説明

多孔質性光触媒付き積層シートおよびその製造方法

【課題】短時間の通水性を有し、シート表面に多孔を有するにもかかわらず軟質であり、シートとして取り扱い易く、かつ光触媒の分解性能を有するシートの提供。
【解決手段】樹脂シート上に、光触媒層と、プライマー層とを少なくとも有する積層シートの表面に孔を設ける。また、樹脂シート上に光触媒層と、プライマー層とを少なくとも有する積層シートの表面に、針またはピン状の突起を表面に有したロールを用いて孔を形成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用、食品包装用等してシートを単体で使用するシートに関し、また建築および土木用内外壁、床材、等に貼り付けて使用することも可能な多孔質性光触媒付きシートに関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒は、光の照射を受けると光触媒活性を発現して酸化作用を示し、有機物や空気汚染物質、更には細菌などを酸化分解し、抗菌作用、空気清浄化作用などを発揮する。また、その光反応に基づいて表面を高度に親水性化し、脱臭、防汚、抗菌、殺菌、有害物質除去、防曇作用などの様々な作用を発現する。そのため、光触媒技術は、建物外壁、病院内壁、鏡、窓ガラス、衛生陶器、包丁、まな板など様々な分野で利用されている。
【0003】
通水性を有するシートとしては、発泡樹脂を使用し多孔質体を形成することにより、シートに通水性を持たせる技術が開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、樹脂を発泡させずに多孔質シートを製造する方法としては、充填剤を充填した樹脂組成物を押出し機で熱溶融させてシート成形し、1軸延伸ないしは2軸延伸により充填剤と樹脂との界面剥離を起こさせる方法で作成した多孔性シートが開示されている(特許文献2)
【特許文献1】特開2005−263865号公報
【特許文献2】特開2006−274014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載のシートは、通水性を有するものの水通経過時間が長いという問題があった。また、多孔体が硬質であり、シートとしての取り扱いに向かないという問題があった。また、上記特許文献2記載のシートは、微孔を有するもの通水性を有しないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、樹脂シート上に、光触媒層と、プライマー層とを少なくとも有する積層シートが、積層シート表面に孔を有することを特徴とする多孔質性光触媒付き積層シートを提供する。さらに、前記多孔質性光触媒付き積層シートの孔数が、10,000〜1,000,000個/mであること、前記多孔質性光触媒付き積層シートの孔の直径が、1〜1000μmであること、前記多孔質性光触媒付き積層シートを、農業用シートに用いたことも含む。
また、樹脂シート上に、光触媒層と、プライマー層を少なくとも有するシートの表面に、針またはピン状の突起を表面に有したロールを用いて孔を形成し、多孔質性光触媒付き積層シートを製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光触媒層を有し、穿孔処理が行われていることにより、短時間で通水する。また、本発明によればシートが軟質であるために用途が広範囲である。光触媒層を有する為に分解性能も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、実施形態に基づいて本発明を説明する。但し、以下に説明する実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明の範囲が以下の実施形態に制限されるものではない。
【0009】
本発明の孔質性光触媒付き積層シートは、樹脂シート上に少なくとも、プライマー層、光触媒層を有する光触媒付き積層シートに、穿孔することにより作製することができる。本発明の多孔質性光触媒付き積層シートにおいて、用途によっては、不織布、織布、割布、メッシュ、ネット、フェルト、紙、布、発泡樹脂フィルム、シート、プレート、多孔質樹脂フィルム、シート、プレート層等をもうけてもよい。
以下本発明において、穿孔処理する積層シートについて説明する。
【0010】
<樹脂シート>
本発明の多孔質性光触媒付き積層シートで使用する樹脂シートは、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)その他の合成樹脂を主成分とするものが使用可能である。
なかでも加工性、光触媒層のコート適正等の点で好ましいのは、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物とポリカーボネートを主成分とする樹脂シートである。なお、本発明において主成分とは、樹脂シートの全成分の少なくとも50% 以上を占め、他の成分を含んでいてもよいという意を含んでいる。
