説明

多層耐圧管及び多連管

【課題】簡単な構造で内層に対する補強線材の位置ズレ防止と管内の気泡発生防止とを同時に達成する。
【解決手段】補強線材2が、内層1の外周面1aと対向する底面に平滑部2aを有し、平滑部2aを内層1の外周面1aに密接させることにより、内層1の外周面1aと補強線材2の平滑部2aとの摩擦抵抗が大きくなって移動不能に保持されるとともに、内層1の外周面1aと補強線材2との間に隙間が生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高圧エアホースなどの多目的に使用される保形性に優れた可撓性を有する軟質合成樹脂製ホースや合成樹脂製チューブと、湯水やその他の流体又は気体の導管として使用される剛性を有する硬質合成樹脂製パイプとを含む多層耐圧管、及び、複数の流体を供給する場合や、供給用流路と戻り用流路などの異なる複数の流路が必要な場合に用いられる多連管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の多層耐圧管として、樹脂管を構成する内管と外管との間に、コイルスプリングとして、熱可塑性樹脂による線径の太い延伸モノフィラメントをコイルスプリング状に成形後、熱処理されたものを挟入巻着したものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、押出装置により製造された内層側の樹脂層の外周に、補強糸として断面円形状又は断面楕円形状のモノフィラメントを網目状に巻き付け、次に外層側の樹脂層を同様の押出装置を用いてその上に被覆することにより、内層側の樹脂層と外層側の樹脂層との間にモノフィラメントが介在されるとともに、内層側の樹脂層と外層側の樹脂層とが接触する面領域の部分を、成形時に相互に融着して固着するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭63−46783号公報
【特許文献2】特開2006−194347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来の多層耐圧管では、前者の場合、内管(内層)と外管(外層)との間にモノフィラメントを挟入巻着するが、一般的にモノフィラメントは押出し成形により断面円形でその外面が軸方向へ滑らかに形成され、内層及び外層は熱可塑性樹脂などの材料を押出し成形により円管状に形成されるため、内層の外周面に対してモノフィラメントを巻き付けると、外層を押出し成形して積層する時の樹脂などの圧力により該モノフィラメントの表面が滑って位置ズレし、それにより、モノフィラメントの巻き付けピッチが不均一になるおそれがある。この位置ズレによってピッチが広くなった箇所は、管として部分的に耐圧強度が低くなり、管内の圧力上昇によって破裂し易くなるという問題があった。
さらに、内層の外周面に対して断面円形のモノフィラメントを巻き付けると、内層の外周面と断面円形のモノフィラメントとの間には、これら両者の線接触部分を挟んで略三角形の隙間が生じるため、内層の外周面及びモノフィラメントを覆うように外層が押出し成形により積層されると、略三角形の隙間に外層の材料が完全に入り込まず、内層及び外層の間に空気が残ってしまい、それにより、内層と外層の接着強度が低下して剥離し易くなるとともに、気泡部分が管内の圧力上昇によって破裂し易くなるという問題があった。
また、内層と外層が共に透明又は半透明の材料で形成される場合には、不規則に発生した気泡が目立って商品価値を著しく低下させるという問題があった。
一方、後者の場合には、内層と外層の間に複数本のモノフィラメントを交差させて配置するため、網目の交差部において、モノフィラメント同士が互いに重なり合うとともに各モノフィラメントは剛性が高くて互い重ね合わせても潰れて変形することがほとんど無いから、各交差部の厚さ寸法が他の部分に比べ更に厚くなって部分的に突出し、それにより、管の表面全体の凹凸が大きくなるとともに、交差部の隙間に気泡が発生し易くなるという問題があった。
