説明

多孔質キャッチャーを持つプリントヘッド

プリントヘッドは、キャッチャー(42)及び負圧源(104)を含む。そのキャッチャーは、液滴接触構造部(100)を含む。その液滴接触構造部は、複数の孔(102)を含み、その複数の孔の各々は、互いに比べて実質的に均一のサイズを有する。その複数の孔は、臨界圧点を有し、その圧点の上では、空気が液体をその複数の孔から出すことが出来る。負圧源は、液滴接触構造部の複数の孔と流体でつながっている。その負圧源は、負圧が、液滴接触構造部の複数の孔の臨界圧点の下に留まるように、その負圧を制御するための圧力調整器(106)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、デジタル制御される印刷システムの分野に関し、詳しくは、連続印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
連続インクジェット印刷は、液滴の流れを生成する加圧された液体源を使用し、いくつかの液滴は、印刷媒体(しばしば「印刷液滴」と呼ばれる)に接触するように選択される一方、他の液滴(しばしば「非印刷液滴」と呼ばれる)は集められて、リサイクルされるか又は破棄されるように選択される。例えば、印刷が望まれる場合、それらの液滴は偏向されず、印刷媒体に衝突することが可能である。その代わりに、偏向された液滴は、その印刷媒体に衝突することが可能である一方、偏向されない液滴は、捕獲機構において集められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,457,807 B1号明細書
【特許文献2】米国特許第6,491,362 B1号明細書
【特許文献3】米国特許第6,505,921 B2号明細書
【特許文献4】米国特許第6,554,410 B2号明細書
【特許文献5】米国特許第6,575,566 B1号明細書
【特許文献6】米国特許第6,588,888 B2号明細書
【特許文献7】米国特許第6,793,328 B2号明細書
【特許文献8】米国特許第6,827,429 B2号明細書
【特許文献9】米国特許第6,851,796 B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷液滴の液滴配置精度が、画質を維持するために重要である。そのキャッチャーの液滴接触面の液体の蓄積は、液滴配置精度に悪く影響し得る。そのようにして、これらのタイプの印刷システムに対して改善されたキャッチャーが連続的に必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの特徴に従って、プリントヘッドは、キャッチャー及び負圧源を含む。そのキャッチャーは、液滴接触構造部を含む。その液滴接触構造部は、複数の孔を含み、その複数の孔の各々は、お互いに比べて実質的に均一のサイズを有している。その複数の孔は、臨界圧点を有し、その圧点の上では、空気がその複数の孔を通して液体に取って代わることができる。負圧源は、液体接触構造部の複数の孔と液体を通してつながっている。その負圧源は、その負圧が液滴接触構造部の複数の孔の臨界圧点の下に留まるように、その負圧を制御するための圧力調整器を含む。
【0006】
本発明のもう1つの特徴に従って、印刷の方法は、液滴接触構造部を含むキャッチャーを供給する段階を含み、その液滴接触構造部は複数の孔を含み、その複数の孔の各々は、互いに比べると、実質的に均一のサイズを有する。その複数の孔は、臨界圧点を有し、その圧点の上では、空気がその複数の孔から液体を出すことができる、段階;液体接触構造部の複数の孔と液体を通してつながった負圧源を供給する段階;その負圧が、液滴接触面の複数の孔の臨界圧点の下に留まるように、圧力調整器を使用して負圧を調整する段階;ジェッティング・モジュールから液滴を排出する段階;及びそのジェッティング・モジュールから排出された液滴のいくつかが、接触構造部に接触するようにするステップを含む。
【0007】
以下に示される本発明の実例実施形態の詳細な記載において、付属の図表を参考とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に従って作成された印刷システムの実例実施形態の概略図である。
【図2】本発明に従って作成された連続印刷システムの実例実施形態の概略図である。
【図3】本発明に従って作成された連続印刷システムの実例実施形態の概略図である。
【図4】本発明に従って作成された液滴接触構造部の実例実施形態の概略的な側面図である。
【図5】本発明に従って作成された液滴接触構造部の実例実施形態の概略的な側面図である。
【図6】本発明による液滴接触構造部の実例実施形態の、液滴接触構造部の外側に位置する強化構造部を含んだ概略的な上面図である。
【図7】本発明による液滴接触構造部の実例実施形態の2つの強化構造部を含んだ概略的な側面図である。
【図8】図8(A)-(F)は、本発明による液滴接触構造部を製造する方法の実例実施形態の概略図である。
【図9】図9(A)-(F)は、本発明による液滴接触構造部を製造する方法のもう1つの実例実施形態の概略図である。
【図10】図10(A)-(D)は、本発明による液滴接触構造部を製造する方法のもう1つの実施形態の概略図である。
【図11】図11(A)-(E)は、本発明のよる液滴接触構造部を製造する方法の実例実施形態の概略図であり、キャッチャー面材料層は、エッチングされており、強化構造材料層のエッチングにおける使用に対するマスクを形成する図である。
【図12】図12(A)-(D)は、本発明による液滴接触構造部を製造する方法の実例実施形態の概略図であり、キャッチャー面材料層と強化構造材料層との間におけるエッチング・ストップの使用を含む、図である。
【図13】図13(A)-(F)は、本発明による液滴接触構造部を製造する方法の実例実施形態の概略図であり、強化構造材料層と基板との間におけるエッチング・ストップの使用を含む、図である。
【図14】図14(A)-(D)は、本発明による液滴接触構造部を製造する方法のもう1つの実例実施形態の概略図である。
【図15】図15(A)-(F)は、液滴接触構造部の孔の例示的な配置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本記載は、本発明による装置の一部を形成する又はより直接的に組み入れる要素を対象とする。当然のことながら、具体的に示されない又は記載されない要素は、当業者によく知られている様々な形を取ってもよい。以下の記載及び図表において、同一の要素を指定するために可能な場所で同一の参照符号が使用されている。
【実施例】
【0010】
本発明の実例実施形態は、概略的に説明され、明確化のために寸法通りには記載されていない。当該技術の通常の技術のうち1つは、本発明の実例実施形態の要素の特定のサイズ及び相互接続を簡単に判別することができるであろう。
【0011】
ここで記載されるように、本発明の実例実施形態は、インクジェット印刷システムにおいて通常使用されるプリントヘッド及びプリントヘッド構成要素を供給する。しかし、多くの他の応用が現れてきており、それらは、精密に計量された高い空間的精度で堆積させる必要のある液体(インク以外の)を放出するためにインクジェット・プリントヘッドを使用する。そのようにして、ここで記載されているように、「液体」及び「インク」などの用語は、以下に記載されるプリントヘッド又はプリントヘッド構成要素によって排出され得る材料のいずれも呼ぶ。
