説明

安否情報確認システム、無線基地局、及び携帯無線端末

【課題】災害発生時に携帯無線端末から安否情報を収集するセンタ側の安否確認サーバと無線基地局との間が通信不能となったのちに両者の間の通信が復旧したときに、網に輻輳を発生させることなく最新の安否情報を短時間で収集する。
【解決手段】災害発生により安否確認サーバ103との通信が不能となったときに、それぞれの無線基地局101が自律的に自局の配下の携帯無線端末102から安否情報を収集するようにし、安否確認サーバ103との通信が復旧した時点でそれまでに収集した安否情報を集約して安否確認サーバ103に一括して送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害発生時に携帯無線端末を利用して利用者の安否を確認するための技術に係り、特に、災害発生により安否情報を収集するセンタサーバと被災地の無線基地局との間が通信不能となった場合においても、被災地の無線基地局が自律的に自身の通信エリア内の携帯無線端末から利用者の安否情報を収集し、センタサーバとの通信が復旧した時点で、輻輳の発生を抑止しつつ最新の安否情報を迅速に提供するための安否情報確認システム、無線基地局、及び携帯無線端末に関する。
【背景技術】
【0002】
災害発生時に携帯無線端末(以下、無線端末あるいは単に端末とも略記する。)を利用して利用者の安否を確認するための技術として、例えば、特許文献1には、センタサーバから被災地域に位置登録されている各携帯電話機に発呼を行って利用者から安否の応答を収集する技術が開示されている。また、例えば、特許文献2には、緊急災害情報や安否確認命令を受信した個々の無線端末が利用者の安否を確認してセンタ側の安否確認サイトに送信する技術が開示されている。
【0003】
また、例えば、特許文献3には、災害時などにネットワーク障害によってセンタ装置から無線端末に配信すべき情報の配信が途絶えた場合に、無線基地局に予め記憶されている自局の避難用地図情報を配下の無線端末に配信する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−168990号公報
【特許文献2】特開2009−253776号公報
【特許文献3】特開2007−181027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
災害の発生によってネットワーク障害が発生し、センタ側と無線基地局(以下、基地局と略記する。)との間が通信不能に陥った場合、前記のような安否確認の方法では、センタ側と基地局との間の通信が復旧した時点で安否情報の収集が一斉に再開されることになる。しかし、特許文献1のようにセンタサーバから各端末に順次発呼する方法では、全端末から安否の応答を収集するのに長時間を要するという問題がある。また、特許文献2のように個々の端末から発信してセンタ側に安否情報を送信する方法では、多数の端末から一斉に発信が行われるために、基地局あるいはセンタ側にて輻輳が発生して通信効率が低下し、さらには網全体にも悪影響を与えるという問題がある。
【0006】
本発明は、前記の問題を解決するためになされたものであり、災害発生時に安否情報を収集するセンタサーバと基地局との間が通信不能となったのちに両者の間の通信が復旧したときに、網に輻輳を発生させることなく最新の安否情報を短時間で収集可能な安否情報確認システム、無線基地局、及び携帯無線端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明による安否情報確認システムは、災害発生によりセンタサーバとの通信が途絶または不安定となったときに、それぞれの基地局が自律的に自局の配下の端末から安否情報を収集するようにし、センタサーバとの通信が復旧した時点でそれまでに収集した安否情報を集約してセンタサーバに一括して送信するものとした。これにより、センタサーバとの通信が復旧してから安否情報の収集が終了するまでの所要時間を短縮することができる。
【0008】
また、本発明による基地局は、自局の通信エリア内の全端末から安否情報を収集するときに、端末を所定のグループに分けて順番に安否情報を送信させたのち、センタサーバとの通信が不能となっているときには、一時的に停波するものとした。これにより、基地局における輻輳の発生を防ぐとともに、自局の通信エリア内の端末を他の基地局にハンドオフさせやすくすることができる。
【0009】
