多接合ソーラーセル及びその形成方法
【課題】メタモルフィック層を含む多接合ソーラーセル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】上部サブセル、中間サブセル及び下部サブセルを含む多接合ソーラーセルを製造する方法であって、半導体材料のエピタキシャル成長のために第1基板を準備し、第1バンドギャップを有する第1ソーラーサブセルを基板上に形成し、第1バンドギャップより小さい第2バンドギャップを有する第2ソーラーサブセルを第1ソーラーサブセルの上に形成し、貫通転位を防止するために第2サブセルの上にバリア層を形成し、第2バンドギャップより大きな第3バンドギャップを有するグレーディング中間層をバリア層の上に形成し、第2バンドギャップより小さい第4バンドギャップを有する第3ソーラーサブセルであって、第2サブセルに対して格子不整合している第3サブセルをグレーディング中間層の上に形成するステップを含む方法が、開示される。
【解決手段】上部サブセル、中間サブセル及び下部サブセルを含む多接合ソーラーセルを製造する方法であって、半導体材料のエピタキシャル成長のために第1基板を準備し、第1バンドギャップを有する第1ソーラーサブセルを基板上に形成し、第1バンドギャップより小さい第2バンドギャップを有する第2ソーラーサブセルを第1ソーラーサブセルの上に形成し、貫通転位を防止するために第2サブセルの上にバリア層を形成し、第2バンドギャップより大きな第3バンドギャップを有するグレーディング中間層をバリア層の上に形成し、第2バンドギャップより小さい第4バンドギャップを有する第3ソーラーサブセルであって、第2サブセルに対して格子不整合している第3サブセルをグレーディング中間層の上に形成するステップを含む方法が、開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーセル半導体デバイスの分野に関し、より詳細には、メタモルフィック層を含む多接合(multijunction)ソーラーセルに関する。このようなデバイスは、反転型メタモルフィックソーラーセルも含む。
【背景技術】
【0002】
ソーラーセルとも称される光電池は、過去数年間に利用できるようになった最も重要な新規エネルギー源の1つである。ソーラーセルの開発には著しい努力が注がれた。その結果、ソーラーセルは、現在、多数の商業向け及び消費者向け用途で使用されている。この領域では著しい進歩がなされたが、より精巧な用途のニーズを満足するためのソーラーセルに対する要求が、重要と歩調を合わせていない。データ通信に使用される衛星のような用途は、電力及びエネルギー変換特性の改善を伴うソーラーセルの需要を劇的に高めた。
【0003】
衛星及び他の宇宙関連用途において、衛星電源システムのサイズ、質量及びコストは、使用するソーラーセルの電力及びエネルギー変換効率に依存する。換言すれば、ペイロードのサイズ及びオンボードサービスの利用性は、供給される電力量に比例する。したがって、ペイロードが、より精巧になるにつれて、オンボード電源システムの電力変換装置として働くソーラーセルは、次第に重要度が増す。
【0004】
ソーラーセルは、しばしば、垂直の多接合構造で製造されて、水平アレーで配置され、個々のソーラーセルが直列に一緒に接続される。アレーの形状及び構造、並びにそれに含まれるセルの数は、希望の出力電圧及び電流によって部分的に決定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
M. W. Wanlass氏等の“Lattice Mismatched Approaches for High Performance, III-V Photovoltaic Energy Converters” (Conference Proceedings of the 31st IEEE Photovoltaic Specialists Conference, Jan. 3-7, 2005, IEEE Press, 2005) に説明されたような反転型メタモルフィックソーラーセル構造体は、将来の商業的な高効率ソーラーセルを開発するための重要な出発点を与える。このような従来の文献に説明された構造は、特に「低」サブセル(最低のバンドギャップを伴うサブセル)とその隣接サブセルとの間の格子不整合層に関連して、材料及び製造ステップの適切な選択に関する多数の実際的な問題を提起する。本発明以前に、従来技術に開示された材料及び製造ステップは、反転型メタモルフィックセル構造を使用して商業的に価値ある、エネルギー効率のよいソーラーセルを製造するのに、充分なものではない。特に、メタモルフィック層から伝播する貫通転位は、処理上の難題を提起する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上部サブセル、中間サブセル及び下部サブセルを含む多接合ソーラーセルを製造する方法であって、半導体材料のエピタキシャル成長のために第1の基板を準備し、第1のバンドギャップを有する第1のソーラーサブセルを基板上に形成し、第1のバンドギャップより小さい第2のバンドギャップを有する第2のソーラーサブセルを第1のソーラーサブセルの上に形成し、貫通転位を防止するために第2のサブセルの上にバリア層を形成し、第2のバンドギャップより大きな第3のバンドギャップを有するグレーディング中間層(grading interlayer)をバリア層の上に形成し、第2のバンドギャップより小さい第4のバンドギャップを有する第3のソーラーサブセルであって、第2のサブセルに対して格子不整合された第3のサブセルをグレーディング中間層の上に形成するというステップを備えた方法を提供する。
【0007】
また、別の態様において、本発明は、基板と、この基板上にあって第1のバンドギャップを有する第1のソーラーサブセルと、この第1のサブセル上に配置されて、第1のバンドギャップより小さな第2のバンドギャップを有する第2のソーラーサブセルと、この第2のサブセル上に配置されたバリア層と、このバリア層上に配置され、第2のバンドギャップより大きな第3のバンドギャップを有するグレーディング中間層と、このグレーディング中間層の上に配置され、中間サブセルに対して格子不整合され、且つ第3のバンドギャップより小さな第4のバンドギャップを有する第3のソーラーサブセルと、を備えた多接合ソーラーセルも提供する。バリア層は、グレーディング中間層に関連した貫通転位が伝播するのを阻止又は防止するのに適した材料及び格子定数で構成される。
【0008】
本発明は、添付図面を参照した以下の詳細な説明から更に完全に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、例示的な態様及びその実施形態を含めて、以下に詳細に説明する。添付図面及び以下の説明を参照すれば、同じ参照番号を使用して、同じ又は機能的に同様の要素を識別すると共に、実施形態の主たる特徴を非常に簡単な図で示すものである。更に、添付図面は、実施形態の各特徴を示すものでも要素の相対的な寸法を示すものでもなく、また、正しい縮尺でもない。
【0010】
