレクトMLの場合において、SH(n)=シフトMであるとSP(n)=N、SH(n)=シフトHであるとSP(n)=D、SH(n)=シフトLであるとSP(n)=Rと算出し、SE(n)=セレクトHあるいはSE(n)=セレクトMHの場合において、SH(n)=シフトMであるとSP(n)=M、SH(n)=シフトHであるとSP(n)=B、SH(n)=シフトLであるとSP(n)=EXと算出する。
【0081】
S110にて、HV−ECU30は、セレクト方向位置SE(n)を記憶部330に記憶する。
【0082】
S200にて、HV−ECU30は、記憶部330に記憶されている前回のサイクルのセレクト方向位置SE(n−1)を読み出す。
【0083】
S202にて、HV−ECU30は、学習許可条件が成立したか否かを判断する。HV−ECU30は、今回のサイクルのセレクト方向位置SE(n)と前回のサイクルのセレクト方向位置SE(n−1)とのいずれか一方がセレクトMHでありかつ他方がセレクトMLである場合(すなわちセレクト電圧値Vseがしきい値Mを跨いだ場合)に、学習許可条件が成立したと判断する。学習許可条件が成立すると(S202にてYES)、処理はS204に移される。そうでないと(S202にてNO)、処理はS208に移される。
【0084】
S204にて、HV−ECU30は、今回のサイクルにおける基準電圧値VCの学習値を算出する。HV−ECU30は、今回の基準電圧値VC(N)を、{前回の基準電圧値VC(N−1)+今回のサイクルのシフト電圧値Vsh(n)}/2と算出する。なお、学習値の算出方法はこれに限定されない。
【0085】
S206にて、HV−ECU30は、今回の基準電圧値VC(N)を記憶部330に記憶する。
【0086】
S208にて、HV−ECU30は、今回のサイクルにおける基準電圧値VCの学習を行なわない。
【0087】
図6を参照して、HV−ECU30がサイクルタイムTCを変更する際に実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、図6に示したフローチャートの中で、前述の図5に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについての処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。また、このプログラムも、周期タイマ322で設定されたサイクルタイムTCで繰り返し実行される。
【0088】
S300にて、HV−ECU30は、今回のサイクルでのセレクト電圧値Vseのサンプリングを行なう(すなわちセレクト電圧値Vse(n)を検出する)。
【0089】
S302にて、HV−ECU30は、周期変更開始条件が成立したか否かを判断する。たとえば、上述したように、周期変更開始条件がシフトレバー270が領域ARに含まれない状態から領域ARに含まれる状態に変化したという条件である場合、HV−ECU30は、SE(n−1)=セレクトLかつSE(n)=セレクトMLあるいはSE(n−1)=セレクトHかつSE(n)=セレクトMHの場合に、周期変更開始条件が成立したと判断する。周期変更開始条件が成立したと判断すると(S302にてYES)、処理はS304に移される。そうでないと(S302にてNO)、処理はS306に移される。
【0090】
S306にて、HV−ECU30は、S302の処理にて周期変更開始条件が成立したと判断された時点から所定時間(たとえば32ms程度)が経過するまで、サイクルタイムTCを通常値T2よりも短い値T1に設定する。なお、HV−ECU30は、所定時間が経過すると、サイクルタイムTCを通常値T2に再び戻す。この所定時間は、少なくともT1よりも長い値であって、セレクトセンサ24の応答速度などによって決定される値である。たとえば、セレクトセンサ24の応答速度が遅いほどこの所定時間を長くするようにしてもよい。
【0091】
S308にて、HV−ECU30は、サイクルタイムTCを通常値T2に設定する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係るHV−ECU30の学習動作について、図7、8を参照しつつ説明する。
【0092】
運転者がシフトレバー270をMポジションからDポジションへ移動させる場合を想定する。この場合、図7に示すように、HV−ECU30がn−1回目の演算を行なった時刻t=t0でシフトレバー270がMポジションの近くに位置していた場合、処理負荷軽減のためにサイクルタイムTCを通常値T2に維持した状態で運転者が急速なレバー操作を行なっても、n回目の演算時刻t=t0+T2においては、シフトレバー270がセレクト経路266上に位置している。
