説明

外壁パネル

【課題】 外壁パネルとシーリング材との付着面積を確保することにより外壁の止水性を高め、ファスニング用フレームの取付面も確保できるようにして外壁施工を容易に行うことのできる、十分な強度を備えた外壁パネルを提供する。
【解決手段】 外壁パネル1は、パネル本体10に、ファスニング用フレーム3をパネル本体10に配設して固定するための切欠部121が、対向する辺縁部に沿ってパネル本体10の屋内側に形成される。また、パネル本体10には、複数本の長辺方向の中空部122が互いに所定間隔でパネル本体10の屋内側に寄せて配設されており、中空部122の断面形状が扁平矩形状であって切欠部121の断面形状に対してその厚さ内に納まる大きさで、かつ切欠部121の屋外側内面と中空部122の屋外側内面とが仮想同一平面上となるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁面を構成する外壁パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁をパネル化したものとして、長方形状に枠組みされたスチール製の補強フレームにサイディング板材等が取り付けられる外壁パネルが広く知られている。この種の外壁パネルは、板材の表面を屋外側へ露出させるようにして建物の壁面に建て込まれ、外壁を構成するようになされている。
【0003】
従来、この種の外壁パネルでは、厚さが15mm〜16mm程度の基材の裏面側に鉄板等の補強材を貼り合わせて壁強度をもたせ、さらに裏面四周に接着剤やビス等を用いて鉄枠を取り付けることで、外壁の納まりを形成していた。
【0004】
例えば、特許文献1には、無機質外壁面材と金属板とからなる外壁パネルについて記載されている。無機質外壁面材は、長尺板状の金属板が裏面に添設されており、この金属板を介して建物構造体に取り付けられる構造となっている。
【0005】
また、図4に示すように、縦方向に複数本な平行な貫通孔61を設けて、軽量化やコストの低減を図るようにした外壁パネル6もあり、例えば特許文献2に記載されている。この種の外壁パネル6は、押出成形によって形成されていることが多く、押出成形方向、すなわち板材の長辺方向に複数本の貫通孔61が設けられており、同形状の貫通孔61が一列に均等間隔で配置されている。
【特許文献1】特開2003−328528号公報
【特許文献2】実公平6−7148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の外壁パネルを複数枚接合した外壁面を施工する場合、パネルの全周面、または下面を除く三周面もしくは二周面にシーリング材を設けて雨水等の侵入が防止される。特に、外壁パネルは前記のように貫通孔が設けられているので、貫通孔の開口が露出した面における接合部では、水の侵入を完全に防止することが難しいとされていた。
【0007】
また、外壁パネルの厚みを増して、金属板を添設せずにパネル強度を高めようとする場合、当然、重量も増加するので、軽量化を図るために前記特許文献2にあるように貫通孔をパネルに対して均等に配設することになる。ところが、このような貫通孔の配置とすると、貫通孔の開口した周面において、複数の貫通孔の存在によってシーリング材の付着面が小さくなってしまい、十分な止水を図れないという問題点があった。
【0008】
さらに、外壁パネルを貫通孔と平行方向に切断して適宜の幅で使用する場合には、貫通孔の縦断面が露出することになり、このようなパネル端面にシーリング材を付着させることも付着面積が確保できず困難であった。また、このように貫通孔の露出したパネル端面に、パネル接合用のフレーム(ファスニング用フレーム)を取り付けるにあたっても、フレームの接着面積を確保することが難しく、施工性や作業性の低下を招き、十分な取付強度を確保するのは困難であった。
【0009】
そこで本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、外壁パネル同士を接合する接合部において、外壁パネルとシーリング材との付着面積を確保することにより外壁の止水性を高めるのを可能にし、ファスニング用フレームの取付面も確保できるようにして外壁施工を容易に行うことのできる、十分な強度を備えた外壁パネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明は、屋内側に配置された軸組フレームにファスニング用フレームを介して固定具により固着されて建物の外壁面を構成する外壁パネルであって、パネル本体には、前記ファスニング用フレームをパネル本体に配設して固定するための切欠部が、対向する辺縁部に沿ってパネル本体の屋内側に形成されるとともに、複数本の長辺方向の中空部が互いに所定間隔で配設されており、これらの中空部は、パネル本体の厚み方向には該パネル本体の屋内側に寄せて配置されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、パネル本体に複数本の中空部を設けても、十分なパネル強度をもたせることができ、かつ、容易にシーリング材の付着面やファスニング用フレームの取付面を確保することができる。
【0012】
また、本発明において、より具体的には、前記中空部は、断面形状が扁平矩形状であって前記切欠部の断面形状に対してその厚さ内に納まる大きさで形成されて、切欠部の屋外側内面と中空部の屋外側内面とが仮想同一平面上となるように配置されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、外壁パネルとシーリング材との付着面積を確保することができるので外壁の止水性が高められ、ファスニング用フレームの取付面も確保することができ、施工性も高められる。