【0012】
図1を参照すると、連続インクジェット印刷システム20は、ラスター画像データ、ページ記載言語の形における概要画像データ、又は他の形のデジタル画像データを供給するスキャナ又はコンピュータなどの画像源22を含む。この画像データは、画像データをメモリに保存もする画像処理ユニット24によってハーフトーン・ビットマップ画像に変換される。複数の制御形成機構制御回路26は、画像メモリからデータを読み、時間変化電気パルスを、プリントヘッド30の1つ又はそれ以上のノズルに付属している液滴形成装置28に印加する。これらのパルスは、適切な時間に、適切なノズルに印加され、そうすることによって、連続インクジェット・ストリームから形成された液滴が、記録媒体32上において、画像メモリにおけるデータによって指定される適切な位置においてスポットを形成する。
【0013】
記録媒体32は、記録媒体移送制御システム36によって電子的に制御され、順に、マイクロ・コントローラ38によって制御される記録媒体移送システム34によって、プリントヘッド30に関して動かされる。図1に示される記録媒体移送システムは、概略図であるのみであり、多くの異なる機械的構成が可能である。例えば、転送ローラーが、記録媒体32へのインク液滴の移送を促進するために、記録媒体移送システム34として使用され得る。そのような転送ローラー技術は、当該技術分野においてよく知られている。ページ幅プリントヘッドの場合、記録媒体32を固定されたプリントヘッドを越して動かすことが最も便利である。しかし、走査型印刷システムの場合では、そのプリントヘッドを1つの軸(準走査方向)に動かし、記録媒体を垂直軸(主要走査方向)にラスター運動に関して動かすのが通常最も便利である。
【0014】
インクは、圧力下において、インク貯留層40に含まれている。非印刷状態において、連続インクジェット液滴ストリームは、そのストリームをブロックし、そのインクの一部が、インク再生利用ユニット44によって再生利用されることを可能にするインク・キャッチャー42によって記録媒体32に到達することができない。そのインク再生利用ユニットは、そのインクを再調節し、貯留層40へ供給し返す。そのようなインク再生利用ユニットは、当該技術においてよく知られている。最適な作動に適切なインク圧は、ノズルの形状及び熱的特性及びインクの熱的特性を含む多数の因子に依存する。一定したインク圧は、インク圧調節器46の制御下においてインク貯留層40へ圧力を加えることによってなし遂げることが出来る。その代わりに、そのインク貯留層は、加圧されないままで残すか、又は低減された圧力(真空)下に残すことさえもでき、ポンプが、インクをインク貯留層からプリントヘッド30へ搬送するために利用される。そのような実施形態において、インク圧調節器46は、インク・ポンプ制御システムを含んでもよい。図1に示されるように、キャッチャー42は、「ナイフ・エッジ」として一般的に呼ばれるタイプのキャッチャーである。
【0015】
そのインクは、プリントヘッド30にインク・チャンネル47を通して分配される。そのインクは、望ましくは、プリントヘッド30のシリコン基板を通ってエッチングされたスロット又はホールの中を、その前面へ向けて流れ、例えば、複数のノズル及び液滴形成機構、ヒーターなどが位置付けられている場所へと流れる。プリントヘッド30がシリコンから製造され、液滴形成機構制御回路26がプリントヘッドと一体化することが出来る。プリントヘッド30は、また、偏向機構(図1に示されていない)を含み、それは、以下において図2及び3を参照してさらに詳しく記載される。
【0016】
図2を参照すると、連続液体プリントヘッド30の概略図が示されている。プリントヘッド30のジェッティング・モジュール48が、ノズル平面49において形成されたアレイ又は複数のノズル50を含む。図2において、ノズル・プレート49は、ジェッティング・モジュール48に固定されている。しかし、図3に示されているように、ノズル・プレート49は、ジェッティング・モジュール48とともに一体化して形成することができる。
【0017】
例えばインクなどの液体は、アレイの各ノズル50を通して圧力下において放出され、液体52のフィラメントを形成する。図2において、そのアレイ又は複数のノズルは、この図へ入る方向及び図から出る方向に延びている。
【0018】
ジェッティング・モジュール48は、第1サイズを有する液滴及び第2サイズを有する液滴を、各ノズルを通して形成するように作動する。これをなし遂げるためには、ジェッティング・モジュール48は、液滴刺激又は液滴形成装置28を含み、例えば、加熱器又は圧電アクチュエータなどの、選択的に起動させられるとき、例えばインクなどの液体52の各フィラメントをかき乱し、各フィラメントの部分が、そのフィラメントから離れ、液滴54、56に合体するように導く。
【0019】
図2において、液滴形成装置28は、ノズル50の一方の側又は両側におけるノズル・プレート49に位置するヒーター51である。このタイプの液滴形成は知られており、例えば、2002年10月1日にHawkins et al.に発行された米国特許第6,457,807 B1号、2002年12月10日にJeanmaire et al.に発行された米国特許第6,491,362 B1号、2003年1月14日にChwalek et al.に発行された米国特許第6,505,921 B2号、2003年4月29日にJeanmaire et al.に発行された米国特許第6,554,410 B2号、2003年6月10日にJeanmaire et al.に発行された米国特許第6,575,566 B1号、2003年7月8日にJeanmaire et al.に発行された米国特許第6,588,888 B2号、2004年9月21日にJeanmaire et al.に発行された米国特許第6,793,328 B2号、2004年12月7日にJeanmaire et al.に発行された米国特許第6,827,429 B2号、及び2005年2月8日にJeanmaire et al.に発行された米国特許第6,851,796 B2号に記載されている。
【0020】
通常、1つの液滴形成装置28は、ノズル・アレイの各ノズル50に関連している。しかし、液滴形成装置28は、そのノズル・アレイのノズル50のグループ又は全てのノズル50に関連していてもよい。
【0021】
プリントヘッド30が作動しているとき、液滴54、56は、通常、例えば、大液滴56の形における第1サイズ、及び小液滴54の形における第2サイズなど、複数のサイズにおいて生成される。その大液滴56の質量と小液滴54の質量との比は、通常、およそ2と10の間の整数である。液滴54、56を含む液滴ストリーム58は、液滴経路又は軌道57を辿る。
【0022】
プリントヘッド30は、また、例えば、空気などの気体62の流れを、液滴軌道57の一部分を越えて方向付ける気体流偏向機構60も含む。この液滴軌道の部分は、偏向ゾーン64と呼ばれる。気体62の流れが偏向ゾーン64において液滴54、56と相互作用すると、それは、液滴軌道を変更する。その液滴軌道が、偏向ゾーン64から出ると、偏向されない液滴軌道57に関して偏向角度と呼ばれる角度をなして移動する。
