説明

安定したユニラメラ組成物およびその製造方法

安定な半透明ないし透明のユニラメラリポソーム懸濁液組成物およびその使用が記載される。本発明の懸濁液は約50ナノメートルから約290ナノメートルの間の平均粒径を有する均一な複数のユニラメラリポソーム粒子を含む。該粒子は、約0.95g/ccから約1.25g/ccの間の密度を有し、リポソーム懸濁液の重量に基づいて約30%から約75%の量で存在する。リポソーム製剤は油溶性組成物と水溶性組成物を含む水性のリポソーム溶液から形成される。油溶性組成物はリポソーム溶液の重量に基づいて約5%から約33%の間の量で存在し、水溶性組成物はリポソーム溶液の重量に基づいて約67%から約95%の間の量で存在している。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リポソーム懸濁液
一般に、本発明は加えられた活性成分のあるなしにかかわらず、安定な半透明ないし透明のユニラメラリポソーム懸濁液(unilamellar liposomal suspension)の、化粧品、治療薬、または診断薬の用途のための組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リポソームは、リン脂質二重層(phospholipid bilayer)で構成されている膜を有する、閉じている通常球形の小胞であり、その水性コア中に水溶性の親水性の分子をカプセルし、二重層の疎水性領域中に油溶性の疎水性分子を保持することができる。リポソームは通常、約25ナノメートルから約1000ナノメートルの小さな粒子であり、さまざまなリン脂質、たとえば天然由来のエッグホスファチジルエタノールアミンなどの混合脂質鎖、またはDOPE(ジオレイルフォスファチジルエタノールアミン(dioleolylphosphatidylethanolamine)のような純成分のリン脂質を包含する。リポソームは皮膚の真皮層中への活性物質の堆積のための輸送機構を提供することによって、局所薬製剤に広く使用される。この技術を使う利点としては、制御された放出、選択的な送達、高められた生体内利用性および安定性、並びに希望の活性薬の増加した吸収があげられる。さらに、リポソームには、内部の皮膚細胞とそれを取り囲む細胞外の脂質と皮膚と化学的に類似するため、皮膚に大きな親密性と適合性を有する。リポソームの脂質二重層は他の二重層、たとえば細胞膜と接合でき、その結果、リポソームコンテンツを送ることができる。
【0003】
リポソームの商品開発は貧弱な安定性、清澄度、および短い貯蔵期間によって悩まされた。リポソーム小胞は互いに融合するか、または凝集する傾向がある。特にそれらが表面活性剤、溶媒、有害なpH条件、昇温条件下、または水にさえ長期間の間暴露される際にはそうである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,693,677
【特許文献2】米国特許第6,001,375
【特許文献3】米国特許出願番号2006/0257509
【特許文献4】米国特許出願番号2007/0003536
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
安定な半透明ないし透明のリポソーム懸濁液組成物およびその製造方法が本明細書に記載される。本発明は外部相組成物中にリポソーム成分の特定の組み合わせが分散でき、リポソーム懸濁液が1年以上にわたり活性薬剤のあるなしにかかわらず種々の高温または低温下で安定性を示す均一径粒子のユニモーダル分布を保持するという発見に基づく。分散されたリポソーム粒子の分布の平均直径を減少させることにより、リポソーム粒子の構造の一体性または生理活性を犠牲にせずに、分散されたリポソーム粒子と外部相組成物の密度の相違を最小にし、外部相組成物の粘度を増加させて、小胞の二重層膜の硬さを発現し、リポソーム懸濁液の安定性、清澄度および貯蔵期間を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、安定したユニラメラリポソーム懸濁液は、21℃で10秒−1のせん断速度で約2.5cP(センチポアズ)から約40,000cPの間の粘度と、約0.95g/ccから約1.25g/ccの間の密度を有する、外部相組成物中に懸濁されたリポソーム製剤を含む。外部相組成物は、リポソーム懸濁液の重量の約30%から約75%の間の量で存在している。リポソーム懸濁液は約1.30から約1.45の屈折率を有し、約4℃から約50℃の間で少なくとも30日間、または21℃で少なくとも180日間、またはその両者において、ニート(neat)な粒子の形態で、一様分布(uniform distribution)で安定している。リポソーム懸濁液は約50ナノメートルから約290ナノメートルの間の平均粒径を有する複数のユニラメラリポソーム粒子を含む。リポソーム製剤は油溶性組成物と水溶性組成物を含む水性のリポソーム溶液から形成される。油溶性組成物はリポソーム溶液の重量に基づいて約5%から約33%の間の量で存在し、水溶性組成物はリポソーム溶液の重量に基づいて約67%から約95%の間の量で存在している。油溶性組成物はカップリング試薬、少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1種の剛性エンハンサー、および酸化防止剤を含む。
【0007】
別の実施例では、リポソーム製剤は、1つ以上のレシチン製剤、ブチレングリコール、セラミドIIIB、β−シトステロール、およびトコフェロールを含む油溶性組成物を使用して形成される。この実施態様では、リポソーム懸濁液は、リポソーム懸濁液の約35%から約75%の間の量でグリセリンを含む。
【0008】
他の態様では、本発明の安定したユニラメラリポソーム懸濁液を作るための方法は:(a)カップリング試薬、少なくとも1つのリン脂質、剛性エンハンサー、および酸化防止剤を含む油溶性組成物を調製し、(b)水溶性組成物を調製し、(c)該水溶性組成物と該油溶性組成物を一緒にし、マルチラメラ、多胞体リポソーム製剤(multilamellar, multivesicular liposome preparation)を形成し、(d)該マルチラメラ、多胞体リポソーム製剤をユニラメラリポソーム製剤に変換し、および(e)約0.95g/ccから約1.25g/ccの密度と、21℃で、10秒−1のせん断速度で約2.5cPから約40,000cPの間の粘度を有する外部相組成物にユニラメラリポソーム製剤を加え、それぞれが約50ナノメートルから約290ナノメートルの間の平均粒径を有する複数のユニラメラリポソーム粒子を含むリポソーム懸濁液を形成することを含む。該リポソーム懸濁液は1.30から1.45の間の屈折率を有し、ニート粒子の形態で、一様分布の状態で、約4℃から約50℃において少なくとも30日間の期間安定であるか、または約21℃において少なくとも180日間安定であるか、または両方である安定性を有する。
【0009】
更なる態様では、本発明は、クリーム、ローション、ゲル、セラム、トニック、エマルション、ペースト、またはスプレーの形で化粧品配合物を形成するために化粧品的に適当なマトリックスに、本発明のリポソーム懸濁液を組み合わせることを含む化粧品配合物を調製するための方法に関する。
【0010】
本発明のリポソーム懸濁液は、高められた安定性と生物学的活性プロフィルによって特徴付けられ、リポソームが使用されているさまざまな化粧品、治療薬、または、診断薬の用途のいずれでも役に立つであろう。さらに、開示されたリポソーム懸濁液が提供する半透明の性質は、先行技術で使用されたより不透明な配合物に比較して、美しく優れた外観を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1Aはツァイス−902透過電子顕微鏡(TEM)を使用することで撮られた表2の実施例によるリポソーム懸濁液の電子顕微鏡写真である、倍率30,000倍。図1Bおよび1Cは図1Aのリポソーム懸濁液のTEM顕微鏡写真である、倍率180,000倍。例の脂質二重層は図1Bおよび1Cの矢によって特定される。
【図2】図2は19カ月の貯蔵期間の後の、図1A−1Cに表現されたリポソーム製剤による別の実施例の粒度分析である。
【図3】図3はNanotrac(登録商標)N−150 サブミクロン粒子サイズ分析機を使用した、動的レーザ光散乱による、周囲温度条件下での2.5カ月の貯蔵期間の後の表4の実施例によるリポソーム懸濁液の粒度分析である。
【図4】図4は周囲温度条件下での2.5カ月の貯蔵期間の後の表4の実施例によるリポソーム懸濁液の粒度分析である。
【図5】図5は周囲温度条件下での19カ月の貯蔵期間の後の表4の実施例によるリポソーム製剤の粒度分析である。
【図6】図6は周囲温度条件下での2.5カ月の貯蔵期間の後の表5によるリポソーム懸濁液の粒度分析である。
【図7】図7は周囲温度条件下での2.5カ月の貯蔵期間の後の表6によるリポソーム懸濁液の粒度分析である。
【図8】図8はツァイス−902電子顕微鏡を使用して撮られたリポソームクリーム製剤のTEM顕微鏡写真である、倍率11,430倍。リポソームは矢によって特定される。
【図9】図9はツァイス−902電子顕微鏡を使用して撮られたリポソームクリーム製剤のTEM顕微鏡写真である、倍率11,430倍。リポソームは矢によって特定される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
明細書と特許請求の範囲の明確で一貫した理解を提供するために、以下の定義を提供する。
「リポソーム溶液」という用語は、外部相組成物中に懸濁される前の、リポソーム粒子または小胞を含む水溶液をいう。
【0013】
「リポソーム製剤」という用語はリポソーム粒子または小胞の製剤をいう。リポソーム製剤は水溶液中にリポソーム粒子を含むリポソーム溶液(例えば外部相組成物中に懸濁される前)であることができ、またはリポソーム溶液から調製された凍結乾燥リポソーム粒子または小胞(凍結乾燥されたリポソーム粒子または小胞)であることができる。
【0014】
「リポソーム溶液」という用語は凍結乾燥または外部相組成物中の懸濁液にする前の、リポソーム粒子または小胞を含む水溶液のリポソーム製剤をいう。
【0015】
「リポソーム懸濁液」という用語は外部相組成物中に懸濁されたリポソーム製剤をいう。
【0016】
「カップリング試薬」という用語は、異なった極性の不混和相の可溶化のために適している接続的な媒体(connective medium)であり、リポソーム製剤またはリポソーム懸濁液の保存安定性を実現するものをいう。
【0017】
「剛性エンハンサー」という用語は脂質二重層中に配置された時に脂肪酸鎖の動きまたは流動性を抑え、それのパッキングを促進するように機能するスフィンゴリピド、セラミド、またはステロールをいう。
【0018】
特記のない限り、開示におけるすべての比と割合は重量による。この出願中のすべての引用された参考文献、特許及び公開された特許出願の内容を、本明細書中に参考として援用する。
【0019】
1つの態様において、本発明はリポソーム製剤を含む安定した半透明のユニラメラリポソーム懸濁液を提供する。該リポソーム製剤は約50から約290ナノメートルの平均粒径を有する複数のユニラメラリポソーム粒子を含み、リポソーム懸濁液の約30重量%から約70重量%を構成する外部相組成物中にリポソーム製剤が懸濁される。外部相組成物は約0.95g/ccから約1.25g/ccの間の密度と、21℃で10秒−1のせん断速度で約2.5cPから約40,000cPの間の粘度を有する。リポソーム懸濁液は、約1.30から約1.45の屈折率を有し、ニート粒子の形態で粒子の一様分布の状態で、約4℃から約50℃において少なくとも30日間の期間安定であるか、または約21℃において少なくとも180日間安定であるか、または両方である安定性を保有する。