【0093】
しかしながら、図8に示すように、HV−ECU30がn−1回目の演算を行なった時刻t=t0でシフトレバー270がセレクト経路266の中央位置よりもMポジション側の領域AR内に位置していた場合、サイクルタイムTCを通常値T2に維持した状態で運転者が急速なレバー操作を行なうと、n回目の演算時刻t=t0+T2においては、既にシフトレバー270がセレクト経路266上に位置していない場合が想定される。そのため、n回目の演算時刻t=t0+T2におけるシフト電圧値Vsh(n)を用いて基準電圧値VC(N)を算出しても、基準電圧値VC(N)は適正値とならない。
【0094】
そこで、HV−ECU30は、n−1回目の演算を行なった時刻t=t0でシフトレバー270が領域AR内に入った時点から、所定時間が経過するまでは、学習許可条件が成立する可能性があると予測して、サイクルタイムTCを通常値T2よりも短い値T1に変更する(S302にてYES、S304)。
【0095】
これにより、図8に示すように、n回目の演算時刻t=t0+T1において、シフトレバー270がセレクト経路266上に位置するときのシフト電圧値Vsh(n)をサンプリングする(S100)ことになるため、基準電圧値VC(N)を適切に算出(S204)することができる。
【0096】
以上のように、本実施の形態に係る制御装置によれば、シフトレバーが領域ARに含まれていない状態から領域ARに含まれる状態に変化した時点から、基準電圧値VCの学習許可条件が成立する可能性があると予測して、所定時間が経過するまでは、ECUの演算周期を、処理負荷を軽減のために設定された通常値よりも短い値に変更する。これにより、学習許可条件の成否を判断する判断周期、および学習値の算出に用いられるシフト電圧値のサンプリング周期が短くなる。そのため、運転者が急速なレバー操作を行なった場合においても、シフトレバーがセレクト経路上にない状態で学習が行なわれることが抑制されるため、基準電圧値VCを適切に学習することができる。
【0097】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】シフト制御システムの構成を示す図である。
【図2】シフトレバー機構を説明するための図である。
【図3】ECUの機能ブロック図(その1)である。
【図4】ECUの機能ブロック図(その2)である。
【図5】ECUの制御構造を示すフローチャートである。
【図6】ECUの制御構造を示すフローチャートである。
【図7】ECUの学習動作を説明するための図(その1)である。
【図8】ECUの学習動作を説明するための図(その2)である。
【符号の説明】
【0099】
2 変速機構、10 シフト制御システム、20 Pスイッチ、22 シフトセンサ、24 セレクトセンサ、26 シフトレバー機構、30 HV−ECU、40 P−ECU、42 アクチュエータ、46 エンコーダ、48 シフト切換機構、260 シフトゲート、262 第1シフト経路、264 第2シフト経路、266 セレクト経路、270 シフトレバー、310 A/Dコンバータ、320 演算処理部、321 シフトポジション算出処理部、321A シフト方向位置算出部、321B セレクト方向位置算出部、321C ラッチ処理部、321D シフト方向学習判定部、321E シフト方向学習値算出部、321F ラッチ処理部、321G シフトレバー位置算出部、321H 周期設定部、322 周期タイマ、330 記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が複数のシフト位置を有する第1経路および第2経路を含むシフトゲートに沿って移動するように運転者によって操作される可動部を有する車両に備えられる変速機の制御装置であって、前記第1経路は、第1方向に延び、前記第2経路は、前記第1経路に接続され、前記第1方向とは異なる第2方向に延び、
前記制御装置は、
前記第1方向の前記可動部の位置に応じた第1出力値を出力する第1センサと、
前記第2方向の前記可動部の位置に応じた第2出力値を出力する第2センサと、
前記第1センサと前記第2センサとに接続された制御ユニットとを含み、
前記制御ユニットは、
前記可動部が前記第1方向における基準位置に位置することを示す基準値と前記第1出力値とに基づいて、前記可動部の前記第1方向における第1シフト位置を算出する第1算出部と、