図1は、基板上に3つのサブセルA、B及びCを形成した後の本発明による多接合ソーラーセルを示す。より詳細には、砒化ガリウム(GaAs)、ゲルマニウム(Ge)又は他の適当な材料である基板101が示されている。Ge基板の場合には、基板上に核生成層102が堆積される。基板又は核生成層102の上には、バッファ層103及びエッチング停止層104が更に堆積される。次いで、層104上にはコンタクト層105が堆積され、このコンタクト層には窓層106が堆積される。次いで、n+エミッタ層107及びp型ベース層108より成るサブセルAが窓層106上に堆積される。
【0011】
多接合ソーラーセル構造は、格子定数及びバンドギャップ要件を受ける周期表にリストされたIII属からV族元素の適当な組み合わせにより形成できることに注意されたい。III属は、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)及びタリウム(T)を含む。IV属は、炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びスズ(Sn)を含む。V属は、窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)及びビスマス(Bi)を含む。
【0012】
好ましい実施形態では、エミッタ層107は、InGa(Al)Pで構成され、ベース層は、InGa(Al)Pで構成される。
【0013】
カッコ内のAl項は、Alが任意の成分であり、この場合は、0%ないし30%の範囲の量で使用されてもよいことを意味する。
【0014】
ベース層108の上には、再結合ロスを減少するために使用される背面フィールド(BSF)層109が堆積される。
【0015】
このBSF層109は、ベース/BSF界面付近の領域から少数キャリアを駆動して、再結合ロスの影響を最小にする。換言すれば、BSF層109は、ソーラーサブセルAの背面での再結合ロスを減少し、それにより、ベースにおける再結合を減少する。
【0016】
BSF層109の上には、一連の強くドープされたp型及びn型層110が堆積され、これは、サブセルAをサブセルBに接続する回路素子であるトンネルダイオードを形成する。
【0017】
このトンネルダイオード層110上には、窓層111が堆積される。サブセルBに使用される窓層111も、再結合ロスを減少するように働く。また、窓層111は、その下に横たわる接合のセル面の不動態化を改善する。当業者に明らかなように、本発明の範囲から逸脱せずに、このセル構造において付加的な層(1つ又は複数)を追加又は除去してもよい。
【0018】
窓層111の上には、セルBの層、即ちエミッタ層112、及びp型ベース層113が堆積される。これらの層は、InGaP及びGa(In)Asで各々構成されるのが好ましいが、格子定数及びバンドギャップ要件が一致する他の適当な材料を使用してもよい。
【0019】
セルBの上には、BSF層109と同じ機能を果たすBSF層114が堆積される。このBSF層114の上には、層110と同様に、p++/n++トンネルダイオード115が堆積され、この場合も、セルBをセルCに接続するための回路素子を形成する。
【0020】
好ましくは、InGa(Al)Pで構成されるバリア層116aが、トンネルダイオード115の上に、約1.0ミクロンの厚みまで堆積される。このようなバリア層は、中間及び上部サブセルB及びCへ成長する方向とは逆に、或いは下部サブセルAへと成長する方向に、貫通転位が伝播するのを防止するように意図される。このバリア層は、バンドギャップエネルギーがグレーディング中間層116以上であり且つ厚みが貫通転位の伝播を減少するに充分なものであるIII−V化合物半導体層の組合せでよい。典型的な材料は、As、P、N、又はSbベースのIII−V半導体材料である。
【0021】
バリア層116a上には、グレーディング中間層又はメタモルフィック層116が堆積される。この層116は、組成的に段階的にグレード付けされる一連のInGaAlAs層で、サブセルBからサブセルCへ格子定数の遷移を達成するよう意図された単調に(monotonically)変化する格子定数をもつものであるのが好ましい。層116のバンドギャップは、中間サブセルBのバンドギャップより若干大きな値に一致する1.5eVである。
【0022】
グレーディング中間層は、平面内格子パラメータが第2のソーラーセルB以上で且つ第3のソーラーセルC以下であり、バンドギャップエネルギーが第2のソーラーセルBより大きいという制約を受けるAs、P、N、SbベースのIII−V化合物半導体のいずれかで構成される。
【0023】
一実施形態では、Wanless氏等の論文に示唆されているように、段階的グレードは、9つの組成的にグレード付けされたInGaP段階を含み、その各段階層は、厚みが0.25ミクロンである。好ましい実施形態では、層116は、少なくとも9つの段階にわたり単調に変化する格子定数をもつInGaAlAsで構成される。
【0024】
本発明の別の実施形態では、InGaAlAsメタモルフィック層116の上に任意の第2のバリア層116bを堆積してもよい。この第2のバリア層116bは、バリア層116aとは異なる組成を有し、この場合も、ベース領域は、GaInAs、GaAsSb、又はGaInAsNである。
【0025】
バリア層116bの上には、窓層117が堆積され、この窓層は、サブセル‘C’における再結合ロスを減少するように動作する。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱せずに、このセル構造において付加的な層を追加又は除去してもよいことが明らかであろう。
【0026】
窓層117の上には、セルCの層、即ちn+エミッタ層118及びp型ベース層119が堆積される。これら層は、InGaP及びGa(In)Asで各々構成されるのが好ましいが、格子定数及びバンドギャップ要件が一致する他の適当な材料を使用してもよい。
【0027】
セルCの上には、BSF層120が堆積され、このBSF層は、BSF層109及び114と同じ機能を遂行する。
【0028】
最終的に、BSF層120には、p+コンタクト層121が堆積される。
【0029】
当業者であれば、本発明の範囲から逸脱せずに、このセル構造において付加的な層(1つ又は複数)を追加又は除去してもよいことが明らかであろう。
【0030】
図2は、p+半導体コンタクト層121の上に金属コンタクト層122が堆積された次の処理ステップの後の図1のソーラーセルを示す断面図である。金属は、Ti/Au/Ag/Auであるのが好ましい。
【0031】
図3は、金属層122の上に接着剤層123が堆積された次の処理ステップの後の図2のソーラーセルを示す断面図である。接着剤は、GenTak330(ジェネラルケミカル社により供給される)であるのが好ましい。
【0032】
図4は、代用基板、好ましくは、サファイアが取り付けられる次の処理ステップの後の図3のソーラーセルを示す断面図である。代用基板は、厚みが約40ミルであり、接着剤及び基板のその後の除去を助けるために、直径約1mmの穴が4mmの間隔で開けられている。
【0033】
図5Aは、基板101、バッファ層103及びエッチング停止層104を除去する一連のラッピング及び/又はエッチングステップによりオリジナル基板が除去される次の処理ステップの後の図4のソーラーセルを示す断面図である。エッチング剤は、成長基板に依存する。
【0034】
図5Bは、図の最下部に代用基板124が来る方向から図5Aのソーラーセルを見た図5Aのソーラーセルの別の断面図である。
【0035】
図6Aは、ソーラーセルが実施されるウェハの上面図である。
【0036】