また、本発明による携帯無線端末は、ある基地局から最初に安否確認指示を受信した時点で直ちに利用者に安否情報の入力を促して、入力された安否情報を記憶部に一時保存しておき、当該基地局に送信した安否情報がセンタサーバに通知されたことを確認するまでの間、その後に安否確認指示を受信した他の通信可能な基地局に対しても、当該安否情報の送信を行うものとした。これにより、複数の通信経路を介してセンタサーバに安否情報を通知することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、災害発生時に安否情報を収集するセンタサーバと基地局との間が通信不能となったのちに両者の間の通信が復旧したときに、網に輻輳を発生させることなく最新の安否情報を短時間で収集可能な安否情報確認システム、無線基地局、及び携帯無線端末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による安否情報確認システムの構成例を示す図である。
【図2】無線端末の構成例を示すブロック図である。
【図3】基地局の構成例を示すブロック図である。
【図4】従来システムにおける呼集中の発生を示すシーケンス図である。
【図5】本発明による安否情報確認システムにおける通常の通信手順を示すシーケンス図である。
【図6】本発明による安否情報確認システムにおいてセンタサーバと基地局間の通信が不能となったときの通信手順を示すシーケンス図である。
【図7】基地局の動作モードの変化を示す状態遷移図である。
【図8】基地局がオンライン安否情報収集モードになっているときの動作を示すフローチャートである。
【図9】基地局が自律的安否情報収集モードになっているときの動作を示すフローチャートである。
【図10】基地局の安否情報集約部に格納される集約安否情報の構成及びデータ例である。
【図11】端末が安否確認指示を受信したときの動作を示すフローチャートである。
【図12】端末が安否応答要求を受信したときの動作を示すフローチャートである。
【図13】端末が通知完了リストを受信したときの動作を示すフローチャートである。
【図14】端末が安否確認解除を受信したときの動作を示すフローチャートである。
【図15】端末の安否情報格納部に格納される安否情報の構成及びデータ例である。
【図16】端末のRSSI情報格納部に格納されるRSSI情報の構成及びデータ例である。
【図17】端末に表示される安否情報確認記録画面の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を適宜図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施の態様はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において各種変形が可能である。
【0013】
<実施形態1>
図1は、本発明による安否情報確認システムの構成例を示す図である。図1に示すように、安否情報確認システム100は、基地局101A,101B、無線端末102x,102y、安否確認サーバ(以下、センタサーバとも呼ぶ。)103、安否情報データベース104、及びセンタ局105を備えて構成されている。
【0014】
基地局101A,101Bは、広域回線によりセンタ局105に接続され、センタ側に設置されている安否確認サーバ103と通信可能に構成されている。安否確認サーバ103は、災害発生時等に無線端末102x,102yから収集した利用者の安否情報を安否情報データベース104に登録し、不図示の他の利用者からの要求に応じて安否情報データベース104に登録されている利用者の安否情報を提供する。
【0015】
かかるシステムにおいて、例えば災害発生により基地局101Aとセンタ局105との通信が途絶または不安定となった場合、基地局101Aの制御部は自律的安否情報収集モードに動作を切り替えて保存処理部としての安否情報集約部を起動し、自局の通信エリア内に存在するすべての無線端末に対して安否確認の実行を指示する信号を発信する。この信号を受信した無線端末102x,102yは利用者に安否の入力を促し、基地局101Aからの発信規制の指示にしたがって入力された安否情報を基地局101Aに送信するとともに、当該安否情報を自端末の記憶部(図2を参照して後記する安否情報格納部206)に一時記憶する。
【0016】
ここで、無線端末102xは、基地局101Bの通信エリア内にも入っているので、基地局101Bからも安否確認の実行を指示する信号を受信する。そして、基地局101Bからの発信規制の指示にしたがって、先に自端末の記憶部に一時記憶しておいた安否情報を読み出して基地局101Bに送信する。これにより、無線端末102xに入力された安否情報は、センタ局105との通信が遮断されていない基地局101Bを介して安否確認サーバ103に通知されることとなる。
【0017】