【0020】
リポソーム製剤と懸濁液
【0021】
リポソーム製剤は、水溶液中に複数のリポソーム粒子または小胞を含むものであるか、またはリポソーム溶液から調製された凍結乾燥リポソーム粒子または小胞(凍結乾燥されたリポソーム粒子または小胞)製剤であることができる。リポソーム製剤中のリポソーム粒子または小胞はマルチラメラ、多胞体の形態であるか、または実質的にユニラメラの形態であることができる。リポソーム製剤は、以下でさらに説明するように、本発明によるリポソーム懸濁液を形成するために外部相組成物に加えられる。リポソーム製剤中のリポソーム粒子は油溶性組成物と水溶性組成物で作られた水性リポソーム溶液から形成される。
【0022】
油溶性組成物
【0023】
油溶性組成物はカップリング試薬、リン脂質またはりん脂質混合物、剛性エンハンサー、および酸化防止剤を含む。本発明のリポソーム懸濁液中の油溶性組成物は、一般に天然細胞膜中に通常存在する複数のリピドを含み、リン脂質、セラミド類、スフィンゴリピド類、コレステロールおよび、トリグリセリド類、またはたとえば植物類からのフィトステロール類などの他のリピドを含む。水性リポソーム溶液の重量に基づいて、油溶性組成物は約5%から約33%の間の量で存在し、水性リポソーム溶液の重量に基づいて、水溶性組成物は約67%から約95%の間の量で存在している。
【0024】
カップリング試薬
【0025】
本発明のリポソーム懸濁液中の油溶性組成物は少なくとも1つのカップリング試薬を含む。カップリング試薬は異なった極性の不混和相を(例えば、一過性的にまたは優先的に)可溶化するのに適した接続的な媒体を含み、リポソーム製剤またはリポソーム懸濁液の安定性を維持するのに適している。カップリング試薬は23℃で約10.5以上の誘電率を有することにより特徴付けることができ、リポソームの「一過性」または優先的な安定を容易にして、リポソームの安定性を実現し、保存するために、本発明のリポソーム製剤または懸濁液に加えられる。例えば、グリコールなどのカップリング試薬は、たとえばそれぞれ同時に疎水性の、または親水性の化合物を可溶化するために利用できる、炭化水素部位およびヒドロキシル部位を含むことができる。
【0026】
カップリング試薬はより高い温度でリン脂質と剛性エンハンサーを含む油相成分の可溶化を許容する。カップリング試薬はリポソーム溶液中のリポソーム構造の形成の間に、二重層膜成分中に移動し、冷却の際に、周囲温度条件下での親水性に起因して水相へ戻る。したがって、カップリング試薬は、リピドおよび非極性物質を含む油溶性の成分を高温で可溶化し、より低い周囲温度で極性物質を含む水溶性成分を可溶化(これらの低温条件下ではリピド可溶化の能力がないかまたは減少した能力を有する)できる「一過性可溶化剤(transient solubilizer)」として特徴付けることができる。従って、カップリング試薬は、液体化された形態である高速せん断条件のもとでユニラメラ構造に処理できる、マルチラメラまたは多胞体リポソーム構造を形成する温度相の組み合わせを含む、二重層膜形成を容易にするための温度依存性である「変化する」または一時的な機能を有する。より低い温度は、作用物質の生物活性の妥協を避けて、例えば、高いせん断/高圧装置に伴う過熱の影響を減少させる。
【0027】
カップリング試薬に対して、エタノールなどのバイリピト(bilipid)膜を溶解できる他の油溶性の溶解補助剤は、リポソームの安定性に妥協し、マイクロ流体装置(microfluidic device)をはじめとする高圧力装置を通してリポソーム溶液を処理するとき、爆発災害の危険をはらんでいる。そのうえ、約3%より大きい濃度のときに、エタノールはコロイド系の密度バランスを混乱させて、外部相の粘度を減少させ、コロイド安定性に悪影響を与え、および/または、ゲラント構造(gellant structure)の崩壊を引き起こす。
【0028】
出願人は、カップリング試薬の混合が油溶性成分の可溶化を容易にするのに役立つだけではなく、油溶性の活性成分が含まれているかどうかにかかわらず、安定性エンハンサーとして機能することを予想外にも発見した。特に、出願人は、他の組成が同じでカップリング試薬を含まないリポソーム懸濁液が、適当な安定性を達成しなかったことを見いだした。出願人は、本発明のリポソーム懸濁液中でのカップリング試薬の使用が、安定性に関して従来技術で認識されていた、有効な結果をもたらす変数ではないと信じている。適当なカップリング試薬としては、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール類、シリコーングリコール類、たとえばPEG−12ジメチルポリシロキサン、並びに類似物、誘導体、およびそれらの混合物があげられる。本発明における使用のためのカップリング試薬はリポソーム懸濁液の重量に基づいて合計量として約1%から約10%まで、より好ましくはリポソーム懸濁液の重量に基づいて約3%から約8%までの量で存在することができる。一般に、1つ又は複数のカップリング試薬の濃度は、リポソーム溶液における、リン脂質の総濃度と等しいか、またはそれ以上であるべきである。10−15%の間の濃度でのカップリング試薬の使用は、活性成分のわずかに大きな可溶化を許容し、特により高いリン脂質濃度(例えば、1.5倍)を使用するときそうである。しかしながら、10%より大きなカップリング試薬濃度は転相を引き起こすことができると信じられており、このとき油相が外部の連続相として存在し、その結果リポソームのマイクロカプセル化を防ぐ。これらの条件で、水はリピド溶液から油中水型エマルションと一致した方法ではじかれる。目視により顕微鏡の下でこれを観測できるか、またはヒドロニウムイオン遮蔽のため正確にペーハーを測定することの不可能性によって推論される。あるいはまた、油相成分だけではなく、水溶性組成物中の活性成分も可溶化する必要がある場合には、リン脂質濃度を超えてカップリング試薬を使用できる。
【0029】
リン脂質類
【0030】
本発明のリポソーム懸濁液の中の油溶性組成物は少なくとも1つのリン脂質またはりん脂質混合物を含む。リン脂質の例としては、飽和および/または不飽和の脂肪アシル部位を含むグリセロリン脂質があげられ、たとえばホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、N−アシルホスファチジルエタノールアミン、リゾリン脂質、およびカルジオリピン類;スフィンゴミエリン;プラスマロゲン類;それらの水素された、部分的に水素化された、または水素化されていない誘導体;それらの類似物;およびそれらの混合物があげられる。
【0031】
リン脂質(例えば、リゾレシチン類)からホスホリパーゼAでアシルラジカルを分裂させるとリゾリン脂質が得られる。1,3−ビスフォスファチジルグリセロールなどのカルジオリピン類は、グリセロールを通して結合された2つのホスファチジン酸から構成されるリン脂質である。スフィンゴミエリン類は一種のスフィンゴリピドであり、ホスホリルコリンとセラミドから典型的に構成される。プラスマロゲン類は、グリセロールの第一の炭素がエーテル結合されたアルケンを有し、第二の炭素が典型的にはエステル結合された脂肪酸を有し、第三の炭素は典型的にはコリンまたはエタノールアミンのようなリン脂質頭部基を有するエーテルリピドである。
【0032】
りん脂質混合物の例としては、クルードレシチンを含むレシチン類があげられ、これらはデオイル(deoiled)され、分画され、スプレー乾燥され、アセチル化され、加水分解され、ヒドロキシル化され、水素化され、および/またはホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、またはそれらの組み合わせが富化されることができる。レシチン類およびレシチン混合物は商業的に利用可能である。いくつかの実施態様では、大豆から得られたホスファチジルコリン富化製剤などのような天然由来のレシチン(大豆/卵)を使用できる。
【0033】
市販の大豆/卵レシチン製剤およびリン脂質濃縮物としては、商品名、PhospholiponR(登録商標)90G、Phospholipon(登録商標)90H、Phospholipon(登録商標)85G、Phospholipon(登録商標)80H、Phospholipon(登録商標)80、Phosal(登録商標)50SA、Phosal(登録商標)53MCT、およびPhosal(登録商標) 75SA(American Lecithin Company, Oxford Conn.から利用可能である);Lipoid(登録商標)S75、Lipoid(登録商標)S100、Lipoid(登録商標)SPC、およびLipoid(登録商標)SL80(Lipoid GmbH, Ludwigshafen ドイツから利用可能である);Epikuron(登録商標)125F、Epikuron(登録商標)135F、Epikuron(登録商標)130P、Epikuron(登録商標)130G、Epikuron(登録商標)100H、Epikuron(登録商標)145V、Epikuron(登録商標)170、Epikuron(登録商標)200SH、Epikuron(登録商標)200、Emulmetik(登録商標)950、Emulmetik(登録商標)900、Emulmetik(登録商標)300、Emulfluid(登録商標)F30(Emulfluid、Lipotin、ネブラスカ州)、Lipotin(登録商標)100、Lipotin(登録商標)SB、Lipotin(登録商標)100J、Lipotin(登録商標)H、Lipotin(登録商標)NA、Lipotin(登録商標)AH、およびLipopur(登録商標)(Degussa Texturant Systems UK Ltd.から利用可能である);Terradrill(登録商標)V408およびTerradrill(登録商標)V1075(Cognisから利用可能である);Yellowthin(登録商標)100、Yellowthin(登録商標)200、Lecistar Sun(登録商標)100、およびYellowthin Sun(登録商標)200(Sternchemieから利用可能である);Lecinol S−10(水素化レシチン)(Bernett Industriesから利用可能である);LipoH(20%のホスファチジルコリンを含む水素化されたダイズレシチン)(Lucas Meyer Cosmetics, South Plainfield, NJから利用可能である);およびLanchem(登録商標)PE−130K(Lambent Technologies, Gurnee, Ill から利用可能である)があげられる。
【0034】
本発明における使用のためのリン脂質は、凍結乾燥の前または外部相組成物の添加前において、水性リポソーム溶液の重量に基づいて合計で約1%から約10%で、より好ましくはリポソーム溶液の重量に基づいて約3%から約8%までの量で存在することができる。さらに、水性のリポソーム溶液は好ましく水:脂質をその比で3:1からおよそ9:1の間で含む。
【0035】
1つの実施態様では、油溶性組成物はリン脂質製剤、またはその混合物は、組成物の重量に基づいて少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%のホスファチジルコリンを含む。別の実施態様では、油溶性組成物はりん脂質混合物の重量に基づいて約80%から約95%の間の量のホスファチジルコリンを含むりん脂質混合物を含む。さらに上記のりん脂質混合物は、重量基準でリポソーム懸濁液の約1%から約10%、好ましくは約3%から約8%を構成する。15%より上の濃度でのリン脂質の使用は、カプセル化されたリポソームの代わりに油中水型エマルションをもたらす転相を引き起こすと信じられている。