各セルには、グリッド線501(図10の断面図により詳細に示す)、相互接続バス線502、及びコンタクトパッド503がある。
【0037】
図6Bは、図6Aに示す4つのソーラーセルをもつウェハの底面図である。
【0038】
図7は、燐化物及び砒化物のエッチング剤を使用して各セルの周囲でメサ510がエッチングされる次の処理ステップの後の図6Aのウェハを示す上面図である。
【0039】
図8は、図5Bのソーラーセルの簡単な断面図で、代用基板124の上の幾つかの上部層及び下部層を示す図である。
【0040】
図9は、HCL/H2O溶液によりエッチング停止層104が除去される次の処理ステップの後の図8のソーラーセルを示す断面図である。
【0041】
図10は、コンタクト層105の上にホトレジストマスク(図示せず)を配置してグリッド線501形成する次の一連の処理ステップの後の図9のソーラーセルを示す断面図である。グリッド線501は、コンタクト層105上に蒸着により堆積され、リソグラフ的にパターニング及び堆積される。マスクが離昇されて、金属グリッド線501が形成される。
【0042】
図11は、グリッド線をマスクとして使用し、クエン酸/過酸化物エッチング混合物を使用して表面を窓層106までエッチングする次の処理ステップの後の図10のソーラーセルを示す断面図である。
【0043】
図12は、グリッド線501をもつウェハの「底部」側の全面に反射防止(ARC)誘電体被覆層130が付着される次の処理ステップの後の図11のソーラーセルを示す断面図である。
【0044】
図13は、燐化物及び砒化物のエッチング剤を使用して金属層122までメサ510がエッチングされる次の処理ステップの後の図12のソーラーセルを示す断面図である。この断面図は、図7のA−A平面から見たものとして示されている。次いで、1つ以上の銀電極がコンタクトパッド(1つ又は複数)に溶接される。
【0045】
図14は、代用基板124呼び接着剤123がEKC922により除去された後の次の処理ステップの後の図13のソーラーセルを示す断面図である。代用基板に設けられる好ましい孔は、直径が0.033インチで、0.152インチだけ分離されている。
【0046】
図15は、ARC層130及びそれに取り付けられたカバーガラスの上に接着剤が付着される次の処理ステップの後の図14のソーラーセルを示す断面図である。
【0047】
本発明の効果の実験的指示が図16ないし18に示されている。図1に示す形式であるが、バリア層116a及び116bをもたない構造体が、4cm2セルへと成長され製造される。外部量子効率(EQE)の測定が行われ、図16に示す結果は、中間サブセルBの長い波長の応答が、予想より低かったことを示している。この観察は、成長方向とは逆の貫通転位の伝播が、中間セルの効率低下の原因であることを示唆している。ノマースキー(Nomarski)の顕微鏡検査は、格子整合サブセルAの初期エピタキシャル層における予想されないクロスハッチ(ストレインレリーフのモード)を示している。光ルミネセンスマッピングは、更に、中間サブセルBのルミネセンスが予想より低かったことを明らかにしている。陰極線ルミネセンスの測定は、貫通転位の密度が中間サブセルにおいて高いが、貫通転位は、上部サブセルAを貫通しないことを示している。これらの測定値は、図16に示すEQEの測定値と一貫している。
【0048】
図17は、本発明によりバリア層116aの追加を伴う場合と、伴わない場合の、三重接合ソーラーセルの中間サブセルのEQE測定の比較を示す。サブセルB(バリア層を伴わない)のグラフは、積算電流(AMO)が15.6mA/cm2で、EQEがサブセルD(バリア層を伴う)より低く、その積算電流(AMO)は、17.4mA/cm2である。
【0049】
本発明のソーラーセルにバリア層を使用する効果は、図16及び18のEQEグラフの比較から明らかであろう。図16は、バリア層を伴わない図1のソーラーセルのEQEであり、図18は、バリア層を伴うソーラーセルのEQEである。図18のソーラーセルの中間サブセルBの電流(17.4mA/cm2)は、上部サブセルCの電流(18.4mA/cm2)より若干低いだけである。中間サブセル及び上部サブセルのこのように厳密な電流整合は、本発明の効果を立証している。
【0050】
また、上述した素子の各々、或いはその2つ以上は、上述した形式の構造とは異なる他の形式の構造にも有用に適用できることを理解されたい。
【0051】
本発明の好ましい実施形態は、上部及び下部の電気コンタクトを伴うサブセルの垂直スタックを使用しているが、これらサブセルは、金属コンタクトにより、サブセル間の横方向導電性半導体層に接触されてもよい。このような構成は、3端子、4端子、及び一般的には、n端子のデバイスを形成するように使用できる。これらサブセルは、これら付加的な端子を使用して回路が相互接続されて、各サブセルに得られる光発生電流密度の大部分を効率的に使用して、光発生電流密度が典型的に種々のサブセルにおいて異なるにも関わらず、多接合セルのための高い効率を導くことができる。
【0052】
上述したように、本発明は、1つ以上のホモ接合セル又はサブセル、即ちp−n接合がp型半導体とn型半導体の間に形成され、その両方が同じ化学的組成及び同じバンドギャップを有し、ドーパント種及び形式のみが異なるようなセル又はサブセルを使用することができる。p型及びn型のInGaPをもつサブセルAは、ホモ接合サブセルの一例である。或いはまた、本発明は、1つ以上のヘテロ接合セル又はサブセル、即ちp−n接合を形成するp型及びn型領域に異なるドーパント種及び形式を使用するのに加えて、p型及びn型領域に半導体材料の異なる化学的組成を有し、及び/又はp型領域に異なるバンドギャップエネルギーを有するp型半導体とn型半導体の間にp−n接合が形成されるようなセル又はサブセルを使用することができる。
【0053】
窓又はBSF層の組成は、格子定数及びバンドギャップ要件を受ける他の半導体化合物を使用してもよく、AlInP、AlAs、AlP、AlGaInP、AlGaAsP、AlGaInAs、AlGaInPAs、GaInP、GaInAs、GaInPAs、AlGaAs、AlInAs、AlInPAs、GaAsSb、AlAsSb、GaAlAsSb、AlInSb、GaInSb、AlGaInSb、AlN、GaN、InN、GaInN、AlGaInN、GaInNAs、AlGaInNAs、ZnSSe、CdSSe及び同様の材料を含んでもよく、それでも本発明の精神内に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明により構成されたソーラーセルの拡大断面図である。
【図2】次の処理ステップの後の図1のソーラーセルを示す断面図である。
【図3】次の処理ステップの後の図2のソーラーセルを示す断面図である。
【図4】次の処理ステップの後の図3のソーラーセルを示す断面図である。
【図5A】オリジナル基板が除去された次の処理ステップの後の図4のソーラーセルを示す断面図である。
【図5B】図の最下部に代用基板がある状態で見た図5Aのソーラーセルの別の断面図である。
【図6A】ソーラーセルが製造されたウェハの上面図である。
【図6B】ソーラーセルが製造されたウェハの下面図である。
【図7】次の処理ステップの後の図6Bのウェハを示す上面図である。
【図8】次の処理ステップの後の図5Aのソーラーセルを示す断面図である。
【図9】次の処理ステップの後の図8のソーラーセルを示す断面図である。