一方、無線端末102yは、基地局101Aの通信エリア内だけに入っているため、入力された安否情報は、基地局101Aとセンタ局105との通信が復旧した時点で、送信処理部としての安否情報集約部により、他の端末の安否情報とともに安否確認サーバ103に一括して送信されることになる。このとき、基地局101Aの安否情報集約部によりすでに各端末から安否情報が収集されているので、通信復旧後の安否情報の収集に要する所要時間を従来システムよりも短縮することができる。
【0018】
図2は、無線端末の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、無線端末102は、基地局との間で電波の送受信を行うRF(Radio Frequency)部201、RF部201で送受信する電波信号と装置内部のデータ形式との変換を行うベースバンド部202、ベースバンド部202で変換された受信データを解析して装置全体の動作及び基地局との間の通信を制御する制御部203、各基地局から受信した電波の強度を示すRSSI(Received Signal Strength Indicator)値などを格納しておくRSSI情報格納部204、基地局から安否確認指示信号を受信したときに利用者に安否の入力を促し、入力された安否情報を基地局に送信するとともに安否情報格納部206に記憶させる安否情報応答部205、及び、利用者が入力した安否情報を格納しておく安否情報格納部206を備えて構成されている。
【0019】
図3は、基地局の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、基地局101は、無線端末102との間で電波の送受信を行うRF部301、RF部301で送受信する電波信号と装置内部のデータ形式との変換を行うベースバンド部302、ベースバンド部302で変換された受信データを解析して基地局全体の動作並びに無線端末102及びセンタ局側の装置との間の通信を制御する制御部303、災害発生時に自局の通信エリア内の無線端末102から収集した安否情報を集約して安否確認サーバ103に送信する保存処理部及び送信処理部としての安否情報集約部304、衛星通信を用いて通信を行う衛星回線306、有線ケーブルを用いて通信を行う広域回線307、及び、衛星回線306と広域回線307とのいずれかに通信路を切り替える回線切替スイッチ(SW)305を備えて構成されている。
【0020】
図4は、従来システムにおける呼集中の発生を示すシーケンス図である。特許文献2に記載されている従来システムでは、センタ側に安否確認サーバ103を配備している。災害発生時には、安否確認サーバ103から被災区域の基地局101に対して安否情報収集指示を送信し、これを受信した基地局101が自局の通信エリア内に存在する全端末102に安否応答指示を同報送信する。そのため、複数の端末102から一斉に安否確認サーバ103宛に送信された安否応答が先着順に処理されることとなり、呼集中による輻輳が発生しやすくなる。その結果、全端末からの安否情報を受信し終えるまでに長時間を要したり、一部の端末からの安否情報を受信できなくなるといった問題があった。
【0021】
図5は、本発明による安否情報確認システムにおける通常の通信手順を示すシーケンス図である。災害発生時には、従来システムと同様に、センタ側に配備した安否確認サーバ103から被災区域の基地局101を介して安否確認指示を全端末102に同報送信する。その後、基地局101は、発信規制(詳細は後記)を行いつつ各端末102に安否応答要求を送信して安否応答を受け付けることにより、基地局101における輻輳の発生を防止する。さらに、基地局101は、各端末102から受け付けた安否応答に含まれる安否情報を集約し、集約した安否情報(集約安否情報)を一括して安否確認サーバ103に送信する。その応答として安否確認サーバ103から返送される通知完了リストを、基地局101から全端末102に同報送信し、各端末102はこの通知完了リストを参照することで自身が送信した安否情報が安否確認サーバ103に通知されたことを確認する。
【0022】
以上説明したように、本発明による安否情報確認システムでは、各基地局101が、自局において輻輳が発生しないように発信規制を行いつつ各端末102から安否情報を収集し、収集した安否情報を一括して安否確認サーバ103に送信するので、安否確認サーバ103への呼集中を防ぐことができる。そのため、安否情報の収集に要する時間を従来システムよりも短縮することができる。
【0023】
なお、各基地局101から安否確認サーバ103への集約安否情報の送信時においても、呼の衝突が発生する可能性があるので、安否確認サーバ103側から各基地局101に対して順次発呼して集約安否情報を収集するようにしてもよい。
【0024】
