説明

天井パネル用吸音石膏ボード

穿孔されたカバーシートを有する低密度吸音石膏ボードが、優れた吸音特性を有し、一般に石膏粉塵落の落下はない。本発明は、特に距離を置いて見るとテクスチャのある視覚効果をもたらすパターンを有するカバーシートを場合により提供する。
【解決手段】コア調合物の総重量に基づき約75重量%〜約90重量%のスタッコを有する前記コア調合物から作製される固化石膏コアと、前記コア調合物の総重量に基づき約0〜約15重量%のパーライトと、前記コア調合物の総重量に基づき約2重量%〜約12重量%の紙繊維と、前記コア調合物の総重量に基づき約0.5重量%〜約5重量%のスターチと、カバーシートを貫通し前記固化石膏コアに及ぶ多数の吸音穿孔とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音又は吸音パネルとして使用するのに適切な軽量石膏ボードに関する。本発明は、従来の吸音パネルに匹敵する吸音特性を有する経済的で使いやすい低密度吸音石膏ボード、及びそれらの調製方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
吸音パネルは、防音室内表面を形成するために使用される。吸音パネルは通常、天井パネル、壁パネル、仕切り(たとえば、オフィスのキュービクル間の仕切り)の形でもたらされ、商業建築、住宅建築、公共建築、講堂等で使用される。これらのパネルは一般に平面状で、それらパネルの作製用に選択される材料に由来し、またそれらパネルの耐久性に悪影響を及ぼすことなく吸音穿孔を受け入れるそれらパネルの能力に由来する吸音特性を備える。
【0003】
最も一般的な吸音パネルはミネラルウールをベースとするが、ガラス繊維、膨張パーライト、紙繊維及びスターチなどの結合剤を含むこともできる。ミネラルウールは、このような従来の吸音パネルおいて、最も普及している重要な成分である。ミネラルウールをベースとする吸音パネルは非常に多孔性で、このことにより、それらパネルの優れた吸音作用の説明がつく。ミネラルウールをベースとする吸音パネルに膨張パーライトなどの充填剤を組み込んで、最終製品の重量を低減することができる。加えて、ミネラルウールをベースとする吸音パネルは、それらパネルの吸音作用をさらに増大させるために一般には穿孔される。
【0004】
現在、吸音パネルは、ミネラルウール、パーライト、結合剤及び所望の他の成分の水フェルト化希釈水分散液による従来の製紙プロセスで使用されるやり方と同様にして調製される。このようなプロセスでは、当業者には理解されるように、分散液が、Fourdrinier又はOliverの脱水用マット成形機の支持配線など、小孔を有する移動支持配線上に流れる。分散液は、まず重力排水によって脱水され、その後真空吸引によって脱水される。脱水されたがまた湿っている得られたマットは、対流式オーブン内で乾燥され、乾燥された材料を所望の寸法に切断し、複数のコーティングを塗布して完成したパネルを得る。
【0005】
特許文献1に記載されているような湿潤パルプ成形又は鋳造プロセスによって、吸音パネルを作製することもできる。このプロセスによれば、粒状のミネラルウール繊維、充填剤、着色剤、調理済みスターチなどの結合剤及び水を含む成形組成物を、パネルを成形又は鋳造するために調製する。この組成物を、紙又は裏紙を付けた金属箔で覆われている適切なトレイ上に設置し、次いで成形ボードにより所望の厚さまで組成物をスクリードする。不規則な細長い亀裂を有する表面などの装飾表面も、スクリード棒又はパターンを有するロールによって設けることができる。次いで、ミネラルウール組成物で満たされたトレイをオーブン内に設置して乾燥する。
【0006】
吸音パネルを調製するための水フェルト化技法もトレイ鋳造技法も、それらの複雑さ及び費用のために完全に満足できるものではない。原材料のコストに加えて、これらのプロセスは大量の水及びエネルギーを必要とする。さらには、これらの方法に従って調製したパネルは、特に高湿度の条件下でパネルを保存した場合、又は広い間隔の支持部材上にパネルを水平に設置した場合、たるんでしまうことがある。たるみの傾向は、再生紙繊維又はスターチなど吸湿性の結合剤の存在によって悪化する。加えて、使用する材料の吸収性により、最終的な吸音パネルにおいて適切な外観を実現するためには、通常いくつかの表面コーティングが必要とされる。さらには、パネルを穿孔する場合、最終的なコーティングで穿孔による孔が覆われる又は詰まることがないように注意しなければならない。たとえば、穿孔の後、穿孔による孔の詰まりを回避するために、より簡単でより安価なローラ塗布によるコーティングプロセスではなく吹き付け(spraying)によってコーティングを塗布しなければならない。
【0007】
その耐久性、耐火特性及び経済性により、建築用途では、紙カバーシート間に挟まれている固化石膏(硫酸カルシウム二水和物)を含む従来の石膏ウォールボードが一般に使用される。しかしながら、このような紙で覆われた石膏ウォールボードは、いくつもの理由から、これまで吸音天井パネルにおける使用には考慮されてこなかった。まず、このような石膏ウォールボードは、本質的に優れた吸音特性を有していない。従来のミネラルウールをベースとする吸音パネルと同様にして石膏ウォールボードに穴を開け又は石膏ウォールボードを穿孔したとしても、吸音作用の有意な改善はほとんど又は全く実現されない。さらには、従来の紙で覆われた石膏ウォールボードに穴を開けると、かなりの量の石膏粉塵がほぐれ、穿孔による穴から落下してしまう(従来の吸音パネルもいくらかの粉塵(粉末)損失を示すことがある)。また、従来の石膏ウォールボードは28317cm当たり18.14Kg(約40lbs/ft)(「pcf」)と重いことがあり、この重量により従来のウォールボードは大部分の吸音用途において不適切なものとなってしまう。本発明の発明者であるMirza A.Baigの特許文献2に記載されている、最近開発された軽量石膏ボードでさえ、通常約21pcf以上の密度を有し、この密度は、従来のミネラルウールをベースとする吸音パネルの典型的な密度約12〜20pcfを超えている。したがって、吸音作用の欠如、高密度及び石膏粉塵損失の問題により、従来の又は軽量のシートで覆われた石膏ボードの吸音タイル用途における使用が妨げられていた。
【0008】
トレイ鋳造による石膏をベースとする吸音パネルの1つのタイプが、Englertらの特許文献3に議論されている。この出願は主に、従来のウォールボードとは違い好ましくは上側表紙層を有していないパネルを対象としている。Englertらのあまり好ましくない実施形態では、上側表紙が使用されるが、乾燥後の穿孔は示唆されていないが、このことは驚くべきことではない。というのは、この乾燥したボードを穿孔すると、かなりの粉塵損失が引き起こされると予想されるからである。