【0036】
剛性エンハンサー
【0037】
本発明のリポソーム懸濁液の中の油溶性組成物は少なくとも1種の剛性エンハンサーを含む。一つまたは複数の剛性エンハンサーとしては、少なくとも1つのスフィンゴリピド、セラミド、ステロール、またはそれらの組み合わせを含む。これらは脂肪酸鎖の、脂質二重層に埋め込まれた際の動きまたは流動性を抑えて、脂質二重層のパッキングを促進するために機能する。増加する剛性は小胞の破壊と漏れを抑えることができ、粒子の間の引力を抑圧するために、膜内のゼータ電位または電荷をシフトさせることができる。一つまたは複数の剛性エンハンサーは、リポソーム粒子中で電荷またはゼータ電位を安定させるのを助けると信じられている。
【0038】
スフィンゴリピド類は皮膚の障壁機能を維持するのにかかわる主要な表皮脂質を表す。一般に、たとえばスフィンゴシン、スフィンガニン、スフィンゴミエリン、およびフィトスフィンゴシンなどのスフィンゴリピド類は、中心群または「バックボーン」として長いスフィンゴイド塩基を含み、アミド結合された長鎖脂肪酸と頭部基を含む。異なった頭部基、異なった脂肪酸およびスフィンゴイド塩基を有する何百種類ものスフィンゴリピド(例えば、コリンフォスフェート、グルコース、ガラクトース、多糖)が知られている。フィトスフィンゴシンはセラミド前駆体であり、健康な角質層内で濃縮されており、皮膚の中の酵素によってスフィンゴリピドに変換される。
【0039】
セラミド類はスフィンゴリピドのファミリーを構成し、非常に不溶性であって、配合が難しい。外部より投与されたセラミドは、透過性障壁のリピドラメラに達するように角質層を透過できなければならない。皮膚乾燥の原因の1つが細胞間脂質ラメラ中のセラミドの量の低下であると信じられている。したがって、本発明のリポソーム懸濁液を使用して局所投与を行い、これらの枯渇したリピドを置き換えることが望ましい。本発明のリポソーム懸濁液はセラミドの送達に有用な手段を提供する。
【0040】
セラミドは、そこから天然に存在するセラミド、合成セラミド、グリコシルセラミド、またはそれらの誘導体であるかことができる。動物、植物、または微生物から天然に存在セラミドを得ることができる。皮膚中のセラミドはタイプI、II、III、IV、V、VIa、およびVIb(または、1、2、3、4、5、6a、および6b)として分類された6つの、クロマトグラフ的に異なったフラクションまたはファミリーで主として構成される。合成(またはハイブリッド)のセラミドは、セラミド様のスフィンゴリピドであり、天然に存在するセラミド中で見つけられたものと異なるN−アシル基を有する。例えば、セラミドは飽和度と鎖長で互いに区別できる。セラミド誘導体としては、例えば、一つまたは複数の飽和または不飽和の脂肪酸による誘導体、またはリン酸化または硫酸化により変成されたものがあげられる。
【0041】
タイプ3のセラミドは一般名N−アシルフィトスフィンゴシンによって特徴付けられるフィトスフィンゴシンバックボーンを持っている、異なった分子類の混合物で構成され、アシル基は飽和しており、14から30個の鎖長の炭素を有する。1つの実施態様では、セラミドはセラミドまたはモノ不飽和脂肪酸によって誘導されたフィトスフィンゴスフィン、たとえばN−オレイルフィトスフィンゴスシン(セラミド3B)であることができる。さらなるセラミドはランバーらの米国特許第5,693,677および6,001,375に開示される。その開示は本明細書に参考として援用される。
【0042】
本発明における使用のためのセラミドは、リポソーム懸濁液の重量に基づいて合計で約0.01%から約1.00%まで、より好ましくは約0.025%から約0.20%までの量で存在することができる。
【0043】
本発明における使用のためのステロールは、追加のクラスの剛性エンハンサーを表し、コレステロール類、フィトステロール類、および有機酸誘導体類、および/またはそれらの塩があげられる。フィトステロール類は、ステロール骨格を備える植物由来の脂質である。フィトステロール類は、皮膚の中の皮層細胞の代謝サイクルに同期することができて、リポソームまたは他の膜構造中の二重層膜構造を有する隔壁の強度を高めることができる。
【0044】
本発明は4−デスメチルステロール類、4−モノメチルステロール類、および4,4−ジメチルステロール類を含むフィトステロールカテゴリの任意のメンバーを利用できる。フィトステロールの例としては、はシトステロール、ベータシトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、カリノステロール、クリオナステロール、ブラシカステロールン、α−スピナステロール、Δ5アベンナステロール、ルペノール、ダンコステロール、デスモステロール、およびポリフェラステロールがあげられる。
【0045】
ステロールの非限定的な例としてはさらに、コレステロール、コレステロール有機酸誘導体、たとえばコレステロールヘミこはく酸、フィトコレステロール、ビサボロール、ステロイドホルモン、たとえばヒドロコルチゾン、ステロール脂肪酸エステルたとえばコレステロール硫酸塩、コレステロール酪酸塩、コレステロールイソ酪酸塩、コレステロールパルミテート、コレステロールステアリン酸塩、ラノステロール酢酸塩、エルゴステロールパルミテート、およびフィトステロールノルマル酪酸塩;コレステロールグルクロニド、ラノステロールグルクロニド、7−デヒドロコレステロールグルクロニド、エルゴステロールグルクロニド、コレステロールグルコネートなどの糖エステルのステロールエステルがあげられる。
【0046】
本発明における使用のためのステロール類は、リポソーム懸濁液の重量に基づいて、合計で約0.01%から約1.00%まで、より好ましくはリポソーム懸濁液の重量に基づいて約0.025%から約0.20%までの量で存在することができる。
【0047】
1つの実施態様では、リポソーム懸濁液は少なくとも2種の剛性エンハンサーを含み;少なくとも1つはフィトステロールであり、他方がセラミドまたはスフィンゴシンであることができる。望ましい実施態様では、リポソーム懸濁液はセラミドIIIBおよびβ−シトステロールを含む。
【0048】
本発明における使用のための剛性エンハンサーはリポソーム懸濁液の重量に基づいて、合計で約0.02%から約1.00%、より好ましくはリポソーム懸濁液の重量に基づいて約0.05%から約0.40%までの量で存在することができる。
【0049】
出願人は予想外にも、剛性エンハンサーの使用とリポソームの安定性の間の相関を発見した。特に、出願人は、リポソームの安定性が比較的狭い濃度領域における剛性エンハンサーの添加によることを発見した。具体的には、1%を超える剛性エンハンサーの添加、またはリン脂質に対して1:4の比率を超える添加は、球体のリポソーム小胞に対して、ミクロ構造のモルホロジーをラメラシートに移行させることがわかった。例えば、100−400倍の顕微鏡観察では、リン脂質の量の25%以上の量で剛性エンハンサーを使用するとき、ラメラシート形成が確認でき、エージングによりそれはさらに大きな針状構造にさらに変換され、裸眼により観察可能であった。
【0050】
酸化防止剤
【0051】
本発明によれば、少なくとも1つの酸化防止剤がリポソーム内に組み込まれる。例えば、酸化防止剤はリポソームのリン脂質二重層に組み込まれるか、リポソーム水性センター、またはその両方に組み込まれる。一つまたは複数の酸化防止剤は、リポソームの水性センターまたはリポソームの外部の反応性酸素分子種(ROS)から結果として生じる、酸化損傷または分解からリポソームを保護するために機能できる。実際、細胞中の酸化防止剤の1つの主な作用は、ROSの機能による損傷を防止することである。反応性酸素分子種としては、過酸化水素(H)、スーパオキシドアニオン、(O)、水酸基ラジカル(OH)などのフリーラジカルがあげられる。これらの分子は、不安定であって、非常に反応性が大きく、脂質の過酸化などの化学連鎖反応で細胞を損なうことができる。
【0052】
多くの異なった方法で本発明のリポソームに酸化防止剤を組み入れることができる。1つの例では、リピド可溶性の酸化防止剤を直接、リポソームの脂質二重層に組み込むことができる。別の例では、リポソームの水性センター中に、水溶性酸化防止剤をカプセル化することができる。更なる例では、リピド可溶性の酸化防止剤が脂質二重層内に組み込まれ、水溶性酸化防止剤が脂質二重層の水性のセンター内でカプセル化される。
【0053】
別の例では、酸化防止剤は一重項酸素スキャベンジャであることができる。別の例では、酸化防止剤は水溶性の一重項酸素スキャベンジャであることができ、またはリピド可溶性の一重項酸素スキャベンジャであることができる。更なる例では、二種以上の酸化防止剤が本発明のリポソームに組み込まれることができる。
【0054】
トコフェロール(すなわち、ビタミンE)とアスコルビン酸(すなわち、ビタミンC)は、本発明のリポソームに組み込むことができる酸化防止剤の例である。適当なトコフェロール酸化防止剤としては、トコフェロール;アルファトコフェロール、ベータトコフェロール、ガンマトコフェロール、デルタトコフェロール、イプシロントコフェロール、ゼータトコフェロール、およびイータトコフェロールを含むトコールのモノメチル、ジメチル、またはトリエチル誘導体;酢酸トコフェロール、琥珀酸トコフェロール、トコフェリル安息香酸、トコフェリルプロピオン酸、トコフェリルソルベート、トコフェリルオレエート、トコフェリルオロテート、トコフェリルリノレート、トコフェリルニコチン酸塩、および2−エチル−ヘキサノエートエステルを含む、トコフェロールエステル、およびそれらの誘導体があげられる。
【0055】
抗酸化機能に加えて、アスコルビン酸(ビタミンC)とその誘導体は、コラーゲン合成を促進することがさらに知られている。本発明で有用なアスコルビン酸誘導体としては単独または組み合わせで使用されるすべてのエナンチオマーを含む。好ましくは、アスコルビン酸は左旋体で提供される。さらに、アスコルビン酸またはその誘導体は、水可溶性または油溶性の物質であることができる。
【0056】
ビタミンC(アスコルビン酸)誘導体の非制限的な例としては、アルキル部分が8から20の炭素原子を有するL−アスコルビン酸のアルキルエステル類があげられる。エステルに関しては、アスコルビン酸の脂肪酸モノ−、ジ−、トリ−またはテトラエステルから成る群から選択できる。例えばそのようなエステルとしては、アスコルビルパルミテート、アスコルビルラウレート、アスコルビルミリステート、アスコルビルステアレート、アスコルビルジパルミチテート、アスコルビルジラウレート、アスコルビルジミリステート、アスコルビルジステアレート、アスコルビルトリパルミテート、アスコルビルトリラウレート、アスコルビルトリミリステート、アスコルビルトリステアレート、テトラヘキシルデシルアスコルベート、アスコルビルテトララウレート、アスコルビルテトラミリステート、アスコルビルテトラステアレート、L−アスコルビルパルミテート、L−アスコルビルイソパルミテート、L−アスコルビルジパルミチテート、L−アスコルビルイソステアレート、L−アスコルビルジステアレート、L−アスコルビルジイソステアレート、L−アスコルビルミリステート、L−アスコルビルイソミリステート、L−アスコルビル2エチルヘキサノエート、L−アスコルビル ジ−2−エチルヘキサノエート、L−アスコルビルオレエート、L−アスコルビルジオレエート、テトラヘキシルデシルアスコルベート;L−アスコルビル−2−フォスフェートおよびL−アスコルビル−3−フォスフェートなどのL−アスコルビン酸のリン酸塩;L−アスコルビル−2−スルフェートおよびL−アスコルビル−3−スルフェートなどのL−アスコルビン酸の硫酸塩;それらのカルシウムやマグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩類;があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