特に、網目の交差部では、モノフィラメント同士が互いに重なり合うため、一方のモノフィラメントの上に他方のモノフィラメントを重ねて巻き付ける際や、外層を押出し成形して積層する時の樹脂などの圧力により、これらモノフィラメントの表面同士が滑って巻き付けピッチの位置ズレが発生し易くなり、この位置ズレによって、モノフィラメントの巻き付けピッチが不均一になるおそれがあるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、簡単な構造で内層に対する補強線材の位置ズレ防止と管内の気泡発生防止とを同時に達成すること、などを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために本発明は、内層と、この内層の外周面に沿って螺旋状に巻き付けられる補強線材と、これら内層及び補強線材の外周に積層される外層とを備え、前記補強線材は、前記内層の前記外周面と対向する底面に平滑部を有し、該平滑部を前記内層の前記外周面に密接するように配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
前述した特徴を有する本発明は、補強線材が、内層の外周面と対向する底面に平滑部を有し、平滑部を内層の外周面に密接させることにより、内層の外周面と補強線材の平滑部との摩擦抵抗が大きくなって移動不能に保持されるとともに、内層の外周面と補強線材との間に隙間が生じないので、簡単な構造で内層に対する補強線材の位置ズレ防止と管内の気泡発生防止とを同時に達成することができる。
その結果、内管(内層)と外管(外層)との間に補強線材として断面円形のモノフィラメントを挟入巻着する従来のものに比べ、外層を積層する時の樹脂などの圧力によって補強線材の位置ズレが発生しなくなるため、補強線材の巻き付けピッチを均等にすることができ、それによって部分的に耐圧強度が低下しないため、管内の圧力上昇による破裂を確実に防止できる。
さらに、内層の外周面と補強線材との間に隙間が生じないため、内層及び外層の間に残った気泡による内層と外層の剥離を確実に防止でき、しかも内層と外層を共に透明又は半透明の材料で形成しても、気泡が目立つことがなく商品価値を高く維持することができる。
また、補強線材の底面を平滑部としたので、同じ断面積を有する断面円形のモノフィラメントを巻き付ける従来のものに比べ、管全体の肉厚寸法を薄くできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る多層耐圧管の全体構成を示す説明図であり、(a)が部分切欠した外観斜視図、(b)が部分拡大縦断面図である。
【図2】(a)〜(d)が補強線材の変形例を示す部分拡大縦断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る多層耐圧管の全体構成を示す説明図であり、(a)が部分切欠した外観斜視図、(b)が部分拡大縦断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る多層耐圧管の全体構成を示す説明図であり、(a)が部分切欠した外観斜視図、(b)が部分拡大縦断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るレーザ加工装置における加工時の動作を示す説明である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るレーザ加工装置における加工時の動作を示す説明である。
【図7】本発明の実施形態に係る多連管の全体構成を示す部分切欠した外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る多層耐圧管Aは、軟質合成樹脂又はゴムなどからなる可撓性を有するホースや、このホースよりも小径な可撓性を有するチューブなどの可撓性管、又は硬質合成樹脂などからなる剛性を有するパイプなどの剛性管である。
これら可撓性管又は剛性管は、図1〜図7に示すように、内層1と、この内層1の外周面1aに沿って螺旋状に巻き付けられる補強線材2と、これら内層1及び補強線材2の外周に積層される外層3とを備えている。
【0010】
可撓性管の内層1及び外層3は、主成分として例えば塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂に、適度に柔らかくするための可塑剤、劣化を防ぐための安定剤、その他の滑剤や充填剤や加工助剤や改良材などが所定比率で添加されたものや例えばシリコーンゴムなどのゴムを用い、例えば押出成形機により溶融状態で成形し、それを冷却することで透明又は半透明若しくは不透明な円筒状に固化される。
【0011】
