説明

多数のヨークを備える斜軸液圧モジュール

【課題】 押し除け量可変斜軸液圧ユニットのサイズを小さくする。
【解決手段】 フレーム12には、1対のシャフト25,26を含む液圧モジュールが回転自在に支持され、2つのヨーク14,16が枢着されており、各ヨークは、他のヨークおよびフレームに対して相補的な表面を有し、ヨークが占めるスペースを最小にしている。ヨークおよびフレームには、ヨークの枢動運動を制限するためのストッパー手段50,52,54,56が設けられている。各ヨークにより、液圧動力ユニットが支持されており、各ヨークはシャフトの1つに接続されている。サーボピストンを含む単一部品制御ハウジングを有する制御システム62が、ヨークを枢動させるようになっている。サーボピストンは、ヨークの配向を別々に決定し、制御ハウジングには、一体構造の流体制御ポートプレートが固定されており、制御ハウジング内の多数の位置への液圧流体のルートを定めるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押し除け量可変斜軸液圧ユニットの技術分野に関する。このような斜軸液圧ユニットは、何年も前から、公知となっている。
【背景技術】
【0002】
このような装置では、動力出力は、装置の物理的寸法によって限られている。動力が更に必要となった時の解決案は、より大きい寸法のユニットを設けることである。しかし、ある種の車両の構造では、スペースと寸法が問題となり、より多くの動力が必要とされ、スペースが限られたときには、より大きい斜軸液圧ユニットでは、かかる状況に適合するのが困難となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の主たる目的は、ユニット全体のスペース条件を最小にするように、互いに入れ子状に嵌合するような形状および配置とされた多数のヨークを備える斜軸液圧モジュールを提供することにある。
【0004】
本発明の別の目的は、ヨークの枢動角度を制御するように、機械式ストッパーが設けられている多数のヨークを備える斜軸液圧モジュールを提供することにある。
【0005】
本発明の更に別の目的は、双方のヨークの運動を制御するように、単一部品の制御ハウジングが設けられた斜軸液圧ユニット、および多数のヨークを備える液圧モジュールを提供することにある。
【0006】
本発明の更に別の目的は、制御ハウジングに固定された、剛質の構造的流体マニホールドアセンブリを備える液圧モジュールを提供することにある。
【0007】
本発明の更に別の目的は、制御ハウジング内の必要な場所に流体を運ぶための一体構造のポートプレートを備える液圧モジュールを提供することにある。
【0008】
以下の説明により、当業者には、上記およびそれ以外の目的が明らかとなると思う。
【課題を解決するための手段】
【0009】
フレームによって1対のシャフトを含む液圧モジュールが回転自在に支持されている。フレームには、2つのヨークが枢着されている。各ヨークは、他のヨークおよびフレームに対して相補的な表面を有し、ヨークが占めるスペースを最小にしている。ヨークおよびフレームには、ヨークの枢動運動を制限するためのストッパー手段が設けられている。各ヨークにより、液圧動力ユニットが支持されており、各ヨークは、シャフトの1つに接続されている。サーボピストンを含む単一部品制御ハウジングを有する制御システムが、ヨークを枢動させるようになっている。サーボピストンは、ヨークの配向を別々に決定し、制御ハウジングには、一体構造の流体制御ポートプレートが固定されており、制御ハウジング内の多数の位置への液圧流体のルートを定めるようになっている。マニホールドと制御ハウジングとの間で密に接近した状態で、流体マニホールドが主要構造要素として働き、マニホールドと制御ハウジングとの間の簡略化された流体の交換を可能にしている。
【0010】
本発明の液圧モジュールは、コンパクトな最新のトラクターのハウジングのエンベロープ内にはめ込むようになっており、運転台のすぐ前方の地面を明瞭に見なければならないオペレータの視線の視界を妨害しないようにしなければならない。従って、液圧モジュールの幅方向の寸法は重要である。ヨークの位置は、ヨークが互いに干渉することなく、より密に入れ子嵌合できる状態で、ギアの中心線とのシリンダブロックシャフトの整合を含む、ギアの中心線の条件を満たさなければならない。各ヨークは、別々に移動しなければならず、他のヨークの位置にかかわらず、任意の回転角位置に設置できなければならない。
【0011】
