説明

多孔性銀粒子を含むボディーケア製品

【課題】抗菌性を有し、かつ従来のボディーケア製品におけるナノ粒子に関する不利点を発現しないボディーケア製品を提供すること。
【解決手段】銀を含む金属からなり、1〜100μmの平均径を有する多孔性粒子を含有してなる、ボディーケア製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボディーケア製品、並びに炎症及び/又は感染症の治療用薬剤を製造するための用途に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第02/17984号パンフレットには、骨に埋設したり、移植組織や移植用医療デバイスをコーティング又は製造するための抗菌性材料が開示されている。この場合、抗菌性材料から形成された粒子は、硬化した状態で、マトリクスを形成するマトリクス材料中に微細に分散している。以下の構成成分:Ag、Au、Pt、Pd、Ir、Sn、Cu、Sb、Znの1つ以上から金属が形成される。
【0003】
国際公開第00/78281号パンフレットには、ヒトや動物の皮膜及び/又は粘膜に部分的に接触している有機マトリクスを含む抗菌性ボディーケア製品が開示されている。このマトリクスには、均一に分散された金属銀の粒子が含有されている。この場合、粒子は1〜50nmのサイズを有し、このようなサイズの粒子はナノ粒子という。この粒子は、皮膚及び/又は粘膜に部分的に接触している表面上で、抗菌活性を呈するが、細胞毒性濃度よりも少ない量で存在している。該ボディーケア製品は、例えば軟膏又はクリームとして使用することが可能である。
【0004】
ネイチャー(ブルムフィエル・ジー、2003年、第424巻、246〜248頁)(Brumfiel,G.,Nature(2003),Vol.424,pages 246 to 248)において、ナノ粒子は動物によって吸収されることが知られている。例えば、ナノ粒子は肺から血流へと流入する。ナノ粒子が体内に浸透した場合、ヒトの健康にどのような効果が発現されるかは、未だ明らかではない。したがって、国際公開第00/78281号パンフレットに開示されたボディーケア製品に含まれる、銀から得られるナノ粒子が、ヒトの健康に対して発現する効果も、明らかではない。
【0005】
ドイツ特許第69321139号公報には、金属銀でコーティングされた無機粒子から得られる抗菌性組成物が開示されている。この粒子は、ポリマーに導入される。この粒子は0.01〜100μmの径を有し、すなわちこれもまたナノ粒子の形態である。該ドイツ特許第69321139号公報の開示内容の根底にある目的とは、ポリマーとの相互作用を最小化しながら、ポリマーマトリクスに直ちに導入され得る抗菌性粒子を提供することである。この粒子は、銀の表層に低空隙率の保護層を有し、直ちにポリマー中に分散され得る。保護層は、金属が周囲と激しく接触し過ぎないようにするためのものである。
【0006】
ドイツ特許第3886193号公報には、化粧料中で顔料として用いられ、金属微粉銀からなる被膜を有するチタン−雲母複合材料が開示されている。該ドイツ特許第3886193号公報の開示内容の根底にある目的とは、染料又は顔料として使用するのに好適な材料を提供することである。
【0007】
国際公開第00/78282号パンフレットには、1〜50nmのサイズを有する金属銀粒子を含むシリコーンゴム組成物が開示されている。この銀粒子は、この組成物の表面上に、抗菌効果はあるが、細胞毒性よりも低い銀濃度の量で存在している。
【0008】
特開昭61−257908号公報には、例えば銀からなる金属パウダーでコーティングされたパウダーからなるメークアップ組成物が開示されている。この場合、銀コーティングは、明らかに、単に光学特性を発現させる目的で用いられている。
【特許文献1】国際公開第02/17984号パンフレット
【特許文献2】国際公開第00/78281号パンフレット
【特許文献3】ドイツ特許第69321139号公報
【特許文献4】ドイツ特許第3886193号公報
【特許文献5】国際公開第00/78282号パンフレット
【特許文献6】特開昭61−257908号公報
