説明

多液混合装置及び多液混合方法

【課題】 作業者の負担を軽減する
【解決手段】 塗装ブース内の温度と湿度の値をセンサ21,22で測定し、温度と湿度の値に応じて予め作成された複数の混合比データの中から、センサ21,22の測定値と対応する混合比データを読み出し、この読み出した混合比データに基づき、ポンプ13A,13Bと切換弁12の作動が制御され、主剤とシンナーの流量を個別に変更して最適な混合比の塗料が得られる。作業者が塗膜表面を目視で確認する必要がないので、作業者の負担が軽減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多液混合装置及び多液混合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の液剤を混合して塗料を得る方法として、主剤と硬化剤とシンナーを所定の比率で混合することが行われている。この場合、シンナーの比率を変えると塗膜表面の仕上がり状態が変わるのであるが、最良の仕上がりを得るためのシンナーの比率は、塗装ブース内の環境によって異なる。
【0003】
尚、複数の液剤を混合する技術については、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2004−141800公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、塗膜表面の状態を目視で確認し、その視認情報に基づいて作業者が適宜にシンナーの比率を変える作業を行っていた。そのため、良好な塗膜の仕上がりを得るためには、作業者に高度の熟練が要求され、作業者にとって負担が大きいという問題があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、作業者の負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、複数の液剤を所定流量ずつ供給することにより所定の混合比で混合して塗料を得る多液混合方法であって、塗装ブース内の温度と湿度のうち少なくともいずれか一方の値をセンサで測定し、温度と湿度のうち少なくともいずれか一方の値に応じて予め作成された複数の混合比データの中から、前記センサの測定値と対応する混合比データを読み出し、この読み出した混合比データに基づいて複数の液剤の流量を個別に変更するところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、複数の液剤を所定流量ずつ供給することにより所定の混合比で混合して塗料を得る多液混合装置であって、複数の液剤の流量を個別に変更可能な流量変更手段と、塗装ブース内の温度と湿度のうち少なくともいずれか一方の値を測定するセンサと、前記温度と湿度のうち少なくともいずれか一方の値に応じて予め作成された複数の混合比データが保存されている記憶手段と、前記複数の混合比データの中から前記センサの測定値と対応する混合比データを読み出し、この読み出した混合比データに基づいて前記流量変更手段を制御する制御手段とを備えているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
<請求項1及び請求項2の発明>
塗装ブース内の温度と湿度のうち少なくとも一方の測定値に基づき、複数の液剤が、予め設定されている混合比で混合される。本願発明は、液剤の混合比の変更要因が塗装ブース内の温度や湿度であるという知見に基づいて創案されたものであり、本発明によれば、作業者が塗膜表面を目視で確認する必要がないので、作業者の負担が軽減される。また、塗装を行う前に好適な混合比を知ることができるので、塗装不良品の発生を未然に防ぐこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図4を参照して説明する。本実施形態の混合装置は、主剤(本発明の構成要件である液剤)とシンナー(本発明の構成要件である液剤)を所定の比率で混合して得られた塗料を用いて塗装を行う場合に用いられ、塗装ブースの環境に応じて主剤とシンナーを好適な混合比で混合することにより最良の塗膜を得ることができるようにしたものである。
【0009】
図3に示すように、主剤を貯留するタンク11Aと切換弁12との間の主剤供給路10Aには、上流側から順にポンプ13Aと流量計14Aが設けられている。また、シンナーを貯留するタンク11Bと切換弁12との間のシンナー給路10Bにも、上流側から順にポンプ13Bと流量計14Bが設けられている。切換弁12には混合機15が接続され、混合機15には塗装ガン16が接続されている。図4に示すように、各流量計14A,14Bで計測された主剤及びシンナーの流量は、夫々、個別に混合比コントローラ20(本発明の構成要件である流量変更手段)に入力され、この入力された計測値と後述する混合比データとに基づいて各ポンプ13A,13Bが駆動又は停止されるとともに、切換弁12が主剤のみを通過させる状態とシンナーのみを通過させる状態とに切り換えられる。このようにポンプ13A,13Bと切換弁12の動作を制御することで、主剤とシンナーの混合機15への供給流量が調整され、主剤とシンナーが所定の混合比で混合され、塗料として塗装ガン16に供給される。