剛性管の内層1及び外層3は、主成分として例えばポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂を含む熱可塑性硬質樹脂に、劣化を防ぐための安定剤、その他の滑剤や充填剤や加工助剤や改良材などが所定比率で添加されたものを用い、例えば押出成形機により溶融状態で成形し、それを冷却することで透明又は半透明若しくは不透明な円筒状に固化される。
【0012】
可撓性管又は剛性管に用いられる補強線材2は、例えばポリエステルやナイロン(登録商標)やアラミドなどの合成樹脂材料で形成されたモノフィラメント(monofilament:単繊維)などからなり、例えば押出成形機により溶融状態で成形し、それを冷却することで所定の断面形状の線状に固化される。
補強線材2となるモノフィラメントなどは、内層1の外周面1aと対向する底面に平滑部2aを有し、この平滑部2aを内層1の外周面1aに密接するように配置している。
さらに詳しく説明すると、補強線材2となるモノフィラメントの断面形状は、平滑部2aの幅方向両端に連続する一対の側辺として外層3へ向かって徐々に幅狭となる傾斜部2bを有することが好ましい。傾斜部2bは、直線状や円弧状に形成される。
また、補強線材2となるモノフィラメントなどは、例えば図1(a)に示されるように、内層1の外周面1aに対して1本のみをコイルスプリング状に巻き付けるか、又は図示しないが、例えば特許第4465556号公報に記載されるように、内層1の軸線方向へ複数本並べたまま等ピッチで螺旋状に巻回し、軸線方向へ並べた複数本のモノフィラメント間のピッチよりも軸線向へ隣り合う螺旋ピッチを離して、透視可能な無芯部を軸線方向へ部分的に形成することも可能である。
【0013】
そして、本発明の実施形態に係る多層耐圧管Aの製造方法としては、例えば図1(a)に示すように、先ず、押出成形機により内層1が押出成形され、これを冷却して固化された後、この内層1の外周面1aに向けて補強線材2をその平滑部2aが外周面1aと対向するように供給し、内層1を中心として補強線材2を螺旋状に巻き付け、外周面1aに沿って平滑部2aが密接するように配置される。その後、これら内層1及び補強線材2の外周に外層3を押出成形により積層して覆う。それにより、これら内層1、補強線材2及び外層3の層間が接着して一体化される。
【0014】
このような本発明の実施形態に係る多層耐圧管Aによると、図1(a)(b)に示されるように、内層1の外周面1aに補強線材2の平滑部2aが密接するため、内層1の外周面1aと補強線材2の平滑部2aとの摩擦抵抗が大きくなって、内層1の外周面1aに対し補強線材2が移動不能に保持されるとともに、内層1の外周面1aと補強線材2との間に隙間が生じないため、外層3の積層時において空気を巻き込むことがない。
それにより、簡単な構造でありながら、内層1に対する補強線材2の位置ズレ防止と管内の気泡発生防止とを同時に達成することができる。
【0015】
さらに必要に応じて、補強線材2と外層3との間には、図3(a)に示されるように、補強線材2と同様にモノフィラメントなどからなる第2補強線材2′を螺旋状に巻き付けたり、図4(a)に示されるように、これら補強線材2と第2補強線材2′との間に中間層4を積層したり、図5(a)に示されるように、第2補強線材に代えてそれよりも外径が細いモノフィラメントやマルチフィラメント(ポリエステルやナイロン(登録商標)やアラミド繊維などの細いモノフィラメントなどを撚り合わせて1本の糸としたもの)などからなる第3補強線材5を螺旋状に巻き付けたり、図6(a)に示されるように、これら補強線材2と第3補強線材5との間に中間層4を積層することも可能である。
また、このような本発明の実施形態に係る多層耐圧管Aを複数本、図7に示されるように、それぞれの一部が軸線方向へ相互に接触するように並べ、これらの接触部分が固着された多連管Bを製造することも可能である。
次に、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
この実施例1は、図1(a)(b)に示すように、内層1の外周面1aに沿って補強線材2としてモノフィラメントを螺旋状に巻き付け、このモノフィラメントとして、その断面形状が平滑部2aの幅方向両端に連続する一対の側辺として外層3へ向かって徐々に幅狭となる傾斜部2bを形成したものを用いている。
【0017】
図1(a)(b)に示される例では、補強線材2として、その断面形状が、傾斜部2bを直線状にするとともに天辺2cを円弧状に突出させた略蒲鉾型のモノフィラメントを用いている。