【0011】
本発明の樹脂シートの80℃以上130℃以下でのJIS K 7198A法による動的粘弾性における貯蔵弾性率は、下限値が100MPa以上、好ましくは150MPa以上、さらに好ましくは200MPa以上であり、上限値は10000MPa以下である。
光触媒層を形成する際の乾燥温度は約80℃〜130℃程度であるから、80℃以上130℃以下での前記貯蔵弾性率が100MPa以上であれば乾燥時の伸びを抑制でき、光触媒粒子の割れを抑えることができ、一方、10000MPa以下であればシート割れという問題が発生しない。
【0012】
本発明の多孔質性光触媒付き積層シートに用いる樹脂シートの厚さの下限値は10μm以上、このましくは15μm以上、さらにこのましくは、20μm以上であり、上限値は 500 μm以下 、好ましくは400μm以下 、さらに好ましくは300μm以下である。 樹脂シートの厚さが10μm以上であれば取り扱い時に容易に破断するという問題が起きない。また樹脂シートの厚さが500μm以下であれば巻き取り時や加工時の不具合が起きない。尚、本発明においてシートとは、厚さに特に限定加える意味での言葉ではなくフィルム、膜等の厚さも包含する。
【0013】
樹脂シートの表面は、必要に応じて適宜表面処理を施してもよい。例えばコロナ処理、シリコーン、フッ素その他の離型剤による表面処理を施してもよい。また、耐候性、耐薬品性、耐汚染性、耐擦性等を改善する添加材を混合してもよい。
【0014】
<プライマー層>
本発明の多孔質性光触媒付き積層シートを構成するプライマー層は、無機酸化物粒子、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂の前駆体或いはシリカ前駆体など、或いはこれらを主成分とする組成物から構成することができる。中でも、アクリルシリコン樹脂、アクリル変性シリコン樹脂、アルコキシランのいずれか或いはこれらの2種類以上の組み合わせからなる成分を主成分とする組成物から構成するのが密着性という点から好ましい。
【0015】
前記プライマー層の厚さは、下限値は0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上であり、上限値は5μm、好ましくは3μm、さらに好ましくは1μmである。プライマー層の層厚が0.01μm以上であれば光触媒により基材が劣化するという問題が発生しなく、5μm以下であれば密着強度・表面硬度も好ましく被膜の剥がれを防止できる。という問題が発生しない。
【0016】
前記プライマー層を形成することにより、光触媒層との濡れ性を良くすることができるので、光触媒層を均一に塗布することができ、かつ塗布された光触媒層とプライマー層との層間強度も強くなる。また、光触媒層と樹脂シートの間にプライマー層を設けることによって光触媒の作用によって樹脂シートが侵食されるのを防ぐことができる。
【0017】
<光触媒層>
本発明の多孔質性光触媒付き積層シートの光触媒層の光触媒としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉛、酸化第二鉄、三酸化二ビスマス、三酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム等の金属酸化物が挙げることができる。中でも、二酸化チタンが、無害で化学的に安定しておりかつ安価であるため好ましい。
【0018】
二酸化チタンは、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ブルックライト型二酸化チタンのいずれも使用可能である。光触媒反応が高活性であるという観点より、アナターゼ型二酸化チタンを主成分とするものが好ましい。
【0019】
可視光型光触媒は、可視光領域の照射光で光触媒作用を発現するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、酸素欠陥型酸化チタン、色素増感型酸化チタン、金属担持型酸化チタン、窒素をドーピングした光触媒酸化チタン、ブルッカイト型の結晶構造を持つ光触媒酸化チタン等を用いることができる。
【0020】
光触媒粒子の粒径は、特に限定するものではないが、動的散乱測定法による平均粒径の下限値は1nm以上、好ましくは3nm以上、さらに好ましくは5nm以上であり、上限値は500nm以下 、好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。
光触媒の平均粒径が1nm以上であれば、光触媒の性能が十分に発揮される。また、平均粒径が500nm以内であれば透明性を保持しつつ、光触媒の脱落を抑止することができる。
【0021】
前記した、光触媒粒子の粒径は、光触媒粒子の一次粒子のことを指す。すなわち、一次粒子とは、一一次粒子が凝集して作られる凝集粒子を構成する最小の単位のことである。
【0022】
