説明

多段式の熱可塑性樹脂押出装置およびそれを用いた熱可塑性樹脂の押出方法

【課題】再生樹脂に含まれる揮発成分をほぼ完全に除去することで、より高品質の再生樹脂を製造することのできる多段式の熱可塑性樹脂押出装置を提供する。
【解決手段】第1の熱可塑性樹脂押出機10と、第1の熱可塑性樹脂押出機の押出口から押し出された溶融樹脂が流入する第2の熱可塑性樹脂押出機60とを備える多段式の熱可塑性樹脂押出装置Aにおいて、第1の熱可塑性樹脂押出機10の樹脂押出口50と第2の熱可塑性樹脂押出機10の樹脂取入口71とを、溶融樹脂が外気と接触しない状態で通過できる連結部100によって接続するとともに、連結部100の一部には減圧室120を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段式の熱可塑性樹脂押出装置とそれを用いた熱可塑性樹脂の押出方法に関し、より詳しくは、粉砕された熱可塑性樹脂を、再利用の目的でペレット化あるいはシート化するときに好適に用いられる多段式の熱可塑性樹脂押出装置とそれを用いた熱可塑性樹脂の押出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用および自然環境保護の見地から、包装材や容器等として一度用いられた発泡ポリエチレンや発泡ポリスチレン等の熱可塑性樹脂発泡体、あるいは容器等を打ち抜いた後の端材等であるバージン材の熱可塑性樹脂発泡体を、再度ペレット化またはシート化して、樹脂成形品の原料として再利用することが行われている。
【0003】
ペレット化あるいはシート化には、通常、押出し用のスクリューを内装したシリンダーを持つ押出機が用いられる。使用済みあるいはバージン材の熱可塑性樹脂発泡体は適度の大きさに粉砕された後、その粉砕品が押出機のホッパー内に原料として供給される。供給された粉砕原料は、シリンダー内でのスクリューの回転による送りの過程で、加熱と圧縮を受けながら溶融していく。その過程で、粉砕原料である発泡体中に残存する気体成分(外気)はシリンダーに形成したベント口から抜き出され、樹脂成分のみとなった溶融樹脂がシリンダーの押出口から押し出さる。押し出された溶融樹脂は冷却後にシート化されるか、裁断されてペレット化される。
【0004】
良質の再生樹脂ペレットあるいは再生樹脂シートを得るためには、粉砕原料中に残存する気体成分を高い割合で除去することとともに、より定量的に押し出す必要があることから、特許文献1あるいは特許文献2には、2個の押出機を直列に配列したものが記載されている。なお、特許文献1あるいは特許文献2に記載される形態の押出装置は、発泡樹脂粉砕品の再ペレット化あるいはシート化に限らず、非発泡樹脂の粉砕品の再ペレット化またはシート化にも用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−91727号公報
【特許文献2】特開平6−170920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、資源を再利用するために、一度使用した樹脂製品(市場回収品)等を押出機を用いて溶融樹脂とし、そこからペレット化あるいはシート化した再生樹脂を得るシステム、すなわち樹脂のリサイクルシステムは、今日において、重要なシステムであり、それに対する社会的要望は、今後ますます高くなることが予測される。また、ペレット化あるいはシート化した再生樹脂の用途も一層広がることが予測されることから、再生樹脂の品質についても、現在のレベル以上に高品質なもの求められるようになると思われる。
【0007】
より高品質の再生樹脂を得ようとする場合、揮発成分を可能な限り除去することが必要となる。すなわち、樹脂は、反覆する熱履歴や剪断力を受けると劣化するようになり、樹脂が分解してできる揮発成分(例えば、残留モノマー)の割合が高くなることが起こる。また、製品として樹脂製品が使用される過程で、何らかの揮発成分が樹脂製品に付着する可能性もある。
【0008】
このような揮発成分の存在は、リサイクルされる回数が比較的少ない現在のリサイクルシステムでは格別の問題はない。また、現在行われている再生樹脂の用途からも格別の問題はない。しかし、将来、より回数の多い樹脂のリサイクルが要請されるようになったときに、また、用途との関係で、より高品質のリサイクル樹脂が求められるようになったときに、再生樹脂の揮発成分を可能な限り減らすことは、考慮すべき事項となると考えられる。
【0009】
本発明は、将来に起こるであろうと予測される上記の問題を解決することを課題としており、具体的には、再生樹脂に含まれる揮発成分をほぼ完全に除去することで、より高品質の再生樹脂を製造することのできる多段式の熱可塑性樹脂押出装置と、その装置を用いた熱可塑性樹脂の押出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための本発明による多段式の熱可塑性樹脂押出装置は、原料が投入されるホッパーを有するシリンダーと該シリンダー内に供給された原料を圧縮し溶融しながら移送するスクリューと溶融した樹脂が押し出される押出口を備える第1の熱可塑性樹脂押出機と、前記第1の熱可塑性樹脂押出機の押出口から押し出された溶融樹脂を取り入れる溶融樹脂取入口を有するシリンダーと該シリンダー内に供給された溶融樹脂を移送する溶融樹脂移送用のスクリューと溶融した樹脂が押し出される押出口を備える第2の熱可塑性樹脂押出機とを少なくとも備える多段式の熱可塑性樹脂押出装置であって、前記第1の熱可塑性樹脂押出機の前記押出口と第2の熱可塑性樹脂押出機の前記溶融樹脂取入口とは溶融樹脂が外気と接触しない状態で通過できる連結部によって接続されており、前記連結部の一部には減圧室が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明による多段式の熱可塑性樹脂押出装置では、第1の熱可塑性樹脂押出機から押し出される溶融樹脂に揮発成分が含まれている場合に、溶融樹脂が連結部に設けた減圧室を通過する過程で、溶融樹脂から揮発成分は除去される。揮発成分が除去された後の溶融樹脂は第2の熱可塑性樹脂押出機を通過する過程で品質の均質化が図られるとともに、その押出口から定量排出される。その後、従来と同様の冷却処理と細断処理などが行われ、シート化あるいはペレット化した再生樹脂が形成される。製造されたペレットあるいはシートは、揮発成分がほぼ完全に除去されていることから、きわめて高品質な再生樹脂ペレットあるいは再生樹脂シートとなる。