前記第1出力値を第1周期で取得するとともに、前記基準値を学習するための学習条件が成立したか否かを前記第2出力値に基づいて第2周期で判断し、前記学習条件が成立した時点以降に取得された前記第1出力値を用いて前記基準値の学習を行なう学習部と、
前記第2出力値が変化したか否かを判断し、前記第2出力値が変化した場合、前記第1周期および前記第2周期の少なくともいずれかの周期を、前記第2出力値が変化していない場合に比べて短くする周期制御部とを含む、変速機の制御装置。
【請求項2】
前記学習部は、前記第2出力値がしきい値よりも小さい値および前記しきい値よりも大きい値のいずれか一方の値から他方の値に変化した時点で、前記学習条件が成立したと判断して前記基準値の学習を行ない、
前記周期制御部は、前記第2出力値が前記しきい値を含む所定の出力範囲に含まれない値から前記所定の出力範囲に含まれる値に変化した時点から所定時間が経過するまで、前記いずれかの周期を短くする、請求項1に記載の変速機の制御装置。
【請求項3】
前記しきい値は、前記可動部が前記第2経路上の中央位置にある時の前記第2出力値に対応し、
前記所定の出力範囲は、前記可動部が前記第2経路上の前記中央位置を含む所定の領域内にある時の前記第2出力値に対応する、請求項2に記載の変速機の制御装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記第2出力値に基づいて、前記可動部の前記第2方向における第2シフト位置を算出する第2算出部をさらに含み、
前記周期制御部は、前記可動部が前記所定の領域内にないことを示す位置から前記所定の領域内にあることを示す位置に前記第2シフト位置が変化した時点で、前記いずれかの周期を短くする、請求項3に記載の変速機の制御装置。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記第1シフト位置と前記第2シフト位置とに基づいて、前記運転者が要求する要求シフト位置を算出する第3算出部をさらに含む、請求項4に記載の変速機の制御装置。
【請求項6】
前記第1算出部は、前記第1周期で前記第1出力値を取得し、取得された前記第1出力値と前記基準値とに基づいて前記第1シフト位置を算出する、請求項5に記載の変速機の制御装置。
【請求項7】
前記可動部は、運転者による非操作時に中立位置に保持されるモーメンタリ式の可動部であり、
前記第2経路は、一方の端部が前記第1経路に接続され、他方の端部に前記中立位置を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の変速機の制御装置。
【請求項8】
前記可動部が前記第2経路を移動している時の前記第1出力値は、前記第1経路における前記第2経路との接続位置に前記可動部が位置する時の前記第1出力値を示す特性を有し、
前記基準位置は、前記第1経路における前記第2経路との接続位置である、請求項1〜7のいずれかに記載の変速機の制御装置。
【請求項9】
各々が複数のシフト位置を有する第1経路および第2経路を含むシフトゲートに沿って移動するように運転者によって操作される可動部を有する車両に備えられる変速機を制御する制御ユニットが行なう制御方法であって、前記第1経路は、第1方向に延び、前記第2経路は、前記第1経路に接続され、前記第1方向とは異なる第2方向に延び、前記制御ユニットには前記第1方向の前記可動部の位置に応じた第1出力値を出力する第1センサと、前記第2方向の前記可動部の位置に応じた第2出力値を出力する第2センサとが接続され、
前記制御方法は、
前記可動部が前記第1方向における基準位置に位置することを示す基準値と前記第1出力値とに基づいて、前記可動部の前記第1方向における第1シフト位置を算出する算出ステップと、
前記第1出力値を第1周期で取得するとともに、前記基準値を学習するための学習条件が成立したか否かを前記第2出力値に基づいて第2周期で判断し、前記学習条件が成立した時点以降に取得された前記第1出力値を用いて前記基準値の学習を行なう学習ステップと、
前記第2出力値が変化したか否かを判断し、前記第2出力値が変化した場合、前記第1周期および前記第2周期の少なくともいずれかの周期を、前記第2出力値が変化していない場合に比べて短くする周期制御ステップとを含む、変速機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−53884(P2010−53884A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216688(P2008−216688)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】