説明

外壁パネルの取付方法及び外壁パネルの移動方法

【課題】一階部分に一階分の上下寸法を有する一枚の外壁パネルを取付ける場合はもとより、建物の一階部分や複数の階に亘って上下複数の外壁パネルを取付ける場合でも、一回で所定位置へ移動でき且つ移動時に外壁パネルの振れを防止できる外壁パネルの取付方法及び外壁パネルの移動方法を提供する。
【解決手段】建物の所定階数分の長さを有し且つ長手方向に間隔をあけて配置した複数のガイドローラ9を有する方立7を躯体3に取付け、略一階分以上の長さのガイドレール13に一枚又は上下複数枚の外壁パネル1からなる外壁パネルユニット6を取付け、ガイドレール13をガイドローラ9に係合して外壁パネルユニット6を上下方向の所定位置まで移動した後、外壁パネルユニット6からガイドレール13を取外し、外壁パネルユニット6を方立7に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の各階に外壁パネルを取付ける外壁パネルの取付方法及び外壁パネルの移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーテンウォール等の外壁パネルをクレーン等で吊るして建物の各階に移動する際に、外壁パネルが風等により振れるのを防止する為、外壁パネルの取付方法が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、躯体の竪骨に上下方向に間隔をあけてガイド部材を取付け、各外壁パネルの左右両側にガイド部材に係合する係合溝を設けて、外壁パネルの係合溝をガイド部材に係合して案内しながら外壁パネルを所定位置まで下降して、外壁パネルを躯体に固定することが開示されている。
特許文献2には、外壁パネルの吊り治具に設けた係合部を躯体の竪骨に設けたガイドレールに係合させて外壁パネルを所定位置まで下降すると共に、吊り治具に外壁パネルを複数枚吊り下げることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−10037号公報
【特許文献2】特開平10−140718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、外壁パネルは一枚ずつ係合部材に係合して下降させているので、所定の階(以下、本明細書では「一階」という)に上下複数枚の外壁パネルを取付ける場合には、外壁パネルを一枚ずつ順次降下させて取付ける必要があり、施工に手間がかかるという問題がある。
これに対して、特許文献2の技術では、上下複数のパネルを吊り治具の下に吊り下げているが、吊り治具のみを躯体に設けたガイドレールに係合しているから、吊り治具が吊り下げている複数の外壁パネル同士が互いに風等により振れるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、一階部分に一階分の上下寸法を有する一枚の外壁パネルを取付ける場合はもとより、建物の一階部分や複数の階に亘って上下複数の外壁パネルを取付ける場合でも、一回で所定位置へ移動でき且つ移動時に外壁パネルの振れを防止できる外壁パネルの取付方法及び外壁パネルの移動方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、建物の所定階数分の長さを有し且つ長手方向に間隔をあけて配置した複数のガイドローラを有する方立を躯体に取付け、略一階分以上の長さのガイドレールに外壁パネルユニットを取付け、ガイドレールをガイドローラに係合して外壁パネルユニットを上下方向の所定位置まで移動した後、外壁パネルユニットからガイドレールを取外し、外壁パネルユニットを方立に固定することを特徴とする。
尚、本明細書において、外壁パネルユニットは、1枚又は上下方向に設けた複数枚の外壁パネルから構成されるものである。
また、「所定階数分の長さ」とは、一つ分の階(一階)の長さ又は、二つ分の階(二階)や三つ分の階(三階)等の複数階に亘る長さをいう。
【0007】