【0012】
なお、本発明による多段式の熱可塑性樹脂押出装置において、第1の熱可塑性樹脂押出機は、原料である粉砕樹脂に対して高い圧縮力と熱を与えて溶融樹脂とすることを主目的とするものであり、前記した特許文献1に記載される特殊形状の突起を持つキージャケットをシリンダーの上流部、すなわちホッパーに近接する部分に装着することが望ましい。それにより、スクリューでの圧縮効率をより高くすることができ、粉砕樹脂の溶融樹脂化が一層推進される。また、第1の熱可塑性樹脂押出機は、スクリューがシングルの形態、ツインの形態等であってよい。さらに、通常、脱気のためのベント口がシリンダーに設けられる。
【0013】
第2の熱可塑性樹脂押出機は、揮発分の減少した溶融樹脂を温度コントロールしながらかつ定量でその押出口から押し出すことを主目的とするものである。
【0014】
本発明による多段式の熱可塑性樹脂押出装置の好ましい態様では、前記減圧室内に、そこを通過する溶融樹脂を流れ方向に複数本に分流することのできる分流手段が介装されている。この態様では、溶融樹脂は分流手段を通過することで複数本に分割され、それにより、溶融樹脂の表面積はその分割本数が増すにしたがって大きくなる。そのために、溶融樹脂から揮発成分が揮発するのを安定化させることができ、かつ揮発量も大きくすることができる。前記分流手段の具体的形状に制限はないが、例として、板状体に形成した複数本のスリットや複数個の貫通孔などが挙げられる。
【0015】
本発明による多段式の熱可塑性樹脂押出装置の好ましい態様では、前記連結部における前記第1の熱可塑性樹脂押出機の押出口と前記減圧室の入口部との間に、前記減圧室の圧力が前記第1の熱可塑性樹脂押出機内へ影響を与えるのを調整するための圧力調整手段が設けられる。この圧力調整手段を設けることにより、減圧室が存在するにもかかわらず、第1の熱可塑性樹脂押出機のヘッド圧を所定圧以上に維持することが可能となる。それにより、減圧室での減圧の影響を受けて第1の熱可塑性樹脂押出機から溶融樹脂の送り出しが不安定化するのを回避することができる。それにより、第2の熱可塑性樹脂押出機への溶融樹脂の送りを均一かつ安定化することが一層可能となる。
【0016】
前記圧力調整手段の形成は、前記連結部における前記第1の熱可塑性樹脂押出機の押出口と前記減圧室の入口部との間の管径を制御できる手段であればよく、該管路にメルトスルーザーのような邪魔板やチョークバルブを配置してもよく、あるいは、前記第1の熱可塑性樹脂押出機の押出口にスクリーンメッシュのような邪魔板を配置することで形成してもよい。
【0017】
本発明による多段式の熱可塑性樹脂押出装置において、前記減圧室内の圧力は、実際の装置において、そこを通過する溶融樹脂からどの程度まで揮発成分を除去するかを考慮して、実験的に設定することとなるが、一例として、1気圧を760mmHgとしたときに、減圧室内が10−3〜80mmHgに維持されることが挙げられる。減圧室の減圧は、例えば真空ポンプを用いて減圧室を真空引きすることで確立することができるが、高い真空度を長時間にわたり維持しようとすると、装置の運転コストが大きくなるので、特に、0.1〜50mmHgの範囲に維持することが好ましい。
【0018】
上記した本発明による多段式の熱可塑性樹脂押出装置の第2の形態において、多段式の熱可塑性樹脂押出装置は、前記第2の熱可塑性樹脂押出機の前記シリンダーは前記溶融樹脂取入口から前記押出口側とは反対方向に所定距離だけ離れた位置にシール樹脂取入口を有しており、前記溶融樹脂移送用のスクリューには前記シール樹脂取入口から供給されるシール樹脂を前記溶融樹脂取入口に向けて移送するシール樹脂移送スクリュー部が一体に備えられており、前記シール樹脂移送スクリュー部のピッチは前記溶融樹脂移送用のスクリューのピッチよりも小さいことを特徴とする。
【0019】
本発明による多段式の熱可塑性樹脂押出装置において、運転中に、前記減圧室を大気圧よりも低い圧力に維持するために、例えば真空ポンプによる真空引きが行われる。減圧室は第2の熱可塑性樹脂押出機のシリンダー内に連通しており、第2の熱可塑性樹脂押出機から再生溶融樹脂を長時間にわたって押し出し処理をしているときに、減圧室の真空引き操作により、溶融樹脂移送用のスクリュー上流側からシリンダーを通して、外気が減圧室に引き込まれることが起こり得る。このような外気の引き込みが起こると、減圧室を一定の高真空状態に維持することが困難となり、揮発成分の除去が不安定となるとともに、溶融樹脂の押し出し状態も不安定となる恐れがある。
【0020】
それを回避するために、前記第2の形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置では、第2の熱可塑性樹脂押出機のシリンダーにシール樹脂取入口を設けると共に、溶融樹脂移送用のスクリューに該シール樹脂取入口から供給されるシール樹脂を溶融樹脂取入口側に向けて移送するシール樹脂移送スクリュー部を一体に備えるようにし、該シール樹脂移送スクリュー部のピッチを溶融樹脂移送用のスクリューのピッチよりも小さくすることを特徴としている。