本発明において、光触媒層には、光触媒の活性を向上させる為に、Fe 、Co 、Ni 、Cu 、Zn 、Ru 、Rh 、Pd 、Ag 、Pt 、Au 等を付加していてもよい。
【0023】
光触媒層は、光触媒粒子を含むコート液(以下光触媒コート液という)をプライマー層上に塗布して乾燥させて形成するコーティングする方法により成形することができる。コーティングする方法としては、グラビアコート、スプレーコート、ディップコート等、各種の塗布方法を選択することができる。中でもグラビアロールコーターを用いた、グラビアコート法を用いることが生産性の点で好ましい。
【0024】
光触媒層の厚さの範囲は、下限値がコート液を塗布した後に乾燥させた層の厚さで0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上であり、上限値は、2μm以下、好ましくは1.8μm、さらに好ましくは1.5μm以下であることが好ましい。光触媒層の厚さが、0.1μm以上であれば光触媒反応の活性が高程度で維持することができ、2μm以下であれば密着強度・表面硬度も好ましく光触媒層の剥がれを防止できる。
【0025】
光触媒コート液は、有機溶媒及び水を含む溶媒と光触媒粒子とを混合して調製したものを用いることができる。さらに、有機溶媒及び水を含む溶媒にシランカップリング剤等の無機バインダーを含ませ、光触媒粒子と混合することがより好ましい。無機バインダーを光触媒コート液に含ませることにより、光触媒粒子の脱落を防止することが可能だからである。
【0026】
光触媒コート液で使用する有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の一価低級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、及びそれらのエステルであるセルソルブ、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、イソブタノール、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等を好適に使用できる。中でも一価低級アルコール、のイソプロピルアルコール及びエタノールを用いるのが容易に乾燥できる点で好ましい。
【0027】
光触媒コート液で使用する水は特に制限なく使用することが可能であるが、不純物を除くという観点を考慮すると純水を使用することが好ましい。
【0028】
無機バインダーとしては、シリカ化合物を用いるのが好ましく、そのシリカ化合物としては、4 、3 、2 官能のアルコキシシラン、およびこれらアルコキシシラン類の縮合物、加水分解物、シリコーンワニス等が使用できる。3 、2 官能のアルコキシシランは、一般的にはシランカップリング剤と呼ばれることも多いが、本発明ではシリコン1つ以上のアルコキシ基が結合している化合物をアルコキシシランと称する。
【0029】
具体的に例示すると4官能アルコキシシランとしてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、3官能のアルコキシシランとしてはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドプロポキシトリメトキシシラン、グリシロプロピルメチルジエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2官能のアルコキシシランとしてはジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどが挙げられる。
縮合物としては、エチルシリケート4 0 、エチルシリケート4 8 、メチルシリケート51 等の4 官能アルコキシシランの縮合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0030】
加水分解物としては、アルコキシシラン類を有機溶媒と水及び触媒を使用して加水分解させたものが使用できる。これらのシリカ化合物の内、特にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、エチルシリケート4 0 、エチルシリケート4 8 、メチルシリケート51 及びそれらの加水分解生成物であるアルコール性シリカゾルは膜を強固に固定でき、かつ比較的安価であることから特に好適である。かかるアルコール性シリカゾルの製造方法は、特に限定されることはなく、光触媒コート液内でアルコキシシランの加水分解反応を行ってもよいし、アルコキシシランを加水分解又は部分加水分解し、既にアルコール性シリカゾルとなったものを光触媒コート液に添加してもよい。
【0031】
無機バインダーの混合に際しては、有機溶媒と水と光触媒と無機バインダーの分散液を混和、安定化させるために溶媒を用いるのが好ましい。
【0032】