【0009】
従来の石膏ウォールボードは平坦かつ滑らかで、実質的な視覚表面テクステクスチャは有さない。一方、公知の吸音パネルは通常、実質的な3次元のテクスチャを有する。実際にはテクスチャを加えることなく、またそれによりボードの表紙の外面に損傷を与えることなく、従来のミネラルウールをベースとする吸音パネルに見られるのと同じ視覚効果テクスチャ(及び吸音特性)を実現する吸音石膏ボードを生成する方法を見出すことができれば、これは当分野へのさらに別の有用な寄与となるはずである。
【0010】
【特許文献1】米国特許第1769519号明細書
【特許文献2】米国特許第5922447号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0231916号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、吸音用途において有用となるように十分に低い密度及び十分に優れた吸音特性を有する、従来から生産されている石膏ウォールボードタイプの製品を作成する方法を見出すことができれば有利である。石膏粉塵落下の問題にさらされず、公知のテクスチャのある吸音パネルと同じ視覚効果を実現し、また従来のミネラルウールをベースとする天井パネルと同等又はそれ以上のたるみに対する耐性も有する受け入れ可能な吸音特性を有する石膏ウォールボードタイプの製品を作成する方法を見出すことができれば特に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、比較的安価に作製され、また既存の石膏ボードラインで効率的に大量に生産することができる、上下のカバーシートを有する低密度吸音石膏ボードを含む。これらの低密度吸音石膏ボードは、たるみなどの永久歪みに耐えると共に、従来の吸音パネルに匹敵する吸音特性を有する。これらの低密度吸音石膏ボードを穿孔するが、石膏粉塵落下の問題にはさらされない。さらに、本発明は、特に距離を置いて見ると(すなわち、部屋の床に立っている人が天井を見上げると)表面にテクスチャが現れるように視覚パターンが適用された上面カバーシートを、場合により提供する。本発明のこれらの、また他の利点、ならびに本発明の追加の特徴は、本明細書中に記載されている本発明の説明から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態では、本発明の低密度吸音石膏ボードが、半水硫酸カルシウムを含むコア調合物を用いて作製した固化石膏コア構造(「スタッコ」)と、パーライトと、紙繊維と、スターチと、を含む。この低密度吸音石膏ボードの固化石膏コアは、実質的に平坦な平面である上下の表面を提供するために、紙カバーシートなど実質的に平行な上下2枚のカバーシート間に挟まれている。加えて、低密度吸音石膏ボードは、ボードの上(外側の)表面を貫通して形成された穿孔を備える。これらの穿孔はカバーシートを貫通し、固化石膏コアに及ぶ。好ましい一実施形態では、これらの穿孔は一般に形の良い小さい丸い孔であり、これらの孔は一般にボードの外側上面に垂直に延び、上面カバーシートを貫通し固化石膏コアに及ぶ。別の好ましい実施形態では、穿孔した上面カバーシートの露出表面にはパターンが印刷されている。これらの低密度吸音石膏ボードは一般に、従来のウォールボードと同様にして作製されるが、以下に論じるように変更される。
【0014】
好ましくは、本発明の低密度吸音石膏ボードは、ASTM C 423−02に従って少なくとも約0.5の騒音減少率(NRC)を示し、より好ましくは1.0又は1.0近くの騒音減少率を示す。一部の実施形態では、低密度吸音石膏ボードは、ASTM C 423−02に従って少なくとも約0.55の騒音減少率を、さらにより好ましくは少なくとも約0.7に及ぶNRCを示す。
【0015】
ここで図1を参照すると、本発明の一実施形態による低密度吸音石膏ボード10が提供されている。この吸音石膏ボード10は、上面14及び下面16を有する固化石膏コア12を含む。固化石膏コア12は、表カバーシート20と裏カバーシート30との間に形成され、これらのカバーシート(20、30)はコアに接着されている。多数の穿孔40が表カバーシート20及び上面14を貫通し、固化石膏コア12に及んでいる。
【0016】
図2は、表カバーシート20aの外面に適用された、本発明の一実施形態による例示的なパターン50を示す。この実施例では、このパターンにより、十分な距離を置いて又は斜めに見ると、たとえば、部屋の床に立っている人が天井を見上げると、人間の目に対してテクスチャの外観が作り出される。
【0017】
図3は、図2のパターンを有する表カバーシート20aによってその上面が覆われ、表カバーシート20a貫通し固化石膏コア12に及んで形成された多数の穿孔40を備える図1の低密度吸音石膏ボード10の平面図である。
【0018】
固化石膏コア12は、以下の表1に示す主要なコア成分の水性スラリーから作製される。分散剤、強度添加剤(たとえば、メタリン酸塩)、促進剤など、このスラリーに添加することができる他の従来の成分については、以下で一般的に説明する。
【0019】
【表1】

【0020】
本発明の吸音石膏ボードは、最高約20pcfのボード密度を有する。好ましい実施形態では、本発明の吸音石膏ボードは、約17〜約19pcfのボード密度を有し、最も好ましくは、本発明の吸音石膏ボードは最高約16pcfのボード密度を有する。
【0021】
コア調合物では(より低いボード密度を促進するために)パーライトを使用することが好ましいが、あまり好ましくない一実施形態では、コア調合物がパーライトを含まなくてもよい。しかしながら、コア調合物中にパーライトが存在することにより、最終的な吸音石膏ボードの騒音減少率(NRC)の推定値が減少する。一方、紙繊維をコア調合物で使用して、さらに小さいボード密度を実現すると同時にNRC値の増大させることもでき、パーライトによって生じる騒音減少率の不利な損失が相殺される。したがって、好ましい実施形態では、以下に論じるように、パーライトのレベルを上昇と、紙繊維のレベルの増大との均衡を保つ。
【0022】
好ましい実施形態では、コア調合物の少なくとも約5重量%の量でパーライトを使用する。加えて、この好ましい実施形態では、パーライトも紙繊維も共にコア調合物中に存在しなければならず、パーライトの紙繊維に対する重量比は、約1:1.1〜約1:2の範囲に及ぶ。さらにより好ましい一実施形態では、パーライトの紙繊維に対する重量比は、約1:1.4〜約1:1.6の範囲に及ぶ。