【0021】
シール樹脂取入口から供給されるシール樹脂は、シール樹脂移送スクリュー部によって溶融樹脂取入口に向けて移送される過程で、加熱と圧縮と剪断を受けて溶融樹脂となる。それにより、シール樹脂移送スクリュー部とシリンダーの内壁との間には溶融したシール樹脂による気密部が形成される。そのために、減圧室の真空引き時に、外気が溶融樹脂移送用のスクリューの上流側からシリンダーを通して減圧室内に流入するのを確実に阻止することができる。それにより、本発明による多段式の熱可塑性樹脂押出装置では、減圧室の圧力を所要の高真空状態に維持することが容易となり、揮発成分の高い除去効率を達成でき、結果として、溶融樹脂の押し出し状態をより安定とすることができる。
【0022】
上記第2の形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置の好ましい態様では、前記シール樹脂移送スクリュー部の移送溝の溝深さは移送開始側では深く終端側では浅くされていることを特徴とする。この形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置では、シール樹脂移送スクリュー部のピッチは溶融樹脂移送用のスクリューのピッチよりも小さいことに加えて、移送開始側では深く終端側では浅くされているので、シール樹脂移送スクリュー部で移送されるシール樹脂の圧縮および溶融化を一層高い効率で進行させることができ、より高い封止効果が得られる。
【0023】
上記第2の形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置の好ましい態様において、シール樹脂移送スクリュー部の移送溝を、溝深さが最も深いフィード部と、溝深さが次第に浅くなるコンプレッション部とで構成としてもよい。この態様では、前記フィード部に対向してシール樹脂取入口を設けることで、より多くの量のシール樹脂を安定的にシール樹脂移送スクリュー部に取り込むことができ、さらに溝深さが次第に浅くなるコンプレッション部を送り方向下流側に備えることで、取り込んだシール樹脂の圧縮および溶融化をさらに高い効率で進行させることができる。コンプレッション部の送り方向下流側に溝深さの最も浅いメタリング部を所定の長さで備えるようにしてもよく、その場合には、溶融樹脂移送用のスクリューへ供給される溶融したシール樹脂の量を確実に定量化することができる。
【0024】
第2の形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置の一態様では、シール樹脂移送スクリュー部の後端部とシリンダーとの間にはメカニカルシール構造が形成される。この態様では、シール樹脂取入口から供給されるシール樹脂がシール樹脂移送スクリュー部の後端側から漏れ出るのを確実に阻止することができる。もちろん、メカニカルシール構造に変えて、リップシール構造など適宜の封止構造を備えることも可能であるが、封止すべき領域が高温環境におかれることから、メカニカルシール構造を備えることは特に好ましい。
【0025】
なお、第2の形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置において、シール樹脂は、原料樹脂と同様に、適宜の大きさに粉砕された後、シール樹脂取入口から投入される。投入されシール樹脂移送スクリュー部で溶融したシール樹脂は、第2の熱可塑性樹脂押出機の溶融樹脂取入口から取り込まれた溶融樹脂と一体に合流した後、溶融樹脂移送用のスクリューによって混練されながら、第2の熱可塑性樹脂押出機の押出口から押し出される。したがって、単に封止効果を得るためにはシール樹脂には任意の樹脂材料を用いることができるとしても、高品質の再生樹脂を製造するためには、第1の熱可塑性樹脂押出機の原料ホッパーに投入される原料樹脂と同種の樹脂材料をシール樹脂として用いることはきわめて好ましい。その際に、シール樹脂はペレットの状態または溶融した状態でシール樹脂移送スクリュー部に供給してよい。
【0026】
本発明は、上記第2の形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置による熱可塑性樹脂の押出方法において、前記第1の熱可塑性樹脂押出機のホッパーに供給される粉砕樹脂と、前記第2の熱可塑性樹脂押出機の前記シール樹脂取入口に投入されるシール樹脂とに、同種の熱可塑性樹脂材料を用いることを特徴とする。この押出方法をとることにより、より高品質の再生樹脂を効果的に得ることができる。
【0027】
上記の押出態様において、押出運転開始当初は、シール樹脂取入口に投入するシール樹脂には、別途用意しておいた同種のシール樹脂を用い、第2の熱可塑性樹脂押出機から安定した状態で再生樹脂が得られるようになった時点で、第2の熱可塑性樹脂押出機から押し出される樹脂をペレット化したものや、シート化した後の粉砕品の一部を使用して、もしくは溶融した状態で、第2の熱可塑性樹脂押出機のシール樹脂取入口に投入してシール樹脂として用いることは、より好ましい態様である。この方法を採用することにより、揮発分が除去された再生樹脂をシール樹脂として用いることとなるので、再生効率を向上させ、かつ一層容易に、安定して高品質の再生樹脂を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明による多段式の熱可塑性樹脂押出装置を用いることにより、揮発成分がほぼ完全に除去された高品質の再生樹脂を安定して得ることができ、その再生効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による第1の形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置の一例を説明する図。