塩類に関して、リン酸塩と硫酸塩から好ましく選択でき、リン酸塩が望ましい。一般に、アスコルビン酸リン酸塩は、L−アスコルビン酸 3−フォスフェート、L−アスコルビン酸 2−フォスフェート、L−アスコルビン 3−ピロリン酸塩、およびビス(L−アスコルビン酸 3,3−)リン酸塩から選択される。好ましくは、アスコルビン酸リン酸塩は、マグネシウムまたはナトリウムのアスコルビルリン酸塩である。より好ましくは、マグネシウムアスコルビルリン酸塩である。一般に、同様に、アスコルビン酸硫酸塩はL−アスコルビン酸 3−スルフェート、L−アスコルビン酸 2−スルフェート、L−アスコルビン酸 3−ピロ硫酸塩、およびビス(L−アスコルビン酸3,3−)スルフェートから選択される。
【0058】
追加の酸化防止剤としてはテトラヘキシルデシルアスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニゾール、メチルゲンチセート(methylgentisate)、L−カモシン、tert−ブチルヒドロキノン(TBHQ)、グルタチオン、それらの誘導体、組み合わせ、および混合物があげられる。1つの例では、水性センターを通して酸化損傷からリポソームを保護する性能の観点から、酸化防止剤としての使用のためにリポソームの水性センター中に水溶性L−カルノシンを組み入れることができる。
【0059】
本発明における使用のための酸化防止剤はリポソーム懸濁液の重量に基づいて、合計で約0.01%から約1.00%、より好ましくはリポソーム懸濁液の重量に基づいて約0.025%から約0.50%までの量で存在することができる。
【0060】
水溶性組成物
【0061】
水溶性組成物は、(水溶性)活性試薬の存否にかかわらず主として水から構成される。さらに、以下で薬剤について説明する。一般に、水溶性組成物はリポソーム懸濁液の重量に基づいて約10%から約65%まで、またはリポソーム製剤の重量に基づいて約67%から約95%までの範囲で存在する。
【0062】
外部相組成物
【0063】
リポソーム懸濁液中のリポソーム粒子は、外部相組成物が21℃で10秒−1のせん断速度で約2.5cP(センチポアズ)と約40,000cPの間の粘度、および/または約0.95g/ccから約1.25g/ccの間の密度を有するような量で1種以上の粘度促進物質を含む水性溶液を含む外部相組成物によって囲まれる。1種以上の粘度促進物質は、1種以上の増粘剤、ゲラント剤(gellant agents)、または両方を含むことができる。望ましい実施態様では、外部相組成物は21℃で10秒−1のせん断速度で約800cPから20,000cPの間の粘度を有する。より高い濃度のゲラント剤を使用するとき、外部相組成物の粘度は、21℃で10秒−1のせん断速度で約60,000から80,000cPに上げることができる。
【0064】
外部相組成物は、一般にその内部に分散されたリポソーム粒子の密度に近い値にマッチされた密度を有し、リポソーム粒子安定性を促進して、リポソーム粒子の移動、凝集、または塊状集積を抑えることができるのに十分な量で本発明のリポソーム懸濁液に組み入れられる。
【0065】
外部相組成物は1種以上の増粘剤、高密度化薬剤、ゲラント剤、ガムおよび他の公知の粘度増大物質を包含する粘度増大物質(viscosity promoting agent)を含む。本発明における使用のための粘度増大物質は、粘度を増加させて、本願発明のリポソーム製剤の安定性を高めるよう、経験的に選ぶことができる。好ましくは、これらの薬剤は、リポソーム懸濁液の半透明の、または、透明な性質を保持するように選ばれる。さらに、組成物は所望に応じて粘度または密度への比較的大きい影響を提供するように選択された薬剤を使用することによって調整することができる。粘度増大物質の例としては、グリセリン;様々なセルロース、たとえばヒドロキシルエチル−、ヒドロキシプロピル−、ヒドロキシメチル−、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、およびそれらの誘導体、Natrosol(登録商標)、Methocel(登録商標)、およびBermocoll(登録商標)の商品名で販売されている種々のセルロース;ライト非イオン性エマルション(light non−ionic emulsions);およびポリソルベート類があげられる。ゲラント剤および/または増粘剤の例としては、キサンタンガムをはじめとするゴムマトリツクス薬剤、およびCarbopol(登録商標)934、940、941、980、981、1342、1382、2020、2050をはじめとするCarbopol(登録商標)の商品名で販売されるジビニルグリコールまたはポリアルケニルポリエーテルで架橋されたアクリレートの高分子量ホモおよびコポリマを含むアクリル酸エステル重合体、および商品名Simulgel(登録商標)で販売される種々のヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウレートコポリマーがあげられる。
【0066】
外部相組成物はニュートニアンまたは非ニュートニアン流動特性を持つことができる。1つの実施態様では、1種以上の粘度増大物質はニュートン流動特性を有する水溶液、たとえばグリセリンを含む。グリセロールをはじめとするニュートン流体の粘度は、流体に加えられた特定の回転速度におけるせん断速度に非依存性である。ニュートン流動特性を備えた外部相組成物は、約500cPから約10,000cP、または約800cPから約2,000の粘度を有することができる。
【0067】
別の実施態様では、1種以上の粘度増大物質は、非ニュートニアン流動特性を与えるポリマー性ゲラント剤のような薬剤を約0.10%から約1.0%の間の濃度で含むことができる。非ニュートン流体の例としては、たとえばポリマー性ゲラント剤または増粘剤があげられ、せん断速度の関数として減少した粘度を示す。しかしながら、グリセリンなどのニュートン流体と比べて、ポリマー性ゲラント剤は、低濃度で非ニュートニアン流動特性を与えることができて、温度に比較的影響を受けない見かけの粘度を提供することができる。
【0068】
非ニュートン流体の粘度は、せん断および時間に依存性であると分類できる。したがって、非ニュートン流体はせん断により、低粘度化され、または高粘度化されることができる。さらに、みかけ粘度の減少は、時間非依存性(偽可塑性)または時間依存性(チキソトロピー)であることができる。望ましい非ニュートニアンの実施態様では、流体はCarbopol(登録商標)ポリマーの偽可塑性、せん断低粘度化特性を有する。
【0069】
10秒−1の比較的低いせん断速度では、非ニュートニアン流動特性を与えるゲラント剤または増粘剤を含む外部相組成物の粘度は、21℃で約500から約80,000cPの間、約800cPから40,000cPの間、または約2,000cPから20,000cPの間で変化することができる。Carbopol(登録商標)ポリマーなどのようなゲラント剤を使用する実施態様では、21℃での外部相組成物の粘度は0.1秒−1で約284,000cP、1秒−1で約60,000cP、10秒−1で約11,200cP、20秒−1で約6,852cPである。キサンタンゴムなどの増粘剤を使用するときの別の実施態様では、21℃での外部相組成物の粘度は0.1秒−1で約110,000cP、1秒−1で約18,670cP、10秒−1で約2,341cP、20秒−1で約1,272cPである。
【0070】
ブルックフィールドSyncho−Lectric Model RVT Viscometer、Haake Rotovisco Model RV−12 Viscometer、または他の適当な粘度計(または、TA Instruments AR−1000Nなどのレオメータ)をはじめとする、ニュートン流体の測定粘度に適当な公知の粘度計、または所定の回転速度での低剪断速度でのASTM D1084−88、ASTM D1824−87、D2196−86、および他の粘度測定に関するASTMプロトコールでのニュートニアン流体のみかけ粘度測定に適当な公知の粘度計を使用することで粘度測定をすることができる。
【0071】
リポソーム懸濁液を形成する際に、リポソーム粒子含有リポソーム溶液に外部相組成物を加えることができるか、またはリポソーム溶液から調製されたリポソーム粒子の凍結乾燥された製剤にそれを加えることができる。理論的な内包化される体積データに基づいて、リポソーム懸濁液に対するリポソーム粒子の重量パーセントは約0.96%から約54%の間の範囲であることができる。
【0072】
リポソーム溶液に追加される時、リポソーム懸濁液の重量に基づいて外部相組成物は約30%から約75%の間の量で存在することができ、またリポソーム懸濁液の重量に基づいて約55%から約70%、リポソーム懸濁液の重量に基づいて約65%から約70%、またはリポソーム懸濁液の重量に基づいて約65%で存在することができる。さらに、リポソーム溶液対外部相組成物の重量比は約0.002〜約0.54まで及ぶことができる。望ましい実施態様では、リポソーム懸濁液はリポソーム溶液に追加される時に約35%から約75%のグリセリン、より望ましくは約50%から約65%のグリセリンを含む。外部相に中和されたCarbopol(登録商標)をはじめとする一つまたは複数のゲラント剤が使用される場合、一つまたは複数のゲラント剤の量はリポソーム懸濁液の約1.0%を超えるべきでなく、またリポソーム懸濁液の視覚的な清澄度/透明性/半透明性を減少させることができる。一般に、リポソーム製剤は、不安定性を減少させるために製剤後24時間以内に外部相組成物で希釈されるべきである。
【0073】
リポソーム懸濁液の屈折率は約1.3〜約1.45の範囲内であることができる。一例として、外部相組成物にグリセリンなどのニュートン流体を含むリポソーム懸濁液の屈折率は、典型的には約1.40から約1.45であり、ガムまたはゲラント剤を使用する非ニュートン流体を使用する場合には約1.35から1.40であり、キサンタンガム混合物の場合には約1.39から約1.40であり、ポリマーCarbopols(登録商標)を含む外部相組成物では約1.37である。
【0074】
外部相組成物はさらに1種以上の保存剤、pH調節剤、および/または水を含むことができる。保存剤の非限定的な例としては、フェノキシエタノール、クロルフェネシン、メチルイソチアゾリノン、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、エタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、およびイソブチルパラベンがあげられる。商業的に適当な保存剤としては商品名Microcare(登録商標)MTC(プロピレングリコール、クロルフェネシン、およびメチルイソチアゾリノン)で販売されるもの、およびPhenonip(登録商標)XB(フェノキシエタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、エチルパラベン)で販売されるものがあげられる。pH調節剤の例としては、L−アルギニンおよびトリエタノールアミンがあげられる。