【0023】
小液滴54は、その小液滴の軌道66が大液滴の軌道58からそれるように、大液滴56よりも気体流によってより影響を受ける。つまり、小液滴54に対する偏向角度は、大液滴56よりも大きい。気体流62は、キャッチャー42(図1及び3に示される)が、小液滴の軌道66及び大液滴の軌道58のうちの一方を交差するように位置付けられることができるように、十分な液滴偏向及び、従って、その小液滴の軌道及び大液滴の軌道を供給する。そうすることによって、その軌道を辿っている液滴がキャッチャー42によって集められ、その間に、他の軌道を辿っている液滴はそのキャッチャーを迂回し、記録媒体32(図1及び3に示される)に衝突する。
【0024】
キャッチャー42が大液滴の軌道58を交差するように位置付けられるとき、小液滴54は、キャッチャー42との接触を避け、記録媒体にぶつかるように十分に偏向される。それらの小液滴が印刷されると、これは、小液滴印刷モードと呼ばれる。キャッチャー42が小液滴の軌道66を交差するように位置付けられるとき、大液滴56が、印刷する液滴である。これは、大液滴印刷モードと呼ばれる。
【0025】
図3を参照すると、ジェッティング・モジュール48が、アレイ又は複数のノズル50を含む。例えばインクなど、チャンネル47を通して供給される液体は、液体52のフィラメントを形成するようにそのアレイの各ノズル50の中を通って圧力下で放出される。図3において、そのアレイ又は複数のノズル50は、その図の中へ入る方向及びその図から出る方向に延びる。
【0026】
ジェッティング・モジュール48に関連している液滴刺激又は液滴形成装置28(図1及び2に示される)は、液体52のフィラメントをかき乱すように選択的に駆動され、液滴を形成するようにフィラメントの複数部分がそのフィラメントから離れるようにする。この方法において、液滴は、記録媒体32に向けて移動する大液滴及び小液滴の形で選択的に生成される。
【0027】
気体流偏向機構60の陽圧気体流構造部61は、液滴軌道57の第1の側に位置している。陽圧気体流構造部61は、下方の壁74及び上方の壁76を含む第1気体流ダクト(duct)72を含む。気体流ダクト72は、陽圧源92から供給される気体を、液滴偏向ゾーン64に向けて約45°の下向きの角度で方向付ける。任意のシール84は、ジェッティング・モジュール48と気体流ダクト72の上方の壁76との間において気密を供給する。
【0028】
気体流ダクト72の上方壁76は、偏向ゾーン64(図2に示されるように)に延びる必要は無い。図3において、上方壁は、ジェッティング・モジュール48の壁96で終わる。ジェッティング・モジュール48の壁96は、液滴偏向ゾーン64で終わる上方壁76の一部分として働く。
【0029】
気体流偏向機構60の負圧気体流構造部63は、液滴軌道57の第2の側に位置している。負圧気体流構造部は、キャッチャー42と偏向ゾーン64からの気体流を排出する上方壁82との間に位置する。第2ダクト78は、第2ダクト78の中を通って流れる気体を除去するのを援助するために使用される負圧源94に接続している。任意のシール84は、ジェッティング・モジュール48と上方壁82との間における気密を供給する。
【0030】
図3に示されるように、気体流偏向機構60は陽圧源92及び負圧源94を含む。しかし、検討される特定の応用によっては、気体流偏向機構60は、陽圧源92及び負圧源94のうち一方だけを含むことができる。さらに、その偏向機構は、気体流偏向機構に限定されていない。例えば、静電気及び熱偏向機構が使用され得る。
【0031】
第1気体流ダクト72によって供給される気体は、大液滴56が大液滴軌道68を辿り、小液滴54が小液滴軌道66を辿るようにする液滴偏向機構64の中へと方向付けられる。図3に示されるように、小液滴軌道66は、キャッチャー42の前面90によって交差される。小液滴54は、面90に接触し、面90を通ってキャッチャー42とプレート88との間に位置された又は形成された液体返還ダクト86の中へと流れる。集められた液体は、リサイクルされ、再利用のためのインク貯留層40(図1に示される)に返還されるか、そうでなければ破棄される。大液滴56は、キャッチャー42を迂回し、記録媒体32へと移動する。その代わりに、キャッチャー42は、大液滴軌道68を交差するように位置付けることができる。大駅低56は、キャッチャー42に接触し、キャッチャー42に位置付けられた又は形成された液体返還ダクトの中へと流れる。集められた液体は、再利用のためにリサイクルされるか、又は破棄される。いくつかの実施形態において、負圧源が、液体返還ダクト86に、そのダクトからのインクの除去を援助するために付着されている。図3に示されるように、キャッチャー42は、「Coanda」キャッチャーとして一般に呼ばれるタイプのキャッチャーである。
【0032】
図4を参照すると、非印刷液滴54衝突が示されている液滴接触構造部100を含む前面90を有するキャッチャー42の1つの実例実施形態が示されている。その液滴接触構造部100は、液体返還ダクト86とは異なる複数の孔102を含み、それらの孔102の各々は、互いに比べて実質的に均一のサイズを有している。
【0033】
いくつかの例において、孔102の2次元配置が図15(A)-(F)に示されるが、それらの孔は、検討される特定の応用によっては、他の多くの設計において配置することができる。それらの孔は、キャッチャー(図15(A)-(F)に示されるように)の面を交差して等しい密度で配置するか、又はそのキャッチャー面の幅又は高さを交差して変化する密度を有しうる。さらに、それらの孔の形状は、円形であることに限定されない。それらの孔は、正方形(図15(C)に示されるように)、四角形(図15(A)及び(B)に示されるように)、楕円形(図15(D)に示されるように)、又は検討される特定の応用に適切である他の如何なる形状であってもよい。
【0034】
図4を再び参照すると、複数の孔102が、臨界圧点を有し、その圧点の上では、空気がその複数の孔から液体を出す。この臨界圧点の下では、空気は、それらの孔から液体を出さず、結果として空気は、それらの孔を通り抜けることができないが、液体は自由にそれらの孔の中を流れることができる。その臨界圧点は、その液体の表面張力、その液体の液滴接触構造部100とのウェッティング又は接触角、及び穴102のサイズの関数である。それらの孔102を通る液体流は、それらの孔102の中を流れると、その液体における粘性抵抗によって制限される。液滴接触構造部の内部の真空レベルを、孔における圧力低下が臨界圧力未満であるように維持することによって、インクは、それらの孔を通って空気を吸い込むことなく引き出される。この方法で空気の摂取を除去することによって、インク返還ラインにおける泡の生成などの問題が低減されるか、又は除去される。
【0035】
