説明

多方向入力装置

【課題】操作部材の軸部を傾動させたときに生じる摺動抵抗が傾動方向によってばらつかず、かつ装置全体の小型化が図りやすい多方向入力装置を提供すること。
【解決手段】外方へ延びる操作軸部1aを有する操作レバー1と、操作レバー1を多方向へ傾動可能に支持する基台3と、傾動操作された操作部材2に駆動されて位置を変化させる駆動レバー4,5と、各駆動レバー4,5の位置変化を検出する検出手段8,9とを備えた多方向入力装置であって、操作レバー1に設けたフランジ部材12と操作軸部1aに外装した摺接部材13との間に、先端側が基端側よりも小径となるテーパ状に巻回されたコイルばね14を圧縮状態で介設して、基台3に固定された規制部材15の受け面15aに摺接部材13の摺接面13bを弾接させる。摺接部材13の下面側にはコイルばね14を配置させるための収納空間13aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外方へ延びる軸部を有する操作部材を傾動操作することにより、傾動方向や傾動角度に応じた電気信号が取り出せるようになっている多方向入力装置に係り、特に、多方向へ傾動可能な操作部材のガタを抑制するためのガタ防止対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の多方向入力装置では、操作力が付与されて操作部材の軸部が傾動すると、操作部材に駆動される駆動部材が位置を変化させ、この駆動部材の位置変化が可変抵抗器やロータリエンコーダ等の検出手段によって検出されるようになっている。かかる多方向入力装置において、操作部材の軸部は筐体の上部開口を貫通して外方へ突出しており、この筐体の内部で一対の駆動部材が操作部材と係合している。操作部材はその軸部が多方向へ傾動可能となるように支持されており、一対の駆動部材は互いの軸線方向を直交させて回動可能に支持されている。また、操作部材の軸部はその傾動中心から遠ざかる向きに延びており、操作力が付与される部位は傾動中心から大きく離れていることが多いため、傾動時の軸部のガタを防止する対策が必要な場合がある。
【0003】
このような多方向入力装置における操作部材のガタ防止対策として、操作部材の軸部に上下一対の摺接部材と圧縮コイルばねを外装し、両摺接部材を軸部の軸線方向に移動可能となすと共に、各摺接部材の摺接面を相異なる駆動部材の受け面に弾接させるという構成のものが従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる従来例において、上側の摺接部材の摺接面は上向きに凸の湾曲面からなり、下側の摺接部材の摺接面は下向きに凸の湾曲面からなり、これら一対の摺接部材の間には圧縮コイルばねが介設されて両摺接部材を離反する向きに弾性付勢している。また、操作部材に駆動される一方の駆動部材の下面側には上側の摺接部材の摺接面が弾接する受け面が設けられており、該受け面は凹状の湾曲面からなる。同様に、他方の駆動部材の上面側には下側の摺接部材の摺接面が弾接する受け面が設けられており、該受け面も凹状の湾曲面からなる。これにより、操作力が付与されて操作部材の軸部が傾動したときに、その傾動方向に応じて各摺接部材をそれぞれ対応する駆動部材の受け面に沿って円滑に摺動させることが可能となるため、操作部材の軸部が傾動時にガタを生じなくなって操作性が良好となる。
【0004】
なお、上記の従来例では、互いの軸線方向を直交させて回動可能に支持された一対の駆動部材の回転方向や回転角度に応じた電気信号が、それぞれ対応する可変抵抗器から出力されるため、操作部材の軸部を任意方向へ傾動させたときに、その傾動方向および傾動角度が各可変抵抗器の出力値に基づいて検出できるようになっている。
【特許文献1】特開2002−99337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来例では、操作部材の軸部に外装した上下一対の摺接部材を相異なる受け面に弾接させており、各摺接部材とその受け面との間の摺動抵抗が同じになるように設定することは困難なため、軸部の傾動方向によって摺動抵抗が異なったものになってしまうという問題があり、このことが操作感触に悪影響を及ぼす要因となっていた。