【0023】
たとえば、一実施形態では、コア調合物の総重量に基づき、コア調合物は、
85重量%スタッコと、
5重量%のパーライトと、
8重量%の紙繊維と、
2重量%のスターチと、を含む。
パーライトの紙繊維に対する重量比は1:1.6である。(固形分総重量%が100%のコア調合物自体に加えて)約10pcfのフォーム密度を有する石けんフォーム(以下で説明)を組み込むことによって、このコア調合物を使用して密度が約17.0pcfと低い吸音石膏ボードを作製することができる。(固形分総重量%が100%のコア調合物自体に加えて他の添加剤を含めることができる(たとえば、以下で説明するような促進剤、分散剤おおび強度添加剤)。
【0024】
石膏粉塵又は粉末が実質的にはない穿孔が多数形成されるように、本発明の低密度吸音石膏ボードを穿孔しなければならない。このようなきれいな穿孔を実現することができることは、従来の石膏ボードを同様にして穿孔するとかなりの量の石膏粉塵が放出されることを考えると、非常に予想外なことある。本発明のボードにおける穿孔は、たとえば、図1及び図3に示してある。これらの図面に示すように、表紙を貫通して吸音石膏ボードを穿孔して、固化石膏コア中に延びるが裏紙を貫通しない孔を形成する。図示されるこれらの孔の向きは、好ましくは第1のカバーシート、すなわち表紙の平面と全体的に垂直である。したがって、主要な態様では、石膏粉塵が実質的にはない穿孔と組み合わせると、低密度吸音石膏ボードにおいて固化石膏コア全体が吸音特性をもたらす。
【0025】
低密度吸音石膏ボードには、ピン直径1.58mm(0.0621インチ)で929cm(平方フィート)当たり約1800個の穿孔ピン数(鋭いピン100%)を用いて穴を開けることができる。当業者には認識されるように、他のピン数及びピン直径を使用することもできる。たとえば、929cm(1平方フィート)当たり約1850個、929cm(1平方フィート)当たり約1750個、又は929cm(1平方フィート)当たり約1566個のピン数を使用することもでき、また約1.27mm(0.050インチ)及び約1.14mm(0.045インチ)のピン直径を使用することもできる。また、鋭いピン、鈍いピン又はこれらの組み合わせを含め、任意のタイプのピンを使用することができる。所望の音響減少特性実現するために、ピン数を変更することができ、またピンのタイプ、型及び直径を変更することができ、又は様々な組み合わせで使用することができることが当業者には理解される。穿孔による孔の深さは、約1.64cm(1/4インチ)〜約1.27cm(1/2インチ)に及ぶことができる。
【0026】
これらのボードは、バッチプロセスに従って、又は連続プロセスで作製し、穴を開けることができる。標準的な市販のウォールボードの生産ラインの一環として穴開け、すなわち穿孔ステップを適用し、その後紙で覆われたボード製品を乾燥させることができる。
【0027】
カバーシート20及び30は、従来の石膏ウォールボードと同様に紙で作製することができるが、当分野で公知の他の有用なカバーシート材料を使用することもできる。紙カバーシートにより、吸音石膏ボードの強度特性がもたらされる。有用なカバーシート紙には、イリノイ州シカゴのUnited States Gypsum Corporationから入手可能なManila 7−ply及びNews−Line 7−ply、ならびにインディアナ州ニューポートのCaraustar から入手可能なGrey−Back 3−ply及びManila Ivory 3−plyが含まれる。これらの紙カバーシート紙は、上面カバーシート、すなわち表紙、及び下面カバーシート、すなわち裏紙を含む。好ましい裏カバーシート紙はNews−Lineである。好ましい表カバーシート紙は、Manila 7−plyである。
【0028】
石膏をベースとする製品は、高湿度の条件下でたわむ傾向がある。裏紙の適切な選択は、完成した吸音石膏ボードのたるみの低減に役立つ。本発明の低密度吸音石膏ボードにおけるこの目的のための好ましい裏紙は、News−Line 7−plyである。加えて、コア調合物にトリメタリン酸ナトリウムなどの強度添加剤を添加して、さらにたるみを低減することもできる。また、吸音石膏ボードの裏紙にホルムアルデヒドをベースとするコーティングを適用して、たるみをさらに低減することもできる。
【0029】
表紙は無地で使用することも、あるいは上述のように、また図2に示すようにパターンを適用して使用することもできる。パターン及びパターン色の多くのバリエーションを表紙上で使用することができる。必要に応じて色付きの紙を使用することもでき、またカラー印刷又はインクを使用してパターンを適用することもできる。図2に示すようなパターン、ならびに他のパターンは、所与のデザインの写真を撮り、表紙にこのデザインを印刷することによって作製することができる。また、表紙の印刷は、生産プロセス中にオンラインで、好ましくは表紙を乾燥させた後に行うことができる。加えて、パターンを印刷した後に、表紙の外表面に保護コーティングを適用して、磨耗及び環境条件から印刷パターンを保護することもできる。
【0030】
最終的なボードの密度を低減するためには、本発明の低密度吸音石膏ボードを作製する際に石けんフォームが必要となる。石けんフォームの密度は、約5.0pcf〜約12.0の範囲に及ぶことができ、最高約20pcfの最終的なボード密度を実現するための、好ましい石けんフォームの密度は約10pcfである。この石けんフォームは、固形分総重量%が100%のコア調合物自体に加える量で使用する。たとえば、石けんフォームを作製するために使用し、固形分総重量%が100%のコア調合物自体に加えて表1のようなコア調合物に添加する場合、全固形分約1000g当たり約2g〜約3g(又は全固形分に基づき約0.2重量%〜約0.3重量%)の量で石けんを使用することができる。石けんフォームを作製するための有用な石けんには、イリノイ州ノースフィールドのStepan Chemical Companyから入手可能なFA403−Agent X−2332が含まれる。
【0031】
固化石膏コアと紙カバーシートとの間の接着は、コア調合物中のフォームの存在の悪影響を受けることがある。体積で石膏ボードの約1/3は、フォームから構成されることができるため、フォームが固化石膏コアと紙カバーシートとの間の接着に干渉することがある。したがって、石膏ボードを形成する前に、表紙及び裏紙両方の固化石膏コアと接触している表面に、フォームのない接着層を設けることができる。この層の調合物は、フォームが省略されること以外は、一般にコア調合物と同じである。この層を形成するために、コア調合物からフォームを機械的に取り除くことができ、又は固化石膏/表紙界面にフォームのない異なる調合物を適用することができる。