【非特許文献1】ネイチャー(ブルムフィエル・ジー、2003年、第424巻、246〜248頁)(Brumfiel,G.,Nature(2003),Vol.424,pages 246 to 248)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、抗菌性を有し、かつ国際公開第00/78281号パンフレットに開示されたボディーケア製品のナノ粒子に関する不利点を発現しないボディーケア製品を提供することである。さらに、本発明の目的は、哺乳類又はヒトにおける炎症の治療用薬剤を製造するための用途も特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的は、請求項1及び16の特徴によって達成される。前記方法の有用な実施態様は、請求項2〜15及び17〜31の特徴に由来する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のボディーケア製品は、従来の製品と比較して優れた抗菌効果、また任意に抗炎症効果を呈し、かつ従来のナノ粒子を含むボディーケア製品における不利点を発現しない。さらに該ボディーケア製品に含まれる多孔性粒子は、哺乳類もしくはヒトの炎症及び/又は感染症の治療用薬剤の製造に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明によれば、金属銀を含み、金属から形成され、1〜100μmの平均径を有する多孔性粒子からなるボディーケア製品が提供される。
【0013】
クレンジング、保護、治療、治癒、ケア、美容、緩和といった作用を達成するために、ボディーケア製品は、ヒトや動物の皮膚及び/又は粘膜と接触するような製品である。一般に皮膚と接触する表面を有し、天然又は合成のポリマー材料からなる製品が例示される。例えば、女性の衛生品、特に衛生ナプキン、パンティライナー又はタンポン、失禁ライナー、おむつ、ベビートレーニングパンツ、医療包帯、絆創膏、不織布材料、織物、セルロース、歯ブラシ、おしゃぶり等の吸収性の使い捨て商品が例示される。ボディーケア製品は、例えばウール、ビスコース、セルロース、これら由来の誘導体、天然ゴム等の天然物質から製造されるか、又はかかる天然物質を含む。またボディーケア製品は、粒子を含有したプラスチックから製造されるか、又はかかるプラスチックを含む。該プラスチックとしては、例えばポリエチレン及びこれに由来したコポリマー、ポリプロピレン及びこれから製造されるポリブレンド、ポリブテン、ポリスチレンホモポリマー及びコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレンターポリマー(ABS)、合成ゴム、ハード及びソフトPVC、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)及び他のフルオロポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネート、ポリビニルアルコール、ビニルアルコールのコポリマー、ポリビニルアセタール、ポリエチレングリコール、アクリルポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリシアノアクリレート、ポリメタクリルイミドをベースとしたポリマー、ポリアクリルイミド、ポリビニルアミン、ポリフェニレンイソフタルアミドやポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)を含むポリアミド、線形ポリウレタン及びポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリテトラメチレンテレフタレート(PTMT)を含むポリエステル、ポリカーボネート及びこれに由来したポリマー、ポリオキシメチレン(POMs)、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルブロックアミド、フェノール性プラスチックやアミノプラスチック等の縮合樹脂、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂を含む架橋ポリエステル、架橋ポリウレタン、メチルメタクリレートをベースとした反応樹脂、ポリシロキサン及び無機主鎖を有する他のポリマーがあげられる。