【図2】減圧室に配置される分流手段のいくつかの例を示す図。
【図3】シリンダーの上流部に装着されるキージャケットの一例を示す図。
【図4】本発明による第2の形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置の一例を説明する図。
【図5】図5に示す多段式の熱可塑性樹脂押出装置におけるシール樹脂押出部分を説明するための拡大図。
【図6】比較実験のために用いた多段式の熱可塑性樹脂押出装置を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、2台の押出機を連結して使用する場合を例として、本発明による多段式の熱可塑性樹脂押出装置の好適な実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0031】
第1の形態の熱可塑性樹脂押出装置A1は、図1に示すように、第1の熱可塑性樹脂押出機10と第2の熱可塑性樹脂押出機60とを備える。2つの熱可塑性樹脂押出機10、60それ自体は、前記した特許文献1または2に記載される従来公知の押出機であってよい。この例において、第1の熱可塑性樹脂押出機10は、粉砕樹脂である原料が投入されるホッパー20と、該ポッパー20の原料出口側が接続するシリンダー30と、シリンダー30内に供給された原料を圧縮し溶融しながら移送するスクリュー40と、溶融した樹脂が押し出される押出口50とを備える。図示しないが、シリンダー30の外周には、原料を加熱溶融するためのバンドヒーター等の適宜の加熱手段が配設されている。
【0032】
ホッパー20は、シリンダー30内に粉砕樹脂である原料を供給できる形態のものであれば任意の形態のものを用いうる。図示の例では、例えば発泡樹脂の粉砕品である原料を前記シリンダー30内に一定量だけ圧入できるように、ホッパー20内に供給スクリュー21を有している。この形態のホッパーの一例として、特許第2526417号公報に記載されているものを使用することができる。
【0033】
シリンダー30は円筒体であり、内部に適宜の駆動源31で回転駆動されるスクリュー40が介装されている。シリンダー30の上流側には前記したポッパー20の原料出口側が開口しており、供給スクリュー21によって粉砕樹脂である原料が定量供給される。そして、シリンダー30内に供給された原料は、スクリュー40によって、図で左方向に向けて移送される。
【0034】
この例において、シリンダー30は、図3に一例を示すような第1シリンダー(キージャケット:押出機のシリンダーに溝を付けたもので、原料投入口から樹脂の流れ方向に数本から数十本の溝を入口から徐々に浅くするようにして設けている)32と、そこに接続する第2のシリンダー33とで構成される。図3(a)に長手方向の断面図を、図3(b)に側面図を示すように、第1シリンダー32は上流側に原料供給口34を有し、そこに前記ポッパー20の原料出口側が接続している。そして、この例において、第1シリンダー32の原料移送方向で見て上流部分の内周部には、第1シリンダー32の内径より大なる径の底面を有し上記移送方向に沿ってすぼまる円錐面を基底面としてシリンダーの内方側へ突出するとともに、上記移送方向に沿って伸び、かつ先端側程横幅が狭くしかも下流に至る程その高さが低い形状を持つ突起35が複数列、所定角度間隔をあけて突設されている。なお、このような形態の突起を突設してなる第1シリンダー32は、前記した特許文献1に記載されたものであり、その形状も、図3に示すものに限らない。
【0035】
第1シリンダー32の原料移送方向後端部と第2のシリンダー33の原料移送方向先端部は、双方のフランジ36と41とで一体に接続しており、第2のシリンダー33の原料移送方向後端部が押出口50とされている。
【0036】
スクリュー40は、第1シリンダー32と第2のシリンダー33内のほぼ全長にわたるようにして配置されており、支軸部42と支軸部42の外周面に取り付けられた螺旋翼43とを備える。支軸部42は、この例では、原料移送方向上流側の第1の支軸部42aと、それに接続する下流側の第2の支軸部42bとで構成されている。第1の支軸部42aは上流側で小径であり、下流側に向けて次第に拡径している。第2の支軸部42bは上流側で小径であり、下流側に向けて次第に拡径している。そして、第2のシリンダー33における前記第1の支軸部42aと第2の支軸部42bの接続部近傍には、空気抜きとして機能するベント口37が設けられている。
【0037】
押出口50は、溶融した樹脂がシリンダー30から押し出される部分であり、シリンダー30の内径よりは十分に小さい口径とされている。必要な場合には、押出口50には適宜のスクリーンが介装され、溶融樹脂中の固定物を排除する。また、押出口50の近傍には、圧力計51が設けてあり、溶融樹脂の押出圧力を計測する。
【0038】
第2の熱可塑性樹脂押出機60も、シリンダー70と、溶融樹脂を移送するためのシリンダー70内に配置されたスクリュー80と、溶融樹脂の押出口90を備える。スクリュー80は適宜の駆動源61で回転駆動される。また、図示しないが、シリンダー70の外周には、溶融樹脂の温度をコントロールするためのバンドヒーター等の適宜の加熱手段が配設されている。シリンダー70は上流側に溶融樹脂取入口71を有しており、前記第1の熱可塑性樹脂押出機10の押出口50から押し出された溶融樹脂が、後に説明する連結部100を通って、溶融樹脂取入口71に入り込む。入り込んだ溶融樹脂は、溶融樹脂移送用のスクリュー80の回転によって定量的に押出口90に送られ、押出口90から図示しない金型を通過して定量排出される。
