説明

多層コーティング、その形成およびガラスシートを接着するための該多層コーティングの使用

A)(A1)少なくとも1つのメラミン樹脂を含有する下塗り塗料からなる少なくとも1つの下塗り塗膜および(A2)マルチコート塗装系の最も上方の層としての少なくとも1つのクリヤラッカー塗膜を含むマルチコート塗装系、および(B)マルチコート塗装系の最も上方のクリヤラッカー層の直ぐ上の湿分硬化性のイソシアネートベースの接着剤からなる接着剤層を含む多層コーティングであって、この場合(i)下塗り塗料中に含有された全てのアミノプラスト樹脂は、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような、完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂であり、および(ii)下塗り塗料が、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有する、多層コーティング、ならびに相応する下塗り塗料および多層コーティングの形成方法およびガラスシートを接着させるための多層コーティングの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、多層コーティング、その形成およびガラスシート、殊にウィンドシールド、殊に自動車分野におけるウィンドシールドを接着するための該多層コーティングの使用、ならびにマルチコート塗装系を形成させるための下塗り塗料に関する。
【0002】
技術水準
下塗り塗料およびクリヤラッカーからなるマルチコート塗装系は、自動車産業において幅広く拡大されている。このマルチコート塗装系は、その優れた特性プロフィール、例えば耐引掻性、耐化学薬品性および耐候性ならびに高い光沢のために使用されている。
【0003】
久しく公知の溶剤含有塗料、殊にいわゆる下塗り塗料およびクリヤラッカー、およびこれらで形成された単層または多層の色を付与する、および/または効果を付与するコーティングは、極めて良好な使用技術的性質を有する。
【0004】
しかし、絶えず成長する、市場の技術的および審美的な要求、殊に自動車製造業者およびその顧客の要求は、これまでに達成された技術的および審美的な水準の不断のさらなる開発を必要とする。
【0005】
殊に、例えばウィンドシールドを接着するために、マルチコート塗装系に対するマルチコート塗装系上に施された接着剤の接着力を改善することを可能にする新規の塗料が提供されなければならない。しかし、この場合には、公知の下塗り塗料およびクリヤラッカー、およびこれらから形成されるマルチコート塗装系によって達成される利点は、失われずに、少なくとも均一の、特に強い特性が維持されたままであることにある。
【0006】
ウィンドシールドは、通常、イソシアネート基含有ポリマーをベースとする湿潤硬化性接着剤を用いてマルチコート塗装系で被覆された車体に接着される。自動車安全基準(MVSS)は、前記接着剤がウィンドシールドおよびマルチコート塗装系に対して完全な接着力を有することを要求している。カルバメートおよびメラミンをベースとするマルチコート塗装系が板ガラス接着付着力に関連して明らかに脆弱性を示すことは、当業者に公知である。従って、自動車産業においては、接着剤が塗布される前に、殆どの場合に依然として常にプライマーがマルチコート塗装系に適用されています。このような付加的なプライマーをマルチコート塗装系と接着剤との間に使用することによって、付加的な材料および時間の要求に基づく多大な付加的費用が生じる。
【0007】
接着剤は、マルチコート塗装系上に直接施されてもよく、この場合プライマーは、中間層としてマルチコート塗装系と接着剤との間で使用されることはない(プライマーレス法)。プライマーレス法は、現在ますます自動車産業において使用されているが、しかし、例えば下塗り塗料およびクリヤラッカーの層厚の正確な制御ならびに焼付け時間および焼付け温度のような正確なプロセス監視が必要とされる。正確なプロセス監視によってのみ、接着剤がマルチコート塗装系に適度に付着することが保証されうる。殊に、低いクリヤラッカー層厚と組み合わせた、高すぎる下塗り塗料層厚の場合には、マルチコート塗装系の板ガラス接着材料の望ましくない層間剥離が生じうる。
【0008】
マルチコート塗装系に対する板ガラス接着付着力の最適化は、一般的にクリヤラッカー中での変性によって達成される。このための例は、次の特許刊行物に見出せる。
【0009】
WO 2008/021712A2には、硼酸または硼酸誘導体およびそのエステルをベースとする付着添加剤の使用が記載されている。カルバメート−メラミン−クリヤラッカー中での前記添加剤の使用は、板ガラス接着付着力の改善を生じる。
【0010】
米国特許第2003/232222号明細書A1には、同様にマルチコート塗装系の1つまたは2つの層中での硼酸または硼酸誘導体およびエステルをベースとする添加剤の使用が記載されており、こうして中間層付着力または板ガラス接着付着力が改善される。
【0011】
WO 2007/008635A1には、その官能基が高分子量結合剤または架橋剤と反応しないかまたは僅かしか反応しない添加剤を含有する、マルチコート塗装系、殊にクリヤラッカーが記載されている。この添加剤は、界面範囲内でコーティングの表面に沿って含量が増加されており、中間層付着力または板ガラス接着付着力の改善を生じる。適した添加剤として、(メタ)アクリレートエステルα−オレフィンベースのポリマーが記載されている。更に、添加剤の添加は、流展および湿潤に関連して利点を生じ、それによってクリヤラッカー中での湿潤剤および流展添加剤の省略が可能である。板ガラス接着付着力の改善のために、前記添加剤は、クリヤラッカー中で使用される。
【0012】
WO 2006/063304A1には、ヒドロキシル官能性エポキシポリマーをベースとする添加剤の使用が記載されている。この添加剤は、制限されてのみクリヤラッカー中の官能基を反応し、境界面範囲内でコーティングの表面に沿って含量が増加されており、それによって板ガラス接着付着力が改善される。
【0013】
WO 2003/050194A1には、第二ヒドロキシル官能価およびカルバメート官能価または尿素官能価を有するアクリレートポリマーおよびメラミンベースの架橋剤をベースとするクリヤラッカーが記載されている。板ガラス接着付着力を改善するために、特に結露水の負荷後に、マルチコート塗装系中のクリヤラッカーは、カルバメート官能価または尿素官能価を有する付加的な成分を含有する。前記成分は、
1)第1カルバメート基または第1尿素基ならびにヒドロキシル基を有する化合物を
2)1)からのヒドロキシル基を反応することができるが、しかし、1)からのカルバメート基または尿素基とは反応しない化合物と反応させることによって得ることができる。
【0014】
WO 2008/100548A1には、カルバメート官能性ポリマーおよびメラミン樹脂をベースとするクリヤラッカーが記載されている。板ガラス接着付着力を最適化するために、クリヤラッカー中ならびに下塗り塗料中には、ジブチル錫ジアセテートおよびブチル燐酸をベースとする付着助剤が使用される。
【0015】
WO 2005/105938A1には、OHポリエステルおよびポリイソシアネート架橋剤をベースとするクリヤラッカーが記載されている。低分子量のシラン含有成分は、クリヤラッカー中で使用され、特に板ガラス接着付着力が最適化される。
【0016】
WO 2005/033233A2には、カルバメート官能性ポリマーおよびメラミン樹脂をベースとするクリヤラッカーが記載されている。低分子量のシラン含有成分は、クリヤラッカー中で使用され、特に板ガラス接着付着力が最適化される。
【0017】
マルチコート塗装系中の下塗り塗料層が板ガラス接着付着力に影響を及ぼしうるとしても、板ガラス接着付着力の最適化を下塗り塗料の変性によって達成しようと努力される、以下に示されている若干の刊行物が存在する。
【0018】
WO 2005/046889A1には、マルチコート塗装系が記載されており、この場合クリヤラッカーは、シラン基を含有する。しかし、このようなシラン成分の好ましい作用は、下塗り塗料中での通常のアルキル−またはアリール−燐酸触媒を使用した際にしばしば著しく損なわれる。下塗り塗料中の強酸触媒を代替して使用することによって、シラン成分の作用がさらに損なわれることは少ないことが記載されている。この場合、エポキシ−イソシアネートによりブロック化された触媒の使用は、好ましく、それというのも、この使用は、アミンによりブロック化された触媒とは異なりより良好な外観を生じるからである。
【0019】
WO 2008/100548A1には、カルバメート官能性ポリマーおよびメラミン樹脂をベースとするクリヤラッカーが記載されている。板ガラス接着付着力を最適化するために、クリヤラッカー中ならびに下塗り塗料中には、ジブチル錫ジアセテートおよびブチル燐酸をベースとする付着助剤が使用される。
【0020】
マルチコート塗装系の下塗り塗料中には、通常、メラミン樹脂が架橋剤として高い割合で使用される。しかし、この場合、メラミン樹脂は、層移行性を示し、板ガラスの接着に使用される接着剤との望ましくない相互作用をまねく。これは、殊に湿分硬化性のイソシアネートベースの接着剤に当てはまり、この場合この接着剤は、優れた特性プロフィールに基づいて板ガラスの接着に使用される。この破断効果は、下塗り塗料中のメラミン樹脂含量を明らかに低下させることによって減少させることができる。勿論、この種の調製物は、劣化された外観ならびに明らかに減少された固体含量を有する。
【0021】
マルチコート塗装系が、相対的に厚手の下塗り塗料層が相対的に薄手のクリヤラッカー層によって被覆される場所を有する場合には、板ガラスの接着に使用される接着剤との望ましくない相互作用は、殊に強化されて生じる。しかし、製造プロセスにおける変法のために、まさにウィンドシールドの範囲内でこのような場所を避けることは、困難であり、それというのも、塗装ラインの構成および自動車の設計のために、ウィンドシールドの特定の範囲内での正確な層厚を設定することは、極めて困難であるからである。
【0022】
従って、高い下塗り塗料層および/または低いクリヤラッカー層の場合にも付加的な付着プライマーの存在なしに板ガラス接着付着力に関連する明らかな改善を示し、およびその際にさらに不変のまま良好な加工特性、適用特性および殊に技術的特性を有するマルチコート塗装系を開発するという要件が存在した。
【0023】
課題
従って、本発明は、1つの接着剤層と少なくとも1つのメラミン樹脂含有下塗り塗料および少なくとも1つのクリヤラッカーを有するマルチコート塗装系とからなる多層コーティングを提供し、この場合付加的な付着プライマーの存在なしに改善された板ガラス接着付着力を示すという課題に基づくものであった。殊に、結露水の負荷後に板ガラス接着付着力も改善されるはずである。殊に、多層コーティングは、高い下塗り塗料層厚および/または低いクリヤラッカー層厚の場合も付加的な付着プライマーを必要とすることなく、良好な板ガラス接着付着力を有するはずである。
【0024】
更に、本発明の課題は、このような多層コーティングの形成に適した、メラミン樹脂含有の下塗り塗料を提供することであった。
【0025】
しかし、準備すべき多層コーティングを用いた場合には、公知の下塗り塗料およびクリヤラッカー、およびこれらから形成される下塗りコーティング、クリヤラッカーコーティングおよびマルチコート塗装系によって達成される利点は、失われずに、少なくとも均一の、特に強い特性が顕著に維持されたままであるはずである。
【0026】
従って、相応するマルチコート塗装系は、殊に全く曇り度を有しないか、またはあったとしても極めて僅かな曇り度、良好な流展ならびに極めて良好な全体に亘る目視的印象(外観)を有するはずである。更に、前記塗装系は、コーティング欠陥、例えば亀裂の形成(泥割れ)、明暗の色相の領域(曇り価)およびビットを含まないようにすべきである。更に、前記塗装系は、目視的欠陥箇所、例えば研磨によるしみを全く示さず、良好な中塗り付着力を有するはずである。更に、塗料は、良好な貯蔵安定性、即ち60℃で3日間に亘る塗料の貯蔵後でも塗料の性質の重大な劣化ならびにこの貯蔵された塗料から形成されたコーティングの性質の重大な劣化が全く生じないことを有するはずである。即ち、塗料のレオロジー特性の劣化、殊に粘度の上昇、およびおり(bittiness)の形成ならびに色調および流展の劣化を全く生じないはずである。
