説明

多階調フォトマスク、多階調フォトマスクの製造方法、及びパターン転写方法

【課題】急峻な立ち上がりの形状を持つレジストパターンを被転写体上に形成する。
【解決手段】遮光部と透光部との境界、または遮光部と半透光部の境界には、半透光膜上の位相シフト調整膜が部分的に露出してなる位相シフタ部が形成され、遮光部と透光部の境界に位相シフタ部が形成されるとき、i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が、位相シフタ部を透過する時の位相シフト量と、露光光が、透光部を透過するときの位相シフト量と、の差が90度以上270度以内となり、遮光部と半透光部の境界に位相シフタ部が形成されるとき、i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が、位相シフタ部を透過する時の位相シフト量と、露光光が、半透光部を透過するときの位相シフト量と、の差が90度以上270度以内となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display:以下FPDと呼ぶ)等の製造に用いられる多階調フォトマスク、前記多階調フォトマスクの製造方法、及び前記多階調フォトマスクを用いたパターン転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FPD用の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下TFTと呼ぶ)基板は、遮光部及び透光部からなる転写用パターンが透明基板上に形成されたフォトマスクを用い、例えば5回〜6回のフォトリソグラフィ工程を経て製造されてきた。近年、フォトリソグラフィ工程数を削減するため、遮光部、半透光部、及び透光部を含む転写用パターンが透明基板上に形成された多階調フォトマスクが用いられるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−249198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の多階調フォトマスクは、これを用いて、被転写体上に、部分的にレジスト残膜値の異なるレジストパターンを形成することが可能である。ここで、該フォトマスクにおいて、遮光部は、透明基板上に半透光膜と遮光膜とが形成されてなり、半透光部は、半透光膜が透明基板上に形成されてなり、透光部は、透明基板が露出してなるものとすることができる。しかしながら、このような多階調フォトマスクを用いて被転写体上のレジスト膜に転写用パターンを転写すると、例えば遮光部と透光部との境界部分や、遮光部と半透光部の境界部分において光の回折が生じ、遮光部に光が回り込み、露光光の強度分布がなだらかな曲線状になってしまうことがある。その結果、被転写体上に形成されるレジストパターンの側壁形状が、例えば裾を引いたようなテーパ状になる等、なだらかになってしまう場合がある。そして、このようなレジストパターンをマスクとして薄膜の加工を行おうとすると、加工線幅や形状の制御が困難となり、液晶表示装置の製造歩留りが低下してしまう場合がある。なお、光の回折による影響は、転写用パターンの微細化が進むにつれて大きくなる。
【0005】
本発明は、遮光部と透光部との境界部分や、遮光部と半透光部との境界部分における光の回折による影響を抑制し、側壁形状がシャープである(急峻な立ち上がり形状を有する)レジストパターンを被転写体上に形成することが可能な多階調フォトマスク、該多階調フォトマスクの製造方法、及び該多階調フォトマスクを用いたパターン転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、遮光部、半透光部、及び透光部を含む所定の転写用パターンが透明基板上に形成された多階調フォトマスクであって、
前記遮光部は、半透光膜、位相シフト調整膜、及び遮光膜が前記透明基板上にこの順に積層されてなり、
前記半透光部は、前記半透光膜が前記透明基板上に形成されてなり、
前記透光部は、前記透明基板が露出してなり、
前記遮光部と前記透光部との境界、または前記遮光部と前記半透光部の境界には、前記半透光膜上の前記位相シフト調整膜が部分的に露出してなる位相シフタ部が形成され、
前記遮光部と前記透光部の境界に前記位相シフタ部が形成されるとき、i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が、前記位相シフタ部を透過する時の位相シフト量と、前記露光光が、前記透光部を透過するときの位相シフト量と、の差が90度以上270度以内となり、
前記遮光部と前記半透光部の境界に前記位相シフタ部が形成されるとき、i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が、前記位相シフタ部を透過する時の位相シフト量と、前記露光光が、前記半透光部を透過するときの位相シフト量と、の差が90度以上270度以内となることを特徴とする多階調フォトマスクである。
【0007】
本発明の第2の態様は、遮光部、半透光部、及び透光部を含む所定の転写用パターンが透明基板上に形成された多階調フォトマスクであって、
前記遮光部は、半透光膜、位相シフト調整膜、及び遮光膜が前記透明基板上にこの順に積層されてなり、
前記半透光部は、前記半透光膜が前記透明基板上に形成されてなり、前記透光部は、前記透明基板が露出してなり、
前記遮光部と前記透光部との境界部分には、前記半透光膜上の前記位相シフト調整膜が部分的に露出してなる位相シフタ部が形成され、i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が前記位相シフタ部を透過するときの位相シフト量と、前記露光光が前記透光部を透過するときの位相シフト量と、の差が90度以上270度以内となる多階調フォトマスクである。
【0008】
本発明の第3の態様は、前記位相シフタ部の幅が10nm以上1000nm以下である第1の態様に記載の多階調フォトマスクである。
【0009】
本発明の第4の態様は、前記位相シフタ部は、前記遮光膜のサイドエッチングにより形成されたものであり、前記位相シフタ部の幅は10nm以上500nm以下である第1又は第2の態様に記載の多階調フォトマスクである。
【0010】
本発明の第5の態様は、前記位相シフタ部の前記露光光の透過率は5%以上20%以下であることを特徴とする第1の態様または第2の態様に記載の多階調フォトマスクである。
【0011】
本発明の第6の態様は、前記遮光部と前記半透光部との境界部分には、前記半透光膜上の前記位相シフト調整膜が部分的に露出してなる第2の位相シフタ部が形成され、
前記露光光が前記第2の位相シフタ部を透過するときの位相シフト量と、前記露光光が前記半透光部を透過するときの位相シフト量と、の差が90度以上270度以内となる第1から第3のいずれかの態様に記載の多階調フォトマスクである。
【0012】
本発明の第7の態様は、前記露光光が前記半透光部を透過するときの位相シフト量と、前記露光光が前記透光部を透過するときの位相シフト量と、の差が60度未満である第1から第4のいずれかの態様に記載の多階調フォトマスクである。
