説明

太陽電池モジュールの盗難監視装置及びこれを用いた盗難監視システム

【課題】複数の太陽電池モジュールが盗難された場合であっても、当該盗難された複数の太陽電池モジュールを特定可能な太陽電池モジュールの盗難監視装置を提供する。
【解決手段】盗難監視装置本体3と、一端が盗難監視装置本体3に接続され、他端が分岐して監視対象となる複数の太陽電池モジュールMのそれぞれに接続される信号線4と、信号線4と各太陽電池モジュールMの接続部5に設けられ、それぞれ異なるアドレスが設定されると共に、自身のアドレスを含む監視信号を受信したときに応答信号を返送するように構成された応答素子5cと、を備え、盗難監視装置本体3は、信号線4の一端から、それぞれの応答素子5cのアドレスを含む監視信号を順次送信すると共に、各応答素子5cから返送されてくる応答信号を順次受信して、当該応答信号が返送されてこない応答素子5cに対応する太陽電池モジュールMが盗難されたと判定する盗難判定部10を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの盗難監視装置及びこれを用いた盗難監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、太陽電池モジュールの盗難監視装置に関する開発が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
最近では、メガソーラ発電所等の大規模太陽電池発電所の普及に伴い、太陽電池モジュールの盗難を検知するのみではなく、太陽電池モジュールを盗難された位置も検知したいという要求が出てきている。
【0004】
この要求に対し、特許文献2に記載の太陽電池アレイ故障診断方法を盗難検知に応用することが考えられる。特許文献2に記載の太陽電池アレイ故障診断方法は、太陽電池ストリングの端子または太陽電池アレイの端子とアース間に、測定信号波形を印加し、その応答信号波形を測定信号波形と比較することによって、太陽電池アレイ中の故障(盗難)位置を特定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−367046号公報
【特許文献2】特開2009−21341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の太陽電池アレイ故障診断方法を盗難検知に応用した太陽電池モジュールの盗難監視装置では、複数の太陽電池モジュールが盗難された場合に、当該盗難された複数の太陽電池モジュールのそれぞれを特定することができないという問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み為されたものであり、複数の太陽電池モジュールが盗難された場合であっても、当該盗難された複数の太陽電池モジュールを特定することが可能な太陽電池モジュールの盗難監視装置及びこれを用いた盗難監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、盗難監視装置本体と、一端が前記盗難監視装置本体に接続され、他端が分岐して監視対象となる複数の太陽電池モジュールのそれぞれに接続される信号線と、前記信号線と前記各太陽電池モジュールの接続部にそれぞれ設けられ、前記信号線を介して信号を送受信可能な応答素子と、を備え、前記応答素子は、それぞれ異なるアドレスが設定されると共に、前記信号線を介して自身のアドレスを含む監視信号を受信したときに、前記信号線に応答信号を返送するように構成され、前記盗難監視装置本体は、前記信号線の一端から、それぞれの前記応答素子のアドレスを含む前記監視信号を順次送信すると共に、前記各応答素子から返送されてくる応答信号を順次受信して、当該応答信号が返送されてこない応答素子に対応する前記太陽電池モジュールが盗難されたと判定する盗難判定部を備えた太陽電池モジュールの盗難監視装置である。
【0009】
前記接続部は、前記信号線の端部に設けられた信号線側コネクタと、前記太陽電池モジュールに設けられると共に、前記応答素子が搭載され、前記信号線側コネクタを嵌合させたときに、前記信号線と前記応答素子とが電気的に接続されるよう構成されたモジュール側コネクタと、からなり、前記太陽電池モジュールの盗難時に、前記信号線側コネクタと前記モジュール側コネクタとの嵌合が解除され、前記信号線と前記応答素子とが電気的に遮断されるように構成されていてもよい。
【0010】