前記分散液を混和、安定化させるための溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの一価低級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール類及びそれらのエステルであるセルソルブなどが利用できる。なお、無機バインダーは、光触媒コート液に予め混合して貯蔵しておいてもよいが、無機バインダー成分が通常の保存方法で劣化する場合は、使用直前に光触媒コート液と混合し使用することもできる。
【0033】
光触媒コート液を調製する際、光触媒の状態は特に制限されるものではなく、粉末状態で混合することも可能であるし、スラリー状態、ゾル状態に調製して混合することも可能である。光触媒コート液内で、光触媒を分散させる観点および光触媒の沈降を防ぐという観点より、スラリー状態やゾルの状態に調製して添加・混合するのが好ましい。必要な光触媒性能、液安定性等が満たされていれば市販の光触媒スラリーや光触媒ゾルを利用してもよい。
【0034】
また、粒子の凝集による粒子径の変化および沈降を防ぐために分散安定剤を共存させるのが好ましい。これらの分散安定剤は、粒子の調製時から共存させることもできるし、光触媒コート液を調製する際に添加してもよい。
【0035】
分散安定剤としては特に制限なく各種使用できるが、二酸化チタンは中性付近で凝集しやすいので、酸性又はアルカリ性の分散安定剤が好ましく使用される。酸性の分散安定剤としては硝酸、塩酸等の鉱酸、カルボン酸、オキシカルボン酸、ポリカルボン酸などの有機酸などが挙げられる。アルカリ性の分散安定剤としてはカルボン酸、ポリカルボン酸類のアルカリ金属塩やアンモニア、1 〜 4 級のアミン類及びそれらにヒドロキシ基を付加したアルカノールアミン類から選ばれた一種類以上の化合物が好例として挙げられる。特に、有機酸を利用すると、後述する有機溶媒との混和性が良好である上に、p Hが極端に低くならずかつ製造時に使用する設備を腐食しにくいので好ましい。
【0036】
有機酸としては酢酸、シュウ酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸などが好ましく利用でき、これらの中から選ばれた一種類以上の酸で分散安定化させることができる。
【0037】
光触媒粒子を含むコート液の組成に関しては、光触媒粒子の固形分濃度で下限値が0 . 2質量%以上、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、上限値は2 0質量%以下 、さらに好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下であることが必要である。
光触媒粒子の固形分濃度が0.2%以上であれば塗布後の光触媒の効果が大きく、汚れ防止といった効果を充分に発揮し、20%を超えなければ外観が白くなったり、透明でなくなったりすることがなく、また温度を高くしても光触媒が脱落しなく粘度が高くなり過ぎることもない。
【0038】
無機バインダー含有量の範囲は、下限値は0 . 0 5質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、上限値は5質量%以下、好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。 バインダーの含有量が、0.05質量%以上であると、光触媒が脱落するという問題が発生しなく、5質量%以下であると、光触媒コート液の安定性が阻害されたり、光触媒の表面を覆ってしまい触媒効果を大幅に低下させたりするという問題が発生しない。
【0039】
なお、前記有機溶媒及び水の量は光触媒コート液全体に対して5〜9 0質量%で調整可能である。光触媒コート液の粘度を上げるために、更に水溶性高分子などの増粘剤等を添加してもよい。増粘剤としては多糖類やポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドなどが例示できる。
【0040】
<穿孔>
本発明の多孔質性光触媒付き積層シートには、通水性を付与するために特定範囲の孔を設けて多孔質性とすることが必要である。前記、孔の直径の下限値は1μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、上限値は1000μm以下、好ましくは800μm以下、さらに好ましくは500μm以下である。孔の直径が1μm以上では、通水性が劣るという問題が発生せず、また穿孔し易く、壁紙や天井材に張り合わせた際に孔がふさがってしまうという問題点も発生しない。一方、孔が1000μm以下であればシート強度が低下するという問題が発生しない。
【0041】
ここで、本発明において通水性とは、本発明のシート表面に水をたらし、水が本発明のシートにある孔を通り、シートを通り抜けることをいう。また、本発明において、孔とは積層シートを貫通しているものをいう。
【0042】
本発明において、孔はシート表面の垂線とほぼ平行に穿孔されている。すなわち、シートの両面にそれぞれある、1つの貫通した孔の口の位置が、ほぼずれが無いよう穿孔されている。