【0014】
ボディーケア製品はまた、例えばエマルジョン、ローション、ジェル、クリーム、軟膏、治癒軟膏、パウダー、化粧料、皮膚保護クリーム又は軟膏、消毒薬又は抗炎症薬剤、サスペンジョン、石鹸、合成界面活性剤、浴槽添加物、剥離製剤、フェースローション、デンタルケア製品、歯みがき粉、うがい薬、歯清浄チューインガム、人工器官接着剤、ヘアシャンプー、日焼け止め剤等の製剤、特に医薬性の製剤として用いられる。これらの製品は、しばしばキャリア中にポリマー又は有機成分を含んでおり、これは多くの微生物のために良好な基材となる。これら基材における微生物の成長により、衛生上の又は医学上の問題が生じることがある。
【0015】
前記粒子は、ボディーケア製品において、抗菌効果はあるが、細胞毒性よりも低い銀イオン濃度の量で、該ボディーケア製品が皮膚及び/又は粘膜と接触する位置に存在している。
【0016】
本発明に係るボディーケア製品中に存在し、金属からなる粒子は、そのサイズが1〜100μmであるので、ナノ粒子の潜在的なリスクをもたらすことがない。ボディーケア製品が本来の目的に従って使用された場合、粒子は、深部皮膚層を通って組織又は血管に浸透することができず、また脳血管関門を越えることができない。その結果、抗菌効果は皮膚表面のみに限定される。このことにより、アレルギーや望ましくない毒性作用の誘発が回避される。しかしながら、その多孔性が故に粒子から放出される銀イオンにより、抗菌作用、また任意に抗炎症作用を充分に呈するボディーケア製品が提供される。粒子が、ボディーケア製品中に、単に抗菌効果を発現するのに必要な濃度よりも高濃度で存在する場合、抗炎症効果が発現される。銀イオンは、特に、ボディーケア製品と接触する皮膚又は粘膜の表面上に作用し、下方組織に悪影響を及ぼさない。その結果、そのサイズが故に皮膚への浸透が抑制されるので、かかる粒子は、ナノ粒子と比較して非常に皮膚適合性が高い。該粒子は、金属銀を含むナノ粒子と比較して、細胞傷害が少なく、生体適合性が高い。その結果、本発明に係るボディーケア製品は、特に、長期間に渡って身体ケア及び身体衛生に多大な注意を払わなければならない患者に適している。このような患者は、例えば低下免疫系を有するか、及び/又は皮膚感染により苦痛のリスクが増加した、例えば個々の糖尿病患者である。本発明に係るボディーケア製品により、しばしば抗生物質のさらなる使用が過剰になることがわかっているので、抗生物質に対する耐性が進展するのを抑制することも可能である。
【0017】
本発明に係るボディーケア製品は、抗菌効果を発現し、また任意に、同時に抗炎症効果も発現する。さらに、金属銀の抗菌効果により、該製品は粒子に加えて防腐剤を必要としない。該ボディーケア製品は、特に医学的な治癒又はケア軟膏、クリームもしくはジェルの形態とすることができる。抗炎症効果により、このような製剤をコルチコイド含有製剤に代えて医学的に用いることができる。該製品を手用の軟膏、クリーム又はジェルとして用いると、抗菌効果により、例えば握手による細菌の伝染から保護され、手上の小さい損傷の場合、細菌の侵入が予防される。さらに、防腐剤を用いなくてもよいので、特にアレルギー性の、不適合な反応はますます少なくなる。
【0018】
粒子の平均内部空隙率は65%以上であり、特に65〜95%である。内部空隙率は、金属が充填されていない粒子の体積パーセンテージを意味している。粒子の平均内部空隙率は、以下のプロセスにて決定される:
1.プラスチック中への粒子の埋込
2.埋込粒子の極薄片の作製
3.粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真の撮影
4.大多数のTEM写真による、粒子の総面積に対する各粒子において金属充填されていない面積のパーセンテージの決定、及び
5.この方法で決定したパーセンテージの大多数を用いた、平均値の算出。
【0019】
