説明

大治療質量エアロゾルの高度に効率的な送達

【課題】薬剤の少なくとも約50%の名目上の用量が単回段階吸入システムを介して肺系に送達される、薬剤の肺系への送達;例えば、治療剤、予防剤、診断剤または予後剤等の薬剤の比較的大きな質量の薬剤の送達;比較的大きな質量の生物活性薬剤、特に大きな質量の吸入乾燥粉体の送達;単純呼吸活性化デバイスから、単回ステップで、単回の高用量の生物活性剤等の薬剤を肺系に送達する方法を提供すること。
【解決手段】a)薬剤を含む粒子を提供すること(ここで、該粒子は、0.4g/cm3未満のタップ密度を有し、該粒子の少なくとも75.0%が、空気力学的粒子サイズ分布において6.8μm未満の細かい粒子画分を有する);および
b)粒子の集団を有する容器から、粒子を被験体の気道に投与すること(ここで、粒子は単回の呼吸活性化ステップで少なくとも50%の粒子の集団を肺に送達する)、
を含む、単回の呼吸活性化ステップでの肺系への薬剤の送達方法に使用される粒子であって、送達される粒子の集団の少なくとも50%が4μm未満の平均空気力学的直径を有する、粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単回の呼吸活性化ステップでの肺系への薬剤の送達方法に使用される粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
治療薬を気道に送達するためのエアロゾルは、例えば、Adjei,A.およびGarren,J.Pharm.Res.,7:565〜569(1990);並びにZanen,P.およびLamm,J.−W.J.,Int.J.Pharm.,114:111〜115(1995)に述べられている。気道は、中咽頭と喉頭とを含む上気道と、その後に気管支および細気管支への分岐部に続く気管を含む下気道とを包含する。上気道および下気道は、誘導気道と呼ばれる。その後、末端細気管支は、最終的な呼吸領域である肺胞または深肺(deep lung) へと至る呼吸細気管支に分かれる。Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、6:273〜313(1990)におけるGonda,I.「気道への治療および診断薬の送達のためのエアロゾル(Aerosols for delivery of therapeutic and diagnostic agents to the respiratory tract)」。深肺または肺胞は、全身薬物送達のための吸入治療エアロゾルの主要標的である。
【0003】
吸入エアロゾルは、喘息および嚢胞性線維症を含む局所肺疾患の治療のために使用されており(Anderson,Am.Rev.Respir.Dis.,140:1317〜1324(1989))、そしてさらにペプチドおよびタンパク質の全身送達の潜在的可能性も有する(PattonおよびPlatz,Advanced Drug Delivery Reviews,8:179〜196(1992))。
【0004】
高分子を含む多数の分子の相対的に高いバイオアベイラビリティーは、吸入により達成されうる。Wall,D.A.,Drug Delivery,2:1〜20(1995);Patton,J.およびPlatz,R.,Adv.Drug Del.Rev.,8:179〜196(1992);ならびにByron,P.,Adv.Drug.Del.Rev.,5:107〜132(1990)。結果として、治療薬のいくつかのエアロゾル処方が用いられているか、または肺への送達について試験されている。Patton,J.S.ら、J.Controlled Release,28:79〜85(1994);Damms,B.およびBains,W.,Nature Biotechnology(1996);Niven,R.W.ら、Pharm.Res.,12(9):1343〜1349(1995);ならびにKobayashi,S.ら、Pharm.Res.,13(1):80〜83(1996)。
【0005】
しかし、肺薬物送達戦略は、特に、高分子の送達に関する多くの難点が存在している;該難点としては、エアロゾル化の際のタンパク質の変性、口腔咽頭腔における吸入薬物の過度の損失(しばしば80%を超える)、沈着部位の制御が困難であること、呼吸パターンの変動性による治療結果の再現性の欠如、潜在的に局所毒性作用をもたらす薬物の迅速すぎる吸収が頻繁に起こること、肺マクロファージによる食作用が挙げられる。
【0006】
さらに、吸入治療に現在入手できる多くのデバイスは、薬物損失が付随する。吸入治療の効率を改善するための治療用エアロゾル吸入器の設計に多大の努力が払われている。Timsinaら、Int.J.Pharm.,101:1〜13(1995);およびTansey,I.P.,Spray Technol.Market,4:26〜29(1994)。また、特に、吸入治療の効率を大きく低下させる現象である粒子凝集を回避する必要性に関して、乾燥粉体エアロゾル表面テクスチャーの設計にも関心が払われている。French,D.L.,Edwards,D.A.およびNiven,R.W.,J.Aerosol Sci.,27:769〜783(1996)。
【0007】
乾燥粉体製剤(「DPF」)は、肺送達に対するエアロゾル製剤としての関心を増加している。Damms,B.およびW.Bains,Nature Biotechnology(1996);Kobayashi,S.ら、Pharm.Res.,13(1):80〜83(1996);ならびにTimsina,M.ら、Int.J.Pharm.,101:1〜13(1994)。吸入治療用の乾燥粉体エアロゾルは、一般に、主として5μm未満の範囲の平均幾何学的直径で製造される。Ganderton,D.,J.Biopharmaceutical Sciences,3:101〜105(1992);並びにGonda,I.、「エアロゾル送達における物理−化学的原理(Physico−Chemical Principles in Aerosol Delivery)」、Topics in Pharmaceutical Sciences(1991)、Crommelin,D.J.およびK.K.Midha編集、Medpharm Scientific Publishers,Stuttgart,p.95〜115,1992。大きな「キャリア」粒子(薬物を含まない)は、治療用エアロゾルと共に同時送達され、数ある恩恵の中でも特に、効率的なエアロゾル化を実現するのを助ける。French,D.L.,Edwards,D.A.およびNiven,R.W.,J.Aerosol Sci.,27:769〜783(1996)。
【0008】
DPFの不利な点は、微粒子の粉体は、通常、流動性およびエアロゾル化特性が低いため、口腔と咽喉での沈着を免れ、肺に沈着する吸入エアロゾルの分画である、エアロゾルの呼吸用分画が比較的少ないことである。Gonda,I.,Topics in Pharmaceutical Sciences、(1991)、D.CrommelinおよびK.Midha編集、Stuttgart,Medpharm Scientific Publishers,p.95〜117(1992)。低い流動性およびエアロゾル化特性は、疎水性、静電性および毛管相互作用などの粒子−粒子間相互作用に起因する粒子の凝集によって典型的に引き起こされる。DPFにおいて、いくつかの改善がなされている。例えば、大きな粒子径を有する乾燥粉体製剤(DPF)は、低い凝集性(Edwardsら、Science 276:1868〜1871(1997))、容易なエアゾール化、および可能性の低い食作用などの改善された流動特性を保持することが示されている。Rudt,S.およびR.H.Muller,J.,Contorolled Release,22:263〜272(1992);Tabata,Y.およびY.Ikada,J.Biomed.Mater,Res.,22:837〜858(1988)。局所または全身送達のいずれかのための治療薬の短期および長期放出の両方に対して有効な乾燥粉体吸入治療には、効率よく、治療レベルで、過剰なエネルギー投入の必要無くDPFを肺へ送達する方法が必要である。
【0009】
Cipollaらにより記載されたようなネブライザー(Cipollaら、Respiratory Drug Delivery VII、Biological,Pharmaceutical,「最適化されたエーローゾルによる薬物送達に関する臨床的および制御論点(Clinical and Regulatory Issues Relating to Optimized Drug Delivery by Aerosol) 」、2000年5 月14〜18日に会議が行なわれた(Conference held May 14‘18,2000)、Palm Springs,FL、その内容は、参照としてその全体が本明細書に援用される)もまた、肺送達に使用される。
【0010】
肺への乾燥粉体製剤を送達するのに使用されうる吸入デバイスとしては、非呼吸活性化デバイスまたは「マルチステップ」デバイスが挙げられる。かかるデバイスの1つは、1999年12月 7日Pattonらに付与された米国特許第 5,997,848号明細書に記載されており、その全教示は参照として本明細書に組み込まれる。これらのデバイスにおいて、薬物製剤は、患者の呼吸に依存しないエネルギーにより最初に分散され、次いで吸入される。
【0011】
「単回の呼吸活性化ステップ(breath-activated-step)」を利用する吸入デバイスは、被験体によって直ちに吸入される粉体を作動する、すなわち単回のステップで、例えば単純な乾燥粉体吸入器で分散するように設計される(例えば、米国特許第 4,995,385号および米国特許第 4,069,819号参照)。
【0012】
吸入器の他の例としては、限定されないが、Spinhalar(登録商標)(Fisons, Loughborough, U.K.)およびRotahaler(登録商標)(Glaxo-Wellcome,Research Triangle Park, N.C.) が挙げられる。
【0013】
「単回ステップ」吸入器と対照的に、存在している「多段階吸入器」は、肺への薬物の送達に余分なエネルギーが必要とされるので、操作するのがより複雑であり、よりコストがかかる傾向がある。必要とするこのエネルギーの量は、薬物質量の増加と共に増加する。他方、気道への薬物送達の「高い効率」(薬物容器に最初に含まれる薬物質量(すなわち、「名目上の用量(nominal dose)」)の約50%を意味する)は、呼吸活性化多段階吸入器システムを用いて典型的に得られるのみである。それゆえ、今まで患者は、コスト/複雑さと薬物送達効率との間の選択をする必要があった。この兼ね合いに関する理由は、存在している吸入方法論およびデバイスは、本来の製剤の無効果および/または本来のデバイス設計の制限に関連するためである。かかる無効果は、所望でない薬物損失および治療の増加した全体的なコストを生じる。さらに、結果としてしばしば、存在している吸入デバイスおよび方法論は、しばしば単回呼吸における薬物の十分な(例えば、治療)質量を肺へ送達することができない。現在、液体または乾燥粉体吸入器を介して単回呼吸で肺に送達されうる薬物の量は、一般に5mgを超えない(Cipollaら、Resp.Drug Delivery,VII 2000:231〜239(2000))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それゆえ、薬剤の少なくとも約50%の名目上の用量が単回段階吸入システムを介して肺系に送達される、薬剤の肺系への送達の必要性が存在する。また、例えば、治療剤、予防剤、診断剤または予後剤等の薬剤の比較的大きな質量の薬剤の送達の必要性が存在する。比較的大きな質量の生物活性薬剤、特に大きな質量の吸入乾燥粉体の送達の必要性もまた、存在する。さらに、単純呼吸活性化デバイスから、単回ステップで、単回の高用量の生物活性剤等の薬剤を肺系に送達する方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の要旨は、
〔1〕a)薬剤を含む粒子を提供すること(ここで、該粒子は、0.4g/cm3未満のタップ密度を有し、該粒子の少なくとも75.0%が、空気力学的粒子サイズ分布において6.8μm未満の細かい粒子画分を有する);および
b)粒子の集団を有する容器から、粒子を被験体の気道に投与すること(ここで、粒子は単回の呼吸活性化ステップで少なくとも50%の粒子の集団を肺に送達する)、
を含む、単回の呼吸活性化ステップでの肺系への薬剤の送達方法に使用される粒子であって、送達される粒子の集団の少なくとも50%が4μm未満の平均空気力学的直径を有する、粒子、
〔2〕薬剤が、治療剤、予防剤、診断剤および生物活性剤からなる群より選ばれるものである、〔1〕記載の粒子、
〔3〕粒子が、5μm よりも大きな幾何学的直径または0.1g/cm3よりも大きな動力学的バルク密度を有するものである、〔1〕記載の粒子、
〔4〕容器が少なくとも0.37cm3 の容積を有するものである、〔1〕記載の粒子、
〔5〕送達が主として深肺または中央気道に対して行われる、〔1〕記載の粒子、
〔6〕生物活性剤が硫酸アルブテロール、インスリン、成長ホルモン、臭化イプラトロピウム、フルチカゾン、サルメテロール、L-ドパ、疎水性薬物、親水性薬物およびモノクローナル抗体からなる群より選ばれるものである、〔2〕記載の粒子、
〔7〕粒子が噴霧乾燥粒子または乾燥粉体の形態である、〔1〕記載の粒子、
〔8〕気道への投与が乾燥粉体吸入器により行われるものである、〔1〕記載の粒子、
〔9〕粒子が非重合体である、〔1〕記載の粒子、
〔10〕薬剤が非結晶性である、〔1〕記載の粒子、
〔11〕診断剤が標識を含有してなる、〔2〕記載の粒子、
〔12〕標識が、放射性同位体、エピトープ標識、親和性標識、酵素標識、蛍光基および化学発光基からなる群より選ばれるものである、〔11〕記載の粒子、
〔13〕放射性同位体が99m Tcである、〔12〕記載の粒子、
〔14〕薬剤が粒子に取り込まれているか、粒子の表面に付着しているか、または粒子の表面に吸着しているものである、〔1〕記載の粒子、
〔15〕薬剤が噴霧乾燥プロセスにより粒子に取り込まれたものである、〔14〕記載の粒子、
〔16〕a)薬剤を含む粒子を提供すること(ここで、該粒子は、0.4g/cm3未満のタップ密度を有し、該粒子の少なくとも75.0%が、空気力学的粒子サイズ分布において6.8μm未満の細かい粒子画分を有する);および
b)粒子の集団を有する容器から被験体の気道に粒子を投与すること(ここで、粒子は単回の呼吸活性化ステップで少なくとも50%の粒子の集団を肺に送達する)、
を含む、単回の呼吸での肺系への薬剤の送達方法に使用される粒子であって、送達される粒子の集団の少なくとも50%が4μm未満の平均空気力学的直径を有する、粒子、
〔17〕送達が単回呼吸活性化ステップで起こる、〔16〕記載の粒子、
〔18〕薬剤が、治療剤、予防剤、診断剤および生物活性剤からなる群より選ばれるものである、〔16〕記載の粒子、
〔19〕粒子が5μm よりも大きな幾何学的直径または0.1g/cm3よりも大きな動力学的バルク密度を有するものである、〔16〕記載の粒子、
〔20〕容器が少なくとも0.37cm3 の容積を有するものである、〔16〕記載の粒子、
〔21〕送達が主として深肺または中央気道に対して行われる、〔16〕記載の粒子、
〔22〕生物活性剤が硫酸アルブテロール、インスリン、成長ホルモン、臭化イプラトロピウム、フルチカゾン、サルメテロール、L-ドパ、疎水性薬物、親水性薬物およびモノクローナル抗体からなる群より選択されるものである、〔18〕記載の粒子、
〔23〕粒子が噴霧乾燥粒子または乾燥粉体の形態である、〔16〕記載の粒子、
〔24〕気道への投与が乾燥粉体吸入器によるものである、〔16〕記載の粒子、
〔25〕粒子が非重合体である、〔16〕記載の粒子、
〔26〕薬剤が非結晶性である、〔16〕記載の粒子、
〔27〕診断剤が標識を含有してなる、〔18〕記載の粒子、
〔28〕標識が、放射性同位体、エピトープ標識、親和性標識、酵素標識、蛍光基および化学発光基からなる群より選ばれるものである、〔27〕記載の粒子、
〔29〕放射性同位体が99m Tcである、〔28〕記載の粒子、
〔30〕薬剤が粒子に取り込まれているか、粒子の表面に付着しているか、または粒子の表面に吸着しているものである、〔16〕記載の粒子、
〔31〕薬剤が、噴霧乾燥プロセスにより粒子に取り込まれているものである、〔30〕記載の粒子
に関する。
【0016】
発明の要旨
本発明は、薬剤(例えば、治療剤、予防剤、診断剤、予後剤)の肺系への送達方法に関する。本発明はまた、生物活性剤の肺系への送達方法に関する。
【0017】
1つの態様において、本発明は、a)薬剤を含有する粒子を提供すること;およびb)粒子の集団を有する容器(receptacle)から被験体の気道に粒子を投与すること、ここで粒子は、粒子の集団の少なくとも約50%を送達する、を含む、単回の呼吸活性化ステップにおける肺系への薬剤の送達方法が記載される。
【0018】
もう1つの態様において、本発明は、a)薬剤を含有する粒子を提供すること;およびb)粒子の集団を有する容器から、被験体の気道に粒子を投与すること、ここで粒子は少なくとも約5mgの薬剤を送達する、を含む、単回の呼吸における肺系への薬剤の送達方法が記載される。他の態様において、粒子は、少なくとも約7mgの薬剤、少なくとも約10mgの薬剤、少なくとも約15mgの薬剤、少なくとも約20mgの薬剤または少なくとも約25mgの薬剤を送達する。より高い量の薬剤がまた送達され得、例えば、粒子は、少なくとも約35mg、少なくとも約40mgまたは少なくとも約50mgの薬剤を送達しうる。
【0019】
もう1つの態様において、本発明は、a)0.4g/cm3 未満のタップ密度を有するキャリア粒子を提供すること;b)少なくとも1つの薬剤を含有する組成物を提供すること;c)a)のキャリア粒子およびb)の組成物を混合して、呼吸用組成物を形成すること;ならびにd)c)の呼吸用組成物を被験体の気道に投与すること、を含む、肺系への薬剤の送達方法が記載される。本明細書で使用する場合、用語「呼吸用組成物」は、被験体の気道への送達に適する組成物のことをいう。
【0020】
本発明はまた、肺系に送達しうる呼吸用組成物が記載される。本発明の呼吸用組成物は、好ましくは、0.4g/cm3 未満のタップ密度を有するキャリア粒子および薬剤を含有する組成物を含む。1つの態様において、呼吸用組成物に含まれるキャリア粒子は、薬剤なしで別に調製され、次いで薬剤を含む組成物と混合されうる。
【0021】
1つの態様において、本発明の粒子は、粒子の集団を有する、保持する、含むまたは封入する容器から投与される。少なくとも約0.37cm3 の容積を有する容器が本発明で使用されうる。少なくとも約0.48cm3 、0.67cm3 または0.95cm3 の容積を有するより大きな容器もまた使用されうる。容器は、好ましくは乾燥粉体吸入における使用に適したデザインを有しうる。
【0022】
もう1つの態様において、凝集状態において乾燥粉体の粒子を保持するエネルギーは、患者の呼吸が、妥当な生理学的範囲の呼吸流速にわたり、容器に含まれる粉体を呼吸用粒子に脱凝集するのに十分な程である。脱凝集した粒子は、高い効率で、患者の呼吸を介して気道および/または深肺に貫通し、沈着しうる。
【0023】
本発明の好ましい態様において、粒子は、約0.4g/cm3 未満のタップ密度、好ましくは約0.1g/cm3 以下のタップ密度を有する。もう1つの態様において、粒子は、5μmより大きい、好ましくは約10μm以上の質量メジアン幾何学的直径(MMGD)を有する。さらにもう1つの態様において、粒子は、約1μm〜約5μmの範囲の質量メジアン空気力学的直径(MMAD)を有する。
【0024】
1つの態様において、キャリア粒子は、約10ミクロンの直径および約0.001g/cm3 の密度および約0.3ミクロン、好ましくは約0.001〜約0.3ミクロン(約10〜約300ナノメートル)または約0.001〜約0.2ミクロンの空気力学的直径を有する。キャリア粒子は、この範囲では呼吸可能であるとみなされない。サブミクロン粒子は、呼吸可能でないキャリア粒子を呼吸用範囲にするために十分な密度を与えうる。1つの態様において、サブミクロン粒子の密度は、例えば、約1g/cm3 である。かかるキャリア粒子は、薬剤がキャリア粒子の表面に付着するか、表面上に吸着されるかまたは化学的に会合する場合、ナノメートルサイズの薬剤の治療量がキャリア粒子の空気力学的挙動に有害な影響を与えないことを確実にするように設計される。例えば、この課題を解決するために、キャリア粒子は、約10μmの直径および非常に低い密度(約0.001g/cm3 )を有するように設計され、それ自身により1〜5μmの呼吸可能範囲以下になる非常に小さい空気力学的サイズ(例えば、0.3μm)を有する粒子を製造しうる。しかし、より大きな密度(例えば、約1g/cm3 )を有し、薬剤を含有する十分なナノメートルサイズのサブミクロン粒子(例えば、約10〜200nm)を含める場合、得られる粒子は、必要なサイズおよび空隙率範囲内になるように操作される。このように、薬剤のより大きな負荷が達成される。1つの説明に束縛されないが、微粉化粒子の小さな粒子サイズのために、所定の容積内の粒子−粒子接触点の数は、より大きな粒子から作製された粉体と比較して大きい。小さな粒子サイズを有する粉体は、エアロゾル雲に分散されるために大きなエネルギーを必要とする。かかる粉体の大きなエネルギーの必要条件の影響は、大きなデバイスおよび小さな用量質量の両方が必要であるということである。
【0025】
本発明には、多数の利点がある。例えば、薬剤(例えば、治療剤、予防剤、診断剤、予後剤)の大きな単回用量が、高い効率を有するDPIを介して肺系に投与されうる。本発明は、効率を増加し、かつ廃棄薬物を最小化する肺送達のための単一の対費用効果の高いデバイスを使用する。投薬頻度が本発明の送達法により低減されうるので、治療または予防プロトコルに対する患者のコンプライアンスが改善すると予期されうる。肺送達は、注射の必要性を有利に排除しうる。例えば、毎日のインスリン注射の必要性が避けられうる。また、粒子それ自身の特性を高めることは、治療、予防、診断または予後効果を達するのに必要な薬剤の量が実際に低減されるという用量利点を生じうる。実施例5〜9は、L−ドパを用いてかかる効果を開示する。この用量利点は、他の投与形態、特に経口投与と比較してバイオアベイラビリティー(例えば、血漿レベルのバイオアベイラビリティー)ならびに治療利点において少なくとも2倍増加を生じうる。さらになお、高度に効率的な送達および用量利点の組み合わせは、現在の既知のレベルを超えて薬剤の効果を強化する。また、粒子が種々の薬剤のためのキャリアとして使用されうるという事実は、本発明の広い適応性を強調する。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、薬剤の少なくとも約50%の名目上の用量が単回段階吸入システムを介して肺系に送達される、薬剤の肺系への送達が達成される。また、例えば、治療剤、予防剤、診断剤または予後剤等の薬剤の比較的大きな質量の薬剤の送達が達成される。比較的大きな質量の生物活性薬剤、特に大きな質量の吸入乾燥粉体の送達もまた、達成される。さらに、単純呼吸活性化デバイスから、単回ステップで、単回の高用量の生物活性剤等の薬剤を肺系に送達することが達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本発明の特徴及び他の詳細を、本発明のステップとしてまたは本発明の部分の組み合わせとしてのいずれかとして、添付の図面を参照してさらに詳細に説明し、請求の範囲を指摘する。本発明の特定の態様は説明のために示されるが、本発明の限定としてではない。本発明の主な特徴は、本発明の範囲を逸脱しない種々の態様において使用されうる。本出願はまた、2000年9月19日に提出された「中枢神経系の障害の治療における肺送達」と題する米国特許願第09/665,252号(代理人管理番号2685.1009−000号)、および本出願と同日に提出された同一の題名および発明者のその一部継続出願(代理人管理番号2685.1009−001号)に関連する。前記出願の全教示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
本発明は、被験体の肺系に粒子を送達する方法に関する。本発明はまた、キャリア粒子を含み、肺系に送達されうる呼吸用組成物(respirable composition)に関する。
【0029】
1つの態様において、本発明の粒子は薬剤を含有する。本明細書で使用する場合、用語「薬剤」としては、限定されないが、治療剤、予防剤、診断剤および予後剤が挙げられる。本発明はまた、本方法により送達される粒子をそれ自身が含有する薬剤に関連する。目的とする用途に依存して、薬剤は、限定されないが、乾燥粉体(例えば、粒子粉体)、粒子(限定されないが、微粉化粒子、サブミクロン粒子、ナノメートルサイズの粒子、リポソーム、ミクロスフェア、微粒子、ミセル、およびビーズなど)、結晶、溶液、懸濁液または乳濁液の形態でありうる。用語「薬剤」は生物活性剤を含む。本明細書で使用する場合、用語「生物活性」は、生存生物、例えば、哺乳動物および特にヒト被験体において効果を有することを言う。粒子または粒子粉体の形態における薬剤は、粉砕、濾過、蒸発、抽出および噴霧乾燥ならびに他の当業者に公知の技術により、調製されうる。1つの態様において、薬剤は非結晶性であり、例えば薬剤は結晶構造を持たないかまたは結晶を含有しない。
【0030】
適切な生物活性剤のいくつかの例としては、薬物(例えば、疎水性薬物、親水性薬物)、医薬製剤、ビタミン、医薬アジュバント、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、ホルモン、アミノ酸、核酸、ワクチン製剤、不活化ウイルス、リン脂質、界面活性剤およびそれらの組み合わせが挙げられる。薬剤の他の例としては、合成化合物、無機化合物および有機化合物が挙げられる。
【0031】
本発明はまた、噴霧乾燥による特有の粒子の調製に関する。優れた呼吸可能性、流動性および分散性を与える粒子の特有の特性は、薬剤が、(1)噴霧乾燥プレ混合の一部でありそれにより粒子に取り込まれる、(2)別々に調製された粒子に添加され、薬剤が粒子上に接着するまたは粒子と化学的に会合する、または(3)薬剤が粒子と混合され、粒子と同時送達されるようにブレンドされることにより維持される。化学的会合としては、限定されないが、イオン相互作用、荷電した粒子および/または薬剤の引力、双極子−双極子相互作用、ファンデルワールス力、共有結合相互作用、吸着および水素結合が挙げられる。
【0032】
従来公知の粒子とは異なって、本発明の乾燥粒子は用途が広い。例えば、本発明の粒子は、薬剤を取り込み、薬剤を運び、薬剤またはその組み合わせを同時送達することができる。1つの態様において、同時送達される粒子は、肺において所望の沈着部位に少なくとも1つの薬剤を付随するエスコート(escort)として記載されうる。例えば、乳糖は、承認された市販のキャリアである。しかし、乳糖は、深肺に効率的に送達されえない。本発明の粒子は、深肺に達し、所望の薬剤を所望の沈着部位に、エスコート、付随および/または同時送達しうる。いくつかの例が本明細書において提供される。これに関連して、本発明の粒子は、キャリアとして使用する場合、乳糖を含む他のキャリアにはない利点を有し、オプションを提供する。
【0033】