【0075】
出願人は予想外にも、ジナトリウムEDTAのようなキレート剤を含む従来の保存剤が、リポソーム懸濁液の安定性に悪影響を与え、安息香酸ナトリウム、およびクエン酸、ソルビン酸、安息香酸、およびイソプロピルメチルフェノールをはじめとする様々な酸は、0.01%以上の濃度でリポソーム小胞を破裂することができることを見いだした。二重層/小胞性の破裂(およびコロイド系の引き続く不安定化)の現象は、先に説明したように、リポソーム溶液へのクエン酸の添加のときに瞬時に起こる視覚的な混濁によって確認された。そのうえ、出願人は、パラオキシ安息香酸エステル類保存剤が油相への分配係数のためバイリピド膜に移行する傾向を有していることを発見した。これは安定性に悪影響を与える。さらに、パラオキシ安息香酸エステル類はエージングされるとリポソーム粒度の全体的な増大をもたらすことがわかった。出願人は、水相組成物からL−アルギニンが排除されると、本発明のリポソーム懸濁液の長期間にわたる安定性が犠牲にされることを見いだした。
【0076】
望ましくは、本発明のリポソーム懸濁液における使用のための保存剤はEDTA、安息香酸ナトリウム、クエン酸、ソルビン酸、安息香酸、およびイソプロピルメチルフェノールを含まない。望ましい実施態様では、リポソーム懸濁液はさらに、パラオキシ安息香酸エステル類を含まない。本発明のリポソーム懸濁液における使用のために望ましい保存剤としては、フェノキシエタノール単独、メチルイソチアゾリノン単独、クロルフェネシン単独、メチルイソチアゾリノンとクロルフェネシンとの組み合わせ、またはメチルイソチアゾリノン、フェノキシエタノールおよびクロルフェネシンとの組み合わせがあげられる。
【0077】
リポソーム懸濁液の重量に基づいて、保存剤は約0.01%から約5.00%まで、リポソーム懸濁液の重量に基づいて約0.01%から約2.00%まで、または約0.01%から約0.30%の量で存在することができる。L−アルギニンまたはトリエタノールアミンは、約0.001%から約0.10%の間、望ましくは約0.001%から約0.010%の間の量で存在することができる。
【0078】
活性薬
【0079】
本発明のリポソーム懸濁液はさらに本発明のリポソーム粒子の中に組み込まれた1種以上の活性薬(または、「活性薬剤」)を含むことができる。活性薬は化粧品、治療薬、または診断薬の用途の技術分野で知られている任意の活性薬を含むことができる。活性薬剤は、疎水性(すなわち、油溶性の)、または親水性(すなわち、水溶性)であることができる。リポソーム製剤の過程の間、「パッシブローディング(passive loading)」を通して水溶性活性薬剤を組み込むことができる。乾燥リピドの水和に使用されるバッファ中に親水性の活性薬剤をあらかじめ溶解することによって、これを達成できる。その後、ブランクのバッファに対して透析するか、またはSephadex(登録商標)ゲルカラムに分散体を通すことによって、すべての組み込まれていない分子を除去することができる。ほとんどの化粧品とパーソナルケア製品に関しては、組み込まれていない分子の除去は、そのような処理にともなう高コスト、および化粧品分子がそれらが使用される量において無毒性であるため、重要だとは考えられていない。
【0080】
親水性の活性薬剤がリポソームのコア中にトラップされるのに対して、疎水性化合物は脂質二重層の疎水性領域で通常トラップされる。このタイプの内包化は疎水性化合物が適当な一つまたは複数の溶解剤中にリピドとともに溶解される分配の形式を含む。例えば、化合物がブチレングリコール、エトキシグリコール、エタノール、メタノール、クロロホルム、トルエン、エーテル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール200とポリエチレングリコール300をはじめとするポリエチレングリコールまたは中鎖トリグリセリドに可溶性であるなら、それは溶媒中にリピドと共に溶解されることができる。エタノールおよびメタノールなどの他の溶媒もリピドおよび油溶性活性薬剤の可溶化に使用できるが、外部相組成物の添加の前に抽出によりそれらを取り除くべきである。例えば、出願人は、3%より大きな濃度におけるエタノール、メタノール、クロロホルム、トルエン、またはエーテルなどの溶媒が、ゲルの崩壊、密度バランスの破壊、または外部相の粘度の減少を引き起こす場合があり、その結果、リポソーム懸濁液の安定性を減少させることがあることを見いだした。
【0081】
一例として、さまざまな皮膚湿潤剤、バリアエンハンサー、必須脂肪酸、およびビタミンが、本発明のリポソームに組み込まれているか、またはともに含まれることができる。これらの要素は、湿分を保ち、皮膚への損傷を予防することによって皮膚の障壁機能をさらにサポートする。皮膚湿潤剤の例としてはグリセリン、ヒアルロン酸ナトリウム、パンテノール、およびアミノ酸類があげられる。
【0082】
バリアエンハンサーとしては、様々な皮膚脂質があげられ、これらは健常な皮膚障壁機能をサポートして、維持するのを助ける。皮膚バリア機能は皮膚の水に対する不透過性バリア、より詳しく述べると角質層の水の保持機能によって特徴付けられる。角質層の細胞間げきのリピドラメラ構造は角質層の水の保持特性に重要であると考えられている。
【0083】
バリア機能の維持に貢献する皮膚脂質の例としては、上記のリポソーム類中の油相組成物に含まれたリピドがあげられ、リン脂質、スフィンゴリピド類、コレステロール類、およびフィトステロール類を含み、皮膚のバリア機能を維持して、高めるとともに重要な角質層脂質を補給するのに利用できる。
【0084】
さらなるバリアエンハンサーとしては、加水分解大豆タンパクおよび大豆蛋白質抽出物があげられる。大豆蛋白質抽出物は、一般的に紫外線、乾燥、および環境ストレスに対応して皮膚にリリースされる、真皮でエラスチン繊維を破壊する酵素(すなわち、エラスターゼ)の活動を禁止することが知られている。加水分解された大豆蛋白質抽出物による皮膚の処理は、皮膚に湿気を与え、弾性の、堅くて、平滑で、柔らかい状態にあることを保つのを助ける。加水分解された大豆蛋白質は、コラーゲンとエラスチンの生産を刺激して、皮膚に堅さと弾性を提供することが知られている。
【0085】
さらなるバリアエンハンサー成分としては必須脂肪酸とビタミンがあげられる。本発明の組成物で有用なそのような必須脂肪酸の非限定的な例としては、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸、コルンビン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、エイコサペンタエン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびそれらの混合物があげられる。上記に記載されていたものなどの当業者に知られている他の必須脂肪酸も、本発明の組成物において有用であると意図される。
【0086】
種々のソースから必須脂肪酸を得ることができる。例えば、必須脂肪酸を疎水性の植物抽出物から得られた1種以上の油からリポソーム懸濁液に提供できる。この点で有用な油の例としては、様々な野菜または植物油があげられ、アマニ油、麻実油、綿実油、カボチャ種子油、コーン油、カノーラ油、亜麻仁油、ローズマリー油、大豆油、麦芽油、オリーブ油、グレープシードオイル、シーバックソーン種油、ルリチシャ油、マカデミアナッツ油、マツヨイグサ油、メドウフォーム種油、しそ種油;黒い干しぶどう種油、栗の油、パーム油、パパイア種油、甘草根、コーン油、グレープフルーツ種油、キウイ種油、リゴンベリー種油、パッションフルーツ種油、スイカ種油、ローズヒップ種油、サフラワ油、ヒマワリ油、ひまわり種子油、落花生油、ホホバ油、ゴマ油、けし油、野菜油、それらの混合物、およびそれらの水素化誘導体があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
代わりに、またはさらに、本発明のリポソームに、1種以上の植物抽出物、植物成分、DNA修復酵素、および/またはメチルキサンチンを加えることができる。抽出物の例としては、ローズマリー、センテラ(Centella)、エキナケア(Echinacea)、アルピニア(Alpinia)、ベアーベリー(Bearberry)、アセローラチェリー ファーメンテイト(Acerola Cherry Fermentate)をはじめとする様々な植物源、または、上で特定された油に対応する植物からの抽出物があげられる。植物抽出物、植物成分、および植物性の油の追加例は、米国特許出願番号2006/0257509および2007/0003536に記載される。その開示は本明細書に参考として援用される。
【0088】
本発明において使用する油または抽出物は、合計で、リポソーム懸濁液の重量に基づいて約0.0001%から1%まで、好ましくは約0.0003重量%から約0.003重量%までの量で存在することができる。
【0089】
DNA修復酵素の例としては、バクテリオファージT4のピリミジンの二量体特異性エンドヌクレアーゼ、ミクロコッカス−ルテウスN−グリコシラーゼ/AP リアーゼ、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)N−グリコシラーゼ/アプリンアピリミジン リアーゼ、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)UV損傷エンドヌクレアーゼ(UVDE)、クロレラのウイルスの分離株のPBCV−1のピリミジンの二量体特異性グリコシラーゼ、およびアナシストス ニダランズ フォトリアーゼ(Anacystis nidulans photolyase)があげられる。追加のDNA修復酵素は米国特許番号2006/0257509に記載されている。その開示は本明細書に参考として援用される。DNA修復酵素はリポソーム懸濁液の重量に基づいて、合計で約0.01%から約10%まで、より好ましく約0.1%から約3%の量で存在することができる。
【0090】
ビタミン類の例としては、先に説明した酸化防止剤、親脂質ビタミン類、たとえばビタミンA、遊離酸、その誘導体、またはその先駆体、レチノイド類、たとえばレチノール、レチナール、およびレチニルエステル、たとえば酢酸レチニル、レチニル酪酸、レチニルプロピオン酸、レチニルオクタン酸、レチニルラウリン酸、レチニルパルミテート、レチニルオレエート、およびレチニルリノレート;カロチノイド類;B複合体ビタミン類;たとえばB1:チアミン、B2:リボフラビン、B6:ピリドキシン、パンテノール、およびパントテン酸、ビタミンB12およびそれらの組み合わせ、ビタミンD、ビオチン、ビタミンK、それらの水溶性誘導体などがあげられる。
【0091】
カフェインなどのメチルキサンチン類の局所投与が、紫外線または太陽光への皮膚の暴露により引き起こされたDNA損傷の有害効果を減少させると信じられている。具体的には、紫外光照射の後のマウス皮膚へのカフェインの局所投与は、非悪性および悪性の皮膚腫瘍の数を減少させること(Lu ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99(19):12455−60,2002)、また光線による損傷を減少させ、DNAが損傷された角質細胞の排除を促進することが示された(Koo ら, Br. J. Dermatol.,156(5):957−64,2007)。さらに、カフェイン類似のメチルキサンチン類は、単独でまたは紫外線または太陽光のような日焼け刺激と組み合わせて、環状AMPホスホジエステラーゼの活性を妨害して、メラノサイトでのメラニンの生産を高める能力により、メラニン形成にかかわる生化学経路の活動性を調節する「太陽に関係のない」日焼け剤として作用すると信じられている。