また、かかる従来例では、一対の摺接部材の間に圧縮コイルばねを介設することにより、両摺接部材を上下の駆動部材に向けて弾性付勢されるようになっているため、装置全体の小型化が阻害されやすいという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、操作部材の軸部を傾動させたときに生じる摺動抵抗が傾動方向によってばらつかず、かつ装置全体の小型化が図りやすい多方向入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、開口部の周囲に受け部が設けられた規制部材と、前記開口部を貫通して外方へ延びる軸部を有する操作部材と、前記軸部が多方向へ傾動可能となるように前記操作部材を支持する支持手段と、前記軸部にその軸線方向へ移動可能に外装されて該軸部の傾動時に前記受け部に対して摺動する摺接部材と、この摺接部材を前記受け部に向けて弾性付勢する付勢手段と、前記軸部の傾動を検出する検出手段とを備えた多方向入力装置において、前記摺接部材の一面で前記受け部に弾接する摺接面が前記軸部の傾動中心を球心とする凸状球面に沿って形成されており、かつ、前記付勢手段として先端側が基端側よりも小径となるテーパ状に巻回された圧縮コイルばねを用い、この圧縮コイルばねを前記摺接部材の他面側に設けた収納空間に配置させて、前記操作部材に設けたフランジ部にて前記圧縮コイルばねの基端部を保持すると共に、前記圧縮コイルばねの先端部によって前記傾動中心から離れる向きに弾性付勢される前記摺接部材の移動を前記受け部が規制するように構成にした。
【0008】
このように構成された多方向入力装置では、圧縮コイルばねの付勢力で規制部材の受け部に弾接している摺接部材の摺接面が、操作部材の軸部の傾動中心を球心とする凸状球面に沿って形成されているため、該軸部がどの方向へ傾動しても摺接部材を受け部に沿って円滑に摺動させることができてガタを防止でき、摺接面と受け部との間の摺動抵抗が傾動方向によってばらつく虞もない。また、摺接部材の他面側(摺接面が形成されている側とは逆側)に設けた収納空間に、テーパ状に巻回された圧縮コイルばねを配置させているため、装置全体の小型化が図りやすくなる。
【0009】
上記の構成において、支持手段が、第1の回動軸を介して操作部材を軸支する駆動部材と、第1の回動軸と軸線方向を直交させた第2の回動軸を介して駆動部材を軸支する基台とを含み、この基台に規制部材が取り付けられていると、操作部材を多方向へ傾動操作可能に支持する簡素な構造が実現できる。また、基台に組み付けた操作部材の軸部に圧縮コイルばねと摺接部材を外装させてから該基台に規制部材を取り付けることができるため、組立性も良好となる。
【0010】
その際、基台を収納する筐体をさらに備え、この筐体の上蓋部に規制部材の開口部と対向して操作部材の軸部を貫通させる上部開口が設けられていると共に、規制部材が筐体の上蓋部と基台とで挟持されるようにしてあると、取付ねじ等を用いることなく簡単に規制部材を基台に固定できるため、組立性が一層向上する。この場合において、規制部材に設けた一対の位置決め突起が、基台側に設けた一対の位置決め孔に挿入されるという構成にしてあると、規制部材を基台に位置決めして取り付ける作業が極めて容易に行える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多方向入力装置は、操作部材のフランジ部に保持された圧縮コイルばねが軸部に外装された摺接部材を弾性付勢して、該摺接部材の摺接面を規制部材の受け部に弾接させていると共に、摺接部材の摺接面が軸部の傾動中心を球心とする凸状球面に沿って形成されているため、軸部がどの方向へ傾動しても摺接部材を受け部に沿って円滑に摺動させることができてガタを防止でき、摺接面と受け部との間の摺動抵抗が傾動方向によってばらつく虞もない。また、摺接部材に設けた収納空間にテーパ状に巻回された圧縮コイルばねを配置させているため、装置全体の小型化が図りやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係る多方向入力装置の分解斜視図、図2は該多方向入力装置の断面図、図3は該多方向入力装置の筐体等を除く本体部分を示す外観図、図4は該本体部分の平面図、図5は図4のA−A線に沿う断面図、図6は図4のB−B線に沿う断面図、図7は該多方向入力装置で操作レバーの近傍に配設される各部材を示す要部分解斜視図である。ただし、図4において回転モータは図示省略されている。
【0013】