本発明の粒子は、驚くべきほど高い負荷の薬剤を保有しうる。本発明の粒子はまた、高度に分散され、呼吸系において領域を標的化しうる。本発明の方法において使用される、驚くべきほど高い負荷の薬剤を保有する乾燥粒子を含有する組成物はまた、呼吸系、例えば、上気道、中心気道および/または深肺の特定領域に標的化されうる。
【0034】
本発明の粒子および薬剤の個々の特性を考慮することにより、十分な肺投与に対して組成物が最適化されうる。高度に分散しうる粒子を含有する組成物は、任意にさらなる粒子および/または薬剤を含みうる。本発明の粒子を含有する組成物は、薬剤有りまたは無しの粒子を含むことが理解される。存在する場合、薬剤は、他の物の間で、(1)粒子に取り込まれうる、(2)粒子上に吸着、付着または粒子と化学的に会合されうる、および/または(3)薬剤が粒子と混合され、かつ同時送達されるようにブレンドされうる。
【0035】
本明細書中に記載されるように、本発明の粒子、本明細書で規定される特に高度に分散した粒子を含有する組成物は、さらに薬剤を含みうる。1つの態様において、本発明の粒子を含有する組成物は、少なくとも1つのさらなる薬剤を含有する。示されるように、本発明の粒子を含有する組成物は、粒子において薬剤を取り込み、粒子と薬剤を保有し、および/または薬剤もしくはそれらの組み合わせを同時送達しうる。薬剤の例としては、限定されないが、治療剤、予防剤、診断剤および予後剤が挙げられる。適切な薬剤としてはまた、生物活性剤が挙げられる。適切な生物活性剤のいくつかの例としては、限定されないが、薬物(例えば、疎水性薬物、親水性薬物)、医薬製剤、ビタミン、医薬アジュバント、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、ホルモン、アミノ酸、核酸、ワクチン製剤、不活化ウイルス、肺界面活性剤およびそれらの組み合わせが挙げられる。他の例としては、治療、予防、診断および/または予後活性を有する、合成化合物、無機化合物および有機化合物、タンパク質およびペプチド、多糖および他の糖、脂質、ならびにDNAおよびRNA核酸配列が挙げられる。核酸配列としては、遺伝子、転写を阻害するDNAに相補的に結合するアンチセンス分子、およびリボザイムが挙げられる。薬物としては、疎水性薬物および親水性薬物が挙げられる。
【0036】
本発明の粒子に取り込まれる、粒子上に付着する、粒子と化学的に会合される、および/または粒子とブレンドされるかつ同時送達される薬剤を含む薬剤は、種々の生物学的活性を有しうる。かかる薬剤としては、限定されないが、血管作用性薬剤、神経作用性薬剤、ホルモン、抗凝固剤、免疫調節剤、細胞傷害剤、予防剤、抗生物質、抗ウイルス剤、アンチセンス剤、抗原および抗体、例えば、パリビズマブ(palivizumab) (Medimmune, Gaithersberg, MD) などのモノクローナル抗体が挙げられる。いくつかの場合には、タンパク質は、さもなければ適切な応答を誘発するために注入によって投与しなければならないであろう抗体または抗原であってもよい。種々の分子量を有する化合物、例えば、100〜500,000ダルトンを、被包することができる。本明細書において、タンパク質は、100アミノ酸残基以上からなり;ペプチドは100アミノ酸残基未満であるとして規定される。他に述べない限り、タンパク質という用語は、タンパク質およびペプチドの両方のことを言う。例としては、インスリンおよび他のホルモンが挙げられる。ヘパリンなどの多糖もまた投与されうる。
【0037】
粒子、特に本明細書に記載される高度に分散される粒子は、全身治療に適切な生物活性剤を含みうる。あるいは、前記粒子は、例えば、喘息、気腫または嚢胞性線維症の治療のための薬剤または全身治療のための薬剤などの肺の内部への局所送達のための生物活性剤を含みうる。例えば、嚢胞性線維症などの疾患の治療のための遺伝子を、喘息のためのβアゴニストのように投与しうる。他の特異的な生物活性剤としては、限定されないが、成長ホルモン(例えば、哺乳動物成長ホルモン、特にヒト成長ホルモン)、インターロイキン、インスリン、カルシトニン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(「LHRH」)またはゴナドトロピン放出ホルモン(「LHRH」)およびそれらのアナログ(例えば、レオプロリド(leoprolide))、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、上皮小体ホルモン関連ペプチド、ソマトスタチン、テストステロン、プロゲステロン、エストラジオール、ニコチン、フェンタニール、ノルエチステロン、クロニジン、スコポラミン、サリチル酸塩、クロモリンナトリウム、サルメテロール、ホルメテロール、臭化イプラトロピウム、アルブテロール(硫酸アルブテロールを含む)、フルチカゾン(fluticasone) 、バリウム(valium)、アルプラゾラムおよびレボドパ(L−ドパ)が挙げられる。他の適切な治療剤および/または予防剤としては、限定されないが、その全教示が参照により本明細書に組み込まれる2000年9月19日に提出された米国特許第5,875,776号明細書および米国出願番号09/665,252号(代理人管理番号2685.1009−000号)に記載されるものが挙げられる。インスリンを含むほとんどのタンパク質などの荷電したこれらの治療剤は、該荷電した薬剤とそれとは逆の電荷を有する分子との間の複合体として投与されうる。好ましくは、逆の電荷を有する分子は、荷電した脂質または逆の電荷を有するタンパク質である。粒子は、小さい分子および大きい分子の徐放性を可能にする脂質等の物質を取り込みうる。これらの複合体または物質の添加は、いずれのサイズおよび形の粒子にも適用でき、特に吸入粒子から治療剤の放出速度を変更するのに有用である。
【0038】
種々の診断剤および/または予後剤のいずれもが高度に分散しうる粒子内に取り込まれ得、患者に投与した後、取り込まれた薬剤を局所または全身送達しうる。あるいは、診断剤および/または予後剤は、本発明の高度に分散しうる粒子とともに保有され、該粒子上に付着し、該粒子と化学的に会合し、および/または該粒子とともに同時送達されうる。診断剤を取り込んだ粒子は、当該分野で得られる標準法および商業的に入手しうる装置を用いて検出されうる。
【0039】
1つの態様において、本発明の粒子を含有する組成物は、さらに診断および/または予後剤を含有する。診断剤および/または予後剤は標識を含有し得、限定されないが、放射性同位体、エピトープ標識、アフィニティー標識、スピン標識、酵素標識、蛍光基および化学発光基が挙げられる。1つの態様において、標識は、放射性同位体であり、例えば 99mTcである。さらなる標識が当該分野で周知であり、本発明に包含されることが理解される。
【0040】
生体適合性または薬理学的に許容されるいずれのガスも、例えば、当業者に公知のテクノロジーを用いて粒子に取り込むかまたは粒子の孔に捕獲することができる。ガスという用語は、画像化が実施される温度でガスであるかまたはガスを形成することができる化合物を指す。1つの態様において、粒子のまわりにガス不透過性バリアを形成することによって粒子中のガスの貯留を改善する。かかるバリアは当業者には周知である。
【0041】
利用されうる他の画像剤としては、陽電子射出断層撮影法(PET)、コンピュータ連動断層撮影法(CAT)、シングルフォトンエミッションコンピュータ断層撮影法、X線、X線透視および磁気共鳴画像法(MRI)において使用される市販の薬剤が挙げられる。
【0042】
MRIにおける造影剤として使用するための適切な物質の例としては、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)およびガドペントテートジメグルミン(gadopentotate dimeglumine)などのガドリニウムキレート、ならびに鉄、マグネシウム、マンガン、銅およびクロムが挙げられる。
【0043】
CATおよびX線のために有用な物質の例としては、ジアトリゾエートおよびイオタラメートに代表されるイオン性モノマー、イオパミドール、イソヘキソール(isohexol)およびイオベルソルのような非イオン性モノマー、イオトロールおよびイオジキサノールのような非イオン性ダイマー、およびイオン性ダイマー(例えばイオキサグレート)などの、静脈内投与のためのヨウ素ベースの物質が挙げられる。
【0044】
薬剤としてはまた、粒子上の反応性官能基を介して粒子に付着されうる標的化分子が挙げられうる。標的化分子は、肺内のものなどの特定のレセプター部位を有する粒子の結合相互作用を可能にする。粒子は、特異的にまたは非特異的に特定の標的に結合するリガンドの付着により標的化されうる。典型的な標的化分子としては、抗体(例えば、ポリクローナル血清、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ヒト)およびそのフラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)が挙げられ、抗体可変領域、レクチンおよびホルモンまたは例えば標的細胞の表面上のレセプターに特異的に結合しうる他の有機分子を含む。
【0045】
薬剤、および特に生物活性剤としてはまた、肺に内因性である界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。天然および合成の肺の界面活性剤は、本発明の範囲に包含される。
【0046】
本発明の方法はまた、容器に封入されうる本発明の粒子および/または本発明の該粒子を含有する組成物を被験体の気道に投与することに関する。本明細書に記載されるように、特定の態様において、本発明は、本発明の粒子の送達方法が記載され、一方、他の態様において、本発明は、本発明の粒子を含有する呼吸用組成物の送達方法が記載される。本明細書で使用する場合、「容器(receptacle)」という用語は、限定されないが、例えば、カプセル、発疱剤、フィルムでカバーされた容器ウェル(well)、チャンバーおよび当業者に公知の吸入デバイス中の粒子、粉体または呼吸用組成物を貯蔵する他の適切な手段が挙げられる。
【0047】
好ましい態様において、容器は、乾燥粉体吸入器中で使用される。本発明の方法で使用されうる乾燥粉体吸入器の例としては、限定されないが、米国特許第4,995,385号明細書および米国特許第4,069,819号明細書に開示されている吸入器、Spinhaler(登録商標)(Fisons, Loughborough, U.K.)、Rotahaler(登録商標)(Glaxo-Wellcome, Research Triangle Technology Park, North Carolina) 、FlowCaps(登録商標)(Hovione, Loures, Portugal) 、Inhalator(登録商標)(Boeringer-Ingelheim, Germany)、およびAerolizer(登録商標)(Novartis, Switzerland) 、Diskhaler(Glaxo-Wellcome, RTP, NC) および当業者に既知の他のものが挙げられる。1つの態様において、使用される吸入器は、代理人管理番号00166.0109.US00のもとで、2001年4月16日に提出されたDavid A. Edwardsらによる「吸入デバイスおよび方法」と題する米国特許願に開示されている。この出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
1つの態様において、容器の容量は、少なくとも約0.37cm3 である。もう1つの態様において、容器の容量は、少なくとも約0.48cm3 である。さらにもう1つの態様において、容器は、少なくとも約0.67cm3 または0.95cm3 の容量を有する。本発明はまた、カプセル、例えば、2 、1 、0 、00または000 などの特定のカプセルサイズを有するように設計されたカプセルである。適切なカプセルが、例えば、Shionogi(Rockville,MD)から得られうる。発疱剤が、例えば、Hueck Foils(Wall,NJ) から得られうる。本発明における使用に適切な他の容器および他のその容量は当業者に公知である。
【0049】
容器は、粒子および/または粒子を含有する呼吸用組成物を封入または保管する。1つの態様において、粒子および/または粒子を含有する呼吸用組成物は粉体の形態である。容器は、当該分野で公知のように、粒子および/または粒子を含有する組成物で充填される。例えば、真空充填、または詰める(tamping) 技術が使用されうる。一般に、粉体での容器の充填は、当該分野で公知の方法により行なわれうる。本発明の1つの態様において、容器に封入または保管される粒子、粉体または呼吸用組成物は、少なくとも約5mg の質量を有する。好ましくは、容器に保管または封入される粒子または呼吸用組成物の質量は、少なくとも約10mgである。
【0050】
本発明の1つの態様において、容器は、粒子の集団(mass)、特に本明細書に記載される高度に分散された粒子の集団を封入する。粒子の集団は、薬剤の名目上の用量を含有する。本明細書で使用する場合、用語「名目上の用量」は、容器中の粒子の集団に存在する薬剤の全質量(mass)を意味し、単回の呼吸における投与で入手しうる薬剤の最大量を表わす。
【0051】
粒子および/または粒子を含有する呼吸用組成物が容器に保管または封入され、被験体の気道に投与される。本明細書で使用する場合、粒子および/または呼吸用組成物の「投与」または「投与する」という用語は、粒子を被験体の気道に導入することを言う。
【0052】
本明細書に記載されるように、1つの態様において、本発明は、キャリア粒子と薬剤とを含有する呼吸用組成物について記載される。もう1つの態様において、本発明は、キャリア粒子と薬剤とを含有する呼吸用組成物の送達方法について記載される。本明細書で使用する場合、「キャリア粒子」という用語は、薬剤を含むかまたは含まない粒子のことをいい、例えば、薬剤の安定性、分散性、エアロゾル化、密度および/またはバルキング(bulking) 特性を増加することにより、被験体の呼吸系への薬剤の送達において補助する。ある態様において、本発明の粒子は、被験体の気道に送達されうるキャリア粒子であることが明らかである。
【0053】
1つの態様において、本発明は、薬剤を含有する組成物とキャリア粒子(薬剤を含まない)とをブレンドするかまたは混合することから形成される呼吸用組成物について記載される。次に、呼吸用組成物は、被験体の気道に投与されうる。もう1つの態様において、呼吸用組成物が、例えば、乾燥粉体吸入器デバイスの使用を介して、被験体の呼吸系に送達される。1つの態様において、呼吸用組成物は、微粉化粒子(例えば、サブミクロン粒子)の形態である薬剤を含む組成物を含有する。
【0054】
本発明の粒子が薬剤と同時投与されるキャリア粒子である態様において、キャリア粒子は、好ましくは、被験体の呼吸系(例えば、上気道、下気道、深肺)への薬剤の送達を増加する。1つの態様において、本発明の粒子は、薬剤と同時投与され、被験体の呼吸系の特定の領域(例えば、上気道、中央(central) 気道または好ましくは深肺)への薬剤の均一な送達を増加するキャリア粒子である。本発明のキャリア粒子の薬剤との同時投与はまた、マクロファージ(例えば、肺胞マクロファージ)による薬剤の食作用を低減するおよび/または薬剤の分散性およびエアロゾル化を増加する(例えば、粒子の凝集または集塊を減少することによる)のに役立ちうる。
【0055】
本明細書に記載されるように、本発明の粒子および該粒子を含有する呼吸用組成物は、任意に、肺に内因性である界面活性剤などの界面活性剤を含みうる。本明細書に記載される本発明の粒子および該粒子を含有する呼吸用組成物はまた、好ましくは、生体適合性および生分解性であり、任意に同時投与された薬剤の生分解性および/または送達の速度に影響を与えうる。
【0056】
本明細書に記載されるように、本明細書に記載される呼吸用組成物に含まれるキャリア粒子を含む粒子は、好ましくは、「空気力学的に軽い」。以下に記載するように、本明細書で使用する「空気力学的(aerodynamically)に軽い」は、0.4g/cm3 未満のタップ密度を有する粒子を言う。1つの態様において、キャリア粒子は、約0.1g/cm3 以下のタップ密度を有する。タップ密度およびタップ密度の測定方法のさらなる開示を、以下により詳細に記載する。
【0057】
1つの態様において、本明細書に記載される呼吸用組成物に含まれるキャリア粒子を含む粒子は、好ましくは、約5μmより大きい質量メジアン幾何学的直径(MMGD)を有する。他の態様において、粒子は、約5μmより大きく約30μmまでの範囲であるMMGDまたは約10μm〜30μmの範囲のMMGDを有する。MMGDおよび粒子のMMGDの計算方法のさらなる開示を、より詳細に以下に記載する。
【0058】
被験体の気道に投与されうる本発明の粒子および/または該粒子を含有する呼吸用組成物はまた、当業者に周知の薬学上許容されうるキャリアを任意に含みうる。本明細書で使用する場合、「薬学上許容されうるキャリア」という用語は、有意な有害な毒物学的作用無く患者の呼吸系に投与されうるキャリアのことを言う。適切な薬学上許容されうるキャリアとしては、吸入治療に典型的に使用されるもの(例えば、乳糖)が挙げられ、液体(例えば、生理食塩水)または粉体(例えば、粒子粉体)の形態の薬学上許容されうるキャリアが挙げられる。1つの態様において、薬学上許容されうるキャリアは、約50μm〜約200μmの範囲の平均直径を有する粒子、特にこの範囲にある乳糖粒子を含有する。本発明の粒子の投与、付随および/または同時送達に使用するための適切な薬学上許容されうるキャリアを当業者は容易に決定することができることが理解される。
【0059】
本発明の1つの態様において、粒子および/または粒子を含有する呼吸用組成物は、単回の呼吸活性化ステップで投与される。本明細書で使用する場合、「呼吸活性化(breath-activated)」および「呼吸作動性(breath-actuated)」という熟語は、交換可能に使用される。本明細書で使用する場合、「単回の呼吸活性化ステップ(single,breath-activated step)」は、1回のステップで粒子が分散され、かつ吸入されることを意味する。例えば、単回の呼吸活性化吸入デバイスにおいて、被験体の吸入エネルギーは、粒子を分散し、かつ口腔および鼻咽腔にそれらを到達させる。本発明の方法に使用されうる単回の呼吸作動性吸入器である適切な吸入器としては、限定されないが、米国特許第 4,995,385号明細書および米国特許第 4,069,819号明細書に開示されている単一の乾燥粉体吸入器、Spinhaler(登録商標)(Fisons, Loughborough, U.K.)、Rotahaler(登録商標)(Glaxo-Wellcome, Research Triangle Technology Park, North Carolina) 、FlowCaps(登録商標)(Hovione, Loures, Portugal) 、Inhalator(登録商標)(Boeringer-Ingelheim, Germany)、およびAerolizer(登録商標)(Novartis, Switzerland) 、Diskhaler(Glaxo-Wellcome, RTP, NC) および当業者に公知の他のものが挙げられる。1つの態様において、使用される吸入器は、代理人管理番号00166.0109.US00のもとで、2001年4月16日に提出されたDavid A. Edwardsらによる「吸入デバイスおよび方法」と題する米国特許願に記載されている。この出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
「単回呼吸」投与という用語は、単回の呼吸活性化投与を含みうるが、粒子、呼吸用組成物または粉体が最初に分散され、続く分散した粒子、呼吸用組成物または粉体の吸入または吸気の期間の投与もまた含みうる。投与の後者の形態では、被験体の吸入により供給されるエネルギーに追加されるエネルギーが粒子を分散する。患者の吸入により生じるエネルギーより他のエネルギーを使用する単回呼吸吸入器の例は、1999年12月 7日にPattonらに付与された米国特許第 5,997,848号明細書に記載されるデバイスであり、その全教示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
好ましい態様において、粒子、粒子を含有する呼吸用組成物または粉体を封入する容器は、単回呼吸活性化ステップにおいて空である。もう1つの好ましい態様において、粒子を封入する容器は、単回の吸入において空である。本明細書で使用する場合、「空(emptied) 」という用語は、容器に封入した粒子集団(mass)の少なくとも50%が、被験体の呼吸系への粒子の投与の間に吸入器から放出されることを意味する。
【0062】
本発明の好ましい態様において、投与される粒子は高度に分散されている。本明細書で使用する場合、「高度に分散した」粒子または粉体という用語は、約1バールで、HELOSまたは他のレーザー回折システムにより測定した場合、4バールで測定した幾何学粒子サイズの約1.5倍未満である幾何学的直径を有する乾燥粉体の粒子がRODOS開口部から放出されるように、RODOS乾燥粉体分散(または均等技術)により分散されうる粒子または粉体のことを言う。高度に分散した粉体は、互いに集塊する、凝集するまたは塊になる傾向が低いものであり、および/または、もし互いに集塊する、凝集するまたは塊になるとしても、それらが吸入器から放出される時および被験者により呼吸される時に容易に分散または脱集塊される。典型的には、本発明の方法に適切な高度に分散された粒子は、類似の空気力学的直径を有し、かつ肺系への送達に適切な標準的な微粉体と比較して、非常に低い凝集を示す。分散性を高める特性としては、例えば、粒子荷電、表面の粗さ、表面化学および相対的に大きい幾何学的直径が挙げられる。1つの態様において、幾何学的直径の二乗に反比例する粉体種(一定の粉体質量)の粒子間の引力および粒子により見られるせん断力が、幾何学的直径の二乗で増加するので、粉体の分散性の軽減は、4乗にした幾何学的直径の反比例のオーダーである。増加した粒子サイズは、粒子間付着力を減少させる(Visser,J., Powder Technology,58:1-10(1989))。したがって、大きな粒子サイズ、全ての他の均等のものは、低いエンベロープ質量密度の粒子のための肺へのエアロゾル化の効率を増加する。増加した表面の不規則および粗さはまた、粒子分散性を増加しうる。表面粗さは、例えば、しわにより表されうる。
【0063】
粒子は、好ましくは生分解性および生体適合性であり、そして任意に治療剤、予防剤、診断剤または予後剤の送達のための制御速度で生分解しうる。薬剤、好ましくは生物活性剤に加えて、粒子はさらに種々の物質を含みうる。無機物質および有機物質の両方が使用されうる。例えば、セラミックスが使用されうる。脂肪酸もまた空気力学的に軽い粒子を形成するために使用されうる。他の適切な物質としては、限定されないが、アミノ酸、ゼラチン、ポリエチレングリコール、トレハロース、乳糖、およびデキストランが挙げられる。好ましい粒子組成物を、以下にさらに記載する。1つの態様において、本発明の粒子は、非重合体である。もう1つの態様において、呼吸用組成物は、非重合体であるキャリア粒子を含む。
【0064】
本発明の1つの態様において、被験体の気道に投与される粒子は、約0.4g/cm3 未満のタップ密度を有する。約0.4g/cm3 未満のタップ密度を有する粒子は、本明細書において「空気力学的に軽い」という。好ましい態様において、粒子は約0.1g/cm3 以下のタップ密度を有する。タップ密度は、粒子を特徴づけるエンベロープ質量密度の基準である。統計的に等方性の形の粒子のエンベロープ質量密度は、封入されうる最小の球のエンベロープ容量で割った粒子の集団として定義される。低いタップ密度に寄与しうる特徴としては、不規則な表面テクスチャーおよび中空または多孔性の構造が挙げられる。
【0065】
タップ密度は、デュアルプラットホームマイクロプロセッサ制御タップ密度テスター(Dual Platform Microprocessor Controlled Tap Density Tester)(Vankel,NC)などの当業者に既知の器械を用いて測定されうる。タップ密度はエンベロープ質量密度の標準的な基準である。タップ密度は、「USPバルク密度およびタップ密度」、米国薬局方協約、Rockville,MD,第10版補遺、4950〜4951、1999の方法を用いて測定できる。もう1つの態様において、粒子は、約5μmより大きいおよび好ましくは約10μm以上の質量メジアン幾何学的直径(MMGD)を有する。1つの態様において、粒子は、約5μmより大きく、かつ約30μmまでの範囲のMMGDを有する。もう1つの態様において、粒子は約10μmから約30μmの範囲のMMGDを有する。
【0066】
1つの態様において、本発明の粒子を含有する組成物は、0.1g/cm3 以上の動力学的バルク密度および約0.4g/cm3 未満のタップ密度を有する。好ましい態様において、該粒子は、0.1g/cm3 より大きい動力学的バルク密度および約0.1g/cm3 以下のタップ密度を有する。
【0067】
粒子のMMGDは、クールターマルチサイザー(Multisizer)IIe(Coulter Electronics,Luton,Beds,England)のような電気的ゾーン感知装置またはレーザー回折装置(例えばHelos,Sympatec,Inc.,Princeton,New Jersey)を用いて測定できる。サンプル中の粒子の直径は、粒子組成物および合成方法などの要因に依存して変化する。サンプル中の粒子のサイズ分布は、気道内の標的部位における至適沈着を可能にするように選択できる。
【0068】
本発明の使用に適切な空気力学的に軽い粒子は、あらかじめ選択されたサイズ分布を持つ粒子サンプルを提供するために、例えば濾過または遠心分離によって製造または分離することができる。例えば、サンプル中の粒子の30%、50%、70%または80%より多くが、少なくとも5μmという選択された範囲内の直径を持つことができる。粒子の一定のパーセンテージが属さねばならない選択範囲は、例えば約5から30μm、または任意に5から15μmでありうる。1つの態様において、粒子の少なくとも一部が約9から11μmの直径を有する。任意に、粒子サンプルはまた、粒子の少なくとも90%、または任意に95%または99%が選択範囲内の直径を持つように製造することができる。粒子サンプル中に空気力学的に軽い、より大きな直径(少なくとも約5μm)の粒子がより高い比率で存在することは、粒子の中に取り込まれる、粒子に保有される、粒子の表面に付着される、粒子の表面に吸着されるおよび/または粒子と共に同時送達される治療剤、予防剤、診断剤または予後剤の深肺への送達を増強する。
【0069】
1つの態様において、粒子サンプル中で、四分位数間領域は2μmであり得、例えば、約7.5〜13.5μmの間の平均直径を有する。したがって、例えば、粒子の少なくとも30%〜40%は、選択範囲内の直径を有しうる。好ましくは、粒子の前記割合は1μmの範囲内、例えば6.0〜7.0μm、10.0〜11.0μm,または13.0〜14.0μmの直径を有しうる。
【0070】
さらなる態様において、粒子は、約1μm〜約5μmの範囲の空気力学的直径を有する。空気力学的直径、daerは、式:


式中、dgは、幾何学的直径、例えばMMGHであり、ρは、粉体密度である、により計算されうる。実験的には、空気力学的直径は、重力沈降法を使用することにより決定され得、それにより、粒子の全体が一定の距離沈降する時間が、粒子の空気力学的直径を直接推論するのに使用される。質量メジアン空気力学的直径(MMAD)を測定するための間接的な方法は、多段階液体インピンジャー(MSLI)である。
【0071】
1つの態様において、本発明の粒子は、0.1g/cm3 より大きい動力学的容積密度を有する。
【0072】
本発明の1つの態様において、容器に保存された粒子の集団塊の少なくとも50%は、単回の呼吸活性化工程で被験体の気道へ送達される。好ましくは、粒子の集団の少なくとも55%が送達される。
【0073】
本発明の別の態様において、少なくとも5mgそして好ましくは少なくとも7mgまたは少なくとも10mgの薬剤(好ましくは生物活性薬剤)が、一度の呼吸で、容器に封入された粒子を被験体の気道へ投与することによって送達される。少なくとも15mg、好ましくは少なくとも20mg、そしてより好ましくは少なくとも25、30、35、40および50mgの量が、送達され得る。好ましい態様において、少なくとも35mgの量が送達される。別の好ましい態様において、少なくも50mgの量が送達される。
【0074】
被験体の気道へ投与された粒子は、肺系へ送達される。本発明の方法における使用に適切な粒子は、上気道(中咽頭および咽頭)、下気道(気管支および細気管支への分岐前の気管を含む)を介して移動し、そして呼吸器細気管支へ次いで分岐する終末細気管支を介して移動して、次いで最終的な呼吸器ゾーン、肺胞または深肺へ至り得る。本発明の1つの態様において、粒子の集団のほとんどが、深肺に沈積する。本発明の別の態様において、送達は、主に中央気道に対してである。別の態様において、送達は、上気道に対してである。
【0075】
本発明における使用に適切な粒子は、深肺、中気道または上気道のような気道の選択された領域への局所送達のために適切な材料、表面粗さ、直径およびタップ密度で製造され得る。例えば、より高い密度またはより大きな粒子が、上気道送達のために使用され得るか、または同じかもしくは異なる薬剤と共に提供されるサンプル中の異なるサイズの粒子の混合物が投与されて、1回の投与で肺の異なる領域を標的にし得る。秒〜月の範囲の分解時間および放出時間を有する粒子は、粒子材料のような因子に基づいて設計され、そして製造され得る。
【0076】
単回の呼吸作動工程における粒子の肺系への送達は、比較的低いエネルギーで(例えば、被験体の吸入によって代表的に供給されるエネルギーで)分散される粒子を利用することによって高められる。このようなエネルギーは、本明細書中において「低い」としていわれる。本明細書中で使用される場合、「低いエネルギー投与」とは、粒子を分散し、そして吸入するために適用されるエネルギーが、吸入の間に被験体によって代表的に供給される範囲内である投与をいう。
【0077】
本発明の1つの態様において、被験体へ投与される高分散性粒子は、生物活性薬剤ならびに生体適合性、および好ましくは生分解性ポリマー、コポリマー、またはブレンドを含む。このポリマーは、粒子の異なる特性(i)送達されるべき薬剤とこの薬剤の安定化および送達中の活性化を維持を提供するポリマーとの間の相互作用;ii)ポリマー分解の速度および、それによる薬物放出速度のプロフィール;iii)表面特徴および化学修飾を介する標的化能力;ならびにiv)粒子多孔性が挙げられる)を最適化するために作成され得る。
【0078】
ポリ無水物のような表面侵食ポリマーを使用して、粒子を形成し得る。例えば、ポリ[(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサン無水物](PCPH)のようなポリ無水物が、使用され得る。生分解性ポリ無水物は、米国特許第4,857,311号に記載される。ポリ(ヒドロキシ酸)を含むポリエステルに基づくポリマーのようなバルク侵食ポリマーもまた、使用され得る。例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、またはそれらのコポリマーを使用して、粒子を形成し得る。ポリエステルもまた、アミノ酸のような荷電基または官能基(functionalizable group)を有し得る。好ましい態様において、徐放特性を有する粒子は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)のような界面活性剤を取り込むポリ(D,L−乳酸)および/またはポリ(D,L−乳酸−コ−グリコール酸)(「PLGA」)で形成され得る。
【0079】
他のポリマーとしては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート))、ポリビニル化合物(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、およびポリビニルエステル)、アクリル酸およびメタクリル酸のポリマー、セルロースおよび他の多糖類、ならびにペプチドまたはタンパク質、あるいはそれらのコポリマーまたはブレンドが挙げられる。ポリマーは、種々の制御された薬物送達適用について、インビボにおける適切な安定性および分解速度で選択され得るか、またはインビボにおける適切な安定性および分解速度を有するように修飾され得る。
【0080】
高分散性の粒子は、より機能的にされたポリエステルグラフトコポリマーから形成され得る(Hrkachら、Macromolecules、28:4736−4739(1995);およびHrkachら、「Poly(L−Lactic acid−co−amino acid)Graft Copolymers:A Class of Functional Biodegradable Biomaterials」Hydrogels and Biodegradable Polymers for Bioapplications、ACS Symposium Series No.627、Raphael
M.Ottenbriteら、編、American Chemical Society、第8章、pp.93−101、1996に記載されるように)。
【0081】
本発明の好ましい態様において、生物活性薬剤およびリン脂質を含む高分散性粒子が、投与される。適切なリン脂質の例としては、中でも、上記の2000年9月19日出願の米国特許出願番号09/665,252に列挙されるものが挙げられる。他の適切なリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトールおよびそれらの組み合わせが挙げられる。リン脂質の特定の例としては、ホスファチジルコリンジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。他のリン脂質は、当業者に公知である。好ましい態様において、リン脂質は、肺に対して内因性である。
【0082】
リン脂質は、約0〜約90重量%の範囲の量で粒子内に存在し得る。より一般的には、約10〜約60重量%の範囲の量で粒子内に存在し得る。
【0083】
本発明の別の態様において、リン脂質またはそれらの組み合わせを選択して、徐放特性を高分散性粒子に分け与える。特定のリン脂質の相遷移温度は、患者の生理的な体温の下、付近または上であり得る。好ましい相遷移温度は、30℃〜50℃(例えば、患者の正常な体温の±10℃以内)の範囲である。これらの相遷移温度に従ってリン脂質またはリン脂質の組み合わせを選択することによって、粒子は、徐放特性を有するように作成され得る。例えば、患者の体温より高い相遷移温度を有するリン脂質またはリン脂質の組み合わせを含む粒子を投与することによって、ドパミン前駆体、アゴニストまたは前駆体および/もしくはアゴニストの任意の組み合わせの放出は、緩徐になり得る。一方、速やかな放出は、粒子内により低い遷移温度を有するリン脂質を含むことによって得られ得る。徐放特性を有する粒子および生物学的に活性な薬剤の放出を改変する方法は、1999年8月25日出願の米国予備特許出願番号60/150,742(表題はModulation of Release From Dry Powder Formulations by Controlling Matrix Transition)(この内容は、本明細書中にその全体が援用される)に記載される。
【0084】
本発明の別の態様において、粒子は、界面活性剤を含み得る。本明細書中で使用される場合、用語「界面活性剤」とは、2つの混合できない相の間の界面(例えば、水と有機ポリマー溶液との間の界面、水/空気界面または有機溶媒/空気界面)へ好ましく吸収する任意の薬剤をいう。界面活性剤は、一般的に、親水性部分および脂肪親和性部分を保有し、その結果、微小粒子へ吸収する間に、同様にコーティングされた粒子を誘引しない部分を外部環境に対して向け、従って粒子凝集を減少する傾向がある。
【0085】
肺界面活性剤(例えば、上で考察したリン脂質)に加えて、適切な界面活性剤としては、ヘキサデカノール;脂肪アルコール(例えば、ポリエチレングリコール(PEG));ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル;表面活性脂肪酸(例えば、パルミチン酸またはオレイン酸);グリココレート;サーファクチン(surfactin);ポロキソマー(poloxomer);ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタントリオレエート(sorbitan trioleate)(Span85);およびチロキサポールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
界面活性剤は、約0〜約90重量%の範囲の量で粒子内に存在し得る。好ましくは、約10〜約60重量%の範囲の量で粒子内に存在し得る。
【0087】
空気力学的に軽く、かつ界面活性剤、そして特にリン脂質を含む粒子を調製し、そして投与する方法は、Hanesらの1999年1月5日に発行された米国特許第5,855,913号およびEdwardsらの1999年11月16日に発行された米国特許第5,985,309号に開示される。両方の教示は、本明細書中に参考としてその全体が援用される。急性窮迫の患者へ粒子を投与する方法が、開示される。薬物を送達する他の従来手段が失敗する場合、本発明において投与される高分散性の粒子は、肺へ送達され得、そして肺系へ吸収され得る。
【0088】
さらに別の態様において、生物活性薬剤および界面活性剤のみを含む高分散性の粒子が、投与される。高分散性の粒子は、界面活性剤で形成され得、そして治療予防薬、または診断剤を含み、粒子表面相互作用の減少に起因してエアロゾル化の効率を改善し、そして肺胞マクロファージによる食作用に起因する薬剤の損失を潜在的に減少し得る。
【0089】
本発明の別の態様において、アミノ酸を含む高分散性の粒子が投与される。疎水性アミノ酸が、好ましい。適切なアミノ酸としては、天然に存在する疎水性アミノ酸および天然に存在しない疎水性アミノ酸が挙げられる。天然に存在する疎水性アミノ酸がいくつか挙げられるがこれらに限定されず、天然に存在しないアミノ酸としては、例えば、βアミノ酸が挙げられる。疎水性アミノ酸のD、L型の両方およびラセミ形態が、使用され得る。適切な疎水性アミノ酸としてはまた、アミノ酸アナログが挙げられ得る。本明細書中で使用される場合、アミノ酸アナログとしては、以下の式を有するアミノ酸のD型またはL型が挙げられる:−NH−CHR−CO−、式中、Rは、脂肪族基、置換脂肪族基、ベンジル基、置換ベンジル基、芳香族基または置換芳香族基であり、式中、Rは、天然に存在するアミノ酸の側鎖に対応しない。本明細書中で使用される場合、脂肪族基としては、完全に飽和され、1つまたは2つのヘテロ原子(例えば、窒素、酸素もしくは硫黄)を含み、および/または1つ以上の不飽和単位を含む直鎖、分枝または環式C1〜C8炭化水素が挙げられる。芳香族基としては、炭素環式の芳香族基(例えば、フェニルおよびナフチル)ならびにヘテロ環式の芳香族基(例えば、イミダゾリル、インドリル、チエニル、フラニル、ピリジル、ピラニル、オキサゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニルおよびアクリジンチル)が挙げられる。
【0090】
脂肪族基、芳香族基またはベンジル基の適切な置換基としては、−OH、ハロゲン(−Br、−Cl、−Iおよび−F)、−O(脂肪族基、置換脂肪族基、ベンジル基、置換ベンジル基、アリール基または置換アリール基)、−CN、−NO、−COOH、−NH 、−NH(脂肪族基、置換脂肪族基、ベンジル基、置換ベンジル基、アリール基または置換アリール基)、−N(脂肪族基、置換脂肪族基、ベンジル基、置換ベンジル基、アリール基または置換アリール基)、−COO(脂肪族基、置換脂肪族基、ベンジル基、置換ベンジル基、アリール基または置換アリール基)、−CONH、−CONH(脂肪族基、置換脂肪族基、ベンジル基、置換ベンジル基、アリール基または置換アリール基)、−SH、−S(脂肪族基、置換脂肪族基、ベンジル基、置換ベンジル基、芳香族基または置換芳香族基)ならびに−NH−C(=NH)−NHが挙げられる。置換ベンジル基または芳香族基はまた、置換基として脂肪族基または置換脂肪族基を有し得る。置換脂肪族基はまた、置換基としてベンジル基、置換ベンジル基、アリール基または置換アリール基を有し得る。置換脂肪族基、置換芳香族基または置換ベンジル基は、1つ以上の置換基を有し得る。アミノ酸置換基を改変することは、例えば、親水性の天然のアミノ酸の脂肪親和性または疎水性を増加し得る。
【0091】
多数の適切なアミノ酸、アミノ酸アナログおよびそれらの塩は、商業的に入手され得る。その他は、当該分野で公知の方法によって合成され得る。合成技術は、例えば、GreenおよびWuts、「Protecting Groups in Organic Synthesis」、John Wiley およびSons、第5章ならびに第7章、1991に記載される。
【0092】
疎水性は、一般的に非極性溶媒と水との間のアミノ酸の分離に関して定義される。疎水性アミノ酸は、非極性溶媒を好むアミノ酸である。アミノ酸の相対疎水性は、グリシンが値0.5を有することに対する疎水性率で示され得る。このような率において、水を好むアミノ酸は、0.5より下の値を有し、そして非極性溶媒を好むアミノ酸は、0.5より上の値を有する。本明細書中で使用される場合、用語、疎水性アミノ酸とは、疎水性率で0.5以上の値を有する、すなわち、グリシンの傾向と少なくとも等しい非極性酸への分離の傾向を有するアミノ酸をいう。
【0093】
使用され得るアミノ酸の例としては、グリシン、プロリン、アラニン、システイン、メチオニン、バリン、ロイシン、チロシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファンが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい疎水性アミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、アラニン、バリン、フェニルアラニンおよびグリシンが挙げられる。疎水性アミノ酸の組み合わせもまた、使用され得る。さらに、疎水性アミノ酸および親水性アミノ酸(水に好ましく分離する)の組み合わせ(ここで、全体的な組み合わせは疎水性である)もまた、使用され得る。
【0094】
このアミノ酸は、少なくとも10重量%の量で本発明の粒子中に存在し得る。好ましくは、このアミノ酸は、約20〜約80重量%の範囲の量で粒子中に存在し得る。疎水性アミノ酸の塩は、少なくとも10重量%の量で本発明の粒子中に存在し得る。好ましくは、このアミノ酸塩は、約20〜約80重量%の範囲の量で粒子中に存在する。好ましい態様において、この粒子は、約0.4g/cm3 未満のタップ密度を有する。
【0095】
アミノ酸を含む粒子を形成し、そして送達する方法は、1999年8月25日に出願された米国特許出願番号09/382,959(表題、Use of Simple Amino Acids to Form Porous Particles During Spray Drying)(この教示は、参考として本明細書中にその全体が援用される)に記載される。
【0096】
本発明の粒子はまた、賦形剤(例えば、以下:糖(例えば乳糖)、タンパク質(例えばアルブミン)、コレステロールおよび/または界面活性剤の1つ以上)を含み得る。
【0097】
送達されるべき薬剤が、陰性に荷電された場合(例えば、インスリン)、プロタミンまたは他の陽性に荷電した分子は、陰性に荷電した薬剤の維持放出を生じる脂質親和性複合体を提供するために添加され得る。陰性に荷電した分子を使用して、陽性に荷電した薬剤を不溶性にし得る。
【0098】
本発明の方法における使用に適切な高分散性の粒子は、単一のエマルジョン溶媒エバポレーションおよび二重のエマルジョン溶媒エバポレーション、噴霧乾燥、溶媒抽出、溶媒エバポレーション、相分離、単純コアセルベーションおよび複合コアセルベーション、界面ポリマー化、超臨界二酸化炭素(CO)ならびに当業者に周知の他の方法を使用して調製され得る。条件が、所望の空気力学的な特性(例えば、空気力学的直径)を有する粒子を形成するために最適化されるか、またはさらなる工程が、1ミクロンと5ミクロンとの間、好ましくは1ミクロンと3ミクロンとの間の空気力学的直径を有する粒子を提供するのに充分な密度および直径を有する粒子を選択するために実行される場合、粒子は、当該分野で公知のミクロスフェアまたはマイクロカプセルを作成する方法を使用して作成され得る。