また、その他の例として、補強線材2となるモノフィラメントとして、その断面形状が、図2(a)に示されるような傾斜部2bを外側へ突出するように湾曲させた半円形、図2(b)に示されるような傾斜部2b及び天辺2cを直線状にした略台形、図2(c)に示されるような傾斜部2bを内側へ凹むように湾曲させるとともに天辺2cを円弧状に突出させた略帽子形、図2(d)に示されるように傾斜部2bを直線状にするとともに天辺2c内側へ凹むように湾曲させた略山形のものを用いることも可能である。
【0018】
このような本発明の実施例1に係る多層耐圧管Aによると、補強線材2であるモノフィラメントの傾斜部2bに沿って外層3の材料が押出し成形により積層されても、空気を全く巻き込むことがなく、補強線材2の周囲に気泡が発生することを完全に防止することができるという利点がある。
【実施例2】
【0019】
この実施例2は、図3(a)(b)に示すように、補強線材2と外層3との間に、第2補強線材2′としてモノフィラメントを補強線材2の螺旋方向と逆で交差するように配置した構成が、図1に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1に示した実施例1と同じものである。
つまり、補強線材2のモノフィラメントと第2補強線材2′のモノフィラメントをそれぞれ逆の螺旋方向に巻き付けて相互に交差させている。
【0020】
図3(a)(b)に示される例では、補強線材2及び第2補強線材2′として、共に同径の略蒲鉾型に形成されたモノフィラメントを用いている。
また、その他の例として図示しないが、補強線材2及び第2補強線材2′のいずれか一方又は両方に、図2(a)に示される半円形、図2(b)に示される略台形、図2(c)に示される略帽子形、図2(d)に示される略山形のモノフィラメントを用いることも可能である。
【0021】
このような本発明の実施例2に係る多層耐圧管Aによると、補強線材2と第2補強線材2′が交差状に配置され、これら両者の張力バランスが均等化されるので、管の伸びや捻れを防止することができるという利点がある。
【実施例3】
【0022】
この実施例3は、図4(a)(b)に示すように、補強線材2と外層3との間に、中間層4と、この中間層4の外周面4aに沿って螺旋状に巻き付けられる第2補強線材2′とを備え、第2補強線材2′の平滑部2a′を中間層4の外周面4aと密接するように配置した構成が、図3に示した実施例2とは異なり、それ以外の構成は図3に示した実施例2と同じものである。
【0023】
図4(a)(b)に示される例では、中間層4の外周面4aに対して第2補強線材2′をその平滑部2a′が外周面4aと略面一状となるように巻き付けている。
また、その他の例として図示しないが、第2補強線材2′の巻き付け張力で平滑部2a′が中間層4の内部に食い込むように配置することも可能である。
【0024】
このような本発明の実施例3に係る多層耐圧管Aによると、図3に示される実施例2と比べて、補強線材2の巻き付け形状に影響されることなく、第2補強線材2′を所定ピッチで巻き付けることができる。さらに、中間層4の外周面4aと第2補強線材2′の平滑部2a′との摩擦抵抗が大きくなって移動不能に保持されるとともに、中間層4の外周面4aと第2補強線材2′の平滑部2a′との間に隙間が生じないので、中間層4に対する第2補強線材2′の位置ズレ防止と管内の気泡発生防止とを同時に達成することができる。
その結果、外層を積層する時の樹脂などの圧力によって第2補強線材2′の位置ズレが発生しなくなるため、第2補強線材2′の巻き付けピッチを均等にすることができ、それによって部分的に耐圧強度が低下しないため、管内の圧力上昇による破裂を確実に防止できる。
さらに、中間層4の外周面4aと第2補強線材2′との間に隙間が生じないため、中間層4及び外層の間に残った気泡による中間層4と外層の剥離を確実に防止でき、しかも内層、外層及び中間層4を共に透明又は半透明の材料で形成しても、気泡が目立つことがなく商品価値を高く維持することができる。
また、第2補強線材2′の底面を平滑部2aとしたので、同じ断面積を有する断面円形状のモノフィラメントを巻き付けるものに比べ、管全体の肉厚寸法を薄くできる。
またさらに、図示例のように、補強線材2及び第2補強線材2′をそれぞれの螺旋方向が逆で相互に交差するように配置した場合には、実施例2と同様に、補強線材2と第2補強線材2′が交差状に配置され、これら両者の張力バランスが均等化されるので、管の伸びや捻れを防止することができるという利点もある。
【実施例4】
【0025】
