説明

多成分ナノ粒子材料、プロセス及びその装置

多成分ナノ粒子材料、そのための装置及びプロセスが開示されている。本開示の一つの特徴は、溶液又は縣濁液から、又は、火炎合成又は火炎噴霧熱分解により形成された粒子を分離し、結果として得られた粒子は、回収又は堆積する前に、チャンバー内で混合される。本開示の他の特徴は、ナノ粒子は、よどみ又はブンゼン火炎で合成され、移動基板上に熱泳動により堆積される。これら技術は、多成分ナノ粒子材料及び膜の大量生産を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多成分ナノ粒子材料、膜及びそれらを形成するためのプロセスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒子組成物は、多様な用途があり、表面化学及び物理学の発展に寄与する出願の至る所で見受けられる。組成物の平均粒子サイズが小さくなると、表面積は粒子サイズの二乗で増加する。このことは、使用可能な表面積の増加のため、例えば、反応速度等の表面機能の向上をもたらす。パフォーマンスを最適化するため、高表面積に依存するシステムの例としては、触媒コンバーター、色素増感太陽電池、電池、燃料電池等が挙げられる。これらの応用例の中には、1種以上のナノ粒子で構成されたナノ粒子膜を使用しているものもある。このようなシステムでは、様々な粒子は、異なる機能を示す。
【0003】
ある種の燃料電池では、例えば、陽子と電子を同時輸送するためには、電子伝導体として機能するための膜要素、及び陽子伝導体として機能するその他の要素を必要とする(非特許文献1参照)。その他の例としては、少なくとも2つの異なったサイズのチタニアナノ粒子を含む膜が、色素増感太陽電池のパフォーマンスを最適化するために用いられる(非特許文献2参照)。そのようなシステムでは、小さな粒子による、より効率的な収集のため、大きな粒子は、入射光以上の散乱をすることができ、このことは、表面エリアと光子誘導電子励起に影響を与える。
【0004】
多くの粒子膜を堆積する方法が知られているが、粒子は同じ組成である。Tolmachoffらは、よどみ流火炎上に基板を繰り返し通過させることで、チタニア粒子の薄膜を形成する方法を開示している(非特許文献3参照)。他の単一成分のナノ粒子膜を形成する方法としては、スクリーン印刷又はナノ粒子ペーストのスキージング(非特許文献4参照)、マイクロ又はナノ粒子インクを印刷(特許文献1及び特許文献2参照)、CVD法(非特許文献5参照)、または噴霧熱分解(非特許文献6参照)等が挙げられる。しかしながら、これらの参考文献は、組成的に及び/又は機能的に異なるナノ粒子の混合物を含む膜又は材料を形成する方法を開示しているとは思われない。
【0005】
組成的に及び/又は機能的に異なる粒子は、ペースト又はインク中で混合されてもよいが、粒子は、印刷に必要な高い粒子濃度と強い粒子間力の為に、懸濁液中で凝集する傾向にある。例え、界面活性剤が使用されたとしても、界面活性剤は何れも、乾燥及び/又は焼結プロセス中で失われるので、凝集は堆積の後に続くことになる。このことは、回りまわって、多成分膜中の個々の成分の粒子サイズをマイクロスケールに制限することになり、組成的に異ならない粒子の膜を形成することになる。単一組成物粒子からなる膜を形成する方法の例としては、特許文献1及び特許文献2に開示されており、該文献中では、インクは、有機溶媒及び所定成分の混合物を有する固体を粉砕することにより製造されるマイクロ薄片又はナノ薄片から形成されている。
【0006】
パターン化ナノ粒子膜は、自己組織化技術を使用してコロイド溶液中で形成することができる(例えば、非特許文献7参照)。ここで、駆動力は、粒子及び分子間と同様又は異なり、静電相互作用である。多数の粒子タイプが混合されるものの、これらの技術は、一般的に非常に遅く、それ故、ナノ粒子膜の連続又は大量生産には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第20070169812号
【特許文献2】米国特許出願第20070169813号
【0008】
【非特許文献1】Haile、Chisoholm、Sasaki、Boysen、 and Uda、“Solid acid proton conductors:from laboratory curiosities to fuel cell electrolytes”、Faraday Discussions 134:17−39、2006
【非特許文献2】Vargas、“Aggregation and composition effects on absorption and scattering properties of dye sensitized anatase TiO2 particle clusters”、Journal of Quantitative Spectroscopy & Radiative Transfer 109:1693−1704、2008
【非特許文献3】Tolmachoff、Garcia、Phares、Campbell、and Wang、“Flame synthesis of nanophase TiO2 crystalline films”、Proceedings of the 5th U.S. Combustion Meeting、Paper #H15、2007
【非特許文献4】Llobet et al.、“Screen−printed nanoparticle tin oxide films for high−yield sensor microsystems”、Sensors & Actuators B 96:94−104、2003
【非特許文献5】Zhu et al.、“Growth of high−density Si nanoparticles on Si3N4 and SiO2 thin films by hot−wire chemical vapor deposition”、Journal of Applied Physics 92:4695−4698、2002
【非特許文献6】Itoh、Abdullah、and Okuyama、“Direct preparation of nonagglomerated indium tin oxide nanoparticles using various spray pyrolysis methods”、Journal of Materials Research 19:1077−1086、2004
【非特許文献7】Sastry、GoIe、and Sainkar、“Formation of patterned、heterocolloidal nanoparticle thin films”、Langmuir 16:3553−3556、2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、例えば、異なるナノ粒子からなる混合物のような多成分材料、およびそれらの製造のためのプロセスが必要とされている。また、ある種の燃料電池、太陽電池、電池および多成分ナノ粒子材料及び膜を利用するその他のデバイスを確実に大量生産するために、それら材料及びプロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、多成分材料、プロセス、およびそれらの製造のための装置を提供することにある。
【0011】
これら、およびその他の有利な点は、複数の第1粒子及び複数の第2粒子の混合物を含む混合物、材料又は膜であって、複数の第1粒子及び複数の第2粒子が、平均サイズが約500nm未満、例えば、約200nm未満であることによって、少なくとも部分的に満たされる。有利には、複数の第1粒子は、複数の第2粒子と組成的に異なる。
【0012】
開示されている実施態様には、複数の第2粒子と密接且つ不規則に混合された複数の第1粒子であって、複数の第1粒子は、有機化合物、無機化合物、金属、電解触媒、金属酸化物、リチウム活性化合物、金属水素化物、金属アミン、固体酸、及びそれの塩から成るグループから選ばれる1以上の成分からなり、複数の第2粒子は、複数の第1粒子と組成的に異なる、又は平均サイズが明らかに異なること、が含まれている。混合物、材料又は膜は、複数の第3、第4、第5等の粒子を含むことができる。他の実施態様には、例えば、LiNiO、LiCoO、LiMn、LiCoMnO、LiZnSb、LiFePO及びLiFePOF粒子等のリチウム混合金属酸化物及びリン酸塩等の1以上のリチウム活性化合物粒子と炭素粒子を含む混合物であって、リチウム活性化合物粒子は、平均サイズが100nm未満で、そして、平均サイズが50nm未満の複数の炭素粒子と密接且つ不規則に混合されること、が含まれている。