【0099】
いくつかのポリマー系の場合、単一のエマルジョン技術および二重のエマルジョン技術を使用して調製されたポリマー粒子は、液滴のサイズに依存してサイズが変わる。油中水型エマルジョンにおける液滴が、所望のサイズ範囲を有する粒子を形成するのに適切な小さなサイズでない場合、より小さな液滴は、例えば、エマルジョンの超音波処理またはホモジナイズによってか、あるいは界面活性剤の添加によって調製され得る。
【0100】
上の方法のいずれかによって調製された粒子が、所望の範囲外のサイズ範囲を有する場合、粒子は、例えば篩を使用して一定の大きさにされ得、そしてさらに当業者に公知の技術を使用して密度に従って分離され得る。
【0101】
この粒子は、好ましくは噴霧乾燥によって調製される。
【0102】
以下の装置および試薬は、本明細書において言及され、そして利便性のため適切な情報と共に一度に列挙される。他に示されない限り、全ての装置は、製造業者の使用説明書に示されるように使用された。また、他に示されない限り、他の類似の装置は、当業者に周知のように使用され得る。
【0103】
他に示されない限り、全ての装置および試薬は、製造業者の使用説明書に示されるように使用された。さらに、他に示されない限り、上記装置および試薬に適切な代用は、利用可能であり、そして当業者にとって周知である。
【0104】
(1)RODOS乾燥粉体分散器(Sympatec Inc.、Princeton、N.J.)
(2)HELOSレーザー回折計(Sympatec Inc.、N.J.)
(3)単一段階Andersenインパクター(Andersen Inst.、Sunyrna、GA)
(4)AeroDisperser(TSI、Inc.、Amherst、MA)
(5)Aerosizer(TSI Inc.、Amherst、MA)
(6)ブリスターパック機械、Fantasy Blister Machine(Schaefer Tech、Inc.、Indianapolis、IN)
(7)崩壊Andersenカスケードインパクター(製造業者によって規定される段階0からなる)および濾過段階(Anderson Inst.、Sunyra、GA)
(8)肺活量計(Spirometrics、USA、Auburn、ME)
(9)多段階液体インピンジャー(MSLI)(Erweka、USA、Milford、CT.)
(10)蛍光顕微鏡(Hitachi Instruments、San Jose、CA)
(11)γカメラ(一般名)
【0105】
試薬
硫酸アルブテロール粒子(Profarmco Inc.、Italy)
ヒト成長ホルモン(Eli Lilly、Indianapolis、IN)
2号サイズメチルセルロースカプセル(Shionogi、Japan)
ブリスターパック(Heuck Foils、Well、N.J.)
DPPC(Avanti、Alabaster、Alabama)。
【0106】
下の実施例の節により詳細に考察されるように、本発明の方法は、単純な吸入器デバイスからの良好なエアロゾル化特性を示す粉体を必要とする。粉体が適切なエアロゾル化特性を有するか否かを決定するために、この粉体は、脱凝集化および放出特性について試験される。当業者は、これらの特性を測定するための等価な手段を理解するが、インパクター上への粉体の集団の送達を示すインビトロ試験の例が、実施される。試験されるべき粉体は、種々の剪断力で粉体分散装置(例えば、RODOS乾燥粉体分散器)へ導入される。これは、粒子を破壊するために使用される気流の調節圧力を操作することによって達成される。幾何学的なサイズを測定して、粉体がこの条件下で首尾よく脱凝集しているか否かを決定する。脱凝集特性に加えて、粉体が単純な呼吸活性化吸入器から放出する能力を評価することが可能である。本発明の粒子に適切な吸入器の例は、Spinhaler(登録商標)(Fisons、Loughborough、U.K.)、Rotahaler(登録商標)(Glaxo−Wellcome、Research Triangle Park(RTP)、North Carolina)、FlowCaps(登録商標)(Hovione、Loures、Portugal)、Inhalator(登録商標)(Boehringer−Ingelheim、Germany)、およびAerolizer(登録商標)(Novartis、Switzerland)である。Diskhaler(Glaxo−Wellcome、RTP、N.C.)のような他の吸入器もまた、使用され得ることが明らかである。特に適切な吸入器は、単純な乾燥粉体吸入器である(米国特許第4,995,385号および同第4,069,819号)。3つの異なる粉体の脱凝集化および放出特性を決定するための実験を記載する特定の非限定的な例は、本明細書中にさらに詳細に記載される。簡単には、異なる脱凝集化特性を有すると考えられる3つの異なる乾燥粉体が、特徴付けされた。第1の粉体は、微粉化された硫酸アルブテロール粒子であった。第2および第3の粉体は、賦形剤および生物活性薬剤の組み合わせをエタノール/水溶媒系に溶解して、そして乾燥粉体を作成するために噴霧乾燥することによって調製された。この3つの粉体の幾何学的直径、タップ密度および空気力学的直径が、決定された。
【0107】
出願人らは、この粉体をRODOS乾燥粉体分散器へ導入し、そして粒子を破壊するために使用される気流の調節圧力を操作することによって剪断力を変えることで、この分散器のオリフィスを介して粉体を分散した。出願人らは、この粉体が出ていく場合に、HELOSレーザー回折計から幾何学的サイズ分布を得、そしてメジアン値を記録した。このデータは、まとめられ、そして圧力に対する質量メジアン幾何学的直径(MMGD)としてプロットされた。
【0108】
出願人らは、高圧力(例えば、3または4bar)で、3つ全ての粉体が一次(脱凝集)粒子として分散器を出ることを仮定して、そして、本明細書中に開示される実験を介して見出した。このことは、比較的高エネルギーが首尾よく3つ全ての粉体を脱凝集化する知見を支持する。しかし、2barより小さい圧力(生理的な呼吸速度により密接に対応する)では、この粉体の一次粒子サイズより大きなオリフィスを出た平均粒子サイズによって証明されるように、微粉化された粉体(粉体1、表1)は、凝集した状態でオリフィスを出た。これは、ほぼ一次粒子サイズでオリフィスから放出された噴霧乾燥粉体(粉体2および3、表1)についての場合ではない。これらの粉体は、高分散性の粉体である。
【0109】
この3つの粉体が単純な呼吸活性化吸入器から放出する能力をさらに評価するために、出願人らは、2号サイズのメチルセルロースカプセルに5mgの各粉体を置き、そしてこのカプセルを呼吸活性化吸入器へ挿入した。この粉体が置かれた容器が、選択された吸入器の型に依存することは、当業者にとって明らかである。結果は、下の実施例で考察される。一般的に、出願人らは、粉体を破壊するために吸入器によって比較的低いエネルギーが供給される場合、微粉化された硫酸アルブテロール粉体は、この一次粒子サイズがRODOSで測定された場合に2ミクロンのオーダーであった場合でさえ、30ミクロンより大きい幾何学的直径を有する凝集体として吸入器から放出されることを見出した。一方、噴霧乾燥硫酸アルブテロールまたはhGHの高分散性粒子は、その一次粒子サイズに非常に匹敵する粒子サイズで放出された。一次粒子と比較して非常に類似の空気力学的直径で噴霧乾燥粒子が放出する場合、同じ結果が空気力学的直径の測定から得られた。本発明の方法を使用して、当業者は、単純な呼吸活性化デバイスに高分散性の粉体を装填することよって、このデバイスからの高効率送達を達成し得る。
【0110】
本発明のさらなる特徴は、単回用量の呼吸作動吸入器からだけではなく、呼吸作動Dry Powder Inhaler(DPI)の範囲からも、名目上の用量のかなりの割合を低エネルギーで放出する能力である。
【0111】
高分散性粉体は、効率的に放出し、そして呼吸活性化DPIの範囲から肺へ浸透し得ることを示すために、出願人らは、クエン酸ナトリウム、DPPC、塩化カルシウム緩衝液、およびローダミン蛍光標識から構成される噴霧乾燥粉体を調製した。これは、実施例2に綿密に説明される。この粉体は、2.1μmのメジアン空気力学的直径(AeroDisperserおよびAerosizerによって測定される)ならびに11.0μmの幾何学的直径(上記のRODOS/HELOS組み合わせを使用して測定される)を有した。出願人らは、試験された粉体が優れた脱凝集化特性を表すことを見出した。
【0112】
特に、出願人らは、半自動カプセル充填デバイスを使用して試験されるべき5mgの粉体を、以下の吸入器内のカプセルに置いた、以下:出願人らによる開発下の呼吸活性化吸入器、Spinhaler(登録商標)(Fisons、Loughborough、U.K.)、Rotahaler(登録商標)(Glaxo−Wellcome、RTP、NC)、FlowCaps(登録商標)(Hovione、Loures、Portugal)、Inhalator(登録商標)(Boehringer−Ingelheim、Germany)、およびAerolizer(Novartis、Switzerland)。本発明者らはまた、3mgの粉体がブリスターパックへ機械充填されたDiskhaler(Glaxo−Wellcome、RTP、NC)を試験した。出願人らは、各吸入器を崩壊Andersenカスケードインパクター(段階0および濾過段階からなる)に接続し、そしてデバイスを作動した後、60L/分で2秒間、空気を抜き取った。段階0(4.0μmカットオフを有する)未満の細かい粒子画分は、蛍光顕微鏡を使用して決定された。
【0113】
出願人らは、各場合において、約50%以上の放出用量が4μm未満のサイズの平均空気力学的直径(Da)を表わす(この粉体が、これらの呼吸活性化デバイスの簡単さにもかかわらず生理的な呼吸速度で有効にヒト被験体の肺へ入ったことを示す)ことを見出した。
【0114】
インビボで高分散性粉体を試験するため、出願人らは、実施例3に記載されるように、ヒト沈着研究を実施して、単純な呼吸作動吸入器から放出される高分散性粉体が、肺への高効率送達(名目上の用量の50%より多い)を生じ得るか否かを決定した。多くのデバイスが患者による吸入に依存するので、このことは、力を提供して乾燥材料を自由流れ粉体へ破壊するのに特に重要である。このようなデバイスは、強く吸入する能力を欠く患者(例えば、若年患者、高齢患者、衰弱した患者または喘息もしくは他の呼吸困難を有する患者)に対しては効果的でないことを証明する。本発明の方法の利点は、流速とは独立した高効率送達が達成され得ることである。従って、本発明の方法を使用することによって、弱い吸入でさえ、所望の用量を送達するのに十分である。このことは、標準的なDPIの期待される能力の観点からは、驚きである。図7に示され得るように、本明細書に記載される方法を使用して、優れた送達は、標準的なDPIと比較して、約25L/分〜約75L/分の範囲の流速で達成され得る。本発明の方法は、少なくとも約20L/分〜約90L/分の流速で最適化され得る。
【0115】
以下の特徴:Dg=6.7μm;p=0.06g/cc;およびDa=1.6μmを有する粉体が、99m Tcでナノ粒子標識された。質量とγ放射線粒子サイズ分布との間の等価が得られ、そして下の実施例3に詳細に考察される。約5mgの粉体は、2号サイズカプセルへ装填された。このカプセルは、呼吸活性化吸入器へ置かれ、そして作動された。10人の健常な被験体は、約60L/分の呼吸流速(肺活量計で測定される)で吸入器を介して吸入した。この沈着画像は、γカメラを使用して得られた。10人の被験体から得られた肺沈着の割合(名目上の用量と比較した)は、図5に示される。平均肺沈着は、名目上の用量と比較して59.0%であった。このような沈着レベルは、高分散性薬物粉体が単回の呼吸作動吸入器を使用して高い効率で肺へ吸入され得ることを確立することを、当業者は、理解する。
【0116】
さらに、出願人らは、単一の吸入器からの優れたエアロゾル化を有する高分散性粉体の同じ調製物を使用して、単回の吸入で驚くほど高い用量を送達し得ることを発見している。この高分散性粉体は、予め測定された高用量(50mg)または予め測定された、より低用量(6mg)へ装填され得る。この粉体の粒子特徴は、以下のようであった:Dg=10.6μm;p=0.11g/cc;Da=3.5μm。当業者は、本明細書中に以前に開示されたように、本発明における使用に適切な粒子の特徴の可能性のある範囲を容易に理解する。
【0117】
空気力学的粒子サイズ分布は、60L/分で操作される多段階液体インピンジャー(MSLI)を使用して特徴付けられた。2号サイズのカプセルは、6mg用量について使用され、そして000号サイズのカプセルは、50mg用量について使用された。出願人らは、6mg用量および50mg用量に対して得られた2つの粒子サイズ分布を比較した。6mg用量および50mg用量について、6.8μm未満の細かい粒子画分(総用量と比較して(FPFTD<6.8μm))は、それぞれ、74.4%および75.0%であった。従って、出願人らは、高分散性粉体の特性を組み合わせることによって、高用量の薬物が低薬物用量と同じくらい効率的に肺へ送達され得ることを示している。
【実施例】
【0118】
実施例および表
実施例
他に示されない限り、使用される装置および試薬を、本明細書中に以前に列挙された供給源から入手している。
【0119】
実施例1
本発明の方法における使用に適切な粉体は、単純な吸入器デバイスからの良好なエアロゾル化を示す特性を有することが必要である。この特性を決定するために、出願人らは、異なる脱凝集化特性を有すると考えられる3つの異なる乾燥粉体を特徴付けした。試験するべき第1の粉体は、Spectrum Labs(Laguna Hills、CA)から入手したサブミクロン硫酸アルブテロール粒子であった。第2および第3の粉体を、賦形剤および生物活性薬剤の組み合わせをエタノール/水溶媒系に溶解し、そしてこの混合物を噴霧乾燥することによって調製した。
【0120】
微小粒子の調製:
プラセボ粒子組成物は、70/20/10% DPPC/クエン酸ナトリウム/塩化カルシウムであった。0.2gのクエン酸ナトリウムおよび0.1gの塩化カルシウムを、0.11Lの水に溶解した。DPPCエタノール溶液を、0.7g DPPC(DL−α−ホスファチジルコリンジパルミトイル、Avanti Polar Lipids、Alabaster、AL)を0.89Lの95%エタノールに溶解することによって調製した。次いで、クエン酸ナトリウム/塩化カルシウム溶液およびDPPC/エタノール溶液を、一緒に混合した。最終の総溶液濃度は、1.0g/L(85%エタノール/15%水中に0.70g/L DPPC、0.2g/Lクエン酸ナトリウムおよび0.1g/L塩化カルシウムで作成した)であった。
【0121】
hGH(ヒト成長ホルモン)粒子組成物は:58/38.5/3.5 hGH/DPPC/リン酸ナトリウムであった。1.16gのhGH(Lilly、Indianapolis、IN)を、300mLのリン酸ナトリウム緩衝液(10mM、pH7.4)に溶解した。0.77gのDPPCを、700mLのエタノールに溶解した。次いで、この2つの溶液を合わせて、70%/30% エタノール/水中で2g/Lの最終の溶液濃度を生じた。
【0122】
硫酸アルブテロール粒子組成物は、76/20/4 DSPC/ロイシン/硫酸アルブテロールであった。2.28gのDSPC(ジステオロイルホスファチジルコリン、Avanti Polar Labs)および0.6gのロイシン(Spectrum Labs、Laguna Hills、CA)を、700mLのエタノールに溶解した。0.12gの硫酸アルブテロール(Profarmco、Italy)を、300mLの水に溶解し、次いでこの2つの溶液を合わせて、70%/30% エタノール/水中で3g/Lの最終の溶液濃度を生じた。
【0123】
噴霧乾燥
Nitro Atomizer Portable Spray Dryer(Niro、Inc.、Columbus、MD)を使用して、乾燥粉体を生成した。可変圧力(1〜5bar)で圧縮された空気が、ドライヤーの上に配置した回転アトマイザー(2,000〜30,000rpm)を動かした。速度を変えた液体供給(20〜66mL/分)を、電気的測定ポンプ(LMI、モデル番号A151−192s、Acton、MA)によって連続的にアトマイザーへポンピングした。入口温度および出口温度の両方を、測定した。入口温度を、手動で制御した;100℃〜400℃の間で変わり得、そして100、110、150、175、または200℃で、5℃の制御限界で安定させた。出口温度を、入口温度ならびに気体供給速度および液体供給速度のような因子によって決定した:50℃〜130℃の間で変化した。容器を、粉体産物を収集するためにサイクロンへきつく取り付けた。
【0124】
結果
3つの粉体の幾何学的直径およびタップ密度を、表1に示す。
【0125】
【表1】