図6は、本発明による安否情報確認システムにおいて安否確認サーバと基地局間の通信が不能となったときの通信手順を示すシーケンス図である。この場合、安否確認サーバ103から送信される安否情報収集指示は被災区域の基地局101には届かないが、基地局101は、センタ側との通信が途絶または不安定となったことを検出すると、自局の動作を自律的安否情報収集モードに切り替えて、図5を用いて前記した手順と同様に、自局の通信エリア内の全端末からの安否情報の収集を行う。通信の途絶または不安定は、基地局101自身が検出するのではなく、外部から通知を受けるものとしてもよい。基地局101は収集した安否情報を集約して記憶部に一時保存しておき、安否確認サーバ103との通信が復旧した時点で、記憶部に一時保存した集約安否情報を一括して安否確認サーバ103に送信する。その後の動作は、図5を用いて前記した手順と同様である。
【0025】
以上説明したように、本発明による安否情報確認システムでは、センタ側との通信が不能となった各基地局101が、自律的に各端末102から安否情報を収集しておき、センタ側との通信が復旧した時点で直ちに収集済の安否情報を一括して安否確認サーバ103に送信する。そのため、安否情報の収集に要する時間を従来システムよりも短縮することができる。
【0026】
続いて、災害発生時の基地局の動作モードの変化について説明する。図7は、基地局の動作モードの変化を示す状態遷移図である。通常運用状態とは、災害が発生していないときの通常の動作モードである。
【0027】
災害の発生により、安否確認サーバ103から基地局101に対して安否情報収集指示が送信された場合に、基地局101の動作モードは通常運用状態からオンライン安否情報収集モードに切り替えられ、図5を用いて前記した動作が実行される。また、通常運用状態あるいはオンライン安否情報収集モードで動作中の基地局101において、センタ局105(及び安否確認サーバ103)との通信遮断が検出された場合は、基地局101の動作モードは自律的安否情報収集モードに切り替えられ、図6を用いて前記した動作が実行される。
【0028】
自律的安否情報収集モードで動作中の基地局101において、センタ局105(及び安否確認サーバ103)との通信復旧が検出された場合は、基地局101の動作モードはオンライン安否情報収集モードに切り替えられる。また、オンライン安否情報収集モードで動作中の基地局101において、安否確認サーバ103から安否確認解除が送信された場合には、基地局101の動作モードは通常運用状態に復帰する。
【0029】
図8は、基地局101がオンライン安否情報収集モードになっているときの動作を示すフローチャートである。制御部303が安否確認サーバ(センタサーバ)103から安否情報収集指示を受信すると、安否情報集約部304を起動し、基地局101はオンライン安否情報収集モードになる。
【0030】
安否情報集約部304は、まずステップS801にて、自局の通信エリア内の全端末102に対して、利用者による安否入力の開始を指示する安否確認指示を同報送信する。この安否確認指示を受信した当該通信エリア内の各端末102は、画面にメッセージを表示するなどにより利用者に対して安否入力を促し、利用者による安否入力結果を安否情報格納部206に一時保存する。ここでは、安否入力結果は、利用者が無事であることを示す「OK」、何らかの支援が必要であることを示す「NG」のいずれかが選択されて入力されるものとするが、もっと多くの選択肢を設けてもよいし、緊急度などを付加するようにしてもよい。
【0031】
図4を用いて前記したように、利用者からの安否入力を受け付けた時点で直ちに各端末102から基地局101に発呼して安否情報を送信すると、基地局の同時通話可能容量を超えて輻輳が発生するおそれがある。そこで、輻輳防止対策として、端末102を幾つかのグループに分割してグループ単位での発信規制を行う。端末102をグループに分割する方法は任意であるが、例えば、電話番号の下1桁の値により10個のグループに分割する方法、電話番号の範囲を指定して任意の数のグループに分割する方法などが適用可能である。グループ数は、基地局の同時通話可能容量や想定される端末数あるいはトラフィック量に応じて適宜設定することが好ましい。
【0032】
次に、安否情報集約部304は、ステップS802にて、分割した全グループからの安否情報の受信が終了したか否かを判定し、終了していなければ(ステップS802で「No」)ステップS803に処理を進め、終了した場合は(ステップS802で「Yes」)ステップS806に処理を進める。
【0033】
ステップS803では、安否情報集約部304は、まだ受信が終了していないいずれかのグループの端末からのみの発信を許可する発信規制を指示して安否応答要求を同報送信する。この安否応答要求を受信した各端末102は、以下の3条件が成立している場合は、当該基地局に対して安否応答(安否情報の送信)を行う。