空気が液体を孔から取り出すことができる臨界圧力及びそれらの孔を通る液体の流速の両方は孔のサイズに依存し、臨界圧力は、増加した孔サイズ及び液体がそれらの孔を通って流れることができる速度と共に低下する。従って、大きい孔が素早い流体除去を可能にするようにし、小さい又は少なくともいくつかの制限的なサイズより小さい穴が空気の摂取を防ぐようにすることが望ましい。これらの競合する必要条件の結果として、それらの孔が、空気が使用される真空レベルにおいて摂取できるサイズよりも小さい実質的に均一のサイズを有していることが望ましい。上記に述べたように、臨界圧点は、液体の液滴接触構造部とのウェッティング角又は少なくともそれらの穴の壁に対するウェッティング角に依存し、より可溶性の表面はより高い臨界圧力をもたらす。従って、それらの孔の壁が、かなり可溶性の高い材料で作成されていることが望ましい。水性の液体に対して、例えば、これは、複数の孔を含む液滴接触構造部が、親水性材料から作成されていることを意味する。適切な孔サイズを有する適切な液滴接触構造部100、その構造部の表面面積、及び液体ウェッティング特性で、液滴接触構造100の中を通る液体の如何なる望ましい流速も、その液滴接触構造100における圧力低下が臨界圧点を超える前に得ることができる。
【0036】
適切な圧力低下を維持するために、負圧源104が、その液滴接触構造部100の複数の孔102と流体を通してつながっている。その負圧源104は、その負圧が、液滴接触構造部100の複数の孔の臨界圧点の下に留まるようにその負圧を制御する働きをする圧力調整器106を含む。異なる圧力調整器を持つ単一の負圧源104を使用することによって、液滴接触構造部100の全域において望まれる圧力降下をいまだに維持する一方で、変更又は異なる作動条件(例えば、より多い量の液体がキャッチャー面に接触している時間及びより少量の液体がそのキャッチャー面に接触している時間)を適合するために必要に応じて真空レベルを時間と共に変更することが可能になる。その代わりに、その負圧源によって供給される負圧は、プリントヘッドの作動全体を通して液滴接触構造部の複数の孔の臨界圧点の下の実質的に一定した圧力レベルに維持され得る。
【0037】
プリントヘッド作動の間に、非印刷液滴54が、液滴接触構造部100に衝突し、孔102を通してその構造部の中へ引き込まれる。それらの孔102を含む面90は、その面の全域において流れインピーダンスを最小限にするために薄くあるべきである。それは、大きい流れインピーダンスは、液滴接触構造部100からの液体の除去速度を制限し、印刷の質に最終的に影響を与えることがあり得る。キャッチャー面90は、酸化シリコン、窒化シリコン又は炭化シリコン、タンタルなどの金属、高分子材料又はシリコンなどから構成されるのが望ましいが、検討される特定の応用によっては、他の材料も使用することができる。
【0038】
薄い多孔質液滴接触面90を支持し剛性を備えるために、図4に示されるように、強化構造部108がその液滴接触構造部100に機械的に接触している。ここで使用されるように、「機械的な接触」は、構造部が機械的に共に結合されていることを意味するが、必ずしも直接的な接触にあるとは限らない。その強化構造部は、流れ抵抗を過度に加えずに強化した機械的強度を備える可撓性材料で作成されているべきである。適切な可撓性材料の例は、タンタルなどの金属、ポリイミド又はSU-8(マサチューセッツ州ニュートンのMicrochem Corpから市販されている)などのポリマー又は誘電体などを含むが、特定の応用によっては、他の材料が適切であってよい。この強化構造部108は、検討される応用に依存して、リサイクル・ユニット又は廃液タンクと、流体返還ラインの中を通って流体でつながっている複数の流体チャンネル110を含む。その強化構造部108の流体チャンネル110は、液滴接触構造部100において孔102のサイズよりも大きい開口部を含む。その開口部の大きいサイズは、液滴接触構造部100の複数の孔102の流体インピーダンスに比較すると、より低い流体インピーダンスをもたらし、その流体が、流体チャンネル110の中をより速く簡単に流れることを可能にする。図4において、強化構造部108は、液滴接触構造部100の内部側(中)に位置している。
【0039】
通常、非印刷液滴54はキャッチャー42の前面90に、この面の上部に衝突しないことから、いくつかの実施形態において、その液滴衝突領域の上のキャッチャー面は、非多孔質区分111を含むことができる。いくつかの実施形態において、そのキャッチャーの前面90に当たる液滴からの全ての液体は、孔102を通してキャッチャー面から除去される。図4に示されているような他の実施形態において、キャッチャーの前面に当たる液滴からの液体の一部分だけが、孔102を通して抽出される。そのような実施形態において、端部112の半径は、その面を流れる流体が、その端部の周りを流れて液体返還ダクト86へ入ることを可能にする。その液体返還ダクトに入る液体は、そこから抽出され、さらなる真空源114によってインク貯留層へ戻される。
【0040】
強化構造部108は、図4に示されるように1つの連続的な層であり得るが、図5に示されるように、均一である必要は無く、変化する厚さを持つ多層(しばしば段状又は階段状と呼ばれる)で構成されていてよい。言い換えれば、強化構造部108の流体チャンネル110は、その流体チャンネルの長さにわたって変化する断面積を有することができる。図5における実施形態は、例えば、多層エッチングを使用して製造することが出来る。多層エッチング過程の使用は、また、検討される特定の応用によっては、強化構造部における直交流の生成も可能にする。
【0041】
図6に示されるものなどのいくつかの実施形態において、その強化構造部108は、液滴接触構造部100の外部の側(外側)に位置している。さらに、図7に示されるものなどの他の実施形態において、2つの強化構造部108A及び108Bが含まれてよい。2つの強化構造部が含まれる場合、1つの強化構造部108Bは液滴接触構造部100の外側に位置し、1つの強化構造部108Aは、液滴接触構造部100の内部に位置することができる。非印刷液滴がキャッチャーの前面に当たると生成される可能性がある噴霧を最小限にするために、液滴接触構造部100の外側における強化構造部108をそれらの液滴の軌道に整列させることが望ましい。しかし、他の形状も使用することができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、液滴接触構造部は、流体源に流体を通してつながってもよい。その流体源は、インク貯留層、洗浄流体貯留層、又は検討される特定の応用によっては他の流体源を含むことができる。その液滴接触構造部が流体源に流体を通してつながっている場合、その流体は、孔の湿潤を維持するため又はそれらの孔を新鮮な流体で満たすために液滴接触構造部の中へ導入される。例えば、ドライインクは全て溶解し、液滴接触構造部に接触している液滴の吸収を孔によって強化するためにそれらの穴をぬらす間に塵を全て洗い流すように、開始シーケンスの間に、洗浄液が、その液滴接触構造部及び穴に導入され得る。
【0043】
有利にも、本発明のキャッチャーは、低減された液滴接触表面面積で液体除去速度を最大にする一方、構造安定性を維持する。さらに、本発明のキャッチャーは、そのキャッチャーの液滴接触面における液体の蓄積を低減し、空気がそのキャッチャーの中へ取り込まれる可能性を低減する。
【0044】
