説明

多層物品の製造方法

本発明は、少なくとも一つの機能層2、20を具備する溶融多層樹脂の定量材1を圧縮成形することによって合成樹脂の多層物品9を製造する方法に関するものである。定量材の各層は圧縮時には溶融状態にある。該方法は少なくとも、ダイを通して樹脂を同時押出しすること、定量材1を得るために押出物を周期的に切断すること、及び定量材1を型のキャビティ内に溶融状態で置くこと、を含んでいる。該方法は、定量材内で、押出し方向とこの押出し方向に平行な機能層2、20の配置とを規定している。該方法は、押出し方向に交差する圧縮軸線16に対する非対称性を層の流れに導入するように、圧縮軸線16に沿って定量材が圧縮されることを特徴としている。
本発明は、前述の方法によって得られた物品に、及びこの方法の状況で用いられる定量材に、及び前述の方法を実行するための装置にも関係している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融樹脂からなる多層定量材を圧縮成形することによって多層物品を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平4-169207号公報は、型の中で定量材を圧縮することによって多層物品を製造する方法を記載しており、前記定量材の層は圧縮軸線に対して垂直に配置されている。図1は前記特許公報に記載された方法を図示するものである。その方法によると、硬貨の形をしていて、数枚のフィルムの積み重ねから形成されている定量材1が型5の中に配置される。多層構造の中心に配置されているフィルム2は透過性を低減する。特開平4-169207号公報に記載された発明は、型5の中で定量材1を圧縮すること、及び層2の端10を前記多層物品の内側に閉じ込めることによって多層物品を形成することにある。フィルム2の端を閉じ込めるために、特開平4-169207号公報は、フィルム3及び4の融点より高い温度であり且つフィルム2の融点より低い温度で定量材を圧縮することを提案している。特開平4-169207号公報は一例として、ポリエチレン製のフィルム3及び4とポリアミド製のフィルム2とから形成された定量材を記載している。特開平4-169207号公報に記載された方法はいくつかの欠点を有している。特開平4-169207号公報によると、成形温度がフィルム2の融点より低いので、中間層2は成形時には固体状態にある。結果として、フィルム2は成形時には変形をほとんど又は全く受けない。特開平4-169207号公報に記載された方法は、機能層2が物品の端まで移動することを困難にしている。この方法は、ほっそりした厚さの平坦な定量材を製造すること、加熱すること、及び型5のキャビティ8内へ移送することを必要とする。前記特許公報では、定量材を製造すること及び取り扱うことに必要な工程の開示は不十分であって、その方法が高い生産速度で物品を製造するために用いられることは困難であるように思われる。
【0003】
図2に示される米国特許第4904512号明細書は、多層定量材を圧縮成形することによって作り出される多層物品を記載している。その特許は、樹脂の層3と4との間に完全に閉じ込められた機能層2を具備する円筒状定量材1を使用することを提案している。層2の端10は、押出方法の効力によって定量材内に閉じ込められて、機能層の不連続供給を可能にする。しかしながら、定量材1の型8内での圧縮は米国特許第4904512号明細書には記載されていない。例えば、定量材の寸法及びそれが型5のキャビティ8内でどのように配置されるかについては言及されない。その発明の明細書は定量材がどのように圧縮されるかについては沈黙を保っている。しかしながら、その特許に記載された物品を仮定し、それが圧縮された材料の対称的な流動を獲得することを求めると仮定すると、その圧縮は押出し軸線に平行な方向で必ず実行されなければならないという結果になる。
【0004】
米国特許第4904512号明細書に記載された解決法は、それでもなおいくつかの困難に遭遇する。米国特許第4904512号明細書に記載されているように、機能性樹脂のための遮断弁機構を備える同時押出装置が、前記機能性樹脂の間欠流動を制御する。しかしながら、遮断弁機構は、複雑で高価であり、また高い生産速度における間欠流動に対する十分に精確な制御を提供することができない。第2の欠点が、2より多い樹脂を含む定量材を作り出すことの困難さにある。一般的に、機能層は、物品を形成する樹脂に自然に接着することはない。この欠点は、層間の弱い接着力及び欠陥のある物品に結果として導くだろう。最後に、第3の欠点は、多数の物品の連続的製造の自動化を最適化することの困難性にある。これは、定量材が作り出されたら、それが押出機から離れるや否や直ちに圧縮されることができないためである。最低限でも、定量材は相当な距離を移動される必要、又は90度にわたって回転される必要があり、したがってより複雑な装置を必要としまた物品の生産速度を低下させる。
【0005】
高い生産速度における多層熱可塑性樹脂物品の圧縮成形は、型のキャビティに移送されて、物品を形成するために溶融状態で圧縮される多層定量材の押出しによって有利に実行される。先行技術に記載されているこのプロセスは、成形型の中心に配置された定量材をその対称軸線に沿って圧縮することによって栓又はカップのような物品を製造することから成る。この構成は、圧縮時の軸対称流れを得ること、及び最終的に物品内の機能層の軸対称分布を得ることを可能にする。
【0006】
しかしながら、定量材が押出し軸線に沿って圧縮されたとき、少なくとも二つの重要な困難、即ち物品の中心における機能層の不連続性、及び物品内の過剰な量の機能性材料、に遭遇する。
【0007】
第1の困難には、多層物品の経済的生産を可能にするように定量材が少量の機能性材料を含むとき遭遇する。そのとき機能性材料は押出軸線に平行な薄い層を定量材内で形成する。機能性樹脂は定量材の中心部及び従って物品の中心部にはない。
【0008】
第2の困難には、米国特許第4904512号明細書で提案されているように機能性材料を定量材の中心に配置することにおいて遭遇する。しかしながら、機能層を物品の周縁まで分配するためには、機能性樹脂が十分に大きい半径の円筒を形成するように定量材内の機能性樹脂の量を相当に増加させることが必要である。