【0032】
コア調合物の主成分は、スタッコとも称される半水硫酸カルシウム又は焼き石膏である。この焼き石膏は、α−半水硫酸カルシウム、β−半水硫酸カルシウム、水溶性硫酸カルシウム硬石膏、又はこれらの混合物の形でよい。好ましい実施形態では、この焼き石膏はβ−半水硫酸カルシウムの形である。有用な焼き石膏は、イリノイ州シカゴのUnited States Gypsum Corp.から入手可能なCKS乾燥スタッコである。この焼き石膏は、最終的な紙で覆われたボードにおける固化石膏のインターロックマトリックスの形成を可能にするのに十分な量で、コア調合物の水性スラリー中に存在する。固化石膏コアを作製するために使用するコア調合物中には、コア調合物の総(固形分)重量に基づき約75重量%〜約90重量%の範囲に及ぶ量でスタッコが存在し、好ましくは、コア調合物の総重量に基づき約80重量%〜約85重量%の範囲に及ぶ量でスタッコが存在する。
【0033】
先に述べたように、コア調合物にパーライトを使用することが好ましい。固化石膏コアを作製するために使用するコア調合物中には、コア調合物の総(固形分)重量に基づき最大約15重量%の量でパーライトが存在することができ、好ましくは、コア調合物の総重量に基づき約5重量%〜約8重量%の範囲に及ぶ量でパーライトが存在する。
【0034】
本発明の実施に際しては、パーライトの密度は約3〜約8.5pcfの範囲になければならない。このパーライトは、複数の商業的供給源から得ることができる。以下に説明する実施例では、イリノイ州ホジキンズにあるSilbricoから入手可能な銘柄Type 3−Sのパーライトを使用した。このパーライトは通常、約3〜約5.0pcfの密度を有する。
【0035】
パーライトは、黒曜石に似たガラス質岩石の形をしている。パーライトは通常、65〜75%のSiO、10〜20%のAl、2〜5%のHO、ならびにより少量のソーダ、カリ及び石灰を含有する。パーライトをその軟化点まで加熱すると、パーライトは膨張して軽石に似た軽くてふんわりとした材料を形成する。本発明で使用するためのパーライトを調製する際には、パーライトをまずマイナス200メッシュよりも細かい寸法まで粉砕する。次いで、粉砕したパーライトを、約1500〜1800°Fの温度、好ましくは約1750°Fまで加熱する。このプロセスは、まず空気を加熱し、次いで加熱した空気に細かく粉砕したパーライトを導入することによって、パーライトエキスパンダ内で行う。パーライトは空気で運ばれるため、加熱されポップコーンのようにポンとはじけて膨張したパーライトを形成する。膨張したパーライトは多くの細かい割れ目及び亀裂を含有し、水と接触されると、この水が割れ目及び亀裂に浸透し、パーライトの空気の詰まった空洞に入り、それにより粒子の重量が大きく増大する。
【0036】
本低密度吸音パネルの目的では、個々のパーライト粒子を防水性又は場合によっては耐水性にするやり方ではパーライトがコーティング又は処理されないことが重要である。そうした場合、耐水性のコーティング又は処理により、コア調合物の水性スラリー中でパーライトの分布が不均一になり、石膏の結晶がパーライト粒子に浸透しパーライト粒子とインターロックすることも、不可能ではないにしてもより困難になってしまう。
【0037】
このコア調合物では、紙繊維を使用しなければならない。紙繊維の有用な形は、ヒドロパルプ新聞印刷用紙又はヒドロパルプ化古紙である。単独で、又はヒドロパルプ化紙繊維を組み合わせて、木質繊維又は乾燥した繊維に分解された石膏ウォールボード紙やクラフト紙など他のセルロース系繊維材料を使用することもできる。固化石膏コアを作製するために使用するコア調合物中には、コア調合物の総(固形分)重量に基づき約2重量%〜約12重量%の範囲に及ぶ量で紙繊維が存在し、好ましくは、コア調合物の総重量に基づき約6重量%〜約10重量%の範囲に及ぶ量で紙繊維が存在する。
【0038】
このコア調合物ではスターチを使用しなければならない。たとえば、小麦スターチを使用することができる。別の実施形態では、コーン、ポテト及び/又は小麦ストックから作られるスターチの公知の組み合わせであるタピオカ(pearl)スターチを使用することができる。このスターチは、生の形で提供することも、あるいはコア調合物と混合する前に別個に部分的に又は完全に調理することもできる。本プロセスにおける部分的な調理は、スターチ及び水のスラリーの温度が150°Fに到達すると起こると考えられている。スターチスラリーが少なくとも185°Fの温度に到達すると、スターチは完全に調理されると考えられている。部分的な又は完全な調理により、タピオカスターチは実際に移動している状態から実際には移動しない状態へと変換される。移動していない場合には、スターチは固化する前にボードのコア部分に保持される。コア中にスターチが存在すると、コアへの表紙の結合にも役立つ。やはり企図されるスターチの代替供給源は、カナダのモントリオールにあるOgilive製のGypset及びカンザス州ドッジシティのArcher Daniels Midlandが供給する小麦粉から作られる一般的なスターチである、LC−211を含めた酸修飾したスターチである。後者の2つの場合、スターチは移動型である。別の有用なスターチは、ミズーリ州セントルイスのBungeからHI−BONDとして入手可能な酸修飾したコーンフラワーである。このスターチは、典型的には次のように、水分10.0%、油1.4%、可溶分17.0%、アルカリ流動性98.0%、粗填嵩密度28317cm当たり13.6Kg(30lb/ft)と分析され、20%のスラリーはpH4.3を示す。
【0039】
表1のようなコア調合物に従って調製されるスラリーでは、特にα−スターチを使用することができる。好ましいα−スターチは、α−コーンスターチ、たとえば、ミズーリ州セントルイスのBungeから入手可能なα−コーンフラワーであり、このα−スターチは、典型的には次のように、水分7.5%、タンパク質8.0%、油0.5%、粗繊維0.5%、灰分0.3%と分析され、生強度が0.48psi、粗填嵩密度が28317cm当たり15.9Kg(35.0lb/ft)である。固化石膏コアを作製するために使用するコア調合物中には、コア調合物の総(固形分)重量に基づき約0.5重量%〜約5重量%の範囲に及ぶ量でスターチが存在し、好ましくは、コア調合物の総重量に基づき約0.5重量%〜約2重量%の範囲に及ぶ量でスターチが存在する。
【0040】