【0013】
本開示の他の側面には、十分に混合された多成分材料及び膜を形成するプロセスが含まれる。そのプロセスは、第1エアロゾルを形成;第2エアロゾルを形成;そして、基板上で、第1エアロゾルからの複数の第1粒子及び第2エアロゾルからの複数の第2粒子を含む複合材料又は膜を形成するため、第1エアロゾル及び第2エアロゾルを混合し、2成分エアロゾルを形成、する工程を含む。有利には、このプロセスは、複数の第1粒子及び平均サイズが500nm未満の複数の第2粒子の形成を含んでいる。複数の第1粒子は、組成的に複数の第2粒子と異なるようにすることができ、又は複数の第1粒子は、複数の第2粒子の平均サイズと異なる平均サイズとすることができる。あるいは、複数の第1粒子は、組成的に複数の第2粒子と異なり、且つ複数の第2粒子の平均サイズと異なる平均サイズとすることができる。エアロゾル化した成分は、溶液又は懸濁液を噴霧又は霧化することで、又は火炎合成や噴霧熱分解によって、個別に形成することができる。
【0014】
本開示の側面は、異なるエアロゾルを形成及び混合することで、多成分材料及び膜を形成する装置を提供することである。例えば、装置は、複数の異なったエアロゾルを受入・混合するためのチャンバーと流体連結し、且つ複数のエアロゾルを形成するためのバーナー及び/又は噴霧器を含むことができる。実施態様には、第1エアロゾルを形成するための第1バーナー又は噴霧器;第2エアロゾルを形成するための第2バーナー又は噴霧器;第1及び第2エアロゾルを受入・混合するため、第1及び第2バーナー又は噴霧器と流体連結しているチャンバー;及び、チャンバーからエアロゾルを排出するためのチャンバーに連結している出口ポート、を含み、第1バーナー又は噴霧器は、(a)第2バーナー又は噴霧器から形成されたエアロゾルと組成的に異なるエアロゾルを形成、又は(b)第2バーナー又は噴霧器から形成されたエアロゾルと異なる平均サイズのエアロゾルを形成、のどちらも可能である装置を含む。
【0015】
本発明の更に有利な点は、以下の詳細な記載から、当業者であれば容易に明らかとなるであろう。ここでは、本発明の好ましい実施態様のみ開示されているが、単に、本発明を実施するためのベストモードを説明する為である。本発明は、他の及び異なった実施態様とすることもでき、そのいくつかの詳細については、本発明から逸脱することが無い範囲で様々に変更することができる。したがって、図面及び詳細な説明は、例示のためであり、限定のためではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
参照記号が図面中に記載されているが、同じ参照記号の構成要素は最初から最後まで、同様の構成要素を表す。
【図1】図1は、複数の噴霧器を含む、多成分ナノ粒子膜を形成する装置の概略図である。
【図2】図2は、リン酸二水素セシウム、炭素及び白金粒子を含み、リン酸二水素セシウム粒子の平均サイズが約50nm、炭素粒子の平均サイズが約20nm、白金粒子の平均サイズが約20nmである、混合多孔質ナノ粒子膜の電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、複数の噴霧器及び粒子形成バーナーを含む、多成分ナノ粒子材料及び膜を形成する他の装置の概略図である。
【図4】図4は、複数の粒子形成バーナー上の回転板を含む、多成分ナノ粒子膜を形成する他の装置の概略図である。
【図5】図5は、チタニア粒子の平均サイズが約15nm、炭素粒子の平均サイズが約50nmである、ガラス基板上のチタニア及び炭素粒子を含む混合ナノ粒子膜の電子顕微鏡写真である。
【図6】図6は、複数の粒子形成バーナー上の回転基板を含む、多成分ナノ粒子膜を形成する他の装置の概略図である。
【図7】図7は、エチレン予混合火炎から形成された約10nmの炭素粒子及び溶液噴霧化により形成された約50nmのリン酸二水素セシウム粒子を含むエアロゾル混合物の、ナノ−SMPS分析器(モデル3936N25、TSI社製)により求められた粒径分布を表すグラフである。
【図8】図8は、多成分ナノ粒子材料及び膜を形成する他の装置の概略図である。
【図9】図9は、粒子形成装置のスロットバーナー及び噴霧器を表す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、材料(膜に含まれる材料も含む)に関するものであって、少なくとも2セットの粒子、例えば、複数の第1粒子及び複数の第2粒子の混合物を含む。第1及び第2の意味は、単に言及を容易にするためであって、粒子の特性を限定するものではない。これら多成分粒子材料又は膜は、例えば、複数の第1及び第2粒子と併用可能な複数の第3、第4、第5等の粒子等、複数の第1及び第2粒子と併用可能な追加粒子を含むことができる。
【0018】
本開示の一態様において、複数の第1粒子及び複数の第2粒子は、ナノメータースケールの平均サイズを有している。本開示の目的のため、ナノメータースケールの平均サイズを有する粒子は、約500nm未満の平均サイズを有する粒子である。そのような粒子は、ここでは、ナノ粒子と記載されることもある。好ましくは、複数の第1及び第2粒子は、約500nm未満、例えば、約200、100、80、60、40、20、10nm未満か、それらの間の平均サイズを有している。平均サイズは、任意の周知手段を用いて決めることができ、例えば、TSI社製の走査型モビリティ粒子サイザー又はそれと同等の機器が挙げられる。それら機器が、実用的ではない又は利用できない場合は、平均サイズを決定するための他の周知手段を用いることができ、例えば、電子顕微鏡画像又はそれと同等のイメージから材料中の多くの粒子の直径を推定し、推定直径の平均値を求める方法が挙げられる。
【0019】
有利には、本開示の材料は、ナノメータースケールの組成的に異なる粒子の混合物、すなわち、組成的に区別できるナノ粒子の混合物を含む。組成的に異なる粒子とは、元素組成及び/又は与えられた組成物の正常変動を超えた元素比により、異なる組成を持った粒子である。組成的に異なる粒子は、同一材料中で異なった機能を果たす。本開示の一実施態様として、材料又は膜は、複数の第1粒子及び複数の第2粒子の混合物を含み、複数の第1粒子及び複数の第2粒子の平均直径は約500nm未満、例えば、約200nm未満であり、そして、複数の第1粒子は、複数の第2粒子と組成的に異なっている。
【0020】
材料及びこれら材料を調整するためのプロセスは、マイクロメータースケールの粒径サイズを製造する際に一般的である機械的混合(例えば、ボールミル粉砕による混合等)を含む方法と比較して、有利であると考えられている。例えば、ミルによるナノメーターサイズの粒子からなる粉末混合物は、ナノ及びマイクロサイズの粒子間の強いファンデルワース力及び静電相互作用のため、結果的に大凡1マイクロメーターの粒子サイズの混合粉末を得ることになると信じられている。従って、個々の粒子サイズは、直径でナノメータのオーダーであったとしても、得られた混合物は、サイズとしてはマイクロメーターのオーダーの単一組成の凝集体の特性を表す。このことは、混合物中のナノサイズ粒子の不規則、分散、又は規則正しいパターンにする可能性を排除してしまう。
【0021】
本開示の有利な点は、不規則及び/又は分散され、組成的に異なるナノサイズ粒子を含む材料及び膜である。本開示の一つの特徴は、材料又は膜は、第1粒子と組成的に異なる複数の第2粒子と密接且つ不規則に混合された複数の第1粒子を含むことである。
【0022】
多成分粒子材料は、多数の出発粒子から形成される。これらは、火炎中(例えば、炭素や金属酸化物)、又は噴霧熱分解(例えば、金属酸化物)で形成された粒子、及び溶液又は縣濁液の噴霧化や乾燥(例えば、水中のリン酸二水素セシウムやエタノール中の白金ナノ粒子)で形成された粒子を含む。粒子の組成は、エアロゾルによって形成されるものに限定される。本発明においては、エアロゾルは、ガス中に浮遊した固体及び/又は液体粒子の分散を意味する。エアロゾルは、火炎又は噴霧器の中で粒子形成を可能とする揮発性の溶媒又は液体に溶解又は縣濁した固体から成る媒体から形成される。エアロゾルは、例えば、ブンゼンバーナーによる炭素粒子の形成等、ガス中に縣濁された固体炭素粒子を形成するための炭化水素を燃焼することによっても形成される。