条件1:自身が属するグループからの発信が許可されている
条件2:当該基地局に対して未送信の安否情報がある
条件3:センタサーバへの当該安否情報の通知が完了していない
【0034】
また、利用者による安否入力が行われていない各端末102は、自身が属するグループからの発信が許可されてから一定時間(例えば1分)が経過した時点で、安否が未入力である旨を当該基地局101に送信する。
【0035】
ステップS804では、安否情報集約部304は、各端末102から送信されてくる安否情報を所定の期間(例えば3分間)だけ受信し、続くステップS805にて、受信した複数の安否情報を集約して記憶部に保存したのち、ステップS802に処理を戻す。
【0036】
他方、ステップS806では、安否情報集約部304は、その時点で記憶部に保存されている集約済の集約安否情報をセンタサーバ103に送信し、続くステップS807では、センタサーバ103から返送される通知完了リストを自局の通信エリア内の全端末102に同報送信する。この通知完了リストには、センタサーバ103への安否情報の通知が完了した端末のID情報が含まれており、これを受信した各端末102は、自身のID情報がリストに含まれていれば、センタサーバへの安否情報の通知が完了したことを安否情報格納部206に登録する。
【0037】
図9は、基地局101が自律的安否情報収集モードになっているときの動作を示すフローチャートである。制御部303が災害発生によりセンタ局105との通信が途絶または不安定となったことを検出すると、安否情報集約部304を起動し、基地局101は自律的安否情報収集モードになる。基地局101が自律的安否情報収集モードになったときの動作のうち、ステップS811からステップS815までの動作は、前記した図8のステップS801からステップS805までの動作と同様であるので、その説明を省略する。
【0038】
全グループからの安否情報の受信が終了すると(ステップS812で「Yes」)、安否情報集約部304は、ステップS816にて制御部303に停波を指示したのち処理を終了する。このように、自局の通信エリア内の全端末からの安否情報の収集が一巡したのちに一時的に停波することにより、自局の通信エリア内の端末を他の基地局にハンドオフさせやすくすることができる。
【0039】
この図9の動作は、所定の時間(例えば30分)が経過する毎に繰り返して実行され、新たに端末が自局の通信エリア内に加わったり、利用者による安否情報の新規入力あるいは変更が行われたりしたときには、それらの端末から送信される最新の安否情報が受信されて収集される。
【0040】
また、センタ局105との通信が復旧した場合は、基地局101は自律的安否情報収集モードからオンライン安否情報収集モードに切り替わり、その時点で収集済の安否情報は、以後図8の動作によってセンタサーバ103に送信されることになる。
【0041】
図10は、基地局の安否情報集約部304に格納される集約安否情報の構成及びデータ例である。図10に示すように、集約安否情報には、発信時刻、端末ID、確認時刻、安否入力結果、及びセンタサーバへ通知完了からなるレコードが、受信した安否情報の数だけ登録される。
【0042】
発信時刻とは、全端末宛に安否確認指示を同報送信した時刻である。端末IDとは、各端末102に付された識別情報である。確認時刻とは、利用者により安否入力が行われた時刻、もしくは、安否が未入力の場合は端末102から未入力の情報を受信した時刻である。安否入力結果とは、利用者から受け付けた安否入力の結果であり、安否が未入力のときは「−」が格納される。センタサーバへ通知完了とは、安否確認サーバ(センタサーバ)103への通知が完了したか否かの状態を示すものであり、「Yes」は通知が完了したことを、「No」は通知が完了していないことを表す。
【0043】
続いて、無線端末102の動作を、図11から図16を参照して詳しく説明する。図11は、端末が安否確認指示を受信したときの動作を示すフローチャートである。ステップS901にて、端末102が基地局101から送信される安否確認指示を受信すると、次にステップS902にて、画面にメッセージを表示するなどにより利用者からの安否入力を受け付ける。ステップS903では、利用者からの入力が完了したか否かを判定し、入力が完了した場合は(ステップS903で「Yes」)ステップS904に処理を進めて安否の入力結果を安否情報格納部206に一時記憶する。また、所定の時間内に入力が完了しなかった場合は(ステップS903で「No」)処理を終了する。
【0044】
図15は、端末の安否情報格納部206に一時記憶される安否の入力結果の構成及びデータ例である。図15に示すように、安否の入力結果は、安否確認指示受信時刻、入力時刻、安否入力結果、及びセンタサーバへ通知完了から構成される。