【0039】
図示の例において、押出口90にも適宜の交換可能なスクリーンチェンジャー91が介装され、溶融樹脂中の固定物を排除する。また、スクリーンチェンジャー91の下流にはギアポンプ92が取り付けてあり、溶融樹脂の押出量の一層の定量化を図っている。なお、ここでも、スクリーンチェンジャー91やギアポンプ92は省略可能である。押出口90から金型を通して押し出される溶融樹脂は、図示しない冷却装置で冷却されてシート化されるか、さらに図示しないカッターにより、ペレット状に切断される。
【0040】
次に、連結部100について説明する。連結部100は、第1の熱可塑性樹脂押出機10における前記した押出口50に接続する管路部110と、該管路部110の下流側端111が開放する減圧室120とで構成される。そして減圧室120の下流側端が前記したシリンダー70の樹脂取り入れ口71に接続している。連結部100は、全体が密閉構造とされており、内部を通過する溶融樹脂が外気と接触することなく通過できるようにされている。
【0041】
管路部110の口径は押出口50の口径と同じまたはほぼ同じとされており、必須ではないが、この例では、途中に管路部110を通過する溶融樹脂に作用する圧力を調整することのできる圧力調整手段112が設けられている。圧力調整手段112は、管路部110の口径を可変に制御することのできるチョークバルブであることは、構成の容易さや作業のし易さの観点から好ましいが、これに限らず、管路部にメルトスルーザーのような邪魔板を配置してもよい。なお、この圧力調整手段は、図示の例のよう管路部110にではなく、第1の熱可塑性樹脂押出機10の押出口50にブレーカープレートや前記したスクリーンチェンジャー91にスクリーンメッシュのような邪魔板を配置することによっても、所期の目的を達成することができる。
【0042】
前記した減圧室120は、図示しない真空ポンプに接続しており、図示しない制御装置によって、室内は所要に減圧した状態に維持される。さらに、必須ではないが、図示の例では、減圧室120内に開放している管路部110の下流側端111には、分流手段130が取り付けられている。分流手段130は、管路部110から1本の流れとして流出してくる溶融樹脂を複数本の流れに分流するものであって、分流することにより、減圧室120内の減圧した状態に晒される溶融樹脂の表面積を大きくしている。
【0043】
図2は、分流手段130のいくつかの具体例を示している。図2(a)は、管路部110の下端部に取り付けられた分流手段130の側面図である。この例で、分流手段130は円筒状部分131を有しており、該円筒状部分131を閉鎖する底板132には、図2(b)に示すように、多数個の円形あるいは楕円形等の小さな開口133が形成されている。この開口の個数に相当する数に、管路部110からの溶融樹脂は分流される。図2(c)は前記底板132に多数個のスリット134を形成している。この例では、スリット134の本数に応じて溶融樹脂は分流される。
【0044】
図2(d)(e)は、分流手段130の全体形状が箱型の場合での例であり、矩形状をなす底板132に、多数個のスリット134が形成されている。この場合でも、スリット134の本数に応じた数に溶融樹脂は分流される。
【0045】
次に、上記第1の形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置A1の作用を説明する。最初に、リサイクルしようとする樹脂材料を適宜の大きさに粉砕する。樹脂材料は発泡樹脂でもよく非発泡樹脂でもよい。発泡樹脂の粉砕品を原料として用いる場合には、図1に示したような、供給スクリュー21を備えた押し込み型のホッパー20を用いることが望ましいが、供給スクリュー21を備えないポッパーを用いることもできる。
【0046】
粉砕樹脂である原料は、ホッパー20からシリンダー30内に供給される。供給された原料は、図示しない加熱装置により加熱されながら、スクリュー40によってシリンダー30内を押出口50に向けて送られる。原料には、スクリュー40の形状に応じた圧縮力が作用し、その圧縮と剪断力により、粉砕された樹脂原料は次第に減容しかつ溶融する。発泡樹脂の粉砕品が原料の場合には、原料からの脱気が次第に進行する。第1シリンダー32と第2シリンダー33との接続部において一時的に作用する圧力が低くなり、原料内の空気や水分や揮発成分などの大部分はベント口37から脱気される。
【0047】
脱気された溶融樹脂は、シリンダー30の押出力によって、シリンダー30の押出口50から連結部100の管路部110内に流入し、さらに、管路部110内を通過してその下流側端111から減圧室120内に押し出される。減圧室120内の前記押出口には分流手段130が設けてあり、管路部110から1本の流れとして押し出されてくる(流出してくる)溶融樹脂は複数本に分流される。それにより、溶融樹脂の表面積は分流本数に応じて大きくなる。
【0048】
一方、減圧室120内は真空ポンプの作用に所要の真空度に減圧されており、表面積の大きくなった溶融樹脂は、減圧した状態に晒される。それにより、溶融樹脂の表面および内部に存在する揮発成分は、樹脂から効果的に除去される。そして、揮発成分が除去された後の溶融樹脂が、第2の熱可塑性樹脂押出機60の樹脂取り入れ口71からそのシリンダー70内に流入し、入り込んだ溶融樹脂は、溶融樹脂移送用のスクリュー80の回転によって定量的に押出口90に送られて、押出口90をとおり必要な場合に設けられる図示しない金型から定量排出される。押出口90から定量排出される溶融樹脂は、揮発成分が除去されたものであり、品質の高い再生樹脂が得られる。
【0049】
