説明

安全弁

【課題】省スペースであると共に簡易な構造で安価な安全弁を提供する。
【解決手段】気体流路となる箱部24の内外の相対圧が正圧および負圧の両方で作動する安全弁2であって、箱部24の一部を構成すると共に通気用の主通気孔14の形成された平板部11と、平板部11の主通気孔14を覆う大きさで形成されると共に、主通気孔14に重なる範囲よりも内側に通気用の副通気孔15の形成された主弁板12と、主弁板12の副通気孔15を覆う副弁板13と、主弁板12の周辺部および平板部11を等間隔で挿通する複数の主ガイド軸19と、各々の主ガイド軸19に挿通されて主弁板12を平板部11に密着状態で付勢する複数の主スプリング20と、主弁板12の中心部および副弁板13の中心部を挿通する副ガイド軸16と、副ガイド軸16に挿通されて副弁板13を主弁板12に密着状態で付勢する副スプリング17とによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体流路の内外の相対圧が正圧および負圧の両方で作動する安全弁に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や電子機器を溶剤で洗浄する洗浄装置には、洗浄・乾燥工程のような1サイクルの工程の一部で溶剤を用いて、1サイクル中の特定のタイミングで排ガスを排出する装置がある。このような装置は、1サイクルの工程を繰り返すことで、排ガスを間欠的に排出する。排出時には、大量の排ガスが短期間に排出される。
【0003】
この洗浄装置には、排ガス処理装置が配管接続されている。排ガス処理装置は、吸引ポンプ等で排ガスを吸引して取り込んで、排ガス中の溶剤を除去する。
【0004】
例えば、規定量以上の排ガスが洗浄装置から排出されたり、排ガス処理装置の排ガスの吸引が間に合わなかったりするような異常状態時には、装置間を接続する配管の内部圧力が外部圧力に対して過度に高圧(正圧)になって、配管が破裂破損する恐れがある。
【0005】
また、排ガス処理装置の吸引で配管の内部圧力が過度に低圧(負圧)になった場合にも、配管が潰れ破損する恐れがある。
【0006】
このため、安全弁を付して配管の内部圧力が過度に高圧や低圧になることを防止する必要がある。
【0007】
例えば、特許文献1には、内部流体を外部に放出する大気放出弁が示されている。この大気放出弁は、容器の蓋になる弁本体部がガイド部の溝に沿って動くことで内部流体を外部に放出する。
【0008】
また、特許文献2には、正圧および負圧の両方で作動する安全弁が示されている。この安全弁では、端部に浮動板の結合された筒状弁体がその周囲を取り巻く大径コイルばねによって圧力容器よりも外側に突出するように付勢されている。また、この安全弁では、筒状弁体の内側に配されているコマ状弁体が小径コイルばねによって圧力容器の内部側に付勢されている。小径コイルばねは、ガイド棒の周囲を取り巻いていて、ガイド棒は、浮動板の中央部に開けられた貫通孔でガイドされている。
【0009】
この安全弁では、小径コイルばねの弾性力よりも圧力容器内部が高圧になった際に、コマ状弁体が圧力容器外側に動くように作動して高圧流体が外部に排出される。また、圧力容器内部が大型コイルばねの弾性力よりも低圧になった際には、筒状弁体が圧力容器内側に動くように作動して圧力容器内に外部の気体が流入する。
【0010】
【特許文献1】特開昭58−50373号公報
【特許文献2】特開2004−132528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の特許文献1に示された大気放出弁を気体流路となる配管に配した場合、配管の内部圧力が高圧(正圧)になった場合にしか作動しない。このため、配管の内部圧力が低圧(負圧)になった場合に作動するための安全弁をもう1つ別に装着する必要がある。例えば、特許文献1の安全弁を配管内部側に配することが考えられる。しかしながら、安全弁を2つ用いることは、配置するためのスペースが2倍必要になってしまうという問題がある。
【0012】
また、特許文献2に示された安全弁は、筒状弁体やコマ状弁体などの形状が複雑であるため高価なものになるという問題がある。