本発明のコア調合物には、促進剤を、たとえば、参照により本明細書中に組み込まれるYuらの米国特許第6409825号に記載されているような湿潤石膏促進剤(WGA)を添加することができる。粉末石膏(硫酸カルシウム二水和物)の乾燥粉砕により、1つの望ましい耐熱性促進剤(HRA)を作製することができる。糖、デキストロース、ホウ酸、スターチなどの添加剤を少量(通常約5重量%)使用してこのHRAを作製することができる。糖又はデキストロースが現在は好ましい。別の有用な促進剤は、参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第3573947号に記載されているような「気候安定化促進剤」又は「気候安定促進剤」(CSA)である。たとえば、固形分総重量%が100%のコア調合物自体に加えて表1のようなコア調合物に添加する場合、約5g/全固形分約1000g(又は全固形分に基づき約0.5重量%)の量で促進剤(HRA又はCSA)を使用することができる。
【0041】
本発明のコア調合物には、分散剤を添加することができる。有用な分散剤には、ポリナフタレンスルホン酸塩、及びマサチューセッツ州リバーフォールズのBoremco Laboratoriesから入手可能なBOREMが含まれる。たとえば、固形分総重量%が100%のコア調合物自体に加えて表1のようなコア調合物に添加する場合、約0.9g/全固形分約1000g(又は全固形分に基づき約0.1重量%)の量で分散剤を使用することができる。
【0042】
本発明で使用することができるナフタレンスルホン酸塩分散剤には、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合生成物であるポリナフタレンスルホン酸ならびにその塩(ポリナフタレンスルホン酸塩)及び誘導体が含まれる。特に望ましいポリナフタレンスルホン酸塩には、ナフタレンスルホン酸ナトリウム及びナフタレンスルホン酸カルシウムが含まれる。これらのナフタレンスルホン酸塩の平均分子量は、約3,000〜20,000の範囲に及ぶことができるが、分子量は約8,000〜10,000であることが好ましい。より高分子量の分散剤は粘度がより高く、調合物中でより多くの水を必要とする。有用なナフタレンスルホン酸塩には、Henkel Corporationから入手可能なLOMAR D、オハイオ州クリーブランドのGEO Specialty Chemicalsから入手可能なDILOFLO、及び、マサチューセッツ州レキシントンのHampshire Chemical Corp.から入手可能なDAXADが含まれる。水溶液の形で、たとえば、約40〜45重量%の範囲の固形分含有量でナフタレンスルホン酸塩を使用することが好ましい。
有用なナフタレンスルホン酸塩は以下の一般構造(I)を有する。
【0043】
【化1】

【0044】
式中、nは>2であり、Mはナトリウム、カリウム、カルシウム等である。
たとえば、固形分総重量%が100%のコア調合物自体に加えて表1のようなコア調合物に添加する場合、約0.9g/全固形分約1000g(又は全固形分に基づき約0.1重量%)の量でポリナフタレンスルホン酸塩分散剤を使用することができる。
【0045】
本発明のコア調合物には、強度添加剤を、たとえば、トリメタリン酸ナトリウムなどのメタリン酸塩を添加することができる。任意の適切な水溶性メタリン酸塩又はポリリン酸塩を、本発明に従って使用することができる。複塩を含む、2つのカチオンを有するトリメタリン酸塩であるトリメタリン酸塩を使用することが好ましい。特に有用なトリメタリン酸塩には、トリメタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸カリウム、トリメタリン酸カルシウム、トリメタリン酸ナトリウムカルシウム、トリメタリン酸リチウム、トリメタリン酸アンモニウム等、あるいはこれらの組み合わせが含まれる。好ましいトリメタリン酸塩は、トリメタリン酸ナトリウムである。水溶液として、たとえば、約10〜15重量%の範囲の固形分含有量でこのトリメタリン酸塩を使用することが好ましい。参照により本明細書中に組み込まれるYuらの米国特許第6409825号に記載されているような他の環式又は非環式のポリリン酸塩を使用することもできる。たとえば、固形分総重量%が100%のコア調合物自体に加えて表1のようなコア調合物に添加する場合、約0.9g/全固形分約1000g(又は全固形分に基づき約0.1重量%)の量でトリメタリン酸ナトリウムを使用することができる。
【0046】
以下の実施例に示すように、表1のコア調合物を用いて低密度吸音石膏パネルを調製した。指示されている場合を除き、無地又はパターンが適用されたManila 7−ply紙を、上面カバーシート又は表紙として使用した。フォームのない接着層(上述のような)を、裏紙及び表紙両方の固化石膏コアと接触している表面に塗布した。これらのパネルの平均厚さは1.37cm(0.54インチ)であった。加えて、各吸音石膏ボードを穿孔して表紙を貫通させた。穿孔深さは1.27cm(1/2インチ)(指示されている場合を除く)、穿孔ピン数(鋭いピン100%)は929cm(1平方フィート)当たり1800個、ピン直径は1.57mm(0.062インチ)であった。
【0047】
以下の実施例では、固形分総重量%が100%のコア調合物自体に加えて表1のようなコア中にいくらかの添加剤を含ませた。以下の添加剤レベル、すなわち全固形分に基づく0.5重量%の促進剤(HRA又はCSA)、全固形分に基づく0.1重量%の分散剤、及び全固形分に基づく0.1重量%のトリメタリン酸ナトリウムを実施例のすべてにおいて含ませた。加えて、以下の各実施例では(指示されている場合を除く)、密度10pcfの石けんフォームをコア調合物に組み込んだ。
【実施例1】
【0048】
(A)
低密度吸音石膏ボードの調製
表1のコア調合物を、コア調合物のスラリーに組み込まれた高密度石けんフォーム(たとえば、10pcf)と共に用い、米国特許第5922447号号明細書による鋳造プロセスによって、低密度吸音石膏ボード試料を調製した。
【0049】
(B)
連続プロセスによる低密度吸音石膏ボードの調製
参照により本明細書中に組み込まれるYuらの米国特許第6342284号明細書及びYuらの米国特許第6632550号明細書による連続プロセスによって、低密度吸音石膏ボード試料を調製した。このプロセスには、これらの特許の実施例5に記載されているように、高密度石けんフォーム(たとえば、10pcf)の生成と、他の成分のスラリーへのこの石けんフォームの導入とが別々に含まれる。
【実施例2】
【0050】
低密度吸音石膏ボード−紙繊維及び高密度フォームの評価