【0013】
本発明の第8の態様は、遮光部、透光部、及び半透光部を含む所定の転写用パターンを透明基板上に形成する多階調フォトマスクの製造方法であって、
半透光膜、位相シフト調整膜、遮光膜、及び第1レジスト膜が前記透明基板上にこの順に積層されたフォトマスクブランクを用意する工程と、
前記第1レジスト膜に描画および現像を施し、少なくとも前記遮光部の形成予定領域を覆う第1レジストパターンを形成する工程と、
前記第1レジストパターンをマスクとして前記遮光膜及び前記位相シフト調整膜をエッチングする第1エッチング工程と、
前記第1レジストパターンを除去したのち、前記第1エッチング工程の行われた前記フォトマスクブランク上に第2レジスト膜を形成する工程と、前記第2レジスト膜に描画および現像を施し、少なくとも前記遮光部の形成予定領域及び前記半透光部の形成予定領域を覆う第2レジストパターンを形成する工程と、
前記第2レジストパターンをマスクとして前記半透光膜をエッチングすると共に、前記遮光膜の側部をエッチングして前記位相シフト調整膜を部分的に露出させて位相シフタ部を形成する第2エッチング工程と、前記第2レジストパターンを除去する工程と、を有し、
i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が前記位相シフタ部を透過するときの位相シフト量と、前記露光光が前記透光部を透過するときの位相シフト量と、の差が90度以上270度以内となる多階調フォトマスクの製造方法である。
【0014】
本発明の第9の態様は、遮光部、透光部、及び半透光部を含む所定の転写用パターンを透明基板上に形成する多階調フォトマスクの製造方法であって、
半透光膜、位相シフト調整膜、遮光膜、及び第1レジスト膜が前記透明基板上にこの順に積層されたフォトマスクブランクを用意する工程と、
前記第1レジスト膜に描画および現像を施し、前記遮光部の形成予定領域を覆う第1レジストパターンを形成する工程と、
前記第1レジストパターンをマスクとして前記遮光膜をエッチングする第1エッチング工程と、
前記第1レジストパターンを除去したのち、前記第1エッチング工程の行われた前記フォトマスクブランク上に第2レジスト膜を形成する工程と、
前記第2レジスト膜に描画および現像を施し、前記遮光部の形成予定領域と、前記遮光部と前記透光部との境界部分に位置する位相シフタ部の形成予定領域と、を覆う第2レジストパターンを形成する工程と、
前記第2レジストパターンをマスクとして前記位相シフト調整膜をエッチングして前記半透光部と前記位相シフタ部とを形成する第2エッチング工程と、
前記第2レジストパターンを除去したのち、前記第2エッチング工程の行われた前記フォトマスクブランク上に第3レジスト膜を形成する工程と、
前記第3レジスト膜に描画および現像を施し、前記透光部の形成予定領域を除く領域を覆う第3レジストパターンを形成する工程と、
前記第3レジストパターンをマスクとして前記半透光膜をエッチングする第3エッチング工程と、前記第3レジストパターンを除去する工程と、を有し、
i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が前記位相シフタ部を透過するときの位相シフト量と、前記露光光が前記透光部を透過するときの位相シフト量と、の差が90度以上270度以内となる多階調フォトマスクの製造方法である。
【0015】
本発明の第10の態様は、前記第2レジストパターンを形成する前記工程では、前記遮光部と前記半透光部との境界部分に位置する第2の位相シフタ部の形成予定領域を覆う前記第2レジストパターンを形成し、
前記第2エッチング工程では、前記第2の位相シフタ部を形成し、
i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が前記第2の位相シフタ部を透過するときの位相シフト量と、前記露光光が前記半透光部を透過するときの位相シフト量と、の差が90度以上270度以内となる第7の態様に記載の多階調フォトマスクの製造方法である。
【0016】
本発明の第11の態様は、前記位相シフト調整膜が、前記遮光膜及び前記半透光膜のエッチングに用いるエッチング液又はエッチングガスに対して耐性を有する第6から8のいずれかの態様に記載の多階調フォトマスクの製造方法である。
【0017】
本発明の第12の態様は、第1から第5のいずれかの態様に記載の多階調フォトマスク、又は第6から第9のいずれかの態様に記載の製造方法による多階調フォトマスクを介し、被転写体上に形成されているレジスト膜に前記露光光を照射することにより、前記レジスト膜に前記転写用パターンを転写する工程を有するパターン転写方法である。
【0018】
本発明の第13の態様は、前記被転写体上に形成されている前記レジスト膜は、前記位相シフタ部に対応する部分の露光光に対して実質的に感度を有さない第10の態様に記載のパターン転写方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る多階調フォトマスク、該多階調フォトマスクの製造方法、及び該多階調フォトマスクを用いたパターン転写方法によれば、遮光部と透光部の境界部分や、遮光部と半透光部との境界部分における光の回折による影響を抑制し、側壁形状がシャープである(急峻な立ち上がり形状を有する)レジストパターンを被転写体上に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る多階調フォトマスクの部分断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る多階調フォトマスクを用いたパターン転写方法を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る多階調フォトマスクの製造工程のフロー図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る多階調フォトマスクの部分断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る多階調フォトマスクの製造工程のフロー図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る多階調フォトマスクが備える転写用パターンの部分平面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る多階調フォトマスクが備える転写用パターンの部分平面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る多階調フォトマスクが備える転写用パターンの部分平面図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る多階調フォトマスクを用いたパターン転写方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明の一実施形態を、主に図1から図3、及び図6を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る多階調フォトマスク10の部分断面図である。図2は、多階調フォトマスク10を用いたパターン転写方法を示す断面図である。図3は、本実施形態に係る多階調フォトマスク10の製造工程のフロー図である。図6は、本実施形態に係る多階調フォトマスク10が備える転写用パターンの部分平面図である。