【0010】
次に、本実施形態の混合装置について説明する。
塗装ブース(図示せず)内の所定位置には、温度センサ21と湿度センサ22が設置されている。温度センサ21によって計測された値は、アナログ−デジタル変換器23を介すことによりデジタル値としてコンピュータの処理部24に入力される。同様に、湿度センサ22によって計測された値も、アナログ−デジタル変換器を介すことによりデジタル値としてコンピュータの処理部24に入力される。コンピュータの記憶手段25には、温度と湿度に応じて最適とされている主剤とシンナーの混合比をあらわす複数の混合比データが、記憶されている。図2には、複数の混合比データからなるデータテーブルの概念図を示す。処理部24において記憶手段25から読み出した混合比データは、上記した混合比コントローラ20に入力される。この記憶手段25と処理部24は、複数の混合比データの中から、温度センサ21及び湿度センサ22の測定値と対応する混合比データを読み出すデータセレクタ26を構成する。また、データセレクタ26と混合比コントローラ20は、本発明の構成要件である制御手段27を構成する。
【0011】
次に、本実施形態の作用を説明する。
塗装ブース内においては、一定の時間毎(例えば、10分毎)に、温度と湿度が計測され、その計測値が処理部24に入力される。処理部24では、入力された温度と湿度の計測値と対応する混合比データを読み出し、その混合比データを混合比コントローラ20に入力する。混合比コントローラ20は、流量計14A,14Bの計測値をフィードバックさせながらポンプ13A,13Bと切換弁12の動作をコントロールし、これによって、主剤とシンナーが所定の比率で交互に混合機15へ送り込まれる。混合機15で主剤とシンナーを混合することにより、塗装ブースの温度と湿度に最適な混合比の塗料が得られ、塗装ガン16に供給される。これにより、被塗物には好適な塗膜が形成される。
【0012】
上述のように、本実施形態においては、塗装ブース内の温度と湿度の値をセンサ21,22で測定し、温度と湿度の値に応じて予め作成された複数の混合比データの中から、センサ21,22の測定値と対応する混合比データを読み出し、この読み出した混合比データに基づいて複数の液剤の流量を個別に変更するようにしており、これにより、主剤とシンナーが温度と湿度に適した混合比で混合されるようになっている。したがって、作業者が塗膜表面を目視で確認する必要がなく、作業者の負担が軽減される。また、塗装を行う前に好適な混合比を知ることができるので、塗装不良品の発生を未然に防ぐこともできる。
【0013】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では2種類の液剤を混合する場合について説明したが、本発明は、3種類以上の液剤を混合する場合にも適用できる。
(2)上記実施形態では温度と湿度の両方の測定値に応じた混合比データを作成したが、本発明によれば、温度と湿度のうちいずれか一方のみの測定値に基づいて混合比データを作成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1の混合装置のブロック図
【図2】混合比データのデータテーブルの概念図
【図3】塗料の供給経路をあらわすブロック図
【図4】液剤の混合比を制御する手段のブロック図
【符号の説明】
【0015】
20…混合比コントローラ(流量変更手段)
21…温度センサ
22…湿度センサ
25…記憶手段
27…制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液剤を所定流量ずつ供給することにより所定の混合比で混合して塗料を得る多液混合方法であって、
塗装ブース内の温度と湿度のうち少なくともいずれか一方の値をセンサで測定し、
温度と湿度のうち少なくともいずれか一方の値に応じて予め作成された複数の混合比データの中から、前記センサの測定値と対応する混合比データを読み出し、この読み出した混合比データに基づいて複数の液剤の流量を個別に変更することを特徴とする多液混合方法。
【請求項2】
複数の液剤を所定流量ずつ供給することにより所定の混合比で混合して塗料を得る多液混合装置であって、
複数の液剤の流量を個別に変更可能な流量変更手段と、
塗装ブース内の温度と湿度のうち少なくともいずれか一方の値を測定するセンサと、
前記温度と湿度のうち少なくともいずれか一方の値に応じて予め作成された複数の混合比データが保存されている記憶手段と、
前記複数の混合比データの中から前記センサの測定値と対応する混合比データを読み出し、この読み出した混合比データに基づいて前記流量変更手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする多液混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−15219(P2006−15219A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194474(P2004−194474)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】