ステップ4は、この場合、TEM写真のコンピュータを利用した画像分析によって行うことができる。内部空隙率に加えて、粒子の総空隙率もまた決定することができる。このために、粒子パウダーのタップ密度が最初に決定される。タップ密度は、叩いてできる限り密に敷き詰めたパウダーの体積単位あたりの質量である。タップ密度は、DIN ISO 3953にしたがって決定することができる。このようにして決定される値は、粒子を形成している金属密度のパーセンテージとして算出され、ここでは、10.49g/cm3の密度を有する銀であり、100%から減算される。このようにして算出される値は、粒子の総空隙率を示す。本発明に係るボディーケア製品に含まれる粒子の場合、85〜95%であり、特に90〜95%、好ましくは93〜95%である。
【0020】
粒子の平均内部空隙率が65〜90%、特に70〜85%、好ましくは75〜85%、又は85〜95%、好ましくは90〜95%であることが、特に有利である。空隙率を選択することにより、特定時間単位内で粒子によって放出される銀イオンの量を特定することができる。高空隙率を選択した場合には、多くの銀イオンが放出される。これは、概して、ボディーケア製品中で少量の銀を用いて抗菌及び抗炎症効果が達成されることを意味する。一方、銀イオンが放出されている総継続時間は、空隙率の増大によって、また同時に銀の量の減少によって減少する。したがって、本発明では空隙率が70〜85%、又は85〜95%であることが有利である。
【0021】
粒子は、金属1次粒子の凝集体として存在していることが好ましい。凝集体は、10〜200nm、好ましくは15〜80nmの平均径を有する1次粒子から形成される。このサイズの1次粒子は、銀イオンを充分に放出させ、容易に調製される。凝集体の表面上における、各最外部1次粒子間の平均距離は、好ましくは20〜200nmの範囲であり、好ましくは100〜200nmである。1次粒子は、その外形及びサイズに基づき、電子顕微鏡検査法によって識別される。これらは例えば、図1に示す球状構造である。1次粒子は、焼結頸部によって互いに繋がっている。
【0022】
多孔性粒子は、好ましくはスポンジ構造を有する。これによって大きな表面積となり、銀イオンが、抗菌効果及び任意に抗炎症効果を呈するのに充分な量で放出される。
【0023】
粒子は、2〜20μm、好ましくは2〜5μmの平均外径を有することが望ましい。粒子の比表面積は、2〜10m2/g、特に3〜6m2/g、好ましくは3.5〜4.5m2/gである。該比表面積は、例えばN2吸着によるBET法にしたがった容量分析で測定することができる。BET法は、表面積及び任意に固体(例えばパウダー)の孔径分布を測定するための、ブルナウアー、エメット及びテラー(Brunauer,Emmett and Teller)による方法であり、ガスや蒸気等が、最初に、相当量の吸着熱を放出して固体上の単分子層内に吸着されると仮定するものである。例えば、−196℃で吸着剤上に吸着されるチッ素ガス体積が、印加圧力に基づいて測定される。
【0024】
粒子は、99重量%以上、好ましくは99.9重量%以上の金属銀からなることが望ましい。このように高い銀含量では、他の金属イオン、特に銅イオンによる顕著な細胞毒性作用はない。金属含量を示すパーセンテージは、特にことわりがない限り、今後、粒子の総重量に対する金属重量の割合である。これは重量%で示す。粒子が5ppm未満のカリウム、ナトリウム又は塩素の不純物を含む場合には、特に有利である。銀における不純物の量が増加すると、望ましくない副次的な影響が多くなる。
【0025】
粒子が0.5重量%以下の金属亜鉛及び/又は0.5重量%以下の金属銅を含む場合、特に有利である。いずれの物質もまた抗菌効果を発現し、銀と共に互いの効果を助長し合う。これは、とりわけ、これらは抗菌効果において微生物に対する異なる特性を発揮するという事実に基づく。さらに、銀と、また任意に銅と組み合わされた亜鉛は、特に良好な損傷治癒及び抗炎症効果を発現する。これは、損傷治癒を妨害している、その成長が亜鉛イオン単独では阻害されない微生物の成長が、銀によって、また任意に存在する銅によって抑制されるからである。これに加え、銅は、亜鉛及び銀からなる合金の生成を促進する。全体的に、銀に加えて亜鉛及び/又は銅からなるボディーケア製品は、1種の金属のみからなる各ボディーケア製品いずれと比較しても、より良好な損傷治癒及び抗炎症効果を発現する。銀−亜鉛合金又は銀−亜鉛−銅合金から形成される粒子が好ましい。