【0014】
また、本発明において、前記中空部は、パネル本体の屋外側から厚み方向に10mm以上後退させて配置されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、隣接する外壁パネル同士の間に形成される目地部において、シーリング材の付着面積を一定に確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
上述のように構成される本発明の外壁パネルによれば、外壁としての十分な強度を備えつつ、外壁パネル同士を接合する接合部において、外壁パネルとシーリング材との付着面積を容易に確保することができるので、接合部に十分な止水性をもたせて、外壁性能を安定的に確保することが可能となる。また、外壁パネルを適宜の幅で切断した場合にも、ファスニング用フレームの取付面を確保しやすいので、外壁施工を容易に行うことができ施工性が高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る外壁パネルを実施するための最良の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1および図2は本発明の外壁パネルの一例を示し、図1は外壁パネルの一部を拡大して示す断面図、図2は施工例を示す断面図である。また、図3は図2との比較例として従来の外壁パネルを示す断面図である。
【0019】
なお、各図においては図面を見やすくするために、外壁パネルや軸組フレーム等の構成部材には断面を示すハッチングを省略して記載している。
【0020】
例示の形態に係る外壁パネル1は、押出セメント板等で形成された板体であり、パネル本体10の屋外側表面には意匠層11が設けられて、例えば縦方向および横方向にそれぞれ設けられた複数本の縦溝11aと横溝等によって、外壁面に現す意匠模様が形成されている。この意匠層11の内側(屋内側)には、意匠層11よりも厚みを有して強度を担保するための基材層12が形成されている。
【0021】
外壁パネル1は、パネル本体10の屋内側に、枠体である軸組フレーム2が配設される。例示の形態では、軸組フレーム2は、リップ溝形鋼(C形鋼)からなり、パネル本体10の四周に枠組みされている。これにより、軸組フレーム2は建物の軸組を兼ねるように構成されている。このような軸組フレーム2とパネル本体10とは、パネル本体10の四周に取り付けられた長尺のファスニング用フレーム3を介して固定具4により固着されている。
【0022】
パネル本体10の基材層12の屋内側には、図示するような溝形のファスニング用フレーム3を配設して固定するための切欠部121が、対向する辺縁部に沿って設けられている。切欠部121は、パネル本体10の四周の辺縁部、すなわち幅方向の両辺縁部と、上下方向の両辺縁部にそれぞれ形成されている。
【0023】
図1においては、パネル本体10の幅方向の一辺縁部に設けられた切欠部121を示している。図示するように、切欠部121とファスニング用フレーム3との断面形状および大きさは互いに対応させて構成されている。
【0024】
例示の場合、ファスニング用フレーム3は厚さ方向に約16mmの大きさで形成されている。これに対応して、外壁パネル1の基材層12の切欠部121も約16mmの切欠厚で形成されている。ファスニング用フレーム3は、このように設けられた切欠部121に、基材層12の屋内側表面に対して略面一となるように、接着剤およびビスを用いて配設されて、その溝部が外方へ向いて開放されるように取り付けられている。
【0025】
また、外壁パネル1は、かかる基材層12と、屋外側の意匠層11とを含めた厚さが30mm以上となるように形成されている。基材層12は、切欠部121が設けられた屋内側と、意匠層11との間でパネル強度を担保しうるための厚みを設け、例えば28mmの厚さが確保されている。また、意匠層11は平均して5mmの厚さで形成されており、外壁パネル1は、全体として33mmの厚みを有して形成されている。
【0026】
ここで、従来、この種の多くの外壁パネルは、その厚さが15mm程度であり、強度を補うために鉄板等の補強材が背面に添設されていた。これに比較して、本発明の外壁パネル1は33mmの厚さを有していることにより、補強材を添設する必要がなく、十分な強度を備えたものとなっている。すなわち、外壁パネル1の基材層12において、外壁面に要求される曲げ強度、耐衝撃強度、耐風圧強度、ならびに防火性能を満足できるようになっている。
【0027】
パネル本体10は、基材層12に、複数本の長辺方向(高さ方向)の中空部122が幅方向に所定間隔で配設されている。そして、厚み方向には、これらの中空部122が、成形上可能な限りパネル本体10の屋内側に寄せて配置されている。
【0028】
具体的に示すと、中空部122は、それぞれ断面形状が厚み方向に扁平した略矩形状に形成されており、切欠部121の断面形状に対して、その厚さ内に納まる大きさで形成されている。また、中空部122は、このような形状とした上で、図示するように切欠部121の屋外側内面121aと中空部122の屋外側内面122aとが、ほぼ同一な仮想平面M上に位置するように配置されている。
【0029】
すなわち、基材層12の切欠部121が、屋内側から厚み方向に約15mmの大きさで形成されているのに対して、中空部122は基材層12の屋内側から厚み方向に15mm以内の範囲に配列されている。逆に、パネル本体10の屋外側からは、厚み方向に10mm以上後退させて中空部122が配列されている。
【0030】