請求項2に記載の発明は、建物の所定階数分の長さを有する方立を躯体に取付け、方立に長手方向に間隔をあけて複数のガイドローラを取付け、略一階分以上の長さのガイドレールに外壁パネルユニットを取付け、ガイドレールをガイドローラに係合して外壁パネルユニットを上下方向の所定位置まで移動した後、外壁パネルユニットからガイドレールを取外し、外壁パネルユニットを方立に固定することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、ガイドレールは屋内側に向けて開口してガイドローラに係合する係合溝を有し且つ屋内側から外壁パネルユニットに着脱自在に取付けてあり、ガイドローラは屋外側から方立に着脱自在に取付けてあることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、建物の所定階数分の長さを有し且つ長手方向に間隔をあけて配置した複数のガイドローラを有する方立を躯体に取付け、略一階分以上の長さのガイドレールに外壁パネルユニットを取付け、ガイドレールをガイドローラに係合して外壁パネルユニットを上下方向の所定位置まで移動することを特徴とする。
【0010】
本発明は、建物の改装方法として用いることが好ましい。この建物の改装方法は、(1)建物の最上階の既存外壁パネルを躯体から外し、建物の屋上に設置したクレーンで屋上に搬送し、(2)既存外壁パネルを撤去した最上階の床スラブ間に、屋外側に突設するガイドローラを有する方立を左右に間隔をあけて取付け、(3)上下寸法が一階分の新外壁パネルユニットの左右に方立と略同一長さのガイドレールを取付け、新外壁パネルユニットをクレーンで吊り下げ、左右のガイドレールを方立のガイドローラに係合して最上階へ移動した後、新外壁パネルユニットを最上階の躯体に取付け、(4)新外壁パネルユニットを取付けた階の一つ下の階の既存外壁パネルの左右にガイドレールを取付け、既存外壁パネルを躯体から外すとともに、上の階の方立のガイドローラにガイドレールを係合して、既存外壁パネルを屋上に搬送し、(5)既存外壁パネルユニットを撤去した階の床スラブ間にガイドローラを有する方立を左右に間隔をあけて取付け、(6)上下寸法が一階分の新外壁パネルユニットの左右に方立と略同一長さのガイドレールを取付け、新外壁パネルユニットをクレーンで吊り下げ、左右のガイドレールを方立のガイドローラに係合して既存外壁パネルを撤去した階へ移動した後、新外壁パネルユニットを躯体に取付け、以下(4)〜(6)の工程を建物の上から下の階に向かって順次行うものである。
この建物の改装方法によれば、請求項1記載の発明と同様の効果を奏すると共に、既存外壁パネルを撤去するときに、その上の階に取付けた方立のガイドローラに既存外壁パネルに取付けたガイドレールを係合して吊り上げるから、既存外壁パネルの振れを防止できる。また、既存外壁パネルの取外しと新外壁パネルの取付けを最上階から下の階に順次行うので、最下階から上の階に順次行う場合に比較して、降雨時に建物内への雨の吹き込みを低減できるから、雨の吹き込み防止幕設置等の雨養生を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1、2及び4に記載の発明によれば、外壁パネルユニットを取付けるガイドレールは、建物の略一階分以上の長さにしているから、一階部分に一階分の上下寸法を有する一枚の外壁パネルを取付ける場合はもとより、一階部分や複数階の部分に亘って上下複数の外壁パネルを取付ける場合でも、一度に取付けて、一回で所定位置まで移動することができる。
ガイドローラは所定階数分の長さを有する方立に長手方向の間隔をあけて複数配置してあり、ガイドレールは略一階分以上の長さを有しているので、ガイドレールをガイドローラに係合して複数階に亘って移動したときにガイドレールとガイドローラとの係合を常に保持することができ、外壁パネルユニットの振れを防止できる。
外壁パネルユニットを構成する外壁パネルが上下複数枚の場合でも各外壁パネルは同じガイドレールに固定されるから、移動時に上下の外壁パネルが互いに振れるのを防止できる。
請求項4に記載の発明によれば、外壁パネルを建物に取付ける場合の他、建物に取付けてある外壁パネルを取外す場合にも上述した効果を奏することができる。
更に、請求項1に記載の発明によれば、方立を躯体に取付ける前にガイドローラを予め方立に設けてあるので、ガイドローラを地上で方立に取付けることができ、高所での作業を少なくできる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の効果を奏すると共に、ガイドレールは屋内側から外壁パネルユニットに取付けてあるから、建物内で作業している作業員がガイドレールの取外し作業をするときに建物側からの取外し作業が容易にできる。