これらの図に示す多方向入力装置は、自動車のセンターコンソール等に設置されて、電気制御された力覚が操作レバー1に付与されるという車載用の力覚付与型入力装置であり、操作レバー1の操作軸部1aを傾倒させることによって入力操作が行えるようになっている。かかる力覚付与型入力装置は、エアコンやオーディオやナビゲーション等の車載用制御機器の機能調整を1つの操作レバー1に集約し、この操作レバー1の手動操作によって機器の選択や機能調整等を行う際に、操作レバー1の操作量や操作方向に応じた抵抗感や推力等の外力を付与することにより、操作フィーリングを良好にして所望の操作が確実に行えるようにしたフォースフィードバック機能付きの入力装置である。
【0014】
本実施形態例に係る多方向入力装置は、その本体部分が上ケース101と下ケース102とを組み合わせてなる筐体100の内部で母基板110上に実装されており、操作レバー1の操作軸部1aが上ケース101の上蓋部101aに設けられた上部開口101bを貫通して上方へ突出している。この多方向入力装置の本体部分は、回路基板2上に立設された基台3と、基台3に回動可能に軸支されて互いの軸線方向を直交させている第1および第2の駆動レバー4,5と、第2の駆動レバー5を介して基台3に傾動可能に支持された操作レバー1と、回路基板2上に搭載されて互いの回転軸6a,7aを直交させている第1および第2の回転モータ6,7と、回路基板2上に実装されたロータリエンコーダ8,9およびフォトインタラプタ10,11と、図示せぬ制御部とを備えて概略構成されている。そして、操作レバー1を任意方向へ傾動操作すると、この操作レバー1に付与される操作力によって駆動レバー4や駆動レバー5が回転駆動されるようになっている。
【0015】
操作レバー1は、その傾動中心C(図5参照)から上方へ延びる操作軸部1aと、傾動中心Cから下方へ延びる駆動軸部1bとを有する。筐体100の上方に突出している操作軸部1aの上端部には図示せぬ操作ノブが固着される。この操作軸部1aにはテーパ面12aを有するフランジ部材12が外嵌されており、テーパ面12aに沿うテーパ状に巻回されたコイルばね14がフランジ部材12上に搭載されている。このコイルばね14は、フランジ部材12の環状内底面とドーム状の摺接部材13の内壁上面との間に圧縮状態で介設されており、摺接部材13の下面側にはコイルばね14が配置される円錐台形状の収納空間13aが形成されている。また、摺接部材13の上面側は、取付部材16を介して基台3に固定された規制部材15の受け面15aに弾接する摺接面13bとなっており、操作レバー1の傾動に伴って摺接部材13が受け面15aに対して摺動するようになっている。ここで、摺接部材13の摺接面13bは操作レバー1の傾動中心Cを球心とする凸状球面に沿って形成されており、受け面15aは摺接面13bと曲率半径が同等な凹状球面に沿って形成されている。また、摺接部材13には操作軸部1aを貫通させる中央孔13cが形成されている。これらフランジ部材12とコイルばね14および摺接部材13はいずれも上方から操作軸部1aに外挿して組み付けられている。なお、コイルばね14は下側の大径部分がフランジ部材12に保持される基端部である。また、コイルばね14の上側の先端部は、摺接部材13を操作軸部1aに沿って傾動中心Cから離す方向へ常時弾性付勢しているが、この方向への摺接部材13の移動は基台3に固定された規制部材15によって規制されている。
【0016】
一方、操作レバー1の駆動軸部1bは第1の駆動レバー4の長孔4aに挿通されている。操作レバー1のやや幅広な中央部には回転軸となるレバー軸17が挿通されており、このレバー軸17を介して操作レバー1が第2の駆動レバー5に回動可能に軸支されている。
【0017】
基台3は、2枚の支持板31,32を連結板33やスペーサ34を介して一体化したものである。一方の支持板31は平面視L字形状の金属板で、他方の支持板32は平面視W字形状の金属板である。これら両支持板31,32は、互いに対向するように配置して両端に連結板33をかしめ固定することにより強固に連結されている。また、両支持板31,32の対向間隔は、ねじ部材35を用いて固定されたスペーサ34によって精度良く規定されている。この基台3の相対向する2箇所の隅部には、それぞれ位置決め孔16aを有する取付部材16が嵌着されている。
【0018】
規制部材15には、摺接部材13の上部を露出させる円形の開口部15bが設けられており、開口部15bの周縁部の内壁が受け面15aとなっている。この開口部15bは上ケース101の上部開口101b内に露出しており、操作軸部1aが開口部15bと中央孔13cおよび上部開口101bを貫通している。また、規制部材15には、開口部15bを挟んで逆向きに横へせり出す一対の延在部15cが設けられていると共に、各延在部15cに位置決め突起15dが垂設されている。図2に示すように、これら一対の位置決め突起15dは、基台3に嵌着されている一対の取付部材16の位置決め孔16aに挿入されている。また、各延在部15cは、各取付部材16と上ケース101の上蓋部101aとによって挟持されている。