【0026】
ボディーケア製品は、粒子に加えて何らかの防腐剤を含まないことが好ましい。金属イオンは保存効果を発現することが発見された。したがって、防腐剤を加えなくてもよい。このことにより、特にアレルギーといった、例えばホルムアルデヒド等の慣習的な防腐剤によって誘発される望ましくない反応が回避される。
【0027】
粒子を、シリコーンオイル、鉱油、グリセロール、又は薬理学から公知の通常の軟膏構成成分からなるキャリア材料に含ませることができる。本発明に係るボディーケア製品を製造するために、凝集体を形成する金属を加熱蒸発させ、ついで金属蒸気を金属フィルタ上に滴下して凝集体を調製することができる。この凝集体を、ボディーケア製品に導入するキャリア材料中に含める。キャリア材料は、例えば、シリコーンオイル、鉱油、グリセロール、又は薬理学から公知の通常の軟膏構成成分であればよい。
【0028】
さらに本発明は、金属銀を含み、金属から形成され、1〜100μmの平均径を有する多孔性粒子の、哺乳類もしくはヒトの炎症及び/又は感染症の治療用薬剤を製造するための用途に関する。哺乳類又はヒトの炎症の治療用の一般的な薬剤には、しばしば抗炎症性及び抗菌性化合物の組み合わせが含まれる。抗菌性化合物は感染症、特に黄色ブドウ球菌による感染症を予防又は抑制しなければならない。通常、抗菌性化合物は抗生物質である。一方、抗生物質は全身投与が可能であるのに対し、抗炎症性化合物は、例えば場所に応じた局所投与がなされる。特に長期間に渡って使用する際には、抗生物質に対する耐性が進展する危険性があるので、該抗生物質の使用量は最低限に抑えなければならない。従来、抗炎症性化合物として、例えばコルチゾンのようなコルチコイドが用いられているが、多くの副作用を有している。本発明にしたがって調製される薬剤の基本的効果は、粒子が抗炎症効果及び抗菌効果の双方を発現するという事実にある。抗生物質の使用を抑制することができ、コルチコイドやその他の抗炎症性化合物による副作用を回避することができる。
【0029】
治療は、局所的に、すなわち例えば皮膚又は損傷部へ適用して行われることが好ましい。薬剤は、軟膏、クリーム又はジェルであればよい。
【0030】
本発明のさらに有利な態様は、前述した本発明に係るボディーケア製品の詳細な説明から得られる。
【0031】
以下に、実施態様を用いて本発明を説明する。
【0032】
図1は、銀凝集体の走査型電子顕微鏡図である。図2は、種々のクリーム状ボディーケア製品と接触させた際に培地の光学濃度(OD)として測定された、バクテリアの成長の経時変化をプロットしたマトリクスである。
【0033】
図1は、銀凝集体の走査型電子顕微鏡図である。ここで、該銀凝集体は、本質的に約60nmの平均粒子径を有する球状の1次粒子からなる。該1次粒子は、本質的に焼結頸部によって互いに繋がっている。これらにより、高多孔性構造が形成される。ここで示される銀凝集体は、約10μmのサイズを有する。
【0034】
図2に示される結果は、ドイツ特許公開第19751581号公報にて開示される方法に従って決定した。この方法はさらに、ネイチャーメディスン(ベチェルト・トルステンら、2000年、第6巻、第8号、1053〜1056頁)(Bechert,Thorsten et al.,Nature Medicine(2000),Vol.6,No.8,pages 1053 to 1056)にて説明されている。これら2つの文献の開示内容は、ここに含まれる。試験用の本発明に係るボディーケア組成物は、クリーム状に調製し、いずれもキャリアとしての材料に適用して試験に用いた。詳細には、以下の通りに試験を実施した。
【0035】