【0023】
噴霧器に用いられる溶媒又は液体媒体は、例えば、一つ又はそれ以上の水;例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、フルフリルアルコール等のC1-12の低級アルコールを含むアルコール類;エチレングルコール、ブタンジオール、プロパンジオール等の多価アルコール類;直鎖又は分岐してもよい低級エーテル、ジメチルエーテル、エチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等、直鎖又は分岐してもよい低級ケトン類を含むケトン類;ギ酸、酢酸、酪酸、安息香酸等の有機酸;ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩等のエステル類;ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の直鎖又は分岐してもよいアルカン類、直鎖又は分岐してもよいアルケン類、芳香族系溶媒や液体類等の炭化水素類;塩素系溶媒や液体;等が挙げられる。本開示の一態様では、溶媒または懸濁液は、媒体のpHを調整するため、塩酸等の1以上の酸、又はアンモニア等の1以上の塩、及び1以上の界面活性剤及び/又は緩衝剤を含む水媒体である。
【0024】
複数の第1、第2、第3等の粒子は、炭素、カーボンナノチューブ、フラーレン等の有機化合物類;アルミニウム、白金、銀、金、パラジウム、スズ、チタン、インジウム、亜鉛等の金属類;アルミナ、酸化スズ、チタニア、酸化亜鉛、酸化インジウム等の金属酸化物類;ケイ素、ガリウム、カドミウム、テラリウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素等の半導体類、及びその酸化物及び窒化物類;金属水酸化物類;金属アミン類;CsH2PO4、CsHSO4、Cs2(HSO4)(H2PO4)、(NH43H(SO42、CaNaHSiO4等の固体酸;インジウムスズ酸化物、アルミニウムでドーピングされた酸化亜鉛、インジウムモリブデン酸化物、アンチモンスズ酸化物、F、In、Ga、B、Si、Ge、Ti、Zr、Hf、Sc、Y及びそれらの塩等の様々な他の元素がドープした亜鉛、LiNiO2、LiCoO2、LiMn24、LiCoMnO4、LiZnSb、LiFePO4、Li2FePO4F等のリチウム混合金属酸化物やリン酸塩のような電池に有用なリチウム活性化合物、などの無機化合物;から成る群から選ばれる1以上の成分から構成されている。
【0025】
粒子の2番目のセットは、1以上の前記成分から成るが、第1粒子と比較して組成又は平均サイズが明らかに異なる。第1及び第2の複数の粒子は、500nm未満の平均サイズで、多成分材料のどの場所でも密接且つ不規則に混合されていることが好ましい。
【0026】
多成分材料は、固体酸燃料電池に用いられ、アノードは、CsH2PO4、CsHSO4、Cs2(HSO4)(H2PO4)、(NH43H(SO42、CaNaHSiO4等の固体酸粒子、電子伝導粒子及び電子触媒粒子を含む、多孔質のよく混合されたナノ粒子膜を含む。
【0027】
本開示の実施態様として、多成分粒子膜は、複数の固体酸粒子、炭素等の複数の伝導粒子、及びPt、Ru、Rh、Pd、Cu、Ni、Ag、Au、Sn等の複数の電子触媒粒子を含む。それら膜は、例えば、米国特許第6、468、684号明細書、米国特許第7、250、232号明細書及び米国特許第7、255、962号明細書に開示されている燃料電池のプロトン伝導膜として用いられる。これらの特許に記載されているように、多くの固体酸は、次の一般子式の化合物を含む前記膜に用いることができる。
ab(XOtc、又はMab(XOtc・nH2
(Mは、1以上のLi+、Be+、Na+、Mg+、K+、Ca+、Rb+、Sr+、Cs+、Ba+、Tl+及びNH4+又Cu+;Xは、1以上のSi、P、S、As、Se、Te、Cr及びMn;a、b、c、n及びtは、有理数及び/又はゼロではない整数である。)
【0028】
プロトン伝導膜を最適化するためには、膜を通過するイオン及びガスの輸送が考慮されるべきで、膜の空隙率及びマイクロ構造が適宜調整される。例えば、プロトン伝導膜を最適化するとは、高空隙率及び低い捻れの膜構造にすべきと考えられている。そのような構造は、先ず、膜の中にマイクロサイズの空隙を保持するために、フラクタル状の炭素凝集体を堆積することで膜に埋め込まれたガス拡散チャンネルを形成し、次いで、固体酸粒子、炭素粒子及び電子触媒粒子の混合物からなる炭素中又は炭素間で、多成分ナノ粒子膜を形成することで、形成されると考えられている。
【0029】
多成分材料は、リチウム又はリチウムイオン電池等の電池に用いられ、電池のカソードは、リチウム混合金属酸化物やリン酸塩、例えば、LiNiO2、LiCoO2、LiMn24、LiCoMnO4、LiZnSb、LiFePO4、Li2FePO4F粒子のようなリチウム活性化合物、及び炭素粒子を含む。本開示の一つの実施態様では、多成分ナノ粒子混合物は、リン酸鉄リチウム粒子等の複数のリチウム活性化合物、及び複数の炭素粒子を含む。リチウム活性化合物及び炭素粒子は、混合物のどの場所でも密接且つ不規則に混合されていることが好ましい。本開示の一つの特徴は、リン酸鉄リチウム粒子等のリチウム活性化合物粒子は、約200nm未満、例えば、約100、50、20nm未満及びそれらの間のサイズの平均サイズを有し、炭素粒子は、約200nm未満、例えば、約100、50、20、10nm未満及びそれらの間のサイズの平均サイズを有する。
【0030】
リチウムイオン電池は、カソード材料として、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)がますます使われるようになってきている。リン酸鉄リチウムの主な利点は、加熱暴走と爆発リスクが最小限化され、他の一般的に用いられている材料(例えば、コバルト酸リチウム、バナジウム酸リチウム)より安全なことである。電池の放電時は、鉄(II)は鉄(III)に酸化され、発生した自由電子は負荷によりアノードに戻る。一方、Li+イオンは、電解液を介してアノードに輸送される。放電速度は、電解液及びリン酸鉄リチウムの接触面積に依存することから、高性能電池を得るためには、リン酸鉄リチウムの粒子サイズを小さくすることが必要である。しかしながら、リン酸鉄リチウムの問題は、電気伝導度が低く、そのため、自由電子がカソードから排出されにくく、電池の放電速度が制限されることである。
【0031】
この欠点を克服する一つの方法は、カソードの電気伝導度を高めるため、リン酸鉄リチウム粒子と炭素粒子を密接に混合させることである。混合物の混合長スケールは、粒子サイズが同じスケールであることが好ましく、そうすると、個々のリン酸鉄リチウム粒子からの電子が、効率的に抽出され且つカソードから輸送される。本開示の一つの実施態様では、多成分ナノ粒子組成物は、リン酸鉄リチウム粒子及び炭素粒子を含み、それら粒子は、混合物のどの場所でも密接且つ不規則に混合され、リン酸鉄リチウム粒子は、約200nm未満、例えば、約100、50、20nm未満及びそれらの間のサイズの平均サイズを有し、炭素粒子は、約200nm未満、例えば、約100、50、20、10nm未満及びそれらの間のサイズの平均サイズを有する。更に、リン酸鉄リチウム粒子は、例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タングステン等の1以上の金属をドープすることで、性能を向上することができる。
【0032】
本開示の一つの特徴は、多成分粒子は、複数の異なるエアロゾル化した成分をガス層で混合し、電気集塵器等により混合物を回収、或いは基板上に混合物を膜又は粉末として堆積することで形成される。エアロゾル化した成分は、溶液又は縣濁液を噴霧又は霧化することで、或いは火炎合成又は噴霧熱分解によって、個々に形成される。
【0033】
