説明

多層プリント配線板の製造方法

【課題】 信頼性の高い半導体素子を内蔵する多層プリント配線板の製造方法を提案する。
【解決手段】 ICチップ20をダイパッド38がUVテープ40に接するように載置して、充填剤41を充填した後、該UVテープ40を剥がしてから、ICチップ20にビルドアップ層を形成する。このため、ICチップとビルドアップ層のバイアホールとを適切に電気接続させることができ、信頼性の高い半導体素子内蔵多層プリント配線板を製造することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特にICチップなどの半導体素子を内蔵する多層プリント配線板の製造方法に関するのもである。
【0002】
【従来の技術】ICチップは、ワイヤーボンディング、TAB、フリップチップなどの実装方法によって、プリント配線板との電気的接続を取っていた。ワイヤーボンディングは、プリント配線板にICチップを接着剤によりダイボンディングさせて、該プリント配線板のパッドとICチップのパッドとを金線などのワイヤーで接続させた後、ICチップ並びにワイヤーを守るために熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂などの封止樹脂を施していた。
【0003】TABは、ICチップのバンプとプリント配線板のパッドとをリードと呼ばれる線を半田などによって一括して接続させた後、樹脂による封止を行っていた。フリップチップは、ICチップとプリント配線板のパッド部とをバンプを介して接続させて、バンプとの隙間に樹脂を充填させることによって行っていた。
【0004】しかしながら、それぞれの実装方法は、ICチップとプリント配線板の間に接続用のリード部品(ワイヤー、リード、バンプ)を介して電気的接続を行っている。それらの各リード部品は、切断、腐食し易く、これにより、ICチップとの接続が途絶えたり、誤作動の原因となることがあった。また、それぞれの実装方法は、ICチップを保護するためにエポキシ樹脂等の熱可塑性樹脂によって封止を行っているが、その樹脂を充填する際に気泡を含有すると、気泡が起点となって、リード部品の破壊やICパッドの腐食、信頼性の低下を招いてしまう。熱可塑性樹脂による封止は、それぞれの部品に合わせて樹脂装填用プランジャー、金型を作成する必要が有り、また、熱硬化性樹脂であってもリード部品、ソルダーレジストなどの材質などを考慮した樹脂を選定しなくては成らないために、それぞれにおいてコスト的にも高くなる原因にもなった。
【0005】一方、上述したようにICチップをプリント配線板(パッケージ基板)の外部に取り付けるのではなく、基板に半導体素子を埋め込んで、その上層に、ビルドアップ層を形成させることにより電気的接続を取る従来技術として、特開平9−321408号(USP5875100)、特開平10−256429号、特開平11−126978号などが提案されている。
【0006】特開平9−321408号(USP5875100)には、ダイパッド上に、スタッドバンプを形成した半導体素子をプリント配線板に埋め込んで、スタッドバンプ上に配線を形成して電気的接続を取っていた。しかしながら、該スタッドバンプはタマネギ状であり高さのバラツキが大きいために、層間絶縁層を形成させると、平滑性が低下し、バイアホールを形成させても未接続になりやすい。また、スタッドバンプをボンディングにより一つ一つ植設しており、一括して配設することができず、生産性という点でも難点があった。
【0007】特開平10−256429号には、セラミック基板に半導体素子を収容し、フリップチップ形態によって電気的接続されている構造が示されている。しかしながら、セラミックは外形加工性が悪く、半導体素子の納まりがよくない。また、該バンプでは、高さのバラツキも大きくなった。そのために、層間絶縁層の平滑性が損なわれ、接続が低下してしまう。
【0008】特開平11−126978号には、空隙の収容部に半導体素子などの電子部品埋め込んで、導体回路と接続して、バイアホールを介して積蔵している多層プリント配線板が示されている。しかしながら、収容部が空隙であるために、位置ずれを引き起こしやすく、半導体素子のパッドとの未接続が起き易い。また、ダイパッドと導体回路とを直接接続させているので、ダイパッドに酸化被膜ができやすく、絶縁抵抗が上昇してしまう問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、信頼性の高い半導体素子を内蔵する多層プリント配線板の製造方法を提案することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1の多層プリント配線板の製造方法では、少なくとも以下の(a)〜(f)の工程を有することを技術的特徴とする:(a)コア基板に形成した通孔の底部にシートを張る工程;
(b)前記通孔の底部の前記シートに、端子が前記シートに接するように半導体素子を載置する工程;
(c)前記通孔内に樹脂を充填する工程;
(d)前記樹脂を加圧及び硬化する工程;
(e)前記シートを剥離する工程;
(f)前記半導体素子の上面にビルドアップ層を形成する工程。
【0011】請求項1の発明では、コア基板の通孔の底部のシートに、端子がシートに接するように半導体素子を載置し、該通孔内に樹脂を充填してから、シートを剥がし、ビルドアップ層を形成する。即ち、半導体素子を端子がシートに接するように載置して、該シートを剥がしてから、半導体素子にビルドアップ層を形成するので、端子とビルドアップ層の配線とを適切に電気接続させることができ、信頼性の高い半導体素子内蔵多層プリント配線板を製造することが可能となる。
【0012】請求項2の多層プリント配線板の製造方法は、少なくとも以下の(a)〜(i)の工程を有することを技術的特徴とする:(a)コア基板に形成した通孔の底部にシートを張る工程;
(b)前記通孔の底部の前記シートに、端子が前記シートに接するように半導体素子を載置する工程;
(c)前記通孔内に樹脂を充填する工程;
(d)前記樹脂を加圧及び仮硬化する工程;
(e)前記シートを剥離する工程;
(f)前記コア基板の底部側を研磨し、前記半導体素子の底部を露出させる工程;