まず、種々のクリームサンプルを調製する。各キャリアに、それぞれ11mgのクリームを適用する。ついで、表皮ブドウ球菌含有溶液200μlを、マイクロタイタープレートの各ウェルに充填する。クリームサンプルを備えたキャリアを、ウェルの1つにて各々37℃で1時間インキュベートする。その後キャリアを除去し、生理的バッファで3回洗浄する。ついで、各キャリアを、200μlの最少培地が充填されたマイクロタイタープレートのウェルに収納する。これらのキャリアを37℃で24時間インキュベートする。その後、キャリアを除去し、廃棄する。マイクロタイタープレートの各ウェルに、完全培地(トリプケース−ソーヤ、バイオメリュークス、69280番、マーシールエトアール、フランス(Trypcase−soya,bioMerieux,No.69280,Marcyl’Etoile,France))50μlを加える。ついで、溶液の濁度
を、30分間隔で48時間に渡って測定する。この過程において、溶液の温度は37℃に維持する。濁度の測定は、適切な読出装置によって波長が578nmの光を使用して行われる。濁度は、バクテリアがキャリアの表面から環境下に放出されたことを示す。
【0036】
クリームサンプルの調製の際に、用いたベースクリームは、スピンラド(登録商標)からの「クレマバ プラス ハーテー」(セルツス ハンデルス社、22848 ノルデルステット、ドイツ連邦共和国)(“Cremaba Plus HT”from Spinnrad(R)),Certus Handels GmbH,22848 Norderstedt,Germany)であった。これは、以下の成分:水、カプリル/カプリントリグリセリド、ペンチレングリコール、水素化レシチン、ブチロスパーマムパーキー、グリセリン、スクアラン及びセラミド3、を含むエマルジョンベースである。さらに以下の構成成分をベースクリームに加えた:
銀含量が0.65重量%のシリコーンオイル
(該オイル中、銀は、10nmの平均径を有する粒子状であり、以下「ナノディスパースシルバー」(“nanodisperse silver”)と称される);又は
パウダー状であり、平均空隙率が80%、平均径が5μmである金属銀の凝集体
(銀は、以下「アグロメレートシルバー」(“agglomerate silver”)と称される)。
【0037】
0.01重量%のナノディスパースシルバーを含有し、0.1重量%及び0.5重量%のアグロメレートシルバーを含有するクリームを調製した。また、0.05重量%のナノディスパースシルバーを含有し、該ナノディスパースシルバーが99.5重量%の銀、0.49重量%の亜鉛及び0.01重量%の銅を含む合金からなるクリームを調製した。さらに、1.5重量%のアグロメレートシルバーを含有し、該アグロメレートシルバーが99.5重量%の銀、0.49重量%の亜鉛及び0.01重量%の銅を含む合金からなるクリームを調製した。
【0038】
クリームの調製の際に、いずれの場合も、物質を50mlビーカー内で混合し、温浴中、75℃で20分間加熱して、ウルトラトゥラクス(Ultraturrax)(ヤンケ及びキュンケル(Janke and Kunkel)、ドライブ:T25、ステータ径:25mm、ロータ径:17mm)にて5分間分散させた。その後、クリームを冷却し、再び充分に混合した。
【0039】
図2において、各領域は、時間をx軸、光学濃度をy軸上にプロットしたx−yグラフを示す。図2のカラム1〜8に示される実験結果は、列A〜Hに対応する実験アッセイA〜Hと並行した、以下のクリームによって決定された。
カラム1、列A〜H:銀を加えないクリーム
カラム2、列A〜H:アグロメレートシルバー0.1重量%を加えたクリーム
カラム3、列A〜H:アグロメレートシルバー0.5重量%を加えたクリーム
カラム4、列A〜H:99.5重量%の銀、0.49重量%の亜鉛及び0.01重量%の 銅からなるアグロメレートシルバー1.5重量%を加えたクリーム
カラム5、列A〜H:ナノディスパースシルバー0.1重量%を加えたクリーム
カラム6、列A〜H:99.5重量%の銀、0.49重量%の亜鉛及び0.01重量%の 銅からなるナノディスパースシルバー0.05重量%を加えたクリ ーム
カラム7、列A :ポジティブコントロール
カラム7、列B :ネガティブコントロール
カラム7、列C :ブランク
カラム8、列A〜H:無菌コントロール
【0040】