【0027】
解決
意外なことに、この課題は、
(A)
(A1)少なくとも1つのメラミン樹脂を含有する下塗り塗料からなる少なくとも1つの下塗り塗膜および
(A2)マルチコート塗装系の最も上方の層としての少なくとも1つのクリヤラッカー塗膜を含むマルチコート塗装系、および
(B)マルチコート塗装系の最も上方のクリヤラッカー層の直ぐ上の湿分硬化性のイソシアネートベースの接着剤からなる接着剤層からなる多層コーティングによって解決されることができ、この場合
(i)下塗り塗料中に含有された全てのアミノプラスト樹脂は、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような、完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂であり、および
(ii)下塗り塗料は、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有することが見い出された。
【0028】
更に、本発明の対象は、多層コーティングを形成させるためのメラミン樹脂含有の下塗り塗料であり、これは、
(i)下塗り塗料中に含有された全てのアミノプラスト樹脂が、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような、完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂であり、および
(ii)下塗り塗料が、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有することによって特徴付けられる。
【0029】
更に、次の工程:
(a)
(A1)少なくとも1つのメラミン樹脂を含有する下塗り塗料からなる少なくとも1つの下塗り塗膜および
(A2)マルチコート塗装系の最も上方の層としての少なくとも1つのクリヤラッカー塗膜を含むマルチコート塗装系で基体を被覆し、
(b)マルチコート塗装系を硬化し、
(c)マルチコート塗装系の最も上方のクリヤラッカー層の直ぐ上の湿分硬化性のイソシアネートベースの接着剤からなる接着剤層からなる接着剤層を施し、および
(d)ガラスシートを接着剤層上に施し、かつ接着剤を硬化させることを含み、この場合
(i)下塗り塗料中に含有された全てのアミノプラスト樹脂は、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような、完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂であるか、または
(ii)下塗り塗料が、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有するか、または
(iii)下塗り塗料中に含有されている全てのアミノプラスト樹脂は、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂であり、および下塗り塗料は、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有する、多層コーティングで被覆された基体上にガラスシートを接着するための多層コーティングの使用が見い出された。
【0030】
本発明による多層コーティングは、接着剤層とマルチコート塗装系とからなる。マルチコート塗装系は、メラミン樹脂含有下塗り塗料からの少なくとも1つの下塗り塗膜と少なくとも1つのクリヤラッカー塗膜とを含む。接着剤層は、直接に、即ち付着プライマーからの付加的な中間層なしに、マルチコート塗装系の最も上方のクリヤラッカー塗膜上に施される。
【0031】
本発明による多層コーティングによって、改善された板ガラス接着付着力が達成される。殊に、板ガラス接着付着力は、結露水の負荷後にも改善される。
【0032】
本発明による多層コーティングによって、高い下塗り塗料層厚および/または低いクリヤラッカー層厚の場合も良好な板ガラス接着付着力が達成されることは、特に驚異的なことであった。これは、殊に付加的な付着プライマーがクリヤラッカー層と接着剤との間の中間層として存在しない場合にも当てはまる。
【0033】
本発明による多層コーティングを用いた場合には、公知の下塗り塗料およびクリヤラッカーならびにこれらから形成された下塗り塗膜、クリヤラッカー塗膜およびマルチコート塗装系によって達成される利点は失われることがない。本発明による多層コーティングのマルチコート塗装系は、殊に全く曇り度を有しないか、またはあったとしても極めて僅かな曇り度、良好な流展ならびに極めて良好な全体に亘る目視的印象(外観)を有する。更に、前記塗装系は、塗膜欠陥、例えば亀裂の形成(泥割れ)、明暗の色相の領域(曇り価)およびビットを含まない。更に、前記塗装系は、目視的欠陥箇所、例えば研磨によるしみを全く示さず、良好な中塗り付着力を有する。更に、塗料は、良好な貯蔵安定性、即ち60℃で3日間に亘る塗料の貯蔵後でも塗料の性質の重大な劣化ならびにこの貯蔵された塗料から形成された塗膜の性質の重大な劣化が全く生じないことを示す。即ち、塗料のレオロジー特性の劣化、殊に粘度の上昇、およびおり(bittiness)の形成ならびに色調および流展の劣化を全く生じない。
【0034】
最後に、本発明による多層コーティングおよび本発明による多層コーティングに使用されるマルチコート塗装系は、通常、自動車塗装に課された要件を満たす。
【0035】
発明の詳細な説明
本発明の対象は、独立請求項の記載から明らかである。本発明の好ましい実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0036】
本発明の1つの対象は、
(A)
(A1)少なくとも1つのメラミン樹脂を含有する下塗り塗料からなる少なくとも1つの下塗り塗膜および
(A2)マルチコート塗装系の最も上方の層としての少なくとも1つのクリヤラッカー塗膜を含むマルチコート塗装系、および
(B)マルチコート塗装系の最も上方のクリヤラッカー層の直ぐ上の湿分硬化性のイソシアネートベースの接着剤からなる接着剤層を含む多層コーティングであり、この場合
(i)下塗り塗料中に含有された全てのアミノプラスト樹脂は、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような、完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂であり、および
(ii)下塗り塗料が、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有する。
【0037】
多層コーティングは、少なくとも1つのマルチコート塗装系および1つの接着剤層を含むコーティングである。好ましくは、本発明による多層コーティングは、正確に1つのマルチコート塗装系(A)および正確に1つの接着剤層(B)を含む。
【0038】
多層コーティングは、少なくとも1つの下塗りコーティングおよび1つのクリヤラッカーコーティングを含むコーティングである。本発明による多層コーティングのマルチコート塗装系(A)は、有利に1つまたは2つの下塗りコーティングおよび正確に1つのクリヤラッカーコーティング、特に有利に正確に1つの下塗りコーティング(A1)および正確に1つのクリヤラッカーコーティング(A2)を含む。クリヤラッカーコーティング(A2)は、他の中間層なしに直接に下塗りコーティング(A1)上に存在する。
【0039】
下塗りコーティングは、下塗り塗料、すなわち基体上に施される、顔料が含有された塗料から得られたコーティングである。
【0040】
クリヤラッカーコーティングは、クリヤラッカー、すなわち基体上に施される透明塗料から得られたコーティングである。
【0041】
下塗り塗料
メラミン樹脂
メラミン樹脂は、メラミン(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン)とメラミン1モル当たりホルムアルデヒド最大6モルとからなる重縮合樹脂である。生じるメチロール基は、全体的または部分的に1つまたは種々のアルコールでエーテル化されていてよい。メラミン樹脂は、異なるメチロール化度および異なるエーテル化度を有していてよい。
【0042】
メラミン樹脂のメチロール化度は、メラミンの可能なメチロール化位置のどの位多くがメチロール化されているか、すなわちメラミン(すなわち、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン)の第1アミノ基の全部で6個の水素原子のどの位多くがメチロール基によって代替されているのかを説明する。従って、完全にメチロール化された単核のメラミン樹脂は、トリアジン環1個当たり6個のメチロール基、例えばヘキサメチロールメラミンを有する。メチロール基は、互いに無関係にエーテル化されていてもよい。
【0043】
メラミン樹脂のエーテル化度は、アルコールでエーテル化された、メラミン樹脂のメチロール基の割合である。完全にエーテル化されたメラミン樹脂の場合、存在するメチロール基は、含まれていないのではなく、アルコールでエーテル化されている。エーテル化のために、1価アルコールまたは多価アルコールは、適している。好ましくは、1価アルコールは、エーテル化のために使用される。例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノールまたはヘキサノールがエーテル化のために使用されてよい。種々のアルコールの混合物、例えばメタノールとn−ブタノールとの混合物が使用されてもよい。
【0044】
メラミン樹脂は、モノマー(単核)またはオリゴマー(多核)であってよい。"単核"または"多核"の記載は、メラミン樹脂1分子当たりのトリアジン環の数に関連する。単核の完全なメチロール化されかつ完全にブタノールでエーテル化されたメラミン樹脂の1つの例は、ヘキサメトキシブチルメラミンである。
【0045】
本発明による多層コーティングの下塗り塗料は、アミノプラスト樹脂として専ら完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂を含有し、このメラミン樹脂は、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されている。このメラミン樹脂は、本発明の範囲内で"主にブチル化されたメラミン樹脂"とも呼称される。即ち、主にブチル化されたメラミン樹脂とは、完全にメチロール化され(すなわち、単核の形でトリアジン環1個当たり6個のメチロール基を有する)、さらに完全にエーテル化され(すなわち、全てのメチロール基がアルコールでエーテル化されている)、およびさらに平均でエーテル化されたメチロール基の少なくとも90%、特に少なくとも95%、特に有利に少なくとも99%がブタノール(n−ブタノールまたはイソブタノール)でエーテル化されているメラミン樹脂である。
【0046】
主にブチル化されたメラミン樹脂の1つの好ましい例は、ヘキサメトキシブチルメラミンである(Cytec Specialities社のCymel(登録商標))。
【0047】
主にブチル化されたメラミン樹脂の群には、殊に完全にはメチロール化されていないメラミン樹脂も完全にはエーテル化されていないメラミン樹脂もブタノールでエーテル化されたメチロール基の割合が90%未満であるメラミン樹脂も含まれない。
【0048】
下塗り塗料は、特に下塗り塗料の全質量に対してメラミン樹脂8〜15質量%を含有する。
【0049】
下塗り塗料中に含有されている全てのアミノプラスト樹脂が主にブチル化されたメラミン樹脂の群、すなわちエーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような、完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂の群から選択されていることは、本発明の本質である。従って、下塗り塗料は、単数または複数の主にブチル化されたメラミン樹脂と共に他のアミノプラスト樹脂を含有しない。しかし、下塗り塗料は、場合によりアミノプラスト樹脂とは異なる他の架橋剤、例えばブロック化イソシアネートを含有することができる。アミノプラスト樹脂とは、メラミン樹脂、尿素樹脂およびベンゾグアナミン樹脂である。
【0050】
ポリエステル結合剤(PE)