【図10】次の処理ステップの後の図9のソーラーセルを示す断面図である。
【図11】次の処理ステップの後の図10のソーラーセルを示す断面図である。
【図12】次の処理ステップの後の図11のソーラーセルを示す断面図である。
【図13】次の処理ステップの後の図12のソーラーセルを示す断面図である。
【図14】次の処理ステップの後の図13のソーラーセルを示す断面図である。
【図15】次の処理ステップの後の図14のソーラーセルを示す断面図である。
【図16】本発明によるバリア層をもたない反転型メタモルフィックソーラーセルの外部量子効率(EQE)を示すグラフである。
【図17】バリア層をもつ及びもたない中間ソーラーサブセルのEQEグラフである。
【図18】本発明によるバリア層をもつ反転型メタモルフィックソーラーセルのEQEグラフである。
【符号の説明】
【0055】
101:基板
102:核生成層
103:バッファ層
104:エッチング停止層
105:コンタクト層
106:窓層
107:n+エミッタ層
108:pベース層
109:BSF層
110:p型及びn型層(トンネルダイオード層)
111:窓層
112:n+エミッタ層
113:pベース層
114:BSF層
115:p++/n++トンネルダイオード
116a:バリア層
116:グレーディング中間層(メタモルフィックバッファ層)
116b:バリア層
117:窓層
118:n+エミッタ層
119:pベース層
120:BSF層
121:p+コンタクト層
122:金属コンタクト層
123:接着剤層
124:代用基板
501:グリッド線
502:相互接続バス線
503:コンタクトパッド
510:メサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーセル半導体デバイスの分野に関し、より詳細には、メタモルフィック層を含む多接合(multijunction)ソーラーセルに関する。このようなデバイスは、反転型メタモルフィックソーラーセルも含む。
【背景技術】
【0002】
ソーラーセルとも称される光電池は、過去数年間に利用できるようになった最も重要な新規エネルギー源の1つである。ソーラーセルの開発には著しい努力が注がれた。その結果、ソーラーセルは、現在、多数の商業向け及び消費者向け用途で使用されている。この領域では著しい進歩がなされたが、より精巧な用途のニーズを満足するためのソーラーセルに対する要求が、重要と歩調を合わせていない。データ通信に使用される衛星のような用途は、電力及びエネルギー変換特性の改善を伴うソーラーセルの需要を劇的に高めた。
【0003】
衛星及び他の宇宙関連用途において、衛星電源システムのサイズ、質量及びコストは、使用するソーラーセルの電力及びエネルギー変換効率に依存する。換言すれば、ペイロードのサイズ及びオンボードサービスの利用性は、供給される電力量に比例する。したがって、ペイロードが、より精巧になるにつれて、オンボード電源システムの電力変換装置として働くソーラーセルは、次第に重要度が増す。
【0004】
ソーラーセルは、しばしば、垂直の多接合構造で製造されて、水平アレーで配置され、個々のソーラーセルが直列に一緒に接続される。アレーの形状及び構造、並びにそれに含まれるセルの数は、希望の出力電圧及び電流によって部分的に決定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
M. W. Wanlass氏等の“Lattice Mismatched Approaches for High Performance, III-V Photovoltaic Energy Converters” (Conference Proceedings of the 31st IEEE Photovoltaic Specialists Conference, Jan. 3-7, 2005, IEEE Press, 2005) に説明されたような反転型メタモルフィックソーラーセル構造体は、将来の商業的な高効率ソーラーセルを開発するための重要な出発点を与える。このような従来の文献に説明された構造は、特に「低」サブセル(最低のバンドギャップを伴うサブセル)とその隣接サブセルとの間の格子不整合層に関連して、材料及び製造ステップの適切な選択に関する多数の実際的な問題を提起する。本発明以前に、従来技術に開示された材料及び製造ステップは、反転型メタモルフィックセル構造を使用して商業的に価値ある、エネルギー効率のよいソーラーセルを製造するのに、充分なものではない。特に、メタモルフィック層から伝播する貫通転位は、処理上の難題を提起する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上部サブセル、中間サブセル及び下部サブセルを含む多接合ソーラーセルを製造する方法であって、半導体材料のエピタキシャル成長のために第1の基板を準備し、第1のバンドギャップを有する第1のソーラーサブセルを基板上に形成し、第1のバンドギャップより小さい第2のバンドギャップを有する第2のソーラーサブセルを第1のソーラーサブセルの上に形成し、貫通転位を防止するために第2のサブセルの上にバリア層を形成し、第2のバンドギャップより大きな第3のバンドギャップを有するグレーディング中間層(grading interlayer)をバリア層の上に形成し、第2のバンドギャップより小さい第4のバンドギャップを有する第3のソーラーサブセルであって、第2のサブセルに対して格子不整合された第3のサブセルをグレーディング中間層の上に形成するというステップを備えた方法を提供する。
【0007】
また、別の態様において、本発明は、基板と、この基板上にあって第1のバンドギャップを有する第1のソーラーサブセルと、この第1のサブセル上に配置されて、第1のバンドギャップより小さな第2のバンドギャップを有する第2のソーラーサブセルと、この第2のサブセル上に配置されたバリア層と、このバリア層上に配置され、第2のバンドギャップより大きな第3のバンドギャップを有するグレーディング中間層と、このグレーディング中間層の上に配置され、中間サブセルに対して格子不整合され、且つ第3のバンドギャップより小さな第4のバンドギャップを有する第3のソーラーサブセルと、を備えた多接合ソーラーセルも提供する。バリア層は、グレーディング中間層に関連した貫通転位が伝播するのを阻止又は防止するのに適した材料及び格子定数で構成される。
【0008】
本発明は、添付図面を参照した以下の詳細な説明から更に完全に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、例示的な態様及びその実施形態を含めて、以下に詳細に説明する。添付図面及び以下の説明を参照すれば、同じ参照番号を使用して、同じ又は機能的に同様の要素を識別すると共に、実施形態の主たる特徴を非常に簡単な図で示すものである。更に、添付図面は、実施形態の各特徴を示すものでも要素の相対的な寸法を示すものでもなく、また、正しい縮尺でもない。
【0010】
図1は、基板上に3つのサブセルA、B及びCを形成した後の本発明による多接合ソーラーセルを示す。より詳細には、砒化ガリウム(GaAs)、ゲルマニウム(Ge)又は他の適当な材料である基板101が示されている。Ge基板の場合には、基板上に核生成層102が堆積される。基板又は核生成層102の上には、バッファ層103及びエッチング停止層104が更に堆積される。次いで、層104上にはコンタクト層105が堆積され、このコンタクト層には窓層106が堆積される。次いで、n+エミッタ層107及びp型ベース層108より成るサブセルAが窓層106上に堆積される。