【0022】
(1)多階調フォトマスクの構成
図1に示す多階調フォトマスク10は、例えば液晶表示装置(LCD)用の薄膜トランジスタ(TFT)基板の製造等に用いられる。ただし、図1は多階調フォトマスクの積層構造を例示するものであり、実際のパターンは、これと同一とは限らない。
【0023】
多階調フォトマスク10は、遮光部110、半透光部115、及び透光部120を含む所定の転写用パターンが透明基板100上に形成された構成を持つ。遮光部110は、半透光膜101、位相シフト調整膜102、及び遮光膜103が透明基板100上にこの順に積層されてなる。半透光部115は、半透光膜101が透明基板100上に形成されてなる。透光部120は、透明基板100が露出してなる。遮光部110と透光部120との境界部分には、半透光膜101上の位相シフト調整膜102が部分的に露出してなる位相シフタ部111が形成されている。
【0024】
透明基板100は、例えば石英(SiO)ガラスや、SiO,Al,B,RO(Rはアルカリ土類金属),RO(Rはアルカリ金属)等を含む低膨張ガラス等からなる平板として構成されている。透明基板100の主面(表面及び裏面)は、研磨されるなどして平坦且つ平滑に構成されている。透明基板100は、例えば一辺が2000mm〜2400mm程度の方形とすることができる。透明基板100の厚さは例えば3mm〜20mm程度とすることができる。
【0025】
半透光膜101は、クロム(Cr)を含む材料からなり、例えば窒化クロム(CrN)、酸化クロム(CrO)、酸窒化クロム(CrON)、フッ化クロム(CrF)等からなる。半透光膜101は、例えば硝酸第2セリウムアンモニウム((NHCe(NO)及び過塩素酸(HClO)を含む純水からなるクロム用エッチング液を用いてエッチング可能なように構成されている。また、半透光膜101は、フッ素(F)系のエッチング液(又はエッチングガス)に対するエッチング耐性を有し、後述するようにフッ素(F)系のエッチング液(又はエッチングガス)を用いて位相シフト調整膜102をエッチングする際のエッチングストッパ層として機能する。
【0026】
位相シフト調整膜102は、モリブデン(Mo)等の金属材料とシリコン(Si)とを含む材料からなり、例えば、MoSix、MoSiN、MoSiON、MoSiCON等からなる。位相シフト調整膜102は、フッ素(F)系のエッチング液(又はエッチングガス)を用いてエッチング可能なように構成されている。また、位相シフト調整膜102は、上述のクロム用エッチング液に対するエッチング耐性を有し、後述するようにクロム用エッチング液を用いて遮光膜103をエッチングする際のエッチングストッパ層として機能する。
【0027】
遮光膜103は、実質的にクロム(Cr)からなる。なお、遮光膜103の表面にCr化合物(CrO、CrC,CrN等)を積層すれば(図示せず)、遮光膜103の表面に反射抑制機能を持たせることが出来る。遮光膜103は、上述のクロム用エッチング液を用いてエッチング可能なように構成されている。
【0028】
遮光部110、半透光部115、および透光部120は、例えばi線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光に対し、それぞれ所定の範囲内の透過率を有するように構成されている。すなわち、遮光部110は上述の露光光を遮光(光透過率が略0%)させるように構成されている。また、透光部120は、上述の露光光を略100%透過させるように構成されている。また、半透光部115は、例えば露光光の透過率を20〜80%(十分に広い透光部120の透過率を100%としたとき。以下同様)、好ましくは30〜60%程度に低減させるように構成されている。半透光部115の透過率は、半透光部115を構成する半透光膜101の材質及び厚さを設定することで任意に制御することができる。なお、i線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)とは、水銀(Hg)の主な発光スペクトルである。また、ここでいう代表波長とは、i線、h線、g線のうちいずれかの、任意の波長のことである。
【0029】
遮光部110と透光部120との境界部分に形成された位相シフタ部111は、位相シフタ部111を透過する露光光の位相を所定の値だけシフトさせるように構成されている。具体的には、i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が位相シフタ部111を透過するときの位相シフト量と、上述の露光光が透光部120を透過するときの位相シフト量と、の差が、90度以上270度以内、より好ましくは150度以上210度以内となるように構成されている。更に好ましくは、i線〜g線の範囲のすべての露光光が位相シフタ部111を透過するときの位相シフト量と、上述の露光光が透光部120を透過するときの位相シフト量と、の差が、上記の各範囲以内であるようにすることができる。これにより、透光部120を透過して回折により位相シフタ部111側へ進入した露光光と、位相シフタ部111を透過した露光光と、が互い干渉して打ち消しあうこととなる。その結果、後述するように、被転写体に形成されているレジスト膜に多階調フォトマスク10を介して露光光を照射する際に、遮光部110と透光部120との境界部分に対向するレジスト膜の感光を抑制でき、側壁形状がシャープである(急峻な立ち上がり形状を有する)レジストパターンを被転写体上に形成することが可能となる。
【0030】
半透光部115の位相シフト量は所定値未満となるように構成されている。具体的には、上述の代表波長を有する露光光が半透光部115を透過するときの位相シフト量と、上述の露光光が透光部120を透過するときの位相シフト量と、の差が、60度未満、好ましくは30度未満になるように構成されている。これにより、透光部120を透過した露光光と、半透光部115を透過した露光光とが互いに干渉して打ち消しあうことを抑制することができる。その結果、被転写体に形成されているレジスト膜に多階調フォトマスク10を介して露光光を照射する際に、半透光部115と透光部120との境界部分に不要な暗部が生じず、レジスト膜をより確実に感光させることができる。
【0031】
なお、位相シフタ部111の位相シフト量は、位相シフタ部111を構成する半透光膜101の位相シフト量と、位相シフト調整膜102の位相シフト量と、の重ね合わせで定まる。上述したように、半透光部115の位相シフト量(半透光膜101の位相シフト量)は、60度未満、好ましくは30度未満とされている。位相シフタ部111の位相シフト量は、位相シフト調整膜102の材料及び厚さを調整することで実質的に制御することができる。なお、半透光部115は位相シフト調整膜102を有さないため、半透光部115の透過率は、位相シフト調整膜102の材料や厚さに依存しない。すなわち、本実施形態によれば、半透光部115の透過率と、位相シフタ部111の位相シフト量とを、独立して制御することが可能である。