ガイドローラは方立に着脱自在としているので、不要になった後(例えば、各階全ての外壁パネルユニットを方立に固定した後)に取外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施の形態に係る外壁パネルの取付方法を示す図であり、(a)は外壁パネルユニットを吊り下げて躯体の所定位置まで移動させている状態を示す正面図であり、(b)は(a)に示すC−C断面図である。
【図2】ガイドレールユニットに外壁パネルユニットを取付けて吊り具で移動している状態を示す図であり、(a)は屋内側から見た正面図であり、(b)は(a)に示すB―B断面図である。
【図3】図1に示すK部を抜き出して示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)に示すE−E断面図であり、(c)は(a)に示すF−F断面図である。
【図4】図1に示すA−A断面図である。
【図5】ガイドローラの変形例を示す図であり、ガイドローラを方立に取付けた状態を示す断面図である。
【図6】第1実施の形態において、既存外壁パネルの取外し方法を示す図であり、(a)は既存外壁パネルユニットを吊り上げて移動させている状態を示す正面図であり、(b)は(a)に示すG−G断面図である。
【図7】上枠吊り具の図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図8】下枠吊り具の図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図9】引込具の図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は(a)のH―H断面図である。
【図10】所定位置まで移動してきた外壁パネルユニットを方立間に固定するまでの工程を示す図であり、(a)及び(b)は縦断面図である。
【図11】外壁パネルユニットからガイドレールユニットを外すときの状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のI―I断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。先ず、第1実施の形態について説明する。
第1実施の形態に係る外壁パネルの取付方法は、複数の階層からなる建物の改装工事において、建物の一階からその階にある既存外壁パネル1Aを取外した後(図6参照)に、その階に新しい外壁パネル(新設外壁パネル)1を取付けるものであり(図1参照)、最上階から順次下の階毎の既存外壁パネル1Aの取外しと新しい外壁パネル1の取付けを行って建物を改装するものである。
図1に示すように、本実施の形態に係る外壁パネルの取付方法では、外壁パネルユニット6と、方立7と、ガイドローラ9と、ガイドレールユニット12と、外壁パネルユニット6の吊り下げ治具19と、上枠吊り具21(図2参照)と、下枠吊り具23(図2参照)と、中間吊り具24と、引込み具25(図10参照)とを用いる。
外壁パネルユニット6は、建物の一階部分8(各階の床スラブ5、5間)に取付ける1枚又は複数枚の外壁パネル1で構成されており、本実施の形態では上下に設けられた3枚の外壁パネル1で構成されている。
方立7は、建物の略一階分の長さLを有し、各階の床スラブ5、5間に固定する。
ガイドローラ9は、方立7の長手方向の2箇所に間隔をあけて配置し且つ屋外側から着脱自在に取付けてある。ガイドローラ9は、図3に示すように先端が球体であり、支持部11の先端部11aに取付けてある。ガイドローラ9は図3(a)に示すように矢印S方向に回転自在に支持部11に軸支してあり、支持部11の基端部11bにはネジが形成してあり、方立7に予め固定したナット10に基端部11bを屋外側から螺合して取付けてある。
支持部材11は外壁パネル1の厚みより長い寸法であり、図3(b)(c)に示すように、外壁パネル1を方立7に取付けた後にも、ガイドローラ9が外壁パネル1よりも屋外側に突設するようにしてある。
図2(a)に示すように、ガイドレールユニット12は、平行に設けた左右のガイドレール13、13と、左右のガイドレールの上端部を連結する連結部材13aを有し、ガイドレールと連結部材13aで略コ字形状を成しており、連結部材13aを吊りワイヤー20で吊り下げている。
2本のガイドレール13、13は各々方立7と略同一の長さL(図1(a)参照)を有しており、略平行に配置した2本のガイドレール13、13間に外壁パネルユニット6が取付けられている。