【0019】
第1の駆動レバー4には、相対向する一対の軸部41と、長孔4aを有する枠状部42と、枠状部42から起立する一側壁に突設されて先端に歯部4bを有するギヤ部43とが設けられている(図7参照)。また、枠状部42から起立する他側壁にはL字状の検出板44が固着されている。各軸部41は軸受部材45を介して基台3の上端部に回動可能に取り付けられており、これら軸部41の軸線はレバー軸17の軸線や長孔4aの長手方向と平行に設定されている。この第1の駆動レバー4は、軸部41の軸線と交差する向きに操作軸部1aが傾動操作されたときに、駆動軸部1bに駆動されて回転移動するようになっている。なお、検出板44は、第1の駆動レバー4が回転駆動されるのに伴ってフォトインタラプタ10の凹部10a内を通過するようになっている。
【0020】
また、第1の駆動レバー4の枠状部42には、舌状部18aを有する板ばね18が装着されている。この板ばね18を枠状部42に取り付けると、舌状部18aが操作レバー1の駆動軸部1bに弾接するように設定されているため、駆動軸部1bは長孔4aの内壁の一側面に軽く押し付けられた状態になっている。この板ばね18は、駆動軸部1bと長孔4aの内壁との間のガタを防止するために付設されたものである。
【0021】
第2の駆動レバー5には、相対向する一対の軸部51と、レバー軸17を介して操作レバー1を回動可能に軸支する保持部52と、保持部52の一側部に突設されて先端に歯部5aを有するギヤ部53とが設けられている(図7参照)。また、保持部52の他側部にはL字状の検出板54が固着されている。各軸部51は軸受部材55を介して基台3の上端部に回動可能に取り付けられており、これら軸部51の軸線は第1の駆動レバー4の軸線やレバー軸17の軸線と直交する向きに設定されている。この第2の駆動レバー5は、軸部51の軸線と交差する向きに操作軸部1aが傾動操作されたときに、操作レバー1に駆動されて回転移動するようになっている。つまり、第1および第2の駆動レバー4,5は互いの軸線方向を直交させた配置で基台3に軸支されており、第2の駆動レバー5を介して操作レバー1が多方向へ傾動可能となるように基台3に支持されている。なお、検出板54は、第2の駆動レバー5が回転駆動されるのに伴ってフォトインタラプタ11の凹部11a内を通過するようになっている。
【0022】
回転モータ6,7は互いの回転軸6a,7aを直交させた配置で回路基板2上に搭載されている。第1の回転モータ6の回転軸6aはロータリエンコーダ8のコード板81の中心部に連結されており、これら回転軸6aとコード板81は一体的に回転する。また、第1の駆動レバー4を回転させる操作力が付与されると、ギヤ部43を介して回転軸6aが回転駆動されるようになっている。同様に、第2の回転モータ7の回転軸7aはロータリエンコーダ9のコード板91の中心部に連結されており、これら回転軸7aとコード板91は一体的に回転すると共に、第2の駆動レバー5を回転させる操作力が付与されると、ギヤ部53を介して回転軸7aが回転駆動されるようになっている。
【0023】
ロータリエンコーダ8は、上記したコード板81と回路基板2上に実装されたフォトインタラプタ82とで構成され、コード板81の一部がフォトインタラプタ82の凹部82a内に配置されている。フォトインタラプタ82には、凹部82aを介して対向する図示せぬLED(発光素子)とフォトトランジスタ(受光素子)が備えられており、コード板81の回転情報を検知できるようになっている。同様に、ロータリエンコーダ9は、上記したコード板91と回路基板2上に実装されたフォトインタラプタ92とで構成され、コード板91の一部がフォトインタラプタ92の凹部92a内に配置されているため、このフォトインタラプタ92によってコード板91の回転情報を検知できるようになっている。
【0024】