【0032】
なお、位相シフタ部111の幅、つまり位相シフト調整膜102の露出面の幅(図6でいうW)は、10nm以上100μm以下、好ましくは10nm以上1000nm以下、さらに好ましくは50nm以上500nm以下とすることができる。尚、後述するように、この位相シフタ部111を、ウェットエッチングに際してのサイドエッチングによって形成する場合には、上記幅を10nm以上500nm以下とすることができ、より好ましくは、50nm以上200nm以下とすることができる。このような幅にすることで、上述の効果を得やすくなる。
【0033】
図6は、本実施形態に係る多階調フォトマスク10が備える転写用パターンの部分平面図である。このように、遮光部110、透光部120及び半透光部115の平面形状は、被転写体としての液晶表示装置用基板上に形成する回路パターン(デバイスパターン)に応じ、種々の形状に構成されている。なお、遮光部110と透光部120との境界部分には、位相シフタ部111が形成されている。
【0034】
図2に、多階調フォトマスク10を用いたパターン転写工程によって被転写体30に形成されるレジストパターン302pの部分断面図を例示する。レジストパターン302pは、被転写体30に形成されたポジ型レジスト膜302に多階調フォトマスク10を介して露光光を照射し、現像することにより形成される。被転写体30は、基板300と、基板300上に順に積層された金属薄膜や絶縁層、半導体層などの任意の被加工層301とを備えており、ポジ型レジスト膜302は被加工層301上に均一な厚さで予め形成されているものとする。なお、被加工層301を構成する各層は、各層の上層のエッチング液(又はエッチングガス)に対して耐性を有するように構成されていてもよい。
【0035】
多階調フォトマスク10を介してポジ型レジスト膜302に上述の露光光を照射すると、遮光部110では露光光が透過せず、また、半透光部115、透光部120の順に露光光の光量が段階的に増加する。そして、ポジ型レジスト膜302は、遮光部110、半透光部115のそれぞれに対応する領域で膜厚が順に薄くなり、透光部120に対応する領域で除去される。このようにして、被転写体30上に膜厚が段階的に異なるレジストパターン302pが形成される。
【0036】
レジストパターン302pが形成されたら、レジストパターン302pに覆われていない領域(透光部120に対応する領域)にて露出している被加工層301を表面側から順次エッチングして除去する。そして、レジストパターン302pをアッシング(減膜)して膜厚が薄い領域(半透光部115に対応する領域)を除去し、新たに露出した被加工層301を順次エッチングして除去する。このように、膜厚が段階的に異なるレジストパターン302pを用いることで、従来のフォトマスク2枚分の工程を実施したこととなり、マスク枚数を削減でき、フォトリソグラフィ工程を簡略化できる。
【0037】
なお、上述したように、透光部120を透過して回折により位相シフタ部111側へ進入した露光光と、位相シフタ部111を透過した露光光とは、互い干渉して打ち消しあうように構成されている。そのため、遮光部110と透光部120との境界部分においてレジスト膜の感光を抑制でき、側壁形状がシャープである(急峻な立ち上がり形状を有する)レジストパターン302pを被転写体上に形成することが可能となる。また、透光部120を透過した露光光と、半透光部115を透過した露光光とは、干渉による打ち消し合いが小さくなるように構成されている。そのため、半透光部115と透光部120との境界部分に不要な暗部を生じさせず、ポジ型レジスト膜302をより確実に感光させることができる。なお、ポジ型レジスト膜302の感光不良は、例えばレジストパターン302pの形状不良や、被加工層301のエッチング不良を引き起こす要因となる。
【0038】
(2)多階調フォトマスクの製造方法
続いて、本実施形態に係る多階調フォトマスク10の製造方法について、図3を参照しながら説明する。
【0039】
(フォトマスクブランク準備工程)
まず、図3(a)に例示するように、透明基板100上に半透光膜101、位相シフト調整膜102、遮光膜103がこの順に形成され、最上層に第1レジスト膜104が形成されたフォトマスクブランク10bを準備する。なお、第1レジスト膜104は、ポジ型フォトレジスト材料或いはネガ型フォトレジスト材料により構成することが可能である。以下の説明では、第1レジスト膜104がポジ型フォトレジスト材料より形成されているものとする。第1レジスト膜104は、例えばスリットコータやスピンコータ等を用いて形成することができる。なお、フォトマスクブランク10bを用意する際には、半透光部115を透過する露光光の光透過率、及び位相シフタ部111を透過する露光光の位相シフト量等が、上述の条件を満たすように、半透光膜101及び位相シフト調整膜102の材質、厚さをそれぞれ選択する。
【0040】
(第1レジストパターン形成工程)
次に、フォトマスクブランク10bに対して、レーザ描画機等により描画露光を行い、第1レジスト膜104を感光させ、スプレー方式等の手法により第1レジスト膜104に現像液を供給して現像を施し、少なくとも遮光部110の形成予定領域を覆う第1レジストパターン104pを形成する。すなわち、後述の第2エッチング工程において遮光膜103をサイドエッチングさせて位相シフタ部111を形成する際、遮光部110が所定の領域を保って形成されるよう、少なくとも遮光部110の形成予定領域を覆う第1レジストパターン104pを形成するのである。第1レジストパターン104pが形成された状態を、図3(b)に例示する。
【0041】
(第1エッチング工程)
次に、形成した第1レジストパターン104pをマスクとして、遮光膜103をエッチングして遮光膜パターン103pを形成する。遮光膜103のエッチングは、上述のクロム用エッチング液を、スプレー方式等の手法により遮光膜103に供給して行うことが可能である。このとき、下地の位相シフト調整膜102はエッチングストッパ層として機能する。
【0042】
次に、第1レジストパターン104p又は遮光膜パターン103pをマスクとして、位相シフト調整膜102をエッチングして位相シフト調整膜パターン102pを形成し、半透光膜101を部分的に露出させる。位相シフト調整膜102のエッチングは、フッ素(F)系のエッチング液(又はエッチングガス)を位相シフト膜102に供給して行うことが可能である。このとき、下地の半透光膜101はエッチングストッパ層として機能する。遮光膜パターン103p及び位相シフト調整膜パターン102pが形成された状態を、図3(c)に例示する。なお、遮光膜パターン103pをマスクとして位相シフト調整膜102をエッチングする際には、第1レジストパターン104pを予め剥離してから行ってもよい。
【0043】
(第2レジスト膜形成工程)
次に、第1レジストパターン104pを除去した後、遮光膜パターン103p及び露出した半透光膜101を有するフォトマスクブランク10b上の全面に、第2レジスト膜105を形成する。第1レジストパターン104pは、第1のレジストパターン104pに剥離液等を接触させることで除去できる。第2レジスト膜105は、第1レジスト膜104と同様に、例えばスリットコータやスピンコータ等を用いて形成することができる。第2レジスト膜105が形成された状態を、図3(d)に例示する。