下塗り塗料は、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤(PE)を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有する。
【0051】
ポリエステル結合剤(PE)とは、ポリエステル樹脂およびポリエステル−ポリウレタンである。
【0052】
ヒドロキシル価は、DIN 53240により測定され、およびポリエステル結合剤の固体含量に関連する。特に、少なくとも1つのポリエステル結合剤(PE)のヒドロキシル価は、少なくとも270mg KOH/gである。
【0053】
酸価は、DIN 53402により測定され、およびポリエステル結合剤の固体含量に関連する。特に、少なくとも1つのポリエステル結合剤(PE)の酸価は、最大5mg KOH/gである。
【0054】
好ましくは、少なくとも1つのポリエステル結合剤は、270mg KOH/g〜300mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する。
【0055】
好ましくは、下塗り塗料は、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤(PE)を、それぞれ下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%、特に有利に1〜6質量%含有する。下塗り塗料が少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤(PE)を、下塗り塗料の全質量に対して6質量%超含有する場合には、安定性の問題が起こりうる。
【0056】
適したポリエステル結合剤(PE)は、飽和または不飽和、殊に飽和であってよい。不飽和ポリエステル結合剤(PE)とは、少なくとも1個の重合可能な炭素炭素二重結合を含有するようなものである。不飽和ポリエステル結合剤(PE)とは、重合可能な炭素炭素二重結合を全く含有しないようなものである。
【0057】
特に、少なくとも1つのポリエステル結合剤(PE)は、400〜2500g/molの質量平均分子量を有する。分子量は、スチレン−ジビニルベンゼン−組合せカラム上での溶離剤(1ml/分)としてのTHF(+0.1%酢酸)でのGPC分析により測定される。較正は、ポリスチレン標準を用いて実施される。より高い分子量を有するポリエステル結合剤(PE)を使用する場合には、塗料の固体含量は、不利な影響を及ぼされる。
【0058】
好ましくは、ポリエステル結合剤(PE)としてポリエステル樹脂が使用される。ポリエステル樹脂は、有機ジカルボン酸またはその無水物を有機ジオールでエステル化することによって製造されてよいし、ヒドロキシカルボン酸またはラクトンから誘導されてよい。特に有利には、ポリエステル樹脂は、有機ジカルボン酸またはその無水物を有機ジオールでエステル化することによって製造される。従って、特に好ましいポリエステル樹脂は、脂肪族、脂環式および/または芳香族のジカルボン酸またはポリカルボン酸およびジオールまたはポリオールに由来する構造単位を含有する。分枝鎖状ポリエステル樹脂を製造するために、少量で2より高い原子価を有するポリオールまたはポリカルボン酸が使用されてもよい。ジカルボン酸またはポリカルボン酸およびジオールまたはポリオールは、直鎖状または分枝鎖状の脂肪族、脂環式または芳香族のジカルボン酸またはポリカルボン酸、またはジオールまたはポリオールであってよい。
【0059】
ポリエステル樹脂の製造に適したジオールは、例えばアルキレングリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ブタンジオール−1,4、ヘキサンジオール−1,6、ネオペンチルグリコールおよび別のジオール、例えばジメチロールシクロヘキサンである。しかし、少量のポリオール、例えばトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリットが添加されてもよい。ポリエステルの酸成分は、第1に1分子中に2〜44個、有利に4〜36個の炭素原子を有する低分子量ジカルボン酸またはその無水物からなる。適当な酸は、例えばo−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、ヘキサクロロヘプタンジカルボン酸、テトラクロロフタル酸および/または二量体化された脂肪酸である。前記酸の代わりに、その無水物が存在する限り、この無水物が使用されてもよい。ポリエステルポリオールの形成において、3個以上のカルボキシル基を有する、少量のカルボン酸、例えばトリメリット酸無水物、または不飽和脂肪酸への無水マレイン酸の付加物が使用されてもよい。
【0060】
ラクトンとジオールとの反応によって得られるポリエステルジオールが使用されてもよい。このポリエステルジオールは、式(−CO−(CHR2n−CH2−O)の末位のヒドロキシル基およびポリエステルの繰返し部分の存在を示す。この場合、nは、有利に4〜12であり、置換基R2は、それぞれ互いに無関係に水素、アルキル基、シクロアルキル基またはアルコキシ基である。好ましくは、置換基R2の何れも12個を上廻る炭素原子を含有しない。例は、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシデカン酸および/または12−ヒドロキシステアリン酸である。
【0061】
ポリエステルジオールの製造には、nが値4を有しかつR2置換基が水素であるような非置換のε−カプロラクトンが好ましい。ラクトンとの反応は、低分子量ポリオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジメチロールシクロヘキサンによって開始される。しかし、別の反応成分、例えばエチレンジアミン、アルキルジアルカノールアミンまたは尿素もカプロラクトンと反応されてよい。高分子量ジオールとしては、例えばε−カプロラクタムと低分子量ジオールとの反応によって製造されるポリラクタムジオールも適している。
【0062】
他の結合剤
下塗り塗料は、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有するポリエステル結合剤(PE)と共になお他の結合剤を含有することができる。好ましくは、下塗り塗料は、少なくとも1つの他の結合剤を含有する。
【0063】
例えば、エチレン系不飽和のモノマー、またはポリ付加樹脂および/または重縮合樹脂のランダムに、交互に、および/またはブロック状に構成された直鎖状および/または分枝鎖状の(コ)ポリマーおよび/または櫛状に構成された(コ)ポリマーは、他の結合剤として適している。前記の概念については、補足的にRoempp Lexikon Lacke und Druckfarbenm,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York、1998,第457頁,"Polyaddition" und"Plyadditionsharze(Polyaddukte)"、ならびに第463および464頁,"Polykondensate","Polykondensation" und "Polykondensationsharze"、ならびに第73および74頁,"Bindemittel"に指摘されている。
【0064】
適した(コ)ポリマーの例は、(メタ)アクリレート(コ)ポリマーまたは部分鹸化されたポリビニルエステル、殊に(メタ)アクリレートコポリマーである。
【0065】
適したポリ付加樹脂および/または重縮合樹脂の例は、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有するポリエステル結合剤とは異なるポリエステル、アルキド、ポリウレタン、ポリラクトン、ポリカーボネート、ポリエーテル、エポキシ樹脂−アミン付加物、ポリ尿素、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル−ポリウレタン、ポリエーテル−ポリウレタンまたはポリエステル−ポリエーテル−ポリウレタン、殊に少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有するポリエステル結合剤(PE)とは異なるポリエステルである。
【0066】
前記の結合剤の中から(メタ)アクリレート(コ)ポリマーは、特定の利点を有し、したがって特に有利に使用される。
【0067】
(メタ)アクリレートの表記法は、アクリレート、メタクリレートならびにこれらの混合物を含む。(コ)ポリマーの表記法は、ホモポリマーおよびコポリマーを含む。従って、(メタ)アクリレート(コ)ポリマーの概念は、アクリル酸およびアクリル酸誘導体、メタクリル酸およびメタクリル酸誘導体ならびに場合により付加的に(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体とは異なるエチレン系不飽和コモノマーのホモポリマーおよびコポリマーを含む。
【0068】
従って、アクリレート結合剤(AC)とは、(メタ)アクリレート(コ)ポリマーおよび(メタ)アクリレート(コ)ポリマーからポリマー類似の反応によって得られる誘導体である。ポリマー類似の反応は、基体のポリマー特性の保持下に実施される、高分子上での反応である。即ち、このポリマー類似の反応は、ポリマーが別のポリマーへ変換されることを生じる。ポリマー類似の反応は、一般的に高分子の官能基を介して実施される。"ポリマー類似の反応"の概念については、補足的にRoempp Chemie Lexkon,第9版 1995年,第PL−S卷,第3542〜3543頁,見出し語"Polymeranaloge Reaktion"に指摘されている。
【0069】
下塗り塗料は、それぞれ下塗り塗料の全質量に対して、少なくとも1つのアクリレート結合剤(AC)を有利に10〜30質量%、特に有利に12〜20質量%含有する。
【0070】
この場合、アクリレート結合剤(AC)として適しているのは、自動車産業の範囲において下塗り塗料中で通常使用されるアクリレート結合剤であり、この場合当業者に公知の方法で結合剤の製造に使用される構成成分の種類および量の選択により、下塗り塗料のための結合剤の性質、ひいては適性は、制御される。
【0071】
アクリレート結合剤(AC)として、例えばアクリル酸および/またはメタクリル酸ならびに場合により付加的にエチレン系不飽和モノマーのランダムに、交互に、および/またはブロック状に構成された直鎖状および/または分枝鎖状の(コ)ポリマーおよび/または櫛状に構成された(コ)ポリマー、ならびに前記(コ)ポリマーからポリマー類似の反応によって得られる化合物が適している。
【0072】
好ましくは、一面でチオ基、ヒドロキシル基、N−メチロールアミノ基、N−アルコキシメチルアミノ基、イミノ基、カルバメート基、アロファネート基および/またはカルボキシル基、有利にヒドロキシル基またはカルボキシル基を有する結合剤が使用され、他面、特に無水物基、カルボキシル基、エポキシ基、ブロック化イソシアネート基、ウレタン基、メチロール基、メチロールエーテル基、シロキサン基、カーボネート基、アミノ基、ヒドロキシル基および/またはβ−ヒドロキシアルキルアミド基、有利にエポキシ基、β−ヒドロキシアルキルアミド基、ブロック化イソシアネート基、ブロック化ウレタン基またはブロック化アルコキシメチルアミノ基およびブロック化されていないイソシアネート基、ブッロク化されていないウレタン基またはブロック化されていないアルコキシメチルアミノ基が使用される。
【0073】
自己架橋性アクリレート結合剤(AC)の場合には、結合剤は、殊にメチロール基、メチロールエーテル基および/またはN−アルコキシメチルアミノ基を含有する。
【0074】
塗料への使用に特に好適である相補的な反応性の官能基は、一面でヒドロキシル基であり、他面ブロック化されたイソシアネート基、ブロック化されたウレタン基またはブロック化されたアルコキシメチルアミノ基、およびブロック化されていないイソシアネート基、ブロック化されていないウレタン基またはブロック化されていないアルコキシメチルアミノ基である。
【0075】
前記の反応性の官能基に関連してアクリレート結合剤(AC)の官能性は、極めて幅広く変動することができ、殊に達成すべき架橋密度により、および/またはそれぞれ使用される架橋剤の官能性により左右される。例えば、ヒドロキシル基含有アクリレート結合剤(AC)の場合には、OH価は、DIN 53240により、特に15〜300mg KOH/g、有利に20〜250mg KOH/g、特に有利に25〜200mg KOH/g、殊に有利に30〜150mg KOH/g、殊に35〜120mg KOH/gである。