この実施例4は、図5(a)(b)に示すように、補強線材2と外層3との間に、第3補強線材5としてマルチフィラメントを補強線材2の螺旋方向と逆で相互に交差するように螺旋状に巻き付けた構成が、図1に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1に示した実施例1と同じものである。
【0026】
図5(a)(b)に示される例では、補強線材2として略蒲鉾型のモノフィラメントを用いている。
また、その他の例として図示しないが、補強線材2として図2(a)に示される半円形、図2(b)に示される略台形、図2(c)に示される略帽子形、図2(d)に示される略山形のモノフィラメントを用いることも可能である。
【0027】
このような本発明の実施例4に係る多層耐圧管Aによると、補強線材2と第3補強線材5が交差状に配置され、これら両者の張力バランスが均等化されるとともに、管全体を曲げることで管の内側部分が収縮した時に、第3補強線材5となるマルチフィラメントが追従するので、管の伸びや捻れを防止しながら管の可撓性を高めることができる。
その結果、可動配管に適した多層耐圧管を得ることができる。
さらに、補強線材2となるモノフィラメントの外径よりも細い第3補強線材(マルチフィラメント)5を用いた場合には、複数本のモノフィラメントを交差させて配置したものに比べ、補強線材(モノフィラメント)2と第3補強線材(マルチフィラメント)5の交差部が他の表面部分よりも大きく突出しないので、管の表面全体を平滑化することができるという利点がある。
【実施例5】
【0028】
この実施例5は、図6(a)(b)に示すように、補強線材2と外層3との間に、中間層4と、この中間層4の外周面4aに沿って補強線材2の螺旋方向と逆で相互に交差するように螺旋状に巻き付けられる第3補強線材(マルチフィラメント)5とを配置した構成が、図5に示した実施例4とは異なり、それ以外の構成は図5に示した実施例4と同じものである。
【0029】
図6(a)(b)に示される例では、中間層4の外周面4aに対して第3補強線材5となるマルチフィラメントの端部が外周面4aに当接するように巻き付けている。
また、その他の例として図示しないが、第3補強線材5の巻き付け張力でマルチフィラメントの端部が中間層4の内部に食い込むように配置することも可能である。
【0030】
このような本発明の実施例5に係る多層耐圧管Aによると、図5に示される実施例4と比べて、補強線材2の巻き付け形状に影響されることなく、第2補強線材2′を所定ピッチで巻き付けることができるという利点がある。
【実施例6】
【0031】
この実施例6は、図7(a)(b)に示すように、多層耐圧管Aを複数本、それぞれの一部が軸線方向へ相互に接触するように並べ、これらの接触部分が固着された多連管Bを製造し、これら多層耐圧管Aの補強線材2をそれぞれの螺旋方向が逆になるように配置した構成が、図1に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1に示した実施例1と同じものである。
【0032】
図7(a)(b)に示される例では、2本の多層耐圧管Aをそれぞれの周方向一部が軸線方向へ相互に接触するように並べて相互に固着し、これら多層耐圧管Aの補強線材2として略蒲鉾型に形成されたモノフィラメントを用いている。
また、その他の例として図示しないが、3本以上の多層耐圧管Aをそれぞれの周方向一部が軸線方向へ相互に接触するように並べて相互に固着したり、各多層耐圧管Aの補強線材2として、図2(a)に示される半円形、図2(b)に示される略台形、図2(c)に示される略帽子形、図2(d)に示される略山形のモノフィラメントを用いることも可能である。
【0033】
このような本発明の実施例6に係る多連管Bによると、隣接する多層耐圧管Aに配置された補強線材(モノフィラメント)2の螺旋方向が逆になるように配置されるため、隣接する多層耐圧管Aが同時にいずれの方向に捻られたとしても、それぞれの補強線材(モノフィラメント)2で支え合って保形されるので、潰れ変形し難くキンクを防止することができる。
その結果、狭いところでも配管できて作業性が良いという利点がある。
【0034】
なお、図1(a),図5(a),図6(a)及び図7に示される例では、補強線材2となるモノフィラメントを1本だけコイルスプリング状に巻き付けているが、これに限定されず、特許第4465556号公報に記載されるように、補強線材2となるモノフィラメントを内層1の軸線方向へ複数本並べたまま等ピッチで螺旋状に巻回しても良い。