フォトインタラプタ10には凹部10aを介して対向する図示せぬLEDとフォトトランジスタが備えられている。このフォトインタラプタ10は、第1の駆動レバー4の検出板44が凹部10a内から外れた位置にあるときにはオン信号を出力するが、第1の駆動レバー4の回転に伴って検出板44が凹部10a内へ入り込むと、LEDの光が遮蔽されるためオフ信号を出力する。同様に、フォトインタラプタ11は、第2の駆動レバー5の検出板54が凹部11a内から外れた位置にあるときにはオン信号を出力し、検出板54が凹部11a内へ入り込むとオフ信号を出力する。各フォトインタラプタ10,11から出力された信号は図示せぬ制御部に取り込まれて、駆動レバー4,5の基準位置が演算されるようになっている。さらに、この制御部にはロータリエンコーダ8,9のフォトインタラプタ82,92で検知された信号が取り込まれて、駆動レバー4,5の基準位置からの回転方向と回転量が演算されるようになっている。
【0025】
上記の制御部はメモリに記憶されたデータやプログラムに基づいて決定した制御信号を回転モータ6,7に出力する。この制御信号は操作レバー1に付与される操作フィーリングに対応する信号であり、信号の種類としては振動の発生や作動力(抵抗力または推力)の変更等がある。なお、この制御部の回路構成部品は回路基板2の底面や母基板110に実装されている。
【0026】
次に、このように構成された多方向入力装置の動作について説明する。まず、この多方向入力装置のシステムを起動(電源オン)させると、前記制御部がフォトインタラプタ10,11の検知信号を取り込んで回転モータ6,7に制御信号を出力し、これら回転モータ6,7は駆動レバー4,5を回転駆動して操作レバー1を中立位置に自動復帰させる。この場合、回転モータ6,7はフォトインタラプタ10,11の出力がオフからオンに切り替わるように駆動レバー4,5を回転駆動すればよく、操作レバー1は両フォトインタラプタ10,11の出力が共にオフからオンに切り替わった時点で中立位置となる。
【0027】
こうして操作レバー1を中立位置に自動復帰させた状態で、操作者が操作レバー1を任意方向へ傾動操作すると、その傾動方向に応じて第1の駆動レバー4や第2の駆動レバー5が操作レバー1に駆動されて回転移動する。そして、軸部41を中心に回転する第1の駆動レバー4に連動してコード板81が回転し、軸部51を中心に回転する第2の駆動レバー5に連動してコード板91が回転するため、ロータリエンコーダ8,9のフォトインタラプタ82,92によってコード板81,91の回転情報が検知され、その信号が前記制御部に取り込まれる。
【0028】
この制御部は、フォトインタラプタ10,11の検知信号やフォトインタラプタ82,92の検知信号に基づいて、駆動レバー4,5の回転方向と回転量を演算すると共に、回転モータ6,7に所定の制御信号を出力する。一例を挙げると、操作レバー1が所定方向に所定量だけ傾動操作されたとき、上記の制御信号に基づく回転駆動力が回転モータ6,7から駆動レバー4,5に伝達されて、これら駆動レバー4,5を介して操作レバー1に傾動操作に抗する作動力が付与されると、この作動力が操作レバー1を手動操作する操作者にクリック感として認識されるようになっている。
【0029】
このように本実施形態例に係る多方向入力装置は、コイルばね14の付勢力で規制部材15の受け面15aに弾接している摺接部材13の摺接面13bが、操作レバー1の傾動中心Cを球心とする凸状球面に沿って形成されており、受け面15aも摺接面13bと曲率半径が同等な凹状球面に沿って形成されているため、操作軸部1aがどの方向へ傾動しても、摺接部材13を受け面15aに沿って円滑に摺動させることができる。それゆえ、傾動操作時に操作軸部1aにガタが発生する虞がなく、摺接面13bと受け面15aとの間の摺動抵抗が傾動方向によってばらつく虞もない。また、摺接部材13の下面側に設けた収納空間13a内にテーパ状に巻回されたコイルばね14を配置させているため、装置全体の小型化が図りやすくなっている。
【0030】
また、本実施形態例に係る多方向入力装置では、操作レバー1がレバー軸17を介して第2の駆動レバー5に回動可能に軸支され、このレバー軸17と軸線方向を直交させた軸部51を介して第2の駆動レバー5が基台3に回動可能に軸支されているため、操作レバー1を多方向へ傾動操作可能に支持する簡素な構造が実現されている。また、この多方向入力装置は、組立時に、基台3に組み付けた操作レバー1の操作軸部1aにコイルばね14と摺接部材13を外装させた後、位置決め突起15dを取付部材16の位置決め孔16aに挿入することによって規制部材15を基台3に簡単に取り付けることができる。しかも、この規制部材15が上ケース101の上蓋部101aと基台3に嵌着された取付部材16とで挟持されるようになっているため、取付ねじ等を用いることなく簡単に規制部材15を基台3に固定できて、組立性が良好である。