各ガイドレール13には、互いに対向する側に突設した取付部15が複数設けてあり、各取付部15に外壁パネルユニット6を室内側からボルト18(図2(b)参照)で固定している。
図2(b)に示すように、ガイドレール13には、ガイドローラ9が係合する係合溝17が長手方向に形成してあり、係合溝17の開口17aは屋内側に向けて開口している。
各ガイドレール13の下端部13bは、係合溝17の溝巾を下側ほど広くなるように広げており、ガイドローラ9が下側から係合溝17への係合を案内している。
吊り治具19には、吊りワイヤー20を係止するフックが設けてあり、屋上に設置されたクレーンで吊り下げて、下降又は上昇する。
図2(a)に示すように、上枠吊り具21は、外壁パネルユニット6の最上の上枠に固定してあり、図7に示すように、左右中間部に引込みワイヤー27b(図2(a)参照)の上端部を係止する係止部29が設けてある。また、図7に示すように、左右に吊りワイヤー20の係止部21aが設けてあり、吊りワイヤー20を係止可能にしてある。尚、図7において、符号28は取手である。
図2(a)に示すように、下枠吊り具23は、外壁パネルユニット6の最下の下枠に固定するものであり、図8に示すように下方に突設した係合部材31と、引込みワイヤー27aの下端を係止する係止部33が左右に設けてある。図2(a)に示すように、引込みワイヤー27aには、レバーブロック35が設けてあり且つ引込みワイヤー27aをレバーブロック35と共に途中から切り離し可能にしている。
中間吊り具24は、上吊り具21と下吊り具23との間の各外壁パネル1の各上枠と下枠とに設けてあり、下枠吊り具23と略同じ構成であるが係合部材31を設けていない点が下枠吊り具23と異なっている。中間吊り具24、24間はワイヤーで連結されている。
引込み具25は、図9及び図10に示すように、外壁パネルユニット6の下端を取付ける位置の方立7、7間に固定してある。引込み具25には左右に各々受け部37が設けてあり、クレーンに吊り下げて移動してきた外壁パネルユニット6の下端を受けるようになっている。この受け部37は屋外側端が方立よりも屋外側に突設して設けてある。
この受け部37には、屋内外方向の案内溝39が形成してあり、案内溝39に下枠吊り具23の係合部材31を係合して屋内側への移動を案内するものである。
【0015】
次に、第1実施の形態に係る建物の改装方法について説明する。改装は最上階から順次下の階を行うので、最初に最上階の改装について説明する。
先ず、最上階の既存外壁パネルを取外す。最上階における既存外壁パネルの取外しは、図6に示すように、既存外壁パネル1Aの一階分を外壁パネルユニット6Aとして複数枚まとめてガイドレールユニット12に取付け、吊り治具19により上方に引き上げて屋上へ移動して屋上に降ろす。
そして、最上階の既存外壁パネル1Aを全て取外した後に、ガイドローラ9を取付けてある方立7を最上階の床スラブ5、5間に固定する(図1参照)。
尚、ガイドローラ9は、支持部11の基端部11bを方立7に固定してあるナット10に螺合することにより取付ける(図3(b)参照)。また、ガイドローラ9は屋外側に向けて突設するように方立7に取付ける。
更に、方立7、7間には、所定の位置に引込み具25を固定する(図10(a)参照)。
次に、既存外壁パネル1Aを取外した階に新しい外壁パネル1を取付ける。
先ず、一階分を構成する複数の新しい外壁パネル1の上下を互いに連結して外壁パネルユニット6を構成し、図2に示すように、外壁パネルユニット6の左右にガイドレール13を取付ける。ガイドレール13の取付けは、平行に配置した2つのガイドレール13、13で外壁パネルユニット6を挟むように配置し、各取付片15にボルト18で外壁パネルユニット6に屋内側から固定する(図2(b)参照)。ガイドレール13の係合溝17の開口17aは屋内側(躯体側)に向けて配置する。
外壁パネルユニット6の屋内側面にはその上枠に上枠吊り具21を固定し、下枠に下枠吊具23を固定する共に、レバーブロック35を装着した引込みワイヤー27a、27bを下枠吊り具23と上枠吊り具21との間に取付ける。
外壁パネルユニット6を取付けたガイドレールユニット12に吊りワイヤー20を係止し建物の屋上に設置したクレーンで吊り下げ、左右のガイドレール13、13をそれぞれ対向する方立7、7に設けたガイドローラ9に係合し、ガイドレール13と共に外壁パネルユニット6を所定の位置まで下降する。