【0009】
層が圧縮方向に直角に配置されたときに形成される物品については、定量材の対称軸線に一致する方向で圧縮することは申し分ないと判明する一方で、しかしながら特にこの定量材が押し出されることができないので高い生産速度を獲得することができない。
【0010】
従って、前述の問題を克服する必要性が存在する。この必要性は、押出方向に一致する対称軸線を有する定量材に関して特に鋭く感じられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前述の問題に遭遇することなく圧縮成形によって多層物品を作り出すことを可能にする。本発明は、多層物品を高い生産速度で作り出すために押出方向に交差する方向で定量材を圧縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、少なくとも一つの機能層を具備する溶融多層樹脂の定量材を圧縮成形することによって合成樹脂の多層物品を製造する方法にある。前記定量材の各層は圧縮時には溶融状態にある。該方法は、少なくとも、ダイを通して樹脂を同時押出しすること、前記定量材を得るために押出物を周期的に切断すること、及び前記定量材を型のキャビティ内に溶融状態で置くこと、を含んでいる。該方法は、前記定量材内で押出し方向と前記押出し方向に平行な前記機能層の配置とを規定しており、前記押出し方向に交差する圧縮軸線に対する非対称性を前記層の流れに導入するように、前記圧縮軸線に沿って前記定量材が圧縮されることを特徴とするものである。
【0013】
本発明は、層の分布が非対称である圧縮成形によって製造された多層物品にも存する。
【0014】
本発明は、上で規定された溶融樹脂の定量材にも関係している。
【0015】
最後に、本発明は前述の方法を実施する装置にも関係しており、前記装置は多層定量材を押出し方向で押出すための手段と、前記定量材を前記押出し方向に交差する方向で圧縮するための手段とを具備している。
【0016】
本発明は、非対称分布の層を有する非対称形状の物品を製造することを可能にする。栓又はキャップのような多層物品であって、該物品の全表面を覆う機能層を有する多層物品を得ることができる。
【0017】
本発明は、楕円形状の栓のような非対称形状の物品を製造することも可能にする。
【0018】
本発明による物品の大抵の場合、その物品の一部分が、定量材に初期的に存在した層の数より多い層の数を有している。
【0019】
先行技術の教示との比較によって、本発明による方法の新規性は、層に交差する方向での多層定量材の圧縮をともなう多層定量材の押出しからの製造にある。先に説明したように、これら二つの工程を合同して実施することは、前記定量材の対称軸線ではない軸線に沿って圧縮された定量材をもたらす。結果として生じる多層の流れ、及び多層物品のどちらも先行技術に記載されていない。特許文献の特開平4-169207号公報及び米国特許第4904512号明細書は、圧縮軸線に対して非対称な定量材を記載しておらず、対称軸線を有さない流れを記載せず、及び多層構造が対称軸線を有さない軸対称物品を記載していない。
【0020】
本発明により提案された方法は、本技術分野に知識を有する者の常識に反しており、前記常識は、全方向で均一な流れを得るために、及び物品の多層構造の対称軸線でもある物品の対称軸線を有する物品を最終的に得るために圧縮軸線に対して対称の定量材を圧縮することである。
【0021】
以下の用語が本発明の明細書で用いられる。
定量材の長さ、幅、及び高さ:定量材は、圧縮方向のその高さと、押出方向のその長さと、その幅とによって区画形成される。定量材の高さと幅は、押出成形型によって決まり、定量材の長さは押し出された棒がどのように切断されるかによって決まる。定量材が円筒状のときは高さと幅は同一である。
鉛直軸線:圧縮軸線16
機能層:機能層は、薄い厚さのものであって、物品に特定の特性を与える。機能層は、例えばバリヤー層であり得る。
【0022】
本発明は、以下の図面に示された例の詳細な説明をとおして以下においてよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、定量材を型の中で圧縮することによって物品を作り出すための先行技術において提案された解決法を示す図である。
【図2】図2は、定量材を型の中で圧縮することによって物品を作り出すための先行技術において提案された解決法を示す図である。
【図3】図3は、同時押出定量材1の型5内における圧縮を示す図であり、同時押出定量材1の機能層2は圧縮平面に対して垂直であり定量材の表面に現れている。得られた物品9は層2の折り目11により特徴付けられる。
【図4】図4は、同時押出定量材1の型5内における圧縮を示す図であり、同時押出定量材1の機能層2は圧縮平面に対して垂直であり定量材の表面に現れている。得られた物品9は層2の折り目11により特徴付けられる。
【図5】図5は、同時押出定量材1の型5内における圧縮を示す図であり、同時押出定量材1の機能層2は圧縮平面に対して垂直であり定量材の表面に現れている。得られた物品9は層2の折り目11により特徴付けられる。
【図6】図6は、同時押出定量材1の型5内における圧縮を示す図であり、同時押出定量材1の機能層2は圧縮平面に対して垂直であり定量材の表面に現れている。得られた物品9は層2の折り目11により特徴付けられる。
【図7】図7は、機能層2それ自体が数枚の層から形成され得ることを示す図である。
【図8】図8は、軸線15に沿って押し出された定量材であって、圧縮軸線16に対する対称性を有さない定量材の例を示す図である。
【図9】図9は、図8に示される定量材1を軸線16に沿って圧縮した後に得られた多層物品を示す図である。この物品9は、それが該物品をとおして分布された機能層2を有するとはいえ、非対称多層構造を有する。
【図10】図10は、軸線15に沿って押し出された円筒状多層定量材1を示す図である。定量材1は、その端10を除いた定量材内に閉じ込められた機能層2を具備している。
【図11】図11は、図10に示された定量材1を軸線16に沿って圧縮した後に得られた多層物品を示す図である。この物品9は、機能層2が物品中を均一に広がっているとはいえ、非対称多層構造を有する。