【0043】
本発明において孔数の下限値は、10,000個/m以上、好ましくは30,000個/m以上、さらに好ましくは50,000個/m以上であり、上限値は1,000,000個/m以下、好ましくは800,000個/m以下、さらに好ましくは500,000個/m以下である。孔数が10,000個/m以上であれば通水性、1,000,000個/mを超えない範囲であれば、比較的穿孔が行い易く、シート強度が低下するという問題も発生しない。
【0044】
本発明において、穿孔する方法としては、特に限定されるものではなく一般に使用される機械による穿孔、レーザーイオンビームを照射する方法により穿孔可能である。本発明の孔の直径、および孔数を考慮すると、穿孔機または開孔機により穿孔することが生産効率および孔の直径および孔数の再現性において好ましい。
【0045】
<他の層>
本発明の多孔質性光触媒付きシートには、前記した、樹脂シート、プライマー層、光触媒層の他にさらに他の層を設けることが出来る。この場合、本件発明の通水性効果を阻害しないために他の層には、同様に穿孔をして多孔質性としてもよいし、本件発明の通水性の効果が他の層により阻害されない場合には、多孔質性としなくともよい。
例えば、本発明の多孔質性光触媒付きシートに帯電防止機能を付与するべく酸化錫を主成分とする層を設けたり、接着層、印刷層を設けたりしてもよい。
【0046】
本発明の多孔質性光触媒付き積層シートは、様々な用途に用いることが可能である。例えば、農業用、食品包装用、建築および土木用等に用いることが可能である。中でも、本発明の多孔質性光触媒付き積層シートは通水性が良いために農業用に好適に用いることが可能である。
【0047】
<多孔質性光触媒付きシートの製造方法>
本発明の多孔質性光触媒付き積層シートの樹脂シートを製造する方法は、特に限定されるものではなく、樹脂シートを製造する様々の方法を採用することが可能である。例えば、熱溶融し押出し機から所望の層厚に押し出し層を製造する方法や、コーティングにより層を製造する方法等である。樹脂シートの厚さが比較的厚いものに関しては、押出し機により樹脂シートを製造することが好ましい。一方、樹脂シートが比較的薄いものに関しては、コーティングにより樹脂シートを製造する方法が好ましい。
【0048】
本発明の多孔質性光触媒付き積層シートのプライマー層を塗布する方法は、特に限定されるものでなく、例えば、グラビアコート、スプレーコート、デイップコート等の各種塗布方法を採用することが可能である。生産性の観点より、グラビアコートの塗布方法が好ましい。
【0049】
本発明の多孔質性光触媒付き積層シートの光触媒層を塗布する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、グラビアコート、スプレーコート、ディップコート等、各種の塗布方法により塗布することは可能である。生産性の観点より、グラビアコートを用いるのが好ましい。光触媒コート液の塗布は、一回のみならず、複数回行ってもよい。塗布を複数回行うことにより、所望の光触媒層の厚さを実現することが可能である。
【0050】
コート液を塗布した後加熱乾燥させるのが好ましい。この際の加熱乾燥させる、加熱温度の下限値は60℃以上、好ましくは70℃以上さらに好ましくは80℃以上であることが好ましく、上限値は150℃以下、好ましくは140℃以下、さらに好ましくは135℃以下である。加熱乾燥させる場合の温度が80℃以上であれば乾燥不十分という問題が発生しなく、140℃以下であればシートの収縮、破断という問題という問題が発生しない。
【0051】
本発明の多孔質性光触媒付き積層シートは、樹脂を熱溶融押出し、樹脂シートを成形した後に、プライマー層、光触媒層を順に成形し、シートに穿孔処理を行い製造することも可能であるし、また樹脂シート、プライマー層を成形した後に穿孔孔処理を行ってその後に光触媒層を成形して製造することも可能である。光触媒層を形成した後に穿孔処理を行う方が、孔が光触媒層を形成時に、光触媒コート液によりふさがれる心配がない点で好ましい。
【0052】
本発明の多孔質性光触媒付き積層シートを加熱乾燥させる場合の、秒乾燥時間の下限値は20秒以上、好ましくは25秒以上、さらに好ましくは30秒以上であり、上限値は180秒以下、このましくは150秒以下、さらに好ましくは120秒以下である。加熱乾燥時間が、20秒以上であれば乾燥が不十分という問題が発生せず、乾燥時間が180秒以下であれば熱によって樹脂シートに延びや皺が発生しない。
【実施例】
【0053】
以下に本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限され
るものではない。なお、特に断らない限り%は質量%を示す。
【0054】
< 実施例1 >
(イ)樹脂シートを成形し、樹脂シートの表面にプライマー層を施す工程