本開示の一つの実施態様では、良く混合された多成分ナノ粒子材料は、第1エアロゾルを形成;第2エアロゾルを形成;そして、第1エアロゾルから形成される複数の第1粒子及び第2エアロゾルから形成される複数の第2粒子を含む材料を形成するため、第1エアロゾル及び第2エアロゾルを混合;することで、調整される。本開示のプロセスは、組成的に異なる粒子を有する材料を形成することに限定されず、ある実施態様では、本開示のプロセスは、異なる平均サイズを有する粒子を形成することも可能である。それ故、複数の第1粒子は、(a)複数の第2粒子と組成的に異なる、及び/又は(b)複数の第2粒子の平均サイズと異なる平均サイズを有する。本開示の実施態様では、複数の第1粒子は、(a)複数の第2粒子と組成的に異なり、及び(b)複数の第2粒子の平均サイズと実質的に同じ平均サイズを有する。本開示の他の実施態様は、複数の第1粒子は、(a)複数の第2粒子と実質的に同じ組成的で、及び(b)複数の第2粒子の平均サイズと明らかに異なる平均サイズ、例えば、複数の第2粒子は、複数の第1粒子の平均サイズのわずか約2〜50倍の平均サイズ、具体的には、複数の第1粒子の平均サイズの2、5、10、50倍のサイズを有する。本開示の他の実施態様は、複数の第1粒子は、(a)複数の第2粒子と組成的に異なり、及びb)複数の第2粒子の平均サイズと異なる平均サイズを有する。
【0034】
第1及び/又は第2エアロゾルは、溶液を霧状にすることにより、粒子縣濁液を霧状にすることにより、火炎合成及び/又は火炎噴霧熱分解することにより、形成される。
【0035】
ここで用いられる霧状にすること(atomizing)、及び噴霧化(atomization)は、液体媒体をスプレー又はミスト(例えば、滴の集合体)に変換することを意味する。噴霧化は、ノズルや開口部を通して液体媒体を噴出すること生じる。霧状にする及び噴霧化との用語は、スプレー、又はミスト、又はそれら由来の粒子が、原子サイズに縮小されることを意味するのではない。噴霧化は、「霧状にする(nebulize)」又は「噴霧(nebulization)」とも記載される。液体媒体を霧状にすることは、噴霧器を用いることでなされる。噴霧器は既に公知であり、例えば、米国ミネソタ州ショアビューのTSI社等から商業的に入手可能である。
【0036】
本開示の内容に基づき、当業者であれば、粒子の特性及び混合粒子膜中の粒子の分散を最適化するために、適切なパラメーターを選択することができる。
【0037】
例えば、エアロゾルは、溶液又は縣濁液から、液体を小さな液滴に噴霧し、次いで、別のチューブで形成された他のエアロゾル粒子と混合する前及び/又は混合中に、前記液滴を乾燥してエアロゾル粒子にすることで形成される。十分に混合されたナノ粒子膜を形成するために、液体の蒸気圧及び液滴の数密度をコントロールし、結果として形成される粒子をコントロールすることが好ましい。例えば、液体の蒸気圧は、飽和蒸気圧より低くすべきで、その結果、液体は粒子又は膜上に再凝結することが無くなる。液体の蒸気圧は、液体又は縣濁液を高速噴流に注入する速度を制限することで、低く維持されることが可能である。反対に、飽和蒸気圧は、加熱テープ、加熱コイル、及び/又は火炎から発生する熱等の加熱要素を使用してエアロゾル流を高温に維持することで、高く維持されることが可能である。エアロゾルの数密度は、多成分膜を含む粒子のサイズを増大する要因となる堆積前のエアロゾルの凝固及び凝集を、最小化できる程度に低く維持されることが好ましい。数密度は、清浄なシースガス中でエアロゾルを迅速に分散させる、或いは低い液噴射速度に維持することで、低く維持されることが可能である。
【0038】
別の方法として、またはそれらの組み合わせでは、エアロゾルは、適切なバーナーを用い、火炎合成や火炎噴霧熱分解によって形成される。火炎中のナノ粒子の形成は、もし噴霧化手順が炎に並列で使用された場合、混合エアロゾル流を、凝縮を防ぐのに十分な温度に保つという2重の目的を果たす。火炎合成技術は、予混合又は拡散火炎の設立、そして媒体中の1以上の前駆体化合物を必要に応じて火炎中を通過させ、そこで媒体中から前駆体化合物が分離、もしあれば、酸化又は熱分解される、ことを含む。酸化又は熱分解の所望生成物は、核となり、最後には膜上に堆積した粒子に成長する。一つの例は、有機金属化合物の酸化による金属酸化物粒子の形成である。火炎合成は、酸化剤を有する燃料を点火することで、複数の炭素粒子を形成するためにも使用することができる。これは、火炎中への酸素流量から得られる化学量論量に対して、過剰量の燃料又は炭化水素を火炎中に加えることで実施される。粒子を形成するための過剰量の炭素核は、キャンドルからの煤として一般的に視認される。燃料は、炭化水素(例えば、1以上の、プロパン、ブタン等のアルカン、エチレン等のアルケン、アセチレン等のアルキン等)及び必要に応じて不活性ガス(例えば、アルゴン)を含む混合物を含んでいる。燃料は、酸素等の酸化剤も含むことができる。また、酸化剤は、燃料に別途供給されることもできる。燃料混合物が酸化剤に対して炭化水素が多く含み、そして、全ての酸化剤が消費され、その結果、酸化剤欠乏環境下の状態になると、特定の応用のための還元環境として有用である。火炎噴霧熱分解は、液滴を破壊し、乾燥し、高温環境下での可能な限りの熱分解を開始するため、溶液液滴を設置された火炎の中を通して噴霧することを含む。その結果得られたエアロゾルは、ろ過、固着、電気泳動、熱泳動によって回収することができ、また、デバイスに用いられる基板上に膜として堆積される。
【0039】
混合エアロゾルを多孔質基板(孔径1マイクロ未満)を通過させると、混合前の個々のエアロゾルで形成された粒子を含む、十分に混合された均一の膜が形成される。直径100nm未満の粒子がフィルターにより回収されると基本的に拡散すると考えられ、その結果、フィルターを通過するエアロゾルの質量流が均一であると、均一の堆積パターンが得られる。この方法は、粒子サイズと密度に敏感である基板上に堆積パターンが結果として得られる、平らな基板上にエアロゾルジェットを衝突させる等の固着による粒子の回収方法とは対照的である。この回収方法は、粒子は、自身の慣性に基づき分離することから、十分に混合された膜を結果的に形成することはできない。しかしながら、エアロゾル濃度が、エアロゾル混合粒子を効率的に凝集できる位十分に高ければ、固着による粒子の回収は、十分に混合された多成分ナノ粒子材料の形成に用いることができる。このことは、エアロゾル成分の混合物を含む大きな凝集が、キャリアガス中で形成され結果として基板上に衝突するようなものである。
【0040】
本開示の他の特徴は、十分に混合された多成分ナノ粒子膜は、基板に向いている複数の火炎によって、異動している基板上に形成される。火炎上を基板が通過する毎に、小塊(例えば、単分子層より小さい)が基板上に回収される。複数の火炎上を基板を繰り返し通過させることで、通過する毎に異なるタイプのナノ粒子を形成し、結果として、十分に混合した多成分膜を形成する。火炎はブンゼン火炎又は予混合よどみ流火炎が用いられる。
【0041】
本開示の実施態様は、多成分組成物材料は、リン酸鉄リチウム粒子等のリチウム活性化合物粒子又はその前駆体のエアロゾルを、混合物を形成する炭素粒子と共に混合することで準備される。リチウム活性化合物のエアロゾルは、例えば、媒体中で様々なリチウム、金属化合物及びそれらの塩を混合することで調整したリチウム活性化合物の前駆体溶液を噴霧化することで形成される。例えば、リン酸鉄リチウム前駆体は、酢酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、シュウ酸リチウム、酸化リチウム、リン酸リチウム、リン酸二水素リチウム、炭酸リチウム等のリチウム前駆体;硫酸鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)、塩化鉄(II)等の鉄前駆体;リン酸、P25等のリン酸塩前駆体等を含む、多くの前駆体から調整されることができる。
【0042】
例えば、固体のリン酸鉄リチウムは、水溶液中で、炭酸リチウム又は酢酸リチウムと、リン酸、及び塩化鉄(II)又はシュウ酸鉄(II)を混合することで形成される。化学量論的に中性条件下、LiFePO4は、オリビン結晶構造を有する緑色の固体として沈殿する。しかしながら、沈殿物は、溶液を酸性にすることで抑制される。溶液のpHは、HCl、硝酸、硫酸、酢酸等の酸を加えることで調整される。それら酸性溶液が噴霧され、そして、噴霧化、噴霧熱分解等により、リン酸鉄リチウムが形成される。本開示の特徴は、リン酸鉄リチウムのエアロゾルは、超音波噴霧、ベンチャー噴霧(venture atomization)等により、リン酸鉄リチウム前駆体の酸性溶液を噴霧することで形成される。エアロゾルは、次に、炭化水素(例えば、1以上のアルカン、アルケン及びアルキン)及び酸化剤(例えば、酸素)の燃焼により形成された火炎に、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)又は燃料であるキャリアガスによって運ばれる。
【0043】