(g)前記樹脂を本硬化する工程;
(h)前記半導体素子の底部に放熱板を取り付ける工程;
(i)前記半導体素子の上面にビルドアップ層を形成する工程。
【0013】請求項2の発明では、コア基板の通孔の底部のシートに、端子がシートに接するように半導体素子を載置し、該通孔内に樹脂を充填してから、シートを剥がし、ビルドアップ層を形成する。即ち、半導体素子を端子がシートに接するように載置して、該シートを剥がしてから、半導体素子にビルドアップ層を形成するので、端子とビルドアップ層の配線とを適切に電気接続させることができ、信頼性の高い半導体素子内蔵多層プリント配線板を製造することが可能となる。また、コア基板の底部側を研磨し、半導体素子の底部を露出させるため、半導体素子の底部に放熱板を取り付けることが可能になり、半導体素子の動作の安定性を向上させることができる。
【0014】ICチップのダイパッドにトランジション層を設ける理由を説明する。ICチップのパッドは一般的にアルミニウムなどで製造されている。トランジション層を形成させていないダイパッドのままで、フォトエッチングにより層間絶縁層のバイアホールを形成させた時、ダイパッドのままであれば露光、現像後にパッドの表層に樹脂が残りやすかった。それに、現像液の付着によりパッドの変色を引き起こした。一方、レーザによりバイアホールを形成させた場合にもダイパッドを焼損しない条件で行うと、パッド上に樹脂残りが発生した。また、後工程に、酸や酸化剤あるいはエッチング液に浸漬させたり、種々のアニール工程を経ると、ICチップのパッドの変色、溶解が発生した。更に、ICチップのパッドは、40μm程度の径で作られており、バイアホールはそれより大きいので位置ずれの際に未接続が発生しやすい。
【0015】これに対して、ダイパッド上に銅等からなるトランジション層を設けることで、溶剤の使用が可能となりパッド上の樹脂残りを防ぐことができる。また、後工程の際に酸や酸化剤あるいはエッチング液に浸漬させたり、種々のアニール工程を経てもパッドの変色、溶解が発生しない。これにより、パッドとバイアホールとの接続性や信頼性を向上させる。更に、ICチップのパッド上に40μmよりも大きな径のトランジション層を介在させることで、バイアホールを確実に接続させることができる。望ましいのは、トランジション層は、バイアホール径と同等以上のものがよい。
【0016】さらに、トランジション層が形成されているので、半導体素子をプリント配線板に収納する前、もしくはその後にでも半導体素子の動作や電気検査を容易に行なえるようになった。それは、ダイパッドよりも大きいトランジション層が形成されているので、プローブピンが接触し易くなったからである。それにより、予め製品の可否が判定することができ、生産性やコスト面でも向上させることができる。
【0017】故に、トランジションを形成することによって、半導体素子をプリント配線に収納することが好適に行える。つまり、トランジション層を有する半導体素子は、プリント配線板に埋め込むため半導体素子であるともいえる。該トランジション層は、ダイパッド上に、薄膜層を形成し、その上に厚付け層を形成して成る。少なくとも2層以上で形成することができる。
【0018】本発明で定義されるトランジション層について説明する。トランジション層は、従来のICチップ実装技術を用いることなく、半導体素子であるICチップとプリント配線板と直接接続を取るために設けられた中間の仲介層を意味する。特徴としては、2層以上の金属層で形成され、半導体素子であるICチップのダイパッドよりも大きくさせることにある。それによって、電気的接続や位置合わせ性を向上させるものであり、かつ、ダイパッドにダメージを与えることなくレーザやフォトエッチングによるバイアホール加工を可能にするものである。そのため、プリント配線板へのICチップの埋め込み、収容、収納や接続を確実にすることができる。また、トランジション層上には、直接、プリント配線板の導体層である金属を形成することを可能にする。その導体層の一例としては、層間樹脂絶縁層のバイアホールや基板上のスルーホールなどがある。
【0019】それぞれに多層プリント配線板だけで機能を果たしてもいるが、場合によっては半導体装置としてのパッケージ基板としての機能させるために外部基板であるマザーボードやドーターボードとの接続のため、BGA、半田バンプやPGA(導電性接続ピン)を配設させてもよい。また、この構成は、従来の実装方法で接続した場合よりも配線長を短くできて、ループインダクタンスも低減できる。
【0020】本願発明に用いられるICチップなどの電子部品を内蔵させる樹脂製基板としては、エポキシ樹脂、BT樹脂、フェノール樹脂などにガラスエポキシ樹脂などの補強材や心材を含浸させた樹脂、エポキシ樹脂を含浸させたプリプレグを積層させたものなどが用いられるが、一般的にプリント配線板で使用されるものを用いることができる。それ以外にも両面銅張積層板、片面板、金属膜を有しない樹脂板、樹脂シートを用いることができる。ただし、350℃以上の温度を加えると樹脂は、溶解、炭化をしてしまう。
【0021】ICチップの全面に蒸着、スパッタリングなどの物理的な蒸着を行い、全面に導電性の金属膜を形成させる。その金属としては、スズ、クロム、チタン、ニッケル、亜鉛、コバルト、金、銅などの金属を1層以上形成させるものがよい。厚みとしては、0.001〜2.0μmの間で形成させるのがよい。特に、0.01〜1.0μmの間が望ましい。特に、ニッケル、クロム、チタンで形成するのがよい。界面から湿分の侵入がなく、金属密着性に優れるからである。
【0022】該金属膜の上に、更に無電解めっき等により金属膜を設けることもできる。上側の金属膜は、ニッケル、銅、金、銀などの金属を1層以上形成させるものがよい。厚みとしては、0.01〜5.0μmの間で形成させるのがよい。特に、0.1〜3.0μmの間が望ましい。
【0023】その金属膜上に、無電解あるいは電解めっきにより、厚付けさせる。形成されるメッキの種類としてはニッケル、銅、金、銀、亜鉛、鉄などがある。電気特性、経済性、また、後程で形成されるビルドアップである導体層は主に銅であることから、銅を用いることがよい。その厚みは1〜20μmの範囲で行うのがよい。それより厚くなると、エッチングの際にアンダーカットが起こってしまい、形成されるトランジション層とバイアホールと界面に隙間が発生することがある。その後、エッチングレジストを形成して、露光、現像してトランジション層以外の部分の金属を露出させてエッチングを行い、ICチップのパッド上にトランジション層を形成させる。