【0126】
3つの粉体の脱凝集化特性を評価するため、出願人らは、この粉体をRODOS乾燥粉体分散器へ導入し、そして気流の調節圧力を操作することによって粒子を破壊するために剪断力を変更した。その後、製造業者の指示に従って、出願人らは、HELOSレーザー回折計から幾何学的サイズ分布を得、そしてメジアン値を記録した。このデータをまとめて、そして圧力に対する体積メジアン幾何学的直径(MMGD)としてプロットした。
【0127】
図1は、この実験の結果を示す。出願人らは、高い圧力(約2barより大きく、そして特に約3〜4bar)で、3つの全ての粉体は、一次(脱凝集化)粒子として分散器を出ることを示している。このことは、比較的高エネルギーで、3つの粉体を脱凝集化する知見を支持する。しかし、2barより小さい圧力では、微粉化された粉体(粉体1)は、凝集した状態でオリフィスを出た。この証拠を、粉体の一次粒子サイズより大きなオリフィスを出る平均粒子サイズによって示し得る。これは、ほぼ一次粒子サイズでオリフィスから放出された噴霧乾燥粉体(粉体2および3)についての場合ではない。粉体2および3は、高分散性の粉体であった。
【0128】
本発明の粒子を、以下の技術によってさらに特徴付けた。一次幾何学的直径を、HELOSレーザー回折計(Sympatec)と共にRODOS乾燥粉体分散器(Sympatec、Princeton、NJ)を使用して測定した。粉体を、RODOS入口へ導入し、そして4barで調節した圧縮気流によって生成される剪断力によってエアロゾル化した。エアロゾル雲を、続いてHELOSの測定ゾーン(レーザービームから光を散乱し、そして粒子サイズ分布を推測するために使用されるFraunhofer回折パターンを生成する)へ引き寄せた。
【0129】
呼吸活性化吸入器から放出された幾何学的直径を、HELOSレーザー回折計を備えるIHAアクセサリー(Sympatec)を使用して測定した。IHAアダプターは、測定ゾーンの前にDPIを配置し、そして空気が粉体をエアロゾル化するDPIを通過することを可能にする。減圧を、30L/分で得て、AIR吸入器から粉体を分散し、そして幾何学的直径を、Fraunhofer回折によって測定した。
【0130】
一次空気力学的直径を、AeroDisperser/Aerosizer(TSI、Inc.、Amherst、MA)を用いて測定した。このサンプル粉体を、AeroDisperser中で1psiの入口気流によってエアロゾル化し、次いでAerosizerへ音速まで加速した。Aerosizerは、各粒子が2つの固定されたレーザービーム間を通過するのにかかる時間(粒子の慣性に依存する)を測定する。続いて、TOF(飛行時間)測定値を、Stokes法則を使用して空気力学的直径へ変換した。
【0131】
AIR吸入器から放出された空気力学的直径を、Aerosizer(TSI、Inc.)と共にAeroBreather(TSI INC.、Amherst、MA)を使用して決定した。粉体を、30L/分で吸入器からAeroBreatherチャンバへエアロゾル化し、そしてAerosizerへ留まることを可能にした。
【0132】
これらの技術を使用して、出願人らは、4barでの乾燥粉体分散器からの一次サイズを、30L/分でのAIR吸入器からの放出サイズと比較した(図2A)。わかり得るように、噴霧乾燥hGH(粉体2)放出粒子サイズおよび噴霧乾燥硫酸アルブテロール(粉体3)放出粒子サイズは、測定した一次粒子サイズとほとんど同一であった(微粉化された硫酸アルブテロール(粉体1)についての場合ではない)。さらに、出願人らは、噴霧乾燥硫酸アルブテロールについての一次空気力学的サイズおよび放出空気力学的サイズを測定し、そして微粉化された硫酸アルブテロールと比較した(図2B)。さらに、噴霧乾燥硫酸アルブテロールは、その一次粒子の空気力学的直径とほぼ同一である空気力学的直径で放出したが、微粉化された硫酸アルブテロールは、その一次粒子の空気力学的直径よりもかなり大きな空気力学的直径で放出した。このことはさらに、本発明の噴霧乾燥粉体は呼吸可能な粒子へ分散するが、微粉化された薬物はその一次サイズが呼吸可能であるとしても呼吸不可能なままであることを確かにする。
【0133】
本実施例の結果は、本発明の方法を使用して、出願人らが、高分散性の粉体でデバイスを装填することによって、単純な呼吸活性化デバイスから高効率送達を達成したことを示す。
【0134】
実施例2
高分散性粉体が効率的に放出し、そして呼吸活性化乾燥粉体吸入器(DPI)の範囲から肺へ浸透し得ることを示すために、出願人らは、クエン酸ナトリウム、DPPC、塩化カルシウム緩衝液および微量のローダミン蛍光標識から構成される噴霧乾燥粉体を調製した。この粉体は、2.1μmのメジアン空気力学的直径(AeroDisperserおよびAerosizerによって測定される)ならびに11.0μmの幾何学的直径(本明細書中に記載されるような上記のRODOS乾燥粉体分散器およびHELOSレーザー回折計を使用して測定される)を有し、そして、実施例1の噴霧乾燥粉体と同様に優れた脱凝集化特性を表した。
【0135】
出願人らは、半自動カプセル充填デバイスを使用して5mgの粉体を、以下の吸入器内のカプセルに置いた、以下:出願人らによる開発下の呼吸活性化吸入器(AIRTMInhaler)、Spinhaler(登録商標)(Fisons、Loughborough、U.K.)、Rotahaler(登録商標)(Glaxo−Wellcome、RTP、NC)、FlowCaps(登録商標)(Hovione、Loures、Portugal)、Inhalator(登録商標)(Boehringer−Ingelheim、Germany)、およびAerolizer(登録商標)(Novartis、Switzerland)。出願人らはまた、3mgの粉体がブリスターパックへ機械充填されたDiskhaler(Glaxo−Wellcome、RTP、NC)を試験した。出願人らは、各吸入器を崩壊Andersenカスケードインパクター(段階0および濾過段階からなる)に接続し、そしてデバイスを作動した後、60L/分で2秒間、空気を抜き取った。段階0(4.0μmカットオフを有する)未満の細かい粒子画分を、蛍光顕微鏡を使用して決定した。
【0136】
図3は、この研究からの結果を示す。出願人らは、各場合において、約50%以上の放出用量が4μm未満のサイズの平均空気力学的直径(Da)を表わす(この粉体が、これらの呼吸活性化デバイスの簡単さにもかかわらず生理的な呼吸速度でヒト被験体の肺へ効率的に入ったことを示す)ことを見出した。出願人らはまた、本発明の方法を使用して、名目上の用量のかなりの割合が、低エネルギーで、単回用量の呼吸作動吸入器からだけではなく、呼吸作動乾燥粉体吸入器(DPI)の範囲からも放出されることを示した。
【0137】
実施例3
ヒト沈着研究を実施して、単純な呼吸作動吸入器から放出される高分散性粉体が、肺への高効率送達(名目上の用量の50%より多い)を生じ得るか否かを決定した。以下の特徴を有する粉体を使用した:Dg=6.7μm;ρ=0.06g/cc;Da=1.6μm。
【0138】
この粉体を、99m Tc(テクネチウム)ナノ粒子で標識した。
【0139】
ヒト沈着研究
γシンチグラフィーは、吸入された粒子の沈着のパターンを評価するための確立された方法論である。本実施例において、試験物質を、InAMed laboratories(Gauting、Germany)で低用量の放射性同位体99m Tcを用いて標識する。肺の縁の決定を、81m Kr(クリプトン)換気スキャンを管理することによって高める。呼吸流速をモニターして、深い、十分な吸入を沈着研究の間に実施したことを確実にする。呼吸活性化吸入器を介する深い、十分な吸入に対する最高吸入流速(PIFR)の範囲を、研究を始める前に評価した。特定の範囲以外のPIFRを、繰り返した。
【0140】
研究を、10人の健常な被験体を使用して実施した。ベースライン換気スキャンを管理して、肺の縁を規定するのを援助した。肺機能を、各吸入試験の前および後に評価した。沈着を、γシンチグラフィーを使用して吸入後に決定した。呼吸活性化吸入器を介する呼吸流速を、肺活量計を使用して沈着の間モニターした。
【0141】
被験体を教育して、深い、十分な吸入で呼吸活性化吸入器を介して吸入させた。被験体をさらに教育して、深い、十分な吸入を示す特定の範囲内で呼吸活性化吸入器を介する最高吸入流速(PIFR)を達成した。呼吸活性化吸入器を作動し、そして肺活量計に取り付けて、沈着研究の間、呼吸流速をモニターした。被験体は、予め決定された無作為化スケジュールに従って、適切な箱からカプセルを取り出し、そして使用直前に吸入器/肺活量計デバイスに置いた。
【0142】
各被験体を、正常な呼気の終わりに口へ吸入マウスピースをつける前に、体を楽にさせ、そして普通に呼吸していた(少なくとも5回の呼吸)。被験体は、肺が一杯になるまで、深い、十分な吸入で口から吸入した。次いで、被験体は、約5秒間(ゆっくり5まで数えることによって)呼吸を止めた。沈着を、呼気直後にγカメラを使用して測定した。次いで、さらなる肺機能試験を、Jaeger身体プレチスモグラフィ(Jaeger、Wuerzburg、Germany)を使用して実施した。
【0143】
材料および方法
使用したプラセボ粉体は、70/20/10重量% DPPC/クエン酸ナトリウム/塩化カルシウムから構成され、以下の特徴を有した:Dg=6.7μm;ρ=0.06g/cc;Da=1.6μm。一次空気力学的粒子サイズ特徴を、飛行時間(AeroSizer/AeroDisperser)を使用して得、そして幾何学的粒子サイズ特徴を、1および2barで操作したレーザー回折(本明細書に記載されるような、RODOS乾燥粉体分散器およびHELOSレーザー回折計を使用して測定される)を使用して得た。放出された空気力学的粒子サイズ特徴を、2Lの総空気容積について28.3L/分で操作したAndersenカスケードインパクション(重量測定分析)を使用して得た。幾何学的粒子サイズ特徴を、60L/分で操作したレーザー回折(IHA/HELOS、Sympatec、NJ)を使用して得た。
【0144】
粉体放射線標識
プラセボ粉体を、0.2μmフィルターで塞いだリザーバへ充填した。99m Tc溶液(100mLの脱イオン水に0.5mL 99m Tc含有等張生理食塩水を添加する)を、乾燥チャンバに配置されるPari Jetネブライザー中に充填した。Pari Jetネブライザーを、3分間作動して、1.5mLの99m Tc溶液を霧状にした。99m Tc粒子を、このチャンバ内で乾燥し、そして粉体を含むリザーバへ誘導した。標識チャンバの湿度を制御して、そして30%相対湿度を決して上回らないようにした。
【0145】
99m Tcの短い半減期に起因して、標識化を、吸入の2〜4時間前に実施した。粉体の活性を、吸入の開始時に利用可能であった実際の活性を決定するためにテクネチウムの物理的な崩壊に対して補正した。
【0146】
標識後の粉体の放出された空気力学的粒子サイズ分布を、8段階のAndersenカスケードインパクター(重量測定分析)を使用して得て、放射線標識処理が粒子サイズ分布に影響を及ぼさないことを証明した。
【0147】
2号サイズのカプセルを、5(±1)mgの放射線標識粉体を用いて手で充填した。各カプセルを計数し、そしてその充填重量および放射能レベルを、記録した。被験体は、カプセルを取り、そして使用直前に吸入器/肺活量計デバイスにそのカプセルを置いた。
【0148】
肺の領域中の粉体の決定のための方法
標識された多孔性粒子の吸入を、被験体がγカメラに対して背中を向けて座っている間に、実行した。吸入後、γシンチグラフィ画像を、被験体がカメラの前に背中を向けて真っ直ぐに座っている間に、撮った。吸入時間および呼吸待機期間を記録した。肺のサイズを81Krスキャンによって決定した。被験体は、この放射能ガスを、研究の前または終わりに吸入した。
【0149】
被験体のKrypton換気スキャンから、肺の輪郭を決定した。被験体は、Kryptonスキャンおよび粉体吸入試験研究の間、同じ姿勢で座っているので、規定した4つの目的の領域(ROI):左肺、右肺、胃および中咽頭(気管の上部分を含む)が、存在した。
【0150】
これらの4つのROIを、粉体吸入のγカメラ画像にコピーした。被験体の肺の縁領域において、バックグランド活性を規定して、そして全体の画像からピクセル×ピクセルを引いた。次いで、カウントの数を、それぞれの4ROIについて決定した。これらの数を、単一領域に対する減衰率によって補正した。この補正後、胸郭内の粒子沈着および胸郭外の粒子沈着の相対量を、決定した。
【0151】
質量とγ放射線粒子サイズ分布との間の等価を、図4に示すように得た。約5mgの粉体を2号サイズのカプセルへ装填した。このカプセルを、出願人らの開発下の呼吸活性化吸入器(AIR吸入器)へ置き、そして作動した。10人の健常な被験体は、約60L/分の呼吸流速でこの吸入器を介して吸入した(実際の呼吸流速は被験体の間で20〜90L/分の範囲(ヒトにおける正常な呼吸流速の範囲と一致する)に渡って変化した)。60L/分は、良好な平均流速であり、そして模擬呼吸流れのために実験的に使用した流速である。肺活量計によって測定しながら、沈着画像を、γカメラを使用して得た。10人の被験体から得られた肺沈着の割合(名目上の用量と比較して)を、図5に示す。名目上の用量と比較した平均肺沈着は、59.0%であった。
【0152】
この実験を通して、出願人らは、薬物を含む高分散性粉体が、単純な呼吸作動吸入器を使用した場合に高い効率で肺へ吸入され得ることを確認した。
【0153】
実施例4
単純な吸入器からの優れたエアロゾル化特性を有する高分散性粉体と同じ調製物を使用して、単回の吸入において驚くほどの高用量を送達し得ることを示すため、出願人らは、高分散性粉体を調製して、そして予め測定した高用量(50mg)または予め測定した低用量(6mg)のいずれかを得るように粉体を装填した。この粉体の粒子サイズ特徴は、以下のようであった:Dg=10.6μm;ρ=0.11g/cc;Da=3.5μm。
【0154】
空気力学的粒子サイズ分布を、60L/分で操作した多段階液体インピンジャー(MSLI)を使用して特徴付けた。2号サイズのカプセルを、6mg用量について使用し、そして000号サイズのカプセルを、50mg用量について使用した。図6は、6mg用量および50mg用量に対して得られた2つの粒子サイズ分布を比較した結果を示す。6mg用量および50mg用量についての、総用量と比較した6.8μm未満の細かい粒子画分(FPFTD<6.8μm)は、それぞれ、74.4%および75.0%であった。
【0155】
本実験は、本発明の方法を用いて高分散性粉体の特性を組み合わせることによって、驚くほどの高用量の薬物が低薬物用量と同じくらい効率的に肺へ送達され得ることを示した。
【0156】
実施例5
L−ドパを含み、かつ吸入に適した粒子を、以下のように生成した。2.00123g DPPC(Avanti Polar Lipids、ロット番号G160PC−25)を、2.80Lのエタノールヘ添加し、そして溶解するまで攪拌した。0.0817g L−ドパ(Spectrum、ロット0Q0128、Laguna Hills、CA)、0.9135g クエン酸ナトリウム(無水物)(Spectrum ロットNX0195)、および0.5283g 塩化カルシウム(無水物)(Spectrum ロットNT0183)を、1.2Lの水へ添加して、そして溶解した。この水溶液をエタノール溶液へ添加することによって、これらの溶液を合わせて、次いでこの溶液を、溶液が澄明になるまで攪拌した。この製剤の重量%は、約:20% L−ドパ、50% DPPC、20%クエン酸ナトリウム、10%塩化カルシウムであった。
【0157】
次いで、最終溶液を、以下の噴霧条件を使用して、製造業者の指示に従って回転アトマイザーおよび窒素乾燥ガスを使用してNiroドライヤー(Niro、Inc.、Columbus、MD)中で噴霧乾燥した:Tinlet=120C、Toutlet=54C、供給速度=65ml/分、加熱窒素=38mmH2O、アトマイザー速度=20,000rpm(V24アトマイザーを使用)。
【0158】
得られた粒子特徴は:質量メジアン空気力学的直径(MMAD)=2.141Mmおよび体積メジアン幾何学的直径(VMGD)=10.51Mmであった。
【0159】
ケタミン麻酔下で、6匹のマウスは、上記の製剤(20/50/20/10 L−ドパ/DPPC/クエン酸ナトリウム/塩化カルシウム)の肺投与を受けた。
【0160】
結果を、図8に示す。この図は、経口胃管栄養を介する投与または吸入を介する肺への直接投与後のL−ドパの血液レベルを示す。L−ドパレベルを、共にHPLCを使用して測定した。動物は、L−ドパの投与1時間前に、末梢デカルボキシラーゼインヒビター、カルビドパ(200mg/kg)のIP注射を受けた。ケタミン麻酔下で、この動物を、2群に分けた。第1群において、動物を一晩絶食し、そしてL−ドパ(8mg)を1%メチルセルロース含有生理食塩水に懸濁し、そして経口胃管栄養を介して与えた。第2群において、吸入を使用して、L−ドパ製剤を直接肺へ送達した。血液サンプル(200mL)を、以前に配置した大腿部カニューレから、以下の時点で回収した:L−ドパ投与後0分(L−ドパ投与直前)、2分、5分、15分および30分。経口投与後の経時的なL−ドパの血液レベルの増加は、あまり大きくなかった。対照的に、肺への投与は、L−ドパレベルにおいて強くかつ急な増加を生じた。この群におけるL−ドパレベルは、薬物投与後30分で経口送達と比較して上昇したままであった。データを、8mg/kgの用量(総経口胃管栄養用量)に対して標準化した。データを、平均±SEM ng 1−ドパレベル/ml血液として示す。
【0161】
実施例6
ケトプロフェン/DPPC/マルトデキストリン(maltodextrin)粒子を調製し、そしてインビボで投与した。
【0162】
ケトプロフェン(99.5%)を、Sigma(St.Louis、MO)から、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を、Avanti Polar Lipids(Alabaster、AL)から、そしてマルトデキストリン、M100を、(Grain Processing Corp.、Muscatine、IA)から入手した。
【0163】
ケトプロフィン/DPPC/マルトデキストリン溶液を調製するため、マルトデキストリン(0.598g)を、0.60LのUSP水へ添加した。DPPC(0.901g)を、1.40Lのエタノールへ添加し、そして溶解するまで攪拌した。水およびエタノール溶液を合わせて、濁った溶液を得た。500mLのこのストック溶液を、各ランに使用した。DPPC/マルトデキストリンのストック溶液へのケトプロフェンの添加を、表2に記載する。
【0164】
Niro Atomizer Portable Spray Dryer(Niro, Inc., Columbus, MD)を用いて乾燥粉体を作製した。可変性の圧力(1〜5bar )で加圧した空気によりドライヤー上に位置する回転式噴霧器(2,000 〜30,000rpm )を作動させた。種々の速度(20〜66ml/min)でのケトプロフィン/DPPC/マルトデキストリン溶液の液体フィードを、電気的自動計量ポンプ(LMI 、モデル番号A151192s)により噴霧器に連続的にポンピングした。入り口および出口の両方の温度を測定した。入り口の温度を手動で調節した;これは、5℃の調節限界で100 ℃〜400 ℃の間で変化し得た。出口の温度を、入り口の温度ならびにガスおよび液体のフィード速度等の要素により測定した:これは50℃〜130 ℃の間で変化した。粉体生成物を回収するために、コンテナを6'' サイクロンに緊密に取り付けた。各溶液に関するスプレー条件を表3に示す。これは、スプレー条件が研究を通してほとんど一定に保たれていることを示す。各溶液に関する総計の回収量および収率を表4に示す。
【0165】
粒子を、製造業者に指示されるようにしてAerosizer (TSI, Inc., Amherst, MA)およびRODOS 乾燥粉体ディスペンサー(Sympatec Inc., Princeton, NJ )を用いて特徴づけた。RODOS について、幾何学的直径を2bar で測定した。また、ラン番号5由来の物質を重量崩壊(gravimetic cllapsed )Andersen Cascade Impactor (ACI, 2stage, Anderson Inst., Sunyra, GA )を用いて特徴づけた。前記サンプルを、走査型電子顕微鏡(SEM )を用いて調査した。
【0166】
表4は、ケトプロフェンの重量%の増大は、収率の減少を導くことを示す。ストック溶液へのケトプロフェンの添加は、直線的に収率を減少させた。これは、ケトプロフェンと混合したときのDPPCの融点における減少によるものであるかもしれず、収率の減少を導びく。
【0167】
表5は、粒子が8.8 〜10.2mm(VMGD)および2.65〜3.11(MMAD)の直径の範囲であることを示す。最も低いMMAD粒子は、8.4 %の負荷物質(ラン番号5)であった。
【0168】
表6は、ラン番号5、8.4 %負荷物質由来の物質のAnderson Collapsed Impactor 研究(ACI, 重量測定、n =2)の結果を示す。5.6 μm 未満および3.4 μm未満のFPF は、適正に呼吸できる呼吸可能粉体と一致する。
【0169】
【表2】