【0092】
本発明における使用のためのメチルキサンチン類の例としては、カフェイン(1,3,7−トリメチルキサンチン)、テオフィリン(1,3−ジメチルキサンチン)、アミノフィリン、テオブロミン(3,7−ジメチルキサンチン)、パラキサンチン、イソブチルメチルキサンチン、ブチルメチルキサンチン、並びにそれらの類縁体、誘導体、およびそれらの組み合わせがあげられる。特定の実施例では、カフェインなどのメチルキサンチンは約0.01%から約0.30%の重量濃度で存在する。
【0093】
本発明のリポソーム懸濁液に含むことができる他の添加剤は、当業者には明らかであり、本発明の範囲の中に含まれる。
【0094】
スキンケアまたは化粧品では、局所投与のためのクリーム、ローション、ゲル、セラム、トニック、エマルション、ペースト、またはスプレーの形で化粧品配合物を形成するために、化粧品的に適当なマトリツクスに本発明のリポソーム懸濁液を組み入れることができる。
【0095】
リポソームを生産するための方法
【0096】
もう一つの側面では、本発明は前記の、安定な、透明又は半透明のユニラメラリポソーム懸濁液を生産するための方法を提供する。1つの実施態様では、安定な、透明又は半透明のユニラメラリポソーム懸濁液を生産するための方法は、(a)カップリング試薬、少なくとも1つのリン脂質、剛性エンハンサー、および酸化防止剤を含む油溶性組成物を調製すること、(b)水溶性組成物を調製すること、(c)水溶性組成物を油溶性組成物と混合し、マルチラメラ、多胞体リポソーム製剤を形成すること、(d)マルチラメラ、多胞体リポソーム製剤をユニラメラリポソーム製剤に変換すること、および(e)約0.95g/ccから約1.25g/ccの範囲の密度を有する外部相組成物にユニラメラリポソーム製剤を加えることを含む。本発明の方法は約50から約290ナノメートルの間の平均粒径を有する均一な複数のユニラメラリポソーム粒子を含むリポソーム懸濁液を通常もたらす。該リポソーム懸濁液は、1.30から1.45の範囲の屈折率を有し、褐色ガラス瓶、無色のガラス瓶、または不透明なプラスチックコンテナ中において、約4℃から約50℃において少なくとも30日間、または21℃において少なくとも180日間またはそれ以上の期間、ニートの形態で安定性を保持する。
【0097】
1つの実施態様では、バッチ組成物を形成するために、少なくとも1つのカップリング試薬、少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1つの剛性エンハンサー、および/または少なくとも1つの酸化防止剤を連続して加えることによって、油溶性組成物を調製することができる。バッチ組成物は撹拌することができ、また成分を溶解するのに十分な温度(例えば、87.8−98.9℃(190−210度F))まで加熱することができる。冷却後、油溶性の活性薬剤をはじめとする1種以上の温度感受性油溶性成分を加えることができる。次いでバッチ組成物は冷却され、水溶性組成物と組み合わせるために約23.9−29.4℃(75−85度F)の間の温度で(撹拌され)保持される。水溶性のおよび/または油溶性の活性薬剤のあるなしにかかわらず、水溶性組成物と油溶性組成物は、撹拌器(例えば、50rpmで10−15分間)で混合することができる。マルチラメラ、多胞体リポソーム粒子組成物を形成して、ついで適当な変換プロセスを使用してユニラメラリポソーム粒子組成物に変換できる。たとえば高圧力ミクロ流動化、押し出し、高速剪断、混合、超音波処理物、選択マイクロチャネルろ過または均質化処理などが利用できる。1種以上の成分を順次混合し、撹はん下で溶解し、外部相組成物の成分を加えることによって、外部相組成物を調製することができ、前記のように、リポソーム製剤に外部相組成物を加えることができる。
【0098】
たとえば植物性物質(ツボクサ抽出)などのある種の有効成分の生物活性は、約93.3℃(200度F)の温度の油溶性のバッチ組成物中の温度にさらされた後に低下するので、より低い温度条件で水溶性組成物に溶解されるか、またはさらに冷却した後にそれらは油溶性のバッチ組成物中に加え(そして溶解)することができる。
【0099】
マルチラメラ、多胞体リポソーム製剤をユニラメラリポソーム製剤に変換するのに多くの方法を使用することができる。これらの方法としては、高圧力ミクロ流動化、押し出し、高速剪断、混合、超音波処理物、選択マイクロチャネルろ過または均質化処理などが利用できる。
【0100】
ミクロ流動化はユニラメラリポソーム製剤を作り出すための望ましい方法を提供し、特に大量にリポソーム製剤を作り出す能力が考慮される時に好ましい。ミクロ流動化は直径が1−5クミロンのマイクロチャネルを通して超高圧(10,000〜20,000psi)で分散体をポンプで送るマイクロフルイダイザー中に、スラリー様の濃厚リピド/水分散体を導入することを含む。液滴サイズ減少とエネルギー入力を向上するために、マイクロチャネルは互いに分けられ、また衝突される。非常に速い速度での流体は、2つの画定されたマイクロチャネルを通ることを強制され、2つの流れに分けられる。マイクロ流動化装置の部屋の小さいオリフィスを通る液体のエントリーの際の急激な圧力差により、大きなキャビテーションが起こる。公知の均質化処理でも同様の圧力差が得られる。そして、2つの流れは非常に速い速度で直角に一緒に衝突させられる。大きな圧力差と高い速度によって付与された物凄いエネルギーで、リピドはリポソームの中に自分から集合する。端部に集められた流体は再度マイクロフルイダイザーに通され、均一に見える分散体で、ユニモーダルの、均一な粒度分布を得るまで、1から4回通すことができる。本発明によるリポソーム製剤を作るための適当なマイクロ流体装置としては、Micofluidics Models M110Y、およびM210EH(マイクロフルイディクス社、ニュートン、MA)があげられる。
【0101】
あるいはまた、水中のリン脂質を超音波処理することによって、本発明のユニラメラリポソームを作成できる。低剪断速度はマルチラメラリポソームを作成する。マルチラメラリポソームは、たまねぎのような多くの層を有する。連続した高速せん断超音波処理物は、より小さいユニラメラリポソームを形成する傾向がある。
【0102】
更なる態様は、本発明は、本発明のリポソーム懸濁液を、化粧品的に適当なマトリツクスと組み合わせることにより、クリーム、ローション、ゲル、セラム、トニック、エマルション、ペースト、またはスプレーの形での化粧品配合物を形成する、化粧品配合物を調製するための方法を含む。
【0103】
透過電子顕微鏡法(TEM)はリポソームのサイズ、完全性、および安定性を特徴付ける手段を提供する。試料調製法の一般的に使用される方法では、1:5に希釈された1滴のリポソーム懸濁液をプラスチックでコーティングされた格子に塗布し、りんタングステン酸またはモリブデン酸アンモニウムでネガティブに材料を染色し、それによりネガティブ染色中に置かれたリポソームの単層を作成する。
【0104】
より詳しく述べると、TEM解析のために以下のようにサンプルを調製することができる:1%の水性アガロース(w/v)がプラスチック製のペトリ皿に注がれ、室温で10分間、風乾される。グロー放電によりフォームバー(Formvar)またはコロジオン被覆格子を親水性にし、ワットマンNo.1濾紙上に格子を置く。サンプルの懸濁物の1滴が、各格子に置かれる。格子の周囲で濾紙により液体の大部分を吸収したら、アガロースプレートに格子を移し、塩と液体のアガロース中への容易な拡散のために30分から1時間保持する。
【0105】
染色されていない格子が、ESIを有するツアイス−902を使用して観察され、写真を撮られた。典型的には、リポソームは離散した丸い構造物として見られ、顕著な集塊に関する証拠は見られない。
【0106】
リポソームの粒度と安定性は、例えば貯蔵前または褐色ガラス瓶、無色ガラス瓶もしくは不透明なプラスチックコンテナの中に、1から12カ月貯蔵後、またはそれ以降に、水溶液またはクリーム製剤の両方におけるリポソームのサイズと構造を評価することによって行える。リポソームの粒度と安定性は、適当なレーザ光散乱(例えば、Nanotrac(登録商標)またはMicrotrac(登録商標))、多重光散乱、速度論的安定性アナライザー(Turbiscan(登録商標)、TLab Expert)、および/または透過電子顕微鏡装置、並びに当業者に公知の方法論を使用することで評価できる。
【0107】
1つの態様では、粒度定量化にレーザ光散乱を使用できる。例えば、Nanotrac(登録商標)は「制御されたリファレンス」の動的光散乱法アプローチを利用する。それは、サファイアフィルタの窓を通して780ナノメートル波長のレーザダイオード光を使用し、希釈されたサンプル分散媒に照射する。レーザ光(シフトした周波数の散乱パターンはサファイア窓を通して反射され、光スプリッタに入り、光検知器によって受け取られる。散乱光のシフトされた周波数は、サファイアフィルタで反射された「制御されたリファレンス」(既知のシフトされていない周波数)と組み合わされ、ブラウン運動を行う懸濁されたサンプル粒子の速度と関連づけられる。レーザは、「ドップラー効果」により周波数がシフトし、これは対象粒子の速度分布に比例している。検出器出力信号は、次に増幅され、フィルターされ、デジタル化され、数学的に分析されて粒度分布が定量化される。
【0108】
安定したリポソーム系は、低温または高温に暴露されてエージングされた時に、均一なユニモーダル型の粒度分布を示す。トラップされた成分とフルスケールのクリーミングの破裂またはミクロ構造/コロイド系全体の沈降につながる粒子の合体または凝集が起こった時に、バイモーダルまたはトリモーダル分布が生ずる。本発明のリポソーム懸濁液は、褐色ガラス瓶、無色ガラス瓶もしくは不透明なプラスチックコンテナの中で、約4℃から約50℃で、少なくとも30日間、少なくとも約2カ月、少なくとも約3カ月、少なくとも約6カ月、少なくとも約19カ月またはそれ以上の期間、ニートの形態で安定性を保持できる。以下の図5に示されるように、本発明のリポソーム製剤は少なくとも19カ月周囲の室温条件のもとでそれらの安定性とユニモーダル粒子分布を保持し、該ユニモーダル粒子分布は約157ナノメートルの平均粒径と約54ナノメートルから約521ナノメートルの間の粒径範囲によって特徴付けられる。
【0109】
タービスカン促進動態学的安定性分析器(Turbiscan Accelerated Kinetic Stability Analyzer)は、コロイド系の不安定性の迅速な予測のための、トレース可能な、定量的な方法を提供する。タービスカン分析器は、外観が透明ないし不透明なコロイド系について、サンプルの深さの関数として、透過光および後方散乱光の強度を検出するのに多重光散乱を使う。タービスカン分析器はサンプルで満たされた小さい(1cmx8cm)筒状のガラスセルの深さ方向を通してフォトンを照射する近赤外線レーザダイオードから成る。散乱パターンのサンプルからの光のフォトン(l)は、透過光(透明物について)と後方散乱光(不透明物について)が同時に検知される。後方散乱光と透過光の比率は、ユーザによって定義された時間間隔において「指紋」スキャンとして集められる。重ねられたデータスキャンの動態学的結果は、対象となる懸濁液、エマルションまたは泡の均一性の度合いを示している。
【0110】