なお、図示の例において、図3に示すような特殊な形態の突起35を第1シリンダー(キージャケット)32の一部に備えることで、スクリュー40の距離に対する圧縮効果を高くすることができる利点がある。しかし、原料の種類によっては、その使用を省略することもできる。
【0050】
また、管路部110の途中に圧力調整手段112を設けることにより、減圧室120内の圧力によって第1の熱可塑性樹脂押出機10内が影響を受けるのを遮断することが可能となり、第1の熱可塑性樹脂押出機10内での所要の圧力を維持することが可能となる。なお、圧力計51は溶融樹脂の押出圧力を計測するものであり、もし、計測値が低下するような場合には、減圧室120内の圧力による影響を第1の熱可塑性樹脂押出機10内が受けているものと判断して、圧力調整手段112を適宜調整し、影響を遮断する。一例として、第1の熱可塑性樹脂押出機10のヘッド圧を例えば5kg/cm以上に維持するように、圧力調整手段112を適宜調整する。
【0051】
減圧室120は、十分に揮発成分を真空引きできる空間を持ち、かつ複数に分流した樹脂の流れが互いに接触しないだけの大きさを持つようにすることが望ましい。また、分流した溶融樹脂が分流手段130から出て第2の熱可塑性樹脂押出機60のスクリュー80に接触するまでの滞留時間は、一般的に1秒以上、好ましくは1.5秒以上が好ましい。この滞留時間は、減圧室120の形状や大きさ、さらには押出量の制御によって、調整することができる。減圧室120内の滞留時間が不足する場合は、金網等の邪魔装置をセットし、必要ならこれを多段にセットし、滞留時間を調整することができる。
【0052】
次に、図4および図5を参照して、本発明による第2の形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置A2について説明する。第2の形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置A2は、前記溶融樹脂移送用のスクリュー80の送り方向上流側にシール機構Bをさらに備える点を特徴とする。他の構成は、第1の形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置A1と同じであり、同じ符号を付すことで、詳細な説明は省略する。
【0053】
前記シール機構Bは、前記溶融樹脂移送用のスクリュー80の送り方向上流側に同じ回転軸心を持つようにして一体形成されたシール樹脂移送スクリュー部82と、該シール樹脂移送スクリュー部82の部分に対応するシール樹脂用シリンダー部72とを備える。そして、シール樹脂移送スクリュー部82のピッチは溶融樹脂移送用のスクリュー80のピッチよりも小さくされている。また、前記シリンダー70は、前記シール樹脂移送スクリュー部82の部分に対応するシール樹脂用シリンダー部72と、溶融樹脂移送用のスクリュー80の部分に対応する溶融樹脂用シリンダー部73とで構成される。そして、図5に示すように、シール樹脂用シリンダー部72の前方端と溶融樹脂用シリンダー部73の後方端とは双方のフランジ74と75とで一体に接続されている。シリンダー70は全体が1つの部材として形成されていてもよい。
【0054】
前記した溶融樹脂取入口71は、前記溶融樹脂用シリンダー部73の上流側端部近傍に形成されており、溶融樹脂取入口71から前記押出口90側とは反対方向に所定距離だけ離れた位置において、すなわち、溶融樹脂取入口71とスクリューの軸受け部77との間において、前記シール樹脂用シリンダー部72の上流側端部近傍に、シール樹脂取入口76が形成されている。さらに、前記シール樹脂移送スクリュー部82の端部には、前記シール樹脂用シリンダー部72との間の隙間を封止するための、例えばメカニカルシールやリップシールのような適宜の封止手段78が設けられている。
【0055】
図5に示すように、この例において、前記シール樹脂移送スクリュー部82に連続状に形成される送り溝は、3つの領域82a、82b、82cに区分されている。領域82aは前記シール樹脂取入口76近傍に対応する領域であり、溝深さが最も深くされている。この領域はフィード部と呼ばれる。領域82bは、前記領域82aの送り方向下流側に続く領域であり、溝深さが下流側に向けて次第に浅くなるようにされている。この領域はコンプレッション部と呼ばれる。領域82c、前記領域82bの送り方向下流側に続く領域であり、溝深さが最も浅くかつ全領域に亘って一体の深さである。この領域はメタリング部と呼ばれる。なお、領域82cは省略することもできる。
【0056】
さらに、前記シール樹脂取入口76には、ホッパー62が取り付けてあり、ホッパー62内に充填された適宜のシール樹脂が、シール樹脂取入口76を通って、シール樹脂移送スクリュー部82の前記領域82aの部分(フィード部)に供給される。供給されたシール樹脂は、領域82b(コンプレッション部)を通過するときに圧縮と剪断力を受けて次第に減容しかつ溶融する。そして、溶融した樹脂は前記領域82c(メタリング部)を通過することで定量化され、定量の溶融樹脂が溶融樹脂移送用のスクリュー80の最上流域に流入する。溶融したシール樹脂により、シール樹脂移送スクリュー部82の外周および溝とシール樹脂用シリンダー部72の内周面の間には、気密に封止された状態が形成される。
【0057】
溶融樹脂移送用のスクリュー80の最上流域に流入した前記溶融したシール樹脂は、前記連結部100を通って溶融樹脂取入口71から溶融樹脂用シリンダー部73内に流入する溶融樹脂と合流した後、溶融樹脂移送用のスクリュー80によって混練されながら、第2の熱可塑性樹脂押出機60の押出口90から押し出される。
【0058】