外壁パネルユニット6が所定位置まで下降すると、図10(a)に示すように、下枠吊り具23の係合部材31が引込み具25の受部37に係合して、外壁パネルユニット6を引込み具25に仮置する。図11に示すように、仮置した状態で、下側の引込みワイヤー27aのレバーブロック35を躯体3に固定すると共に、上側の引込みワイヤー27bも躯体3に固定する。そして、外壁パネルユニット6に固定してあるガイドレール13、13のボルト18(図2参照)を室内側から外し、吊り具19の引き上げによりガイドレールユニット12を引き上げて、ガイドレール13、13を外壁パネルユニット6の上方に引き抜く。
次に、図10(b)に示すように、レバーブロック35の操作により、引込み具25に仮置きしてある外壁パネルユニット6の下端を室内側に引き込む。外壁パネルユニット6の下端に設けた係合部材31は受部37の案内溝を移動するので、外壁パネルユニット6は方立7、7間の所定位置に移動させることができる。一方、外壁パネルユニット6の上端も上側引込みワイヤー27bにレバーブロック35を取付けて躯体に固定し、レバーブロック6の操作により方立7、7間の所定位置へ移動させて、外壁パネルユニット6を位置決めしたところで、外壁パネルユニット6を方立間に固定する。
最上階から2番目以降の階に新しい外壁パネル1を取付ける場合には、先ずその階の既存外壁パネル1Aを取外す。既存外壁パネル1Aの取外しは、既存外壁パネル1Aの両側にガイドレールユニット12のガイドレール13、13を取付けて屋上のクレーンにより引き上げるが、左右のガイドレール13、13は上の階に設置されている左右のガイドローラ9に係合して引き上げる。
その階の全ての既存外壁パネル1Aが取外された後、最上階の場合と同様に、その階に方立7及び引込み具25を固定する。
次に、屋上で新しい外壁パネルユニット6にガイドレールユニット12、上枠吊り具21、下枠吊り具23、引込みワイヤー27a、27bを装着してクレーンで吊り下げ、左右のガイドレール13、13を最上階のガイドローラ9、9からその階のガイドローラ9、9に順次係合させながら所定位置まで下降し、所定位置まで下降したところで、最上階の場合と同様にして方立7、7間に外壁パネルユニット6を固定する。
このようにして、順次一階分の長さの外壁パネルユニット6を各階に全て取付けた後、 建物の室外側において、作業員が屋上から宙吊りされたゴンドラに乗って、外壁パネルユニット6の周囲や方立7との間にシール材を取付ける。
その後、外壁パネル1から屋外側に突設しているガイドローラ9(図3参照)の支持部11を回して方立7から外し、ガイドローラ9を取り除き、取り除いた部分にシール材を取付ける。
【0016】
第1実施の形態によれば、外壁パネルユニット6に取付けるガイドレール13は、略一階分の長さにしているから、一階部分に一階分の上下寸法を有する一枚の外壁パネルを取付ける場合はもとより、一階部分に上下複数の外壁パネル1を取付ける場合でも、一階部分を構成する複数枚の外壁パネル1を、一回の吊り下げで所定位置まで移動することができる。
ガイドローラ9は略一階分の長さを有する方立7に長手方向の間隔をあけて複数配置してあり、ガイドレール13は方立7と略同じ長さを有しているので、ガイドレール13をガイドローラ9に係合して複数階に亘って移動したときにガイドレール13とガイドローラ9との係合を常に保持することができ(図1参照)、外壁パネルユニット6の振れを防止できる。
外壁パネルユニット6を構成する上下複数の外壁パネル1は、同じガイドレール13に取付けて移動するから、上下の外壁パネル1が互いに振れるのを防止できる。
ガイドレール13は屋内側から止めるボルト18で外壁パネルユニット6に取付けてあるから、屋内で作業している作業員がガイドレール13の取外し作業をするときに、屋内側からの取外し作業が容易にできる。即ち、本実施の形態では、外壁パネル1の取付け作業時には、建物の室外側に足場を設けておらず、屋内で作業している作業員は、移動してきた外壁パネルユニット6を屋内側に引寄せて、外壁パネルユニット6からガイドレール13を取外し、方立7に外壁パネル1を取付けることができる。
既存外壁パネル1Aを撤去するときに、その上の階に取付けた方立7のガイドローラ9に既存外壁パネル1Aに取付けたガイドレール13、13を係合して吊り上げるから、既存外壁パネル1Aの振れを防止できる。
既存外壁パネル1Aの取外しと外壁パネル(新外壁パネル)1の取付けを最上階から下の階に順次行うので、最下階から上の階に順次行う場合に比較して、降雨時に建物内への雨の吹き込みを低減できるから、雨の吹き込み防止幕設置等の雨養生を少なくすることができる。