前記応答素子は、前記信号線を介して自身のアドレスを含む監視信号を受信したとき、当該監視信号を受信してから所定時間経過した後に、前記信号線に応答信号を返送するように構成されてもよい。
【0011】
また、本発明は、前記太陽電池モジュールの盗難監視装置と、該太陽電池モジュールの盗難監視装置が前記太陽電池モジュールが盗難されたと判定したときに、警報を発する警報手段と、を備えた太陽電池モジュールの盗難監視システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の太陽電池モジュールが盗難された場合であっても、当該盗難された複数の太陽電池モジュールを特定することが可能な太陽電池モジュールの盗難監視装置及びこれを用いた盗難監視システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る太陽電池モジュールの盗難監視装置を用いた太陽電池モジュールの盗難監視システムを示す図であり、(a)は概略構成図、(b)はその要部拡大図である。
【図2】図1の太陽電池モジュールの盗難監視装置に用いる応答素子の一例を示す概略構成図である。
【図3】図1の太陽電池モジュールの盗難監視装置における各信号の流れを示すタイムチャートである。
【図4】図1の太陽電池モジュールの盗難監視装置において、盗難判定処理の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【図5】図1の太陽電池モジュールの盗難監視装置において、盗難判定処理の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る太陽電池モジュールの盗難監視装置を用いた太陽電池モジュールの盗難監視システムを示す図であり、(a)は概略構成図、(b)はその要部拡大図である。
【0016】
図1(a),(b)に示すように、太陽電池モジュールの盗難監視システム100は、本発明の太陽電池モジュールの盗難監視装置1と、太陽電池モジュールの盗難監視装置1が太陽電池モジュールMが盗難されたと判定したときに、警報を発する警報手段30と、を備えている。
【0017】
本実施の形態に係る太陽電池モジュールの盗難監視装置1は、盗難監視装置本体3と、一端が盗難監視装置本体3に接続され、他端が分岐して監視対象となる複数の太陽電池モジュールMのそれぞれに接続される信号線4と、信号線4と各太陽電池モジュールMの接続部5にそれぞれ設けられ、信号線4を介して信号を送受信可能な応答素子5cと、を備えている。
【0018】
ここでは、監視対象となる太陽電池モジュールMがn台である場合を説明する。この場合、信号線4は、n台の太陽電池モジュールMに対応してn本に分岐するようにされ、分岐された信号線4の端部を各太陽電池モジュールMに接続するように構成される。以下、説明の簡略化のため、盗難監視装置本体3から図示横方向に遠い位置にある順に、すなわち図1(a)の左側から右側にかけて、太陽電池モジュールMのモジュール番号が1,2,3,4,5,・・・,nであるとする。
【0019】
本実施の形態では、接続部5は、信号線4の端部に設けられた信号線側コネクタ5aと、太陽電池モジュールMに設けられると共に、応答素子5cが搭載され、信号線側コネクタ5aを嵌合させたときに、信号線4と応答素子5cとが電気的に接続されるよう構成されたモジュール側コネクタ5bと、からなる。接続部5は、太陽電池モジュールMの盗難時に、信号線側コネクタ5aとモジュール側コネクタ5bとの嵌合が解除され、信号線4と応答素子5cとが電気的に遮断されるように構成されている。モジュール側コネクタ5bは、盗難時に太陽電池モジュールMから取り外すことができないように、太陽電池モジュールMと一体に形成されるか、あるいは太陽電池モジュールMに対して強固に固定される。
【0020】
接続部5を構成する信号線側コネクタ5a及びモジュール側コネクタ5bは、太陽電池モジュールMから電力を取り出すために用いられているコネクタと一体に構成してもよいし、別体としてもよい。
【0021】
なお、接続部5は、太陽電池モジュールMの盗難時に信号線4と応答素子5cとが電気的に遮断される構成であればどのような構成でもよく、図1(b)のようなコネクタ型でなくとも、単純に応答素子5cを太陽電池モジュールMに対して強固に固定して、信号線4を切断しなければ太陽電池モジュールMを盗難できないように構成してもよい。
【0022】