火炎は、エアロゾル液滴が微小爆発するための熱を供給し、また、リン酸鉄リチウムのナノ粒子を形成するために溶媒の蒸発を行う。結果として得られたリン酸鉄リチウムナノ粒子と混合され、共に堆積又は回収される炭素ナノ粒子を形成するため、火炎は、炭化水素燃料をリッチな状態にすることもできる。炭化水素リッチな燃料を用いる有利な点は、還元環境状態を維持し、回収されたリン酸鉄リチウムが鉄(III)に酸化されず、火炎中で鉄(III)に酸化された鉄は何れも、鉄(II)に還元されることである。
【0044】
エアロゾル粒子を回収する単純な方法は、炭素フィルター(それ自身でリチウムイオン電池のカソードの役割を果たすものである。)を通すことである。この方法では、リチウム活性化合物粒子及び炭素ナノ粒子の形成、混合、及び電気電極への回収は、単一のプロセスで達成できる。例えば、カソード電極は、複数の炭素粒子と密接且つ不規則に混合された複数のリチウム活性化合物粒子を含む組成物を、炭素及び/又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素化ポリマー、及び金属箔を含む所望の基板上に堆積することによって形成することができる。有利には、複数のリチウム活性化合物粒子及び炭素粒子は、200nm未満の平均サイズを持つことである。本開示の実施態様では、リチウム活性化合物粒子は、リン酸鉄リチウムを含み、平均サイズが100nm未満であり、複数の炭素粒子は、平均サイズが50nm未満である。
【0045】
本開示の特徴は、多成分材料を形成するための装置が開示されており、多成分材料には、少なくとも2組のナノ粒子の混合物を含む、膜状の材料が含まれる。例えば、装置は、組成的に異なる粒子及び/又は異なる平均サイズを有する粒子を形成するための複数の噴霧器及び/又は複数のバーナーを含む。本開示の装置は、組成的に異なる粒子を形成することに限定されず、異なる平均サイズの粒子を形成する態様も含む。
【0046】
本開示の実施態様は、多成分材料を形成するための装置で、第1エアロゾルを形成する手段;第2エアロゾルを形成する手段;第1エアロゾルから複数の第1エアロゾル粒子、第2エアロゾルから複数の第2粒子を形成するため、第1エアロゾル及び第2エアロゾルを混合する手段;を含む。装置は、複数の第1粒子及び複数の第2粒子が、約500nm未満、例えば、約200nm未満の平均サイズを有する、及び/又は複数の第1粒子が複数の第2粒子と組成的に異なるように構成されている。
【0047】
異なるエアロゾルを混合するため、装置は、第1エアロゾルを形成する第1バーナー又は噴霧器;第2エアロゾルを形成する第2バーナー又は噴霧器;第1及び第2エアロゾルを受入・混合するため、第1及び第2バーナー又は噴霧器と流体連結しているチャンバー;及び、チャンバーからエアロゾルを排出するためのチャンバーに連結している出口ポート、を含み、第1バーナー又は噴霧器は、(a)第2バーナー又は噴霧器から形成されたエアロゾルと組成的に異なるエアロゾルを形成、又は(b)第2バーナー又は噴霧器から形成されたエアロゾルと異なる平均サイズのエアロゾルを形成、のどちらも可能である装置を含む。第1及び第2の意味は、単に言及を容易にするためであって、粒子の特性や装置の構成を何ら限定するものではない。有利には、装置は、チャンバー及び/又はスロット状の出口ポート、及び/又は細長い開口等のスロット状のノズル又はアパチャーを有するバーナー及び/又は噴霧器を含む。
【0048】
図1は、多成分材料や膜を形成するのに用いられる装置100の概略を示したものである。装置100の導管及び裏張りは、ガラス、ステンレス鋼等、粒子の形成を実質的に妨げないものであればどの様な材料でも良い。本図に示されるように、エアロゾル膜発生器100は、スロット状である出口ポート126を通り、チャンバー112から排出される複数のエアロゾル化された成分を形成及び混合することによって、基板102、例えば炭素フィルター上に多成分膜又は粒子を形成するために用いられる。本図の開示では、第1噴霧器104は、複数の第1粒子を形成するための第1エアロゾル106を形成し、第2噴霧器108は、複数の第2粒子を形成するための第2エアロゾル110を形成する。第1及び第2の意味は、単に言及を容易にするためであって、粒子の特性や装置の構成を何ら限定するものではない。噴霧器104及び108は、市販されている何れの噴霧器でよく、又はエアロゾル化した粒子の形成に用いることができるベンチュリ噴霧器として組み立てられたものであってもよい。噴霧器104及び108は、スロット状のノズルを有することができる。
【0049】
第1及び第2噴霧器(104、108)は、チャンバー112と流体連結している。本実施態様では、チャンバー112は、第1噴霧器104と第2噴霧器108を接続するチューブである。しかし、チャンバー112は、スロット状である。チャンバー112は、噴霧器に接続し、エアロゾルを混合する。図1に示されているように、チャンバー112は、発熱要素114と流体連結している。本実施態様では、発熱要素114は、チャンバー112に流体連結及び接続している導管116を含み、導管116は、導管に接触している加熱テープ118によって加熱された導管116を通ることで加熱された、アルゴン、窒素等の不活性ガスを運ぶ。加熱要素は、第1及び/又は第2エアロゾル等の噴霧化された液体を乾燥するため、及び/又は第1及び/又は第2エアロゾルからの液体の再凝結を最小化又は防ぐために用いられる。チャンバー112及び導管116は、ステンレス鋼で形成されることが好ましい。ベント120及び122は、例えば、増加する負荷で多孔質基体を横切って圧力が低下した時等に、チャンバー112内の圧力をコントロールするために用いられる。本実施態様では、ベント122は、チャンバー112内の圧力及び/又はエアロゾルが出口ポート126から排出される速度を更に調整するため、ポンプ124に接続されている。
【0050】
図3は、多成分粒子材料及び膜の形成に用いられる他の装置の概略図を示したものである。図に示されるように、装置300は、複数のエアロゾル化された成分を形成及び混合することで、基板302上に多成分膜を形成するために用いられる。本開示では、第1エアロゾル304は、第1噴霧器306により形成される。第2噴霧器308は、第2エアロゾル310を形成するために用いられる。噴霧器306及び308は、市販されている噴霧器であれば何れのものでもよい。第1及び第2エアロゾル(304、310)は、混合管312で混合される。混合導管312は、第1及び第2エアロゾルと流体連結している。図3に示されているように、第3エアロゾル314は、火炎ノズル316から形成される。本実施態様では、火炎ノズル316は、炭化水素(例えば、1以上の、プロパン、ブタン等のアルカン、エチレン等のアルケン、アセチレン等のアルキン等)を含む混合物を、酸化剤(例えば、空気、酸素)及び必要に応じて不活性ガス(例えば、アルゴン)を含む混合物を点火することで、炭素ナノ粒子のエアロゾルを形成することができる。
【0051】
燃料及びキャリアガスが炭化水素リッチな時、炭化水素の燃焼生成物は、火炎中で生成され、エアロゾルと密接且つ不規則に混合することができる炭素粒子を含む。更に、そのような状況下では、酸素等の酸化剤はすべて、燃料の燃焼中に消費されるので、混合導管は、酸化剤を実質的に含まない。噴霧器からのエアロゾルがそのような状況下で混合導管に導入され、且つ、例えば、窒素流、或いは炭化水素流等の酸化剤を実質的に含まないガスによって運ばれた時、導管はエアロゾルの還元環境を備えることになる。
【0052】
燃焼されたガスの熱は、第1及び第2エアロゾル304,310を乾燥するために用いられる。エアロゾル304及び310からの粒子は、出口ポート320を通してよく混合されたナノ粒子として回収される。本実施態様では、エアロゾルからの粒子は基板302上に回収される。
【0053】
図4は、多成分粒子材料を形成するための他の装置の概略図である。装置400は、炭化水素の燃焼によって形成される炭素ナノ粒子404のエアロゾルを形成するためのブンゼンバーナー402を含み、炭素ナノ粒子は、スピンドル408及びプレート406を回転するためのモータ(説明に役立つ為、示されている)に装着されたスピンドル408によって回転するプレート406上に回収される。装置は、付加的なナノ粒子を形成できるよどみ流火炎412を形成するためのバーナー401を更に含む。この装置によって、複数の第1粒子はブンゼンバーナー402によって生成され、複数の第2粒子はよどみバーナー410によって生成される。これらの粒子は、プレート406に堆積される間、回収及び混合され、次いで、形成された材料は、プレートから取り除かれる。