【0024】また、上記トランジション層の製造方法以外にも、ICチップ及びコア基板の上に形成した金属膜上にドライフィルムレジストを形成してトランジション層に該当する部分を除去させて、電解めっきによって厚付けした後、レジストを剥離してエッチング液によって、同様にICチップのパッド上にトランジション層を形成させることもできる。
【0025】コア基板の通孔を塞ぐシートとして、UV照射により粘着力が低下するUVテープを用いることが好適である。UV照射により、半導体素子の端子に接着剤が残ることなく剥がれるため、端子とビルドアップ層の配線とを適切に電気接続させることができ、信頼性の高い半導体素子内蔵多層プリント配線板を製造することが可能となる。
【0026】また、樹脂の加圧を減圧下で行うことが好適である。減圧することで、コア基板と樹脂との間、及び、樹脂中に気泡が残ることがなくなり、多層プリント配線板の信頼性を高めることができる。
【0027】コア基板に形成した通孔にテーパを設けることも好適である。これにより、コア基板の通孔と樹脂との間に気泡や溝が残ることがなくなり、多層プリント配線板の信頼性を高めることができる。また、コア基板の平坦性を確保できる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。図9に示すように多層プリント配線板10は、ICチップ20を収容するコア基板30と、層間樹脂絶縁層50、層間樹脂絶縁層150とからなる。層間樹脂絶縁層50には、バイアホール60および導体回路58が形成され、層間樹脂絶縁層150には、バイアホール160および導体回路158が形成されている。ICチップ20の裏面には放熱板44が取り付けられている。
【0029】層間樹脂絶縁層150の上には、ソルダーレジスト層70が配設されている。ソルダーレジスト層70の開口部71下の導体回路158には、図示しないドータボード、マザーボード等の外部基板と接続するための半田バンプ76が設けられている。
【0030】上述した多層プリント配線板10に収容された半導体素子(ICチップ)の構成について、ICチップ20の断面を示す図3(B)、及び、平面図を示す図4(B)を参照して説明する。
【0031】図3(B)に示すようにICチップ20の上面には、ダイパッド22及び配線(図示せず)が配設されており、該ダイパッド22及び配線の上に、パッシベーション膜24が被覆され、該ダイパッド22には、パッシベーション膜24の開口が形成されている。ダイパッド22の上には、主として銅からなるトランジション層38が形成されている。トランジション層38は、薄膜層33と電解めっき膜37とからなる。
【0032】本実施形態の多層プリント配線板10では、コア基板30にICチップ20を内蔵させて、該ICチップ20のパッド22にはトランジション層38を配設させている。このため、リード部品や封止樹脂を用いず、ICチップと多層プリント配線板(パッケージ基板)との電気的接続を取ることができる。また、ICチップ部分にトランジション層38が形成されていることから、ICチップ部分には平坦化されるので、上層の層間絶縁層50も平坦化されて、膜厚みも均一になる。更に、トランジション層によって、上層のバイアホール60を形成する際も形状の安定性を保つことができる。
【0033】更に、ダイパッド22上に銅製のトランジション層38を設けることで、パッド22上の樹脂残りを防ぐことができ、また、後工程の際に酸や酸化剤あるいはエッチング液に浸漬させたり、種々のアニール工程を経てもパッド22の変色、溶解が発生しない。これにより、ICチップのパッドとバイアホールとの接続性や信頼性を向上させる。更に、40μm径パッド22上に60μm径以上のトランジション層38を介在させることで、60μm径のバイアホールを確実に接続させることができる。
【0034】引き続き、図9を参照して上述した多層プリント配線板の製造方法について説明する。先ず、図3(B)を参照して上述した半導体素子の製造方法について、図1〜図4を参照して説明する。
【0035】(1)先ず、図1(A)に示すシリコンウエハー20Aに、定法により配線21及びダイパッド22を形成する(図1(B)及び図1(B)の平面図を示す図4(A)参照、なお、図1(B)は、図4(A)のB−B断面を表している)。
(2)次に、ダイパッド22及び配線21の上に、パッシベーション膜24を形成し、ダイパッド22上に開口24aを設ける(図1(C))。
【0036】(3)シリコンウエハー20Aに蒸着、スパッタリングなどの物理的な蒸着を行い、全面に導電性の金属膜(薄膜層)33を形成させる(図2(A))。その厚みは、0.001〜2.0μmの範囲で形成させるのがよい。その範囲よりも下の場合は、全面に薄膜層を形成することができない。その範囲よりも上の場合は、形成される膜に厚みのバラツキが生じてしまう。最適な範囲は0.01〜1.0μmである。形成する金属としては、スズ、クロム、チタン、ニッケル、亜鉛、コバルト、金、銅の中から、選ばれるものを用いることがよい。それらの金属は、ダイパッドの保護膜となり、かつ、電気特性を劣化させることがない。第1実施形態では、薄膜層33は、クロムにより形成される。
【0037】(4)その後、液状レジスト、感光性レジスト、ドライフィルムのいずれかのレジスト層を薄膜層33上に形成させる。トランジション層38を形成する部分が描画されたマスク(図示せず)を該レジスト層上に、載置して、露光、現像を経て、レジスト35に非形成部35aを形成させる。電解メッキを施してレジスト層の非形成部35aに厚付け層(電解めっき膜)37を設ける(図2(B))。形成されるメッキの種類としては銅、ニッケル、金、銀、亜鉛、鉄などがある。電気特性、経済性、また、後程で形成されるビルドアップである導体層は主に銅であることから、銅を用いるとよく、第1実施形態では、銅を用いる。その厚みは1〜20μmの範囲で行うのがよい。