その多孔質キャッチャーは、フォトリソグラフィー・マスクを使用して多重ステップ・エッチング法によって製造される。一般的に、キャッチャー面材料層は、強化構造部材料層において供給される。上記で考察されたように、そのキャッチャー面に適切な材料層は、酸化シリコン、窒化シリコン又は炭化シリコンなどの誘電体、タンタルなどの金属、高分子材料又はシリコンなどを含むが、それらに限定されない。強化構造部材料層は、強化された機械的強度を過度な流れ抵抗を加えずに提供する薄い可撓性材料層である。可撓性材料の例に、タンタルなどの金属、ポリイミド又はSU-8などのポリマー及び誘電体材料がある。各層に対する特定の材料は、検討される特定の応用に依存する。キャッチャー面材料層を強化構造部材料層に供給するステップは、検討される特定の応用及び選択される特定の材料により、その2つの層をラミネートすること又は蒸着過程によって成し遂げることが出来る。第1エッチング過程は、キャッチャー面材料層において孔を形成するために使用され、第2エッチング過程は、その強化構造部材料層において開口部を形成するために使用される。これらのステップは、以下に記載されるように様々な順番で成し遂げることができる。選択される特定のエッチング過程は、そのキャッチャー面材料層及び強化構造部材料層に対して選択された材料に依存する。キャッチャー面90の孔102及び強化構造部材料層における開口部は、材料除去過程の方法によって流体で接続され、強化構造部は、キャッチャー面90と機械的接触している。従って、その強化構造部は、図4‐7に示されるようにキャッチャー面と直接的に接触しており、あるいは、その強化構造部は、図12に示されるように、キャッチャー面90に機械的に結合された他の層に接触することができる。
【0045】
製造方法の1つの実例実施形態は、図8(A)-(F)に示されている。図8(A)において、その強化構造部材料層116はマスキングされ、強化構造部材料層116において開口部120を生成するために第1の側118においてエッチングされる。これらの開口部120は、流体返還チャンネル110に対応する。エッチングされない材料122は、図4における強化構造部108に対応する。強化構造部材料層116の第1の側118における開口部120は、次に、犠牲材料層124で充填することができる。その犠牲材料層は、ポリイミドなどのポリマーであってよく、又は他の材料で構成されていてもよい。それに続いて、化学的機械的研磨(CMP)などの平坦化過程が、その犠牲材料層124の過度な厚さを除去するために使用され、図8(B)に示されるように強化構造部材料層116の第1の側118と同じレベルにされる。開口部が充填されるとき、キャッチャー面材料層126が、図8(C)に示されるように、蒸着又はラミネート過程によって供給される。それらの層を適切に結合させるという条件で、検討される特定の応用によっては他の過程を使用することができる。図8(D)に示されるように、キャッチャー面材料層126は、フォトリソグラフィー・マスクを使用してマスキングされ、エッチングされ、そのキャッチャー面に孔102を生成する。強化構造部材料層116の第2の側128は、次に、図8(E)に示されるように、フォトリソグラフィー・マスクを使用してマスキングされ、液体除去マニホールドを生成するようにエッチングされる。図8(F)において、材料除去過程が、犠牲材料層124を取り除き、強化構造部(現時点では流体チャンネル110)における開口部120とキャッチャー面の孔102とを流体で接続するために使用される。ポリイミドなどのポリマーが、犠牲材料層として使用されるとき、酸素プラズマがその層を除去するために使用され得る。他の材料が犠牲材料層として使用される場合の除去のための他の過程は、当業者に明らかであろう。
【0046】
図9(A)-(F)をここで参照すると、当該方法のもう1つの実例実施形態が示されている。上記のように、図9(A)において、強化構造部材料層116は、マスキングされ、その強化構造部材料層116において開口部120を生成するために第1の側118においてエッチングがされる。この場合もまた、これらの開口部120は、流体返還チャンネル110に対応する。エッチングされない材料122は、図5における強化構造部の一部分に対応する。その強化構造部材料層116の第1の側118における開口部120は、次に、犠牲材料層124で充填することが出来る。続いて、化学的機械的研磨(CMP)などの平坦化過程が、犠牲材料層124の過度な厚さを除去するために使用され、図9(B)に示されるように、強化構造部材料層116の第1の側118と同じレベルにする。開口部120が充填されるとき、キャッチャー面材料層126が、蒸着又はラミネート過程(非表示)によって備えられる。そのキャッチャー面材料層126は、フォトリソグラフィー・マスクを使用してマスキングされ、図9(C)に示されるように、その層はエッチングされ、キャッチャー面に孔102を生成する。図9(D)において、強化構造部材料層116の第2の側128が、第3フォトリソグラフィー・マスクを使用してマスキングされ、その強化構造部材料層116の裏側(又は、第2の側)128において開口部132を生成するようにエッチングされる。これらの開口部132は、強化構造部材料層116の第1の側118においてエッチングされた開口部120とは異なる断面積を持つ。図9(E)において、強化構造部材料層116の第2の側128を再びマスキングするために第4フォトリソグラフィー・マスクが使用され、液体除去マニホールド124を形成するように再びエッチングする。材料除去過程は、犠牲材料層124を取り除き、強化構造部において開口部132及び120(現時点では流体チャンネル110)とキャッチャー面の孔102(図9(F)に示される)とを流体で接続するために使用される。上記のように、使用される特定の材料除去過程は、その犠牲材料層に対して選択された特定の材料に依存する。
【0047】
図10(A)-(D)に関して記載された実例実施形態に示されるように、強化構造部材料層における開口部を、キャッチャー面材料層を塗布する前にエッチングすることは不要である。図10(A)において、そのキャッチャー面材料層126は、強化構造部材料層116の第1の側118に、蒸着又はラミネート過程によって供給される。以前に述べたように、検討される特定の応用によっては、層を適切に結合させるという条件の下で、他の過程が使用されてもよい。キャッチャー面材料層126は、第1フォトリソグラフィー・マスクを使用してマスキングされ、層がエッチングされ、図10(B)に示されるように、そのキャッチャー面において孔102を生成する。次に、図10(C)において、強化構造部材料層116の第2の側128が第2フォトリソグラフィー・マスクを使用してマスキングされ、その強化構造部材料層116の裏側(又は第2の側)128において開口部132を生成するようにエッチングされる。これらの開口部132は、強化構造の流体チャンネル110の位置を定める。次に、図10(D)において、追加のフォトリソグラフィー・マスクが、その強化構造部材料層116の第2の側128をマスキングするために使用され、その強化構造部材料層116の第2の側128は、液体返還マニホールド130を形成するように再びエッチングされる。この最後のエッチング過程は、さらに、強化構造部(現時点では流体チャンネル110)における開口部とキャッチャー面の孔102とを流体で接続する。
【0048】