【0011】
多接合ソーラーセル構造は、格子定数及びバンドギャップ要件を受ける周期表にリストされたIII属からV族元素の適当な組み合わせにより形成できることに注意されたい。III属は、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)及びタリウム(T)を含む。IV属は、炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びスズ(Sn)を含む。V属は、窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)及びビスマス(Bi)を含む。
【0012】
好ましい実施形態では、エミッタ層107は、InGa(Al)Pで構成され、ベース層は、InGa(Al)Pで構成される。
【0013】
カッコ内のAl項は、Alが任意の成分であり、この場合は、0%ないし30%の範囲の量で使用されてもよいことを意味する。
【0014】
ベース層108の上には、再結合ロスを減少するために使用される背面フィールド(BSF)層109が堆積される。
【0015】
このBSF層109は、ベース/BSF界面付近の領域から少数キャリアを駆動して、再結合ロスの影響を最小にする。換言すれば、BSF層109は、ソーラーサブセルAの背面での再結合ロスを減少し、それにより、ベースにおける再結合を減少する。
【0016】
BSF層109の上には、一連の強くドープされたp型及びn型層110が堆積され、これは、サブセルAをサブセルBに接続する回路素子であるトンネルダイオードを形成する。
【0017】
このトンネルダイオード層110上には、窓層111が堆積される。サブセルBに使用される窓層111も、再結合ロスを減少するように働く。また、窓層111は、その下に横たわる接合のセル面の不動態化を改善する。当業者に明らかなように、本発明の範囲から逸脱せずに、このセル構造において付加的な層(1つ又は複数)を追加又は除去してもよい。
【0018】
窓層111の上には、セルBの層、即ちエミッタ層112、及びp型ベース層113が堆積される。これらの層は、InGaP及びGa(In)Asで各々構成されるのが好ましいが、格子定数及びバンドギャップ要件が一致する他の適当な材料を使用してもよい。
【0019】
セルBの上には、BSF層109と同じ機能を果たすBSF層114が堆積される。このBSF層114の上には、層110と同様に、p++/n++トンネルダイオード115が堆積され、この場合も、セルBをセルCに接続するための回路素子を形成する。
【0020】
好ましくは、InGa(Al)Pで構成されるバリア層116aが、トンネルダイオード115の上に、約1.0ミクロンの厚みまで堆積される。このようなバリア層は、中間及び上部サブセルB及びCへ成長する方向とは逆に、或いは下部サブセルAへと成長する方向に、貫通転位が伝播するのを防止するように意図される。このバリア層は、バンドギャップエネルギーがグレーディング中間層116以上であり且つ厚みが貫通転位の伝播を減少するに充分なものであるIII−V化合物半導体層の組合せでよい。典型的な材料は、As、P、N、又はSbベースのIII−V半導体材料である。
【0021】
バリア層116a上には、グレーディング中間層又はメタモルフィック層116が堆積される。この層116は、組成的に段階的にグレード付けされる一連のInGaAlAs層で、サブセルBからサブセルCへ格子定数の遷移を達成するよう意図された単調に(monotonically)変化する格子定数をもつものであるのが好ましい。層116のバンドギャップは、中間サブセルBのバンドギャップより若干大きな値に一致する1.5eVである。
【0022】
グレーディング中間層は、平面内格子パラメータが第2のソーラーセルB以上で且つ第3のソーラーセルC以下であり、バンドギャップエネルギーが第2のソーラーセルBより大きいという制約を受けるAs、P、N、SbベースのIII−V化合物半導体のいずれかで構成される。
【0023】
一実施形態では、Wanless氏等の論文に示唆されているように、段階的グレードは、9つの組成的にグレード付けされたInGaP段階を含み、その各段階層は、厚みが0.25ミクロンである。好ましい実施形態では、層116は、少なくとも9つの段階にわたり単調に変化する格子定数をもつInGaAlAsで構成される。
【0024】
本発明の別の実施形態では、InGaAlAsメタモルフィック層116の上に任意の第2のバリア層116bを堆積してもよい。この第2のバリア層116bは、バリア層116aとは異なる組成を有し、この場合も、ベース領域は、GaInAs、GaAsSb、又はGaInAsNである。
【0025】
バリア層116bの上には、窓層117が堆積され、この窓層は、サブセル‘C’における再結合ロスを減少するように動作する。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱せずに、このセル構造において付加的な層を追加又は除去してもよいことが明らかであろう。
【0026】
窓層117の上には、セルCの層、即ちn+エミッタ層118及びp型ベース層119が堆積される。これら層は、InGaP及びGa(In)Asで各々構成されるのが好ましいが、格子定数及びバンドギャップ要件が一致する他の適当な材料を使用してもよい。
【0027】
セルCの上には、BSF層120が堆積され、このBSF層は、BSF層109及び114と同じ機能を遂行する。
【0028】
最終的に、BSF層120には、p+コンタクト層121が堆積される。
【0029】
当業者であれば、本発明の範囲から逸脱せずに、このセル構造において付加的な層(1つ又は複数)を追加又は除去してもよいことが明らかであろう。
【0030】
図2は、p+半導体コンタクト層121の上に金属コンタクト層122が堆積された次の処理ステップの後の図1のソーラーセルを示す断面図である。金属は、Ti/Au/Ag/Auであるのが好ましい。
【0031】
図3は、金属層122の上に接着剤層123が堆積された次の処理ステップの後の図2のソーラーセルを示す断面図である。接着剤は、GenTak330(ジェネラルケミカル社により供給される)であるのが好ましい。
【0032】
図4は、代用基板、好ましくは、サファイアが取り付けられる次の処理ステップの後の図3のソーラーセルを示す断面図である。代用基板は、厚みが約40ミルであり、接着剤及び基板のその後の除去を助けるために、直径約1mmの穴が4mmの間隔で開けられている。
【0033】
図5Aは、基板101、バッファ層103及びエッチング停止層104を除去する一連のラッピング及び/又はエッチングステップによりオリジナル基板が除去される次の処理ステップの後の図4のソーラーセルを示す断面図である。エッチング剤は、成長基板に依存する。
【0034】
図5Bは、図の最下部に代用基板124が来る方向から図5Aのソーラーセルを見た図5Aのソーラーセルの別の断面図である。
【0035】
図6Aは、ソーラーセルが実施されるウェハの上面図である。
【0036】
各セルには、グリッド線501(図10の断面図により詳細に示す)、相互接続バス線502、及びコンタクトパッド503がある。
【0037】