【0038】(5)メッキレジスト35をアルカリ溶液等で除去した後、メッキレジスト35下の金属膜33を硫酸−過酸化水素水、塩化第二鉄、塩化第二銅、第二銅錯体−有機酸塩等のエッチング液によって除去することで、ICチップのパッド22上にトランジション層38を形成する(図2(C))。
【0039】(6)次に、基板にエッチング液をスプレイで吹きつけ、トランジション層38の表面をエッチングすることにより粗化面38αを形成する(図3(A)参照)。無電解めっきや酸化還元処理を用いて粗化面を形成することもできる。
【0040】(7)最後に、トランジション層38が形成されたシリコンウエハー20Aを、ダイシングなどによって個片に分割してICチップ20を形成する(図3(B)及び図3(B)の平面図である図4(B)参照)。その後、必要に応じて、分割されたICチップ20の動作確認や電気検査を行なってもよい。ICチップ20は、ダイパッド22よりも大きなトランジション層38が形成されているので、プローブピンが当てやすく、検査の精度が高くなっている。
【0041】なお、図3(B)を参照して上述した第1実施形態に係る半導体素子では、トランジション層38が、薄膜層33と電解めっき膜37とからなる2層構造であった。これに対して、トランジション層を、薄膜層(第1薄膜層)と無電解めっき膜(第2薄膜層)と電解めっき膜(厚付け層)とからなる3層構造として構成することもできる。3層構造の場合、第2薄膜層を、第1薄膜層33の上に、スパッタ、蒸着、無電解めっきによって積層する。その厚みは、0.01〜5μmが良く、特に0.1〜3.0μmが望ましい。その場合積層できる金属は、ニッケル、銅、金、銀の中から選ばれるものがよい。
【0042】また、図3(B)を参照して上述した第1実施形態では、セミアディテブ工程を用い、レジスト非形成部に厚付け層37を形成することでトランジション層38を形成した。これに対して、フルアディテブ工程を用い、厚付け層を均一に形成した後、レジストを設け、レジスト非形成部をエッチングで除去することでトランジション層38を形成することもできる。
【0043】引き続き、図3(B)に示すICチップ20を収容する多層プリント配線板の製造工程について説明する。
(1)ガラスクロス等の心材にBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂、エポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグを積層して硬化させた厚さ0.5mmのコア基板30を出発材料とする。先ず、コア基板30にICチップ収容用の通孔32を形成する(図5(A)参照)。ここでは、心材に樹脂を含浸させた樹脂基板30を用いているが、心材を備えない樹脂基板を用いることもできる。なお、通孔32の下端開口部には、テーパ32aを設けることが好適である。テーパ32aにより、後述する加圧において、ICチップ20、充填樹脂41、基板30の間に気泡が残ることがなくなり、多層プリント配線板の信頼性を高めることができる。
【0044】(2)その後、コア基板30の通孔32の底面にUVテープ40を張り付ける(図5(B))。このUVテープ40としては、リンテック株式会社のAdwillD−201、D−203、D2303DF、D−204、D210、D218等のUV照射により接着面の接着力を失い綺麗に剥がせる接着テープを用いることができる。ここでは、UVテープを用いるが、仮硬化の際に加える80℃以上の高熱でも粘着性が低下しない種々の接着テープ、例えば、ポリイミドテープ等を用いることができる。
【0045】(3)コア基板30に形成された通孔32のUVテープ40上に、図3(B)を参照して上述したICチップ20を、ダイパッド38がUVテープ40の接着面に接するように載置する(図5(C)参照)。
【0046】(4)コア基板30に形成された通孔32内へ充填剤41を充填する(図5(D))。充填は、印刷、マスク印刷、ポッチング等により行う。この充填剤は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などに、イミダゾール系、アミン系、無水酸系などの硬化剤と、フィラー(有機粒子、無機粒子、金属粒子)と、所望により溶剤(ケトン系、トルエン系など)とが配合された粘度0.1〜50Pa・Sの樹脂を好適に用いることができる。充填剤は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、もしくはそれらの複合体を用いることができる。
【0047】(5)充填剤41の充填後、10分程度減圧室で減圧し、充填剤41中の気泡抜きを行う。これにより、充填剤41中に気泡が残ることがなくなり、多層プリント配線板の信頼性を高めることができる。
【0048】(6)ステンレス(SUS)プレス板100A、100Bで、上述したコア基板30を上下方向から10分間加圧する(図5(E))。その後、加圧を続けながら、70℃〜120°で30分程度加熱し、充填剤41を仮硬化させる。加圧、加圧及び/又は仮硬化は、減圧下で行うことが好適である。減圧することで、ICチップ20、コア基板30、充填剤41の間、及び、充填剤41中に気泡が残ることがなくなり、多層プリント配線板の信頼性を高めることができる。この加圧の際にダイパッド38には、UVテープ40を緩衝材として圧力が加わるため、ダイパッド38を損傷することがない。
【0049】(7)充填剤41を仮硬化させたコア基板30のUVテープ40を、VU照射して粘着力を失わせてから剥がす(図6(A))。本実施形態では、UVテープ40を用いるため、ICチップのダイパッド38上に接着剤が残る事無く、また、ダイパッド39を傷つけることなく綺麗に剥がすことができる。このため、後工程でダイパッド38に適正にバイアホール60を接続させることができる。
【0050】(8)その後、ICチップ20の裏面側の充填剤41及びコア基板30を、ベルト研磨紙(三共理化学社製)を用いたベルトサンダー研磨により研磨し、ICチップの裏面側を露出させる(図6(B))。本実施形態では、充填剤41を仮硬化した状態で研磨するため、容易に研磨を行うことができる。