ステップ1:表2に示すように、以下のコア調合物を水性スラリーとして調製した。
【0051】
【表2】

【0052】
上記全固形分に加えて、添加剤、すなわち全固形分に基づく0.5重量%の促進剤(HRA又はCSA)、全固形分に基づく0.1重量%の分散剤、及び全固形分に基づく0.1重量%のトリメタリン酸ナトリウムを含ませた。
【0053】
調合物試料ごとに石けんフォームを次のように調製した。イリノイ州ノースフィールドのStepan Chemical Companyによる製品FA403−Agent X−2332として入手可能な石けん(2.0g)を、高せん断Hamilton Beachブレンダ内で10秒間、水(148g)と混合した。得られたフォームの体積は900ml、フォーム密度は28317cm(1立方フィート)当たり4536g(10ポンド)であった。この石けんフォームを、表2のコア調合物に組み込んだ。
【0054】
ステップ2:表2のコア調合物を用いて実施例1Aと同様に鋳造によって試料ボードを調製し、上述のように穿孔した。穿孔深さは1.27cm(1/2インチ)、穿孔ピン数(鋭いピン100%)は929cm(1平方フィート)当たり1800個、ピン直径は1.57mm(0.062インチ)であった。
【0055】
【表3】

【0056】
「MSF」は、929030cm(1000平方フィート)の当分野における標準的な略称である。
表3に示すように、これらの試料ボードは20pcfよりも小さい密度及び受け入れ可能なNRC値を有する。また、ボード2〜4では、粉塵が大幅に低減された。
【実施例3】
【0057】
低密度吸音石膏ボード−紙カバーシート、紙繊維及び高密度フォームの評価
以下のコア調合物を使用して水性スラリーを作製した(重量%固形分)。
スタッコ 86.5%
パーライト 5.0%
紙繊維(ヒドロパルプ) 6.5%
α−コーンスターチ 2.0%
【0058】
実施例2と同様に、10pcfのフォーム密度を有する石けんフォームを使用した。上記全固形分に加えて、追加の添加剤、すなわち全固形分に基づく0.5重量%のCSA、全固形分に基づく0.1重量%のBorem、及び全固形分に基づく0.1重量%のトリメタリン酸ナトリウムを含ませた。これらの試料ボードを、実施例2のステップ2と同様に鋳造し穿孔した。穿孔深さは1.27cm(1/2インチ)、穿孔ピン数(鋭いピン100%)は929cm(1平方フィート)当たり1800個、ピン直径は約1.57mm(0.062インチ)であった。
【0059】
【表4】

【0060】
表4に示すように、これらの試料ボードは20pcfよりも小さい密度を有し、ボードの上面に7−ply又は3−plyシートを用いたNRC値に有意差は観測されなかった。しかしながら、紙繊維レベルを低減すると、NRC値が低減された。粉塵レベルは、上述のとおり、従来の吸音パネル(300g/MSF)と比較して受け入れ可能であった。
【実施例4】
【0061】
低密度吸音石膏ボード−印刷紙カバーシート及び高密度フォームの評価
ステップ1:表5に示すように、以下のコア調合物を水性スラリーとして調製した。
【0062】
【表5】

【0063】
上記全固形分に加えて、添加剤、すなわち全固形分に基づく0.5重量%の促進剤(HRA又はCSA)、全固形分に基づく0.1重量%の分散剤、及び全固形分に基づく0.1重量%のトリメタリン酸ナトリウムを含ませた。
【0064】
実施例2と同様に調製した石けんフォーム
ステップ2:表5のコア調合物を用いて実施例2のステップ2と同様に鋳造によって試料ボードを調製し、上述のように穿孔した。穿孔深さは1.27cm(1/2インチ)、穿孔ピン数(鋭いピン100%)は929cm(1平方フィート)当たり1800個、ピン直径は約1.57mm(0.062インチ)であった。
【0065】
【表6】

【0066】
表6に示すように、これらの試料ボードは20pcfよりも小さい密度及び受け入れ可能なNRC値を有する。無地表紙又は印刷表紙のいずれを用いてもNRC値への悪影響は観測されなかった。
【実施例5】
【0067】
低密度吸音石膏ボード−3−ply及び7−ply印刷紙カバーシート及び高密度フォームの評価
ステップ1:表7に示すように、以下のコア調合物を水性スラリーとして調製した。
【0068】
【表7】

【0069】
上記全固形分に加えて、添加剤、すなわち全固形分に基づく0.5重量%の促進剤(HRA又はCSA)、全固形分に基づく0.1重量%の分散剤、及び全固形分に基づく0.1重量%のトリメタリン酸ナトリウムを含ませた。
【0070】
実施例2と同様に調製した石けんフォーム
より多量の石けんフォーム−石けん3.0gと水222gとを用いて実施例2と同様に調製
ステップ2:表7のコア調合物を用いて実施例2のステップ2と同様に鋳造によって試料ボードを調製し、上述のように穿孔した。穿孔深さは1.27cm(1/2インチ)、穿孔ピン数(鋭いピン100%)は929cm(1平方フィート)当たり1800個、ピン直径は1.57mm(0.062インチ)であった。
【0071】
【表8】

【0072】
表8に示すように、これらの試料ボードは20pcfよりも小さい密度及び受け入れ可能なNRC値を有する。ボード13〜ボード16では、3−ply印刷紙又は7−ply印刷コーティング紙のいずれを用いてもNRC値への悪影響は観測されなかった。ボード17では、高密度石けんフォーム量の増大によりボード密度がより小さくなり、NRC値が増大した。
【実施例6】
【0073】
低密度吸音石膏ボード−印刷紙カバーシート、紙繊維、パーライト及び高密度フォームの評価
ステップ1:表9に示すように、以下のコア調合物を水性スラリーとして調製した。
【0074】
【表9】

【0075】
上記全固形分に加えて、添加剤、すなわち全固形分に基づく0.5重量%の促進剤(HRA又はCSA)、全固形分に基づく0.1重量%の分散剤、及び全固形分に基づく0.1重量%のトリメタリン酸ナトリウムを含ませた。
実施例2と同様に調製した石けんフォーム
【0076】
ステップ2:表9のコア調合物を用いて実施例2のステップ2と同様に鋳造によって試料ボードを調製し、上述のように穿孔した。穿孔深さは1.27cm(1/2インチ)、穿孔ピン数(鋭いピン100%)は929cm(1平方フィート)当たり1800個、ピン直径は1.57mm(0.062インチ)であった。
【0077】
【表10】

表10に示すように、これらの試料ボードは20pcfよりも小さい密度及び受け入れ可能なNRC値を有する。
【実施例7】
【0078】
低密度吸音石膏ボード−固化石膏コアと接触している表面に塗布したフォームのない接着層を備える紙カバーシートの評価