【0076】
前記の相補的な官能基は、ポリマー化学の通常の公知方法によりアクリレート結合剤(AC)中に組み込むことができる。これは、例えば相応する反応性の官能基であるモノマーの組み込みによって、および/またはポリマー類似の反応により行なうことができる。
【0077】
適したアクリレート結合剤(AC)は、一般的に400〜5000g/molの質量平均分子量を有する。分子量は、スチレン−ジビニルベンゼン−組合せカラム上での溶離剤(1ml/分)としてのTHF(+0.1%酢酸)でのGPC分析により測定される。較正は、ポリスチレン標準を用いて実施される。比較的高い分子量の場合には、アクリレート結合剤(AC)の溶解度は、減少する可能性があり、それによってよりいっそう多量の溶剤が必要とされ、ひいては塗料の固体含量は、低下する。比較的低い分子量の場合には、技術的問題が起こりうる。
【0078】
適したアクリレート結合剤(AC)は、当業者に公知の方法により反応性の官能基を有する相応するオレフィン系の不飽和モノマーを使用しながら、場合によってはモノマーとの組合せで反応性の官能基なしに製造されてよい。
【0079】
反応性の官能基を有する適したオレフィン系の不飽和モノマーの例は、次の通りである:
a)1分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基、アミノ基、アルコキシメチルアミノ基、カルバメート基、アロファネート基またはイミノ基を有するモノマー、例えば
酸でエステル化されているアルキレングリコールに由来するか、またはα,β−オレフィン系不飽和カルボン酸とアルキレンオキシド、例えば酸化エチレンまたは酸化プロピレンとの反応によって得られる、アクリル酸、メタクリル酸または別のα,β−オレフィン系不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、殊にヒドロキシアルキル基が20個までの炭素原子を含有する、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸のヒドロキシアルキルエステル、例えば2−ヒドロキシエチル−、2−ヒドロキシプロピル−、3−ヒドロキシプロピル−、3−ヒドロキシブチル−、4−ヒドロキシブチルアクリレート、−メタクリレート、−エタクリレート、−クロトネート、−マレネート、−フマレートまたは−イタコネート;またはヒドロキシシクロ−アルキルエステル、例えば1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン−、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン−ジメタノール−またはメチルプロパンジオールモノアクリレート、−モノメタクリレート、−モノエタクリレート、−モノクロトネート、−モノマレエート、−モノフマレートまたは−モノイタコネート;環式エステルからの反応生成物、例えばε−カプロラクトンおよびこのヒドロキシアルキル−または−シクロアルキルエステル;
オレフィン系不飽和アルコール、例えばアリルアルコール;
ポリオール、例えばトリメチロールプロパンモノ−またはジアリルエーテル、またはペンタエリトリットモノ−、−ジ−または−トリアリルエーテル;
アクリル酸および/またはメタクリル酸と1分子当たり5〜18個のC原子を有する、α−位で分枝化されたモノカルボン酸、殊にベルサチックVersatic(登録商標)酸のグリシジルエステルとの反応生成物、または反応生成物の代わりに、さらに1分子当たり5〜18個のC原子を有する、α−位で分枝化されたモノカルボン酸、殊にベルサチックVersatic(登録商標)酸のグリシジルエステルとの重合反応中または重合反応後に反応される等価の量のアクリル酸および/またはメタクリル酸;
アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、アリルアミンまたはN−メチルイミノエチルアクリレート;
N,N−ジ(メトキシメチル)アミノエチルアクリレートまたは−メタクリレート、またはN,N−ジ(ブトキシメチル)アミノプロピルアクリレートまたは−メタクリレート;
(メタ)アクリル酸アミド、例えば(メタ)アクリル酸アミド、N−メチル−、N−メチロール−、N,N−ジメチロール−、N−メトキシメチル−、N,N−ジ(メトキシメチル)−、N−エトキシメチル−および/またはN,N−ジ(エトキシエチル)−(メタ)アクリル酸アミド;
アクリロイルオキシ−またはメタクリロイルオキシエチル−、プロピル−またはブチルカルバメートまたは−アロファネート;カルバメート基を含有する適したモノマーのさらなる例は、米国特許第3479328号明細書、米国特許第3674838号明細書、米国特許第4126747号明細書、米国特許第4279833号明細書または米国特許第4340497号明細書中に記載されている。
b)1分子当たり少なくとも1個の酸基を有するモノマー、例えば
アクリル酸、β−カルボキシルエチルアクリレート、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸;
オレフィン系不飽和スルホン−またはホスホン酸、またはこれらの部分エステル;
マレイン酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステルまたはフタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル;または
ビニル安息香酸(全ての異性体)、α−メチルビニル安息香酸(全ての異性体)またはビニルベンゼンスルホン酸(全ての異性体)。
c)エポキシ基を含有するモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸のグリシジルエステル、またはアリルグリシジルエーテル。
【0080】
前記種類の高官能性モノマーは、一般的により少ない量で使用される。本発明の範囲内で高官能性モノマーのより少ない量とは、(メタ)アクリレート(コ)ポリマーの架橋またはゲル化を生じないような量である。
【0081】
反応性の官能基なしの適したオレフィン系不飽和モノマーの例は、特にアクリル酸、メタクリル酸または別のα,β−オレフィン系不飽和カルボン酸のアルキルエステル、ビニル芳香族化合物ならびにこれらのモノマーの混合物である。
【0082】
下塗り塗料は、物理的に硬化されていてよい。本発明の範囲内で"物理的硬化"の概念は、塗料からの溶剤放出による被膜形成によって、塗料から1つの層を硬化させることを意味し、この場合塗膜内での結合は、結合剤のポリマー分子のルーピングにより行なわれる(この概念に関しては、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,第73および74頁,見出し語"Bindemittel結合剤"参照)。または、しかし、被膜形成は、結合剤粒子の凝集により行なわれる(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,第274および275頁、見出し語"Haertung硬化")。このために、通常、架橋剤は、不要である。場合により、物理的硬化は、空気酸素、熱または化学線での照射によって補助されてよい。
【0083】
下塗り塗料は、熱的に硬化可能であってよい。この場合、結合剤は、自己架橋性または外部架橋性であってよい。本発明の範囲内で、"自己架橋性"の概念は、それ自体架橋反応を生じる結合剤の性質を示す。このための前提条件は、結合剤中に、架橋に必要とされる、既に2つの種類の相補的な反応性の官能基が含有されていることであるか、または結合剤は、"それ自体と反応しうる"反応性の官能基を含有することである。これとは異なり、1つの種類の相補的な反応性の官能基が結合剤中に存在し、別の種類の官能基が架橋剤中に存在するような塗料は、外部架橋性と呼称される。これに関しては、補足的にRoempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York,1998,"Hartung",第274〜276頁、殊に第275頁下方に指摘されている。
【0084】
顔料
下塗り塗料は、顔料が含有された塗料として少なくとも1つの顔料(P)を含有する。
【0085】
顔料は、染料とは異なり周囲媒体中で不溶性の粉末状またはフレーク状の着色剤である(Roempp Lacke und Druckfarben,第451頁,見出し語"Pigmente顔料"参照)。
【0086】
特に、顔料(P)は、有機および無機の、色を付与し、効果を付与し、色および効果を付与し、磁気的に遮蔽され、導電性、耐蝕性、蛍光性および燐光性の顔料からなる群から選択される。好ましくは、着色顔料および/または効果顔料が使用される。
【0087】
特に有利には、下塗り塗料は、効果を付与する、少なくとも1つの顔料、殊に少なくとも1つの金属小板顔料を含有する。単数または複数の効果顔料と一緒に、下塗り塗料は、場合によりなお少なくとも1つまたは多数の着色顔料を含有する。
【0088】
着色性であってもよい適したエフェクト顔料の例は、金属フレーク顔料、例えば市販のアルミニウム青銅および市販の特殊鋼青銅、ならびに非金属性効果顔料、例えばパール光沢顔料または干渉性顔料、酸化鉄ベースのフレーク状効果顔料、または液晶効果顔料である。これに関しては、補足的にRoempp Lexikon Lacke und Druckfarben,第176頁,見出し語"Effektpigmente効果顔料"および第380および381頁,見出し語"Metalloxid−Glimmer−Pigmente金属酸化物−雲母−顔料"ないし"Metallpigmenteメタリック顔料"に指摘されている。
【0089】
殊に、市販のアルミニウム青銅が使用される。この場合には、例えばEckart社のStapa(登録商標)Meralluxの名称で市場で入手可能である未処理のタイプならびに例えばWO 01/81483中に記載されかつ例えばEckart社のHydrolan(登録商標)の名称で市場で入手可能である処理されたタイプ、殊にシラン処理されたタイプが使用される。
【0090】
特に、金属フレーク顔料は、200〜2000nm、殊に500〜1500nmの厚さを有する。
【0091】
好ましくは、金属小板顔料は、10〜50μm、殊に13〜25μmの平均粒径を有する(Cilas(機器 1064)によるISO 13320−1)。
【0092】
適した有機および/または無機の着色顔料は、塗料産業において通常使用される顔料である。
【0093】
適した無機の着色顔料の例は、白色顔料、例えば二酸化チタン、亜鉛白、硫化亜鉛またはリトポン;黒色顔料、例えばカーボンブラック、鉄−マンガン黒またはスピネル黒;彩色顔料、例えば酸化クロム、酸化クロム水和物緑、コバルト緑またはウルトラマリーン緑、コバルトブルー、ウルトラマリンブルーまたはマンガンブルー、ウルトラマリンバイオレットまたはコバルトバイオレットおよびマンガンバイオレット、酸化鉄赤、硫セレン化カドミウム、モリブデン酸塩の赤またはウルトラマリンレッド;褐色酸化鉄、混合型褐色、スピネル相およびコランダム相またはクロムオレンジ;または黄色酸化鉄、ニッケルチタン黄、クロムチタン黄、硫化カドミウム、硫化亜鉛カドミウム、クロム黄またはバナジン酸ビスマスである。
【0094】
適した有機の着色顔料の例は、モノアゾ顔料、ビスアゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾール顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、インダントロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、チオインジゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料またはアニリン黒である。
【0095】