【0051】(9)この後、更に加熱して、充填材41を本硬化させることでICチップ20を収容するコア基板30を形成する。この本硬化は、減圧下で行うことが好適である。減圧することで、充填剤41中に気泡や残ることがなくなり、溝が形成されない。また、多層プリント配線板の信頼性や平坦性を高めることができる。
【0052】(10)ICチップ20の裏面側に、熱伝導性接着剤(例えば金属粒子を含む樹脂)42を介して放熱板44を取り付ける(図6(C))。放熱板としては、アルミニウム、銅等の金属板、セラミック板を用いることができる。本実施形態では、コア基板30の底部側を研磨し、ICチップ20の底部を露出させるため、ICチップの底部に放熱板44を取り付けることが可能になり、ICチップ20の動作の安定性を向上させることができる。
【0053】(11)上記工程を経たICチップの表面側に、厚さ50μmの熱硬化型樹脂シートを温度50〜150℃まで昇温しながら圧力5kg/cm2で真空圧着ラミネートし、層間樹脂絶縁層50を設ける(図6(D)参照)。真空圧着時の真空度は、10mmHgである。
【0054】(12)次に、波長10.4μmのCO2ガスレーザにて、ビーム径5mm、トップハットモード、パルス幅5.0μ秒、マスクの穴径0.5mm、1ショットの条件で、層間樹脂絶縁層50に直径60μmのバイアホール用開口48を設ける(図6(E)参照)。クロム酸や過マンガン酸などの酸化剤を用いて、開口48内の樹脂残りを除去する。ダイパッド22上に銅製のトランジション層38を設けることで、パッド22上の樹脂残りを防ぐことができ、これにより、パッド22と後述するバイアホール60との接続性や信頼性を向上させる。更に、40μm径パッド22上に60μm以上の径のトランジション層38を介在させることで、60μm径のバイアホール用開口48を確実に接続させることができる。なお、ここでは、酸化剤を用いて樹脂残さを除去したが、酸素プラズマを用いてデスミア処理を行うことも可能である。
【0055】(13)次に、次に、クロム酸、過マンガン酸塩などの酸化剤等に浸漬させることによって、層間樹脂絶縁層50の粗化面50αを設ける(図7(A)参照)。該粗化面50αは、0.1〜5μmの範囲で形成されることがよい。その一例として、過マンガン酸ナトリウム溶液50g/l、温度60℃中に5〜25分間浸漬させることによって、2〜3μmの粗化面50αを設ける。上記以外には、日本真空技術株式会社製のSV−4540を用いてプラズマ処理を行い、層間樹脂絶縁層50の表面に粗化面50αを形成することもできる。この際、不活性ガスとしてはアルゴンガスを使用し、電力200W、ガス圧0.6Pa、温度70℃の条件で、2分間プラズマ処理を実施する。
【0056】(14)粗化面50αが形成された層間樹脂絶縁層50上に、金属層52を設ける(図7(B)参照)。金属層52は、無電解めっきによって形成させる。予め層間樹脂絶縁層50の表層にパラジウムなどの触媒を付与させて、無電解めっき液に5〜60分間浸漬させることにより、0.1〜5μmの範囲でめっき膜である金属層52を設ける。その一例として、〔無電解めっき水溶液〕
NiSO4 0.003 mol/l酒石酸 0.200 mol/l硫酸銅 0.030 mol/lHCHO 0.050 mol/lNaOH 0.100 mol/lα、α′−ビピルジル 100 mg/lポリエチレングリコール(PEG) 0.10 g/l34℃の液温度で40分間浸漬させた。上記以外でも上述したプラズマ処理と同じ装置を用い、内部のアルゴンガスを交換した後、Ni及びCuをターゲットにしたスパッタリングを、気圧0.6Pa、温度80℃、電力200W、時間5分間の条件で行い、Ni/Cu金属層52を層間樹脂絶縁層50の表面に形成することもできる。このとき、形成されるNi/Cu金属層52の厚さは0.2μmである。
【0057】(15)上記処理を終えた基板30に、市販の感光性ドライフィルムを貼り付け、フォトマスクフィルムを載置して、100mJ/cm2で露光した後、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、厚さ15μmのめっきレジスト54を設ける。次に、以下の条件で電解めっきを施して、厚さ15μmの電解めっき膜56を形成する(図7(C)参照)。なお、電解めっき水溶液中の添加剤は、アトテックジャパン社製のカパラシドHLである。
【0058】
〔電解めっき水溶液〕
硫酸 2.24 mol/l 硫酸銅 0.26 mol/l 添加剤(アトテックジャパン製、カパラシドHL)
19.5 ml/l 〔電解めっき条件〕
電流密度 1A/dm時間 65分 温度 22±2℃
【0059】(16)めっきレジスト54を5%NaOHで剥離除去した後、そのめっきレジスト下の金属層52を硝酸および硫酸と過酸化水素の混合液を用いるエッチングにて溶解除去し、金属層52と電解めっき膜56からなる厚さ16μmの導体回路58及びバイアホール60を形成し、第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液によって、粗化面58α、60αを形成する(図7(D)参照)。本実施形態では、図5(E)を参照して上述したように、コア基板30の上面が完全に平滑に形成されているため、バイアホール60によりトランジション層38に適切に接続を取ることができる。このため、多層プリント配線板の信頼性を高めることが可能となる。
【0060】(17)次いで、上記(11)〜(16)の工程を、繰り返すことにより、さらに上層の層間樹脂絶縁層150及び導体回路158(バイアホール160を含む)を形成する(図8(A)参照)。