フレームとマニホールド部品を組み立てると、これらは、2つのヨークを捕捉するようになっている。次に、ヨークおよびフレーム内に、これら2つのキットが収納され、これらに装填される。フレームは、キット(ヨーク)のシャフトの位置を定め、キットのシャフトは、シャフトに組み立てられたギアを、遊星リングギアおよびクラッチギアにそれぞれ整合する。従って、これら2つのキットおよび関連するストローク装置を、本明細書では、クラッチユニット(CU)およびリングユニット(RU)と呼ぶ。
【0012】
一般に、角度可変ヨークには、ヨークの移動を制限する2つの機械式ハードストッパーが設けられている。液圧機械式トランスミッション用に開発された液圧モジュールの場合、ヨークの1つに、3つ以上のハードストッパーを設ける必要がある。これら2つの機械式ハードストッパーの間で、ヨークを所定の角度に正確に位置決めしなければならない。本発明は、更に必要とされるハードストッパーを形成するために、互いに密に接近してスイングする2つのヨークに、特徴部品を組み込んでいる。
【0013】
一体的な相対角ストッパーが、2つの液圧ヨークに組み込まれた物理的な特徴部品となっている。液圧ヨークは、互いに密に接近した状態で、所定の範囲の角度だけスイングする。左ヨークは、−45・の最小角度から、+45・の最大角度の円弧にわたってスイングし、右ヨークは、−15・の最小角度から、+45・の最大角度までの円弧にわたってスイングする。
【0014】
ヨークが停止される既知の位置を定めるのに、最小および最大ヨーク角度ストッパーしか利用できない。一体的な相対的角度ストッパーは、既知の位置で、ヨークを停止できる別の角度を提供する。ヨークが望ましい角度の組み合わせで接触するように、ヨークに特徴部品が設けられている。このような角度の組み合わせは、最小および最大ストッパー限度以外の角度でよい。
【0015】
液圧モジュールの液圧比を極めて正確に設定するには、一体的相対角度ストッパーによって設定されるヨーク角度の別の組み合わせが必要である。このヨークは、位置検出サーボ制御装置により、液圧によって位置決めされる。サーボ制御装置は、一体的相対角度ストッパーが提供するような精度、および繰り返し性を提供しないので、ヨーク角度の特別の組み合わせで、ハードを停止させる必要がある。
【0016】
現在の液圧モジュール構造の場合、左ヨークに対し、+44.5・で、物理的にハード停止する命令を出し、右ヨークを、正確に+13.5・に位置決めすることが望ましい。このような特定のヨーク角度の組み合わせで、ヨークの間を物理的に干渉するように、双方のヨークに特徴部品が追加されている。
【0017】
上に説明したように、一体的相対角度ストッパーの機素は、特定のヨーク角度の組み合わせのみにおいて、ヨーク間の干渉を生じさせるよう、液圧ヨークに組み込まれた物理的特徴部品である。これによって、ヨークは、別の機構を設けることなく、最小および最大角度条件だけで、機械式ハードストッパーを有することが可能となっている。機械式ハードストッパーは、ヨークを位置決めするのに使用されるサーボ制御装置に対し、すぐれた繰り返しおよび精度を提供できる。
【0018】
本発明では、多数の液圧ヨークを制御するのに、サーボバルブ、支持構造体、流体通路およびサーボピストンを、一体構造の制御ハウジングに組み込んでいる。サーボバルブ、サーボピストン、サーボピストン構造体および流体通路は、いずれも、農業用トラクターのトランスミッション内に設けられた限られたスペースへ組み込みできるよう、単一ハウジング内に収容されている。
【0019】
多数のサーボ制御装置により、・45・の作動レンジにわたって、液圧ヨークを位置決めしている。多数の制御装置のための機械式フィードバック機構、制御スプールおよびサーボピストンが、すべて1つのハウジング内に組み込まれている。
【0020】
本発明では、多数のサーボ制御装置により、一体構造の制御ハウジング全体でのオイルのルートを定め、かつ農業用トラクターのトランスミッションとトランスミッション内の液圧モジュールとの間に、5つの液圧接続部を設ける必要がある。プレート内に、これら接続部のうちの1つが設けられ、このプレートは、他の5つの接続部のためのオイルのルートを定める。
【0021】
多数のサーボバルブにより、一体構造の制御ハウジング内の多数の位置への液圧オイルのルートを定めるためのマニホールドとして、制御ポートプレートが働く。この制御ポートプレートは、制御装置の後部から制御装置の前方へのオイルのルートを定め、液圧モジュールとの適当な接続部を構成している。