本実施の形態では、応答素子5cは、それぞれ異なるアドレスが設定されると共に、信号線4を介して自身のアドレスを含む監視信号を受信したときに、信号線4に応答信号(パルス信号)を返送するように構成されている。
【0023】
監視信号としては、例えばPWM(Pulse Width Modulation)などのパルス変調方式や、FSK(Frequency Shift Keying)などのデジタル変調方式により変調した信号を用いるとよい。本実施の形態では、一例としてPWMを用いる場合を説明する。監視信号はアドレスを含む信号であればよいが、本実施の形態では、2値化したアドレスそのものを監視信号として用いる場合を説明する。
【0024】
応答素子5cは、信号線4を介して自身のアドレスを含む監視信号を受信したとき、当該監視信号を受信してから所定時間経過した後に、信号線4に応答信号を返送するように構成される。これは、監視信号を受信した直後に応答信号を返送すると、その応答信号が他の太陽電池モジュールMで反射した監視信号と干渉して、正確な判断ができなくなる可能性があるためである。
【0025】
また、本実施の形態では、応答素子5cは、信号線4を介して受信した電力により起動して動作を行うように構成されている。応答素子5cの一例を図2に示す。
【0026】
図2に示すように、応答素子5cは、信号線4が電気的に接続される内部配線20に、信号線4側から、変流器(CT)21、リレー回路22、コンデンサ23を順次設け、内部配線20の信号線4と反対側の端部を接地して構成されており、変流器21には電源処理部(PW)24を介してCPU25が接続されている。
【0027】
この応答素子5cでは、信号線4を介して電源信号(交流電流)が入力されると、その電流が変流器21を介して電源処理部24に入力され、電源処理部24が内部のコンデンサに電力を蓄積し、その蓄積した電力でCPU25を駆動(起動)するように構成されている。
【0028】
なお、リレー回路22としては、ノーマリークローズド(NC)のものを用い、CPU25は、起動と同時にリレー回路22を開放するよう構成されることが望ましい。これにより、電源信号が入力される際にはリレー回路24を閉じて交流電流を流し、その後監視信号が入力される際にはリレー回路24を開放して監視信号の減衰を抑制することが可能となる。なお、監視信号はPWMによる電圧信号であるから、リレー回路24を開放した状態でもCPU25にて受信可能である。
【0029】
リレー回路24を開放した後、信号線4を介して監視信号が入力される。CPU25は、受信した監視信号が自身のアドレスであれば、信号線4に応答信号を返送する。なお、電源処理部24に蓄積された電力がなくなると、CPU25の駆動が停止され、それに伴いリレー回路24が閉じた状態となる。CPU25を駆動する時間は、全ての太陽電池モジュールMの盗難判定を行う際にかかる時間よりも長ければよく、太陽電池モジュールMの数と信号線4の長さにもよるが、数秒程度で十分である。
【0030】
盗難監視装置本体3は、信号線4の一端からそれぞれの応答素子5cのアドレスを含む監視信号を順次送信し、各応答素子5cから返送されてくる応答信号を順次受信して、応答信号が返送されてこない応答素子5cを検出し、当該応答信号が返送されてこない応答素子5cに対応する太陽電池モジュールMが盗難されたと判定する盗難判定処理を行う盗難判定部10を備えている。盗難判定部10は、所定の時間間隔ごとに盗難判定処理を実行するように構成される。盗難判定部10は、盗難監視装置本体3の制御基板3a内の基本回路3bに実装され、メモリ(RAM、ROM)やCPU、I/Oインターフェイス、ソフトウェア等を適宜組み合わせて実現される。
【0031】
盗難判定部10は、盗難判定処理を行う際に、まず各応答素子5cに電源を供給するための電源信号(交流電流)を送信し、その後、監視信号を送信するように構成される。
【0032】
ここで、太陽電池モジュールの盗難監視装置1における各信号の流れについて図3を用いて説明しておく。なお、図3におけるM1は、モジュール番号1の太陽電池モジュールMに対応する応答素子5cで受信する信号を示しており、M2,M3,・・・,Mnについても同様である。
【0033】
図3に示すように、盗難判定処理を行う際には、まず、盗難監視装置本体3の盗難判定部10(制御基板3a)が電源信号(POWER)を送信する。電源信号は、信号線4を介して各太陽電池モジュールMの接続部5に入力され、各応答素子5c(応答素子5cのCPU25)を駆動する。電源信号は、各応答素子5cに電力を供給するためのものであるから、その長さT0は、要求される電力(つまり各応答素子5cでの消費電力と、監視対象の太陽電池モジュールMの数)に応じて適宜決定するとよい。