【0031】
なお、上記の実施形態例では、コイルばね14を保持するフランジ部材12が操作軸部1aに後付けされているが、操作軸部1aと一体に形成されたフランジ部にてコイルばね14を保持してもよい。また、上記の実施形態例では、受け面15aが摺接面13bと面接触するように構成されているが、規制部材15の内壁に設けた適宜形状の受け部に摺接面13bを線接触や点接触させるという構成であってもよい。さらに、力覚付与型入力装置以外の多方向入力装置における同様のガタ防止対策に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態例に係る多方向入力装置の分解斜視図である。
【図2】該多方向入力装置の断面図である。
【図3】該多方向入力装置の筐体等を除く本体部分を示す外観図である。
【図4】該本体部分の平面図である。
【図5】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図4のB−B線に沿う断面図である。
【図7】該多方向入力装置で操作レバーの近傍に配設される各部材を示す要部分解斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 操作レバー
1a 操作軸部(軸部)
2 回路基板
3 基台
4 第1の駆動レバー
5 第2の駆動レバー(駆動部材)
6,7 回転モータ
8,9 ロータリエンコーダ
10,11 フォトインタラプタ
12 フランジ部材(フランジ部)
13 摺接部材
13a 収納空間
13b 摺接面
14 コイルばね(圧縮コイルばね)
15 規制部材
15a 受け面(受け部)
15b 開口部
15d 位置決め突起
16 取付部材
16a 位置決め孔
17 レバー軸(第1の回動軸)
51 軸部(第2の回動軸)
100 筐体
101a 上蓋部
101b 上部開口
110 母基板
C 傾動中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の周囲に受け部が設けられた規制部材と、前記開口部を貫通して外方へ延びる軸部を有する操作部材と、前記軸部が多方向へ傾動可能となるように前記操作部材を支持する支持手段と、前記軸部にその軸線方向へ移動可能に外装されて該軸部の傾動時に前記受け部に対して摺動する摺接部材と、この摺接部材を前記受け部に向けて弾性付勢する付勢手段と、前記軸部の傾動を検出する検出手段とを備えた多方向入力装置であって、
前記摺接部材の一面で前記受け部に弾接する摺接面が前記軸部の傾動中心を球心とする凸状球面に沿って形成されており、かつ、前記付勢手段として先端側が基端側よりも小径となるテーパ状に巻回された圧縮コイルばねを用い、この圧縮コイルばねを前記摺接部材の他面側に設けた収納空間に配置させて、前記操作部材に設けたフランジ部にて前記圧縮コイルばねの基端部を保持すると共に、前記圧縮コイルばねの先端部によって前記傾動中心から離れる向きに弾性付勢される前記摺接部材の移動を前記受け部が規制するようにしたことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記支持手段が、第1の回動軸を介して前記操作部材を軸支する駆動部材と、前記第1の回動軸と軸線方向を直交させた第2の回動軸を介して前記駆動部材を軸支する基台とを含み、この基台に前記規制部材が取り付けられていることを特徴とする多方向入力装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記基台を収納する筐体を備え、この筐体の上蓋部に前記開口部と対向して前記軸部を貫通させる上部開口が設けられていると共に、前記規制部材が前記上蓋部と前記基台とで挟持されるようにしたことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記規制部材に設けた一対の位置決め突起が、前記基台側に設けた一対の位置決め孔に挿入されていることを特徴とする多方向入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−44490(P2010−44490A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206847(P2008−206847)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】