【0044】
(第2レジストパターン形成工程)
次に、レーザ描画機等により描画露光を行い、第2レジスト膜105を感光させ、スプレー方式等の手法により第2レジスト膜105に現像液を供給して現像を施し、少なくとも遮光部110の形成予定領域及び半透光部115の形成予定領域をそれぞれ覆う第2レジストパターン105pを形成する。第2レジストパターン105pが形成された状態を図3(e)に例示する。
【0045】
(第2エッチング工程)
次に、形成した第2レジストパターン105pをマスクとして半透光膜101をエッチングして半透光膜パターン101pを形成すると共に、透明基板100を部分的に露出させて透光部120を形成する。さらに、遮光膜パターン103pの露出した側部に対してもエッチング(サイドエッチング)を行い、位相シフト調整膜パターン102pを部分的に露出させて位相シフタ部111を形成する。そして、位相シフト調整膜102の露出面の幅が、10nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下となったら、エッチングを停止する。半透光膜101及び遮光膜パターン103pのエッチングは、クロム用エッチング液を、スプレー方式等の手法により半透光膜101の露出面、及び遮光膜パターン103pの側部に供給して行うことが可能である。第2エッチング工程が実施された状態を図3(f)に例示する。
【0046】
(第2レジストパターン除去工程)
次に、第2レジストパターン105pを除去し、本実施形態に係る多階調フォトマスク10の製造を完了する。第2レジストパターン105pは、第2レジストパターン105pに剥離液等を接触させることで除去できる。第2レジストパターンを除去した状態を図3(g)に例示する。
【0047】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0048】
(a)本実施形態によれば、i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が位相シフタ部111を透過するときの位相シフト量と、上述の露光光が透光部120を透過するときの位相シフト量と、の差が、90度以上270度以内、より好ましくは150度以上210度以内となるように構成されている。これにより、透光部120を透過して回折により位相シフタ部111側へ進入した露光光と、位相シフタ部111を透過した露光光と、が互い干渉して打ち消しあうこととなる。その結果、被転写体に形成されているレジスト膜に多階調フォトマスク10を介して露光光を照射する際に、遮光部110と透光部120との境界部分に対向するレジスト膜の感光を抑制でき、側壁形状がシャープである(急峻な立ち上がり形状を有する)レジストパターンを被転写体上に形成することが可能となる。
【0049】
(b)本実施形態によれば、上述の代表波長を有する露光光が半透光部115を透過するときの位相シフト量と、上述の露光光が透光部120を透過するときの位相シフト量と、の差が、60度未満、好ましくは30度未満になるように構成されている。これにより、透光部120を透過した露光光と、半透光部115を透過した露光光と、が互いに干渉して打ち消しあうことを抑制することができる。その結果、被転写体に形成されているレジスト膜に多階調フォトマスク10を介して露光光を照射する際に、半透光部115と透光部120との境界部分に不要な暗部が生じず、レジスト膜をより確実に感光させることができる。
【0050】
(c)本実施形態によれば、位相シフタ部111の位相シフト量は、位相シフト調整膜102の材料及び厚さを調整することで実質的に制御できる。また、半透光部115は位相シフト調整膜102を有さないため、半透光部115の透過率は、位相シフト調整膜102の材料や厚さに依存しない。すなわち、本実施形態によれば、半透光部115の透過率と、位相シフタ部111の位相シフト量とを、独立して制御することが可能である。
【0051】
(d)本実施形態によれば、位相シフタ部111の幅、つまり位相シフト調整膜102の露出面の幅は、10nm以上1000nm以下、好ましくは10nm以上500nm以下、より好ましくは50nm以上200nm以下としている。このような幅にすることで、上述の効果を得やすくなる。
【0052】
(e)本実施形態によれば、第2エッチング工程において、第2レジストパターン105pをマスクとして半透光膜101をエッチングすると共に、遮光膜パターン103pの側部をサイドエッチングして位相シフト調整膜パターン102pを部分的に露出させている。すなわち、遮光膜パターン103p、位相シフト調整膜パターン102p、及び半透光膜パターン101pの3種類の異なるパターンを、サイドエッチングを利用することで2回のフォトリソグラフィ工程により形成している。これにより、多階調フォトマスク10の製造工程におけるフォトリソグラフィ工程数を削減することが可能となる。換言すれば、本実施形態によると、半透光膜101、位相シフト調整膜102、遮光膜103の素材を選択することにより、ウェットエッチングの際にサイドエッチングが進行することを利用したパターニングを行うことができる。本実施形態では、3つの膜を2回のエッチングによってパターニングしている。この利点を得るために、たとえば、半透光膜101及び遮光膜103の素材を、同じエッチャントによってエッチング可能な素材(たとえばCr系)とし、位相シフト調整膜102をこのエッチャントに対して耐性をもつ素材(例えばMoSi系)としているのである。
【0053】
<本発明の他の実施形態>
続いて、本発明の他の実施形態を、図4、図5、及び図7を参照しながら説明する。図4は、本実施形態に係る多階調フォトマスク20の部分断面図である。図5は、本実施形態に係る多階調フォトマスク20の製造工程のフロー図である。図7は、本実施形態に係る多階調フォトマスク20が備える転写用パターンの部分平面図である。
【0054】
(1)多階調フォトマスクの構成
図4に示すように、本実施形態においては、遮光部110内における半透光部115と隣接する部分にも、位相シフト調整膜102が部分的に露出してなる第2の位相シフタ部112がさらに形成されている点が、上述の実施形態とは異なる。
【0055】
遮光部110と半透光部115との境界部分に形成された第2の位相シフタ部112は、第2の位相シフタ部112を透過する露光光の位相を所定の値だけシフトさせるように構成されている。具体的には、i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が第2の位相シフタ部112を透過するときの位相シフト量と、上述の露光光が半透光部115を透過するときの位相シフト量と、の差が、90度以上270度以内、より好ましくは150度以上210度以内となるように構成されている。これにより、半透光部115を透過して回折により第2の位相シフタ部112側へ進入した露光光と、第2の位相シフタ部112を透過した露光光と、が互い干渉して打ち消しあうこととなる。その結果、被転写体に形成されているレジスト膜に多階調フォトマスク10を介して露光光を照射する際に、遮光部110と半透光部115との境界部分に対向するレジスト膜の感光を抑制でき、側壁形状がシャープである(急峻な立ち上がり形状を有する)レジストパターンを被転写体上に形成することが可能となる。