本発明における「安定性」という用語に関連して、ユーザによって定義された時間間隔の関数としての後方散乱光に対する相対的変動として「後方散乱動態学的結果」を定義できる。レーザによる各時間間隔でのスキャンとともに、製品の後方散乱光の各スキャンも変化する。後方散乱光におけるこの変化はシステムの中での粒子の移動に関連する。安定したリポソーム懸濁液の中では、後方散乱光のレーザスキャンは後方散乱光の初期のスキャンに対してほとんど変化しないだろう。本発明に対して、2.0%未満の後方散乱の動態学的結果は、選択された温度条件とユーザによって定義された時間間隔の下での安定したリポソーム溶液または懸濁液を示す。本発明のリポソーム系において、後方散乱の動態学的結果は、16時間の期間にわたって25℃から50℃の間の温度にさらされると、バックスキャンの速度論的結果は約0.2から1.0%であった。コロイド系については4−8時間で不安定性の兆候を検出できる。
【0111】
投与方法
【0112】
一般に、本発明のリポソーム懸濁液は局所投与のために設計されている。一般に、少なくとも毎日、本発明の組成物を投与する。本発明の組成物の投与は任意の適当な期間の間も、続けることができる。直接組成物の総量と使用されている期間により、美容的な改良および維持、改良、回復、または修復の度合いが異なることが理解されるべきである。
【0113】
当業者によってよく理解されている方法とテクニックにより、適切な用量型を製作することができ、また適当な投与形を製造する際に追加成分を使用することができる。1つの例では、少なくとも1日に一度本発明のリポソーム懸濁液を局所に投与する。別の例では、毎日二度リポソーム懸濁液を投与する。更なる例では、毎日、3から5回配合物を投与できる。一般に、毎日投与されることができる配合物の量に限界はない。
【0114】
また、本発明は本発明のリポソーム懸濁液を局所に適用することによって皮膚を処理する方法を含む。使用に際して、少量(例えば、1〜100ml)の組成物を適当な容器または塗布器から皮膚の露出部に適用できて、必要なら、それは、手、手の指または適当な装置を使用して皮膚の上に広げられ、および/またはこすられる。
【0115】
或る実施形態では、本発明は、老化の徴候を防止し、食い止め、逆行させ、改良し、軽減し、減少させ、又は改善する方法を提供しており、この方法では、本発明の組成物は、皮膚の老化の徴候を防止し、食い止め、逆行させ、改良し、軽減し、減少させ、又は改善するのに化粧品として十分な効果が発揮される量が皮膚に局所的に使用される。老化の代表的な徴候には、限定するわけではないが、顔面の線、細かい線、しわ、目尻のしわ、くま、しみ、老人性斑点、皮膚が伸びることによる細い筋、皮膚バリア特性の劣化又はそれらの組み合わせ、がある。
【0116】
別の実施形態では、本発明は、皮膚の審美的外観を改善するための方法を提供しており、この方法では、本発明の組成物は、皮膚の審美的外観を改善するのに化粧品として十分な効果が発揮される量が皮膚に局所的に使用される。改善点は、皮膚の肉厚、伸展性、弾性、保湿力、色調、テクスチャ、輝度、つや、明度、透明度、輪郭、均一性、堅さ、張り、柔軟性、柔らかさ、感受性、毛穴の径、又はそれらの組合せに関係する。
【0117】
改善点は、更に、乾癬、湿疹、脂漏症、皮膚炎、日焼、エストロゲン平衡失調、過多色素沈着、過少色素沈着、変色、黄変、雀斑、皮膚萎縮、皮膚吹き出物、脆弱性皮膚、乾燥、ひび、たるみ、やせ、肥厚、線維形成、毛穴拡大、セルライト形成、あざ、にきび、アポトーシス、細胞分化、細胞逆分化、腫瘍誘発又は腫瘍進行の防止、ウイルス感染、真菌感染、細菌感染、クモ状静脈(毛細血管拡張症)、多毛、酒さ、掻痒、たこ、いぼ、うおのめ、又は上記の複合症状、から成る症状群により影響を受け、症状群を結果として発症し、又は症状群に起因する、健康でない皮膚の状態を改善することに関係する。
【0118】
老化の徴候又は健康でない皮膚状態は、遊離基による損傷、環境作用物質、汚染物質、食習慣、暦年齢による老化、過早老化、ホルモン性老化、光老化、又はそれらの組合せが原因である。従って、老化防止特性又は皮膚の不健康な状態を改善するために選択された本発明の組成物及び方法は、老化、損傷、遊離基の形成、又は皮膚構成要素の分解を加速又は亢進する酵素又は媒介物、限定するわけではないが、たとえばメタロプロテイナーゼ、コラゲナーゼ、エラスターゼ、ヒアルロニダーゼ及びプロテアーゼをはじめとする、酵素又は媒介物を抑制する有効成分の局所使用を利用している。有効成分は、抗酸化活性、遊離基スキャベンジ又は抗炎症活性を有し、及び/又は、それら有効成分は、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン(GAG)、又は他の細胞外基質要素の分解を抑制し、又はNF−kB信号伝達経路の調節酵素又は媒介物を抑制する。有効成分は、老化に関わる他の信号伝達経路も、それらの経路に関わる媒介物及び調整物を含め、又その組合せも、抑制する。
【0119】
皮膚の審美的又は美容的外観を改善することに加えて、本発明の局所用組成物は、皮膚の一般的な健康状態、活力、及び外観を向上するためにも局所的に使用される。例えば、本発明の組成物は、微小循環、皮膚細胞間の連通、皮膚の必須栄養素又は成分の補充、を改善し、又は皮膚細胞の代謝、増殖、倍増、交替、及び/又は、剥脱を改善するために、皮膚に用いられる。
【0120】
剥脱は、アルファ−又はベータ−ヒドロキシ酸、又は他の剥脱剤、又はそれらを組み合わせて、皮膚に局所的に塗布して使用しながら行ってもよいし、使用せずに行ってもよい。本発明の組成物に剥脱剤を使用する場合は、当該組成物には、十分な量の抗刺激又は抗炎症剤が、そのような中和剤が無い場合に剥脱剤に伴って現れると予想される刺激を中和するために、含まれる。
【0121】
上記の詳細な説明は、例示であり、何らの制限を与えるものではない。以下の実験的探索および実施例によりさらに本発明を示す。これらも何らかの制限を加えるものと理解されるべきでない。さらに、表3−6のリポソーム懸濁液は例示的な配合物である。上記の教示に従い、組成物の成分とその量を変更できる。
【0122】
実施例1
【0123】
リポソーム懸濁液の調製
【0124】
本発明によるリポソーム懸濁液を調製するための方法の例では、油溶性組成物が、スクラペウォール(scrapewall)タービンタンクPhospholipon(登録商標)85にセラミドIIIB、ベータシトステロール、およびブチレングリコールを順次加えることによって調製された。40rpmでスクラペウォール撹はんが開始され、バッチ組成物は成分を溶解するに十分な温度(87.8−98.9℃(190−210度F))まで加熱された。組成物は冷却され、バッチ温度が76.7℃(170度F)まで下がったとき、トコフェロールが加えられた。バッチ組成物は、次いで冷却されて、水可溶性組成物との相混和のために23.9−29.4℃(75−85度F)の間の温度に保持された。50rpmでスクラペウォール撹拌し、8−10lb/分の速度で、空気駆動のギアポンプを使用して、水がゆっくりと油溶性組成物に加えられた。水溶性成分と油溶性成分は10−15分間、50rpmでタービン撹拌器で混合された。得られたマルチラメラ、多胞体リポソーム粒子組成物は、80−100psiの供給圧力で、マイクロフルイダイザー(Microfluidics MHOY および M210EH)に、12,000から15,000psiで1−4回通し、ユニラメラリポソーム粒子組成物を形成した。外部相組成物は、スクラペウォールタービンタンク中で、グリセリン、メチルパラベン、アルギニン、および水を順次添加して一緒に混合し、約20分間、62.8−68.3℃(145−155度F)で撹はん(スクラペウォール30rpm;タービン300−350rpm)して成分を溶解した。60℃(140度F)に冷却して、追加の保存剤を外部相組成物に加えた。次いでさらに冷却し、マイクロ流体化されたユニラメラ粒子組成物に、外部相組成物を加え、15分間、23.9−32.2℃(75−90度F)で混合した。
【0125】
60%のグリセリンを含む得られたリポソーム懸濁液は、1.4の屈折率を有し、4℃と60℃の間の温度で少なくとも6カ月安定していた。透過電子顕微鏡(TEM)分析(図1A−1C)で配合物はさらに評価され、構造的に完全なユニラメラリポソームの生成を確認した(図1B、1C)。
【0126】
表1は、リポソーム製剤の粒度分析を示している。図1A−1Cに示されたものを2または3回マイクロフルイダイザーに通し、調製後いくつかの期間(初期、1カ月、2カ月、3カ月、および6カ月)、様々な温度貯蔵条件(4.4℃(40度F)、周囲温度、48.9℃(120度F))で貯蔵し、Nanotrac(登録商標)Submicron Particle Size Analyzer (Microtrac Inc., Montgomeryville, PA)を使用して動的レーザ光散乱で測定した。25のそれぞれの条件において、テストされた各条件化あたり3つのスキャンに基づく75の異なったテストの粒度計算(ヒストグラム)を含む。表1に示されたように、リポソーム懸濁液を含む化粧品配合物は、56ナノメートルから333ナノメートルの範囲の粒度範囲と、約140ナノメートルの平均粒径、6カ月にわたる周囲温度条件下での貯蔵性により特徴付けられる。
【0127】
【表1】

【0128】
図2は周囲温度条件下での19カ月の貯蔵期間の後の実施例1のリポソーム懸濁液の、得られたユニモーダルの粒度分布を示している。図2は約157ナノメートルの平均粒径と約54から約521ナノメートルの間の粒径範囲を示している。
【0129】
実施例2
表2は実施例1に記載された工程で作られたリポソーム懸濁液について示す。
【0130】
【表2】

【0131】
実施例3
表3は実施例1に記載された工程で作られたリポソーム懸濁液について示す。
【0132】
【表3】

【0133】
実施例4
表4は実施例1に記載された工程であって、以下に示すいくつかの変更を加えて作られたリポソーム懸濁液について示す。図3および4は周囲温度条件下での2.5月の貯蔵期間の後の、異なる保存条件での表4の2つのリポソーム懸濁液の、得られたユニモーダルの粒度分布を示している。図3のリポソーム溶液はマイクロフルイダイザーに4回通した。図4のリポソーム溶液はマイクロフルイダイザーに2回通した。図3はフェノキシエタノール、プロピレングリコール、クロルフェネシン、およびメチルイソチアゾリノンを使う、パラオキシ安息香酸エステル類を含まない懸濁液について、約87ナノメートルの平均粒径と約38から約187ナノメートルの間の粒径範囲を示している。図4はメチルパラベン、プロピルパラベンおよびエチルパラベンを含む様々なパラオキシ安息香酸エステル類と組み合わせてフェノキシエタノールを使用する懸濁液について、約141ナノメートルから約518ナノメートルの間の粒径範囲と約247ナノメートルの平均粒径を示している。図5は少なくとも19カ月周囲室温条件のもとでの、表4によるリポソーム懸濁液のユニモーダルの粒度分布の維持を示している。特に、図5は約157ナノメートルの平均粒径と約54ナノメートルと約521ナノメートルの間の粒径範囲によって特徴付けられたユニモーダルの粒度分布を示している。
【0134】
【表4】

【0135】
実施例5
表5は実施例1に記載された一般的な方法で、以下に記載するようにいくつかの成分を変えて形成されたリポソーム懸濁液について示す。図6はリポソーム溶液をマイクロフルイダイザーに2回通し、周囲温度条件下での2.5カ月の貯蔵の後の結果として起こる表5のユニモーダル粒度分布を表示する。
【0136】
【表5】

【0137】
実施例6