【図12】図12は、多層物品を製造する方法を示す図であって、多層ロッド21の押出しを概略的に図示している。
【図13】図13は、多層物品を製造する方法を示す図であって、多層定量材1を形成するためのロッドの切断を示している。
【図14】図14は、多層物品を製造する方法を示す図であって、型5のキャビティ8内における定量材1の配置を示している。
【図15】図15は、多層物品を製造する方法を示す図であって、物品9の製造と物品内における層の分布とを示している。
【図16】図16は、物品9内の機能層2の端10の位置に対する物品の形状の影響を示す図である。
【図17】図17は、物品9内の機能層2の端10の位置に対する物品の形状の影響を示す図である。
【図18】図18は、層2の端10が定量材1内に及び物品9内に閉じ込められる例を示す図である。
【図19】図19は、層2の端10が定量材1内に及び物品9内に閉じ込められる例を示す図である。
【図20】図20は、型5のキャビティ8内で中心からずらして定量材1を配置することの影響を示す図である。
【図21】図21は、型5のキャビティ8内で中心からずらして定量材1を配置することの影響を示す図である。
【図22】図22は、型5のキャビティ8内で中心からずらして定量材1を配置することの影響を示す図である。
【図23】図23は、型5のキャビティ8内で中心を外して定量材1を配置することの影響を示す図である。
【図24】図24は、対称軸線をもたない物品の製造を示す図である。
【図25】図25は、対称軸線をもたない物品の製造を示す図である。
【図26】図26は、押出軸線15に対して傾いた方向での定量材の圧縮を示す図であって、型の中における定量材の配置を示している。
【図27】図27は、押出軸線15に対して傾いた方向での定量材の圧縮を示す図であって、圧縮後に得られた物品を示している。
【図28】図28は、定量材を型内に配置する前に変形させる方法を示す図であって、定量材は軸線15に沿って押し出されたものである。
【図29】図29は、定量材を型内に配置する前に変形させる方法を示す図であって、圧縮軸線16に沿う定量材の変形を示している。
【図30】図30は、定量材を型内に配置する前に変形させる方法を示す図であって、予備変形された定量材の型のキャビティ内における配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図3は、二つの樹脂層3と4との間に挟まれた機能層2を具備する同時押出定量材1の断面図を描いている。層2の端10は定量材の表面に現れるか又は前記表面の近くに位置する。機能層2は定量材の高さの中間点には位置していない。定量材の前記高さは圧縮軸線に沿うとみなされる。押出軸線は水平平面内に延びている。定量材1は、少なくとも一つのキャビティ型6とパンチ7とを具備する型5のキャビティ8内で圧縮され、前記パンチ7の相対移動が型を閉じるとともに定量材1を圧縮する。定量材1が圧縮される方向は形成された定量材1の前記層に垂直である。
【0025】
図4は、図3に示された定量材1の圧縮の結果生じた物品9の断面を描いている。先行技術の教示に反して、物品9内の層の積重ねが定量材1内の層の積重ねとは異なることがわかる。すべての予想に反して、機能層2が折り目11を形成すること、及び機能層2の端10が物品の表面12に現れるか又は前記表面の近くに位置することがわかる。このように形成された物品9は、定量材内の当初の層数より多い層数を少なくとも部分的に有している。定量材内の層の位置が、前記層2の端10が現れる物品の表面を事前に決定することもわかる。層2が定量材1の下側部分に延在しているなら、層2の端10は物品の底表面12に現れる。図4は、層2が物品9の端まで広がることも示しており、層2の折り目11が半径方向に最も遠く離れた点にある。層2の折り目11が半径方向に移動される距離は、定量材内の層2の位置によって、並びに定量材及び物品のそれぞれの寸法によって決定されることが見出された。同じ形状の定量材及び物品に関して、層2が定量材の底表面に近づくほど折り目11の半径方向の広がりが小さくなるだろう。
【0026】
圧縮方法の間の流れの理論解析は物品9内での折り目11の形成を理解する助けになる。圧縮方法の開始時に、層2の端10は流れの伝播前部の近くに位置しており、前記流れの伝播前部は“噴水効果”として知られている特別な種類の流れの場所である。伝播前部における各々の点は流れの中心から壁の方に移動する。この現象は、鉛直の水の噴射とともに見られること、即ち水噴射の端部において水の粒子は噴流の中心から周縁の方に移動することに類似している。この場合には、定量材の圧縮における正確な瞬間に、端10は材料の前部で流れ、結果として端10は噴水効果によって型の底壁の方に運ばれる。この瞬間から、定量材の圧縮は継続して折り目11が次の機構の結果として次第に形成される。(伝播前部にない)流れの各点は、それに隣接する点の速度とは異なる速度で移動する。これは、壁の近くの流速が流れの中心部における流速より小さいためである。この現象は、川の流れの現象に類似しており、前記川の流れの速度は、川の堤防の近くで水は遅く(又はちょうどゼロで)流れ、川の中心部を最大速度で流れる。従ってこの場合には、端10は、それより上の材料の速度より遅い速度で移動する。この速度の差は層2の折り目11を生み出す効果を有する。折り目11の端が、層2の端10の速度より速い速度で流れに沿って運ばれることも銘記されなければならない。
【0027】
図5及び6は、定量材の圧縮の第2の例を示しており、そこでは層が圧縮軸線に対して垂直に配置されている。
【0028】
図5は、樹脂の層3、4、及び14の間に挟まれた二つの機能層2及び20を具備する定量材1を示している。層3及び4は、前記定量材の底表面と頂表面とをそれぞれ形成しており、中央層を形成する層14は層2と層20との間に延在している。層2と層20の端10は、定量材1の側方表面に現れるか又は前記表面に近接して位置している。図5に示されるように、機能性樹脂層2は定量材の下側部分に延在しているが、機能層20は上側部分に延在している。定量材1は、キャビティ型6とパンチ7とから形成される型5のキャビティ8内に配置されており、前記パンチ7の相対移動が定量材を圧縮するとともに前記型5のキャビティを閉じる。圧縮方向は形成された定量材の層に垂直である。