【0061】(18)次に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)に60重量%の濃度になるように溶解させた、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量4000)46.67重量部、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル社製、商品名:エピコート1001)15重量部、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、商品名:2E4MZ−CN)1.6重量部、感光性モノマーである多官能アクリルモノマー(共栄化学社製、商品名:R604)3重量部、同じく多価アクリルモノマー(共栄化学社製、商品名:DPE6A)1.5重量部、分散系消泡剤(サンノプコ社製、商品名:S−65)0.71重量部を容器にとり、攪拌、混合して混合組成物を調整し、この混合組成物に対して光重量開始剤としてベンゾフェノン(関東化学社製)2.0重量部、光増感剤としてのミヒラーケトン(関東化学社製)0.2重量部を加えて、粘度を25℃で2.0Pa・sに調整したソルダーレジスト組成物(有機樹脂絶縁材料)を得る。なお、ソルダーレジストとして市販のソルダーレジストを用いることもできる。なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器社製、DVL−B型)で60rpmの場合はローターNo.4、6rpmの場合はローターNo.3によった。
【0062】(19)次に、基板30に、上記ソルダーレジスト組成物を20μmの厚さで塗布し、70℃で20分間、70℃で30分間の条件で乾燥処理を行った後、ソルダーレジストレジスト開口部のパターンが描画された厚さ5mmのフォトマスクをソルダーレジスト層70に密着させて1000mJ/cm2の紫外線で露光し、DMTG溶液で現像処理し、200μmの直径の開口71を形成する(図8(B)参照)。
【0063】(20)次に、ソルダーレジスト層(有機樹脂絶縁層)70を形成した基板を、塩化ニッケル(2.3×10-1mol/l)、次亞リン酸ナトリウム(2.8×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.6×10-1mol/l)を含むpH=4.5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部71に厚さ5μmのニッケルめっき層72を形成する。さらに、その基板を、シアン化金カリウム(7.6×10-3mol/l)、塩化アンモニウム(1.9×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.2×10-1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(1.7×10-1mol/l)を含む無電解めっき液に80℃の条件で7.5分間浸漬して、ニッケルめっき層72上に厚さ0.03μmの金めっき層74を形成することで、導体回路158に半田パッド75を形成する(図8(C)参照)。
【0064】(21)この後、ソルダーレジスト層70の開口部71に、半田ペーストを印刷して、200℃でリフローすることにより、半田バンプ76を形成する。これにより、ICチップ20を内蔵し、半田バンプ76を有する多層プリント配線板10を得ることができる(図9参照)。
【0065】本実施形態では、ICチップ20をダイパッ38がUVテープ40に接するように載置して、該UVテープ40を剥がしてから、ICチップ20にビルドアップ層を形成する。このため、ICチップとビルドアップ層のバイアホール60とを適切に電気接続させることができ、信頼性の高い半導体素子内蔵多層プリント配線板を製造することが可能となる。
【0066】上述した実施形態では、層間樹脂絶縁層50、150に熱硬化型樹脂シートを用いた。この熱硬化型樹脂シートには、難溶性樹脂、可溶性粒子、硬化剤、その他の成分が含有されている。それぞれについて以下に説明する。
【0067】本発明の製造方法において使用する熱硬化型樹脂シートは、酸または酸化剤に可溶性の粒子(以下、可溶性粒子という)が酸または酸化剤に難溶性の樹脂(以下、難溶性樹脂という)中に分散したものである。なお、本発明で使用する「難溶性」「可溶性」という語は、同一の酸または酸化剤からなる溶液に同一時間浸漬した場合に、相対的に溶解速度の早いものを便宜上「可溶性」と呼び、相対的に溶解速度の遅いものを便宜上「難溶性」と呼ぶ。
【0068】上記可溶性粒子としては、例えば、酸または酸化剤に可溶性の樹脂粒子(以下、可溶性樹脂粒子)、酸または酸化剤に可溶性の無機粒子(以下、可溶性無機粒子)、酸または酸化剤に可溶性の金属粒子(以下、可溶性金属粒子)等が挙げられる。これらの可溶性粒子は、単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。
【0069】上記可溶性粒子の形状は特に限定されず、球状、破砕状等が挙げられる。また、上記可溶性粒子の形状は、一様な形状であることが望ましい。均一な粗さの凹凸を有する粗化面を形成することができるからである。
【0070】上記可溶性粒子の平均粒径としては、0.1〜10μmが望ましい。この粒径の範囲であれば、2種類以上の異なる粒径のものを含有してもよい。すなわち、平均粒径が0.1〜0.5μmの可溶性粒子と平均粒径が1〜3μmの可溶性粒子とを含有する等である。これにより、より複雑な粗化面を形成することができ、導体回路との密着性にも優れる。なお、本発明において、可溶性粒子の粒径とは、可溶性粒子の一番長い部分の長さである。
【0071】上記可溶性樹脂粒子としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等からなるものが挙げられ、酸あるいは酸化剤からなる溶液に浸漬した場合に、上記難溶性樹脂よりも溶解速度が速いものであれば特に限定されない。上記可溶性樹脂粒子の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等からなるものが挙げられ、これらの樹脂の一種からなるものであってもよいし、2種以上の樹脂の混合物からなるものであってもよい。