図6Bは、図6Aに示す4つのソーラーセルをもつウェハの底面図である。
【0038】
図7は、燐化物及び砒化物のエッチング剤を使用して各セルの周囲でメサ510がエッチングされる次の処理ステップの後の図6Aのウェハを示す上面図である。
【0039】
図8は、図5Bのソーラーセルの簡単な断面図で、代用基板124の上の幾つかの上部層及び下部層を示す図である。
【0040】
図9は、HCL/H2O溶液によりエッチング停止層104が除去される次の処理ステップの後の図8のソーラーセルを示す断面図である。
【0041】
図10は、コンタクト層105の上にホトレジストマスク(図示せず)を配置してグリッド線501形成する次の一連の処理ステップの後の図9のソーラーセルを示す断面図である。グリッド線501は、コンタクト層105上に蒸着により堆積され、リソグラフ的にパターニング及び堆積される。マスクが離昇されて、金属グリッド線501が形成される。
【0042】
図11は、グリッド線をマスクとして使用し、クエン酸/過酸化物エッチング混合物を使用して表面を窓層106までエッチングする次の処理ステップの後の図10のソーラーセルを示す断面図である。
【0043】
図12は、グリッド線501をもつウェハの「底部」側の全面に反射防止(ARC)誘電体被覆層130が付着される次の処理ステップの後の図11のソーラーセルを示す断面図である。
【0044】
図13は、燐化物及び砒化物のエッチング剤を使用して金属層122までメサ510がエッチングされる次の処理ステップの後の図12のソーラーセルを示す断面図である。この断面図は、図7のA−A平面から見たものとして示されている。次いで、1つ以上の銀電極がコンタクトパッド(1つ又は複数)に溶接される。
【0045】
図14は、代用基板124呼び接着剤123がEKC922により除去された後の次の処理ステップの後の図13のソーラーセルを示す断面図である。代用基板に設けられる好ましい孔は、直径が0.033インチで、0.152インチだけ分離されている。
【0046】
図15は、ARC層130及びそれに取り付けられたカバーガラスの上に接着剤が付着される次の処理ステップの後の図14のソーラーセルを示す断面図である。
【0047】
本発明の効果の実験的指示が図16ないし18に示されている。図1に示す形式であるが、バリア層116a及び116bをもたない構造体が、4cm2セルへと成長され製造される。外部量子効率(EQE)の測定が行われ、図16に示す結果は、中間サブセルBの長い波長の応答が、予想より低かったことを示している。この観察は、成長方向とは逆の貫通転位の伝播が、中間セルの効率低下の原因であることを示唆している。ノマースキー(Nomarski)の顕微鏡検査は、格子整合サブセルAの初期エピタキシャル層における予想されないクロスハッチ(ストレインレリーフのモード)を示している。光ルミネセンスマッピングは、更に、中間サブセルBのルミネセンスが予想より低かったことを明らかにしている。陰極線ルミネセンスの測定は、貫通転位の密度が中間サブセルにおいて高いが、貫通転位は、上部サブセルAを貫通しないことを示している。これらの測定値は、図16に示すEQEの測定値と一貫している。
【0048】
図17は、本発明によりバリア層116aの追加を伴う場合と、伴わない場合の、三重接合ソーラーセルの中間サブセルのEQE測定の比較を示す。サブセルB(バリア層を伴わない)のグラフは、積算電流(AMO)が15.6mA/cm2で、EQEがサブセルD(バリア層を伴う)より低く、その積算電流(AMO)は、17.4mA/cm2である。
【0049】
本発明のソーラーセルにバリア層を使用する効果は、図16及び18のEQEグラフの比較から明らかであろう。図16は、バリア層を伴わない図1のソーラーセルのEQEであり、図18は、バリア層を伴うソーラーセルのEQEである。図18のソーラーセルの中間サブセルBの電流(17.4mA/cm2)は、上部サブセルCの電流(18.4mA/cm2)より若干低いだけである。中間サブセル及び上部サブセルのこのように厳密な電流整合は、本発明の効果を立証している。
【0050】
また、上述した素子の各々、或いはその2つ以上は、上述した形式の構造とは異なる他の形式の構造にも有用に適用できることを理解されたい。
【0051】
本発明の好ましい実施形態は、上部及び下部の電気コンタクトを伴うサブセルの垂直スタックを使用しているが、これらサブセルは、金属コンタクトにより、サブセル間の横方向導電性半導体層に接触されてもよい。このような構成は、3端子、4端子、及び一般的には、n端子のデバイスを形成するように使用できる。これらサブセルは、これら付加的な端子を使用して回路が相互接続されて、各サブセルに得られる光発生電流密度の大部分を効率的に使用して、光発生電流密度が典型的に種々のサブセルにおいて異なるにも関わらず、多接合セルのための高い効率を導くことができる。
【0052】
上述したように、本発明は、1つ以上のホモ接合セル又はサブセル、即ちp−n接合がp型半導体とn型半導体の間に形成され、その両方が同じ化学的組成及び同じバンドギャップを有し、ドーパント種及び形式のみが異なるようなセル又はサブセルを使用することができる。p型及びn型のInGaPをもつサブセルAは、ホモ接合サブセルの一例である。或いはまた、本発明は、1つ以上のヘテロ接合セル又はサブセル、即ちp−n接合を形成するp型及びn型領域に異なるドーパント種及び形式を使用するのに加えて、p型及びn型領域に半導体材料の異なる化学的組成を有し、及び/又はp型領域に異なるバンドギャップエネルギーを有するp型半導体とn型半導体の間にp−n接合が形成されるようなセル又はサブセルを使用することができる。
【0053】
窓又はBSF層の組成は、格子定数及びバンドギャップ要件を受ける他の半導体化合物を使用してもよく、AlInP、AlAs、AlP、AlGaInP、AlGaAsP、AlGaInAs、AlGaInPAs、GaInP、GaInAs、GaInPAs、AlGaAs、AlInAs、AlInPAs、GaAsSb、AlAsSb、GaAlAsSb、AlInSb、GaInSb、AlGaInSb、AlN、GaN、InN、GaInN、AlGaInN、GaInNAs、AlGaInNAs、ZnSSe、CdSSe及び同様の材料を含んでもよく、それでも本発明の精神内に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明により構成されたソーラーセルの拡大断面図である。
【図2】次の処理ステップの後の図1のソーラーセルを示す断面図である。
【図3】次の処理ステップの後の図2のソーラーセルを示す断面図である。
【図4】次の処理ステップの後の図3のソーラーセルを示す断面図である。
【図5A】オリジナル基板が除去された次の処理ステップの後の図4のソーラーセルを示す断面図である。
【図5B】図の最下部に代用基板がある状態で見た図5Aのソーラーセルの別の断面図である。
【図6A】ソーラーセルが製造されたウェハの上面図である。
【図6B】ソーラーセルが製造されたウェハの下面図である。
【図7】次の処理ステップの後の図6Bのウェハを示す上面図である。
【図8】次の処理ステップの後の図5Aのソーラーセルを示す断面図である。
【図9】次の処理ステップの後の図8のソーラーセルを示す断面図である。
【図10】次の処理ステップの後の図9のソーラーセルを示す断面図である。
【図11】次の処理ステップの後の図10のソーラーセルを示す断面図である。