新しい外壁パネルユニット6を取付ける階には、引込み具25を取付けておき、所定位置まで吊りさげてきた外壁パネルユニット6を引込み具25に仮置きするので、仮置きした状態で外壁パネルユニット6からガイドレールユニット12を外すことができ、ガイドレール13、13の取外しが容易にできる。
外壁パネルユニット6から取外したガイドレールユニット12は、そのまま吊りワイヤー20により引き上げられると共にガイドレール13にガイドローラ9が係合した状態で引き上げられるので、ガイドレールユニット12の振れを防止できる。
ガイドレール13、13を外した外壁パネルユニット6は、引込み具25に設けた受け部37の案内溝39に係合部材31が係合して室内側へ移動するから、外壁パネルユニット6を方立間の所定位置に容易に位置決めできる。
ガイドローラ9を取付けた方立7を躯体3に固定しているから、ガイドローラ9の方立7への取付けが予め地上でできるので、高所での作業を少なくできる。
ガイドローラ9は方立7に屋外側から着脱自在としているので、外壁パネル1を方立7に各階全て取付けた後に、ゴンドラに乗った作業員が、上述のシール材の取付け作業時又はシール材の取付け作業とは別に屋外側から各所のガイドローラ9をまとめて取外すことができるので、ガイドローラ9の取外し作業が容易に効率よく行える。
また、外壁パネルユニット6の方立への取付けが終了した後でも、例えば外壁パネルユニット6が損傷していた場合には、すでにガイドローラ9を方立7から取外した場合でも、その外壁パネルユニット1の上階にある方立7に再度ガイドローラ9を取付け、その外壁パネルユニット6にガイドレール13を取付けて移動することにより容易に交換できる。
更に、本実施の形態では、外壁パネルユニット6は、上下複数の外壁パネル1を互いに連結して一体にしているので、上下の外壁パネル1の連結を予め地上でできるから、高所での作業を少なくできる。
【0017】
次に、本発明の他の実施の形態を説明するが、以下に説明する実施の形態において上述した第1実施の形態と同一部分には同一の符号を付することにより、その部分の詳細な説明を省略し、第1実施の形態と主に異なる点を説明する。
第2実施の形態では、方立7には予めガイドローラ9を取付けずに、方立7を一階の床スラブ5、5間に取付けた後に、ガイドローラ9を方立7に取付けている。その他の構成及び作業工程は上述した第1実施の形態と同じである。
【0018】
この第2実施の形態によれば、ガイドローラ9を予め方立7に取付けておくことにより高所での作業を少なくできるという第1実施の形態の効果を除いて、第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0019】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
ガイドローラ9は、球体にすることに限らず、図5に示すように、円柱形状として支持部材11で回転自在に軸支するものであっても良い。
また、ガイドローラ9は方立7の長手方向に2箇所設けることに限らず、3箇所や4箇所に設けても良く、複数箇所であれば数は制限されない。
外壁パネルユニット6、上下の外壁パネル1を予め連結することに限らず、各外壁パネル1どうしは連結しないで、各々ガイドレール13に取付けても良い。
左右のガイドレール13は、上端を連結部材13aで連結してガイドレールユニット12にすることに限らず、連結部材13aで連結していないでガイドレール13、13を外壁パネルユニット6の左右に取付けるものであっても良い。この場合には、吊りワイヤー20を2本設け、各ガイドレール13、13に吊りワイヤー20を係止して外壁パネルユニット6と共にガイドレール13、13を吊り下げて所定位置まで移動し、外壁パネルユニット6から外したガイドレール13、13はガイドローラ9に係合したまま上方に吊り上げる。
また、連結部材13aで連結していないでガイドレール13、13を外壁パネルユニット6の左右に取付ける場合には、上端部と下端部の2箇所にのみガイドローラ9を取付けた方立7を用い、外壁パネルユニット6に設けた上吊り具20(図2(a)及び図7参照)に吊りワイヤー20を係止して吊り下げて所定位置まで移動し、外壁パネルユニット6から外したガイドレール13、13は上下にずらしてガイドローラ9との係合を外して、取り除いても良い。