さらに、図11(A)-11(E)に示される実例実施形態など、当該方法のいくつかの実施形態において、キャッチャー面材料層は、最初にエッチングされ、強化構造部材料層のエッチングに使用するためのマスクを形成する。この方法が使用されるとき、図11(A)に示されるようにキャッチャー面材料層126は、蒸着又はラミネート法によって強化構造部材料層108に加えられる。その強化構造部材料層は、薄い可撓性材料層であり、過度な流れ抵抗を加えずに強化した機械的強度を備える。可撓性材料の例に、タンタルなどの金属又はポリイミド又はSU-8などのポリマーがある。図11(B)において、第1フォトリソグラフィー・マスクが塗布され、キャッチャー面材料層126がエッチングされ、そのキャッチャー面において孔102を生成する。その第1エッチング過程が完了すると、エッチングされたキャッチャー面材料層は、強化構造部材料層108の中を通る流体チャンネルを、異方性エッチング過程、図11(C)、又は等方性エッチング過程(非表示)を使用してエッチングするための第2エッチング過程の間に使用するためのマスクを形成する。異方性エッチング過程が使用されるとき、その流体チャンネルは、キャッチャー面層における孔と実質的に同じである均一の断面を有する。等方性エッチング過程が使用されるとき、それらの層の材料特性の違いは、キャッチャー面材料層における開口部(孔)より大きい強化構造部材料層(流体チャンネル)における開口部をもたらす。等方性エッチングの特性により、その流体チャンネルの断面積は、強化構造部材料層の厚さを通して変動する。また、その強化構造部材料層の厚さよりも小さい流体チャンネル断面積は、単一の等方性エッチング過程を使用して生成することができない。その代わりに、異方性エッチング過程の後に等方性エッチング過程が続く2段階エッチング過程が、その強化構造部材料層108をエッチングするために使用することができる。図11(D)において、異方性エッチング過程が、強化構造部材料層108をエッチングするために使用される。次に、図11(E)において、等方性エッチング過程が、強化構造部材料層108をエッチングした流体チャンネルの断面積を増やすために使用される。その強化構造部材料層の厚さを通る流体チャンネルの断面積は、単一等方性エッチング過程よりも2段階エッチング過程において均一である。さらに、高いアスペクト比の流体チャンネル(断面幅が強化構造部材料層の厚さよりも小さい)が、その2段階エッチング過程を使用して生成することができる。
【0049】
当該方法のいくつかの実施形態において、エッチング停止がエッチング過程のより高い精度に対して使用される。そのエッチング停止は、他の材料層をエッチングするために使用されるエッチング過程によってエッチングされない材料である。例えば、DRIE過程を使用してシリコンをエッチングするとき、二酸化シリコン又は窒化シリコンを、エッチング停止として使用することができる。そのようなエッチング停止材料は、次に、シリコンを攻撃しないエッチング過程を使用することによって除去することができる。エッチング停止が使用されるとき、エッチングの深さは、時間のみよりもむしろエッチング停止の位置又は深さによって制御される。
【0050】
図12(A)-(D)に示される実例実施形態において、強化構造部材料層116は、エッチング停止層134の第1表面に直接的に接触をしている。そのエッチング停止層134の第2表面は、図12(A)に示されるように、キャッチャー面材料層126に直接的な接触をしている。従って、エッチング停止が無いと、層の変化する厚さがエッチングされることから、エッチングが変動し得る場所において、そのエッチング停止は、その層が均一の深さにエッチングされることを確認する。図12(B)を参照すると、その強化構造部材料層116は、フォトリソグラフィー・マスクを使用してマスキングされ、次に、エッチング停止134にエッチングされる。その強化構造部材料層116においてエッチングされた開口部は、流体チャンネル110に対応する。同様に、図12(C)に示されるように、そのキャッチャー面材料層126は、フォトリソグラフィー・マスクを使用してマスキングされ、次に、エッチング停止134にエッチングされる。キャッチャー面材料層126においてエッチングされた開口部は、そのキャッチャー面における孔102に対応する。最後に、図12(D)に示されるように、そのフォトリソグラフィー・マスクは、キャッチャー面材料層126及び強化構造材料層116の表面から除去され、エッチング停止134は、そのキャッチャー面と強化構造部(流体チャンネル)110の開口部とを流体で接続するために除去される。そのエッチング停止層の除去に必要な特定の過程は、エッチング停止として選択される特定の材料に依存し、それは、当業者に明らかであろう。
【0051】
しかし、エッチング停止層の位置は、キャッチャー面材料層と強化構造部材料層との間に限定されない。例えば、図13(A)-(F)に示されるように、そのエッチング停止層134は、強化構造部材料層116と基板136との間に位置することができる。その基板は、例えば、シリコンであってよいが、他の材料も検討される特定の応用によって使用することができる。そのエッチング停止層134が強化構造部材料層116と基板136との間に位置しているとき、その強化構造部における開口部(流体チャンネル110となる)は、フォトリソグラフィー・マスクを使用して強化構造部材料層116をマスキングし、エッチング停止134をエッチングすることによって生成される。これは、1つのステップ(非表示)において実行することができ、又は図13(A)に示される実例実施形態に示されるように、第1フォトリソグラフィー・マスクを塗布し、強化構造部材料層116を特定の期間エッチングし、そのエッチング停止層134に到達する前に停止することでその強化構造部材料層116に開口部120を生成することによってなし遂げることができる。次に、図13(B)に示されるように、もう1つのフォトリソグラフィー・マスクが使用され、強化構造部材料層116がエッチング停止層134にエッチングされる。この2段階エッチング過程は、開口部120(後に流体チャンネル110)を生成し、その開口部120(又は流体チャンネル110)は、その長さを通して変化する断面積を持つ。強化構造部材料層116の開口部120は、次に、犠牲材料層124で充填される。ひき続き、化学的機械的研磨(CMP)などの平坦化過程が、その犠牲材料層124の過度な厚さを除去するために使用され、図13(C)に示されるように、強化構造部材料層116の第1の側と同じレベルにする。開口部120が充填されると、キャッチャー面材料層126が、次に蒸着又はラミネート過程によって供給される。検討される特定の応用によって、それらの層を適切に結合させるという条件の下で、他の過程を使用することもできる。他の実施形態に従って上記に記載されたように、キャッチャー面材料層126は、フォトリソグラフィー・マスクを使用してマスキングされ、その層は、キャッチャー面(図13(D)に示されるように)における孔102を生成するようにエッチングされる。さらに、基板136が、例えば、図13(E)に示されるように液体除去マニホールド130を形成するようにマスキングされ、エッチングされる。しかし、その液体返還マニホールド130は、その強化構造部に付着している間にエッチングする必要はない。例えば、その液体返還マニホールドは、エッチングがすでに形成された後に強化構造部/キャッチャー面アセンブリに付着することができる。
【0052】