住友ダウ(株)製ポリカーボネート樹脂「カリバー303」を短軸押出機にて280℃でTダイを用いて12μmの厚さに樹脂シートを形成し、その樹脂シートの表面に、多木化学(株)製シリコン含有アクリル樹脂塗料「プライマーA」の下地層をグラビアロールコーターで形成した。ロールスピードは50m/分、塗布量は1g/m2、乾燥温度は130℃とした。
【0055】
(ロ) 前記プライマー層に光触媒膜を形成する工程
次いで、プライマー層の上に、粒径100〜300nmのアナターゼ型二酸化チタン8質量部と、テトラエトキシシラン2質量部と、水40質量部と、エタノール50質量部とからなる光触媒コート液をグラビアロールコーターでコートし、乾燥させた。ロールスピードは50m/分、塗布量は1g/m2、乾燥温度は130℃とした。これにより、プライマー層、光触媒層、を有する光触媒付き積層シートを得た。
【0056】
(ハ) 前記光触媒付きシートに穿孔する工程
前記光触媒付きシートを用いて、針またはピン状の突起を表面に有したロールを用いて孔を形成し、より直径150μmの孔を500,000個/m2 の孔数で形成した。
< 実施例2>
孔径を250μm、孔数を250,000個/m2に変えた以外は実施例1と同様にシートを作製した。
< 実施例3 >
孔径を350μm、孔数を55,000個/m2変えた以外は実施例1と同様にシートを作製した。
< 実施例4>
樹脂シートをエバールシート(クラレ製 HF−M)にし、孔径を200μm、孔数を500,000個/m2変えた以外は実施例1と同様にシートを作製した。
< 実施例5>
樹脂シートをエバールシート(クラレ製 HF−M)にし、孔径を500μm、孔数を250,000個/m2変えた以外は実施例1と同様にシートを作製した。
<比較例1 >
実施例1においてプライマー層、光触媒層をコートしなかった以外は、実施例1と同様に通水性シートを作製した。
<比較例2 >
実施例2においてプライマー層、光触媒層をコートしなかった以外は、実施例2と同様に通水性シートを作製した。
<評価>
<アセトアルデヒドガス分解性能評価>
10cm×25cmの実施例1〜5の多孔質性光触媒付きシート、及び比較例の多孔質性シートのサンプルを1mWの紫外光で24時間事前照射した後、10Lのテドラーバッグに入れた。このテドラーバッグに濃度200ppmのアセトアルデヒドガスを5L封入し、暗所にて24時間吸着処理を行った。その後、白色蛍光灯下6000Lxの位置にテドラーバッグを置き、ガスクロマトグラフィーにて1時間ごとにアセトアルデヒドの濃度を測定した。
実施例1〜5の多孔質性光触媒付きシートは、光触媒層の分解性能により、24時間以内にアセトアルデヒドを分解した。比較例1〜2の多孔質性シートは、光触媒層がない為に24時間後もアセトアルデヒドが残存していた。尚、以下に示す表1においては、アセトアルデヒドを分解したものは○、分解しなかったものに関しては×とした。
<通水性評価>
各シートを1辺11cmの正方形に切り取り、その裏に直径11cmの濾紙を敷き、純水1.0gを滴下した。滴下後3分間放置し、前記濾紙に純水が染みているかを評価した。
実施例1〜5の多孔質性光触媒付きシートは、通水し、裏の濾紙に水がしみ込んだが、比較例1〜2の多孔質性シートは、光触媒層がない為に、純水がシートに馴染まず、前記濾紙まで通水しなかった。尚、以下に示す表1においては、通水したものを○、通水しなかたものを×とした。
【0057】
【表1】

【0058】
表1より、本発明の実施例1〜5においては、光触媒層を有しており、孔を有するために通水しかつアセトアルデヒド分解性能も有するシートを得られた。また、表1により比較例1および2では、孔を有するものの光触媒層がない為に通水しなく、アセトアルデヒドも分解することがなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シート上に、光触媒層と、プライマー層とを少なくとも有する積層シートが、積層シート表面に孔を有することを特徴とする多孔質性光触媒付き積層シート。
【請求項2】
前記多孔質性光触媒付き積層シートの孔数が、10,000〜1,000,000個/mであることを特徴とする請求項1記載の多孔質性光触媒付き積層シート。
【請求項3】
前記多孔質性光触媒付き積層シートの孔の直径が、1〜1,000μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質性光触媒付き積層シート。
【請求項4】
農業用シートに用いられる請求項1〜3に記載の多孔質性光触媒付き積層シート。
【請求項5】
樹脂シート上に、光触媒層と、プライマー層とを少なくとも有する積層シートの表面に、針またはピン状の突起を表面に有したロールを用いて孔を形成し、多孔質性光触媒付き積層シートを製造する方法。

【公開番号】特開2008−254192(P2008−254192A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95458(P2007−95458)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】