【0045】
安否確認指示受信時刻とは、基地局101から送信される安否確認指示を受信した時刻である。入力時刻とは、端末102が利用者からの安否入力を受け付けた時刻である。安否入力結果とは、利用者から受け付けた安否入力の結果である。この安否入力の結果は、任意の時点で利用者が読み出したり、更新したりすることも可能である。また、センタサーバへの通知完了とは、安否確認サーバ(センタサーバ)103への通知が完了したか否かを示すものであり、「Yes」は通知が完了したことを、「No」は通知が完了していないことを表す。センタサーバへ通知完了欄は、当該安否の入力結果を基地局101へ送信するか否かを判定するために利用される。
【0046】
図12は、端末が安否応答要求を受信したときの動作を示すフローチャートである。ステップS911にて、端末102の制御部203が基地局101から送信される安否応答要求を受信すると、次にステップS912にて、当該基地局101から安否応答要求を受信したことをRSSI情報格納部204に登録する。
【0047】
図16は、RSSI情報格納部204に格納されるRSSI情報の構成及びデータ例である。図16に示すように、RSSI情報は、基地局ID、RSSI値、安否応答要求を受信したか?及び安否応答済か?(応答時刻)からなるレコードが、端末が検出した基地局101の数だけ登録される。基地局IDとは、各基地局101から発信される当該基地局の識別情報である。RSSI値とは、当該基地局101から発信される電波の受信強度を示す値である。安否応答要求を受信したか?とは、当該基地局101からの安否応答要求を受信済か否かを示すものである。また、安否応答済か?(応答時刻)とは、当該基地局101に対して安否情報を応答済(Yes)か否か(No)と、その応答時刻を示すものである。
【0048】
ステップS912では、制御部203は、受信した安否応答要求の送信元の基地局101に対応するRSSI情報のレコードに、そのときのRSSI値を登録するとともに、安否応答要求を受信したか?欄に「Yes」を登録する。
【0049】
続くステップS913では、安否情報応答部205が安否入力済か否かを判定し、入力済であれば(ステップS913で「Yes」)ステップS914に処理を進め、未入力であれば(ステップS913で「No」)ステップS918に処理を進める。このとき、安否情報格納部206に安否の入力結果(図15参照)が一時記憶されていれば安否入力済と判定する。また、未入力の場合には、一定時間(例えば1分)が経過するのを待ってからステップS918に処理を進める。ステップS918では、自身が属するグループからの発信が許可されるのを待ってから、安否が未入力である旨を当該基地局101に送信して処理を終了する。
【0050】
ステップS914では、安否情報応答部205が当該安否の入力結果(図15参照)のセンタサーバへ通知完了欄を参照することで、安否確認サーバ(センタサーバ)103への通知が完了しているか否かを判定し、通知が完了していれば(ステップS914で「Yes」)処理を終了し、通知が完了していなければ(ステップS914で「No」)ステップS915に処理を進める。
【0051】
ステップS915では、安否情報応答部205が当該基地局101へ安否情報を応答済か否かを判定し、応答済であれば(ステップS915で「Yes」)処理を終了し、応答済でなければ(ステップS915で「No」)ステップS916に処理を進める。このとき、RSSI情報格納部204に格納されている当該基地局101に対応するRSSI情報(図16参照)の安否応答済み?(応答時刻)欄を参照することにより、安否情報を応答済か否かを判定する。
【0052】
ステップS916では、自身が属するグループからの発信が許可されるのを待ってから、安否情報応答部205が安否情報格納部206に一時記憶した安否の入力結果(図15参照)を当該基地局101に送信し、ステップS917では、対応するRSSI情報(図16参照)の安否応答済か?(応答時刻)欄に「Yes」と現在の時刻とを登録して処理を終了する。なお、図16にて応答時刻の右に「自動」と付されているのは、他の基地局から受信した安否確認指示に対して入力された安否情報が、自動的に(再度の入力を行わずに)他の基地局にも送信されたことを表している。
【0053】
図13は、端末が通知完了リストを受信したときの動作を示すフローチャートである。ステップS921にて、端末102の制御部203が基地局101から送信される通知完了リストを受信すると、当該リストを安否情報応答部205に引き渡す。次にステップS922にて、安否情報応答部205が当該リストに自端末の端末IDが登録されているか否かを判定し、登録されていなければ(ステップS922で「No」)処理を終了し、登録されていれば(ステップS922で「Yes」)ステップS923に処理を進める。