図14(A)-(D)に示される実例実施形態において、その強化構造部材料層116は、キャッチャー面材料層126に直接的に接触している。図14(A)に示されるように、強化構造部材料層116が供給される。その強化構造部材料層116の例はシリコンである。図14(B)に示されるように、強化構造材料層116が、フォトリソグラフィー・マスクを使用してマスキングされ、次にそれがエッチングされる。シリコン強化構造部材料層116に対して、DRIEエッチング過程を、ウエハー開口部を通して高いアスペクト比を生成するために使用することができる。強化構造部材料層116においてエッチングされた開口部は、流体チャンネル110に対応する。図14(C)を参照すると、ポリイミドなどの薄いドライ膜材料又はドライ感光性高分子材料が、ラミネートされ、強化構造部材料層116に接着される。最後に、図14(D)に示されるように、そのフォトリソグラフィー・マスクは、キャッチャー面材料層126におけるキャッチャー面の孔102をエッチングするために塗布される。その最後のエッチングは、キャッチャー面の孔102と強化構造部(流体チャンネル)110の開口部とを流体で接続する。
【0053】
図15(A)-(E)は、液滴接触構造部の孔の実例配置を示す。図15(A)において、それらの孔は、液滴の方向に実質的に平行に延びる長いスロットである。図15(B)において、それらの孔は、液滴の方向に実質的に垂直な方向に延びる長いスロットである。図15(C)において、それらの孔は、正方形又は四角形の形を有する。図15(D)において、それらの孔は、長円形である。図15(E)において、それらの孔は、正方形パターンに配置された円形である。図15(F)において、それらの孔は、六角形パターンに配置された円形である。他の孔の形状又はパターンが可能である。
【0054】
以下の図12(A)から12(D)に示される製造段階に対応する例は、本発明の製造方法の実例実施形態を提供し、本発明の可能な実施形態の全ては含まない。
【0055】
シリコン・オン・インシュレータ(「SOI」)ウエハーは、以下の構成を有して選択された:厚さが25μmのシリコン層(「キャッチャー面材料層」)、厚さが1μmの二酸化シリコン層(「エッチング停止材料層」)、及び厚さが350μmの第2シリコン層(「強化構造部材料層」)である。そのSOIウエハーは、2μmの二酸化シリコンの層をキャッチャー面材料層及び強化構造部材料層の各々に生成するように酸化された。
【0056】
そのウエハーは、強化構造部材料層に対するエッチング・パターンを定めるために、フォトリソグラフィーによってパターンが形成された。RIEは、強化構造材料層に対してエッチング・マスクを形成するようにその強化構造部材料層において二酸化シリコンをエッチングするために使用された。DRIEは、次に、強化構造部材料層をエッチングするために使用された。そのエッチングは、エッチング停止材料層に到達したときに停止された。この段階は、強化構造部材料層において流体チャンネルを生成する。
【0057】
ウエハーは、また、キャッチャー面材料層に対するエッチング・パターンを定めるためにフォトリソグラフィーによってパターンが形成された。反応性イオン・エッチング(「RIE」)が、そのキャッチャー面材料層において二酸化シリコンをエッチングするために使用され、そのキャッチャー面材料層に対するエッチング・マスクを形成した。深い反応性イオン・エッチング(「DRIE」)が、次に、そのキャッチャー面材料層をエッチングするために使用された。そのエッチングは、エッチング停止材料層に到達したときに停止された。この段階は、キャッチャー面材料層において約3μmから約5μmまでの孔サイズを有する孔を生成する。
【0058】
RIEは、露出された二酸化シリコンをエッチングするために使用された。そのRIEは、キャッチャー面材料層における孔を、強化構造材料層における流体チャンネルに機械的に結合させるためのエッチング停止材料層における材料を除去する材料除去過程である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴接触構造部を含むキャッチャーであり、該液滴接触構造部は、複数の孔を含み、該複数の孔の各々は、互いに比べて実質的に均一のサイズを有し、該複数の孔は、臨界圧点を有し、該臨界圧点の上では、空気が液体を該複数の孔から出すことができる、キャッチャー;及び
前記液滴接触構造部の複数の孔と流体でつながっている負圧源であり、負圧が、前記液滴接触構造部の複数の孔の臨界圧点の下に留まるように、該負圧を制御するための圧力調整器を含む負圧源;
を含むプリントヘッド。
【請求項2】
前記キャッチャーは、前記液滴接触構造部の複数の孔とはっきりと物理的に異なる液体返還ダクトをさらに含む、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項3】
前記キャッチャーは、前記液体返還ダクトと流体でつながっている負圧源をさらに含む、請求項2に記載のプリントヘッド。
【請求項4】
前記液滴接触構造部に接触している強化構造部であり、該強化構造部は、複数の流体チャンネルを含み、該流体チャンネルを通って前記複数の孔からの液体が除去され得る、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項5】
前記強化構造部の複数の流体チャンネルは、前記液滴接触構造部の複数の孔に比較してより低い流体抵抗を有する開口部を含む、請求項4に記載のプリントヘッド。
【請求項6】
前記強化構造部は、第1の壁厚さを有する第1層及び第2の壁厚さを有する第2層を含み、前記第1の壁厚さは、前記第2の壁厚さとは異なる、請求項4に記載のプリントヘッド。
【請求項7】
前記強化構造部は、前記液滴接触構造部の第1の側に位置する第1強化構造部であり、前記キャッチャーは:
前記液滴接触構造部の第2の側に位置する第2強化構造部をさらに含む、請求項4に記載のプリントヘッド。
【請求項8】
前記複数の孔は、2次元パターンにおいて配置されている、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項9】
前記複数の孔を含む前記液滴接触構造部の部分は、親水性材料で作成されている、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項10】
前記キャッチャーの面に位置している前記液滴接触構造部は、非多孔質区分も含む、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項11】
液体を前記複数の孔に供給するように前記液滴接触構造部と流体でつながっている液体源をさらに含む、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項12】
前記負圧源によって供給される負圧は、前記液滴接触構造部の複数の孔の臨界圧点の下の実質的に一定した圧力レベルに維持される、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項13】
前記負圧源によって供給される負圧は、前記液滴接触構造部の複数の孔の臨界圧点の下の圧力範囲内において、時間と共に変化する、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項14】