【0034】
盗難判定部10は、電源信号を送信終了してからTwait待った後、モジュール番号1の太陽電池モジュールMに対応する応答素子5cのアドレス(ADRS1)を監視信号として送信する。Twaitは、盗難監視装置本体3から信号を送信してから、その信号が全ての太陽電池モジュールMに届くまでの時間であり、事前に測定して設定しておくとよい。
【0035】
監視信号(ADRS1)は、信号線4を介して各応答素子5cに受信される。自身のアドレスを受信したモジュール番号1の太陽電池モジュールMに対応する応答素子5cは、監視信号を受信してから所定時間待った後、応答信号(ACK1)を送信する。監視信号を受信してから応答信号を返送するまでの待ち時間は、他の太陽電池モジュールMの接続部5での反射の影響を抑制するため、Twait(盗難監視装置本体3から信号を送信してから、その信号が全ての太陽電池モジュールMに届くまでの時間)に設定される。
【0036】
応答信号(ACK1)は、信号線4を介して盗難監視装置本体3に受信される。盗難判定部10は、応答信号(ACK1)を受信すると、モジュール番号1の太陽電池モジュールMが盗難されていない、と判定する。盗難判定部10は、他の太陽電池モジュールMの接続部5での反射の影響を抑制するため、応答信号(ACK1)を受信してから所定時間(Twait)待った後、モジュール番号2の太陽電池モジュールMに対応する応答素子5cのアドレス(ADRS2)を監視信号として送信する。
【0037】
監視信号(ADRS1)を送信してから次の監視信号(ADRS2)を送信するまでの時間T1は、監視信号(ADRS1)の長さ、応答信号(ACK1)の長さ、Twait等に応じて設定される。盗難判定部10は、監視信号(ADRS1)を送信してからT1内に応答信号(ACK1)を受信しない場合、モジュール番号1の太陽電池モジュールMが盗難されたと判定することになる。モジュール番号2〜nの太陽電池モジュールMについても、同様の処理を行う。
【0038】
なお、図3では図示していないが、太陽電池モジュールMが盗難されたとき、その接続部5にて信号線4と応答素子5cとが電気的に遮断されるので、その電気的に遮断された箇所で反射した反射信号も、盗難監視装置本体3にて受信されることになる。このため、盗難判定部10は、盗難時の反射信号と応答信号を区別し、応答信号のみを検出するように構成されている。本実施の形態では、盗難時の反射信号の信号強度が小さくなるように特性インピーダンス等の調整を行い、盗難判定部10にて、受信した信号の信号強度が予め設定した所定の閾値より大きいときのみ、応答信号を受信したと判断するようにした。
【0039】
また、盗難判定部10は、特定した盗難された太陽電池モジュールMのモジュール番号を、盗難位置信号として警報手段30に出力するようにされる。なお、本実施の形態では、盗難位置信号が盗難検知の役割を兼ねているが、盗難位置信号とは別に、盗難を検知した段階で盗難検知信号を警報手段30に出力するように構成してもよい。
【0040】
警報手段30は、太陽電池モジュールの盗難監視装置1の盗難判定部10から盗難位置信号を受信すると、警告灯31を点灯して太陽電池モジュールMの盗難があったことを管理者に知らせると共に、モニタ32に盗難位置を表示し、これと同時に、警報メール送信手段33により、管理者の携帯電話等に警報メールを送信して、太陽電池モジュールMの盗難があったこと及びその盗難位置を通知する。
【0041】
なお、警報手段30は上述のものに限定されず、例えば、各太陽電池モジュールMの近傍に音や光を発する威嚇手段を設け、警報手段30により、盗難位置に対応する威嚇手段を作動させて盗難を未然に防ぐようにしてもよい。
【0042】
次に、太陽電池モジュールの盗難監視装置1における盗難判定処理の制御フローを図4を用いて具体的に説明する。
【0043】
図4に示すように、盗難判定処理では、まず、ステップS1にて、盗難判定部10が、信号線4の一端に接続された入出力部6から電源信号を送信し、その後、ステップS2にて変数iに初期値1を代入し、ステップS3にてTwait待った後、ステップS4にてタイマTをリセット・スタートする。
【0044】