【0022】
上に述べたように、この制御ポートプレートは、トラクターのトランスミッションとの液圧接続部を構成し、多数の液圧制御装置により、一体構造の制御ハウジング内でのオイルのルートを定める。制御ポートプレートは、トラクターのトランスミッションに接続した液圧ポートをも有する。
【0023】
本発明では、液圧パッケージは、現在のトランスミッションのハウジングのエンベロープ内に取り付けなければならない。側面から側面までのスペースだけでなく、前方から後方までのスペースも、極めて限られている。更に、シャフトは、トランスミッション全体の嵌合ギアと整列していなければならない。
【0024】
シャフトの平行軸線が整合した状態で、一体構造のヨークに収容された2つの可変斜軸キットが、1つのパッケージ内で共に接合されているという点で、構造がユニークである。このような構造によって、ギア、ベルト、チェーンなどを使用することにより、液圧モジュールの内外への動力の伝達が容易となっている。またこのような構成により、ユニットを液圧式に接続するのに、ホースまたはチューブに依存することなく、構造が同じパッケージ内に、2つ以上の液圧ユニットを設けることができるようにもなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1を参照すると、本発明の液圧モジュール10は、斜軸液圧ユニット11とフレーム12とを有する。フレーム12は、他の部品を保持し、位置決めするための構造的ユニットとして働くとともに、部品を所定位置に保持するよう、モジュール内で、力に抗して作用もする。
【0026】
図4を参照する。クラッチユニットヨーク14およびリングユニットヨーク16は、液圧動力ユニット(シリンダブロックまたはキット)23および24をそれぞれ有し、これらを支持し、交差路において、フレーム12に対して枢動するように、フレーム12に枢着されている。組み立て時に、フレーム12とマニホールド22との間に、2つのヨーク14および16が捕捉される。
【0027】
液圧動力ユニット23および24は、1対の平行な横方向に離間したシャフト25および26に、それぞれ作動的に接続されている。これらシャフト25および26は、フレーム12によって回転自在に支持されており、フレーム12から外側へ同一方向を向いている。液圧動力ユニット23および24は、シャフト25および26を回転させるように作動する。
【0028】
次に、これら2つの液圧動力ユニット23および24は、ヨーク14および16、ならびにフレーム12内に収容され、これらに対して装填されている。フレーム12は、シャフト25および26を位置決めし、次に、自動車のトランスミッション(図示せず)の遊星リングギア内のシャフト25、およびクラッチギア内のシャフト26に、それぞれ組み立てられたギア27を整合させている。
【0029】
従って、液圧動力ユニット23、およびこれに関連するヨーク14および液圧動力ユニット24、およびこれに関連するヨーク16を、それぞれクラッチユニットヨーク14およびリング状ユニットヨーク16と呼ぶ。
【0030】
図6に示すように、ヨーク14と16とは、一体の構造体となっていることが好ましい。この一体構造のヨーク14および16は、一体化された流体通路28および30を有する。米国特許第6,203,283号には、一体化された流体通路28および30を有する一体構造のヨーク14および16の詳細が示されている。本明細書では、この米国特許全体の内容を参考例として援用する。
【0031】
マニホールド22は、アセンブリ内のすべての液圧動力ユニット23と24との間の高圧流体のための導管として機能するとともに、液圧モジュール10のための必要なバルブ部品をも有する。マニホールド22は、圧力を保護し、かつループをフラッシングするための補助バルブ部品(図示せず)を有する。マニホールド22は、ヨーク14からヨーク16へ延びる2つの内側コア通路32および34をも有し、液圧モジュール10の2つの作動ループを形成している。これら内部コア通路32および34は、1つのヨークから他のヨークまでオイルを流すための導管として働く。
【0032】
マニホールド22内の通路32および34は、ヨーク16の一体化された流体通路28および30を通過する流体の入出制御を行う。通路32および34は、ヨーク16のトラニオン36に沿う一体的流体通路28および30と連通している。トラニオン36から端部壁38Bまでヨーク16内の一体的流体通路28および30の1つを通って、流体が搬送される。