【0072】また、上記可溶性樹脂粒子としては、ゴムからなる樹脂粒子を用いることもできる。上記ゴムとしては、例えば、ポリブタジエンゴム、エポキシ変性、ウレタン変性、(メタ)アクリロニトリル変性等の各種変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基を含有した(メタ)アクリロニトリル・ブタジエンゴム等が挙げられる。これらのゴムを使用することにより、可溶性樹脂粒子が酸あるいは酸化剤に溶解しやすくなる。つまり、酸を用いて可溶性樹脂粒子を溶解する際には、強酸以外の酸でも溶解することができ、酸化剤を用いて可溶性樹脂粒子を溶解する際には、比較的酸化力の弱い過マンガン酸塩でも溶解することができる。また、クロム酸を用いた場合でも、低濃度で溶解することができる。そのため、酸や酸化剤が樹脂表面に残留することがなく、後述するように、粗化面形成後、塩化パラジウム等の触媒を付与する際に、触媒が付与されなたかったり、触媒が酸化されたりすることがない。
【0073】上記可溶性無機粒子としては、例えば、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、カリウム化合物、マグネシウム化合物およびケイ素化合物からなる群より選択される少なくとも一種からなる粒子等が挙げられる。
【0074】上記アルミニウム化合物としては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム等が挙げられ、上記カルシウム化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、上記カリウム化合物としては、炭酸カリウム等が挙げられ、上記マグネシウム化合物としては、マグネシア、ドロマイト、塩基性炭酸マグネシウム等が挙げられ、上記ケイ素化合物としては、シリカ、ゼオライト等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。
【0075】上記可溶性金属粒子としては、例えば、銅、ニッケル、鉄、亜鉛、鉛、金、銀、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムおよびケイ素からなる群より選択される少なくとも一種からなる粒子等が挙げられる。また、これらの可溶性金属粒子は、絶縁性を確保するために、表層が樹脂等により被覆されていてもよい。
【0076】上記可溶性粒子を、2種以上混合して用いる場合、混合する2種の可溶性粒子の組み合わせとしては、樹脂粒子と無機粒子との組み合わせが望ましい。両者とも導電性が低くいため樹脂シートの絶縁性を確保することができるとともに、難溶性樹脂との間で熱膨張の調整が図りやすく、樹脂シートからなる層間樹脂絶縁層にクラックが発生せず、層間樹脂絶縁層と導体回路との間で剥離が発生しないからである。
【0077】上記難溶性樹脂としては、層間樹脂絶縁層に酸または酸化剤を用いて粗化面を形成する際に、粗化面の形状を保持できるものであれば特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、これらの複合体等が挙げられる。また、これらの樹脂に感光性を付与した感光性樹脂であってもよい。感光性樹脂を用いることにより、層間樹脂絶縁層に露光、現像処理を用いてバイアホール用開口を形成することできる。これらのなかでは、熱硬化性樹脂を含有しているものが望ましい。それにより、めっき液あるいは種々の加熱処理によっても粗化面の形状を保持することができるからである。
【0078】上記難溶性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらには、1分子中に、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂がより望ましい。前述の粗化面を形成することができるばかりでなく、耐熱性等にも優れてるため、ヒートサイクル条件下においても、金属層に応力の集中が発生せず、金属層の剥離などが起きにくいからである。
【0079】上記エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
【0080】本発明で用いる樹脂シートにおいて、上記可溶性粒子は、上記難溶性樹脂中にほぼ均一に分散されていることが望ましい。均一な粗さの凹凸を有する粗化面を形成することができ、樹脂シートにバイアホールやスルーホールを形成しても、その上に形成する導体回路の金属層の密着性を確保することができるからである。また、粗化面を形成する表層部だけに可溶性粒子を含有する樹脂シートを用いてもよい。それによって、樹脂シートの表層部以外は酸または酸化剤にさらされることがないため、層間樹脂絶縁層を介した導体回路間の絶縁性が確実に保たれる。
【0081】上記樹脂シートにおいて、難溶性樹脂中に分散している可溶性粒子の配合量は、樹脂シートに対して、3〜40重量%が望ましい。可溶性粒子の配合量が3重量%未満では、所望の凹凸を有する粗化面を形成することができない場合があり、40重量%を超えると、酸または酸化剤を用いて可溶性粒子を溶解した際に、樹脂シートの深部まで溶解してしまい、樹脂シートからなる層間樹脂絶縁層を介した導体回路間の絶縁性を維持できず、短絡の原因となる場合がある。
【0082】上記樹脂シートは、上記可溶性粒子、上記難溶性樹脂以外に、硬化剤、その他の成分等を含有していることが望ましい。上記硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、これらの硬化剤のエポキシアダクトやこれらの硬化剤をマイクロカプセル化したもの、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン系化合物等が挙げられる。
【0083】上記硬化剤の含有量は、樹脂シートに対して0.05〜10重量%であることが望ましい。0.05重量%未満では、樹脂シートの硬化が不十分であるため、酸や酸化剤が樹脂シートに侵入する度合いが大きくなり、樹脂シートの絶縁性が損なわれることがある。一方、10重量%を超えると、過剰な硬化剤成分が樹脂の組成を変性させることがあり、信頼性の低下を招いたりしてしまうことがある。
【0084】上記その他の成分としては、例えば、粗化面の形成に影響しない無機化合物あるいは樹脂等のフィラーが挙げられる。上記無機化合物としては、例えば、シリカ、アルミナ、ドロマイト等が挙げられ、上記樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、メラニン樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられる。これらのフィラーを含有させることによって、熱膨脹係数の整合や耐熱性、耐薬品性の向上などを図り多層プリント配線板の性能を向上させることができる。