【0170】
【表3】

【0171】
【表4】

【0172】
【表5】

【0173】
【表6】

【0174】
60/40 DPPC/ マルトデキストリン中の350mg の8%ケトプロフェンを上記のように作製し、20匹のSprague Dawleyラットに投与した。8匹のラットそれぞれに吸入により7mgの粉体を与え、7匹のラットそれぞれに50%エタノールに溶解させた7mgの粉体を経口で与えた。時間点を、0、5、15、30、60、120 、240 、360 および480 分に設定した。t=0については、4匹の動物を投薬なしで試験した。その後の各時間については、サンプルを3または4匹のラットのいずれかから採取した。各ラットを、4群の各々3または4匹の動物を用いて4時間点の間使用した。動物を以下のように分配した:3匹の動物、経口、5、30、120 、360 ;4匹の動物、吸入、15、60、240 、480 。ケトプロフェン血漿アッセイのために各時間点で十分な血液を採取した。血液サンプルを遠心分離し、血漿を回収し、次いで解析のために契約研究室に発送する前に−20℃で凍結させた。この研究に使用したアッセイは、1.0mg/mlの最小検出限界を有する。肺経路が最大血漿濃度を達成するために必要な時間を変化させるかどうかを決定するために、ラットに、経口または肺投与によりケトプロフェンを投与した。この結果は、肺送達経路が、≦10分で起こる非常に迅速な取り込みを導くことを示す。ケトプロフェンの経口投与を受けたラットは、肺経路により投与されたラットについて示されるバイオアベリラビリティの約半分の相対的バイオアベリラビリティとともに、幾分異常な薬物動態学的挙動を示した。ケトプロフェンがヒトモデルにおいて90%経口的に生物利用可能であるというこの結果は予想外であった。しかし、経口投与したラットに関するこの例外は、肺経路により投与したラットについて初期に見られた有意性を無効にするものではない。
【0175】
結果を表7に示す。平均を、標準誤差およびp値とともに計算した。また、この結果を、図9〜11にグラフで示す。ここで、図9は両方のデータセットを示し、図10は経口投与の結果を示し、図11は吸入の結果を示す。図9については、p<0.05の点を「*」でマークし、p<0.01の点を「**」でマークする。図10および11については、AUC (曲線下の面積)を、スムーズな補間を用いて曲線の数的積分により行った。
【0176】
t=0で、全てのラットは、アッセイの検出限界未満のケトプロフェンレベルを示した。t=5分〜t=60分まで、吸入したラットは、有意に高い血漿レベルのケトプロフェンを有していた。t=120 分およびt=240 分で、2つの群のケトプロフェンの血漿レベルは、統計学的に等価であった。t=360 分およびt=480 分で、両方の群に関するケトプロフェンの血漿レベルは、アッセイの検出限界に接近した。
【0177】
吸入したラット対経口投与したラットに関するAUC の比は、約2であった。初期の時間点でのケトプロフェンの血漿濃度も同様に統計学的に有意であったためであった。
【0178】
吸入させたラットについては<15分に明白に生じ、経口投与したラットについては15〜60分に生じた。この群に関する大きな標準誤差および相対的に低い血漿レベルのために、必要とされる時間を正確に決定することはできなかった。
【0179】
肺投与は、経口投与(t=15〜60分)に比べて非常に迅速(<15分)に生じた。
【0180】
吸入させたラットは、経口投与したラットに比べてより高いバイオアベイラビリティを示した。これは、以前の研究が経口投与、皮下投与または直腸投与した場合、ヒトにおいて一貫して高い(>90%)バイオアベイラビリティを有するケトプロフェンを示していることからは予測できない。経口により送達されるケトプロフェンの薬学動態学的挙動は周知であるので、経口投与群についてここで見られた異例の結果は、吸入群について見られた結果を無効にするものではない。
【0181】
【表7】

【0182】
実施例7
以下の実施例の方法および器具を、L-ドパを含み、肺送達に適切である粒子の物理的特徴を決定するために使用した。
【0183】
空気力学的直径を、標準的な手順(Alkermes SOPナンバーMS-034-005)に従ってAPI AeroDisperser およびAerosizer (TSI, Inc., St. Paul, MN )を用いて解析した。サンプル粉体をAeroDisperser に導入し、分散させ、次いでAerosizer のノズルを介して加速した。直接的な飛行時間(time-of-flight)測定をAerosizer 中の各粒子について行った。これは粒子の慣性に依存した。次いで、飛行時間分布を、Stokesの法則に基づく力均衡(force balance )を用いて質量ベース空気力学的粒子サイズ分布に転換した。
【0184】
幾何学的直径を、レーザー回折技術(Alkermes SOPナンバーMS-021-005)を用いて測定した。この装置は、HELOS 回折計およびRODOS 分散器(Sympatec, Inc., Princeton, NJ )からなる。RODOS 分散器は、入り加圧空気のレギュレーター圧力により制御される、切断力を粒子のサンプルに適用する。分散した粒子は、レーザービームを介して移動し、ここで得られる回折光パターンを、一連の検出器によって回収する。次いで、全回折パターンを、より小さな粒子が、より大きな角度で光を回折するということを基礎として、Fraunhofer回折モデルを用いて容積ベース粒子サイズ分布に転換する。
【0185】
吸入器デバイスからの分散した粉体の空気力学的特性を2段階MkII Anderson Cascade Impactor(Anderson Instruments, Inc., Smyrna, GA)で評価した。この器具は、空気力学的直径に基づいてエアロゾル粒子を分離する2段階からなる。各段階で、エアロゾル流はノズルのセットを通過し、対応する嵌入プレートに衝突する。小さな十分な慣性を有する粒子は、エアロゾル流とともに次の段階に継続し、一方、残存する粒子はプレートに衝突する。各々の連続的な段階で、エアロゾルは、より高い速度でノズルを通って通過し、空気力学的に小さな粒子はプレートに集められる。エアロゾルは、最後の段階を通過した後、フィルターは残存する最も小さな粒子を回収する。
【0186】
AIR 粉体内の薬物の負荷量を測定する前に、最初に薬物を粉体内の賦形剤から分離しなければならなかった。賦形剤DPPCからL-ドパを分離するための抽出技術を開発した。粒子を最初に50%クロロホルム/50%メタノールに溶解させた。不溶性のL-ドパをペレット化して取り出し、同一の溶媒系で洗浄し、次いで0.5Mの塩酸内で可溶性にした。DPPCをL-ドパでスパイク(spike )し、回収率を測定した。サンプルを、分析のために逆相高速液体クロマトグラフィ(HPLC)に注入した。
【0187】
分離を、Waters Symmetry C18 5μm カラム(150-mm x 4.6-mm ID)を用いて達成した。カラムを30℃に保ち、サンプルを25℃に保った。注入容積は10μL であった。移動相を、2.5 %メタノールおよび97.5%水溶液(10.5g/L クエン酸、20mg/L EDTA 、20mg/L 1- オクタンスルホン酸ナトリウム塩一水和物)から調製した。移動相を、撹拌プレート上で連続的に撹拌し、Watersインライン脱気システムを介して脱気した。L-ドパを、定組成条件下で溶出した。検出を、波長254nm で設定した紫外線検出器を用いて行った。
【0188】
L-ドパの平均単回経口用量は一般に100 〜150mg の範囲にあるので、高負荷量のL-ドパを含んだ吸入に適切な粒子を調製するために実験を行った。20%および40%のL-ドパ容量の製剤を研究した。また、末梢の脱炭酸を防止するためにL-ドパとのコンジュゲーションで与えられるカルビドパ、デカルボキシラーゼインヒビターを、いくつかの製剤において4:1 の重量/重量(w/w )比で含ませた。L-ドパ、ならびにL-ドパおよびカルビドパの組み合わせを、DPPC製剤とともに首尾良く噴霧した。最適な製剤は、L-ドパおよび/またはカルビドパ、20%(w/w )クエン酸ナトリウム、および10%(w/w )塩化カルシウム、およびジパルミトイルホスファチジル塩素(DPPC)の残渣からなっていた。
【0189】
製剤の詳細および得られた粒子の物理特性を表8に要約する。空気力学的サイズまたは質量メジアン空気力学的直径(MMAD)を、Aerosizerで測定し、幾何学的サイズまたは容積メジアン幾何学的直径(VMGD)をレーザー回折により測定し、細密粒子画分(FPF )を2段階Andersen Cascade Impactor を用いて測定した。図12、および表8のVMGD比により示されるように、粉体は、流速に非依存性であった。走査型電子顕微鏡を用いて粒子を観察した。
【0190】
【表8】

【0191】
L-ドパのプロセス中の完全性は、製剤および噴霧乾燥プロセスを通して保存されるようであった。L-ドパを、L-ドパ粉体から抽出し、逆相HPLCにより分析した。L-ドパ粉体に不純物は検出されなかった(図13A );約1〜2分で溶出された初期のピークは、図13B から理解されうるように、L-ドパを含んでいなかったブランクサンプルである溶媒によるものである。粒子から回収したL-ドパの純度は、20%および40%負荷粒子についてそれぞれ99.8%および99.9%であった。
【0192】
粉体内のL-ドパの負荷量を測定するために、最初にL-ドパを製剤中の賦形剤から分離し、次いで逆相HPLCにより分析した。粉体からのL-ドパ回収の結果および最終負荷量計算を表9に示す。抽出回収率および負荷量測定の両方とも申し分なかった。測定した薬物負荷量は、名目上の負荷量の約87%であった。本明細書中で使用される用語「名目上の負荷量」は、投与のために標的化される粒子の質量中の予想される生物活性因子の総質量をいい、投与に利用可能な生物活性因子の最大量を示す。本明細書中で使用される用語「名目上の用量」は、投与のために標的化される粒子の質量中に存在する生物活性剤の総質量をいい、投与に利用可能な生物活性剤の最大量を表す。
【0193】
【表9】

【0194】
実施例8
L-ドパの血漿レベルの測定を、IV注入、経口胃管栄養法、または肺への吸入の後に行った。カルビドパは、一般に、末梢のデカルボキシラーゼ活性が完全に停止されることを確認するために投与される。本実施例では、L-ドパの投与の1時間前に末梢デカルボキシラーゼインヒビターカルビドパ(200mg/kg)の腹腔内(IP)注射を動物に与えた。ケタミン麻酔下で、動物を3つの群に分けた。第1の動物群では、L-ドパ(2mg)を、1%メチルセルロースおよび1%アスコルビン酸を含有する生理食塩水に懸濁し、経口胃管栄養法により与えた。第2群では、吸入技術を、L-ドパ(20%負荷密度)を負荷したAIR 粒子の肺投与のために使用した。喉頭鏡を用いてラットの喉頭蓋を可視化し、平滑チップ吸入デバイス(PennCentury Insufflation粉体送達デバイス)を気道に挿入した。付属のシリンジからの空気のボーラス(3cc)を用いてデバイスのチャンバーから予め負荷した粉体を動物の肺に送達した。総計10mgの粉体(2mg L- ドパ)を送達した。第3の群において、以前に配置した大腿カニューレを用いてL-ドパ(2mg)のボーラス(2〜3秒)を送達した。血液サンプル(200 μL )を、以下の時間点:L-ドパ投与の0(L-ドパ投与の直前)、2、5、15、30、60、120 および240 分後に大腿カニューレを用いて各動物から回収した。全てのサンプルをHPLCを用いてL-ドパ測定のために処理した。
【0195】
記載される手順を用いた薬物動態学的研究の結果を図14A および14B に示す。L-ドパの肺送達と経口投与との比較の結果を図14A に示す。吸入の後、L-ドパのピーク血漿レベルは、測定した最も初期の時間点(2分)で見られ、投与の15分以内に減少し始めたが、120 分までの間、経口投与と比較して依然として上昇したままであった。対照的に、L-ドパの経口投与は、血漿L-ドパレベルのより漸進的な増大をもたらし、これは投与後15〜30分でピークに達し、次いで次の1〜2時間にわたって徐々に減少した。
【0196】
また、静脈内送達、経口送達および肺送達を比較した。結果を図14B に示す。このパネルは、図14A に示されるのと同一のデータにIV投与群を追加したものを示し、これにより3つの投与経路(肺、経口およびIV)の全ての後に得られる血漿L-ドパレベルの直接的な比較を可能にする。データを平均±SEM μg L-ドパレベル/mL血液として示す。L-ドパの血漿レベルは、静脈内(IV)投与の後に迅速に増大した。L-ドパの最高レベルは2分で見られ、その後迅速に減少した。
【0197】
バイオアベイラビリティを、血中薬物濃度時間曲線下面積曲線(AUC )の計算を行うことにより評価した。研究の時間経過全体にわたって(0〜240 分)、肺L-ドパの相対的なバイオアベイラビリティ(IVと比較して)は、経口L-ドパに関する33%と比較して約75%であった。投薬の15分後および60分後の肺L-ドパの相対的なバイオアベイラビリティは、それぞれ38%および62%であり、一方、経口L-ドパのそれは、それぞれ9%および24%であった。
【0198】
実施例9
また、L-ドパを与えたラットの薬力学評価を行った。ラットに、中央前脳束へのニューロトキシン6-OHDAの一側性注射を与えた。次いで、ラットを、標準的なアポモルフィン誘導性回転パラダイムを用いて、首尾よい線条体ドパミン枯渇を評価するためにスクリーニングした。手術の2週間後に開始して、動物をアポモルフィン誘導性回転挙動について3週間の間毎週試験した。この試験のために、動物にアポモルフィン(第1試験については0.25mg/kg および2回の試験の後に0.1mg/kg)のIP注射を与え、円柱状のPlexiglassバケットに配置した。各360 度回転を、30分間計数し、>200 回転/30分を示す動物(12/30 障害ラット)のみを挙動試験に使用した。
【0199】
障害ラットを、L-ドパ投与の後にいくつかの運動課題に挑戦させた。研究(位置課題、踏ん張り課題、無運動)からのデータは、経口送達を上回る肺送達の利点をさらに強調した。
【0200】
1つの試験において、アポモルフィンチャレンジを通過した動物を、「位置課題」を用いて試験した。各試験日の前に、動物に上記のように末梢デカルボキシラーゼインヒビターカルビドパ(200mg/kg)のIP注射を与えた。次いで、動物に経口L-ドパ(0、20または30mg/kg )または肺L-ドパ(0、0.5 、1.0 または2.0mg のL-ドパ)を与え、15、30、60および120 分後に試験した。L-ドパの経口送達および肺送達を用いた試験の間、各動物に無作為化した様式で全ての可能な薬物組み合わせを与えた。
【0201】
薬力学「位置課題」は、感覚刺激に応答して直接的な前肢運動を動物にさせることを要した。ラットを、その肢を補助なしでつるす(hangging)ように支えた。次いで、それらの体がテーブルの縁に平行になるようにそれらをテーブルの端に上げた。各ラットに各前肢での10回の継続的な試行を与え、ラットがその前肢をテーブルの上に置いた総回数を記録した。
【0202】
「位置課題」試験からの結果を図15A および15B に示す。ベースライン(t=0;L-ドパ投与の直前)では、無影響の肢を有する動物は、この課題をほぼ完全に行い、9/10よりも多く正確な応答を行った。対照的に、損傷した肢を有する動物は、同じ課題を行う能力においては顕著に欠陥を示し、10回の試行においておおよそ1回の正確な応答を行った。
【0203】
経口L-ドパ(図15A )は、損傷した肢を用いた成績において用量関連性改善を生じた。試験した最も高い用量(30mg/kg )では、成績は生理食塩水対象と比べて30分以内に改善され、薬物投与後の1〜2時間の間にピークに達した。より低い用量(20mg/kg )もまた、60分に最大の効果をともなってわずかに成績を改善し、その後安定した成績を示した。生理食塩水対照の投与後に変化は見られなかった。
【0204】
経口投与とは対照的に、「位置課題」における成績は、図15B から理解されるように、L-ドパの肺送達の後に迅速に改善した。試験した最も高い用量では、10分以内に有意な改善が起こり、15〜30分以内(経口投与での1〜2時間とは対照的に)にピーク利益(benefit )が観察された。これらの効果は用量関連性であり、有意な改善が0.5mg のL-ドパ程度の低い用量で見られた。経口送達で示された回復と比べて、肺経路を用いて顕著により低い総用量で挙動改善が見られた。例えば、経口により与えた30mg/kg のL-ドパでの回復の程度は、肺経路により与えた1mgのL-ドパで見られた回復に匹敵した(動物の体重が約300 gであると仮定すると、1mgの肺L-ドパは約3mg/kg に等価であることに留意)。従って、L-ドパ用量が、体重により標準化された場合、これは等価な効力を生じるのに必要な薬物においてほぼ10倍の差を示した。最終的に、挙動改善の持続は、2つの送達経路を用いて比較可能であった。
【0205】
踏ん張り試験の結果を図16A および16B に示す。この試験は、上記の「位置課題」試験と同一の動物を使用し、同時に行った。ラットを、滑らかなステンレススチール表面に配置し、約20cm/ 秒で側方に90cm穏やかに押した。ラットが移動した側の前肢で要したステップ数を記録した。各試行は、それぞれの方向にマウスを2回移動させることを含んだ。
【0206】
この動物(無影響な肢を有する約7つの反応と比較して約3つの反応を作成した)は、図16Aに示すように、損傷した肢でこの課題を実行する能力において深い欠陥を示した。さらに、経口投与は、用量関連様式で、この課題に対する能力を改善した。30mg/kgの投与(約10mgのL−ドパ)は、30分以内に能力を改善した。最大の効果は、60分以内に見られ、その後安定なままであった。より低用量の経口L−ドパ(20mg/kgまたは約7mgのL−ドパ)は、能力をわずかに改善した。さらに、生理食塩水対照の投与は、能力に影響を及ぼさなかった。
【0207】
経口投与とは対照的に、L−ドパの肺投与後、この課題に対する能力は、図16Bに示すように、速やかに改善した。有意な改善は、10分以内に見られ、15〜30分以内に最高の利益が観察された(経口投与での30〜60分に対抗して)。これらの効果は、適度に用量相関であったが、統計的に有意な改善は、わずか0.5mg(約1.5mg/kgと等価)で見られた。他の機能試験に関して、肺L−ドパ後に達成された挙動の改善は、経口送達後の類似の程度の効果を達成するのに必要な用量よりもずっと低い用量で生じる。最後に、挙動の改善の持続性は、2つの送達経路を使用して匹敵した。
【0208】
また、機能性無運動薬力学研究を行った。この結果を図17Aおよび17Bに示す。この試験を、2つの先行実験と同じ動物を使用して、かつ同じ時間で実行した。この課題において、動物を、一方の前肢で立たせ、そして自身で移動できるように保持した。ラットが立っている前肢でとる歩の数を、各前肢について30秒試験の間に記録した。
【0209】
位置試験および踏ん張り試験で見られるように、この動物は、損傷した肢でこの無運動課題を実行する能力において深い欠陥を示した。この動物は、正常な肢で約17歩進むが、損傷した肢でこの数の半分よりも少なく進んだ(範囲=0〜10歩)。経口投与(図17A)は、用量相関様式でこの課題に対する能力を改善した。30mg/kgの投与(約10mgのL−ドパ)は、30分以内に能力を改善し、最大の効果は、60分以内に見られた。より低用量の経口L−ドパ(20mg/kgまたは約6.8mgのL−ドパ)は、同じパターンの回復を生じたが、改善の絶対的な程度は、より高用量のL−ドパで見られた改善よりもわずかに少なかった。能力は、両用量の投与後60分から120分の間、安定なままであった。生理食塩水対照の投与は、能力に影響を及ぼさなかった。
【0210】
経口投与とは対照的に、L−ドパの肺投与後、この課題に対する能力は、図17Bに示すように、速やかに改善した。有意な改善は、10分以内に見られ、15〜30分以内に最高の利益が観察された(経口投与での30〜60分に対抗して)。これらの効果は、わずか1.0mgで見られる用量相関の統計的に有意な(p<0.05)改善であった。他の機能試験に関して、肺L−ドパ後に達成された挙動の改善は、経口送達後の類似の程度の効果を達成するのに必要な用量よりもずっと低い用量で生じた。最後に、挙動の改善の持続性は、2つの送達経路を使用して匹敵した。
【0211】
動物をまた、脳におけるドパミン活性の感受性の高いかつ信頼性のある測定であることが知られる標準的な薬力学的回転試験で試験した。この試験について、動物は、経口L−ドパ(30mg/kgまたは総量約10mg)あるいは肺L−ドパ(総量2mg)のいずれかを受けた。これらの用量を、この試験に対して選択した。なぜなら、これらの用量が、以前の機能試験において最大の効力を生じることが示されたL−ドパの用量を示すからである。投薬後、動物を、円筒Plexiglasバケットへ配置した。各360°回転を、計数し、120分試験期間にわたって5つの精密ビンへグループ分けした。動物をまた、カルビドパで予め処置された、および処置されていない場合の回転挙動について試験した。
【0212】
これらの研究に使用した全ての動物は、6−OHDA(脳におけるドパミンニューロンに特異的な神経毒)の一惻性注射(unilateral injection)を受けた。ドパミン枯渇が一惻性であるので、注射されていない側は、インタクトなままであり、さらにドパミン活性における変化に応答し得た。これらの動物を、ドパミンアゴニスト(すなわち、L−ドパ)を用いて注射する場合、脳ドパミン活性は、インタクトな側で好ましく刺激された。これは、旋回挙動または回転挙動として現れる運動活性の非対称な刺激を生じた。回転の開始および数は、時間経過および増加したドパミン活性の程度の両方の指標を提供した。
【0213】
この結果を図18に示す。L−ドパの経口投与は、L−ドパ投与後、最初の10〜15分の間はそれほど大きくない著しい右回りの回転挙動を生じた(<5回転/動物)。次の20分の間、回転の数は、著しく増加し、L−ドパ約30分後で最高レベルを生じ、これは、脳のインタクトな線条においてドパミン活性が増加したことを示した。次の90分の間、回転の数は、徐々に減少したが、この減少は、最高レベルと比較して統計的な有意性(p>0.05)に到達しなかった。
【0214】
経口投与とは対照的に、L−ドパの肺送達は、速やかに回転挙動を増加し、これは、インタクトな線条におけるL−ドパのドパミンへのずっと速やかな変換を示した。この群における回転は、最初の10〜15分以内の経口送達によって生じた回転の3倍より大きかった。回転の数は、わずかに増加し、25〜30分で最高になり、その後も比較的安定なままであった。経口送達と比較して回転が増加する傾向は、投薬後120分見られるが、統計的な有意性(p>0.05)に到達しなかった。回転挙動は、カルビドパでの前処置を受けていない動物においては事実上、消えた(データは示さない)。
【0215】
実施例10
以下の実験の目的は、少なくともキャリア粒子および必要に応じて薬剤を含む種々の組成物の相対的なバイオアベイラビリティを試験することである。他に示されない限り、噴霧乾燥粒子を使用する場合、これらを、上の実施例における工程に従って調製した。調製したこの粒子の特徴は、以前に開示した範囲内に含まれる。この製剤を、下の表10に示す。
【0216】
試験を、サルメテロール(salmeterol)の種々の製剤を使用して行った。他に示されない限り、微粉化サルメテロールキシナホエート(xinafoate )を、粒子の調製に使用した。2つのこのような製剤は、表10において製剤1(F1)および製剤2(F2)である。F1を、69%のDPPC/20%のクエン酸ナトリウム/10%の塩化カルシウム/1%のサルメテロールから構成した。F2を、29.5%のDPPC/29.5%のDPPE/20%の乳糖/20%のクエン酸ナトリウム/1%のサルメテロールから構成した。比較のため、両方ともサルメテロールを含まないF1およびF2の製剤を、調製した。2つのサルメテロール含有対照SX1およびSX2を、それぞれ、F1およびF2を試験する実験に使用した。
【0217】
【表10】