【0033】
端部壁38Bでは、一体的流体通路28および30の一方から、液圧流体ユニット24の片側内まで、流体が吸引される。液圧動力ユニット24の反対側は、端部壁38Bにおいて、一体的流体通路28および30の他方内へ流体を戻し、これからトラニオン36および対応する一体的流体通路28または30まで流体を戻す。同様に、ヨーク14は、類似する一体的流体通路構造体を有する。
【0034】
図4に示すように、各ヨーク14および16は、端部壁38Aおよび38B、ならびに側壁42Aおよび42Bをそれぞれ含む外側表面40Aおよび40Bをそれぞれ有する。これらヨーク14の外側表面40Aおよびヨーク16の外側表面40Bは、外側表面40Aおよび40Bの相補的表面が密に離間した状態となっているときに、ヨーク14および16が占めるスペースの大きさを最小にするように、互いに、かつフレーム12に対しても相補的な表面を有する。
【0035】
より詳細に説明すれば、ヨーク14の端部壁38Aは、ヨーク14の外側表面40A上の有形部分44Aを有する。この有形部分44Aにより、2つのヨーク14と16とが互いに接触することなく、ヨーク14の端部壁38Aは、ヨーク16の側壁38Bに対して入れ子状に、すなわち、密に離間した状態に位置決めできるようになっている。同様に、フレーム12上の有形リブ46も、ヨーク14の側壁42Aに適合するような形状になっている。
【0036】
これら部分44Aおよび46上の輪郭角度は、ヨーク14および16のピボット角度に応じて決まる。ヨーク14は、角度閘だけ反時計回り方向に枢動し、ヨーク16は、角度痾だけ時計回り方向に枢動する(図4)。特にヨーク14は、シャフト25の中心線Aに対して、角度閘だけ反時計回り方向に枢動するヨーク中心線Bを有する。ヨーク16は、このヨークのシャフト26の中心線Dに対して、角度痾だけ時計回り方向に枢動するヨーク中心線Cを有する。従って、ヨーク14の端部壁38A上の有形部分44Aの角度は、ヨーク14の中心線Bに対して、閘+痾に等しくなっている。
【0037】
同様に、ヨーク14の側壁42Aに適合するフレーム12上の有形リブ46の角度は、シャフト235の中心線Aに直交するフレーム12の表面Eに対して、90度−閘に等しくなっている。
【0038】
部分44Aおよび46を設けたことにより、液圧モジュール10の幅方向の寸法を最小にすることが可能となっている。ここで、液圧モジュール10の幅方向の寸法は、重要な設計上の基準である。特に本発明の液圧モジュール10は、コンパクトである最近のトラクターのハウジングのエンベロープに適合するようになっており、運転台のすぐ前方の地面を明瞭に見なければならないオペレータの視線の視界を妨害しないようにしなければならない。
【0039】
更に、ヨーク14および16の位置は、互いに干渉することなく、ヨーク14および16を、より密に位置決めできるようにしながら、ギアの中心線とシャフト25および26とを整合することを含む、ギアの中心線の条件を満たさなければならない。更に、各ヨーク14および16は、他方のヨークの位置に関係なく多数の回転角位置に配置できなければならない。従って、液圧モジュール10の幅方向の寸法を最小にすることは、部分44Aおよび46により可能となる重要な設計上の基準である。
【0040】
図5に示すように、液圧モジュール10には、3つ以上のハードストッパーが設けられている。一般に、角度可変ヨークの場合、ヨークの移動を制限する2つの機械式ハードストッパーが設けられる。本発明では、3つ以上のハードストッパーを設けたことにより、2つの機械式ハードストッパーの間の所定角度に、ヨーク14および16を正確に位置決めできるようになっている。
【0041】
特に液圧モジュール10は、互いに密に接近した状態で、スイングするヨーク14および16が接触しないように、これらを停止させるための4つの50、52、54および56を、フレーム12内に内蔵している。
【0042】
液圧モジュール10は、クラッチユニットヨーク14の最大外側角度ストッパー50および内側角度ストッパー52を有する。リングユニットヨーク16は、ヨークの最大内側角度ストッパー54および外側角度ストッパー56を有する。これらストッパー50、52、54および56は、任意の適当な角度にすることができる。
【0043】
ヨーク14および16が枢動運動の所定位置にあるとき(シャフト25の中心線Aおよびシャフト26の中心線D)、これらは、シリンダブロック23および24、ならびにシャフト25および26に対する中立位置を定める。ストッパー50、52、54および56によって、ヨーク14および16は、次のパラメータ内で枢動できるようになっている。