これに関しては、補足的にRoempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,1998,第180および181頁,見出し語"Eisenblau−Pigmente鉄青顔料"ないし"Eisenoxidschwarz",第451〜453頁,見出し語"Pigmente顔料"ないし"Pigmentvolumenkonzentration顔料容積濃度",第563頁,見出し語"Thiindigo−Pigmenteチオインジゴ顔料",第567頁,見出し語"Titandioxid−Pigmente二酸化チタン顔料",第400および467頁,見出し語"Natuerlich vorkommende Pigmente",第459頁,見出し語"Polycyclische Pigmente多環式顔料",第52頁,見出し語"Azomethinpigmenteアゾメチン顔料","Azopigmenteアゾ顔料",および第379頁,見出し語"Metallkomplex−Pigmente金属錯体顔料"に指摘されている。
【0096】
顔料の含量は、極めて幅広く変動可能であり、第1に調節されるべき、色の濃さおよび/または効果の強さにより左右され、ならびに下塗り塗料中の顔料の分散性により左右される。好ましくは、顔料の含量は、一体色下塗り塗料の場合に、それぞれ下塗り塗料の全質量に対して0.5〜60質量%、特に有利に1〜50質量%である。一体色下塗り塗料とは、メタリック顔料または効果顔料を全く含有しない下塗り塗料である。特に、顔料の含量は、メタリック塗料の場合に、それぞれ下塗り塗料の全質量に対して0.5〜40質量%、有利に0.5〜35質量%、特に有利に1〜30質量%である。
【0097】
有機溶剤(L)
下塗り塗料は、通常、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1つの有機溶剤(L)を30〜70質量%含有する。
【0098】
特に、下塗り塗料は、それぞれ下塗り塗料の全質量に対して、少なくとも1つの有機溶剤(L)を38〜65質量%、特に有利に40〜60質量%含有する。
【0099】
有機溶剤(L)としては、通常、塗料産業において使用される全ての溶剤、例えばアルコール、グリコールエーテル、エステル、エーテルエステルおよびケトン、脂肪族および/または芳香族の炭化水素、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ブチルアセテート、3−ブトキシ−2−プロパノール、エチルエトキシプロピオネート、ブチルグリコール、ブチルグリコールアセテート、ブタノール、ジプロピレングリコール−メチルエーテル、グリコール酸ブチルエステル、キシレン、トルエン、Shellso(登録商標)T、Pine Oel 90/95,Solventnaphtha(登録商標),Shellsol(登録商標)A、Solvesso、ベンジン135/180等が適している。
【0100】
有機溶剤(L)の含量によって、下塗り塗料の粘度は、影響を及ぼされうる。有機溶剤(L)の含量は、特に、下塗り塗料がフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)からの流出時間として、23℃で16秒〜35秒、有利に18〜25秒の粘度を有するように選択される。本発明において、フォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)からの流出時間として、23℃での16秒〜35秒、有利に18〜25秒のかかる粘度は、一般的に"噴霧粘度"と呼称される。
【0101】
有機溶剤(L)の含量によって、下塗り塗料の固体含量も影響を及ぼされる。下塗り塗料中の有機溶剤(L)の含量は、特に、下塗り塗料が少なくとも30質量%の固体含量を有するように選択される。下塗り塗料の固体含量は、DIN ISO 3251の記載により1.0gの初期質量で125℃の温度で60分間の試験時間で実施される。
【0102】
下塗り塗料は、無水である。無水の下塗り塗料とは、完全に、または実質的に水を含有しない下塗り塗料である。
【0103】
触媒
低下された焼付け温度または短縮された焼付け時間の際に、モノマーまたはオリゴマーの成分から耐化学薬品性のポリマー網目模様が生じうるようにするために、下塗り塗料は、少なくとも1つの触媒を含有する。適した触媒は、メラミン樹脂での架橋に通常使用される公知の触媒、例えばスルホン酸触媒または燐酸誘導体、例えばジフェニルホスファイトである。単数または複数の触媒は、通常の公知の量で、例えば下塗り塗料の全体量に対して0.5〜5質量%で使用される。
【0104】
下塗り塗料は、特に、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1つのスルホン酸触媒を1〜3質量%含有する。好ましくは、下塗り塗料は、それぞれ下塗り塗料の全質量に対して、少なくとも1つのスルホン酸触媒を1.2〜2.8質量%、特に有利に1.4〜2.6質量%含有する。
【0105】
適したスルホン酸触媒は、例えばドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNSA)、パラ−トルエンスルホン酸(p−TSA)ならびにブロック化触媒、例えばブロック化DDBSA、ブロック化DNNSAまたはブロック化p−TSAである。
【0106】
特に、下塗り塗料は、ブロック化スルホン酸触媒を含有する。
【0107】
ブロック化スルホン酸触媒としては、有利にアミンブロック化または供給結合ブロック化された触媒が使用され、塗装系の安定性および耐久性が保証される。従って、スルホン酸触媒をブロック化するために、アミンとして有利にアルキル化またはヘテロ環式第三アミン、例えば2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジイソプロパノールアミン、ジメチルオキサゾリジンまたはトリメチルアミンが使用される。共有結合によるブロック剤としては、例えばエポキシ化合物またはエポキシ−イソシアネート化合物が使用される。このようにブロック化されたスルホン酸触媒は、米国特許第5102961号明細書中に詳細に記載されている。
【0108】
下塗り塗料の他の成分
前記成分以外に、下塗り塗料は、通常の公知の助剤および添加剤を通常の量で、有利にそれぞれ下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1つの助剤または添加剤(Z)を0〜40質量%、特に有利に0.5〜30質量%含有することができる。
【0109】
適した助剤または添加剤(Z)は、通常、塗料工業で使用される公知の助剤および添加剤である。適した助剤および添加剤の例は、有機および無機の充填剤、例えばタルク、および/または染料(周囲媒体中で可溶性の黒色または彩色有機物質(Roempp Lacke und Druckfarben、第221頁、見出し語"Farbmittel着色剤"))ならびに他の通常の助剤および添加剤、例えば酸化防止剤、脱気剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、レオロジー助剤、例えば流展剤、濃稠化剤、垂れ防止剤およびチキソトロープ剤、ワックスおよびワックス様化合物、スリップ添加剤、反応希釈剤、易流動性助剤、乾燥剤、殺生剤、下地の湿潤を改善するための添加剤、表面の平滑さを改善するための添加剤、艶消剤、ラジカル捕捉剤、光安定剤、特に370nm下で吸収最大を有するUV吸収剤および/またはHALS、腐蝕抑制剤、難燃剤または重合抑制剤であり、例えばこれらは、Johan Bielemann著の"Lackadditive"の書物,Wiley−VCH,Weinheim,New York,1998中に詳細に記載されている。好ましい助剤および添加剤は、レオロジー助剤、脱気剤、湿潤剤、分散剤、ワックスおよびワックス様化合物、UV吸収剤およびラジカル捕捉剤である。特に好ましい助剤および添加剤は、UV吸収剤、湿潤剤ならびにワックスおよびワックス様化合物である。
【0110】
更に、本発明の対象は、多層コーティングを形成させるためのメラミン樹脂含有の下塗り塗料であり、これは、〜によって特徴付けられる。
【0111】
(i)下塗り塗料中に含有された全てのアミノプラスト樹脂は、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような、完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂であり、および
(ii)下塗り塗料が、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有することによって特徴付けられる。
【0112】
クリヤラッカー
本発明による多層コーティングは、少なくとも1つのクリヤラッカー塗膜(A2)を含む。この場合、クリヤラッカー塗膜(A2)は、マルチコート塗装系の最も上方の層を形成し、この上には、接着剤層(B)が続く。
【0113】
本発明による多層コーティングのクリヤラッカー塗膜を形成するために、クリヤラッカーとして、透明塗料の固体含量に対して20質量%未満のアミノプラスト樹脂含量を有する、通常使用される透明塗料、例えば一成分系塗料ならびに二成分系塗料または多成分系塗料として調製されてよい、通常使用される水性または溶剤含有の透明塗料が適している。更に、粉末スラリー−クリヤラッカーも適している。
【0114】
適当な透明塗料は、例えばWO 03/050194A1、米国特許第2008/076868号明細書A1およびWO 06/063304A1中に記載されている。好ましくは、カルバメート基含有の透明塗料が使用される。
【0115】
好ましくは、透明塗料(クリヤラッカー)は、少なくとも50質量%の固体含量を有する。使用される透明塗料は、熱的に、および/または光線、殊にUV光を用いて硬化されてよい。
【0116】
透明塗料は、通常、官能基を有する少なくとも1つの結合剤ならびに結合剤の官能基に対して相補的な官能価を有する少なくとも1つの架橋剤を含有する。このような相補的な官能価の例は、殊に次の互いにそれぞれ相補的な対(a/b):(カルボキシ/エポキシ)、(アミンまたはチオールまたはヒドロキシル/ブロック化または遊離イソシアネートまたはアルコキシル化アミノ基またはエステル交換能を有する基)、((メタ)アクリロイル/CH酸またはアミンまたはヒドロキシルまたはチオール)、(カルバメート/アルコキシル化アミノ基)および((メタ)アクリロイル/(メタ)アクリロイル)である。
【0117】
殊に、有利にヒドロキシル基、アミノ基、カルバメート基、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基および/またはチオール基を有するポリウレタン樹脂および/またはポリアクリレート樹脂および/またはポリエステル樹脂をベースとする透明塗料が相応する架橋剤と組み合わせて、殊にイソシアネート、アミノプラスト樹脂、無水物等と組み合わせて使用される。
【0118】
透明塗料は、結合剤および架橋剤と共に、通常の助剤および添加剤、例えば架橋のための触媒、消泡剤、付着助剤、下地の湿潤を改善するための添加剤、表面の平滑さを改善するための添加剤、艶消剤、光安定剤、特に370nm下で吸収最大を有するUV吸収剤および/またはHALS、腐蝕抑制剤、難燃剤または重合抑制剤であり、例えばこれらは、Johan Bielemann著の"Lackadditive"の書物,Wiley−VCH,Weinheim,New York,1998中に詳細に記載されている。
【0119】
接着剤
本発明による多層コーティングは、湿分硬化性のイソシアネートをベースとする接着剤からなる接着剤層(B)を含む。接着剤層(B)は、直接にクリヤラッカー塗膜(A2)上に存在し、このクリヤラッカー塗膜は、マルチコート塗装系(A)の最も上方の層を形成する。従って、殊にマルチコート塗装系と接着剤層との間には、付着プライマーからなる中間層は、全く存在しない。
【0120】
接着剤層(B)は、湿分硬化性のイソシアネートをベースとする接着剤をクリヤラッカー塗膜(A2)上に施すことによって形成される。適した接着剤は、例えば米国特許第5852137号明細書中に記載されている。殊に、ウィンドシールドを接着するために通常使用される、湿分硬化性のイソシアネートをベースとする接着剤が適している。このような接着剤は、例えばDow Automotive社の"Betaseal(登録商標)"の商品名で市場で入手可能である。湿分硬化性のイソシアネートをベースとする接着剤(ポリウレタン接着剤)は、一般的に一成分系(1K)接着剤として使用されてよく、または二成分系(2K)接着剤として使用されてもよい。特に有利には、湿分硬化性のイソシアネートをベースとする1K接着剤が使用される。