【0054】
図6は、基板上に1以上の多成分膜を形成するために用いられる複数のバーナー(図6では、バーナー602、604、606として示されている。)を使ったバーナー機構の概略を示す図である。それぞれのバーナーは、基板608に対して1種以上のエアロゾルを形成するため、構成されている。この実施例では、バーナー602は空気力学的に加工されたスロットとして構成されているが、1以上の多数のバーナー構成に用いられても良い。例えば、よどみ流火炎は、空気力学的ノズル、チューブ状又はスロット状のバーナー等の適切な形状をしたバーナーを通して形成される。それぞれのバーナーは、よどみ流火炎(説明の簡便化のため示されていない)を形成するために用いられ、よどみ流火炎は、連続的に可動する基板を形成するためにそれぞれのバーナー上に可動的に配置された基板608によって安定化される。この実施例では、基板608は、複数のよどみ流火炎を安定化し、そして、ロングシートの形である;しかしながら、バーナーの配置次第で、他の形状の基板が用いられることも可能で、例えば、環状に配置された複数のバーナーに対して、円盤が用いられる。図6に示されるように、基板608は、回転ドラム610によりバーナー上を移動される。図6では、ドラム610は、基板を介して直接バーナー上に設けられる。ドラムを、大凡バーナー上に配置することは、例えば、基板の冷却の助けになる等、有利な効果があるが、ドラムはそのように配置されなくてもよい。バーナー上に配置されるドラムは、あってもなくてもよい。
【0055】
図6に示す配置は、いくつかの有利な点がある。単一のバーナーを用いた際の基板上の材料の堆積速度と、複数のバーナーを用いた際の材料の堆積速度を同じにする場合、複数の火炎に対する基板の移動速度をより速くできるので、基板の温度は、より低く保持される。複数の火炎の使用は、基板上に材料がより速い速度で堆積することを可能とする。更に、複数のバーナーを用いることで、それぞれのバーナー及びよどみ流火炎は、それぞれが、組成的に異なる粒子及び/又は異なる平均サイズを有する粒子を移動基板上へ堆積することができるように構成されている。それぞれのバーナーは、どれもがよどみ流火炎を形成し、移動基板上に同じ又は異なる粒子を形成するために、それぞれ配置される。形成された粒子は、基板から除去され、そして、多成分粒子材料又は膜として使用される。
【0056】
図8は、多成分材料を形成する他の装置の概略を示す図である。この図に示されるように、装置800は、炭化水素及び/又は、酸化剤及び/又はキャリアガスを含む炭化水素等の燃料804を、導管802に流体連結しているポート806を通して運ぶための導管802を含む。燃料804は、導管802に沿って、多孔質栓(スクリーンメッシュで代用可)を含む開口部812に運ばれ、次いで、チャンバー806に運ばれ、そこで、ポート810を通してチャンバー806に導入されたキャリアガス808と混合される。この実施例では、導管802及び開口部812はチャンバー806内に含まれ、チャンバー806は、圧縮された真ちゅう等の多孔質材料から形成された流れ矯正要素814を更に含む。流れ矯正要素814は、チャンバー806へのキャリアガス808の流量を分配するために用いられる。流れ矯正要素814は、導管802の上端と同一平面、又は導管802の上端より若干下方に配置することもできる。
【0057】
点火源(便宜の為例示されていない)は、火炎816を形成するためのチャンバー806内の流れ矯正要素814の上側の開口部812で、燃料804に点火するために用いられる。キャリアガス808は、空気又は他の酸化剤で、窒素、アルゴン等の1以上の不活性ガスを含むことができる。燃料804が燃焼するための十分な酸化剤を含んでいる時、キャリアガス808は、実質的に1以上の不活性ガス組成とすることができる。燃料804が、燃焼するための十分な酸化剤を含んでいない時、キャリアガス808は酸素等の酸化剤を含むことができる。
【0058】
図8に示されるように、装置800は、エアロゾル826をチャンバー806に運び、そして粒子832として出口ポート830に運ぶためのものであって、ポート824を通って噴霧器822に流体連結している導管820を更に含む。この実施例では、導管820は、導管802の中に配置されている。この実施例で示されるように、導管820のポート828は、開口部812と同一平面であるが、上であっても下であっても良い。
【0059】
この実施例によって示される配置によって、エアロゾル826は火炎816を通って、チャンバー806中に送られる。エアロゾル826が火炎816を通過する時、熱及び火炎中で形成された燃焼生成物の影響下にある。燃料804及びキャリアガス808が、炭化水素リッチの時、炭化水素の燃焼生成物は、火炎816中で生成され、密接且つ不規則にエアロゾル826と混合することができる炭素粒子を含む。更に、そのような状況下では、酸素等の全ての酸化剤は燃料の燃焼中に消費されるため、チャンバー806は、実質的に酸化剤が無い状態である。エアロゾル826が、そのような状況下で、実質的に酸化剤が無いガス、例えば、窒素流又は炭化水素等のガスによってチャンバー806に導入されると、酸素及び/又は酸化成分と反応する炭素供給量の欠乏のため、チャンバー806は、エアロゾル826の還元環境下になる。エアロゾル及び燃料804の燃焼により生成された炭素粒子は、キャリアガス808によってチャンバー806から出口ポート830に運び出され、そこで、粒子は、ろ過、固着、電気泳動、熱泳動、又はデバイスに用いられる基板上に膜として堆積されることで回収される。更に、エアロゾル826及びそれから形成される粒子は、燃料804の燃焼、及び/又は燃料804の燃焼及び/又は図示されていない外部ヒーターによって加熱されるチャンバー806によって、加熱される。チャンバー806は、そのような長さに作られているので、エアロゾル826、それから形成される粒子及び火炎から形成される生成物は、例えば、エアロゾル826から形成された粒子を焼きなまし及び/又は還元することができるようなチャンバー806の環境下で、特定の滞留時間を有する。一つの実施態様では、チャンバー806は、少なくとも1メートルの長さである。
【0060】
装置800は、装置や構成部品と実質的に干渉しないものであれば、どの様な材料から形成されてもよい。例えば、導管820は、ガラス、ステンレス鋼等から形成;導管802及び開口部812の多孔質栓は、アルミニウム、真ちゅう、鋼鉄等から形成;チャンバー806及びポート806、810、824はアルミニウム、鉄鋼等から形成される。
【0061】
図9は、多成分材料を形成する装置の上面図である。図面に示されているように、装置900は、チャンバー902、バーナー904及び細長い開口等のスロット状の導管ポート906を含む。操作時には、バーナー904は、スロット状の火炎を形成することができ、この火炎は、スロット火炎を通して又は周囲で、キャリアガスに影響を与えることができる。スロット火炎は、基板に影響を与えるように配置されることもできる。この実施態様では、導管ポート906は、バーナー904内に含まれるが、バーナー904の外側に位置することもできる。導管ポート906は、エアロゾルをチャンバー902に導入するためにも用いられる。図示しない装置の何れも、チャンバー、バーナー及び/又はスロット状の噴霧器を有する。スロット状のバーナー及び/又はチャンバーの有利な点は、そこから及びその中で生成された粒子が、十分に混合された粒子の薄膜を広い範囲にわたり、堆積できることである。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は好ましい実施態様を更に示すものであって、それらに限定されるものではない。当業者であれば、ここに開示されている具体的な材料及び手段と同等のものは、ルーチンの実験を通して認識又は確かめられる範囲のものである。
【0063】
多成分ナノ粒子膜を形成するための実施例では、固体酸燃焼電池アノードは、Fuel Cell Scientific LLCから入手できるToray paper等の炭素基板上に形成された。そのようなアノードは、リン酸二水素セシウム(CDP)等の固体酸ナノ粒子、炭素ナノ粒子(C)等の導電性ナノ粒子、及び白金ナノ粒子(Pt)等の電解触媒ナノ粒子からなる混合ナノ粒子膜を含む。
【0064】