【0056】
なお、第2の位相シフタ部112の幅(図7でいうW’)は、位相シフタ部(第1の位相シフタ部)111と同様に、10nm以下100μm以下、好ましくは10nm以上1000nm以下、さらに好ましくは50nm以上500nm以下とする。このような幅にすることで、上述の効果を得やすくなる。
【0057】
図7は、本実施形態に係る多階調フォトマスク20が備える転写用パターンの部分平面図である。本実施形態では、遮光部110と透光部120との境界部分に第1の位相シフタ部111が形成されているのに加え、遮光部110と半透光部115との境界部分に第2の位相シフタ部112が形成されている。
【0058】
本実施形態によれば、i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が第1の位相シフタ部111を透過するときの位相シフト量と、上述の露光光が透光部120を透過するときの位相シフト量と、の差が、120度以上240度以内、より好ましくは150度以上210度以内となるように構成されている。これにより、透光部120を透過して回折により位相シフタ部111側へ進入した露光光と、位相シフタ部111を透過した露光光と、が互いに干渉して打ち消しあうこととなる。これにより、半透光部115を透過して回折により第2の位相シフタ部112側へ進入した露光光と、第2の位相シフタ部112を透過した露光光と、が互いに干渉して打ち消しあうと共に、透光部120を透過して回折により第1の位相シフタ部111側へ進入した露光光と、第1の位相シフタ部111を透過した露光光が互いに干渉して打ち消しあう。その結果、被転写体に形成されているレジスト膜に多階調フォトマスク20を介して露光光を照射する際に、遮光部110と透光部120との境界部分に対向するレジスト膜の感光と、遮光部110と半透光部115との境界部分に対向するレジスト膜の感光との両方を抑制でき、それぞれの境界において側壁形状がシャープである(急峻な立ち上がり形状を有する)レジストパターンを被転写体上に形成することが可能となる。
【0059】
また、上述の露光光が半透光部115を透過するときの位相シフト量と、上述の露光光が透光部120を透過するときの位相シフト量と、の差が、−60度以上60度以内、より好ましくは−30度以上30度以内となるように構成されている。これにより、透光部120を透過した露光光と、半透光部115を透過した露光光とが互いに干渉して打ち消しあうことを抑制することができる。その結果、被転写体に形成されているレジスト膜に多階調フォトマスク10を介して露光光を照射する際に、半透光部115と透光部120との境界部分に不要な暗部が生じず、レジスト膜をより確実に感光させることができる。
【0060】
また、図8に示すように、遮光部110と半透光部115との境界部分のみに位相シフタ部を設けることも出来る。このようにすれば、遮光部110と半透光部115との境界部分の対向するレジスト膜の感光を抑制でき、この境界部分の側壁形状がシャープである(急峻な立ち上がり形状を有する)レジストパターンを被転写体上に形成することが可能となる。
【0061】
(2)多階調フォトマスクの製造方法
このような構成を持つ多階調フォトマスク20の製造方法について、図5を参照して説明する。
【0062】
(フォトマスクブランク準備工程)
まず、図5(a)に例示するように、透明基板100上に半透光膜101、位相シフト調整膜102、遮光膜103がこの順に形成され、最上層に第1レジスト膜104が形成されたフォトマスクブランク10bを準備する。各部材の材料、厚さ等は、各部材の光学特性等が上述の条件を満たすように、上記の実施形態と同様に選択する。
【0063】
(第1レジストパターン形成工程)
次に、フォトマスクブランク10bに対して、上述の実施形態と同様の手法で露光・現像を施し、遮光部110の形成予定領域を覆う第1レジストパターン104pを形成する。
【0064】
(第1エッチング工程)
次に、形成した第1レジストパターン104pをマスクとして、上述の実施形態と同様の手法で遮光膜103をエッチングし、遮光膜パターン103pを形成する。このとき、下地の位相シフト調整膜102はエッチングストッパ層として機能する。遮光膜パターン103pが形成された状態を、図5(b)に例示する。
【0065】
(第2レジスト膜形成工程)
次に、第1レジストパターン104pを除去した後、遮光膜パターン103p及び露出した位相シフト調整膜102を有するフォトマスクブランク10b上の全面に、第2レジスト膜105を形成する。第1レジストパターン104pの除去、第2レジスト膜105の形成には、上述の実施形態と同様の手法を用いることができる。
【0066】
(第2レジストパターン形成工程)
次に、上述の実施形態と同様の手法で、第2レジスト膜105を露光・現像し、遮光部110の形成予定領域、遮光部110と透光部120との境界部分に位置する第1の位相シフタ部111の形成予定領域、および遮光部110と半透光部115との境界部分に位置する第2の位相シフタ部112の形成予定領域をそれぞれ覆う第2レジストパターン105pを形成する。第2レジストパターン105pが形成された状態を図5(c)に例示する。
【0067】
(第2エッチング工程)
次に、形成した第2レジストパターン105pをマスクとして、上述の実施形態と同様の手法で位相シフト調整膜102をエッチングして位相シフト調整膜パターン102pを形成するとともに、半透光部115と第1の位相シフタ部111と第2の位相シフタ部112とを形成する。第2エッチング工程が実施された状態を、図5(d)に例示する。
【0068】
(第3レジスト膜形成工程)
そして、第2レジストパターン105pを除去した後、遮光膜パターン103p、位相シフト調整膜パターン102p、露出した半透光膜101を有するフォトマスクブランク10b上の全面に、第3レジスト膜106を形成する。第2レジストパターン105pの除去、第3レジスト膜106の形成には、上述の実施形態と同様の手法を用いることができる。
【0069】
(第3レジストパターン形成工程)
次に、上述の実施形態と同様の手法で、第3レジスト膜106を露光・現像し、透光部120の形成予定領域を除く領域を覆う第3レジストパターン106pを形成する。なお、透光部120の形成予定領域を除く領域とは、遮光部110の形成予定領域、第1の位相シフタ部111の形成予定領域、第2の位相シフタ部112の形成予定領域、及び半透光部115の形成予定領域である。第3レジストパターン106pが形成された状態を図5(e)に例示する。
【0070】
(第3エッチング工程)
次に、形成した第3レジストパターン106pをマスクとして上述の実施形態と同様の手法で半透光膜101をエッチングして半透光膜パターン101pを形成すると共に、透明基板100を部分的に露出させて透光部100を形成する。第3エッチング工程が実施された状態を図5(f)に例示する。