上述した実施の形態に係る外壁パネルユニット6を左右2列設けて一つの外壁パネルユニットとし、ガイドレール13は左右と、左右の中央部との3箇所に取付けて各ガイドレール13を各方立のガイドローラ9に係合して移動するものであっても良い。
外壁パネルユニット6は、上下寸法が略一階分の寸法を有する一枚の外壁パネルであっても良い。
外壁パネルユニット6に取付けたガイドレール13を地上から吊り上げて上方に移動するものであっても良い。この場合、ガイドレールの上端部17bは係合溝17の溝巾を上側ほど広くなるように広げることが望ましい。
全階の既存外壁パネル1Aを外した後にローラ付き方立7を全階に取付けて、上の階から順に下の階へ新規外壁パネルユニット6を取付けたり、下の階から順に上の階へ新規外壁パネルユニット6を取付けるものであっても良い。また、改装工事に限らず、ビルを新たに建築するときに、最上階から順に下の階にローラ付き方立7を取付けて各階毎に外壁パネルユニット6を取付けたり、全階にローラ付き方立7を取付けた後に、最上階から又は最下階から順に外壁パネルユニット6を取付けるものであっても良い。
方立7の長さを二階分の長さにして2つの階に亘って躯体3に固定し、ガイドレール13の長さを二階分の長さにして、ガイドレール13に二階分の外壁パネルユニット6を取り付けて所定位置(二つの階に亘る位置)に移動して、一度に二つの階に亘って新設外壁パネル1を取付けても良いし、二つの階に亘って既存外壁パネル1Aを一度にガイドレール13に取付けて躯体3から取外すものであっても良い。同様に、方立7の長さを三階分の長さにして三つの階に跨って躯体3に固定し、ガイドレール13の長さを三階分の長さにして、ガイドレール13に一度に三階分の外壁パネルユニット6を取り付けるものであっても良いし、三階部分の既存外壁パネル1Aを一度に取外すものであっても良い。
また、方立7の長さを二階分の長さや3階分の長さにして躯体3に固定し、ガイドレール13の長さは一階分の長さにしても良い。
【符号の説明】
【0020】
1 新設外壁パネル
1A 既存外壁パネル
3 躯体
6 外壁パネルユニット(新設外壁パネルユニット)
6A 既存外壁パネルユニット
7 方立
9 ガイドローラ
13 ガイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の所定階数分の長さを有し且つ長手方向に間隔をあけて配置した複数のガイドローラを有する方立を躯体に取付け、略一階分以上の長さのガイドレールに外壁パネルユニットを取付け、ガイドレールをガイドローラに係合して外壁パネルユニットを上下方向の所定位置まで移動した後、外壁パネルユニットからガイドレールを取外し、外壁パネルユニットを方立に固定することを特徴とする外壁パネルの取付方法。
【請求項2】
建物の所定階数分の長さを有する方立を躯体に取付け、方立に長手方向に間隔をあけて複数のガイドローラを取付け、略一階分以上の長さのガイドレールに外壁パネルユニットを取付け、ガイドレールをガイドローラに係合して外壁パネルユニットを上下方向の所定位置まで移動した後、外壁パネルユニットからガイドレールを取外し、外壁パネルユニットを方立に固定することを特徴とする外壁パネルの取付方法。
【請求項3】
ガイドレールは屋内側に向けて開口してガイドローラに係合する係合溝を有し且つ屋内側から外壁パネルユニットに着脱自在に取付けてあり、ガイドローラは屋外側から方立に着脱自在に取付けてあることを特徴とする請求項1又は2に記載の外壁パネルの取付方法。
【請求項4】
建物の所定階数分の長さを有し且つ長手方向に間隔をあけて配置した複数のガイドローラを有する方立を躯体に取付け、略一階分以上の長さのガイドレールに外壁パネルユニットを取付け、ガイドレールをガイドローラに係合して外壁パネルユニットを上下方向の所定位置まで移動することを特徴とする外壁パネルの移動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−236293(P2010−236293A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86423(P2009−86423)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レバーブロック
【出願人】(000175560)三協立山アルミ株式会社 (529)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【Fターム(参考)】