図1に示される装置を用い、様々なC/CDP/Ptの質量比、CDP粒子サイズ及び全質量を有する多様な膜が形成された。これらサンプルの特性は、1)十分に混合された粒子を有する膜、及び2)約10nm程の小ささ及び約500nm程の大きさの平均サイズに加工された調節可能な粒子サイズを有する膜、である。多成分C/CDP/Pt粒子膜の電子顕微鏡画像が図2に示されている。図1に示される装置を用いてこの多成分膜を形成するのに用いられた実験パラメーターは、次のとおりである。濃度約0.5mg/mLのCDP水溶液が、炭酸セシウム(Alfa Aesar社から入手可能)及びオルトリン酸(Alfa Aesar社から入手可能)を反応することで得られた。CDP水溶液は、第1噴霧器で0.4mL/minの速度で噴霧された。得られた液滴は、約250℃の温度の加熱カラムからの高温ガスで、更に断片化された。得られた乾燥CDP粒子は、平均直径が、大凡50nmであった。
【0065】
約40nmのアセチルブラック粒子(Aldrich社製)及び約20nmの白金粒子(Alfa Aesar社から入手可能)の混合縣濁液が、約100%純粋エタノール(Pharmco−Aaper社製、グレードACS/USP)を用いて調整された。炭素と白金の質量濃度は、それぞれ、約0.5mg/mLと2.0mg/mLだった。縣濁液は、第2噴霧器で1mL/minの速度で噴霧された。直径1インチの炭素フィルター上に約10分堆積後、約3.2mgの黒色でフワフワした均一の膜が得られた。膜のエネルギー分散X線分析によると、炭素/CDP/白金の質量比は、約2/3/3であった。
【0066】
前記実施例で用いられた第1及び第2噴霧器は、Southeast Medical Supply社製の喘息薬物送達システムから形成されたもので、液体タンク及び供給ガス圧が増加できるよう改良した。噴霧器は、液体タンク本体を切断、孔をあけ、液体タンクの出入り口に管を取り付ける改良が施された。アセンブリ全体は、その後、出入り口に流通管が取り付けられた大型ガラスタンク内に置かれた。大きなタンクは、噴霧化される溶液又は縣濁液で満たされ、液体タンクにあけられた孔を通して、噴霧領域に液体が供給された。これら改良により、噴霧化される液体体積を増加することができた。
【0067】
図3に示される装置を使うことで、さらなる多成分粒子膜が準備された。例えば、固体酸CDP粒子は、炭酸セシウム(Alfa Aesar社から入手可能)及びオルトリン酸(Alfa Aesar社から入手可能)を反応することで得られ、濃度約0.5mg/mLのCDP/水の溶液の溶液噴霧化により形成された。CDP水溶液は、前の例で説明したカスタム噴霧器で噴霧された。直径約20nmの白金(Pt)ナノ粒子は、TSI社から入手できるモデル3076溶液噴霧器を用いて、エタノールにPtパウダーを縣濁した縣濁液を噴霧することで、エアロゾル化された。CDP/水溶液及び白金縣濁液の噴霧からのエアロゾルは、希薄な予混合火炎の熱で混合し、乾燥された。希薄な予混合火炎は、一未満の当量比でエチレンと空気の混合物を燃焼することで形成された。エアロゾル化された成分は、ガス層で混合され、カーボンフィルター上に回収された。
【0068】
別のサンプル調整では、炭素ナノ粒子は、前記実施例で形成されたCDP及び白金エアロゾルと混合された。炭素粒子は、エチレン、酸素及びアルゴンからなる炭化水素リッチ混合物を点火することで、より炭化水素リッチになった燃料をブンゼンバーナーで燃焼させることにより、ブンゼンバーナーで形成された。ブンゼンバーナーは、このように、装置中の2つの噴霧器で形成されたCDP及び白金と混合した炭素粒子を形成した。本実施例のブンゼンバーナーは、このように、CDP溶液及び白金縣濁液の噴霧された液滴を乾燥すること、及び炭素粒子を形成すること、の2つの目的を務めた。
【0069】
図3に示されている装置を使い、多成分膜(C/CDP/Pt)を形成するために用いられた実施例パラメーターは、次の通りである。濃度4mg/mLのCDP水溶液が0.4mL/minの速度で噴霧され、平均直径約200nmのCDP粒子が形成された。質量濃度約1.3mg/mLで約20nmの白金粒子のエタノール縣濁液が、0.2mL/minの速度で噴霧された。火炎は、エチレン(約0.2L/min)と空気(約1.4L/min)の予混合層流から形成された。直径1インチの炭素フィルターに1時間堆積後、よく混合され黒色でフワフワした膜が、約100mg得られた。成分の重量は、炭素が約41mg、CDPが約50mg、白金が約9mgであった。
【0070】
図4に示されている装置を使い、チタニア及び炭素の多成分ナノ粒子膜が調整された。この実施例では、シリンジポンプの針をとおして、チタンイソプロポキシド(Alfa−Aesar社から入手可能)を可燃性のエチレン/酸素/アルゴン混合物中に注入及び気化することで、バーナー410からのよどみ流火炎412の中で、平均サイズが約10nmのチタニア粒子が形成された。塊の平均サイズが約50nmの炭素粒子404が、1.8より大きい当量比のエチレン/空気混合物を燃焼した火炎のバーナー402から形成された。チタニア及び炭素の多成分ナノ粒子膜が、回転プレート406に固定されたガラス基板上に形成された。図5の電子顕微鏡写真に示されるように、多成分膜は、チタニア及び炭素ナノ粒子から構成されたよく混合された膜であった。
【0071】
図7は、炭素とCDP粒子を含む混合エアロゾルの分布を示す。炭素粒子は、当量比が2.0の、燃料リッチなエチレン/酸素の予混合火炎によって形成された。0.5mg/mLのCDP水溶液を噴霧し、得られたエアロゾル液滴が火炎中で形成された炭素粒子を含む高温ガス(約250℃)と混合することで、CDP粒子は、溶液噴霧によって形成された。粒子サイズの分布は、粒径分布測定器(ナノ−SMPS アナライザー モデル 3936N25;TSI社から入手可能)を用いて測定された。図に示すように、火炎が形成した炭素粒子は、約10nm付近で大きなピークを示し、CDP粒子は約50nm付近をピークに小さくなだらか分布を示した。
【0072】
図8に示される装置を用いて、複数のリン酸鉄リチウム粒子及び複数の炭素を含む混合物が調整された。混合物は、還元環境下にあるチャンバー内で、リン酸鉄リチウムナノ粒子のエアロゾルと炭素粒子のエアロゾルを混合することによって調整された。
【0073】
先ず、酸性の前駆体水溶液が、約3.69gのLi2CO3(Alfa Aesar社から入手可能)、19.28gのFeCl2(4H2O)(Alfa Aesar社から入手可能)、7mLのH3PO4(Alfa Aesar社から入手可能)及び200mLの蒸留水を混合することで準備された。
【0074】
前駆体溶液は、約0.1mL/minの速度の窒素ガス流で噴霧器中で噴霧された。本実施例で用いられた噴霧器は、大凡4マイクロのエアロゾル液滴を供給することができる、TSI社製のモデル3076であった。炭素粒子は、プロパン及び空気を含む混合物(プロパン:空気の体積比は、1:22)を燃焼することで生成された。
【0075】
エアロゾル化された前駆体溶液は、炭素粒子を形成するための火炎中を通過し、火炎に入った時の液滴の微小滴への爆裂によりエアロゾルサイズはより小さくなり、そして、より小さなサテライト液滴の形成及びサテライト液滴の乾燥により、リン酸鉄リチウム粒子を形成した。
【0076】
乾燥したリン酸鉄リチウム/炭素エアロゾル混合物は、火炎により生成された熱により200℃を超える温度の下で、導管を通して運ばれた。炭素リッチ及び酸素欠乏環境下で混合された熱は、Fe(III)の存在を最小限化するための還元環境を提供する。溶液に加えられた塩酸はガス層に残留し、流れと一緒にシステムの外に排出された。
【0077】
多成分エアロゾルそれ自身は、固着、遮断、拡散、電気集塵又は熱泳動等により回収できる。エアロゾル粒子を回収する単純な方法は、炭素フィルターに流れを通過させる方法で、それ自身がリチウムイオン電池のカソードとして機能することができる。この方法では、リン酸鉄リチウム及び炭素ナノ粒子の生成、混合及び電池の電極への回収は、単一工程で達成できる。
【0078】
本発明の好ましい実施態様及び多様な実施例のみが、本開示により示されている。本発明は他の組み合わせや環境で用いられること、また、ここで説明された発明概念の範囲内で変更又は修正することが可能なことは、理解されるだろう。それ故、例えば、当業者であれば、ルーチンの実験により、ここで述べられている特定の物質、工程及び配置等を他の均等物に置き換えることができる。これら均等物も本発明の範囲内であると考えられ、特許請求の範囲に包含されるものである。