【0029】
図6は、図5に示された定量材1の型5内での圧縮の結果生じた物品9を描いている。物品9は、定量材内の層の数より多い層の数を少なくとも局所的に有している。定量材がちょうど5層から作り出されているのに対して物品が7又は9層を局所的に有するように、機能層2及び20は折り目11を形成している。機能層2の端は物品9の底表面12に現れているのに対して、機能層20は前記物品の頂表面に現れている。層2及び20の端は物品9の表面に現れるか又は前記表面の近くに位置することがある。図5及び6は、物品内の端10の位置に対する定量材内の層の位置の影響を図解している。物品9の表面に近い層2及び20の端10の位置は、材料の移動前部の“噴水効果”に起因している。折り目11の形成は、型の壁の近くでは流速はゼロであるのに対して中央平面の近くでは流速は最大であるという厚さ内の流速分布の結果である。従って折り目11の端は、層2の端10が流れる速度より速く流れる。
【0030】
図7は、樹脂の層3と層4との間に挟まれた機能層2を具備する定量材1を描いている。本発明の説明を過度に複雑にしないために、層の数は故意に少なく描かれている。しかしながら、本技術分野に知識を有する者は、異なる性質の熱可塑性樹脂を結合することは、層を界面で共に接合する接着層の使用を通常は必然的に伴うことを知っている。図7に描かれるように及び一例として、機能層2はそれ自身が、接着層2b及び2cと機能層2aとから構成された多層構造の形態で構想されてよい。
【0031】
圧縮成形によって多層物品を製造するための先行技術の教示に反して、本発明は圧縮軸線に対して非対称な定量材を圧縮することを提案する。これは、層の分布が対称軸線を有さない物品という結果になる。
【0032】
図8及び9は、圧縮軸線に対して非対称な定量材の圧縮、及び得られた多層物品を記載している。
【0033】
図8は、定量材1を断面A及び断面Bで示している。定量材1は、樹脂の二つの層3及び4の間に挟まれた機能層2の形をしている。この定量材1は、好適には定量材1の図Aに一致する横断面のロッドを押出すことによって獲得されたものである。図Aでは、機能層2の端10は定量材の側壁17には現れない。定量材1が押出される方向は軸線15によって示されている。図Bは定量材1の第2の図形を断面で描いている。この図において、機能層2の端10は定量材の側壁17の表面に位置している。定量材1の形状は高さ33、幅31、及び長さ32により規定される。軸対称物品を作り出すには、長さ32に対する幅31の1に近い比率が有利であることがわかっている。同様に、定量材の幅31に対する高さ33の比率が0.5〜2の間にあることが好適であることがわかっている。しかしながら、予備成形物のような特別な物品に関して、幅31に対する高さ33の2を超える比率を有することが必要である。定量材1が圧縮される軸線は図8に示された圧縮軸線16に平行である。
【0034】
図9は、図8に描かれた定量材1を型の中で圧縮することによって得られた物品9を示している。物品9の形状は、定量材の圧縮の軸線でもある対称軸線を有している。物品9は、その多層構造が対称軸線を有さないことを特徴としている。図Aは、物品の第1の横断面を示している。機能層2は層3及び層4の間に挟まれており、前記層3および層4は物品9の底表面12及び頂表面13をそれぞれ形成している。機能層2の端10は物品の側壁17にはなく、このことは前記端が、材料前部に位置する“噴水流れ”によって運ばれなかったことを意味している。図Bは前記物品9の第2の断面を示している。この図では、機能層2はその端で折り目11を形成している。機能層2の端10は底表面12で見ることができる。折り目11は、物品9の対称軸線から最も遠い機能層2の一部を形成している。圧縮中の流れの分析は、折り目11が材料前部における“噴水流れ”と流速分布とから結果として生じたものであること示し、前記流速分布は型の壁における速度ゼロと圧縮中央平面における最大速度とによって特徴付けられている。機能層2は物品の側方表面17には現れない。機能層2は対称軸線を有さない複雑な形状を形成している。多くの場合機能層2が物品の周縁まで存在することが望ましいことである。対称軸線を有さずに分布された機能層2であるにも拘らず、前記層は、側壁17に近接する距離まで半径方向に広がること及び物品の全周縁にわたって広がることがわかっている。層2の半径方向端と物品の側壁17との間の距離は、ほんのわずか変化する。流れの長さが大であるほど、層2の半径方向端と側壁17との間の距離の変化が小さいことがわかった。
【0035】
図10及び11は、圧縮軸線に対して対称ではない定量材の圧縮の第2の例、及び得られた多層物品を描いている。
【0036】
図10は、円筒形状の定量材1の断面A及び断面Bにおける図を示している。定量材1は軸線15に沿って押出されて軸線16に沿って圧縮される。定量材1の中で、層は圧縮軸線に対して垂直に配置されている。定量材1は、押出軸線15である対称軸線を有するが、米国特許第4904512号明細書の教示とは異なって、定量材1は、前記定量材1の対称軸線に対して垂直に圧縮される。定量材1は、層3と層14との間に挟まれた機能層2によって形成されており、前記層3と層14はそれぞれ外側層と中央層を形成している。図Aは、押出軸線15に垂直な定量材1の横断面を図示している。また図10の図Aで見られる定量材1の横断面は、押出された円筒状ロッドの横断面に一致している。機能層2は、押出軸線を中心とする円筒状の囲いを形成している。図10の図Bは、定量材の長さ32の方向、即ち押出方向15で定量材を図示している。層2の端10が定量材1の側方表面17に現れている。表面17は、押出されたロッドが切断されたときに形成される。定量材1は回転円筒を形成するので、その高さ33はその幅31に等しい。図11に示されるような軸対称な物品の製造中において、機能層2の伝播速度が全方向で等しくないことが見出される。物品中の機能層の均一な分布を獲得するために、定量材の形状と機能層2の半径方向位置の両方を最適化することが必要である。かくして、直径に対する長さの比率が1に等しい定量材は機能層2の物品中の最適な分布を必ずしももたらさないとはいえ、同一体積の定量材の様々な形状が、多層物品を形成するために用いられることが可能である。驚くことに、形状の比率が1以外の定量材が、物品中の機能層2のより均一な分布をしばしばもたらす。例えば、定量材直径に対する定量材長さの1.5に等しい比率が、図11に示される物品中の機能層2の最適分布を与える。円筒状定量材は、物品の高い生産速度での製造において多数の利点を有する。我々が後で本発明の説明において説明するように、定量材は型のキャビティに高速で移送される。この移送が生じる速度を考えると、型のキャビティ内で定量材の位置を正確に制御することが常に容易であるとは限らない。図10に示される円筒状定量材は対称軸線を有しており、前記対称軸線は、成形される物品を変えることなしに定量材がこの軸線を中心に回転することを可能にするものである。