ポジティブコントロールには、金属銀を含むポリマーを用いた。実験値により、用いたバクテリアが銀の影響を受け、死滅したことが示されている。ネガティブコントロールにおいても、同じポリマーが用いられているが、銀は含まれていない。ブランクは、マイクロタイタープレートの空のウェルにおいて測定した値であり、全ての測定値の評価から減算した。無菌コントロールにおいて、細菌増殖が培地由来でないことを示すために、いずれも表皮ブドウ球菌を加えることなく培地だけを用いた。
【0041】
結果を以下に示す。
【表1】

【0042】
「開始OD(h)全体」は、0.2の光学濃度(OD)において指数関数的な増加が発生するまでの時間(時間)を示す。「開始OD(h)正規」は、各「開始OD(h)全体」値から、銀を加えないクリームの「開始OD(h)全体」値をそれぞれ減算して得られる値である。並行した実験アッセイにおいて、いずれも平均値が示されている。「抗菌性」は、バクテリアの成長を遅延させる活性を示し、一方「殺菌性」は、バクテリアが100%死滅し、細菌増殖がもはや観察され得ない活性を示す。
【0043】
実験結果から、アグロメレートシルバーは、ナノディスパースシルバーと同様に、高い抗菌性を有することが示される。ナノディスパースシルバーは、アグロメレートシルバーよりも低い銀濃度で活性を示す。しかしながら、アグロメレートシルバーによってもまだ、高い抗菌性が達成され得る。アグロメレートシルバーの活性及びナノディスパースシルバーの活性は、いずれも、銀と共にさらに亜鉛及び銅を含んでいるクリームにおいて上昇する。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のボディーケア製品に含まれる多孔性粒子は、哺乳類もしくはヒトの炎症及び/又は感染症の治療用薬剤の製造に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る銀凝集体の走査型電子顕微鏡図
【図2】各クリーム状ボディーケア製品と接触させた際に培地の光学濃度として測定された、バクテリアの成長の経時変化をプロットしたマトリクス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性粒子を含むボディーケア製品であって、
前記多孔性粒子が、金属銀を含み、金属から形成され、1〜100μmの平均径を有する、ボディーケア製品。
【請求項2】
粒子の平均内部空隙率が、65%以上、特に65〜95%、好ましくは65〜90%、特に70〜85%、好ましくは75〜85%、又は好ましくは85〜95%、特に90〜95%である、請求項1に記載のボディーケア製品。
【請求項3】
粒子が金属1次粒子の凝集体として存在している、請求項1又は2に記載のボディーケア製品。
【請求項4】
1次粒子の平均径が10〜200nm、好ましくは15〜80nmである、請求項3に記載のボディーケア製品。
【請求項5】
凝集体の表面上における、各最外部1次粒子間の平均距離が、20〜200nm、好ましくは100〜200nmの範囲である、請求項3又は4に記載のボディーケア製品。
【請求項6】
粒子がスポンジ構造を有する、前記請求項の1つに記載のボディーケア製品。
【請求項7】
粒子の平均外径が2〜20μm、好ましくは2〜5μmである、前記請求項の1つに記載のボディーケア製品。
【請求項8】
粒子の比表面積が2〜10m2/g、特に3〜6m2/g、好ましくは3.5〜4.5m2/gである、前記請求項の1つに記載のボディーケア製品。
【請求項9】
粒子が99重量%以上、好ましくは99.9重量%以上の金属銀からなる、前記請求項の1つに記載のボディーケア製品。
【請求項10】
粒子が5ppm未満のカリウム、ナトリウム又は塩素の不純物を含む、前記請求項の1つに記載のボディーケア製品。
【請求項11】
粒子が0.5重量%以下の金属亜鉛及び/又は0.5重量%以下の金属銅を含む、前記請求項の1つに記載のボディーケア製品。
【請求項12】
粒子が銀−亜鉛合金又は銀−亜鉛−銅合金から形成される、前記請求項の1つに記載のボディーケア製品。
【請求項13】
粒子に加えて防腐剤を含まない、前記請求項の1つに記載のボディーケア製品。
【請求項14】