【0013】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、省スペースであると共に簡易な構造で安価な安全弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された安全弁は、気体流路の内外の相対圧が正圧および負圧の両方で作動する安全弁であって、前記気体流路の壁面の一部を構成すると共に通気用の主通気孔の形成された平板部と、該平板部の前記主通気孔を覆う大きさで形成されると共に、前記主通気孔に重なる範囲よりも内側に通気用の副通気孔の形成された主弁板と、該主弁板の前記副通気孔を覆い前記主通気孔よりも小さく形成された副弁板と、前記主通気孔を覆う前記主弁板の周辺部および前記平板部を、等間隔で挿通する複数の主ガイド軸と、各々の該主ガイド軸に挿通されて前記主弁板を前記平板部に密着状態で付勢する複数の主スプリングと、前記主弁板の中心部および前記副弁板の中心部を挿通する副ガイド軸と、該副ガイド軸に挿通されて前記副弁板を前記主弁板に密着状態で付勢する副スプリングとによって構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載された安全弁は、請求項1に記載されたもので、前記主弁板に当接する前記主通気孔の外周部、および/または前記平板部に当接する前記主弁板の内周部に環状の主シール部材を付すると共に、前記副弁板に当接する前記副通気孔の外周部、および/または前記主弁板に当接する前記副弁板の内周部に環状の副シール部材を付することを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載された安全弁は、請求項1に記載されたもので、前記平板部は、前記気体流路に着脱可能に配されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載された排ガス処理装置は、請求項1から3のいずれかに記載の安全弁を、吸引ポンプで吸引して排ガスを導入する導入配管に配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の安全弁によれば、平板部に形成された主通気孔を主弁板が覆い、主弁板に形成された通気用の副通気孔を副弁板が覆い、主ガイド軸および主スプリングによって主弁板が平板部に付勢され、副ガイド軸および副スプリングによって副弁板が主弁板に付勢されて構成されている。このため、2つの弁が1つの弁のスペースに配されている。したがって、正圧および負圧で作動する安全弁を省スペースなものにすることができる。
【0019】
また、平板部、主弁板、副弁板はいずれも板状のものであり、立体的な形状の弁と比較して、簡易な形状である。また、主ガイド軸、副ガイド軸、主スプリング、副スプリングも簡易な形状である。このため、製造コストを安価にできるため、安価な安全弁にすることができる。
【0020】
請求項2記載の安全弁によれば、主弁板に当接する主通気孔の外周部、および/または平板部に当接する主弁板の内周部に、環状のシール部材を付すると共に、副弁板に当接する副通気孔の外周部、および/または主弁板に当接する副弁板の内周部に、環状のシール部材を付することにより、平板部と主弁板とを、主弁板と副弁板とをそれぞれ確実にシールすることができる。
【0021】
請求項3記載の安全弁によれば、平板部が気体流路の壁面に着脱可能に配されていることにより、平板部を取り外すことで安全弁を取り外すことができる。このため、弾性力の異なった正スプリングや副スプリングに容易に交換することができる。したがって、主弁板や副弁板が作動を開始する圧力を容易に調整することができる。
【0022】
請求項4記載の排ガス処理装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の安全弁を、吸引ポンプで吸引して排ガスを導入する導入配管に配設しことにより、排ガスが過剰に排出されたり、吸引ポンプで過剰に吸引したりしたときにも、導入配管の破壊を確実に防止することができる。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
図1は本発明を適用する安全弁の一実施例を示す構成図である。
【0025】