【0037】
図11は、対称軸線を提示する物品9であって、図10で示された定量材1を型のキャビティ内で圧縮することによって得られた物品9を示している。図Aは物品を通した第1の断面を示している。軸線15及び16は、物品が型のキャビティ内における定量材の初期配置に関して方向付けられることを可能にする。軸線16は圧縮方向を指し示しており、また軸線15は、該軸線に沿って定量材が押出された軸線である。図Aは機能層2が圧縮中にどのように変形したかを示している。層2は、物品の端を形成する側方表面17の近くに位置する折り目11を形成している。図Bは、押出軸線15及び圧縮軸線16に平行な平面における物品9の断面を示している。図Bでは、層2の端10が前記物品9の底表面12及び頂表面13でそれぞれ見られることがわかる。層2は、物品9の端を形成する側方表面17の近くに位置するいくつかの折り目11を形成している。5層定量材1から始まって、局部的に9層を備える物品9が獲得される。図A及びBは、本発明から結果として生じた機能層2の複雑な分布を図示しており、前記分布は先行技術の教示において特徴になっていない。
【0038】
図4、6、9、及び11に記載された物品を獲得する方法は、多層物品を高い生産速度で作り出すための経済的な方法である。この方法は主要な3段階を含んでおり、前記主要な3段階は、多層定量材を押出す段階、層が圧縮方向に垂直であるように前記定量材を型のキャビティに移送して位置決めする段階、及び最後に、定量材を型のキャビティ内で圧縮することによって多層物品を成形する段階である。
【0039】
本方法は、多層構造が対称軸線を有さないのであれば、実際の物品中の機能層2の良好な分布を可能にする。
【0040】
本方法は、定量材の形状を物品の形状に合うように適合させることによって対称軸線を有さない物品を作り出すことを可能にする。
【0041】
図12及び13に示される本方法の第1の段階は、多層ロッド21を押出すこと、及び定量材を形成するために多層ロッド21を均一に切断することである。多層ロッドの不断の押出しは非常に高い生産速度を達成することを可能にする。しかしながら、ロッドの不連続押出し又はロッドの層の一部の不連続押出しを有することが有利なこともある。ロッドの不連続押出しはロッドの切断を容易にするために用いられ得る。層の一部の不連続押出しは、層の一部がその端さえも含めて完全に閉じ込められているより複雑な定量材を製造することを可能にすることがある。
【0042】
中に穴を有する定量材を押出すことも可能である。
【0043】
図12は、ダイ23と同時押出ユニット22とから構成された同時押出しヘッドから出ている円筒状ロッド21の押出しを示している。同時押出ユニット22は、多層構造を可能にし、ダイ23はロッドの形状を形成する。要素22及び23は、これら要素が厳密に描かれないように非常に概略的に描かれている。チューブ、異形材、又は多層シートを作るための同時押出しヘッドは先行技術において広く記載されている。同時押出しヘッドは、数台の押出機に接続されており、前記押出機は、層を形成する樹脂を溶融状態で同時押出ヘッドに供給する。ロッド21は、溶融状態の樹脂の層3、2、及び14から形成されている。押出温度は、押出される樹脂の性質によって決定される。一般的にはこの温度は100℃〜300℃の範囲にある。
【0044】
図13は、定量材1を形成するためのロッド21の切断24を図示している。定量材を切断するための多くの装置が先行技術に記載されている。一例として回転装置を挙げると、そこでは定量材を移送するのに用いられる装置からカッターが独立しているか又は前記装置に含まれている。いくつかのカッターが2枚の刃の相対運動を含んでおり、前記2枚の刃は一対の鋏のように定量材を切断する。他の装置は、シャッターを含んでおり、前記シャッターはその閉鎖運動の際にロッド又はチューブ21を切断する。
【0045】
図14は、少なくとも一つのキャビティ型6とパンチ7とから構成された型5を具備する成形装置のキャビティ8内における定量材1の配置を示しており、前記パンチ7はその相対移動が定量材を圧縮して物品を形成する。定量材1は、圧縮方向16が層に垂直であるようにキャビティ8内に配置される。定量材が型の中に移送されるやり方は描かれていない。移送装置が、定量材をキャビティ内で方向付けて位置決めするために用いられ得る。他の方法が、押出された定量材を型のキャビティに直接に置くことを含んでいる。型のキャビティ内への定量材の移送は、定量材が圧縮される間に定量材が冷えて不均一な温度を示すことを防ぐために迅速に実施されなければならない作業である。
【0046】
図15は、定量材1を型5内で圧縮することによって得られた物品9の横断面図を描いたものである。型5は、溶融樹脂を凝固させると共に、物品の型からの取り出しを可能にするほど十分に物品を冷却する冷却回路を通常は具備している。型温度は、通常は0℃〜60℃の範囲の温度に調節される。
【0047】