【0044】
ここで、パラメータに付けられた+記号は、中立位置から時計回り方向を意味し、−記号は、中立位置から反時計回り方向を意味する。図示するように、クラッチユニットヨーク14は、ストッパー50での−45・の最小角度の円弧を通って、ストッパー52での+45・の最大角度までスイングする。リングヨークユニット16は、ストッパー54での−15・の最小円弧角度を通って、ストッパー56での+45・の最大角度までスイングする。
【0045】
従って、ストッパー50、52、54および56によって、ヨーク14および16は、次の位置の組み合わせまで枢動できる。すなわち、−45・のヨークと−15・のヨークとの組み合わせ、+45・のヨークと−15・のヨークとの組み合わせ、+45・のヨークと−15・のヨークの組み合わせ、+45・のヨークと+45・のヨークの組み合わせ、−45・のヨークと−45・のヨークとの組み合わせ、45・のヨークと15・のヨークの組み合わせまで枢動できる。
【0046】
ヨーク16上の一体的ストッパー58、およびそれに対応するヨーク14上の一体的溝60は、2つの液圧ヨーク14および16に組み込まれた物理的な特徴部品となっている。液圧ヨーク14と16とが互いに密に接近した状態で、ある範囲の角度だけスイングする際に、ヨーク16上の一体的ストッパー58によって更なる角度が得られ、この場合、ヨーク14と16とを既知の位置に停止させることができる。ヨーク14と16とが所望する角度の組み合わせで接触するように、ヨーク14および16には、ヨーク16上の一体的ストッパー58、およびそれに対応するヨーク14上の一体的溝60が設けられている。
【0047】
液圧モジュール10の液圧比をより正確に設定するには、一体的ストッパー58および一体的溝60によって設定される別のヨーク角度の組み合わせが必要である。ヨーク14および16は(図1および図3に示されている)位置検出サーボ制御システム62により、液圧によって位置決めされる。サーボ制御システム62は、一体的ストッパー58が提供するような精度、および繰り返し性を提供しないので、一体的ストッパー58および一体的溝60により、特別なヨーク角度の組み合わせにする必要がある。このような角度の組み合わせは、ストッパーの最大限度および最小限度を除く任意の所望する角度にすることができる。
【0048】
図示するように、左ヨーク14が、物理的ハードストッパーに対し+44.5・に配向し、右ヨーク16が、物理的ハードストッパーに対し+13.5・に配向するような特定のヨーク角度の組み合わせで、ヨーク14と16との間で物理的な干渉が生じるように、これらヨーク14および16に対し、ヨーク16上に一体的ストッパー58が追加され、ヨーク14上に対応する一体的溝60が追加されている。
【0049】
図1および図3に示すように、液圧モジュール10のサーボ制御システム62は、一体構造の制御ハウジング64を有する。制御ハウジング64は、ヨーク14および16の位置を制御し、従って、オペレータが命令するような液圧動力ユニット23および24の押し除け量を制御するのに必要なハードウェアを有する。
【0050】
一体構造の制御ハウジング64には、第1サーボピストン68および第1バイアスピストン72に関連する第1サーボバルブ70を含む第1サーボ制御装置67が特に装備されている。同様に、ハウジング64も、第2サーボピストン74および第2バイアスピストン78に関連する第2サーボバルブ76を含む第2サーボ制御装置73を有する。
【0051】
これらサーボバルブ70および76は、サーボピストン68および74だけでなく、バイアスピストン72および78にかかる液圧を制御する。ピストン68、74、72および78にかかる液圧によって、ピストン68、74、72および78は、一体構造の制御ハウジング64の内外にスライドさせられる。
【0052】
図6に良く示されているように、第2サーボ制御装置73は、ピストン74および78が一体構造の制御ハウジング64の内外にスライドする際に、ピストン74および78がトラニオン36を回転させることにより、ヨーク16を位置決めする。同じように、第1サーボ制御装置67のピストン68および72も、ヨーク14を位置決めするよう、同じように働く。従って、マルチサーボ制御装置67および73は、・45・の作動範囲にわたって、液圧ヨーク14および16の位置、およびシャフト25および26に供給される回転動力を別々に定める。