図1に示される安全弁ユニット1は、気体流路となる配管の途中に安全弁2を配するためのユニットであり、箱部24の上面の開口部に安全弁2が配されることで全体として空洞の箱体状に形成されている。箱部24の両側面には、配管を接続するための円筒状の接続部25が形成されている。この接続部25,25に配管が接続されることで箱部24の内部空洞は気体流路の一部になる。安全弁2は、気体流路の内外の相対圧が過度に正圧になった際、および過度に負圧になった際の両方で作動して、配管の破裂破損や配管の潰れ破壊を防止する。
【0026】
図2に示されるように、安全弁2は、平板部11、主弁板12、副弁板13、3本(図では1本のみ図示)の主ガイド軸19、3個(図では1個のみ図示)の主スプリング20、3個(図では1個のみ図示)の主ナット21、副ガイド軸16、副スプリング17、および副ナット18で構成されている。
【0027】
平板部11は、気体流路の壁面の一部を構成する。平板部11は、金属製の平板で四角形状に形成されている。この平板部11には、その中央部に通気用の円形の主通気孔14が形成されている。平板部11には、主通気孔14の周辺部に等間隔で3所に主弁板12と連通し、後述する主ガイド軸19の支柱部72が挿通可能な連通孔75が形成されている。また、平板部11の4隅には、箱部24にネジ止め固定するための取付穴が形成されている。
【0028】
この平板部11には、主弁板12に当接する主通気孔14の縁の外周部で、3箇所の連通孔75よりも内側に、環状の主シール部材50が接着されて固着されている。一例として、主シール材50は、ゴムリップを環状にして加硫接着または接着剤で平板部11に固着されている。
【0029】
主弁板12は、金属製の平板で円形状に形成されている。主弁板12は、主通気孔14を覆う大きさで形成されている。この主弁板12の中心部には、副弁板12の中心部と連通し、後述する副ガイド軸16の支柱部62が挿通可能な中心孔77が形成されている。また、主弁板12には、主通気孔14に重なる範囲よりも内側で、中心部を除いた部分に、通気用の3つの孔で構成される副通気孔15が形成されている。主弁板12には、その周辺部に等間隔で3ヶ所に、主通気孔14を覆った際に平板部11の連通孔75に連通し、主ガイド軸19のネジ部73を挿通可能な連通孔76が形成されている。
【0030】
副弁板13は、金属製の平板で円形状に形成されている。この副弁板13の中心部には、主弁板11の中心部の中心孔77に連通し、副ガイド軸16のネジ部63を挿通可能な中心孔78が形成されている。副弁板13は、主弁板12に形成された副通気孔15を覆い、かつ主通気孔14よりも小さい大きさで形成されている。
【0031】
この副弁板13には、主弁板12に当接する縁の内周部に、環状の副シール部材51が接着されて固着されている。一例として、副シール材51は、ゴムリップを環状にして加硫接着または接着剤で副弁板13に固着されている。
【0032】
副ガイド軸16は、一例として、段付きの6角ボルトであって、6角頭部分にはフランジ61が付されると共に、円柱状の支柱部62には、その先端部にそれよりも小径のネジ部63が付されて形成されている。副スプリング17は、スプリングばねであって弾性力を有し、副ガイド軸16の支柱部62で挿通可能で、副ガイド軸16のフランジ61で係止可能な径で形成されている。副ナット18は、副ガイド軸16に螺合して、副スプリング17を係止可能な径で形成されている。
【0033】
主ガイド軸19は、一例として、段付きの6角ボルトであって、6角頭部分にはフランジ71が付されると共に、円柱状の支柱部72には、その先端部にそれよりも小径のネジ部73が付されて形成されている。主スプリング20は、スプリングばねであって弾性力を有し、主ガイド軸19の支柱部72で挿通可能で、主ガイド軸19のフランジ71で係止可能な径で形成されている。主ナット21は、主ガイド軸19に螺合して、主スプリング20を係止可能な径で形成されている。
【0034】
図2に示されるように、副スプリング17を挿通した副ガイド軸16が、主弁板12側からその中心孔77および副弁板13の中心孔78に挿通されて、副ナット18で副弁板13側から締め付けられる。この際に、副スプリング17は押し縮められる。この場合、主弁板12の中心孔77には、副ガイド軸16の支柱部62が貫通している。支柱部62とネジ部63との境の段が副弁板13に当接し、ネジ部63に副弁板13を介して副ナット18がネジ締められることで、副ガイド軸16が副弁板13に固定されている。
【0035】