【0071】
(第3レジストパターン除去工程)
次に、上述の実施形態と同様の手法で、第3レジストパターン106pを除去し、本実施形態に係る多階調フォトマスク20の製造を完了する。第3レジストパターン106pの除去には、上述の実施形態と同様の手法を用いることができる。第3レジストパターンを除去した状態を図5(g)に例示する。
【0072】
本実施形態に係る多階調フォトマスク20においても、上述の実施形態に係る多階調フォトマスク10と同様の効果を奏する。
【0073】
さらに、本実施形態によれば、i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が第2の位相シフタ部112を透過するときの位相シフト量と、上述の露光光が半透光部115を透過するときの位相シフト量と、の差が、90度以上270度以内、より好ましくは150度以上210度以内となるように構成されている。これにより、半透光部115を透過して回折により第2の位相シフタ部112側へ進入した露光光と、第2の位相シフタ部112を透過した露光光と、が互いに干渉して打ち消しあうこととなる。その結果、被転写体に形成されているレジスト膜に多階調フォトマスク20を介して露光光を照射する際に、遮光部110と半透光部115との境界部分に対向するレジスト膜の感光を抑制でき、側壁形状がシャープである(急峻な立ち上がり形状を有する)レジストパターンを被転写体上に形成することが可能となる。
【0074】
<本発明のさらに他の実施形態>
さらに、本発明の他の実施形態を、図9を参照しながら説明する。図9は本実施形態に係る多階調フォトマスクの部分断面図と、このフォトマスクを透過した露光光の振幅強度曲線ならびに光強度分曲線と、被転写体に形成されるレジストパターンの断面図を示し、それぞれの関係を表したものである。
【0075】
遮光部110と半透光部115の境界に第2の位相シフタ部112を有する本発明のフォトマスクにおいて、第2の位相シフタ部112を透過したことにより、半透光部115に対して位相差が90度以上270以内である露光光の振幅強度と、半透光部115及び透光部120を透過した露光光の振幅強度とを点線で示す。さらに、これらの露光光を合成し光強度としたものを、実線で示す。
【0076】
光強度曲線の(A)部分には、第2の位相シフタ部112を透過した露光光と半透光部を透過した露光光が干渉によって打ち消され光強度が減少している部分が示されており、光強度曲線の(B)部分には、第2の位相シフタ部112を透過した露光光が示されている。位相シフタの幅が1000nmを超えると、それ以下の線幅の時に生じていた回折の影響による透過率の低下が生じ難くなり、位相シフタ部を透過した露光光における(B)部分の光強度が大きくなってしまう場合(図中の閾値以上)、レジストが感光することによって、レジストに不要な膜厚の変化を与えてしまうようになる。したがって、この影響を防ぐためには位相シフタ部の透過率は、露光光が位相シフト効果を有する強度範囲でなるべく低いことが望ましい。また、光が全く透過しなければ、本発明の作用は生じないことから、例えば、位相シフタ部112の透過率は5%以上20%以下とすることが出来る。より好適には5%以上10%以下であることが望ましい。このようにすることによって幅が1000nmを超えるような位相シフタ部においても、位相シフタ部を透過した露光光によって感光したレジストの領域(B)を、実質上遮光部に対応するレジストの領域との間に、厚さのばらつきを生じることがなくなる。
【0077】
したがって、本発明の位相シフタ部は、遮光部と半透光部の境界、または遮光部と透光部の境界にあって、本発明のフォトマスクを用いてパターン転写を行う時には、遮光部と実質上同等の遮光性を有する。したがって、フォトマスクのパターン設計時には、位相シフト部を遮光部と同等の遮光性を有する領域とすることが出来、位相シフト部の幅を増やす時には、その分遮光部の幅を減じることが必要である。
【0078】
なお、この場合の位相シフタ部の幅は、パターン設計の容易さや、プロセスのしやすさ等から考慮して、10nm以上100μm以下とすることが出来る。
【0079】
したがって、本発明のフォトマスクは、位相シフタ部が遮光部と同等の遮光性を有するので、位相シフタ部を遮光性のパターンとしてフォトマスクパターンの設計をすることが出来る。
【0080】
また、遮光部と透過光の境界に設けた位相シフタ部についても、遮光部と半透光部の境界に設けた位相シフタ部と同様に扱うことが出来る。このときも例えば、位相シフタ部の透過率は5%以上20%以下とすることが望ましく、より好適には透過率は5%以上10%以下であることが望ましい。
【0081】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定される
ものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0082】
10、20 多階調フォトマスク
100 透明基板
101 半透光膜
102 位相シフト調整膜
103 遮光膜
110 遮光部
111 位相シフタ部(第1の位相シフタ部)
112 第2の位相シフタ部
115 半透光部
120 透光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光部、半透光部、及び透光部を含む所定の転写用パターンが透明基板上に形成された多階調フォトマスクであって、
前記遮光部は、半透光膜、位相シフト調整膜、及び遮光膜が前記透明基板上にこの順に積層されてなり、
前記半透光部は、前記半透光膜が前記透明基板上に形成されてなり、
前記透光部は、前記透明基板が露出してなり、
前記遮光部と前記透光部との境界、または前記遮光部と前記半透光部の境界には、前記半透光膜上の前記位相シフト調整膜が部分的に露出してなる位相シフタ部が形成され、
前記遮光部と前記透光部の境界に前記位相シフタ部が形成されるとき、i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が、前記位相シフタ部を透過する時の位相シフト量と、前記露光光が、前記透光部を透過するときの位相シフト量と、の差が90度以上270度以内となり、
前記遮光部と前記半透光部の境界に前記位相シフタ部が形成されるとき、i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が、前記位相シフタ部を透過する時の位相シフト量と、前記露光光が、前記半透光部を透過するときの位相シフト量と、の差が90度以上270度以内となることを特徴とする多階調フォトマスク。
【請求項2】
遮光部、半透光部、及び透光部を含む所定の転写用パターンが透明基板上に形成された
多階調フォトマスクであって、
前記遮光部は、半透光膜、位相シフト調整膜、及び遮光膜が前記透明基板上にこの順に
積層されてなり、
前記半透光部は、前記半透光膜が前記透明基板上に形成されてなり、
前記透光部は、前記透明基板が露出してなり、
前記遮光部と前記透光部との境界部分には、前記半透光膜上の前記位相シフト調整膜が
部分的に露出してなる位相シフタ部が形成され、