スラリーを作製するために以下のコア調合物を用いて3枚のボード2組を各々調製した(重量%固形分)。
スタッコ 84.5%
パーライト 5.0%
紙繊維(ヒドロパルプ) 7.5%
α−コーンスターチ 3.0%
【0079】
5.0pcfのフォーム密度を有する石けんフォームを使用した。上記全固形分に加えて、追加の添加剤、すなわち全固形分に基づく0.5重量%のCSA、全固形分に基づく0.1重量%のBorem、及び全固形分に基づく0.1重量%のトリメタリン酸ナトリウムを含ませた。水/固形分比は2.4:1であった。第1の組(A組)の試料ボードを、実施例2のステップ2と同様に鋳造し(深さが0.95cm(0.375インチ)であること以外は)同様に穿孔した。第2の組(B組)試料ボードでは、鋳造前に、フォームのない接着層(フォームなしの同じコア調合物から調製する)を、幅10.16cm(4.0インチ)のブラシを用いて裏紙及び表紙両方の固化石膏コアと接触している表面に手動で塗布し、次いで第2の組(B組)の試料ボードを実施例2のステップ2と同様に鋳造し(深さが0.95cm(0.375インチ)であること以外は)同様に穿孔した。設定時間は、すべてのボードの鋳造について約11.0分であった。以下の表11では、結果を平均値で示す。
【0080】
【表11】

【0081】
B組のボードでは、ボードを乾燥させた後、紙カバーシートと、また固化石膏コアとの接着性が優れていた。表11に示すように、固化石膏コアと紙カバーシートとの間の接着性が、表紙の穿孔後に推定NRCに悪影響を与えることなく大幅に改善された。フォームのない接着層の存在により、上面カバーシート(表紙)の穿孔後に推定NRC値に悪影響を与えることなく、本発明の低密度吸音石膏ボードにおける紙カバーシートと固化石膏コアとの間により良い接着性がもたらされる。両組(A組及びB組)のボードにおけるより低い推定NRCは、穿孔深さがより浅いためである。
【実施例8】
【0082】
永久歪みに対する耐性−低密度吸音石膏ボードのたるみ耐性の評価
実施例3〜6に従って作製した低密度吸音石膏ボードは、たるみなどの永久歪みに対する耐性を示した。61×122cm(2×4フィート)のボード試料におけるたるみを次のように試験した。幅7.62cm(3インチ)×長さ61cm(24インチ)のストリップのボードを、上記試料から切り取り、104°F/相対湿度(R.H.)95%の条件下で試験した。これらのボードストリップを、支持フレームに取り付けられ、その長さがボードの全幅7.62cm(3インチ)に及び、1つがそれぞれボードの各端にある幅0.64cm(1/4インチ)の2つの支持体上に水平位置に置いた。支持フレームと接触している幅7.62cm(3インチ)の端部を、支持体に対して重みをかけ、又は支持体に押し付けた。これらのボードストリップは、104°F及び相対湿度95%の連続的な周囲条件下で、特定の期間(本実施例では3日)この位置にとどまっていた。次いで、ボードのたるみの程度(たわみ)を、ボードの両端部の上縁部間に広がる仮想水平面、すなわち、試験条件にさらす前のボードの表面に対応する平面からのボードの上面の中心の距離をインチで測定することによって決定した。3日間の試験期間後、これらの試験ストリップについてたわみを測定したところ、3.1〜5.5mm(0.122〜0.218インチ)の範囲内であった。これは、同じ試験条件下でたわみが通常7.6mm〜1.27cm(0.3〜0.5インチ)である公知の従来の天井パネルよりもかなり優れている。
【0083】
実施例3〜6に従って作製した低密度吸音石膏ボードは、指標となる火炎伝搬試験に合格し、A級の格付けに対応していた。
実施例3〜6に従って作製した低密度吸音石膏ボードを、MOR強度(psi)について試験した。実現した平均MOR強度は、約200psi以上であった。
【0084】
実施例3〜6に従って作製した低密度吸音石膏ボードは、従来の吸音パネルほどもろくはなかった。これらの低密度吸音石膏ボードの、エッジディテール(edge detail)を含む切断性(cutability)は、機械的切断のこぎりを用いると良好であった。エッジディテール、すなわち、リップを、粉砕によって導入した。
【0085】
公報、特許出願及び特許を含む、本明細書中で引用したすべての参考文献が、各参考文献が参照により組み込まれるよう個別にかつ具体的に示され、またその全体が本明細書中に記載されているかのような程度まで、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0086】
本発明を説明する文脈中での(特に添付の特許請求の範囲の中での)用語「1つの」(「a」及び「an」及び「the」)ならびに同様の指示語の使用は、本明細書中に他に指示がない限り、又は文脈と明らかに相反することがない限り、単数も複数も包含するものと解釈すべきである。本明細書中における値の範囲の言及は、本明細書中に他に指示がない限り、単にその範囲内にある別個の各値を個々に言及する略記方法としての役割を果たすためのものであり、別個の各値は、あたかも本明細書中に個々に言及されているかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載されている方法はすべて、本明細書中に他に指示がない限り、又は文脈と明らかに相反することがない限り、任意の適切な順序で実施することができる。任意及び全ての例、すなわち本明細書中に提供されている例示的な言語(たとえば、「たとえば」(such as))の使用は、単に本発明をより良く説明するためのものであり、特許請求の範囲に記載されていない限り、本発明の範囲に限定を課すわけではない。本明細書中の言語は、特許請求の範囲に記載されていない本発明の実施に不可欠な要素を示すものと解釈すべきではない。
【0087】
本発明者が知る本発明を実施するための最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されている。説明したこれらの実施形態は例示的なものにすぎず、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】上下のカバーシートと、固化石膏コアと、上面カバーシートにわたって延び固化石膏コアに及ぶ穿孔を含む、本発明による低密度吸音石膏ボードの切断端面図の略図である。
【図2】本発明の一実施形態で使用する、表紙カバーシート上に印刷されるようなパターンを有する上面カバーシート(表紙)の平面図である。