さらに、図3(a)及び図4(a)に示される例では、補強線材2及び第2補強線材2となるモノフィラメントをそれぞれ1本ずつコイルスプリング状に巻き付けているが、これに限定されず、補強線材2及び第2補強線材2′のいずれか一方又は両方を、特許第4465556号公報に記載されるように、内層1の軸線方向へ複数本並べたまま等ピッチで螺旋状に巻回しても良い。
また、図6(a)(b)に示した実施例5では、中間層4の外周面4aに沿って第3補強線材(マルチフィラメント)5を配置したが、これに限定されず、第3補強線材(マルチフィラメント)5の巻き付け位置を内層1と中間層4の間とし、中間層4の外周面4aに沿って補強線材2を、第3補強線材(マルチフィラメント)5の螺旋方向と逆で相互に交差するように螺旋状に巻き付けても良い。
【符号の説明】
【0035】
A 多層耐圧管 1 内層
1a 外周面 2 補強線材
2a 平滑部 2b 傾斜部
2′ 第2補強線材 2a′ 平滑部
3 外層 4 中間層
4a 外周面 5 第3補強線材
B 多連管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層(1)と、この内層(1)の外周面(1a)に沿って螺旋状に巻き付けられる補強線材(2)と、これら内層(1)及び補強線材(2)の外周に積層される外層(3)とを備え、
前記補強線材(2)は、前記内層(1)の前記外周面(1a)と対向する底面に平滑部(2a)を有し、該平滑部(2a)を前記内層(1)の前記外周面(1a)に密接するように配置したことを特徴とする多層耐圧管。
【請求項2】
前記補強線材(2)がモノフィラメントからなり、その断面形状が、前記平滑部(2a)の幅方向両端に連続する一対の側辺として前記外層(3)へ向かって徐々に幅狭となる傾斜部(2b)を有することを特徴とする請求項1記載の多層耐圧管。
【請求項3】
前記補強線材(2)と前記外層(3)との間に、第2補強線材(2′)を螺旋状に巻き付け、これら補強線材(2)及び第2補強線材(2′)をそれぞれの螺旋方向が逆で交差するように配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の多層耐圧管。
【請求項4】
前記補強線材(2)と前記外層(3)との間に中間層(4)と、この中間層(4)の外周面(4a)に沿って螺旋状に巻き付けられる第2補強線材(2′)とを備え、
前記第2補強線材(2′)は、前記中間層(4)の前記外周面(4a)と対向する底面に平滑部(2a′)を有し、該平滑部(2a′)を前記中間層(4)の前記外周面(4a)と密接するように配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の多層耐圧管。
【請求項5】
前記補強線材(2)と前記外層(3)との間に、第3補強線材(5)としてマルチフィラメントを螺旋状に巻き付け、これら補強線材(2)及び第3補強線材(5)をそれぞれの螺旋方向が逆で交差するように配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の多層耐圧管。
【請求項6】
前記補強線材(2)と前記外層(3)との間に中間層(4)と、この中間層(4)の外周面(4a)に沿って螺旋状に巻き付けられる第3補強線材(5)とを備え、
前記第3補強線材(5)としてマルチフィラメントを用い、前記補強線材(2)及び前記第3補強線材(5)をそれぞれの螺旋方向が逆で交差するように配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の多層耐圧管。
【請求項7】
請求項1又は2記載の多層耐圧管(A)を複数本、それぞれの一部が軸線方向へ相互に接触するように並べ、これらの接触部分を固着した多連管(B)であって、
前記多層耐圧管(A)の前記補強線材(2)をそれぞれの螺旋方向が逆になるように配置したことを特徴とする多連管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−37033(P2012−37033A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180647(P2010−180647)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000134534)株式会社トヨックス (122)
【Fターム(参考)】