【0053】
図1、図3および図7に示すように、液圧モジュール10のサーボ制御システム62は、一体構造の制御ハウジング64に取り付けられた制御ポートプレート66を有する。この制御システム62は、多数のサーボ制御装置67および73に対するオイルのルートを定め、トランスミッション(図示せず)とトランスミッション内部の液圧モジュール10との間に、複数の液圧接続部を設けている。制御ポートプレート66内には、トランスミッション(図示せず)と液圧モジュール10との間の複数の液圧接続部のうちの1つが設けられている。トランスミッション(図示せず)と液圧モジュール10との間の他の液圧接続部は、一体構造の制御ハウジング64に設けられている。
【0054】
特に制御ポートプレート66は、単一の制御供給圧力入口80を有する。単一制御供給圧力入口80は液圧流体を受けるように、トランスミッション(図示せず)に液圧で接続されている。制御ポートプレート66は、単一制御供給圧力入口80から、多数の出口溝82A〜Eまでの液圧流体のルートを定める。これら出口溝82A〜Eは、一体構造の制御ハウジング64に当接するように位置決めされている。これら出口溝82A〜Eは、多数のサーボ制御装置67および73への対応する入口(図示せず)に液圧連通し、多数のサーボ制御装置67および73の種々の部品に液圧を供給するようになっている。従って、制御ポートプレート66は、一体構造の制御ハウジング64内の多数の位置への液圧流体のルートを定めるための、マニホールドとして働く。
【0055】
更に上記のように、一体構造の制御ハウジング64は、トランスミッション(図示せず)と液圧モジュール10との間に、多数の液圧接続部を有する。これら多数の液圧接続部として、液圧モジュールループチャージ圧力供給部88と、第1圧力命令信号出口90と、第2圧力命令信号出口92と、液圧モジュールループ冷却流リターン部94とが挙げられる。これら多数の液圧接続部88、90、92および94は、マニホールド22だけでなく、ヨーク14および16内の多数の位置への液圧流体のルートをも定める。
【0056】
従って、制御ハウジング64は、多数の液圧ヨーク14および16を制御するための一体構造となるように、流体通路、支持構造体、サーボバルブ、およびサーボピストンを一体化している。これら流体通路、支持構造体、サーボバルブおよびサーボピストンは、農業用トラクターのトランスミッション(図示せず)の内部に設けられる限られたスペースにはめ込みできるよう、1つのハウジング64内にすべて収容される。
【0057】
制御ハウジング64の構造は、米国特許第6,260,468号に開示された一体構造の比例制御装置の構造の変形例であり、この米国特許の開示および図面全体を、本明細書で参考例として援用する。
【0058】
図1および図2に示すように、マニホールド22上のジョイント表面100は、マニホールド22を制御ハウジング64に嵌合させている。図3および図8に示すように、ジョイント表面100からは、取り付け特殊ペグ102が延びている。この取り付け特殊ペグ102は、制御ハウジング内の対応する取り付け特殊孔104に嵌合する。対応する取り付け特殊ペグおよび孔102および104は、組み立て中にマニホールド22に対し、制御ハウジング64を正しく位置決めするように働く。同様に、ジョイント表面100内のボルト孔、および制御ハウジング64は互いに整合し、制御ハウジングがマニホールド22に取り外し自在に取り付けできるようにしている。
【0059】
更に図3および図8を参照する。制御ハウジングポート108は、ジョイント表面100上のマニホールドポート110と整合している。制御ハウジングポート108は、液圧モジュールループチャージ圧力供給部88と、液圧ループ冷却流リターン部94との間の流体の、ジョイント表面100上のマニホールドポート110へのルートを定める。マニホールドポート110は、1つのヨークから他のヨークへオイルを流し、ヨーク14および16の一体的流体通路28および30を通過する流体の入出制御をするための導管として働くマニホールド22内の内側コア通路32と34との間の流体のルートを定めるための流体バルブとして働く。
【0060】
従って、車両とモジュール10との間の液圧システム流は、制御ハウジング64を通過するマニホールド22へのルートが定められ、制御ハウジング64およびマニホールドジョイント100における流体の交換を改善する。制御ハウジング64がマニホールド22に密に接近した状態となっていることにより、モジュール10を作動させるのに必要な液圧流体の簡略化された交換を可能にし、よりコンパクトな設計を可能にし、よって収納だけでなく、コストの点でも有利となっている。