【0054】
ステップS923では、安否情報応答部205が安否情報格納部206に一時記憶した安否の入力結果(図15参照)のセンタサーバへ通知完了欄に「Yes」を登録して処理を終了する。これにより、安否確認サーバ(センタサーバ)103への通知が完了した安否情報はいずれの基地局へも再送信されないこととなる。
【0055】
図14は、端末が安否確認解除を受信したときの動作を示すフローチャートである。ステップS931にて、端末102の制御部203が基地局101から送信される安否確認解除を受信すると、その旨を安否情報応答部205に通知する。次に、ステップS932にて、安否情報応答部205は、画面に解除メッセージを表示するなどにより利用者に安否確認が解除された旨を通知する。続くステップS933では、安否情報格納部206に一時記憶した安否の入力結果(図15参照)を初期化して処理を終了する。
【0056】
図17は、端末に表示される安否情報確認記録画面の構成及び表示例である。この画面は、端末102の利用者が入力した安否入力結果を、誰がすでに確認しており、誰がまだ確認していないかを、当該利用者に伝達するためのものであり、利用者が端末102から安否確認サーバ103に問い合わせて応答される情報を表示するものである。
【0057】
それぞれの利用者の安否情報を提供可能な相手先は、予め安否確認サーバ103に利用者登録されているものとし、端末102からの追加の利用者登録も可能であるものとする。利用者登録されている登録者への安否情報の通知方法としては、登録者側からの要求に応じて安否確認サーバ103から安否情報を提示するのが一般的であるが、利用者からの安否情報を受信した時点で、安否確認サーバ103から登録者のメールアドレス宛にメールを送信して通知するようにしてもよい。
【0058】
<実施形態2>
続いて、実施形態1で説明した安否情報確認システムを前提として、センタ局側の安否確認サーバとの通信が不能となった基地局が、広域回線以外の通信手段を用いて集約安否情報を送信する形態について説明する。
【0059】
図1に例示した安否情報確認システム100における各基地局101A,101Bは、通常運用時は広域回線によってセンタ局105に接続され、安否確認サーバ103との間の通信を行う。図3に示すように、それぞれの基地局101は、広域回線307による通信が遮断された場合のバックアップ回線として衛星回線306を備えており、回線切替スイッチ(SW)305によって通信路を切り替えることができるように構成されている。
【0060】
そして、災害発生などにより広域回線307によるセンタ局105との通信が不能となった場合、基地局101は通信路を広域回線307側から衛星回線306側に切り替えて安否確認サーバ103との間の通信を行う。しかし、衛星回線306は広域回線307よりも通信速度が小さいため、複数の基地局101が同時に安否確認サーバ103にアクセスすると通信帯域不足となって輻輳が発生する可能性がある。よって、衛星回線306を用いる場合は、安否確認サーバ103側から通信が遮断された各基地局101を順番に呼び出して集約安否情報を収集するようにすることが望ましい。さらには、基地局101にてデータ圧縮処理を施すことで、送信する集約安否情報のデータ量を削減することがより好ましい。
【符号の説明】
【0061】
100 安否情報確認システム
101,101A,101B 無線基地局(基地局)
102,102x,102y 携帯無線端末(無線端末、端末)
103 安否確認サーバ(センタサーバ)
104 安否情報データベース
105 センタ局
201 (端末の)RF部
202 (端末の)ベースバンド部
203 (端末の)制御部
204 RSSI情報格納部(記憶部)
205 安否情報応答部
206 安否情報格納部(記憶部)
301 (基地局の)RF部
302 (基地局の)ベースバンド部
303 (基地局の)制御部
304 安否情報集約部(保存処理部、送信処理部)
305 回線切替スイッチ(SW)
306 衛星回線
307 広域回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広域回線によって接続されるセンタ局と複数の無線基地局とを備える移動体通信システムにおいて、災害発生時に携帯無線端末の利用者の安否情報を収集して他の利用者に提供する安否情報確認システムであって、
前記センタ局側に前記利用者の安否情報を管理する安否確認サーバを備え、
前記無線基地局は、
災害発生時に前記センタ局との通信が途絶または不安定となった際に、自局の通信エリア内に存在する携帯無線端末に前記利用者の安否情報を送信するように指示して、各携帯無線端末から送信される前記安否情報を記憶部に保存する保存処理部と、