表6は実施例1記載された一般的な方法で、以下に記載するようにいくつかの成分を変えて形成されたリポソーム懸濁液について示す。図7は、周囲温度条件下での2.5カ月の貯蔵の後の結果として起こる表6のユニモーダル粒度分布を表示する。
【0138】
【表6】

【0139】
実施例7
【0140】
リポソームクリーム製剤
【0141】
図8は11,430倍でのリポソームクリーム製剤のTEM顕微鏡写真である。図9は30,000倍でツァイス−902電子顕微鏡を使用して取られたリポソームクリーム製剤のTEM顕微鏡写真である。リポソームは矢によって特定される。図8および9では、リポソーム懸濁液は、脱イオン水で1:5に希釈され均一になるまで混合された。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む安定したユニラメラリポソーム懸濁液;
外部相組成物中に懸濁されたリポソーム製剤であって、約50ナノメートルから約290ナノメートルの間の平均粒径を有する複数のユニラメラリポソーム粒子を含むリポソーム製剤、該リポソーム製剤は油溶性組成物と水溶性組成物から構成される水性のリポソーム溶液から形成され、該油溶性組成物はリポソーム溶液の重量に基づいて約5%から約33%の間の量で存在し、該水溶性組成物はリポソーム溶液の重量に基づいて約67%から約95%の間の量で存在し、
該油溶性組成物はカップリング試薬、少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1つの剛性エンハンサー、および酸化防止剤を含み;
該外部相組成物はリポソーム懸濁液の重量に基づいて約30%から約75%の間の量で存在し、該外部相組成物は約0.95g/ccから約1.25g/ccの間の密度を有し、21℃で10秒−1のせん断速度において約2.5cPから約40,000cPの間の粘度を有し;
該リポソーム懸濁液は約1.30から約1.45の屈折率を有し、約4℃から約50℃の温度で少なくとも30日間、または21℃の温度で少なくとも180日間の期間、ニートの形態で安定である。
【請求項2】
該カップリング試薬がブチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、およびポリエチレングリコール、並びにそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載のリポソーム懸濁液。
【請求項3】
該カップリング試薬がブチレングリコールである、請求項1に記載のリポソーム懸濁液。
【請求項4】
該少なくとも1つの剛性エンハンサーがスフィンゴリピド、フィトステロール、コレステロール、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項2に記載のリポソーム懸濁液。
【請求項5】
該剛性エンハンサーが、セラミド、スフィンゴシンおよびフィトスフィンゴシンから成る群から選ばれた少なくとも1つの成分、および少なくとも1つのフィトステロールを含む、少なくとも2つの剛性エンハンサーを含む請求項4に記載のリポソーム懸濁液。
【請求項6】
該少なくとも1つのリン脂質が異なった脂肪アシル部位を有するグリセロリン脂質またはスフィンゴミエリンを含む、請求項4に記載のリポソーム懸濁液。
【請求項7】
該少なくとも1つのリン脂質が、リン脂質製剤の重量に基づいて約80%から約95%の間に量のホスファチジルコリンを含むリン脂質製剤を含む、請求項1−6のいずれか1項記載のリポソーム懸濁液。
【請求項8】
該油溶性組成物がブチレングリコール、セラミドIIIB、β−シトステロール、およびトコフェロールを含む、特許請求の範囲1−6のいずれか1項記載のリポソーム懸濁液。
【請求項9】
該酸化防止剤が、トコフェロール、トコフェロールの誘導体、アルファトコフェロール、トコフェリル酢酸、コハク酸トコフェロール、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、テトラヘキシルデシルアスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシルトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1−6のいずれか1項記載のリポソーム懸濁液。
【請求項10】
該リポソーム懸濁液が、リポソーム懸濁液の約35%から約75%の間の量のグリセリンを含む、請求項1−6のいずれか1項記載のリポソーム懸濁液。
【請求項11】
該油溶性組成物が、レシチン製剤、ブチレングリコール、セラミドIIIB、およびβ−シトステロールを含み、リポソーム懸濁液が約1.30から約1.45の間の屈折率を有する、請求項10に記載のリポソーム懸濁液。
【請求項12】
以下を含む、請求項1に記載の安定なユニラメラリポソーム懸濁液を調製するための方法;
a. カップリング試薬、少なくとも1つのリン脂質、剛性エンハンサー、および酸化防止剤を含む油溶性組成物を調製すること、
b. 水溶性組成物を調製すること、
c. 該水溶性組成物と油溶性組成物とを組み合わせ、マルチラメラ、多胞体リポソーム製剤を形成すること、
d. 該マルチラメラ、多胞体リポソーム製剤をユニラメラリポソーム製剤に変換すること、および
e. 該ユニラメラリポソーム製剤を、約1.05g/ccから約1.25g/ccの間の密度を有し、21℃で10秒−1のせん断速度において約2.5cPから約40,000cPの間の粘度を有する外部相組成物に加え、約50ナノメートルから約290ナノメートルの間の平均粒子径を有する複数のユニラメラリポソーム粒子を含むリポソーム懸濁液を調製すること、
ここで該リポソーム懸濁液は1.30から1.45の屈折率を有し、約4℃から約50℃の温度で少なくとも30日間、または21℃の温度で少なくとも180日間の期間、ニートの形態で安定である。
【請求項13】
該カップリング試薬がブチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、およびポリエチレングリコール、並びにそれらの混合物から成る群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該カップリング試薬がブチレングリコールである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
該剛性エンハンサーがスフィンゴリピド、フィトステロール、コレステロール、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項13に記載の方法。
【請求項16】
該剛性エンハンサーが、セラミド、スフィンゴシンおよびフィトスフィンゴシンから成る群から選ばれた少なくとも1つの成分、および少なくとも1つのフィトステロールを含む、少なくとも2つの剛性エンハンサーを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該少なくとも1つのリン脂質が異なった脂肪アシル部位を有するグリセロリン脂質またはスフィンゴミエリンを含む、請求項12から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
該少なくとも1つのリン脂質が、リン脂質製剤の重量に基づいて約80%から約95%の間の量のホスファチジルコリンを含むリン脂質製剤を含む、請求項12から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
該油溶性組成物がブチレングリコール、セラミドIIIB、β−シトステロール、およびトコフェロールを含む、請求項12から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
該酸化防止剤が、トコフェロール、トコフェロールの誘導体、アルファトコフェロール、トコフェリル酢酸、コハク酸トコフェロール、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、テトラヘキシルデシルアスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシルトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項12から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
該リポソーム溶液の外部相組成物に対する重量比は、約0.002〜約0.54である。請求項12から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
該リポソーム懸濁液は、リポソーム懸濁液の約35%から約75%の間の濃度でグリセリンを含む、請求項12から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
該変換が、高圧力ミクロ流動化、押し出し、高速剪断、混合、超音波処理物、選択マイクロチャネルろ過または均質化処理を含む、請求項12から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
該ユニラメラリポソーム製剤が外部相組成物中に懸濁される前に凍結乾燥される、請求項12から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
以下を含む、請求項1に記載のリポソーム懸濁液を含む化粧品配合物を調製するための方法;
a. カップリング試薬、少なくとも1つのリン脂質、剛性エンハンサー、および酸化防止剤を含む油溶性組成物を調製すること、
b. 水溶性組成物を調製すること、
c. 該水溶性組成物と油溶性組成物とを組み合わせ、マルチラメラ、多胞体リポソーム製剤を形成すること、
d. 該マルチラメラ、多胞体リポソーム製剤をユニラメラリポソーム製剤に変換すること、および
e. 該ユニラメラリポソーム製剤を、約1.05g/ccから約1.25g/ccの間の密度を有し、21℃で10秒−1のせん断速度において約2.5cPから約40,000cPの間の粘度を有する外部相組成物に加え、約50ナノメートルから約290ナノメートルの間の平均粒子径を有する複数のユニラメラリポソーム粒子を含むリポソーム懸濁液を形成すること、
ここで該リポソーム懸濁液は約1.30から約1.45の屈折率を有し、約4℃から約50℃の温度で少なくとも30日間、または21℃の温度で少なくとも180日間の期間、ニートの形態で安定である、および
f. クリーム、ローション、ゲル、セラム、トニック、エマルション、ペースト、またはスプレーの形で化粧品配合物を形成するために化粧品的に適当なマトリツクスに該リポソーム懸濁液を組み合わせること。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−504620(P2012−504620A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530105(P2011−530105)
【出願日】平成21年9月22日(2009.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/057820
【国際公開番号】WO2010/039490
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(505416588)アクセス ビジネス グループ インターナショナル エルエルシー (14)
【氏名又は名称原語表記】ACCESS BUSINESS GROUP INTERNATIONAL LLC
【Fターム(参考)】