印刷の方法であり:
液滴接触構造部を含むキャッチャーを供給する段階であり、該液滴接触構造部は、複数の孔を含み、該複数の孔の各々は、互いに比べて実質的に均一のサイズを有し、該複数の孔は、臨界圧点を有し、該臨界圧点の上では、空気が該複数の孔から液体を出すことができる、段階;
前記液滴接触構造部の複数の孔と流体でつながっている負圧源を供給する段階;
前記負圧が、前記液滴接触構造部の複数の孔の臨界圧点の下に留まるように、圧力調整器を使用して前記負圧を調節する段階;
ジェッティング・モジュールから液滴を放出する段階;及び
該ジェッティング・モジュールによって放出された液滴のいくつかが、前記液滴接触構造部に接触するようにする段階であり、該液滴は、前記液滴接触構造部に接触した後に前記複数の孔から空気を出す、段階;
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8(A)】
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【図8(B)】
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【図8(C)】
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【図8(D)】
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【図8(E)】
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【図8(F)】
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【図9(A)】
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【図9(B)】
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【図9(C)】
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【図9(D)】
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【図9(E)】
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【図9(F)】
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【図10(A)】
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【図10(B)】
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【図10(C)】
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【図10(D)】
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【図11(A)】
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【図11(B)】
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【図11(C)】
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【図11(D)】
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【図11(E)】
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【図12(A)】
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【図12(B)】
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【図12(C)】
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【図12(D)】
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【図13(A)】
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【図13(B)】
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【図13(C)】
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【図13(D)】
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【図13(E)】
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【図13(F)】
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【図14(A)】
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【図14(B)】
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【図14(C)】
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【図14(D)】
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【図15(A)】
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【図15(B)】
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【図15(C)】
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【図15(D)】
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【図15(E)】
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【図15(F)】
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【公表番号】特表2012−527365(P2012−527365A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511815(P2012−511815)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/001441
【国際公開番号】WO2010/134967
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】