【0085】また、上記樹脂シートは、溶剤を含有していてもよい。上記溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートやトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。ただし、これらの層間樹脂絶縁層は、350℃以上の温度を加えると溶解、炭化をしてしまう。
【0086】
【発明の効果】以上記述したように発明では、コア基板の通孔の底部のシートに、端子がシートに接するように半導体素子を載置し、該通孔内に樹脂を充填してから、シートを剥がし、ビルドアップ層を形成する。即ち、半導体素子を端子がシートに接するように載置して、該シートを剥がしてから、半導体素子にビルドアップ層を形成するので、端子とビルドアップ層の配線とを適切に電気接続させることができ、信頼性の高い半導体素子内蔵多層プリント配線板を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)、(B)、(C)は、本発明の第1実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図2】(A)、(B)、(C)は、第1実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図3】(A)、(B)は、第1実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図4】(A)は、本発明の第1実施形態に係るシリコンウエハーの平面図であり、(B)は、個片化されたICチップの平面図である。
【図5】(A)、(B)、(C)、(D)、(E)は、第1実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図6】(A)、(B)、(C)、(D)、(E)は、第1実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図7】(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の第1実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図8】(A)、(B)、(C)は、本発明の第1実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る多層プリント配線板の断面図である。
【符号の説明】
20 ICチップ(半導体素子)
22 ダイパッド
24 パッシベーション膜
30 コア基板
32 通孔
32a テーパ
36 樹脂層
38 トランジション層
40 UVフィルム
41 充填剤
44 放熱板
50 層間樹脂絶縁層
58 導体回路
60 バイアホール
70 ソルダーレジスト層
76 半田バンプ
90 ドータボード
150 層間樹脂絶縁層
158 導体回路
160 バイアホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも以下の(a)〜(f)の工程を有することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法:(a)コア基板に形成した通孔の底部にシートを張る工程;
(b)前記通孔の底部の前記シートに、端子が前記シートに接するように半導体素子を載置する工程;
(c)前記通孔内に樹脂を充填する工程;
(d)前記樹脂を加圧及び硬化する工程;
(e)前記シートを剥離する工程;
(f)前記半導体素子の上面にビルドアップ層を形成する工程。
【請求項2】 少なくとも以下の(a)〜(i)の工程を有することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法:(a)コア基板に形成した通孔の底部にシートを張る工程;
(b)前記通孔の底部の前記シートに、端子が前記シートに接するように半導体素子を載置する工程;
(c)前記通孔内に樹脂を充填する工程;
(d)前記樹脂を加圧及び仮硬化する工程;
(e)前記シートを剥離する工程;
(f)前記コア基板の底部側を研磨し、前記半導体素子の底部を露出させる工程;
(g)前記樹脂を本硬化する工程;
(h)前記半導体素子の底部に放熱板を取り付ける工程;
(i)前記半導体素子の上面にビルドアップ層を形成する工程。
【請求項3】 前記半導体素子の前記端子上にトランジション層を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項4】 前記シートとして、UV照射により粘着力が低下するUVテープを用いることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項5】 前記樹脂の加圧を減圧下で行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項6】 前記コア基板に形成した前記通孔にテーパを設けることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1の多層プリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図8】
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【公開番号】特開2002−246757(P2002−246757A)
【公開日】平成14年8月30日(2002.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−104050(P2001−104050)
【出願日】平成13年4月3日(2001.4.3)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】