【図3】図2の印刷パターンを示し、表紙を貫通し固化石膏コアに及ぶ丸い穿刺孔を備える図1の低密度吸音石膏ボードの上面カバーシートの平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に平行な2枚のカバーシート間に配置された固化石膏コアを有する石膏をベースとする吸音ボードであって、
コア調合物の総重量に基づき約75重量%〜約90重量%のスタッコを有する前記コア調合物から作製される固化石膏コアと、
前記コア調合物の総重量に基づき約0〜約15重量%のパーライトと、前記コア調合物の総重量に基づき約2重量%〜約12重量%の紙繊維と、
前記コア調合物の総重量に基づき約0.5重量%〜約5重量%のスターチと、
カバーシートを貫通し前記固化石膏コアに及ぶ多数の吸音穿孔と、を含む吸音ボード。
【請求項2】
前記コア調合物が、
前記コア調合物の重量に基づき約80重量%〜約85重量%の量のスタッコと、前記コア調合物の重量に基づき約5重量%〜約8重量%の量のパーライトと、
前記コア調合物の重量に基づき約6重量%〜約10重量%の量の紙繊維と、
前記コア調合物の重量に基づき約0.5重量%〜約2重量%の量のスターチと、を含む請求項1に記載の吸音ボード。
【請求項3】
前記パーライトが、約3.0pcf〜約5.0pcfの密度を有する、請求項1に記載の吸音ボード。
【請求項4】
前記紙繊維がヒドロパルプである、請求項1に記載の吸音ボード。
【請求項5】
前記スターチがα−コーンスターチである、請求項1に記載の吸音ボード。
【請求項6】
表紙及び裏紙を備えるカバーシートを含み、前記穿孔が前記表紙を貫通し前記固化石膏コアに及ぶが前記固化石膏コアを貫通しない、請求項1に記載の吸音ボード。
【請求項7】
前記表紙が、距離を置いて見るとテクスチャの外観を作り出すパターンを有する、請求項6に記載の吸音ボード。
【請求項8】
前記穿孔が約1.57mmの直径を有し、929cm当たり約1800個存在する、請求項1に記載の吸音ボード。
【請求項9】
前記ボードは厚さ約1.37cmであり、前記穿孔は深さ約0.64cm〜約1.27cmである、請求項1に記載の吸音ボード。
【請求項10】
前記ボードの密度が約16pcf〜約20pcfである、請求項1に記載の吸音ボード。
【請求項11】
前記ボードの密度が約16pcf〜約17pcfである、請求項1に記載の吸音ボード。
【請求項12】
約0.50〜約0.65のNRC値を有する、請求項1に記載の吸音ボード。
【請求項13】
前記コア調合物中の前記パーライトが、約1:1.1〜約1:2のパーライト対紙繊維の重量比で存在する、請求項1に記載の吸音ボード。
【請求項14】
前記コア調合物中の前記パーライトが、約1:1.4〜約1:1.6のパーライト対紙繊の維重量比で存在する、請求項1に記載の吸音ボード。
【請求項15】
表紙と裏紙との間に配置された固化石膏コアを有する石膏をベースとする吸音ボードであって、
コア調合物の総重量に基づき約75重量%〜約90重量%のスタッコを有する前記コア調合物から作製される固化石膏コアと、
前記コア調合物の総重量に基づき約0〜約15重量%のパーライトと、
前記コア調合物の総重量に基づき約2重量%〜約12重量%の紙繊維と、
前記コア調合物の総重量に基づき約0.5重量%〜約5重量%のスターチと、
前記表紙を貫通し前記固化石膏コアに及ぶが前記固化石膏コアを貫通しない多数の吸音穿孔と、を含む吸音ボード。
【請求項16】
石膏をベースとする吸音ボードを作製する方法であって、
(a)水と、総固形分重量に基づく約75重量%〜約90重量%の量のスタッコと、総固形分重量に基づく最大約15重量%の量のパーライトと、総固形分重量に基づく約2重量%〜約12重量%の量の紙繊維と、総固形分重量に基づく約0.5重量%〜約5重量%の量のスターチとのスラリーを混合するステップと、
(b)約10pcfの密度を有する石けんフォームを前記スラリーに添加するステップと、
(c)第1のカバーシート上に前記スラリーを堆積させるステップと、
(d)前記スタッコが固化石膏コアを形成するのに十分な条件下で前記スラリーを維持するステップと、
(e)前記固化石膏コアの上に第2のカバーシートを設置して吸音ボードを形成するステップと、
(f)前記形成したボードを乾燥させるステップと、
(g)前記乾燥させたボードを切断するステップと、
(h)穿孔が前記固化石膏コアに及ぶが貫通しないように、前記乾燥させたボードの前記カバーシートの一方を穿孔するステップと、を含む方法。
【請求項17】
ステップ(g)の前に前記第2のカバーシート上にパターンを適用することをさらに含む、請求項16の方法。
【請求項18】
石膏をベースとする吸音ボードを作製する方法であって、
(a)水と、総固形分重量に基づく約75重量%〜約90重量%の量のスタッコと、総固形分重量に基づく最大約15重量%の量のパーライトと、総固形分重量に基づく約2重量%〜約12重量%の量の紙繊維と、総固形分重量に基づく約0.5重量%〜約5重量%の量のスターチと、を含むスラリーを混合するステップと、
(b)約10pcfの密度を有する石けんフォームを前記スラリーに添加するステップと、
(c)第1のカバーシート上に前記スラリーを堆積させるステップと、
(d)前記スタッコが固化石膏コアを形成するのに十分な条件下で前記スラリーを維持するステップと、
(e)前記固化石膏コアの上に第2のカバーシートを設置して吸音ボードを形成するステップと、
(f)前記形成したボードを一定重量まで乾燥させて、最高約20pcfの密度を有する乾燥させたボードを生成するステップと、
(g)前記乾燥させたボードを切断するステップと、
(h)穿孔が前記固化石膏コアに及ぶが貫通しないように、ピン数が929cm当たり約1800個でかつピン直径が約1.57mmであるピンを用いて、前記乾燥させたボードの前記カバーシートの一方を穿孔するステップと、を含む方法。
【請求項19】
ステップ(g)の前に前記第2のカバーシート上にパターンを適用することをさらに含む、請求項18の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−516094(P2009−516094A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538889(P2008−538889)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/038653
【国際公開番号】WO2007/055835
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(508062096)ユーエスジー インテリアズ インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】