【0079】
本出願は、2008年12月8日に出願された米国仮出願第61/193,582号を基礎に優先権を主張し、仮出願に記載されていることは全て本出願に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1粒子及び複数の第2粒子の混合物を含む多成分材料であって、
前記複数の第1粒子及び前記複数の第2粒子は、平均サイズが500nm未満であり、
前記複数の第1粒子は、前記複数の第2粒子と組成的に異なる、
ことを特徴とする多成分材料。
【請求項2】
前記複数の第1粒子は、平均サイズが100nm未満であることを特徴とする請求項1に記載の多成分材料。
【請求項3】
前記複数の第1粒子は、有機化合物、無機化合物、金属、金属酸化物、リチウム活性化合物、金属水素化物、金属アミン、固体酸、及びそれの塩から成るグループから選ばれる1以上の成分からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の多成分材料。
【請求項4】
前記複数の第1粒子は無機化合物からなり、前記複数の第2粒子は有機化合物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の多成分材料。
【請求項5】
前記複数の第1粒子はリチウム活性化合物からなり、前記複数の第2粒子は炭素からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の多成分材料。
【請求項6】
前記複数の第1粒子はリン酸鉄リチウムからなり、前記複数の第2粒子は炭素からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の多成分材料。
【請求項7】
複数の第3粒子を更に含み、前記複数の第1粒子はリン酸二水素セシウムからなり、前記複数の第2粒子は炭素からなり、前記複数の第3粒子は白金からなる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の多成分材料。
【請求項8】
前記複数の第1粒子及び前記複数の第2粒子は、密接に混合されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の多成分材料。
【請求項9】
多成分材料を形成するためのプロセスであって、該プロセスは、第1エアロゾルを形成するプロセス、第2エアロゾルを形成するプロセス、前記第1エアロゾルからの複数の第1粒子及び前記第2エアロゾルからの複数の第2粒子を含む材料を形成するため、前記第1エアロゾル及び前記第2エアロゾルを混合するプロセス、を含み、
前記複数の第1粒子及び前記複数の第2粒子は、平均サイズが500nm未満であり、
前記複数の第1粒子は、(a)前記複数の第2粒子と組成的に異なり、及び/又は(b)前記複数の第2粒子の平均サイズと異なる平均サイズである、
ことを特徴とするプロセス。
【請求項10】
前記第1エアロゾルは溶液を噴霧することで形成され、前記第2エアロゾルは火炎合成で形成されることを特徴とする請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第1エアロゾルは、リチウム活性化合物粒子を形成するため、リチウム活性化合物又はその前駆体を含む溶液を噴霧することで形成され、前記第2エアロゾルは、炭素粒子を形成するための火炎合成により形成される、ことを特徴とする請求項9又は10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第1エアロゾルは、火炎中を通過し、還元環境下に入ることを特徴とする請求項9〜11の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
第3のエアロゾルを形成するプロセス、及び前記第1エアロゾルからの複数の第1粒子、前記第2エアロゾルからの複数の第2粒子、及び前記第3エアロゾルからの複数の第3粒子を含む多成分材料を形成するため、前記第3エアロゾルを前記第1エアロゾル及び前記第2エアロゾルと混合するプロセスを更に含み、
前記複数の第3粒子は、平均サイズが100nmであることを特徴とする請求項9〜12の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記複数の第1粒子は、前記複数の第2粒子と組成的に異なること特徴とする請求項9、10、又は13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記複数の第1粒子は、前記複数の第2粒子の平均サイズと異なる平均サイズであることを特徴とする請求項9〜14の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記複数の第1粒子及び前記複数の第2粒子は、平均サイズが200nm未満であることを特徴とする請求項9〜15の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
異なるエアロゾルを混合するための装置であって、該装置は、
第1エアロゾルを形成するための第1バーナー又は噴霧器、
第2エアロゾルを形成するための第2バーナー又は噴霧器、
前記第1及び第2エアロゾルを受け入れ混合するため、前記第1及び第2バーナー又は噴霧器と流体連結しているチャンバー、及び
前記チャンバーに接続し、エアロゾルがチャンバーから排出する出口ポート、を含み、
前記第1バーナー又は噴霧器は、(a)前記第2のバーナー又は噴霧器から形成されるエアロゾルと組成的に異なるエアロゾルを形成、又は(b)前記第2のバーナー又は噴霧器から形成されるエアロゾルと異なる平均サイズのエアロゾルを形成することができる、
ことを特徴とする装置。
【請求項18】
第1エアロゾルを形成する第1のバーナー、第2エアロゾルを形成する第2噴霧器を含むことを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記チャンバーに流体連結し、第3エアロゾルを形成する第3の噴霧器を更に含むことを特徴とする請求項17又は18に記載の装置。
【請求項20】
前記第1及び第2バーナー又は噴霧器、前記チャンバー及び出口ポートは、スロット状に構成されることを特徴とする請求項17〜19の何れか1項に記載の装置。
【請求項21】
多成分材料を形成するための装置であって、該装置は、
第1エアロゾルを形成するための手段、
第2エアロゾルを形成するための手段、
前記第1エアロゾルからの複数の第1粒子及び前記第2エアロゾルからの複数の第2粒子を含む材料を形成するため、前記第1エアロゾル及び前記第2エアロゾルを混合する手段、を含み、
前記複数の第1粒子及び前記複数の第2粒子は、平均サイズが500nm未満であることを特徴とする装置。
【請求項22】
複数の炭素粒子と密接且つ不規則に混合された複数のリチウム活性化合物粒子を含むカソードであって、前記複数のリチウム活性化合物粒子及び前記複数の炭素粒子は、平均サイズが200nm未満であることを特徴とするカソード。
【請求項23】
前記複数のリチウム活性化合物粒子は、複数のリン酸鉄リチウム粒子を含み且つ平均サイズが100nm未満であり、前記複数の炭素粒子は平均サイズが50nm未満であることを特徴とする請求項22に記載のカソード。
【請求項24】
密接且つ不規則に混合された多成分ナノ粒子膜を含むプロトン伝導性膜であって、前記多成分ナノ粒子膜が、複数の固体酸粒子、複数の導電性粒子及び複数の電極触媒粒子を含むことを特徴とするプロトン伝導性膜。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

image rotate

【図9】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−512956(P2012−512956A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540831(P2011−540831)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/067166
【国際公開番号】WO2010/077665
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(511139257)チソル,エル・エル・シー (1)
【Fターム(参考)】