i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が前記位相シフタ部を透過するときの位
相シフト量と、前記露光光が前記透光部を透過するときの位相シフト量と、の差が90度
以上270度以内となる
ことを特徴とする多階調フォトマスク。
【請求項3】
前記位相シフタ部の幅が10nm以上1000nm以下である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の多階調フォトマスク。
【請求項4】
前記位相シフタ部は、前記遮光膜のサイドエッチングにより形成されたものであり、
前記位相シフタ部の幅は10nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の多階調フォトマスク。
【請求項5】
前記位相シフタ部の前記露光光の透過率は5%以上20%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の多階調フォトマスク。
【請求項6】
前記遮光部と前記半透光部との境界部分には、前記半透光膜上の前記位相シフト調整膜
が部分的に露出してなる第2の位相シフタ部が形成され、
前記露光光が前記第2の位相シフタ部を透過するときの位相シフト量と、前記露光光が
前記半透光部を透過するときの位相シフト量と、の差が90度以上270度以内となる
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の多階調フォトマスク。
【請求項7】
前記露光光が前記半透光部を透過するときの位相シフト量と、前記露光光が前記透光部
を透過するときの位相シフト量と、の差が60度未満である
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の多階調フォトマスク。
【請求項8】
遮光部、透光部、及び半透光部を含む所定の転写用パターンを透明基板上に形成する多
階調フォトマスクの製造方法であって、
半透光膜、位相シフト調整膜、遮光膜、及び第1レジスト膜が前記透明基板上にこの順
に積層されたフォトマスクブランクを用意する工程と、
前記第1レジスト膜に描画および現像を施し、少なくとも前記遮光部の形成予定領域を
覆う第1レジストパターンを形成する工程と、
前記第1レジストパターンをマスクとして前記遮光膜及び前記位相シフト調整膜をエッ
チングする第1エッチング工程と、
前記第1レジストパターンを除去したのち、前記第1エッチング工程の行われた前記フ
ォトマスクブランク上に第2レジスト膜を形成する工程と、
前記第2レジスト膜に描画および現像を施し、少なくとも前記遮光部の形成予定領域及
び前記半透光部の形成予定領域を覆う第2レジストパターンを形成する工程と、
前記第2レジストパターンをマスクとして前記半透光膜をエッチングすると共に、前記
遮光膜の側部をエッチングして前記位相シフト調整膜を部分的に露出させて位相シフタ部
を形成する第2エッチング工程と、
前記第2レジストパターンを除去する工程と、を有し、
i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が前記位相シフタ部を透過するときの位
相シフト量と、前記露光光が前記透光部を透過するときの位相シフト量と、の差が90度
以上270度以内となる
ことを特徴とする多階調フォトマスクの製造方法。
【請求項9】
遮光部、透光部、及び半透光部を含む所定の転写用パターンを透明基板上に形成する多
階調フォトマスクの製造方法であって、
半透光膜、位相シフト調整膜、遮光膜、及び第1レジスト膜が前記透明基板上にこの順
に積層されたフォトマスクブランクを用意する工程と、
前記第1レジスト膜に描画および現像を施し、前記遮光部の形成予定領域を覆う第1レ
ジストパターンを形成する工程と、
前記第1レジストパターンをマスクとして前記遮光膜をエッチングする第1エッチング
工程と、
前記第1レジストパターンを除去したのち、前記第1エッチング工程の行われた前記フ
ォトマスクブランク上に第2レジスト膜を形成する工程と、
前記第2レジスト膜に描画および現像を施し、前記遮光部の形成予定領域と、前記遮光
部と前記透光部との境界部分に位置する位相シフタ部の形成予定領域と、を覆う第2レジ
ストパターンを形成する工程と、
前記第2レジストパターンをマスクとして前記位相シフト調整膜をエッチングして前記
半透光部と前記位相シフタ部とを形成する第2エッチング工程と、
前記第2レジストパターンを除去したのち、前記第2エッチング工程の行われた前記フ
ォトマスクブランク上に第3レジスト膜を形成する工程と、
前記第3レジスト膜に描画および現像を施し、前記透光部の形成予定領域を除く領域を
覆う第3レジストパターンを形成する工程と、
前記第3レジストパターンをマスクとして前記半透光膜をエッチングする第3エッチン
グ工程と、
前記第3レジストパターンを除去する工程と、を有し、
i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が前記位相シフタ部を透過するときの位
相シフト量と、前記露光光が前記透光部を透過するときの位相シフト量と、の差が90度
以上270度以内となる
ことを特徴とする多階調フォトマスクの製造方法。
【請求項10】
前記第2レジストパターンを形成する前記工程では、前記遮光部と前記半透光部との境
界部分に位置する第2の位相シフタ部の形成予定領域を覆う前記第2レジストパターンを
形成し、
前記第2エッチング工程では、前記第2の位相シフタ部を形成し、
i線〜g線の範囲内の代表波長を有する露光光が前記第2の位相シフタ部を透過すると
きの位相シフト量と、前記露光光が前記半透光部を透過するときの位相シフト量と、の差
が90度以上270度以内となる
ことを特徴とする請求項9に記載の多階調フォトマスクの製造方法。
【請求項11】
前記位相シフト調整膜が、前記遮光膜及び前記半透光膜のエッチングに用いるエッチン
グ液又はエッチングガスに対して耐性を有する
ことを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の多階調フォトマスクの製造方法。
【請求項12】
請求項1から7のいずれかに記載の多階調フォトマスク、又は請求項8から11のいずれかに記載の製造方法による多階調フォトマスクを介し、被転写体上に形成されているレジスト膜に前記露光光を照射することにより、前記レジスト膜に前記転写用パターンを転写する工程を有する
ことを特徴とするパターン転写方法。
【請求項13】
前記被転写体上に形成されている前記レジスト膜は、前記位相シフタ部に対応する部分
の露光光に対して実質的に感度を有さない
ことを特徴とする請求項12に記載のパターン転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−215614(P2011−215614A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55408(P2011−55408)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】