【0061】
ジョイント表面100において、制御ハウジング64をマニホールド22に接合したことに起因し、制御ハウジング64は、マニホールド22の特性にも寄与している。マニホールド22は、モジュール10の主要な構造上の機素であり、液圧モジュール10のキーとなる部品のすべてに極めて正確に位置決めされるようになっている。マニホールド22は、強固で、かつ剛性であり、極めて大きい負荷が作用するので、その位置およびスペースを維持している。マニホールド22は、制御ハウジング64内で生じた力に対して反作用するのに影響を受けた必要な剛性を得るための構造上の支持部品としても使用されている。
【0062】
制御ハウジング64/マニホールド22の剛性によって、マニホールド22ための取り付け用特徴部品102および104の使用を制御ハウジング64に追加できるようになっている。従って、液圧モジュール10の構造体の他の部分により、ジョイント100を通して、制御ハウジング64にかかる力が分配される。
【0063】
従って、液圧モジュール10全体のスペース条件を最小にするように、互いに入れ子状となった形状になっており、かつそのように位置決めされた多数のヨーク14および16を備える斜軸液圧モジュール10が開示されている。
【0064】
本発明は、ヨーク14および16の枢動角度を制御するように、ヨーク14および16に機械式ストッパー58および60が設けられたマルチヨーク14および16を備える斜軸液圧モジュール10をも提供するものである。
【0065】
更に本発明は、双方のヨーク14および16の移動を制御するように、一体構造の制御ハウジング64が設けられた、多数のヨーク14および16を備える斜軸液圧モジュール10をも提供するものである。
【0066】
更に本発明は、制御ハウジング64に固定された剛性構造の流体マニホールド22のアセンブリを備える液圧モジュール10をも提供するものである。
【0067】
最後に本発明は、制御ハウジング64内の必要な位置に流体を搬送するための一体構造のポートプレート66を備える液圧モジュール10をも提供するものである。
【0068】
当業者であれば、本発明の要旨から逸脱することなく、装置について、上記以外の種々の変形を行うことができることは理解できると思う。かかるすべての変形例および変更例は、特許請求の範囲内に入るものであり、これらは、特許請求の範囲にカバーされている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係わる液圧モジュールの一実施例の正面斜視図である。
【図2】本発明に係わる液圧モジュールの一実施例の背面斜視図である。
【図3】本発明の制御ハウジングの斜視図である。
【図4】本発明の液圧モジュールの横断平面図である。
【図5】本発明のヨークおよびストッパーの平面略図である。
【図6】本発明の液圧モジュールの部分横断側面図である。
【図7】本発明のポートプレートの平面図である。
【図8】マニホールドのジョイント表面を示す、本発明の液圧モジュールの正面斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
10 液圧モジュール
11 斜軸液圧ユニット
12 フレーム
14 クラッチユニットヨーク
16 リングユニットヨーク
22 マニホールド
23、24 動力ユニット
25、26 シャフト
27 ギア
28、30 通路
32、34 通路
36 トラニオン
38A、38B 端部壁
40A、40B 外側表面
42A、42B 側壁
44A 有形部分
46 リブ
50、52、54、56 ストッパー
58 一体的ストッパー
60 一体的溝
62 サーボ制御システム
64 制御ハウジング
66 ポートプレート
67 第1サーボ制御装置
68 第1サーボピストン
70 第1サーボバルブ
72 第1バイアスピストン
73 第2サーボ制御装置
76 第2サーボバルブ
78 第2バイアスピストン
80 圧力入口
82A〜E 出口
88 ループチャージ圧力供給部
90 第1圧力命令信号出口
92 第2圧力命令信号出口
94 液圧モジュールループ冷却流れリターン部
100 ジョイント表面
102 取り付け特殊ペグ
104 取り付け特殊孔
108 制御ハウジングポート
110 マニホールドポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