ステップS5では、盗難判定部10が、ADRSi(現在はi=1なのでADRS1)を監視信号として送信する。ステップS6では、盗難判定部10が、応答信号ACKi(現在はi=1なのでACK1)を受信したかを判断する。ステップS6でNOと判断された場合、ステップS7にて、タイマTがTi(現在はi=1なのでT1)以下であるか判断し、YESと判断されればステップS6に戻る。つまり、i=1の場合、T≦T1の条件が成立する間、応答信号ACK1を受信するまでステップS6とS7を繰返す。
【0045】
ステップS7でNOと判断された場合、すなわち、T≦T1の時間内に応答信号ACK1を受信しなかった場合、ステップS8にて、盗難判定部10が、モジュール番号1の太陽電池モジュールMが盗難されていると判定し、ステップS9にて、盗難された太陽電池モジュールMのモジュール番号を、盗難位置信号として警報手段30に出力し、ステップS12に進む。
【0046】
他方、ステップS6でYESと判断された場合、すなわち、T≦T1の時間内に応答信号ACK1を受信した場合、ステップS10にて、時間Ti(現在はi=1なのでT1)が経過するまで待ち、ステップS11に進む。ステップS11では、盗難判定部10が、モジュール番号1の太陽電池モジュールMが盗難されていないと判定し、ステップS12に進む。
【0047】
ステップS12では、変数iをインクリメントし、ステップS13に進む。ステップS13では、変数iが太陽電池モジュールMの台数であるnより大きいかを判断し、NOと判断された場合、ステップS3に戻る。つまり、ステップS3〜S12の流れをn回繰返す。
【0048】
ステップS13にてYESと判断された場合、すなわち、n個の応答信号について検出の有無をそれぞれ判定し終えた後、リターンする(ステップS1に戻る)。
【0049】
図4の制御フローでは、応答信号が返送されてこない応答素子5cを検出し、盗難された太陽電池モジュールMのモジュール番号を特定する度に盗難位置情報を送信するようにしたが、図5に示す制御フローのように、特定した盗難された太陽電池モジュールのモジュール番号を記憶しておき、一括して盗難位置情報を送信するように構成してもよい。図5の制御フローは、図4の制御フローにおいて、ステップS8にて盗難位置信号を送信せずに、モジュール番号を記憶するようにし、ステップS13の後にステップS14を挿入し、ステップS14にて、一括して盗難位置信号を送信するようにしたものである。
【0050】
さらに、一括して盗難位置信号を送信する場合には、応答信号が返送されてきた応答素子5cに対応する太陽電池モジュールMのモジュール番号を記憶しておき、全ての応答信号を受信した後、1〜nのうち記憶されていないモジュール番号を抽出して、盗難された太陽電池モジュールMのモジュール番号を特定するよう構成することも可能である。
【0051】
本実施の形態の作用を説明する。
【0052】
本実施の形態に係る太陽電池モジュールの盗難監視装置1では、信号線4の一端を盗難監視装置本体3に接続すると共に、他端を分岐して複数の太陽電池モジュールMのそれぞれに接続し、信号線4と各太陽電池モジュールMの接続部5にそれぞれ設けられる応答素子5cを、それぞれ異なるアドレスに設定すると共に、信号線4を介して自身のアドレスを含む監視信号を受信したときに、信号線4に応答信号を返送するように構成し、盗難監視装置本体3の盗難判定部10を、信号線4の一端から、それぞれの応答素子5cのアドレスを含む監視信号を順次送信すると共に、各応答素子5cから返送されてくる応答信号を順次受信して、当該応答信号が返送されてこない応答素子5cに対応する太陽電池モジュールMが盗難されたと判定するように構成している。
【0053】
これにより、複数の太陽電池モジュールMが盗難された場合であっても、当該盗難された複数の太陽電池モジュールMを個々に特定することが可能となる。
【0054】
なお、盗難監視装置本体3と各太陽電池モジュールMにネットワーク機器を搭載し、これらのネットワーク機器でネットワークを構成することも考えられるが、この場合、必須となるネットワーク機器やスイッチングハブなどの中継機器が高価であり、信号線4にも通信用のLANケーブル等を用いる必要が生じ、コストが非常に高くなってしまう。本発明では、このような高価な機器を用いる必要がなく、また信号線4にも通信用でない通常の制御線を用いることができるので、ネットワークを構成する場合と比較して、非常に低コストである。
【0055】
また、太陽電池モジュールの盗難監視装置1は、特許文献1のようにループ回路2に常時電流を流す構成ではなく、所定の時間間隔ごとに監視信号を送信する構成であるため、消費電力を低く抑えることができる。
【0056】