溶融樹脂が押出口90から連続的に定量排出されているときにも、前記した減圧室120内は真空ポンプの作用で所要の真空度に継続して減圧されている。減圧室120の減圧度合いによって、第2の熱可塑性樹脂押出機60の樹脂取入口71と駆動源61の間の領域から外気が減圧室120内に引き込まれる恐れがある。それを回避するために、第2の形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置A2では、前記したホッパー62からシール樹脂取入口76を通って、シール樹脂がシール樹脂用シリンダー部72内に供給される。供給されたシール樹脂は、前記したように、シール樹脂移送スクリュー部82によってシール樹脂用シリンダー部72内を移動する過程で、加熱と圧縮と剪断を受けることで高圧の溶融樹脂となり、その溶融したシール樹脂によって、シール樹脂移送スクリュー部82の外周および溝とシール樹脂用シリンダー部72の内周面の間は、気密に封止された状態となる。それによって、外気が減圧室120内に流入するのを確実に阻止することができる。
【0059】
第2の形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置A2による熱可塑性樹脂の押し出しにおいて、第2の熱可塑性樹脂押出機60のシール樹脂取入口76から供給するシール樹脂の種類は、ホッパー20からシリンダー30内に供給される粉砕樹脂と同種の樹脂である。樹脂種が同じであることから、高品質の再生樹脂を得ることができる。再生樹脂が押出口90から連続的に定量排出されるようになった時点で、押出口90から排出される再生樹脂をペレット化したもの、あるいはシート化したものを粉砕したものの一部などを使用して、第2の熱可塑性樹脂押出機60のシール樹脂取入口76から供給する方法は、再生効率を向上させられるのでより好ましく、さらに高品質の再生樹脂を得ることができる。
【0060】
第2の熱可塑性樹脂押出機60のシール樹脂取入口76から供給するシール樹脂の量は、運転時に、溶融樹脂によって、シール樹脂移送スクリュー部82の外周および溝とシール樹脂用シリンダー部72の内周面の間に外気が減圧室120に引き込まれない程度に気密にかつ封止状態が形成されるだけの量であることが必要である。ホッパー20からシリンダー30内に供給される前記樹脂100重量部に対して、シール樹脂4〜20重量部程度使用することが好ましい。
【実施例】
【0061】
次に、実施例と比較例によって本発明の優位性を説明する。
【0062】
[材料の調整]
未使用のPSP(発泡スチロール)成形品およびその端材を粉砕したフレーク50kgに、揮発成分に相当するものとしてトルエンおよびエタノールをブレンドし、それを押し出し用フレークに混合して、約トルエン50ppm、エタノール50ppmになるように薄め、トータル100ppm揮発分の混合フレークを押出原料として用いた。
【0063】
[試験]
図1に基づき説明した構成を備えた第1の形態の熱可塑性樹脂押出装置A1を用い、その原料を表1および表2に示す条件で加圧溶融して、第2の熱可塑性樹脂押出機60から押し出される樹脂の含まれる揮発成分を測定した(実施例1〜13)。ただし、第2の熱可塑性樹脂押出機60の押出口90には、スクリーンチェンジャー91およびギアポンプ92は取り付けずに、先端がノズル形状の金型とスリット状の金型とを選択的に取り付けた。
【0064】
また、図6に示すように、図1に基づき説明した構成を備えた第1の形態の熱可塑性樹脂押出装置A1から、減圧室120を除去し、かつ圧力調整手段112であるチョークバルブを全開とした状態の装置を用い、表3に示す条件で加圧溶融して、第2の熱可塑性樹脂押出機60から押し出される樹脂に含まれる揮発成分を測定した(比較例)。なお、図6において、図1の示したものと同じ機能を奏する部材には、同じ符号を付している。
【0065】
[試験結果]
試験結果を表4に示した。
なお、表1、表2、表3において、A〜Kはそれぞれ次の内容を意味する。
A:押出量(Kg/h)であり、第2の熱可塑性樹脂押出機60の押出口90に取り付けた金型からの溶融樹脂の押出量である。
B:第1の熱可塑性樹脂押出機10の形態とスクリュー40の外径mmを示す。
C:用いる場合での第1シリンダー(キージャケット)32における突起35の寸法mmであり、幅×厚み×長さで示している。
D:圧力調整手段112であるチョークバルブに作用する圧力(kg/cm)であり、圧力計51の測定値である。
E:分流手段130における底板132に形成した開口のトータルの面積(cm)であり、「列」はスリットであることを示す。
F:円筒形である減圧室120の内法寸法mmであり、直径×長さで示される。
G:減圧室120内の真空度(mmHg)である。
H:第2の熱可塑性樹脂押出機60の形態とスクリュー80の外径mmを示す。
I:第2の熱可塑性樹脂押出機60内の樹脂温度(℃)を示す。
J:第1の熱可塑性樹脂押出機10と第2の熱可塑性樹脂押出機60とを接続する連結部100の管路部110の内径φ(mm)を示す。
K:第2の熱可塑性樹脂押出機60の押出口90に取り付けた金型の形状と寸法であり、ノズルの場合は内径φ(mm)を示し、スリットの場合は高さmm×幅mmを示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
[考察]
1.比較例での揮発成分量は85ppmであり、本発明でいう「減圧室」を備えない多段式の熱可塑性樹脂押出装置では、得られる再生樹脂から揮発成分はほとんど除去されていないことがわかる。一方、本発明による減圧室を備えた多段式の熱可塑性樹脂押出装置を用いる場合には、揮発成分量は最大で8.3ppm(実施例10)となっており、高い除去率が得られている。
【0071】