本方法における重要な要素は、定量材の形状を最適化して物品の形状に合わせることである。栓、カップ、又はキャップのような対称軸線を有する物品を作り出すためには、定量材の幅31に対する長さ32の比率は必ずしも1に等しくなくてよい。図10に示されたような定量材に関して、前記比率は通常は1以外であるが、図8に示されたような定量材に関して前記比率は1に近いことが有利である。定量材の長さ32は押出機の生産速度及び裁断頻度によって規定され、定量材の幅31と高さ33はダイ23の形状によって規定される。定量材内の層の位置は、機能層2の望ましい分布を得るように最適化される。幅31に対する高さ33の比率は、とりわけ物品の形状寸法によって決まり、また概ね0.2〜5の範囲で好適には0.5〜2の範囲にある。非常に速い生産速度で定量材を取り扱うことを簡単にするために、幅に対する高さの1に近い比率がしばしば用いられる。
【0048】
本発明で記載された方法は、穴の有る物品又は穴のない物品を作り出すことを可能にするが、前記方法は、穴のない多層の包装コンポーネントを非常に速い生産速度で作り出すことに特に有利である。これらの包装コンポーネントはプラスチック栓、カップ、又は代わりにキャップであり得る。多層構造は有利である、というのもそれが前記物品の遮蔽特性を向上させることを可能にするからである。多くの場合、酸素、二酸化炭素、又は香気に対する前記物品の不透過性を向上させることが必要である。本発明は、この向上が生産速度に対する不利益なしに、及び無駄の発生なしに為されることを可能にする。しかしながら、一部の用途においては、機能層2と包装される製品との間の接触を避けることが必要である。そのとき、前記製品と接触する物品の表面に機能層2の端10が存在することを防ぐことが適切である。
【0049】
機能層2の端10の物品内における位置を制御する方法が以下に述べられる。
【0050】
第1の方法は、製品と接触する物品の表面に機能層2の端が現れないように、定量材内の層の位置を提供することである。図9は、包装された製品に接触する物品の頂表面13に機能層2の端10が存在しない例を示している。機能層2の端10を定量材内に閉じ込めることは、物品の表面には完全に現れない層2を有する物品をもたらす。端10を定量材内に閉じ込めることは層2の間欠押出しによって又は定量材を切断及び移送するとき為されることが可能である。
【0051】
図16及び17は、包装される製品に接触する頂表面13に接近して機能層2が位置している包装材料9であって、機能層2の端10が前記頂表面13には現れない包装材料9の製造を図解している。図16は、樹脂の層3及び4の間に挟まれた機能層2から形成された定量材1を描いている。層2の端10は前記定量材の側方表面17に現れている。定量材1は型5のキャビティ8に配置されている。図17は、図16に示された定量材1を圧縮することによって得られた物品を描いている。物品9は包装材料の内側表面を形成する頂表面13を具備しており、前記頂表面13は包装される製品に接触する。機能層2は物品9の頂表面13に接近して位置するが前記頂表面13には現れない。機能層2の端10は、包装材料の外側表面を形成する表面12に存在している。包装材料の内側表面に端10が現れないことは、定量材内での層2の位置及び物品の形状により決定される。
【0052】
包装された製品と機能層2の端との間の接触を避けるための他の方法は、溶融樹脂と型の壁との間の接触の様態を修正することである。成形型の部分における滑動様態の接触、及び成形型の反対側の部分における粘着様態の接触を有することが特に有利である。例えば、パンチ7と溶融樹脂との間の滑動様態の接触及びキャビティ型6と溶融樹脂との間の粘着接触を用いることが可能である。型の壁と溶融樹脂との間の接触を変更することにより、機能層の端の位置を変えることが可能である。接触の様態は、型の表面を形成する材料に、及び前記型の表面仕上げに依存する。
【0053】
物品を高い生産速度で製造するとき、定量材の正確な配置を保証することが常に容易であるとは限らない。実際、定量材が型のキャビティに移送または配置される間に定量材それ自体の回転が生じることがあり、そのことにより機能層2の不適切な位置決めが圧縮のときに引き起こされる。定量材の回転は、例えば垂直な配置が望ましいときに圧縮軸線に平行な機能層2の配置を引き起こすことがある。この困難を未然に防ぐために、定量材の長さと幅に対する高さを小さくすることによって定量材の形状を変更することが可能である。しかしながら、多層物品を高い生産速度で製造するとき、高さの低い定量材を取り扱うことは常に可能であるとは限らない。
【0054】
図18は、定量材の回転が、得られる多層物品に影響を与えないという点で特に有利な定量材を提案している。図Aは押出軸線15に垂直な横断面を示している。定量材1は円筒状で四角い横断面のものであって、定量材の表面を形成する樹脂3と中央部分を形成する層14との間に挟まれている層2を具備している。図Bは、押出軸線15と圧縮軸線16とによって形成された平面における定量材を描いている。機能層2は層14を閉じ込めており、その端は定量材の表面には現れない。幅31、長さ32、及び高さ33は等しく、従って定量材1は立方体又は球体の形状に近い形状を形成している。定量材1の製造は層14及び2の不連続押出しを必要とする。
【0055】
図19は前記定量材1を型の中で圧縮することによって得られた物品を描いている。層2は物品の表面には完全に現れない。得られた物品は型キャビティ内での定量材の角度位置とは無関係である。
【0056】
型のキャビティ内で定量材を中心に位置決めすることは、圧縮成形によって多層物品を製造する際の要点の一つである、というのも定量材が型のキャビティ内で正確に中心に位置決めされなかったなら、流れは半径方向で不均等となって、物品中での機能層の分布が不十分になるためである。しかしながら、一部の物品に関しては、バリヤーは物品中に必要とされないことが時々起こる。例えば栓について、バリヤーが側壁には必要とされないが、バリヤー層の存在が栓内で少なくとも必要であることがよくある。定量材が型のキャビティ内で中心からずれて位置決めされたとしても機能層が栓の端壁に存在することを適切な定量材が保証できることが発見された。
【0057】