【0218】
F1のプレ噴霧乾燥溶液を調製するために、200mgのクエン酸ナトリウムおよび100mgの塩化カルシウムを、300mLの水に溶解させた。690mgのDPPCおよび10mgのサルメテロールを、700mLのエタノールに溶解させた。この2つの溶液を合わせて、1L溶液(70% EtOH/30%水、1g/Lの固体)を形成した。
【0219】
F2のプレ噴霧乾燥溶液を調製するために、200mgのクエン酸ナトリウムおよび200mgの乳糖を、300mLの水に溶解させた。295mgのDPPC、295mgのDPPEおよび10mgのサルメテロールを、700mLのエタノールに溶解させた。この2つの溶液を合わせて、1L溶液(70% EtOH/30%水、1g/Lの固体)を形成した。
【0220】
プレ噴霧乾燥溶液を、上記のように噴霧乾燥し、下の実験に使用する乾燥粒子を生成した。
【0221】
実施例11
上記で生成した乾燥粒子製剤(AIR粒子)を、投与のために調製した。サルメテロールなしで噴霧乾燥したF1およびF2の場合のAIR粒子を、カプセルに置いて、そして重量測定した。その後、所望の活性化合物(F1、F2)を、AIR粒子の上に置き、その重量を記録した。詳細には、F−1製剤を、サルメテロールを含まないF1製剤と共に置き、そしてF−2製剤を、サルメテロールを含まないF2製剤と共に置いた。このカプセルの内容物の最終質量は、総計で1.0mgであった。このカプセルを閉じて、内容物を、カプセルを繰り返し転がすことによって混合した。このプロセスは、これらの実験において投与するカプセル内の「ブレンド」を生じた。
【0222】
Serevent(登録商標)試験製剤のために、活性化合物としてSerevent(登録商標)1およびSerevent(登録商標)2を調製した。Serevent(登録商標)は、Glaxo Wellsome、Research Triangle、N.C.の登録商標である。これは、サルメテロールの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩のラセミ体であるサルメテロールキシナホエートの製剤である。この製剤の活性成分は、サルメテロールベースの高い選択性のβ−アドレナリン作用性気管支拡張薬である。サルメテロールキシナホエートの化学名は、4−ヒドロキシ−α1 −[[[6−(4−フェニルブトキシ)ヘキシル]アミノ]メチル]−1,3−ベネゼンジメタノール,1−ヒロドキシ−2−ナフタレンカルボキシレートである。
【0223】
上記のカプセルを充填するための手順を全般的に続けた。しかし、Serevent(登録商標)1およびSerevent(登録商標)2を使用する試験製剤において、AIR粒子を使用しなかった。代わりの微粉化乳糖粉体を、このカプセルに初めに配置し、そして重量を記録した。その後、Serevent(登録商標)を、乳糖粉体上に置いた。上の場合、カプセルの内容物の最終質量は、総計で1.0mgであった。このカプセルを閉じて、内容物を、カプセルを繰り返し転がすことによって混合した。このプロセスは、カプセル内の「ブレンド」を生じた。最後に、2つのサルメテロール含有対照SX1およびSX2を、実験に使用し、ここで、Serevent(登録商標)を、サルメテロールを含まないAIR粒子(キャリア)と共にブレンドした。サルメテロール粒子を含まないF−1の場合、AIR粒子を、このカプセルに初めに置き、そして重量を記録した。その後、Serevent(登録商標)を、AIR粒子上に置いた。上の場合、カプセルの内容物の最終質量は、1.0mgであった。このカプセルを、閉じて、そして内容物を、カプセルを繰り返し転がすことによって混合した。このプロセスは、これらの実験において投与するカプセル内の「ブレンド」を生じた。
【0224】
実施例12
モルモットにおける肺機能を評価するために全身体プレチスモグラフィ方法を使用した。麻酔をかけた動物に、気管内吸入によって試験製剤を投与した。この系は、個々のモルモットに霧状化によって得られるメタコリンを用いて経時的に繰り返しチャレンジすることを可能にした。流れパラメータに基づく気道抵抗の計算した測定値、PenH(強化休止)を、メタコリン誘導性気管支収縮からの保護のマーカーとして特異的に使用した。
【0225】
詳細には、使用したシステムは、BUXCO XA肺機能ソフトウェアを備えるBUXCO全身体無制限プレチスモグラフィーシステム(BUXCO Electronics、Inc.、Sharon、CT)であった。このプロトコールは、SilbaughおよびMauderly(「Noninvasive Detection of Airway Constriction in Awake Guinea Pigs」American Physiological Society、84:1666−1669(1984))ならびにChongら(「Measurements of Bronchoconstriction Using Whole−Body Plethysmograph:Comparison of Freely Moving Versus Restrained Guinea Pigs」Journal of
Pharmacological and Toxicological Methods、39(3):163−168(1998))に記載される。ベースライン肺機能(気道過剰反応)値を、いずれの実験処理の前にも測定した。次いで、生理食塩水およびメタコリンに応じる気道過剰反応を、サルメテロール製剤の投与後の種々の時点(2〜3、16、24および42時間)で評価した。平均PenHを、生理食塩水またはメタコリンを用いたチャレンジ後の4分と9分の間に収集したデータから計算した。各時点でのベースラインPenHの割合を、各実験動物について計算した。その後、同じ製剤を受けた動物からの値を、平均して、各時点での平均群応答(±標準誤差)を決定した。
【0226】
雄性Hartleyモルモットを、Elm Hill Breeding Labs(Chelmsford、MA)から入手した。粉体量(カプセル中1mg)を、モルモットのために吸入器サンプルチャンバ吸入デバイス(Penn Century(Philadelphia、PA)へ移動した。吸入器の送達チューブを、口を介して気管へ挿入し、チューブの先端がカリナ(最初の分岐)から約1cmまで進めた。吸入器サンプルチャンバから粉体を送達するために使用した空気体積は3mLであった(10mL注射器から送達される)。モルモットへの粉体送達を最大にするため、この注射器を、1粉体用量あたり合計で3回の空気放出のために2回より多く再充填および排出した。メタコリンチャレンジを、粉体投与後2〜3、16および24時間の時点で実行した。
【0227】
試験を、下の表11に示す製剤成分および量を使用して繰り返した。
【0228】
【表11】