また、主スプリング20を挿通した主ガイド軸19が、平板部11側から連通孔75および主弁板12の連通孔76に挿通されて、主ナット21で主弁板12側から締め付けられる。この際に、主スプリング20は押し縮められる。この場合、平板部11の連通孔75には、主ガイド軸19の支柱部72が貫通している。支柱部72とネジ部73との境の段が主弁板12に当接し、ネジ部73に主弁板12を介して主ナット21でネジ締められることで、主ガイド軸19が主弁板12に固定されている。なお、図2では、1本の主ガイド軸19の組み付け状態についてしか図示されていないが、残りの2ヶ所についても同様に主ガイド軸19、主スプリング20、主ナット21を取り付ける。
【0036】
このように組み合わされた安全弁2が、図1に示されるように、平板部11の4隅でネジ22によって固定されて、箱部24の上面を構成する。このように、平板部11は、ネジ22によって箱部24に着脱可能に固定されている。
【0037】
図1に示された上面図のA−A断面図が、図3に示されている。
【0038】
図3に示されるように、副スプリング17の弾性力で付勢されて、主弁板12と副弁板13とが密着状態になって当接している。また、3ヶ所の主スプリング20の弾性力で付勢されて、平板部11と主弁板12とが密着状態で当接している。これにより、主通気孔14および副通気孔15が塞がれる。この場合、平板部11に主シール部材50が付され、副弁板13に副シール部材51が付されているため、平板部11と主弁板12、主弁板12と副弁板13がそれぞれ確実にシールされる。
【0039】
このため、箱部24の内部の気体が安全弁2から外部に漏れず、かつ、外部の気体が安全弁2を通して箱部24の内部に入らない状態に保たれる。また、箱部24内部には主ガイド軸19が3ヶ所にしか突出していない。これらは、細い棒状のものであって、箱部24内部を気体が高速に流れてもほとんど気体抵抗とならない。
【0040】
次に、安全弁2の動作について説明する。
【0041】
安全弁ユニット1は、例えば、図6に示されるように、排ガスを導入する排ガス処理装置4の導入配管3の途中に配設されている。この場合、導入配管3が本発明における気体流路になる。
【0042】
排ガス発生装置40は、電子機器等を溶剤で洗浄・乾燥して、間欠的に排ガス(気体の一例)を大量に排出する。この排ガス発生装置40は、洗浄乾燥チャンバー41と、この洗浄乾燥チャンバー41から排出される排ガスをバブリングして溶剤の一部を回収する曝気槽42とによって構成されている。
【0043】
排ガス処理装置4は、導入配管3と、導入手段5と、貯留タンク6と、真空ポンプ7と、凝縮器8とが排ガス発生装置40側からこの順に配されて構成されている。この排ガス処理装置4では、吸引ポンプである真空ポンプ7の吸引により、排ガスの排出されていない期間に貯留タンク6を減圧状態とし、排ガスが排出されたときに一気に貯留タンク6内に排ガスを導入する。このように作動させるために貯留タンク6の上流に導入手段5が配されている。
【0044】
導入配管3は、排ガスを発生する排ガス発生装置40に接続されている。この導入配管3には、安全弁ユニット1が途中に付されると共に、差圧センサ38が付されている。
【0045】
導入手段5は、導入配管3から貯留タンク6までを装置内部で接続する配管35に手動弁31および電磁弁32が付され、さらに、この手動弁31および電磁弁32をバイパスするバイパス配管37に手動弁33が付されて構成されている。手動弁33は、バイパス配管37を流れるガス流量を、配管35を流れるガス流量よりも少量に制限する。
【0046】
制御部10は、差圧センサ38から出力される導入配管3内の圧力と外気圧との差圧に基づいて、排ガスの排出を検出する。制御部10は、差圧の減少により排ガスの排出を検出したときに、電磁弁32を直ちに開制御する。また、制御部10は、差圧の増加により排出の終了を検出したときに電磁弁32を閉制御する。このため、排ガスが排出されていない期間には、バイパス配管37を介して少量しかガスが吸引されず、貯留タンク6内は減圧状態になる。排ガスが排出されたときには、制御部10が電磁弁32を直ちに開制御するため、排ガスは配管35(電磁弁32)を通って減圧状態の貯留タンク6に一気に導入される。
【0047】
凝縮器8は、真空ポンプ7から送られる排ガスを冷却して、排ガス中の溶剤を凝縮させ、排ガスを清浄化する。凝縮した溶剤は排出弁39から排出されて回収される。
【0048】