さらに、太陽電池モジュールの盗難監視装置1では、応答素子5cを、信号線4を介して自身のアドレスを含む監視信号を受信したとき、当該監視信号を受信してから所定時間経過した後に、信号線4に応答信号を返送するように構成しているため、応答信号が他の太陽電池モジュールMで反射した監視信号と干渉して、正確な判断ができなくなることを防止できる。
【0057】
さらにまた、太陽電池モジュールの盗難監視装置1では、盗難判定処理を行うときにのみ、応答素子5cを駆動(起動)させるように構成しているため、応答素子5cでの消費電力を大幅に抑制することができる。
【0058】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0059】
例えば、監視対象となる太陽電池モジュールMの数が多数ある場合には、分岐が多くなって監視信号が減衰してしまうので、このような場合は、監視対象となる太陽電池モジュールMを複数のグループに分けて、各グループ毎に盗難監視を行うようにしてもよい。この場合、各グループに対してそれぞれ監視信号を出力することになるので、1つの監視信号に対する監視対象となる太陽電池モジュールMの数を減らし、監視信号の減衰を抑制することが可能になる。
【0060】
また、上記実施の形態では、太陽電池モジュールMの盗難を検知する場合を説明したが、本発明によれば、例えば、太陽電池モジュールMを構成する太陽電池パネルのそれぞれに接続部5を設けて、太陽電池パネルの盗難を検知することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 太陽電池モジュールの盗難監視装置
3 盗難監視装置本体
4 信号線
5 接続部
5a 信号線側コネクタ
5b モジュール側コネクタ
5c 応答素子
10 盗難判定部
M 太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
盗難監視装置本体と、
一端が前記盗難監視装置本体に接続され、他端が分岐して監視対象となる複数の太陽電池モジュールのそれぞれに接続される信号線と、
前記信号線と前記各太陽電池モジュールの接続部にそれぞれ設けられ、前記信号線を介して信号を送受信可能な応答素子と、を備え、
前記応答素子は、それぞれ異なるアドレスが設定されると共に、前記信号線を介して自身のアドレスを含む監視信号を受信したときに、前記信号線に応答信号を返送するように構成され、
前記盗難監視装置本体は、前記信号線の一端から、それぞれの前記応答素子のアドレスを含む前記監視信号を順次送信すると共に、前記各応答素子から返送されてくる応答信号を順次受信して、当該応答信号が返送されてこない応答素子に対応する前記太陽電池モジュールが盗難されたと判定する盗難判定部を備えた
ことを特徴とする太陽電池モジュールの盗難監視装置。
【請求項2】
前記接続部は、
前記信号線の端部に設けられた信号線側コネクタと、前記太陽電池モジュールに設けられると共に、前記応答素子が搭載され、前記信号線側コネクタを嵌合させたときに、前記信号線と前記応答素子とが電気的に接続されるよう構成されたモジュール側コネクタと、からなり、
前記太陽電池モジュールの盗難時に、前記信号線側コネクタと前記モジュール側コネクタとの嵌合が解除され、前記信号線と前記応答素子とが電気的に遮断されるように構成されている
請求項1記載の太陽電池モジュールの盗難監視装置。
【請求項3】
前記応答素子は、前記信号線を介して自身のアドレスを含む監視信号を受信したとき、当該監視信号を受信してから所定時間経過した後に、前記信号線に応答信号を返送するように構成される
請求項1または2記載の太陽電池モジュールの盗難監視装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の太陽電池モジュールの盗難監視装置と、
該太陽電池モジュールの盗難監視装置が前記太陽電池モジュールが盗難されたと判定したときに、警報を発する警報手段と、
を備えたことを特徴とする太陽電池モジュールの盗難監視システム。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−256184(P2012−256184A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128577(P2011−128577)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】