【0121】
多層コーティングの層構造
本発明による多層コーティングは、1つのマルチコート塗装系(A)および1つの接着剤層(B)を含む。接着剤層は、他の中間層なしに直接にマルチコート塗装系の最も上方の層上に存在する。マルチコート塗装系の最も上方の層は、1つのクリヤラッカー塗膜(A2)である。マルチコート塗装系は、クリヤラッカー塗膜(A2)と共に少なくとも1つの下塗り塗膜(A1)を含む。好ましくは、本発明による多層コーティングのマルチコート塗装系は、正確には1つの下塗り塗膜(A1)と正確には1つのクリヤラッカー塗膜(A2)を有し、この場合このクリヤラッカー塗膜(A2)は、他の中間層なしに直接に下塗り塗膜(A1)上に存在する。
【0122】
マルチコート塗装系は、さらなる層を含むことができる。殊に、マルチコート塗装系は、クリヤラッカー塗膜(A2)から離反している、下塗り塗膜(A1)の側に存在する、さらなる下塗り塗膜を含むことができる。この三層塗装系におけるさらなる下塗り塗膜として、自動車塗装において前記目的のために常用の全ての下塗り塗膜が適している。
【0123】
多層コーティングの形成
本発明のもう1つの対象は、次の工程
(a)
(A1)少なくとも1つのメラミン樹脂を含有する下塗り塗料からなる少なくとも1つの下塗り塗膜および
(A2)マルチコート塗装系の最も上方の層としての少なくとも1つのクリヤラッカー塗膜を含むマルチコート塗装系で基体を被覆し、
(b)マルチコート塗装系を硬化し、および
(c)マルチコート塗装系の最も上方のクリヤラッカー層の直ぐ上の湿分硬化性のイソシアネートベースの接着剤からなる接着剤層を施すことを含む多層コーティングの形成方法であって、この方法は、
(i)下塗り塗料中に含有された全てのアミノプラスト樹脂は、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような、完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂であり、および
(ii)下塗り塗料が、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有することによって特徴付けられる。
【0124】
本発明による多層コーティングは、任意の基体上に形成されてよい。基体は、多種多様の材料および材料の組合せから構成されてよい。特に、この基体は、金属、プラスチックおよび/またはガラス、特に有利に金属および/またはプラスチックからなる。殊に好ましくは、基体は、自動車車体の一部分である。
【0125】
基体には、通常、常法で、例えば電気泳動塗装、浸漬、ナイフ塗布、噴霧塗布、ロール塗布等で塗布される、プライマーおよび場合によりサーフェイサーが備えられている。好ましくは、マルチコート塗装系の少なくとも1つの下塗り塗料が塗布される前に、プライマーは、少なくとも部分的または完全に硬化される。プライマーまたはサーフェイサーは、通常、3〜30分間80〜170℃の温度に加熱することによって硬化される。
【0126】
多層コーティングを形成させるための本発明による方法において、最初にマルチコート塗装系(A)が、および引続き接着剤層(B)が場合により予め被覆された基体上に塗布される。
【0127】
マルチコート塗装系(A)を形成させるために、この順序で、最初に少なくとも1つの下塗り塗膜(A1)が下塗り塗料から、および引続き少なくとも1つのクリヤラッカー塗膜(A2)がクリヤラッカーから場合により予め被覆された基体上に塗布される。
【0128】
下塗り塗料およびクリヤラッカーは、液体塗料を塗布するための通常の方法、例えば浸漬、ナイフ塗布、噴霧塗布、ロール塗布等により塗布されるが、しかし、殊に噴霧塗布により塗布される。好ましくは、噴霧塗布法、例えば圧縮空気による噴霧、エアレス噴霧、高速回転塗布、静電噴霧(ESTA)は、場合によりホット噴霧法、例えばホットエアー噴霧と組み合わせて適用される。特に好ましいのは、下塗り塗料を第1の塗布でESTAによって塗布し、第2の塗布で空気圧により塗布することである。
【0129】
クリヤラッカーの塗布前に、少なくとも1つの塗布された下塗り塗料層は、短時間でフラッシュオフされるかまたは短時間で乾燥され、一般的には、30℃ないし100℃未満の温度で1〜15分間フラッシュオフさせるかまたは乾燥させる。その後に、クリヤラッカーが塗布される(ウェット・オン・ウェット塗布法)。
【0130】
下塗り塗料とクリヤラッカーは、一緒に熱的に硬化される。クリヤラッカーがなお化学線で硬化可能である限り、なお化学線での照射によって後硬化が行なわれる。硬化は、或る程度の静止時間の後に行なうことができる。硬化は、30秒ないし2時間、特に1分間ないし1時間、殊に1〜45分間の時間を有することができる。静止時間は、例えば塗料層の流展および脱ガスのために、または揮発性成分の気化のために使用される。この場合、塗料層の損傷または変化、例えば早期の完全な架橋が全く生じない限り、静止時間は、90℃にまで高められた温度の使用によって、および/または減少された空気湿分(10g未満 水/kg 空気)によって支持されてよいし、および/または短縮されてよい。
【0131】
マルチコート塗装系は、通常、90〜160℃の温度で15〜90分間硬化される。
【0132】
単数または複数の湿式下塗り塗料層ならびに単数または複数の湿式クリヤラッカー層の乾燥または状態調節のためには、有利に熱的方法および/または対流法が使用され、この場合には、常用の公知の装置、例えばトンネル炉、NIRヒーターおよびIRヒーター、ブロワーおよび吹込トンネルが使用される。これらの装置は、互いに組み合わされてもよい。
【0133】
本発明による多層コーティングのマルチコート塗装系において、下塗り塗膜(A1)は、一般的に3〜40μm、有利に5〜30μm、さらに有利に10〜25μm、特に有利に15〜25μmの乾燥被膜層厚を有する。
【0134】
本発明による多層コーティングのマルチコート塗装系において、下塗り塗膜(A2)は、一般的に10〜120μm、有利に20〜80μm、殊に25〜50μm、特に有利に25〜45μmの乾燥被膜層厚を有する。
【0135】
好ましくは、本発明による多層コーティングは、正確に10〜25μmの乾燥被膜層厚を有する下塗り塗膜および正確に25〜70μmの乾燥被膜層厚を有するクリヤラッカー塗膜を含む。
【0136】
接着剤層(B)を形成させるために、湿分硬化性のイソシアネートをベースとする接着剤は、直接に、即ちさらなる中間層なしに硬化され冷却された多層コーティング(A)の最も上方のクリヤラッカー層上に施される。湿分硬化性のイソシアネートをベースとする接着剤は、通常の適した方法、例えば噴霧により0.1〜5mmの通常の接着剤層厚で塗布されてよい。
【0137】
多層コーティングの使用
更に、本発明の対象は、次の工程:
(a)
(A1)少なくとも1つのメラミン樹脂を含有する下塗り塗料からなる少なくとも1つの下塗り塗膜および
(A2)マルチコート塗装系の最も上方の層としての少なくとも1つのクリヤラッカー塗膜を含むマルチコート塗装系で基質を被覆し、
(b)マルチコート塗装系を硬化し、
(c)マルチコート塗装系の最も上方のクリヤラッカー層の直ぐ上の湿分硬化性のイソシアネートベースの接着剤からなる接着剤層からなる接着剤層を施し、および
(d)ガラスシートを接着剤層上に施し、かつ接着剤を硬化させることを含む、多層コーティングで被覆された基体上にガラスシートを接着するための多層コーティングの使用であって、この使用は、
(i)下塗り塗料中に含有された全てのアミノプラスト樹脂が、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような、完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂であるか、または
(ii)下塗り塗料が、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有するか、または
(iii)下塗り塗料中に含有されている全てのアミノプラスト樹脂が、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂であり、および下塗り塗料が、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有することによって特徴付けられる。
【0138】
1つの好ましい実施態様において、下塗り塗料中に含有されている全てのアミノプラスト樹脂は、主にブチル化されたメラミン樹脂の群、すなわちエーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような、完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂の群から選択されており、下塗り塗料は、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有する。
【0139】
好ましくは、基体は、自動車車体の一部分である。
【0140】
"接着"とは、ガラスシートを基体上または基体に本発明による多層コーティングを用いて長時間押し付けて固定することである。
【0141】
ガラスシートとしては、通常の公知の全てのガラスシートがこれに該当する。有利に、ガラスシートは、ウィンドシールドである。
【0142】
工程(a)多層コーティングでの基質の被覆、(b)マルチコート塗装系の硬化および(c)接着剤層の施与については、上記に既述したことが当てはまる。
【0143】
工程(d)"接着剤層上へのガラスシートの施与および接着剤層の硬化"の場合には、次のように行なうことができる。清浄化されたガラスシートは、新たに塗布された接着剤層上に施され、固定され、かつ押圧される。接着剤の硬化は、十分な空気湿度で室温で実施されてよい。接着剤は、例えば相対湿度50%の空気湿度および25℃の温度で72時間に亘って硬化することができる。
【実施例】
【0144】
実施例
実施例において、DIN 53402による酸価(SZ)およびDIN 53240によるOH価(ヒドロキシル価)が測定される。
【0145】
固体含量は、一般的にDIN ISO 3251の記載により1.0gの初期質量で125℃の温度で60分間の試験時間で実施される。前記パラメーターは、個々のパラメーターの個々の場合においてこれらからずれない値が記載される限り、常に当てはまる。
【0146】
1.ワックス分散液(W)の製造
BASF AG社のポリエチレンワックスEVA 1 6.0質量部(87〜92℃の融点、約95℃のウベローデ滴点および約6500g/molの質量平均分子量を有するエチレン/ビニルアセテートコポリマーをベースとする市販のポリエチレンワックス)およびキシレン40.0質量部を徐々に攪拌しながら100℃で溶解する。更に、攪拌しながらこの溶液を70℃に冷却し、徐々に酢酸ブチル54.0質量部(工業用、約85%の)を添加し、この場合には、望ましいワックスの沈殿が開始する。更に、攪拌しながら分散液をさらに35℃にまで冷却させる。
【0147】
2.ポリマーマイクロ粒子(M)の製造
ポリマーマイクロ粒子の製造のために、最初にキャリヤー樹脂を製造する。そのために、反応器中にキシレン5.8質量部、トルエン5,8質量部およびメタンスルホン酸0.2質量部を装入し、104℃に加熱する。引続き、12−ヒドロキシステアリン酸80.6質量部を反応器に供給し、反応混合物を171℃で還流下に反応水を除去しながら煮沸する。反応は、生成物の固体含量(1時間/130℃)に対して35mg KOH/gの酸価の達成時に終結する。冷却後、ソルベントナフサ8.0質量部を有する固体含量をキャリヤー樹脂溶液の全質量に対して80.0質量部に調節する。
【0148】
第2の工程において、反応器中にソルベントナフサ43.2質量部、N,N−ジメチルココサミン0.08質量部および酢酸エチル1.0質量部を装入し、104℃に加熱する。反応器に0.69バールの圧力で2時間で、メチルメタクリレート27.6質量部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート3.8質量部、グリシジルメタクリレート0.8質量部、上記のキャリヤー樹脂12.8質量部、メタクリル酸1.5質量部およびオクチルメルカプタン1.5質量部からなるモノマー混合物と第三ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート2.3質量部およびソルベントナフサ5.1質量部からなる開始剤混合物とを同時に添加する。引続き、この混合物を上記の温度および圧力で3時間維持し、その後に冷却し、ソルベントナフサで41.0%の固体含量に調節する。