上記のように配置された安全弁ユニット1で、先ず、導入配管3の内部圧力が外部圧力よりも過度に高圧(正圧)になった場合の動作について説明する。
【0049】
例えば、排ガス処理装置4の制御部10による排ガスの排出検出が遅れた場合には、電磁弁32の開制御が遅れて、導入配管3の圧力が過度に上昇する。したがって、安全弁ユニット1(箱部24)内の圧力が外部の圧力に対して過度に高圧になる。
【0050】
この場合、図4に示されるように、安全弁2の主弁板12が、圧力差で主ガイド軸19にガイドされて平板部11から遠ざかる方向に移動する。このため、平板部11と主弁板12との間に隙間が出来て、図中に太線の矢印で示したように主通気孔14から排ガスが外部に放出される。したがって、箱部24(導入配管3)内の圧力が低下して、導入配管3の内外の圧力差が小さくなり、導入配管3の破裂破損を防止することができる。
【0051】
箱部24内の圧力が低下したときには、主スプリング20の弾性力で、主弁板12が平板部11に密着状態になって、排ガスの放出が停止される。
【0052】
主弁板12が作動して排ガスの放出を開始する圧力(相対圧)は、3つの主スプリング20の弾性力によって決定される。そのため、主スプリング20の弾性力を変更することで、任意の圧力で排ガスが放出を開始するように調整することができる。
【0053】
次に、導入配管3の内部圧力が外部圧力よりも過度に低圧(負圧)になった場合の動作について説明する。
【0054】
例えば、排ガス発生装置40が、排ガスを長期間排出しなかった場合や、排ガス処理装置4の真空ポンプ7が過剰作動した場合には、導入配管3内の圧力が過度に低下する。したがって、安全弁ユニット1(箱部24)内の圧力が外部の圧力に対して過度に低圧になる。
【0055】
この場合、図5に示されるように、安全弁2の副弁板13が圧力差で副ガイド軸16にガイドされて主弁板12から遠ざかる方向に移動する。このため、主弁板12と副弁板13との間に隙間が出来て、図中に太線の矢印で示したように主弁板12の副通気孔15および平板部11の主通気孔14を通って外気が箱部24内に導入される。したがって、箱部24(導入配管3)内の圧力が上昇して、導入配管3の内外の圧力差が小さくなり、導入配管3の潰れ破損を防止することができる。
【0056】
箱部24内外の圧力差が小さくなったときには、副スプリング17の弾性力で、副弁板13が主弁板12に密着状態になって、外気の導入が停止される。
【0057】
副弁板13が作動して外気の導入を開始する圧力(相対圧)は、副スプリング17の弾性力によって決定される。そのため、副スプリング17の弾性力を変更することで、任意の圧力で外気の導入を開始するように調整することができる。副弁板13が作動を開始する圧力は、主弁板12が作動を開始する圧力とは独立して調整できる。
【0058】
このように、この安全弁2によれば、平板部11に形成された主通気孔14を主弁板12が覆い、主弁板12に形成された通気用の副通気孔15を副弁板13が覆い、3ヶ所の主ガイド軸19および主スプリング20によって主弁板12が平板部11に付勢され、副ガイド軸16および副スプリング17によって副弁板13が主弁板12に付勢されていることで、2つの弁が1つの弁のスペースで構成されている。したがって、正圧および負圧で作動する安全弁を別々に配置する必要が無く、一ヶ所の配置ですむため、省スペースにすることができる。
【0059】
また、平板部11、主弁板12、副弁板13はいずれも板状のものであり、立体的な形状の弁と比較して、簡易な形状である。主ガイド軸19、副ガイド軸16、主スプリング20、副スプリング17も簡易な形状である。このため、製造コストを安価にできるため、安価な安全弁2にすることができる。また、平板部11、主弁板12、副弁板13はいずれも板状のものであって薄いため、省スペースに構成することができる。
【0060】
さらに、この安全弁2によれば、平板部11が気体流路となる箱部24に着脱可能に配されていることにより、平板部11を取り外すことで安全弁2を容易に取り外すことができる。このため、弾性力の異なった正スプリング20や副スプリング17に容易に交換することができる。したがって、主弁板12や副弁板13が作動を開始する圧力を容易に調整することができる。
【0061】
なお、図6に破線で示されるように、安全弁ユニット1の周囲に捕集箱55を配して、安全弁ユニット1が作動して外部に排出される排ガスを捕集して、洗浄乾燥チャンバー41に戻してもよい。