また、上記の実施例から、本発明において、減圧室内に上記した分流手段を介装すること、連結部における第1の熱可塑性樹脂押出機の押出口と減圧室の入口部との間に減圧室の圧力が第1の熱可塑性樹脂押出機内へ影響を与えるのを遮断するための圧力調整手段を設けること、第1の熱可塑性樹脂押出機のシリンダーに第1シリンダー(キージャケット)32を備えること、減圧室内の圧力を10−3〜80mmHgに維持すること、等は、より好ましい態様であることがわかる。
【符号の説明】
【0072】
A1…第1の形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置、
A2…第2の形態の多段式の熱可塑性樹脂押出装置、
B…シール機構、
10…第1の熱可塑性樹脂押出機、
20…粉砕樹脂である原料が投入されるホッパー、
30…第1の熱可塑性樹脂押出機のシリンダー、
32…第1シリンダー(キージャケット)、
35…第1シリンダー(キージャケット)に形成された突起、
37…ベント口、
40…シリンダー内に供給された原料を圧縮し溶融しながら移送するスクリュー、
50…溶融樹脂の押出口、
51…圧力計、
60…第2の熱可塑性樹脂押出機、
62…シール樹脂が投入されるホッパー、
70…第2の熱可塑性樹脂押出機のシリンダー、
71…樹脂取入口、
72…シール樹脂用シリンダー部、
73…溶融樹脂用シリンダー部、
76…シール樹脂取入口、
77…スクリューの軸受け部、
78…封止手段、
80…溶融樹脂移送用のスクリュー、
82…シール樹脂移送スクリュー部、
82a、82b、82c…シール樹脂移送スクリュー部の3つの領域、
90…溶融樹脂の押出口、
100…連結部、
110…連結部の管路部、
112…圧力調整手段(チョークバルブ)、
120…管路部の下流側端が開放する減圧室、
130…分流手段、
131…分流手段の円筒状部分、
132…円筒状部分を閉鎖する底板、
133…底板に形成された開口、
134…底板に形成されたスリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料が投入されるホッパーを有するシリンダーと該シリンダー内に供給された原料を圧縮し溶融しながら移送するスクリューと溶融した樹脂が押し出される押出口を備える第1の熱可塑性樹脂押出機と、前記第1の熱可塑性樹脂押出機の押出口から押し出された溶融樹脂を取り入れる溶融樹脂取入口を有するシリンダーと該シリンダー内に供給された溶融樹脂を移送する溶融樹脂移送用のスクリューと溶融した樹脂が押し出される押出口を備える第2の熱可塑性樹脂押出機とを少なくとも備える多段式の熱可塑性樹脂押出装置であって、
前記第1の熱可塑性樹脂押出機の前記押出口と第2の熱可塑性樹脂押出機の前記溶融樹脂取入口とは溶融樹脂が外気と接触しない状態で通過できる連結部によって接続されており、前記連結部の一部には減圧室が形成されていることを特徴とする多段式の熱可塑性樹脂押出装置。
【請求項2】
前記減圧室内には、そこを通過する溶融樹脂を流れ方向に複数本に分流することのできる分流手段が介装されていることを特徴とする請求項1に記載の多段式の熱可塑性樹脂押出装置。
【請求項3】
前記連結部における前記第1の熱可塑性樹脂押出機の押出口と前記減圧室の入口部との間には、前記減圧室の圧力が前記第1の熱可塑性樹脂押出機内へ影響を与えるのを調整するための圧力調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の多段式の熱可塑性樹脂押出装置。
【請求項4】
1気圧を760mmHgとしたときに、前記減圧室内の圧力が10−3〜80mmHgに維持されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多段式の熱可塑性樹脂押出装置。
【請求項5】
前記第2の熱可塑性樹脂押出機の前記シリンダーは前記溶融樹脂取入口から前記押出口側とは反対方向に所定距離だけ離れた位置にシール樹脂取入口を有しており、前記溶融樹脂移送用のスクリューには前記シール樹脂取入口から供給されるシール樹脂を前記溶融樹脂取入口に向けて移送するシール樹脂移送スクリュー部が一体に備えられており、前記シール樹脂移送スクリュー部のピッチは前記溶融樹脂移送用のスクリューのピッチよりも小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多段式の熱可塑性樹脂押出装置。
【請求項6】
前記シール樹脂移送スクリュー部の移送溝の溝深さは移送開始側では深く終端側では浅くされていることを特徴とする請求項5に記載の多段式の熱可塑性樹脂押出装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の多段式の熱可塑性樹脂押出装置による熱可塑性樹脂の押出方法であって、前記第1の熱可塑性樹脂押出機のホッパーに供給される粉砕樹脂と、前記第2の熱可塑性樹脂押出機の前記シール樹脂取入口に投入されるシール樹脂とに、同種の熱可塑性樹脂材料を用いることを特徴とする熱可塑性樹脂の押出方法。
【請求項8】
請求項7に記載の多段式の熱可塑性樹脂押出装置による熱可塑性樹脂の押出方法であって、前記第2の熱可塑性樹脂押出機から押し出される樹脂の一部を前記第2の熱可塑性樹脂押出機の前記シール樹脂取入口に投入されるシール樹脂として用いることを特徴とする熱可塑性樹脂の押出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−25153(P2012−25153A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124371(P2011−124371)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000239138)株式会社エフピコ (98)
【Fターム(参考)】