これにより、パネル本体10は、基材層12が、中空部122のない屋外側においては中実に形成されることになる。したがって、パネル本体10の中空部122が露出する小口面においても、基材層12の中実面において十分な面積で確保できるので、その強度だけでなく、パネル同士を接合させたときにシーリング材を付着させる付着面を確保することが可能となる。さらに、言うまでもないが、このような中空部122を基材層12に設けることにより、パネルの軽量化を図るとともに外壁面の遮熱効果をもたせることが可能となっている。
【0031】
かかる外壁パネル1によれば、外壁面の施工にあたって、中空部122の存在を考慮することなくパネル本体10を施工寸法に切断しても、隣接する外壁パネル1同士の間に形成される目地部10aには、シーリング材の付着面積を一定に確保することができる。例えば、この目地部10aには、適宜のシールジョイント部材が嵌め込まれて、接合部の止水性が確保され、雨水等の侵入を防止することができる。また、このとき、切断端面の処理をする必要がなく、施工性もよい。
【0032】
また、このような外壁パネル1を、中空部122の縦断面が露出するような適宜の幅で切断して用いる場合について説明すると、切欠部121の屋外側内面121aと中空部122の屋外側内面122aとが、ほぼ同一な仮想平面M上に位置するように配置されているので、図2に示すように幅方向の切断端部において、中空部122の屋外側内面122aをファスニング用フレーム3の取付面として利用することが可能となる。
【0033】
ここで、図3に示す例と比較すると明らかなように、外壁パネル5に、中空部51がファスニング用フレーム3の厚みよりも屋外側に配置されている場合には、ファスニング用フレーム3の取付面を確保することができない。これに対し、本発明の外壁パネル1の構成では、ファスニング用フレーム3の取付面を容易に得ることができ、外壁性能を安定的に確保しつつ、施工性に富むものとすることができる。
【0034】
なお、図1に示す外壁パネル1において、パネル同士を接合している固定具4は、二枚の押え板41,42が回動自在にビス止めされる構造のものを例示しているがこれに限定されるものではない。この場合、固定具4の押え板41,42には、これを貫通してビスが固定されている。これらの押え板41,42は軸組フレーム2の軸線に沿う位置から、この軸線に直交する位置まで約90度の角度範囲を回動するようになっている。そして、押え板41,42を軸線に直交する位置に回動させることにより、軸組フレーム2に沿って外壁パネル1の切欠部121に配置されたファスニング用フレーム3内に、押え板41,42の先端部が差込まれる構成である。
【0035】
また、押え板41,42の先端部は、ファスニング用フレーム3の溝縁を押圧する方向へ湾曲形成されている。これにより、ビスを締付けるとファスニング用フレーム3の溝縁をこの押え板41,42の先端部が押圧固定し、外壁パネル1は軸組フレーム2に取り付けられるように構成されている。
【0036】
なお、本発明において外壁パネル1に形成される中空部は、例示した形態のみに限定されるものではなく、パネル本体10の屋内側に寄せて配置され、また、断面形状が扁平矩形状であって切欠部121の断面形状に対してその厚さ内に納まる大きさで形成され、切欠部121の屋外側内面121aと中空部の屋外側内面とが仮想同一平面上となるように配置されるものであれば、どのような形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、住宅等の建物の用いられる外壁パネルに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の外壁パネルの一例を一部拡大して示す断面図である。
【図2】本発明に係る外壁パネルの施工例を示す断面図である。
【図3】図2との比較例として従来の外壁パネルを示す断面図である。
【図4】従来の外壁パネルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 外壁パネル
10 パネル本体
11 意匠層
12 基材層
121 切欠部
122 中空部
2 軸組フレーム
3 ファスニング用フレーム
4 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内側に配置された軸組フレームにファスニング用フレームを介して固定具により固着されて建物の外壁面を構成する外壁パネルであって、
パネル本体には、前記ファスニング用フレームをパネル本体に配設して固定するための切欠部が、対向する辺縁部に沿ってパネル本体の屋内側に形成されるとともに、複数本の長辺方向の中空部が互いに所定間隔で配設されており、
これらの中空部は、パネル本体の厚み方向には該パネル本体の屋内側に寄せて配置されていることを特徴とする外壁パネル。
【請求項2】
前記中空部は、断面形状が扁平矩形状であって前記切欠部の断面形状に対してその厚さ内に納まる大きさで形成されて、切欠部の屋外側内面と中空部の屋外側内面とが仮想同一平面上となるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の外壁パネル。
【請求項3】
前記中空部は、パネル本体の屋外側から厚み方向に10mm以上後退させて配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の外壁パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−309010(P2007−309010A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140385(P2006−140385)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】