粒子が、シリコーンオイル、鉱油、グリセロール又は軟膏構成成分からなるキャリア材料中に存在する、前記請求項の1つに記載のボディーケア製品。
【請求項15】
エマルジョン、ローション、ジェル、クリーム、軟膏、治癒軟膏、パウダー、化粧料、皮膚保護クリーム又は軟膏、消毒薬、サスペンジョン、石鹸、合成界面活性剤、浴槽添加物、剥離製剤、フェースローション、デンタルケア製品、歯みがき粉、うがい薬、歯清浄チューインガム、人工器官接着剤、ヘアシャンプー又は日焼け止め剤である、特に医薬性の製剤、もしくは、女性の衛生品、特に衛生ナプキン、パンティライナー又はタンポン、失禁ライナー、おむつ、ベビートレーニングパンツ、医療包帯、絆創膏、不織布、織物、セルロース、歯ブラシ又はおしゃぶりである吸収性の使い捨て商品である、前記請求項の1つに記載のボディーケア製品。
【請求項16】
多孔性粒子の用途であって、
前記多孔性粒子が、金属銀を含み、金属から形成され、1〜100μmの平均径を有する、哺乳類もしくはヒトの炎症及び/又は感染症の治療用薬剤を製造するための多孔性粒子の用途。
【請求項17】
粒子の平均内部空隙率が、65%以上、特に65〜95%、好ましくは65〜90%、特に70〜85%、好ましくは75〜85%、又は好ましくは85〜95%、特に90〜95%である、請求項16に記載の用途。
【請求項18】
粒子が金属1次粒子の凝集体として存在している、請求項16又は17に記載の用途。
【請求項19】
1次粒子の平均径が10〜200nm、好ましくは16〜80nmである、請求項18に記載の用途。
【請求項20】
凝集体の表面上における、各最外部1次粒子間の平均距離が、20〜200nm、好ましくは100〜200nmの範囲である、請求項18又は19に記載の用途。
【請求項21】
粒子がスポンジ構造を有する、請求項16〜20の1つに記載の用途。
【請求項22】
粒子の平均外径が2〜20μm、好ましくは2〜5μmである、請求項16〜21の1つに記載の用途。
【請求項23】
粒子の比表面積が2〜10m2/g、特に3〜6m2/g、好ましくは3.5〜4.5m2/gである、請求項16〜22の1つに記載の用途。
【請求項24】
粒子が99重量%以上、好ましくは99.9重量%以上の金属銀からなる、請求項16〜23の1つに記載の用途。
【請求項25】
粒子が5ppm未満のカリウム、ナトリウム又は塩素の不純物を含む、請求項16〜24の1つに記載の用途。
【請求項26】
粒子が0.5重量%以下の金属亜鉛及び/又は0.5重量%以下の金属銅を含む、請求項16〜25の1つに記載の用途。
【請求項27】
粒子が銀−亜鉛合金又は銀−亜鉛−銅合金から形成される、請求項16〜26の1つに記載の用途。
【請求項28】
粒子に加えて防腐剤を含まない、請求項16〜27の1つに記載の用途。
【請求項29】
治療が局所治療である、請求項16〜28の1つに記載の用途。
【請求項30】
薬剤が軟膏、クリーム又はジェルである、請求項16〜29の1つに記載の用途。
【請求項31】
薬剤中で粒子が、シリコーンオイル、鉱油、グリセロール又は軟膏構成成分からなるキャリア材料中に存在する、請求項16〜30の1つに記載の用途。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−504107(P2007−504107A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524330(P2006−524330)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009536
【国際公開番号】WO2005/023213
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(506069228)バイオ−ゲイト アーゲー (3)
【氏名又は名称原語表記】BIO−GATE AG
【住所又は居所原語表記】Neumeyer  Strasse 48 90411 Nurnberg Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】