層間の粘性の比率は、圧縮時の流れの中で、及び従って結果として生じる物品の多層構造において作用する大きな部分を有する。層間の粘性の差は、物品内の機能層2の端10の位置を変えることを可能にする。層間の粘性の差は、機能層2の端10を物品内に閉じ込めるために特に用いられ、その結果層2は前記物品の表面には完全に現れない。例えば、より粘性の機能層2を有することが有利であることがある。第2の例は、機能層に近接して配置されたより流動性の樹脂層を有することにあり、前記樹脂層はその小さな粘性のためにそれが流動するとき機能層2の端を閉じ込める。5より大きい層間の粘性の比率が機能層2の端10を物品内に閉じ込めることを容易にすることが見出された。本発明の精神の中で、層2の端を物品内に閉じ込めるために2以上の層の粘性を変更することが可能である。
【0058】
層2を完全に閉じ込めるために複数の層の相対粘性を変更することは常に可能であるとは限らない。層間の粘性の過剰な差は、定量材の押出し、又は切断、又は代わりに移送、及び型のキャビティ内での位置決めを困難にすることがある。従って層2の端10を定量材内に閉じ込めることに存する代替の方法が提案される。層2の端10を二つのやり方で定量材内に完全に閉じ込めることができ、前記二つのやり方の第1の方法では、層2の間欠押出しが含まれる一方で他の層が中断なしに押出される。第2の方法は、定量材を切断又は移送するときに層2の端10を閉じ込めることにある。
【0059】
図20から23は、栓を製造する型5のキャビティ8内に定量材1を中心からずらして配置したときの効果を示している。
【0060】
図20は、キャビティ型6及びパンチ7から構成される型5のキャビティ8内で中心からずれて配置された定量材1の第1の例を示している。定量材内の層2の位置は、圧縮成形工程の後で、前記層2が少なくとも栓の端壁を形成する部分に位置するように最適化されている。定量材1内の層2の位置は、それが型5のキャビティ8内での定量材1の不規則な位置決めを許容することが見出された。定量材の形状は物品の形状に従って最適化される。
【0061】
図21は、型5のキャビティ8内で中心からずれて配置された定量材1を圧縮することによって得られた栓9を描いている。機能層2は、栓9の側壁28に部分的にのみ存在するが、機能層2は前記栓の端壁27をとおして分布されている。
【0062】
図22は型5のキャビティ8内で中心に配置されていない定量材1の第2の例を図示している。
【0063】
図23は、図22に示された定量材1を成形することによって得られた栓9を描いている。機能層2は、少なくとも栓9の端壁を形成する部分27に広がっている。側壁28は部分的にだけ多層化されている。
【0064】
前述の例は栓を高い生産速度で製造することにおいてとても有益である。定量材を型のキャビティ内に正確に位置決めすることは必要ではなく、定量材が前記キャビティ内で不規則に位置決めされることが可能である。本発明のこの様相は特に有利である、というのもそれは、既存の機器に対するほんのわずかな改変を必要とするだけであり、また単層の栓の製造に関する生産速度の低下なしに多層栓の製造を可能にするからである。
【0065】
本発明の最後の重要な利点は、例えば楕円栓のような対称軸線をもたない多層物品の製造の可能性である。
【0066】
本発明のこの様相は、幅に対する長さの比率が1より大きい定量材を用いた楕円形状の栓の製造を描いている図24及び25によって図解されている。
【0067】
図24は、型5のキャビティ8内における定量材1の配置を示している。図Aは押出軸線15に対して垂直な定量材の横断面を描いている。図Bは、定量材の軸線15と圧縮軸線16とを含む平面上の定量材の第2の横断面を描いている。図A及びBから、定量材の長さ32が前記定量材の幅31より大であること、及び同様にキャビティの長さ29が前記キャビティの幅28より大であることが見られる。定量材の形状寸法は、前記物品中の機能層の分布が正確であるように最適化される。ある場合に、これは幅31に対する長さ32の比率がキャビティの幅28に対する長さ29の比率にほぼ等しい定量材で獲得される。
【0068】
図25は、図28に示された定量材1を圧縮することによって得られた栓9を描いている。図A及びBは、栓9に対称に交差する二つの垂直な平面における層の分布を示している。機能層2が物品をとおして正確に分布されていることが見られる。
【0069】
図26〜30は、定量材圧縮軸線16が押出軸線15に対して斜めになっている本発明の代替形態を示している。
【0070】
図26は、樹脂の二つの層3及び14の間に挟まれた機能層2を具備する同時押出定量材1の断面図である。定量材1は、少なくとも一つのキャビティ型6とパンチ7とから形成された型5を具備する成形装置のキャビティ8に位置決めされており、前記パンチ7の相対移動が定量材を圧縮して物品を形成する。定量材1は、圧縮軸線が定量材押出軸線に対してある角度を成すように型の中に配置される。圧縮軸線は押出し軸線に対して垂直ではない。
【0071】
図27は、定量材1を型5内で圧縮することによって得られた物品9の断面図である。物品の中央における層2の重ね合わせが興味深く注目される。
【0072】
押出軸線に対して傾斜している軸線に沿って定量材を圧縮することを成し遂げることは、図26で図解されているように斜めの位置にある定量材の不安定性の故に時々困難である。この困難さを切り抜けるために、一つの方法は、定量材を型のキャビティ内に配置する前にそれを変形することである。この方法の概略的な図が図28〜30に示されている。
【0073】
図28は、軸線15に沿って押出された多層定量材1の断面図である。定量材1は樹脂の二つの層3及び14の間に挟まれた機能層2を具備している。
【0074】
図29は、定量材が型に位置決めされる前の定量材1の変形を示している。この変形は、定量材の圧縮によって、又は定量材の剪断によって、又は適切な工具の間で定量材を引き伸ばすことによって実行され得る。図29は、軸線16に沿う圧縮による定量材1の変形を示している。定量材が切断されている間に又は定量材が型のキャビティに移送されている間に、変形は有利に実行される。図29に示されるような定量材の変形は定量材を型のキャビティに位置決めするのを容易にする。
【0075】
図30は、圧縮段階の前における型5のキャビティ8内の定量材1を示している。定量材は、その圧縮方法をより健全に且つ再現可能にするように非常に安定である。
【0076】