前記センタ局との通信が復旧した時点で、前記記憶部に保存しておいた前記安否情報を前記安否確認サーバに送信する送信処理部と、を備える
ことを特徴とする安否情報確認システム。
【請求項2】
請求項1に記載の安否情報確認システムにおいて、
前記無線基地局は、自局の通信エリア内に存在する前記携帯無線端末をグループ分けしてグループ単位で発信規制を行うことにより、前記グループ単位で前記利用者の安否情報を収集する
ことを特徴とする安否情報確認システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の安否情報確認システムにおいて、
前記携帯無線端末は、前記利用者が入力した前記安否情報を記憶部に一時記憶し、
当該安否情報の前記安否確認サーバへの通知が完了するまでの間は、安否情報の送信を指示してきた他の無線基地局にも、前記記憶部に一時記憶した前記安否情報を送信する
ことを特徴とする安否情報確認システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の安否情報確認システムにおいて、
前記無線基地局は、自局の通信エリア内に存在する前記携帯無線端末からの前記安否情報の収集が一巡した時点で自局を停波し、所定の時間が経過したのちに前記安否情報の再収集を行う
ことを特徴とする安否情報確認システム。
【請求項5】
広域回線によってセンタ局に接続される移動体通信システムの無線基地局であって、
災害発生時に前記センタ局との通信が途絶または不安定になった際に、自局の通信エリア内に存在する携帯無線端末に利用者の安否情報を送信するように指示して、各携帯無線端末から送信される前記安否情報を記憶部に保存する保存処理部と、
前記センタ局との通信が復旧した時点で、前記センタ局側に配備され災害発生時に前記携帯無線端末の利用者の安否情報を収集して他の利用者に提供する安否確認サーバに、前記記憶部に格納しておいた前記安否情報を送信する送信処理部と、
を備えることを特徴とする無線基地局。
【請求項6】
請求項5に記載の無線基地局において、
前記安否情報集約部は、自局の通信エリア内に存在する前記携帯無線端末をグループ分けしてグループ単位で発信規制を行うことにより、前記グループ単位で前記利用者の安否情報を収集する
ことを特徴とする無線基地局。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の無線基地局において、
前記保存処理部は、自局の通信エリア内に存在する前記携帯無線端末からの前記安否情報の収集が一巡した時点で自局を停波させ、所定の時間が経過したのちに前記安否情報の再収集を行う
ことを特徴とする無線基地局。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の無線基地局において、
衛星回線と、通信路を広域回線から衛星回線に切り替える回線切替スイッチとをさらに備え、
前記送信処理部は、前記記憶部に格納しておいた前記安否情報を前記衛星回線を用いて前記安否確認サーバに送信する
ことを特徴とする無線基地局。
【請求項9】
広域回線によって接続されるセンタ局と複数の無線基地局とを備える移動体通信システムの携帯無線端末であって、
前記無線基地局から安否情報の収集指示を受信した場合に、自端末の利用者に安否情報の入力を促して、前記利用者が入力した安否情報を記憶部に一時記憶させ、
当該無線基地局から安否情報の送信指示を受信した場合に、前記記憶部に一時記憶させた前記安否情報を当該無線基地局に送信する安否情報応答部
を備えることを特徴とする携帯無線端末。
【請求項10】
請求項9に記載の携帯無線端末において、
自端末が通信可能な前記無線基地局のリストと、各無線基地局への前記安否情報の送信記録とを記憶部に記憶し、
前記安否情報応答部は、自身が送信した前記安否情報が、前記センタ局側に配備され災害発生時に前記携帯無線端末の利用者の安否情報を収集して他の利用者に提供する安否確認サーバに通知された旨の通知を受信するまでの間に、他の無線基地局から安否情報の送信指示を受信した場合は、前記安否情報の送信記録を参照して、前記記憶部に一時記憶した未送信の前記安否情報を当該他の無線基地局に送信する
ことを特徴とする携帯無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−109684(P2013−109684A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255823(P2011−255823)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】