【0229】
実施例13
1つの実験において、実施例12の手順に従った。表11に記載する製剤F−1(0.5)、F−1(1.0)、F−1(2.0)、SX−1(0.5)およびSX−2(1.0)を、動物へ投与した。F−1シリーズの製剤は、サルメテロール、DPPC、クエン酸ナトリウムおよび塩化カルシウムを含む。流れパラメータを使用して、PenH(強化休止または気道抵抗の測定値)を、各動物について計算し、記録した。この動物を観察し、25時間試験した。この結果を、図19に示す。SX製剤は、SereventTM(サルメテロールの市販形態)を含む。サルメテロール含有AIR粒子(表10および11におけるF−1シリーズ)は、サルメテロールを含まないAIR粒子(ブランク粒子またはプラセボ粒子と時々呼ばれる)とブレンドした場合のSerevent含有製剤(表11のSX1(0.5)およびSX2(1.0))と有利に比較する。このF−1製剤は、一般的に、SX製剤より低い気道抵抗を示した。さらに、全てのF−1製剤は、一貫してSX−1(0.5)より低い気道抵抗を示した。投与後約10時間で始まるが、全てのF−1製剤は、SX−1またはSX−2のいずれかと比較した場合に、有意に低い気道抵抗を示し、それを維持した。
【0230】
実施例14
別の実験において、実施例12の手順に従って、表11に記載する製剤F−2(0.5)、F−2(1.0)、F−2(2.0)、SX−1(0.5)およびSX−2(1.0)を、動物へ投与した。F−2シリーズの製剤は、サルメテロール、DPPC、DPPE、クエン酸ナトリウムおよび乳糖を含む。流れパラメータを使用して、PenH(強化休止または気道抵抗の測定値)を、各動物について計算し、記録した。この動物を観察し、25時間試験した。この結果を図20に示す。SX製剤は、Serevent(サルメテロールの市販形態)を含む。サルメテロール含有AIR粒子(表10および11におけるF−2シリーズ)は、サルメテロールを含まないAIR粒子(ブランク粒子またはプラセボ粒子と時々呼ばれる)とブレンドした場合のSerevent含有製剤(表11のSX1(0.5)およびSX2(1.0))と有利に比較する。このF−2製剤は、一般的に、SX製剤より低い気道抵抗を示した。また、全てのF−2製剤は、一貫してSX−1(0.5)より低い気道抵抗を示した。
【0231】
実施例15
別の実験において、上の手順に従った。表11に記載する製剤F−1(0.5)、F−1(1.0)、F−1(2.0)、Serevent1(0.5)およびSerevent(1.0)を動物へ投与した。Serevent製剤をF−1シリーズと比較した結果(データは示さない)は、SX製剤をF−1シリーズと比較した場合の結果と一致した。重要なことに、この結果は、キャリアとして使用する場合、AIR粒子(ブランクまたはプラセボ)が、乳糖よりも優れていないとしても十分同等に機能することを示す。乳糖は、FDA許可の市販のキャリアである。しかし、乳糖は、深肺へ到着し得ない。実施例3に示すように、AIR粒子は、深肺へ到着し、薬剤の沈着部位へ所望の薬剤(例えば、本実験におけるサルメテロール)を送り届けるかまたは付随し得る。
【0232】
実施例16
別の実験において、上の手順に従った。表11に記載する製剤F−2(0.5)、F−2(1.0)、F−2(2.0)、Serevent1(0.5)およびSerevent(1.0)を動物へ投与した。再度、Serevent製剤とF−2シリーズとの比較において観察された結果(データは示さない)は、SX製剤をF−2シリーズと比較した場合の結果と一致した。これらの結果は、上の実施例15で記載した結論を支持する。
【0233】
本発明は、その好ましい態様を参照して、詳細に示され、そして記載されているが、形態および詳細における種々の変化が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱せずに、その中でなされ得ることは、当業者によって理解される。
【0234】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]a)薬剤を含む粒子を提供すること;および
b)粒子の集団を有する容器から、粒子を被験体の気道に投与すること、ここで、粒子が少なくとも約50%の粒子の集団を送達する、
を含む、単回の呼吸活性化ステップでの肺系への薬剤の送達方法。
[2]薬剤が、治療剤、予防剤、診断剤および予後剤からなる群より選択される、[1]記載の方法。
[3]粒子が約0.1g/cm未満のタップ密度を有する、[1]記載の方法。
[4]粒子が、約5μm よりも大きな幾何学的直径を有する、[1]記載の方法。
[5]容器が少なくとも約0.37cmの容積を有する、[1]記載の方法。
[6]容器が少なくとも約0.48cmの容積を有する、[1]記載の方法。
[7]容器が少なくとも約0.67cmの容積を有する、[1]記載の方法。
[8]容器が少なくとも約0.95cmの容積を有する、[1]記載の方法。
[9]送達が主として深肺に対して行われる、[1]記載の方法。
[10]送達が主として中央気道に対して行われる、[1]記載の方法。
[11]薬剤が生物活性剤である、[1]記載の方法。
[12]生物活性剤が硫酸アルブテロールである、[11]記載の方法。
[13]生物活性剤がインスリンである、[11]記載の方法。
[14]生物活性剤が成長ホルモンである、[11]記載の方法。
[15]生物活性剤が臭化イプラトロピウムである、[11]記載の方法。
[16]生物活性剤がフルチカゾンである、[11]記載の方法。
[17]生物活性剤がサルメテロールである、[11]記載の方法。
[18]生物活性剤がL-ドパである、[11]記載の方法。
[19]生物活性剤が疎水性薬物である、[11]記載の方法。
[20]生物活性剤が親水性薬物である、[11]記載の方法。
[21]生物活性剤がモノクローナル抗体である、[11]記載の方法。
[22]粒子が噴霧乾燥粒子である、[1]記載の方法。
[23]粒子が乾燥粉体の形態である、[1]記載の方法。
[24]気道への投与が乾燥粉体吸入器により行われる、[1]記載の方法。
[25]粒子が非重合体である、[1]記載の方法。
[26]粒子が0.1g/cmよりも大きな動力学的バルク密度を有する、[1]記載の方法
[27]薬剤が非結晶性である、[1]記載の方法。
[28]薬剤が診断剤または予防剤である、[2]記載の方法。
[29]診断剤または予防剤が標識を含む、[28]記載の方法。
[30]標識が、放射性同位体、エピトープ標識、親和性標識、酵素標識、蛍光基および化学発光基からなる群より選ばれる、[29]記載の方法。
[31]標識が放射性同位体である、[30]記載の方法。
[32]放射性同位体が99m Tcである、[31]記載の方法。
[33]薬剤が粒子に取り込まれている、[1]記載の方法。
[34]薬剤が噴霧乾燥プロセスにより粒子に取り込まれる、[33]記載の方法。
[35]薬剤が粒子の表面に付着している、[1]記載の方法。
[36]薬剤が粒子の表面に吸着している、[1]記載の方法。
[37]少なくとも1つのさらなる薬剤が粒子とともに投与される、[1]記載の方法。
[38]少なくとも1つのさらなる薬剤が、粒子に取り込まれているか、粒子の表面に付着しているか、または粒子の表面に吸着している、[37]記載の方法。
[39]a)薬剤を含む粒子を提供すること;および
b)粒子の集団を有する容器から被験体の気道に粒子を投与すること、ここで、粒子は少なくとも約5mgの薬剤を送達する、
を含む、単回の呼吸での肺系への薬剤の送達方法。
[40]薬剤が、治療剤、予防剤、診断剤および予後剤からなる群より選ばれる、[39]記載の方法。
[41]粒子が約0.1g/cm未満のタップ密度を有する、[39]記載の方法。
[42]粒子が約5μm よりも大きな幾何学的直径を有する、[39]記載の方法。
[43]容器が少なくとも約0.37cmの容積を有する、[39]記載の方法。
[44]容器が少なくとも約0.48cmの容積を有する、[39]記載の方法。
[45]容器が少なくとも約0.67cmの容積を有する、[39]記載の方法。
[46]容器が少なくとも約0.95cmの容積を有する、[39]記載の方法。
[47]粒子が少なくとも7mgの薬剤を送達する、[39]記載の方法。
[48]粒子が少なくとも10mgの薬剤を送達する、[39]記載の方法。
[49]粒子が少なくとも15mgの薬剤を送達する、[39]記載の方法。
[50]粒子が少なくとも20mgの薬剤を送達する、[39]記載の方法。
[51]粒子が少なくとも30mgの薬剤を送達する、[39]記載の方法。
[52]粒子が少なくとも35mgの薬剤を送達する、[39]記載の方法。
[53]粒子が少なくとも50mgの薬剤を送達する、[39]記載の方法。
[54]送達が主として深肺に対して行われる、[39]記載の方法。
[55]送達が主として中央気道に対して行われる、[39]記載の方法。
[56]薬剤が生物活性剤である、[39]記載の方法。
[57]生物活性剤が硫酸アルブテロールである、[56]記載の方法。
[58]生物活性剤がインスリンである、[56]記載の方法。
[59]生物活性剤が成長ホルモンである、[56]記載の方法。
[60]生物活性剤が臭化イプラトロピウムある、[56]記載の方法。
[61]生物活性剤がフルチカゾンである、[56]記載の方法。
[62]生物活性剤がサルメテロールである、[56]記載の方法。
[63]生物活性剤がL-ドパである、[56]記載の方法。
[64]薬剤が疎水性薬物である、[39]記載の方法。
[65]薬剤が親水性薬物である、[39]記載の方法。
[66]薬剤がモノクローナル抗体である、[39]記載の方法。
[67]粒子が噴霧乾燥粒子である、[39]記載の方法。
[68]粒子が乾燥粉体の形態である、[39]記載の方法。
[69]気道への投与が乾燥粉体吸入器によるものである、[39]記載の方法。
[70]粒子が非重合体である、[39]記載の方法。
[71]粒子が、0.1g/cmよりも大きな動力学的容積密度を有する、[39]記載の方法。
[72]薬剤が非結晶性である、[39]記載の方法。
[73]薬剤が診断剤または予防剤である、[40]記載の方法。
[74]診断剤または予防剤が標識を含む、[73]記載の方法。
[75]標識が、放射性同位体、エピトープ標識、親和性標識、酵素標識、蛍光基および化学発光基からなる群より選ばれる、[74]記載の方法。
[76]標識が放射性同位体である、[75]記載の方法。
[77]放射性同位体が99m Tcである、[76]記載の方法。
[78]薬剤が粒子に取り込まれている、[39]記載の方法。
[79]薬剤が、噴霧乾燥プロセスにより粒子に取り込まれている、[78]記載の方法。
[80]薬剤が粒子の表面に付着している、[39]記載の方法。
[81]薬剤が粒子の表面に吸着している、[39]記載の方法。
[82]少なくとも1つのさらなる薬剤が粒子とともに投与される、[39]記載の方法。
[83]少なくとも1つのさらなる薬剤が粒子に取り込まれているか、粒子の表面に付着しているか、または粒子の表面に吸着している、[82]記載の方法。
[84]a)0.4g/cm未満のタップ密度を有するキャリア粒子を提供すること;
b)少なくとも1つの薬剤を含む組成物を提供すること;
c)a)のキャリア粒子とb)の組成物とを混合して、呼吸用組成物を形成すること;および
d)被験体の気道にc)の呼吸用組成物を投与すること
を含む肺系への薬物の送達方法。
[85]b)の組成物が乾燥粉体を含む、[84]記載の方法。
[86]乾燥粉体が微粉化粒子を含む、[85]記載の方法。
[87]微粉化粒子がサブミクロンの粒子を含む、[86]記載の方法。
[88]b)の組成物が薬剤を含む液体溶液を含む、[84]記載の方法。
[89]d)の呼吸用組成物が被験体の気道に単回の呼吸活性化ステップにより投与される、[84]記載の方法。
[90]d)の呼吸用組成物が、容器から被験体の気道に投与される、[84]記載の方法。
[91]容器が少なくとも約0.37cmの容積を有する、[90]記載の方法。
[92]容器が少なくとも約0.48cmの容積を有する、[90]記載の方法。
[93]容器が少なくとも約0.67cmの容積を有する、[90]記載の方法。
[94]容器が少なくとも約0.95cmの容積を有する、[90]記載の方法。
[95]キャリア粒子が約0.1g/cm未満のタップ密度を有する、[84]記載の方法。
[96]キャリア粒子が約5μmよりも大きな幾何学的直径を有する、[84]記載の方法。
[97]キャリア粒子が約50μmよりも大きな幾何学的直径を有する、[84]記載の方法。
[98]キャリア粒子が約100 μmよりも大きな幾何学的直径を有する、[84]記載の方法。
[99]キャリア粒子が約5μm〜300 μmの幾何学的直径を有する、[84]記載の方法。
[100]薬剤の送達が主として深肺に対して行われる、[84]記載の方法。
[101]薬剤の送達が主として中央気道に対して行われる、[84]記載の方法。
[102]薬剤が、治療剤、予防剤、診断剤および予後剤からなる群より選ばれる、[84]記載の方法。
[103]薬剤が生物活性剤である、[84]記載の方法。
[104]生物活性剤が、硫酸アルブテロール、インスリン、成長ホルモン、臭化イプラトロピウム、フルクチカゾン、サルメテロールおよびL-ドパからなる群より選ばれる、[103]記載の方法。
[105]生物活性剤がサルメテロールである、[104]記載の方法。
[106]薬剤が診断剤または予後剤である、[102]記載の方法。
[107]診断剤または予後剤が標識を含む、[106]記載の方法。
[108]標識が、放射性同位体、エピトープ標識、親和性標識、酵素標識、蛍光基および化学発光基からなる群より選ばれる、[107]記載の方法。
[109]標識が放射性同位体である、[108]記載の方法。
[110]放射性同位体が99m Tcである、[109]記載の方法。
[111]キャリア粒子が噴霧乾燥粒子である、[84]記載の方法。
[112]キャリア粒子が非重合体である、[84]記載の方法。
[113]キャリア粒子が、0.1g/cmより大きな動力学的容積密度を有する、[84]記載の方法。
[114]薬剤が非結晶性である、[84]記載の方法。
[115]組成物が粒子の表面に付着しているかまたは粒子の表面に吸着している薬剤を含む、[84]記載の方法。
[116]少なくとも1つのさらなる薬剤が、呼吸用組成物とともに投与される、[84]記載の方法。
[117]0.4g/cm未満のタップ密度を有するキャリア粒子、および薬剤を含む組成物を含有してなる、肺系に投与可能な呼吸用組成物。
[118]薬剤を含む組成物が乾燥粉体の形態である、[117]記載の呼吸用組成物。
[119]乾燥粉体が微粉化粒子を含有してなる、[118]記載の呼吸用組成物。
[120]乾燥粉体がサブミクロンの粒子を含有してなる、[119]記載の呼吸用組成物。
[121]薬剤を含む組成物がさらに液体溶液の形態である、[117]記載の呼吸用組成物。
[122]単回の呼吸活性化ステップで被験体の気道に投与されるものである、[117]記載の呼吸用組成物。
[123]容器から被験体の気道に投与されるものである、[117]記載の呼吸用組成物。
[124]キャリア粒子が約0.1g/cm未満のタップ密度を有するものである、[117]記載の呼吸用組成物。
[125]キャリア粒子が、約5μmよりも大きな幾何学的直径を有するものである、[117]記載の呼吸用組成物。
[126]キャリア粒子が、約50μmよりも大きな幾何学的直径を有するものである、[117]記載の呼吸用組成物。
[127]キャリア粒子が、約100 μmよりも大きな幾何学的直径を有するものである、[117]記載の呼吸用組成物。
[128]キャリア粒子が、約5μm〜300 μmの幾何学的直径を有するものである、[117]記載の呼吸用組成物。
[129]主として深肺に対して投与されるものである、[117]記載の呼吸用組成物。
[130]主として中央気道に対して投与されるものである、[117]記載の呼吸用組成物。
[131]薬剤が、治療剤、予防剤、診断剤および予後剤からなる群より選ばれるものである、[117]記載の呼吸用組成物。
[132]薬剤が生物活性剤である、[117]記載の呼吸用組成物。
[133]生物活性剤が、硫酸アルブテロール、インスリン、成長ホルモン、臭化イプラトロピウム、フルクチカゾン、サルメテロールおよびL-ドパからなる群より選ばれるものである、[132]記載の呼吸用組成物。
[134]生物活性剤がサロメテールである、[133]記載の呼吸用組成物。
[135]薬剤が診断剤または予後剤である、[131]記載の呼吸用組成物。
[136]診断剤または予後剤が標識を含有してなる、[135]記載の呼吸用組成物。
[137]標識が、放射性同位体、エピトープ標識、親和性標識、酵素標識、蛍光基および化学発光基からなる群より選ばれるものである、[136]記載の呼吸用組成物。
[138]標識が放射性同位体である、[137]記載の呼吸用組成物。
[139]放射性同位体が99m Tcである、[138]記載の呼吸用組成物。
[140]キャリア粒子が噴霧乾燥粒子である、[117]記載の呼吸用組成物。
[141]キャリア粒子が非重合性である、[117]記載の呼吸用組成物。
[142]キャリア粒子が0.1g/cmよりも大きな動力学的容積密度を有するものである、[117]記載の呼吸用組成物。
[143]薬剤が非結晶性である、[117]記載の呼吸用組成物。
[144]粒子の表面上に吸着された薬剤を含有してなる、[117]記載の呼吸用組成物。
[145]少なくとも1つのさらなる薬剤が呼吸用組成物とともに投与される、[117]記載の呼吸用組成物。
[146]粒子が0.4g/cm未満のタップ密度を有する、[1]記載の方法。
[147]送達が単回呼吸活性化ステップで起こる、[39]記載の方法。
[148]粒子が0.4g/cm未満のタップ密度を有する、[39]記載の方法。
[149]呼吸用組成物が、単回の呼吸で少なくとも約5mgの薬剤を送達する、[84]記載の方法。
[150]少なくとも1つのさらなる薬剤が粒子に組み込まれるか、粒子の表面に付着されているか、または粒子の表面上に吸着されている、[116]記載の方法。
[151]単回の呼吸で少なくとも約5mgの薬剤を送達するものである、[117]記載の呼吸用組成物。
【図面の簡単な説明】
【0235】
【図1】図1は、微粉化硫酸アルブテロール(菱形)、噴霧乾燥硫酸アルブテロール(四角)および噴霧乾燥hGH(三角)に関して圧力に対してプロットした、ミクロンでの質量メジアン幾何学的直径(MMGD)を示すグラフである。
【図2A】図2Aは、IHAにより測定した30L/分で吸入器から出た放出粒子(各対の右の棒)と比較した、RODOSにより測定した1次粒子(各対の左の棒)としての微粉化硫酸アルブテロール、噴霧乾燥硫酸アルブテロールおよび噴霧乾燥hGHのメジアン幾何学的直径を示す棒グラフである。
【図2B】図2Bは、AeroBreatherにより測定した30L/分で吸入器から出た放出粒子(右の棒)と比較した、AeroDispenserにより測定した1次粒子(左の棒)としての微粉化硫酸アルブテロールおよび噴霧乾燥硫酸アルブテロールのメジアン空気力学的直径を示す棒グラフである。
【図3】図3は、60L/分でDPIを用いて微粒子画分(FPF)>4.0ミクロンの放出用量を示す棒グラフである。
【図4】図4は、放射性標識粒子の集団(左の棒)およびガンマカウント(右の棒)の粒子サイズ分布の比較を示す棒グラフである。
【図5】図5は、名目上の用量(菱形)と比較した肺(菱形)における質量沈着を示すグラフである。10個体に対する平均沈着は、59%であった(点線)。
【図6】図6は、6mg(左の棒)および50mg(右の棒)の充填重量に対して得られた質量画分分布の比較を示す棒グラフである。
【図7】図7は、健康なボランティアにおける吸息流速の範囲にわたる本発明の粒子の相対的肺沈着(円)を示すグラフである。これは、吸息流速の同一範囲にわたる乾燥粉体吸入器(DPI)からの肺沈着(実線)と比較される。DPIとの比較のために、本発明の粒子の沈着効率を、1.0の平均値に正規化した(点線)。本発明の粒子に対する名目上の用量で割った肺に沈着した質量の平均効率は、図5に示されるように59%である。
【図8】図8は、L−ドパの血漿濃度対経口または肺投与後の時間を示すプロット表示である(8mg用量に対して正規化)。
【図9】図9は、ケトプロフェンの血漿濃度対経口および肺群に対する時間を示すプロット表示である。
【図10】図10は、ケトプロフェンの血漿濃度対経口群に対する時間を示すプロット表示である。
【図11】図11は、ケトプロフェンの血漿濃度対肺群に対する時間である。
【図12】図12は、L−ドパを含む異なる粉体製剤に対するRODOS曲線を示す点である。
【図13】図13Aおよび図13Bは、ブランクサンプル(図13B)と比較した、粉体からのL−ドパ回収(図13A)を示すHPLCクロマトグラムである。
【図14】図14Aは、肺、および経口経路後のL−ドパ血漿レベルを示す。 図14Bは、肺、経口および静脈内投与後のL−ドパ血漿レベルを示す。
【図15】図15Aおよび図15Bは、パーキンソン病のラットモデルにおける機能的「位置課題(placing task)」上の経口および肺のL−ドパの結果をそれぞれ示す。
【図16】図16Aおよび図16Bは、パーキンソン病のラットモデルにおける機能的「踏ん張り課題(bracing task)」上の経口および肺のL−ドパの結果をそれぞれ示す。
【図17】図17Aおよび図17Bは、パーキンソン病のラットモデルにおける機能的「無運動課題」上の経口および肺のL−ドパの結果をそれぞれ示す。
【図18】図18は、パーキンソン病のラットモデルにおける機能的回転上のL−ドパの経口および肺送達の結果を示す。
【図19】図19は、Serevent(登録商標)製剤[SX-1(0.5) 「×」およびSX-2(1.0) 中空円]と比較したサルメテロール製剤[F-1(0.5)、中実菱形;F-1(1.0)、中実四角;F-1(2.0)、中実三角]を用いた治療後24時間の期間にわたるモルモットモデルにおけるメタコリンチャレンジの結果を示す。
【図20】図20は、Serevent(登録商標)製剤[SX-1(0.5) 「×」およびSX-2(1.0) 中空円]と比較したサルメテロール製剤[F-2(0.5)、中実菱形;F-2(1.0)、中実四角;F-2(2.0)、中実三角]を用いた治療後24時間の期間にわたるモルモットモデルにおけるメタコリンチャレンジの結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)薬剤を含む粒子を提供すること(ここで、該粒子は、0.4g/cm3未満のタップ密度を有し、該粒子の少なくとも75.0%が、空気力学的粒子サイズ分布において6.8μm未満の細かい粒子画分を有する);および
b)粒子の集団を有する容器から、粒子を被験体の気道に投与すること(ここで、粒子は単回の呼吸活性化ステップで少なくとも50%の粒子の集団を肺に送達する)、
を含む、単回の呼吸活性化ステップでの肺系への薬剤の送達方法に使用される粒子であって、送達される粒子の集団の少なくとも50%が4μm未満の平均空気力学的直径を有する、粒子。
【請求項2】
薬剤が、治療剤、予防剤、診断剤および生物活性剤からなる群より選ばれるものである、請求項1記載の粒子。
【請求項3】
粒子が、5μm よりも大きな幾何学的直径または0.1g/cm3よりも大きな動力学的バルク密度を有するものである、請求項1記載の粒子。
【請求項4】
容器が少なくとも0.37cm3 の容積を有するものである、請求項1記載の粒子。
【請求項5】
送達が主として深肺または中央気道に対して行われる、請求項1記載の粒子。
【請求項6】
生物活性剤が硫酸アルブテロール、インスリン、成長ホルモン、臭化イプラトロピウム、フルチカゾン、サルメテロール、L-ドパ、疎水性薬物、親水性薬物およびモノクローナル抗体からなる群より選ばれるものである、請求項2記載の粒子。
【請求項7】
粒子が噴霧乾燥粒子または乾燥粉体の形態である、請求項1記載の粒子。
【請求項8】
気道への投与が乾燥粉体吸入器により行われるものである、請求項1記載の粒子。
【請求項9】
粒子が非重合体である、請求項1記載の粒子。
【請求項10】
薬剤が非結晶性である、請求項1記載の粒子。
【請求項11】
診断剤が標識を含有してなる、請求項2記載の粒子。
【請求項12】
標識が、放射性同位体、エピトープ標識、親和性標識、酵素標識、蛍光基および化学発光基からなる群より選ばれるものである、請求項11記載の粒子。
【請求項13】
放射性同位体が99m Tcである、請求項12記載の粒子。
【請求項14】
薬剤が粒子に取り込まれているか、粒子の表面に付着しているか、または粒子の表面に吸着しているものである、請求項1記載の粒子。
【請求項15】
薬剤が噴霧乾燥プロセスにより粒子に取り込まれたものである、請求項14記載の粒子。
【請求項16】
a)薬剤を含む粒子を提供すること(ここで、該粒子は、0.4g/cm3未満のタップ密度を有し、該粒子の少なくとも75.0%が、空気力学的粒子サイズ分布において6.8μm未満の細かい粒子画分を有する);および
b)粒子の集団を有する容器から被験体の気道に粒子を投与すること(ここで、粒子は単回の呼吸活性化ステップで少なくとも50%の粒子の集団を肺に送達する)、
を含む、単回の呼吸での肺系への薬剤の送達方法に使用される粒子であって、送達される粒子の集団の少なくとも50%が4μm未満の平均空気力学的直径を有する、粒子。
【請求項17】
送達が単回呼吸活性化ステップで起こる、請求項16記載の粒子。
【請求項18】
薬剤が、治療剤、予防剤、診断剤および生物活性剤からなる群より選ばれるものである、請求項16記載の粒子。
【請求項19】
粒子が5μm よりも大きな幾何学的直径または0.1g/cm3よりも大きな動力学的バルク密度を有するものである、請求項16記載の粒子。
【請求項20】
容器が少なくとも0.37cm3 の容積を有するものである、請求項16記載の粒子。
【請求項21】
送達が主として深肺または中央気道に対して行われる、請求項16記載の粒子。
【請求項22】
生物活性剤が硫酸アルブテロール、インスリン、成長ホルモン、臭化イプラトロピウム、フルチカゾン、サルメテロール、L-ドパ、疎水性薬物、親水性薬物およびモノクローナル抗体からなる群より選択されるものである、請求項18記載の粒子。
【請求項23】
粒子が噴霧乾燥粒子または乾燥粉体の形態である、請求項16記載の粒子。
【請求項24】
気道への投与が乾燥粉体吸入器によるものである、請求項16記載の粒子。
【請求項25】
粒子が非重合体である、請求項16記載の粒子。
【請求項26】
薬剤が非結晶性である、請求項16記載の粒子。
【請求項27】
診断剤が標識を含有してなる、請求項18記載の粒子。
【請求項28】
標識が、放射性同位体、エピトープ標識、親和性標識、酵素標識、蛍光基および化学発光基からなる群より選ばれるものである、請求項27記載の粒子。
【請求項29】
放射性同位体が99m Tcである、請求項28記載の粒子。
【請求項30】
薬剤が粒子に取り込まれているか、粒子の表面に付着しているか、または粒子の表面に吸着しているものである、請求項16記載の粒子。
【請求項31】
薬剤が、噴霧乾燥プロセスにより粒子に取り込まれているものである、請求項30記載の粒子。


【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2009−19047(P2009−19047A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222436(P2008−222436)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【分割の表示】特願2002−510053(P2002−510053)の分割
【原出願日】平成13年6月8日(2001.6.8)
【出願人】(500581847)アドバンスト インハレーション リサーチ,インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】