本発明の状況で用いられる樹脂は一般的に使用されている熱可塑性プラスチック、より詳しくは包装の分野で用いられている熱可塑性プラスチックに同じである。使用され得る機能性樹脂の中で、エチレンビニルアルコール(EVOH)共重合体、ナイロンMDX6のようなポリアミド、アクリロニトリルアクリル酸メチル(BAREX(登録商標))共重合体、PVDFのようなフルオロポリマーが言及される。物品の構造を形成する層に用いられることが可能ないくつかの樹脂、即ちポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)、ポリエステル(PET)も言及される。このリストは網羅的なものではない。
【0077】
圧縮成形法は、溶融状態にある合成樹脂の多層定量材を型のキャビティに供給すること、及び型のキャビティ内で前記定量材を圧縮することによって物品を形成すること、及び物品を冷却し次いでそれを型から取り出すことにある。
【0078】
本発明による装置は、多層定量材を同時押出しするための手段、多層定量材を圧縮型内に移送するための手段、及び物品を形成するために定量材を圧縮するための手段を少なくとも具備している。
【0079】
本発明は、物品の体積の5%未満存在する非常に薄い機能層を備える物品を製造することを可能にする。
【0080】
上述された多層物品を製造する方法は、栓、蓋、キャップ、及びポットのような物品の製造に特に有利である。この方法は、硬貨の形状の予備成形品を製造するのに有利に用いられることも可能であり、前記硬貨は次に、多層物品を形成するために熱成形又はブロー成形と組み合わされた熱成形に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの機能層(2、20)を具備する溶融多層樹脂の定量材(1)を圧縮成形することによって合成樹脂の多層物品(9)を製造する方法であって、前記定量材の各層は圧縮時には溶融状態にあり、該方法は少なくとも、
ダイを通して樹脂を同時押出しすること、
定量材(1)を得るために押出物を周期的に切断すること、及び
前記定量材(1)を型のキャビティ内に溶融状態で置くこと、を含んでおり、
該方法は、前記定量材内で、押出し方向と、前記押出し方向に平行な前記機能層(2、20)の配置とを規定しており、
前記押出し方向に交差する圧縮軸線(16)に対する非対称性を前記層の流れに導入するように、前記圧縮軸線(16)に沿って前記定量材が圧縮されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
主軸線に垂直に交差する方向で前記定量材が圧縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記定量材が直方体の形をしている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
円形断面の定量材が用いられる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記定量材は、前記層が前記押出し方向に同軸に配置された円筒の形をしている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記主軸の周りの囲いを形成する機能層を有する定量材が用いられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記押出し方向に鋭角又は鈍角で交差する方向で前記定量材が圧縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記定量材は中心からずれて前記型に置かれる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法を使用して定量材(1)を圧縮成形することによって得られた合成樹脂の多層物品(9)であって、前記多層物品(9)は該多層物品の層の非対称分布によって規定される、合成樹脂の多層物品(9)。
【請求項10】
前記定量材内の層から形成される層の数が前記定量材内の層の数より少なくとも局部的に多いことを特徴とする、請求項9に記載の多層物品。
【請求項11】
該多層物品の外観が対称であること、及び長さが幅に等しくない定量材から該多層物品が得られることを特徴とする、請求項9又は10に記載の多層物品。
【請求項12】
中央部分と機能部分とを具備している請求項9〜11のいずれか一項に記載の多層物品であって、少なくとも前記中央部分と前記機能部分とを覆う多層構造を備えることを特徴とする、多層物品。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法で用いられる溶融多層樹脂の定量材(1)であって、溶融状態にある少なくとも一つの機能層を具備する、溶融多層樹脂の定量材(1)。
【請求項14】
長さが幅に等しくない、請求項13に記載の定量材。
【請求項15】
前記機能層(2、20)と少なくとも一つのその他の層との間の粘性の比率が、1/5以下又は5以上である、請求項13又は14に記載の定量材。
【請求項16】
二つの平行な面を具備するとともに、前記二つの平行な面の間で斜めに配置された少なくとも一つの機能層を具備する、請求項13〜15のいずれか一項に記載の定量材。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法を実行する装置であって、多層定量材を押出し方向(15)で押出すための手段と、前記押出し方向(15)に交差する方向(16)で前記定量材(1)を圧縮するための手段とを具備する、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2010−517822(P2010−517822A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548773(P2009−548773)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050313
【国際公開番号】WO2008/096290
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(508053821)エイサパック ホールディング ソシエテ アノニム (16)
【Fターム(参考)】