【図12】次の処理ステップの後の図11のソーラーセルを示す断面図である。
【図13】次の処理ステップの後の図12のソーラーセルを示す断面図である。
【図14】次の処理ステップの後の図13のソーラーセルを示す断面図である。
【図15】次の処理ステップの後の図14のソーラーセルを示す断面図である。
【図16】本発明によるバリア層をもたない反転型メタモルフィックソーラーセルの外部量子効率(EQE)を示すグラフである。
【図17】バリア層をもつ及びもたない中間ソーラーサブセルのEQEグラフである。
【図18】本発明によるバリア層をもつ反転型メタモルフィックソーラーセルのEQEグラフである。
【符号の説明】
【0055】
101:基板
102:核生成層
103:バッファ層
104:エッチング停止層
105:コンタクト層
106:窓層
107:n+エミッタ層
108:pベース層
109:BSF層
110:p型及びn型層(トンネルダイオード層)
111:窓層
112:n+エミッタ層
113:pベース層
114:BSF層
115:p++/n++トンネルダイオード
116a:バリア層
116:グレーディング中間層(メタモルフィックバッファ層)
116b:バリア層
117:窓層
118:n+エミッタ層
119:pベース層
120:BSF層
121:p+コンタクト層
122:金属コンタクト層
123:接着剤層
124:代用基板
501:グリッド線
502:相互接続バス線
503:コンタクトパッド
510:メサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部サブセル、中間サブセル及び下部サブセルを含む多接合ソーラーセルを形成する方法であって、
半導体材料のエピタキシャル成長のために第1基板を準備するステップと、
第1バンドギャップを有する第1ソーラーサブセルを前記基板の上に形成するステップと、
前記第1バンドギャップより小さい第2バンドギャップを有する第2ソーラーサブセルを前記第1ソーラーサブセルの上に形成するステップと、
前記第2サブセルの上にバリア層を形成するステップと、
前記第2バンドギャップより大きい第3バンドギャップを有するグレーディング中間層を前記バリア層の上に形成するステップと、
前記第2バンドギャップより小さい第4バンドギャップを有する第3ソーラーサブセルであって、前記第2サブセルに対して格子不整合している第3サブセルを、前記グレーディング中間層の上に形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記バリア層が、前記グレーディング中間層以上のバンドギャップエネルギーを有するAs、P、N又はSbをベースにしたIII-V化合物半導体により構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3ソーラーサブセルを形成する前に前記グレーディング中間層の上に第2バリア層を形成するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2バリア層が、前記グレーディング中間層以上のバンドギャップエネルギーを有するAs、P、N又はSbをベースにしたIII-V化合物半導体により構成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1基板が、ゲルマニウム及びGaAsを含むグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1ソーラーサブセルがInGa(Al)Pエミッタ領域及びInGa(Al)Pベース領域により構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のソーラーセルが、GaInP、GaInAs、GaAsSb又はGaInAsNエミッタ領域と、GaInAs、GaAsSb又はGaInAsNベース領域とにより構成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記グレーディング中間層が、前記第2ソーラーセル以上であって前記第3ソーラーセル以下の平面内格子パラメータを有すること、及び、前記第2ソーラーセルより大きいバンドギャップエネルギーを有すること、という制約を受けるAs、P、N又はSbをベースにしたIII-V化合物半導体により構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2ソーラーサブセルが、InGaPエミッタ領域及びGaAsベース領域により構成される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記グレーディング中間層がInGaAlAsにより構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記グレーディング中間層が単調に変化する格子定数を有する9段の層により構成される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第3ソーラーサブセルの上にコンタクト層を堆積させ、前記第3ソーラーサブセルと該コンタクト層との間に電気的コンタクトを確立するステップ、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記コンタクト層の上に代用第2基板を取り付け、前記第1基板を除去するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
グリッド内に前記コンタクト層をパターニングするステップと、
前記代用第2基板の上にメサ構造を形成するために、前記ソーラーセルの周りに溝をエッチングするステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
基板と、
該基板の上における第1バンドギャップを有する第1ソーラーサブセルと、
前記第1サブセルの上に配置され、前記第1バンドギャップより小さい第2バンドギャップを有する第2ソーラーサブセルと、
貫通転位の伝播を低減させるために前記第2サブセルの上に配置されたバリア層と、
前記バリア層の上に配置され、前記第2バンドギャップより大きい第3バンドギャップを有するグレーディング中間層と、
該グレーディング中間層の上に配置され、前記中間サブセルに対して格子不整合しており、前記第2バンドギャップより小さい第4バンドギャップを有する第3のソーラーサブセルと、
を具備することを特徴とする多接合ソーラーセル。
【請求項16】
前記バリア層が、前記グレーディング中間層以上のバンドギャップエネルギーを有するAs、P、N又はSbをベースにしたIII-V化合物半導体により構成される、請求項15に記載のソーラーセル。
【請求項17】
前記グレーディング中間層と前記第3サブセルとの間に配置された第2バリア層を更に具備する、請求項15に記載のソーラーセル。
【請求項18】
前記第2バリア層が、前記グレーディング中間層以上のバンドギャップエネルギーを有するAs、P、N又はSbをベースにしたIII-V化合物半導体により構成される、請求項15に記載のソーラーセル。
【請求項19】
前記基板が、ゲルマニウム及びGaAsを含むグループから選択される、請求項15に記載のソーラーセル。
【請求項20】
前記第1ソーラーサブセルがInGa(Al)Pにより構成される、請求項15に記載のソーラーセル。