【0149】
3.アクリレート結合剤(AC)の製造
反応器中にソルベッソ(Solvesso)100 13.2質量部を装入し、167℃に加熱する。この反応器に、0.35バールの圧力で4時間に亘って、アクリル酸2.1質量部、ヒドロキシエチルアクリレート10.8質量部、2−エチルヘキシルアクリレート11.5質量部、ブチルアクリレート11.5質量部およびスチレン14.3質量部からなるモノマー混合物とジ−第三ブチルペルオキシド0.7質量部およびソルベッソ(Solvesso)100(50%で)中のジクミルペルオキシドの溶液11.1質量部からなる開始剤混合物とを同時に添加する。引続き、上記の温度および圧力で1時間維持し、その後に1時間に亘ってε−カプロラクトン21.5質量部を添加する。150℃に冷却し、および0.35バールの圧力で1.5時間維持する。反応混合物を冷却し、ソルベッソ(Solvesso)100で75%の固体含量に調節する。こうして得られたアクリレート樹脂は、それぞれ固体に対して23mg KOH/gの酸価および73mg KOH/gのOH価を有する。
【0150】
4.安定化された無機粒子(N)の製造
受器中で、項目3.に記載のアクリレート結合剤10.0質量部、Degussa社のAerosil(登録商標)380 6.0質量部(380m2/gの比表面積(BET)、7nmの一次粒子の平均寸法およびか焼した物質に対する少なくとも99.8質量%のSiO2含量を有するDegussa AG社の市販の親水性熱分解法珪酸)、ソルベントナフサ41.7質量部、酢酸ブチル41.7質量部および6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ吉草酸、ラウリン酸およびポリエチレングリコールを含有する、それぞれ130℃の固体含量に対して96.2%の非揮発性含量(2時間および130℃で)、50mg KOH/gのOH価および17,2mg KOH/gの酸価を有する安定剤(S)としての脂肪酸エステル0.6質量部(例えば、Th.Goldschmidt社の脂肪酸エステルSolsperse 39000をベースとする市販の湿潤添加剤)を混合し、および分散させる。
【0151】
5.ポリエステル結合剤(PE)の製造
ジカルボン酸混合物36.6質量部とヘキサンジオール27.8質量部とシクロヘキサンジメタノール35.6質量部とからなる混合物を、水分離器を装備した攪拌型容器中に装入し、攪拌しながら窒素雰囲気下で230℃に加熱する。その際に遊離された水を水分離器中に捕集する。反応混合物を酸価が4mg KOH/gの値を下廻るまで230℃で維持する。生じる混合物は、90.0%の固体含量および380mPa.sの粘度(50℃で)を有する。生じるポリエステルは、それぞれ固体に対して2.2mg KOH/gの酸価および280mg KOH/gのOH価を有する。
【0152】
6.CAB溶液の製造(C)
受器中で酢酸ブチル76.0質量部をCAB 551−0.2 24.0質量部(Eastman社の市販のセルロースアセトブチレート)と30分間混合する。
【0153】
7.アルミニウム効果顔料のペーストの製造
ペーストを14μmの平均粒径を有するシルバーダラータイプの市販のノンリーフィングアルミニウム効果顔料ペースト50.0質量部(Eckart社のMetallux 2192)と酢酸ブチル50.0質量部とから攪拌しながら製造する。
【0154】
8.比較メタリック下塗り塗料BC−1の製造(ポリエステルなし、および親水性メラミンを有する)
比較メタリック下塗り塗料BC−1を、次の成分を混合しかつ均質化することによって製造する:
項目1.に記載のワックス分散液10.0質量部(W)、
項目2.に記載のポリマーマイクロ粒子22.0質量部(M)、
Resimene(登録商標)755 11.5質量部(Ineos Melamines社の市販のモノマーの親水性ヘキサメトキシ−メチル/ブチル−メラミン樹脂)、
項目4.に記載の安定化された無機粒子4.0質量部(N)、
アミン樹脂により変性されたアクリルコポリマーをベースとする市販のシリコーン不含の湿潤添加剤0.5質量部、
市販のヒドロキシフェニルトベンズトリアゾールベースのUV吸収剤0.8質量部、
項目3.に記載のアクリレート結合剤22.0質量部(AC)、
市販のアミンブロック化されたドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)触媒1.7質量部、
項目6.に記載のCAB溶液3.0質量%(C)、
項目7.に記載の、アルミニウム効果顔料のペースト14.0質量部、
酢酸ブチル6.4質量部。
【0155】
こうして得られた比較メタリック下塗り塗料BC−1は、フォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)からの流出時間としての23秒の噴霧粘度(23℃)および40.2質量%の固体含量を有する(1時間/125℃)。
【0156】
9.本発明により使用可能なメタリック下塗り塗料BC−2の製造(ポリエステルを有し、および親水性メラミンを有する)
メタリック下塗り塗料BC−2を、次の成分を混合しかつ均質化することによって製造する:
項目1.に記載のワックス分散液10.0質量部(W)、
項目2.に記載のポリマーマイクロ粒子22.0質量部(M)、
Resimene(登録商標)755 11.5質量部(Ineos Melamines社の市販のモノマーの親水性ヘキサメトキシ−メチル/ブチル−メラミン樹脂)、
項目4.に記載の安定化された無機粒子8.0質量部(N)、
アミン樹脂により変性されたアクリルコポリマーをベースとする市販のシリコーン不含の湿潤添加剤0.5質量部、
市販のヒドロキシフェニルトベンズトリアゾールベースのUV吸収剤0.8質量部、
項目3.に記載のアクリレート結合剤17.0質量部(AC)、
項目5.に記載のポリエステル結合剤3.3質量部(PE)、
市販のアミンブロック化されたドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)触媒117質量部、
項目6.に記載のCAB溶液3.0質量%(C)、
項目7.に記載の、アルミニウム効果顔料のペースト14.0質量部、
酢酸ブチル8.1質量部。
【0157】
こうして得られたメタリック下塗り塗料BC−2は、フォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)からの流出時間としての22秒の噴霧粘度(23℃)および41.2質量%の固体含量を有する(1時間/125℃)。
【0158】
10.本発明により使用可能なメタリック下塗り塗料BC−3の製造(ポリエステルなし、および親水性メラミンを有する)
メタリック下塗り塗料BC−3を、次の成分を混合しかつ均質化することによって製造する:
項目1.に記載のワックス分散液10.0質量部(W)、
項目2.に記載のポリマーマイクロ粒子22.0質量部(M)、
Cymel 1156 11.8質量部(Cytec Specialities社の市販のモノマーの疎水性ヘキサメトキシブチル−メラミン樹脂)、
項目4.に記載の安定化された無機粒子8.0質量部(N)、
アミン樹脂により変性されたアクリルコポリマーをベースとする市販のシリコーン不含の湿潤添加剤0.5質量部、
市販のヒドロキシフェニルトベンズトリアゾールベースのUV吸収剤0.8質量部、
項目3.に記載のアクリレート結合剤22.0質量部(AC)、
市販のアミンブロック化されたドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)触媒1.7質量部、
項目6.に記載のCAB溶液3.0質量%(C)、
項目7.に記載の、アルミニウム効果顔料のペースト14.0質量部、
酢酸ブチル6.1質量部。
【0159】
こうして得られたメタリック下塗り塗料BC−3は、フォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)からの流出時間としての21秒の噴霧粘度(23℃)および40.8質量%の固体含量を有する(1時間/125℃)。
【0160】
11.本発明によるメタリック下塗り塗料BC−4の製造(ポリエステルを有し、および親水性メラミンを有する)
本発明によるメタリック下塗り塗料BC−4を、次の成分を混合しかつ均質化することによって製造する:
項目1.に記載のワックス分散液10.0質量部(W)、
項目2.に記載のポリマーマイクロ粒子22.0質量部(M)、
Cymel 1156 11.8質量部(Cytec Specialities社の市販のモノマーの疎水性ヘキサメトキシブチル−メラミン樹脂)、
項目4.に記載の安定化された無機粒子8.0質量部(N)、
アミン樹脂により変性されたアクリルコポリマーをベースとする市販のシリコーン不含の湿潤添加剤0.5質量部、
市販のヒドロキシフェニルトベンズトリアゾールベースのUV吸収剤0.8質量部、
項目3.に記載のアクリレート結合剤17.0質量部(AC)、
項目5.に記載のポリエステル結合剤3.3質量部(PE)、
市販のアミンブロック化されたドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)触媒1.7質量部、
項目6.に記載のCAB溶液3.0質量%(C)、
項目7.に記載の、アルミニウム効果顔料のペースト14.0質量部、
酢酸ブチル7.8質量部。
こうして得られた本発明によるメタリック下塗り塗料BC−4は、フォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)からの流出時間としての20秒の噴霧粘度(23℃)および40.7質量%の固体含量を有する(1時間/125℃)。
【0161】
12.多層コーティングM−1〜M−8の製造
結露水の負荷前および負荷後の透明板ガラスの接着付着力を試験するために、実施例の塗料BC−1〜BC−4のオリジナルの塗装系M−1〜M−4を通常の公知方法で寸法20×40cmの試験パネル上に形成させた。このために、陰極電着塗装されたパネルを、BASF Coatings AG社のポリエステルをベースとする、市販の常用の灰色のサーフェイサーで被覆し、その後に生じるサーフェイサー被膜を20℃および65%の相対空気湿度で5分間フラッシュオフさせ、および空気循環炉内で165℃のパネルの温度で5分間焼き付けた。
【0162】
試験パネルを20℃に冷却した後、第1のシリーズで下塗り塗料BC−1〜BC−4を自動ESTA(静電)噴霧ユニット中で楔の適用により0〜40μmの乾燥被膜層厚で塗布した。引続き、下塗り塗料層を5分間フラッシュオフさせ、BASF Coatings AG社の市販のハイソリッド一成分系クリヤラッカーHigh Solid 1K Klarlackで25μmの乾燥被膜層厚で上塗りした。その後、下塗り塗料層およびクリヤラッカー層を140℃のパネル温度で10分間焼き付けた。
【0163】
第2のシリーズで実施例の塗料BC−1〜BC−4のオリジナルの塗膜M−5〜M−8を冷却された試験パネル上に自動ESTA(静電)噴霧ユニットによって25μmの一定の乾燥被膜層厚で塗布した。引続き、下塗り塗料層を5分間フラッシュオフさせ、BASF Coatings AG社の市販のハイソリッド一成分系クリヤラッカーHigh Solid 1K KlarlackでESTA(静電)噴霧ユニット中で楔の適用により0〜50μmの乾燥被膜層厚で上塗りした。その後、下塗り塗料層およびクリヤラッカー層を140℃のパネル温度で10分間焼き付けた。
【0164】
13.多層コーティングM−1〜M−8の製造および試験
多層コーティングM−1〜M−8の形成のために、マルチコート塗装系M−1〜M−8で被覆された試験パネル上に24時間の貯蔵後に室温で板ガラス接着配合物Betaseal(登録商標)1858−1(湿分硬化性、イソシアネートベースの接着剤、Dow Automotive社から市場で入手可能)を多層塗装系M−1〜M−8の完全なクリヤラッカー層上に長手方向でストライプ状で施した(厚さ約3mm、幅10mm)。接着剤を空気湿度50%および25℃で72時間硬化させる。