このフレームにより回転自在に支持され、このフレームから外側を向く1対の離間したシャフトと、
交差路内で前記フレームに対して枢動するよう、前記フレームに枢着された2つのヨークと、
かつ各ヨークによって支持された液圧動力ユニットを備え、
各液圧動力ユニットは、前記シャフトの1つに作動的に接続されて、このシャフトを回転させるようになっており、
更に前記ヨークを枢動させるための制御システムと、
前記ヨークの枢動運動を制限するように、前記ヨークおよび前記フレームに設けられたストッパー手段とを備え、
該ストッパー手段は、前記ヨークおよび前記フレームが互いに離れる方向に最大限回転すること及び近づく方向への回転を制限する液圧モジュール。
【請求項2】
フレームと、
このフレームにより回転自在に支持され、このフレームから外側を向く1対の離間したシャフトと、
交差路内で前記フレームに対して枢動するよう、前記フレームに枢着された2つのヨークと、
各ヨークによって支持された液圧動力ユニットとを備え、
各液圧動力ユニットは、前記シャフトの1つに作動的に接続されて、このシャフトを回転させるようになっており、
かつ前記ヨークを枢動させるための制御システムを備え、前記制御システムは、サーボピストンを含む一体構造の制御ハウジングを有し、前記サーボピストンは、前記ヨークの配向、従って前記シャフトに供給される回転動力を、独立して決定するようになっている液圧モジュール。
【請求項3】
フレームと、
このフレームによって回転自在に支持され、このフレームから外側を向く1対の離間したシャフトと、
交差路内で前記フレームに対して枢動するよう、前記フレームに枢着された2つのヨークと、
各ヨークによって支持された液圧動力ユニットとを備え、
各液圧動力ユニットは、前記シャフトの1つに作動的に接続されて、このシャフトを回転させるようになっており、
かつ前記ヨークを枢動させるための制御システムを備え、
前記制御システムがサーボピストンを含む制御ハウジングを有し、前記サーボピストンは、前記ヨークの配向、従って前記シャフトに供給される回転動力を決定するようになっており、
前記液圧動力ユニットの間の高圧流体のための導管として働くようになっている流体マニホールドを備え、このマニホールドは、前記制御ハウジングに密に接近した状態で、剛性かつ直接固定された流体バルブを含み、前記マニホールドが、強固かつ剛性であり、前記マニホールドと前記制御ハウジングとの間に密に接近した状態で、前記液圧モジュールの主要構造要素を含み、もって、共通流体ポートを通してこれらポートの間で流体を簡単に交換でき、
一体構造の制御ポートプレートが制御ハウジング内に保持され、前記制御ハウジング内の多数の位置、および前記制御ハウジング内のサーボバルブへの液圧流体の通路を定めるようになっている液圧モジュール。
【請求項4】
フレームと、
このフレームによって回転自在に支持され、このフレームから外側を向く1対の離間したシャフトと、
交差路内で前記フレームに対して枢動するよう、前記フレームに枢着された2つのヨークと、
各ヨークによって支持された液圧動力ユニットとを備え、
各液圧動力ユニットは、前記シャフトの1つに作動的に接続されて、このシャフトを回転させるようになっており、
前記ヨークを枢動させるための制御システムを備え、
この制御システムは、サーボピストンを含む制御ハウジングを有し、前記サーボピストンは、前記ヨークの配向、および従って前記シャフトに供給される回転動力を決定するようになっており、
前記制御ハウジングに固定され、前記制御ハウジング内の多数の位置、および前記制御ハウジング内のサーボバルブへの液圧流体の通路を定めるようになっている一体構造の流体制御ポートプレートとを備える液圧モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−51118(P2008−51118A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290487(P2007−290487)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【分割の表示】特願2004−177678(P2004−177678)の分割
【原出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(501004464)サウアー ダンフォス インコーポレイテッド (31)
【Fターム(参考)】