【請求項21】
前記第2ソーラーサブセルが、GaInP、GaInAs、GaAsSb又はGaInAsNエミッタ領域と、GaInAs、GaAsSb又はGaInAsNベース領域と、により構成される、請求項15に記載のソーラーセル。
【請求項22】
前記第3ソーラーサブセルがInGaAsにより構成される、請求項15に記載のソーラーセル。
【請求項1】
上部サブセル、中間サブセル及び下部サブセルを含む多接合ソーラーセルを形成する方法であって、
半導体材料のエピタキシャル成長のために第1基板を準備するステップと、
第1バンドギャップを有する第1ソーラーサブセルを前記基板の上に形成するステップと、
前記第1バンドギャップより小さい第2バンドギャップを有する第2ソーラーサブセルを前記第1ソーラーサブセルの上に形成するステップと、
前記第2サブセルの上にバリア層を形成するステップと、
前記第2バンドギャップより大きい第3バンドギャップを有するグレーディング中間層を前記バリア層の上に形成するステップと、
前記第2バンドギャップより小さい第4バンドギャップを有する第3ソーラーサブセルであって、前記第2サブセルに対して格子不整合している第3サブセルを、前記グレーディング中間層の上に形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記バリア層が、前記グレーディング中間層以上のバンドギャップエネルギーを有するAs、P、N又はSbをベースにしたIII-V化合物半導体により構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3ソーラーサブセルを形成する前に前記グレーディング中間層の上に第2バリア層を形成するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2バリア層が、前記グレーディング中間層以上のバンドギャップエネルギーを有するAs、P、N又はSbをベースにしたIII-V化合物半導体により構成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1基板が、ゲルマニウム及びGaAsを含むグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1ソーラーサブセルがInGa(Al)Pエミッタ領域及びInGa(Al)Pベース領域により構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のソーラーセルが、GaInP、GaInAs、GaAsSb又はGaInAsNエミッタ領域と、GaInAs、GaAsSb又はGaInAsNベース領域とにより構成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記グレーディング中間層が、前記第2ソーラーセル以上であって前記第3ソーラーセル以下の平面内格子パラメータを有すること、及び、前記第2ソーラーセルより大きいバンドギャップエネルギーを有すること、という制約を受けるAs、P、N又はSbをベースにしたIII-V化合物半導体により構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2ソーラーサブセルが、InGaPエミッタ領域及びGaAsベース領域により構成される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記グレーディング中間層がInGaAlAsにより構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記グレーディング中間層が単調に変化する格子定数を有する9段の層により構成される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第3ソーラーサブセルの上にコンタクト層を堆積させ、前記第3ソーラーサブセルと該コンタクト層との間に電気的コンタクトを確立するステップ、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記コンタクト層の上に代用第2基板を取り付け、前記第1基板を除去するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
グリッド内に前記コンタクト層をパターニングするステップと、
前記代用第2基板の上にメサ構造を形成するために、前記ソーラーセルの周りに溝をエッチングするステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
基板と、
該基板の上における第1バンドギャップを有する第1ソーラーサブセルと、
前記第1サブセルの上に配置され、前記第1バンドギャップより小さい第2バンドギャップを有する第2ソーラーサブセルと、
貫通転位の伝播を低減させるために前記第2サブセルの上に配置されたバリア層と、
前記バリア層の上に配置され、前記第2バンドギャップより大きい第3バンドギャップを有するグレーディング中間層と、
該グレーディング中間層の上に配置され、前記中間サブセルに対して格子不整合しており、前記第2バンドギャップより小さい第4バンドギャップを有する第3のソーラーサブセルと、
を具備することを特徴とする多接合ソーラーセル。
【請求項16】
前記バリア層が、前記グレーディング中間層以上のバンドギャップエネルギーを有するAs、P、N又はSbをベースにしたIII-V化合物半導体により構成される、請求項15に記載のソーラーセル。
【請求項17】
前記グレーディング中間層と前記第3サブセルとの間に配置された第2バリア層を更に具備する、請求項15に記載のソーラーセル。
【請求項18】
前記第2バリア層が、前記グレーディング中間層以上のバンドギャップエネルギーを有するAs、P、N又はSbをベースにしたIII-V化合物半導体により構成される、請求項15に記載のソーラーセル。
【請求項19】
前記基板が、ゲルマニウム及びGaAsを含むグループから選択される、請求項15に記載のソーラーセル。
【請求項20】
前記第1ソーラーサブセルがInGa(Al)Pにより構成される、請求項15に記載のソーラーセル。
【請求項21】
前記第2ソーラーサブセルが、GaInP、GaInAs、GaAsSb又はGaInAsNエミッタ領域と、GaInAs、GaAsSb又はGaInAsNベース領域と、により構成される、請求項15に記載のソーラーセル。
【請求項22】
前記第3ソーラーサブセルがInGaAsにより構成される、請求項15に記載のソーラーセル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−76920(P2009−76920A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243637(P2008−243637)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(501195658)エムコア・コーポレイション (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(501195658)エムコア・コーポレイション (22)
【Fターム(参考)】
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