【0062】
次に、本発明を適用する安全弁の別の実施形態について図7を参照しつつ説明する。なお、すでに説明した構成と同様の構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0063】
図7に断面図で示される安全弁ユニット1aには、安全弁2aが取り付けられている。この安全弁2aでは、副スプリング17を挿通した副ガイド軸16が、副弁板13側からその中心孔78および主弁板12の中心孔77に挿通されて、副ナット18で主弁板12側から締め付けられている。つまり、副スプリング17が箱部24の内部側に配置されている。なお、この場合には、中心孔78は、支柱部62を挿通する孔径で形成され、中心孔77はネジ部63を挿通する孔径で形成される。その他の構成については、図3の安全弁2と同様に構成されている。
【0064】
この安全弁2aでも、箱部24内部の圧力が外部の圧力に対して過度に低圧になった場合、副弁板13が圧力差で副ガイド軸16にガイドされて主弁板12から遠ざかる方向に移動する。このため、主弁板12と副弁板13との間に隙間が出来て、主弁板12の副通気孔15および平板部11の主通気孔14を通って外気が箱部24内に導入されて、内外の圧力差が小さくなる。したがって、導入配管3の潰れ破損を防止することができる。
【0065】
箱部24内部の圧力が、外部の圧力よりも高圧に対して過度に高圧になった場合には、安全弁2と同様に作動する。
【0066】
この安全弁2aでは、副ガイド軸16および副スプリング17が箱部24の外部に突出しないため、一層省スペースにすることができる。箱部24内部には3ヶ所に主ガイド軸19および副ガイド軸16しか突出していない。これらは、細い棒状のものであって、箱部24内部を気体が高速に流れても、ほとんど抵抗とならない。
【0067】
本発明を適用する安全弁は、図3に示される向きだけでなく、図8に示される向きで、つまり逆の向きで配することもできる。
【0068】
図8に断面図で示される安全弁ユニット1bには、箱部24の開口部に、その内側から安全弁2が配されている。すでに説明した安全弁ユニット1では、図3に示されるように、箱部24の開口部の外側(図の上側)から副ガイド軸16を外側に突出させる向きで安全弁2を固定していたが、安全弁ユニット1bでは、図8に示されるように、箱部24の開口部の内側から主ガイド軸19を外側に突出させる向きで安全弁2をネジ22で固定している。箱部24は、安全弁24を内側から固定できるように分割可能に構成される。
【0069】
この安全弁ユニット1bでは、箱部24内部の圧力が外部の圧力に対して過度に高圧になった場合には、安全弁2の副弁板13が圧力差で副ガイド軸16にガイドされて主弁板12から遠ざかる方向に移動する。これにより、箱部24の内部から外部に排ガス等の気体が放出されて圧力差が解消される。
【0070】
箱部24内部の圧力が外部の圧力に対して過度に低圧になった場合には、安全弁2の主弁板12が圧力差で主ガイド軸19にガイドされて平板部11から遠ざかる方向に移動する。これにより、箱部24の外部から内部に外気が導入されて圧力差が解消される。
【0071】
この安全弁ユニット1bでは、箱部24の内側から安全弁2を固定したが、安全弁2をその向きで箱部24の外側から固定しても良い。また、図7で説明した安全弁2aも向きを逆にして箱部24に固定した形態とすることもできる。
【0072】
なお、上記した安全弁2(2a)の説明では、平板部11を四角形状に形成した例について説明したが、円形状や多角形状に形成してもよい。また、主弁板12や副弁板13を円形状でなく、四角形状や多角形状に形成することもできる。
【0073】
また、主弁板12の副通気孔15を3つの孔で形成した例について説明したが、孔の形状や数は適宜変更することができる。例えば、細いスリットを多数形成して副通気孔15を形成することもできる。
【0074】
さらに、主ガイド軸19を3ヶ所に配した例について説明したが、この数は4ヶ所や5ヶ所のように、適宜変更することもできる。また、主ガイド軸19、副ガイド軸16をフランジ付きの段付き6角ボルトで構成した例について説明したが、棒状の形状で両端付近にスプリングや板を係止するためのフランジや突起があるものであれば用いることができる。