【0165】
接着剤の完全な硬化後に、いわゆるクイックナイフ接着性試験(Quick−Knife−Test)を実施する。そのために、カット(Schnitt)をそれぞれ12mmの間隔で接着剤に対して垂直方向に取り付け、硬化した接着剤上で長手方向に手動で引っ張る。この場合には、専ら接着剤内に亀裂を生じ、すなわち接着剤/多層塗膜の中間付着、ひいては板ガラス接着付着力も十分であると評価される。接着剤/クリヤラッカーの層間剥離または多層塗膜内での破壊が生じる場合には、板ガラス接着付着力は、もはや十分ではない。板ガラス接着付着力は、通常殊に比較的高い下塗り塗料層厚および/または比較的低いクリヤラッカー層厚において問題になるので、層間剥離を最初に生じるような下塗り塗料(M−1〜M−4)またはクリヤラッカー層厚(M−5〜M−8)が報告される。
【0166】
板ガラス接着付着力を、こうして室温で結露水の負荷前に試験する。更に、板ガラス接着付着力を、結露水の負荷後にも試験する。このために、多層コーティングM−1〜M−8を40℃および100%の相対空気湿度で結露水装置(Schwitzwassergeraet)中で14日間貯蔵する。2時間の再生後、負荷された多層コーティングM−1〜M−8上で上記のクイックナイフ接着性試験(Quick−Knife−Test)を実施する。
【0167】
第1表中には、比較塗膜M−1およびM−5の多層塗装系ならびに多層コーティングM−2〜M−4およびM−6〜M−8のクイックナイフ接着性試験(Quick−Knife−Test)の結果が記載されている。
【0168】
【表1】

【0169】
第1表は、多層コーティングM−2〜M−4の板ガラス接着付着力が比較的低いクリヤラッカー層厚(25μm)において付着プライマーの使用なしでも比較的高い下塗り塗料層厚(26μm〜35μm)になるまで良好に顕著であり、これに対して比較塗膜M−1における板ガラス接着付着力は、最大24μmまたは最大20μmの厚さの下塗り塗料層になるまで(結露水の負荷後)十分であるにすぎない。従って、多層コーティングM−2〜M−4は、改善された板ガラス接着付着力を結露水の負荷前ならびに結露水の負荷後に示す。下塗り塗料が240mg KOH/gを上廻るヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有するポリエステル結合剤ならびに専ら完全にブチル化されたメラミン樹脂を含有する多層コーティングM−4は、特に良好な板ガラス接着付着力を示す。
【0170】
更に、第1表は、多層コーティングM−6〜M−8の板ガラス接着付着力が比較的高い下塗り塗料層厚(25μm)において付着プライマーの使用なしでも比較的低いクリヤラッカー層厚(22μm〜12μm)になるまで良好に顕著であり、これに対して比較塗膜M−5における板ガラス接着付着力は、少なくとも27μmまたは少なくとも33μmの厚さのクリヤラッカー層において(結露水の負荷後)十分であるにすぎない。従って、多層コーティングM−6〜M−8は、改善された板ガラス接着付着力を結露水の負荷前ならびに結露水の負荷後に示す。下塗り塗料が240mg KOH/gを上廻るヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有するポリエステル結合剤ならびに専ら完全にブチル化されたメラミン樹脂を含有する多層コーティングM−8は、特に良好な板ガラス接着付着力を示す。
【0171】
前記結果は、280mg KOH/gのOH価を有する下塗り塗料中のポリエステル結合剤の使用および/または疎水性の完全にブチル化されたメラミン樹脂の専らの使用によって高い下塗り塗料層厚および/または低いクリヤラッカー層厚において板ガラス接着付着力を改善することができることを明らかに示す。この場合には、上記の2つの変化の組合せにより、板ガラス接着付着力の特に顕著な改善が生じる。板ガラス接着付着力は、付加的な付着プライマーを使用する必要なしに、結露水の負荷前ならびに結露水の負荷後に明らかに改善されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
(A1)少なくとも1つのメラミン樹脂を含有する下塗り塗料からなる少なくとも1つの下塗り塗膜および
(A2)マルチコート塗装系の最も上方の層としての少なくとも1つのクリヤラッカー塗膜を含むマルチコート塗装系、および
(B)マルチコート塗装系の最も上方のクリヤラッカー層の直ぐ上の湿分硬化性のイソシアネートベースの接着剤からなる接着剤層を含む多層コーティングであって、
(i)下塗り塗料中に含有された全てのアミノプラスト樹脂は、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような、完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂であり、および
(ii)下塗り塗料が、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有することを特徴とする、上記多層コーティング。
【請求項2】
下塗り塗料中に含有された全てのアミノプラスト樹脂は、ブタノールでエーテル化されたメチロール基の割合をエーテル化されたメチロール基に対して少なくとも95%有する、請求項1記載の多層コーティング。
【請求項3】
下塗り塗料が下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1つのメラミン樹脂を8〜15質量%含有する、請求項1または2記載の多層コーティング。
【請求項4】
下塗り塗料が下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1つのポリエステル結合剤を1〜6質量%含有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の多層コーティング。
【請求項5】
少なくとも1つのポリエステル結合剤が270mg KOH/g〜300mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の多層コーティング。
【請求項6】
少なくとも1つのポリエステル結合剤は、脂肪族、脂環式および/または芳香族のジカルボン酸またはポリカルボン酸およびジオールまたはポリオールに由来する構造単位を含有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の多層コーティング。
【請求項7】
少なくとも1つのポリエステル結合剤が、400〜2500g/molの質量平均分子量を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の多層コーティング。
【請求項8】
少なくとも1つの下塗り塗膜が10〜25μm、有利に15〜25μmの乾燥被膜層厚を有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の多層コーティング。
【請求項9】
少なくとも1つのクリヤラッカー塗膜が25〜50μm、有利に25〜45μmの乾燥被膜層厚を有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の多層コーティング。
【請求項10】
多層コーティングは、正確に10〜25μmの乾燥被膜層厚を有する下塗り塗膜および正確に25〜70μmの乾燥被膜層厚を有するクリヤラッカー塗膜を有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の多層コーティング。
【請求項11】
多層コーティングを形成させるためのメラミン樹脂含有下塗り塗膜であって、
(i)下塗り塗料中に含有された全てのアミノプラスト樹脂は、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような、完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂であり、および
(ii)下塗り塗料が、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有することを特徴とする、多層コーティングを形成させるためのメラミン樹脂含有下塗り塗膜。
【請求項12】
工程
(a)
(A1)少なくとも1つのメラミン樹脂を含有する下塗り塗料からなる少なくとも1つの下塗り塗膜および
(A2)マルチコート塗装系の最も上方の層としての少なくとも1つのクリヤラッカー塗膜を含むマルチコート塗装系で基体を被覆し、
(b)マルチコート塗装系を硬化し、および
(c)マルチコート塗装系の最も上方のクリヤラッカー層の直ぐ上の湿分硬化性のイソシアネートベースの接着剤からなる接着剤層を施すことを含む多層コーティングの形成方法であって、
(i)下塗り塗料中に含有された全てのアミノプラスト樹脂は、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような、完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂であり、および
(ii)下塗り塗料が、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有することを特徴とする、上記の多層コーティング形成方法。
【請求項13】
工程
(a)
(A1)少なくとも1つのメラミン樹脂を含有する下塗り塗料からなる少なくとも1つの下塗り塗膜および
(A2)マルチコート塗装系の最も上方の層としての少なくとも1つのクリヤラッカー塗膜を含むマルチコート塗装系で基質を被覆し、
(b)マルチコート塗装系を硬化し、
(c)マルチコート塗装系の最も上方のクリヤラッカー層の直ぐ上の湿分硬化性のイソシアネートベースの接着剤からなる接着剤層からなる接着剤層を施し、および
(d)ガラス板を接着剤層上に施し、かつ接着剤を硬化させることを含む、多層コーティングで被覆された基質上にガラスシートを接着させるための多層コーティングの使用であって、
(i)下塗り塗料中に含有された全てのアミノプラスト樹脂は、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような、完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂であるか、または
(ii)下塗り塗料が、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有するか、または
(iii)下塗り塗料中に含有されている全てのアミノプラスト樹脂は、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂であり、および下塗り塗料は、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有することを特徴とする、多層コーティングで被覆された基質上にガラスシートを接着させるための多層コーティングの使用。
【請求項14】
(iii)下塗り塗料中に含有されている全てのアミノプラスト樹脂は、エーテル化されたメチロール基の少なくとも90%がブタノールでエーテル化されているような完全にメチロール化され完全にエーテル化されたメラミン樹脂であり、および下塗り塗料は、少なくとも240mg KOH/gのヒドロキシル価および最大10mg KOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル結合剤を、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも1.0質量%含有する、請求項13記載の使用。
【請求項15】
基体が自動車車体の一部分である、請求項14または15記載の使用。

【公表番号】特表2012−524673(P2012−524673A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506390(P2012−506390)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002434
【国際公開番号】WO2010/121794
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】