【0075】
また、平板部11に主シール部材50を付した例について説明したが、この主シール部材50に当接する位置の主弁板12にも同様のシール部材を付することもできるし、主弁板12側にだけ同様のシール部材を付してもよい。また、副弁板13に副シール部材51を付したが、この副シール部材51に当接する位置の主弁板12にも同様のシール部材を付することもできるし、主弁板12側にだけ同様のシール部材を付してもよい。
【0076】
また、安全弁2(2a)を排ガス処理装置4の導入配管3に配した例について説明したが、気体流路の内部圧力が外部圧力よりも高圧や低圧になる配管であれば適用可能であり、配管の破裂破壊や潰れ破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明を適用する安全弁を組み込んだ安全弁ユニットの外観図である。
【図2】本発明を適用する安全弁の組立図である。
【図3】安全弁ユニットの断面図である。
【図4】安全弁の正圧での作動状態を示した安全弁ユニットの断面図である。
【図5】安全弁の負圧での作動状態を示した安全弁ユニットの断面図である。
【図6】安全弁ユニットの使用状態を示す構成図である。
【図7】本発明を適用する安全弁の別の実施形態を示す安全弁ユニットの断面図である。
【図8】本発明を適用する安全弁の実施形態を示す安全弁ユニットの断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1,1a,1bは安全弁ユニット、2,2aは安全弁、3は導入配管、4は排ガス処理装置、5は導入手段、6は貯留タンク、7は真空ポンプ、8は凝縮器、10は制御部、11は平板部、12は主弁板、13は副弁板、14は主通気孔、15は副通気孔、16は副ガイド軸、17は副スプリング、18は副ナット、19は主ガイド軸、20は主スプリング、21は主ナット、22はネジ、24は箱部、25は接続部、31,33は手動弁、32は電磁弁、35は配管、37はバイパス配管、38は差圧センサ、39は排出弁、40は排ガス発生装置、41は洗浄乾燥チャンバー、42は曝気槽、50は主シール材、51は副シール部材、55は捕集箱、61,71はフランジ、62,72は支柱部、63,73はネジ部、75,76は連通孔、77,78は中心孔である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体流路の内外の相対圧が正圧および負圧の両方で作動する安全弁であって、前記気体流路の壁面の一部を構成すると共に通気用の主通気孔の形成された平板部と、該平板部の前記主通気孔を覆う大きさで形成されると共に、前記主通気孔に重なる範囲よりも内側に通気用の副通気孔の形成された主弁板と、該主弁板の前記副通気孔を覆い前記主通気孔よりも小さく形成された副弁板と、前記主通気孔を覆う前記主弁板の周辺部および前記平板部を、等間隔で挿通する複数の主ガイド軸と、各々の該主ガイド軸に挿通されて前記主弁板を前記平板部に密着状態で付勢する複数の主スプリングと、前記主弁板の中心部および前記副弁板の中心部を挿通する副ガイド軸と、該副ガイド軸に挿通されて前記副弁板を前記主弁板に密着状態で付勢する副スプリングとによって構成されていることを特徴とする安全弁。
【請求項2】
前記主弁板に当接する前記主通気孔の外周部、および/または前記平板部に当接する前記主弁板の内周部に環状の主シール部材を付すると共に、前記副弁板に当接する前記副通気孔の外周部、および/または前記主弁板に当接する前記副弁板の内周部に環状の副シール部材を付することを特徴とする請求項1に記載の安全弁。
【請求項3】
前記平板部は、前記気体流路に着脱可能に配されていることを特徴とする請求項1に記載の安全弁。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の安全弁を、吸引ポンプで吸引して排ガスを導入する導入配管に配設したことを特徴とする排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−250264(P2009−250264A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95274(P2008−95274)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】