説明

安定なビオチン化生体分子の組成物及び方法

【課題】ビオチン化生体分子、例えば、酵素のための組成物及び方法を開示する。
【解決手段】本組成物は、ビオチン化生体分子、生体分子保護剤、バッファー、1以上の水溶性非イオン性ポリマーから選ばれたバルキング剤、及び好ましくは、最終滅菌保護剤を含む。本組成物は、水溶液として、又は好ましくは、乾燥形態で、例えば、凍結乾燥粉末ケーキとして使用されることができる。それらは、アビジン/ビオチン技術が使用されるいずれのケースにおいても利用可能性を有し、そしてトロンビン様酵素を含有する組成物として特に重要である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背 景
アビジン−ビオチンのアフィニティーに基づく技術は、1970年代に Dr. Edward Bayer と Dr. Meier Wilchekによる先駆的な研究以降、生物学及びバイオテクノロジーの多くの分野で広く利用されてきた。アビジンとビオチンの間のアフィニティー定数は、極めて高く、そしてビオチンが多種多様の生体分子に結合するときにも有意に減じられることはない。さらに、このアフィニティーは、ビオチンの誘導体化された形態が使用されるときでさえ維持され、そして生体分子の活性又は他の所望の特性における最小の又はほんの僅かな損失を伴って、生体分子をビオチンにカップリングさせるために、多くの化学物質が同定されてきた。特定の適応においては、アビジンは、その上をビオチン化生体分子を含有する溶液が通過するところの不活性材料上に固定化される。アビジンについてのビオチンのアフィニティーは、その溶液からの生体分子の分離を提供する。ビオチン−アビジン技術のレビューは、Applications of Avidin-Biotin Technology to Affinity-Based Separation, Bayer, et al., J. of Chromatography, 1990, pgs. 3-11 中に見られる。
【0002】
EP 592242 は、従来のフィブリノーゲン−ベースの接着剤とは異なりフィブリン・モノマーに基づく新規のフィブリン接着剤について記載しており、そしてフィブリノーゲンを、処置後に好ましくは除去されるトロンビン−様酵素に供することを含むものである。EP 592242 は、上記酵素の捕獲及び除去が、アビジン材料により再捕獲されることができるビオチン化バトロキソビンを使用することにより達成されることができるということを記載している。
上記及び他の応用は、ビオチン化生体分子とアビジン材料のより便利な形態から利得を得るであろう。現在、これらの材料は、ときどき、取り扱いが困難であり、不安定であることができ、凍結乾燥の如き処理において酵素活性を失うことができ、不当に吸湿性であり、そして滅菌プロセスに耐えることができないものである。
【発明の開示】
【0003】
本発明の要約
本発明に従って、ビオチン化生体分子及びビオチン/アビジン・アフィニティー技術のための新規組成物及び方法が記載される。ビオチンを含む新規組成物は:
i)ビオチン化生体分子;
ii)生体分子保護剤;
iii )所望のpHを維持するためのバッファー手段;及び
iv)水溶性非イオン性ポリマーから選ばれた1以上のバルキング剤、
を含んで成る。
【0004】
本組成物は、便利には、水溶液であり、そして好ましくは、最終滅菌の間の不安定性に対して上記組成物を保護するための剤を含む。最も好ましくは、上記組成物は、上記ビオチン化生体分子の安定な照射可能な粉末形態を提供するために凍結乾燥される。例えば、フィブリン接着剤において有用なフィブリン・モノマー材料の製造方法をも開示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、ビオチン−生体分子の新規な、安定組成物を開示する。好ましい組成物は、凍結乾燥され、そして安定であり、取扱いが容易であり、そして例えば、その組成物に対する損傷を伴わずにガンマ線照射により、最終滅菌されることができる。これは、本組成物がビオチン化生体分子であるときに特に有利である。なぜなら、それは、その活性に対する損傷を伴わずに凍結乾燥されたビオチン化生体分子を最終滅菌することができるために、ひじょうに効率的であることが発見されているからである。本凍結乾燥ビオチン−ベースの組成物は、上記アビジン−ビオチン技術が有用であるところで広い利用可能性をもつ。なぜなら、これらの組成物は、水溶性であり、低い水分取り込みをもち、低い生物負荷をもち、最終滅菌(例えば、照射される)ことができ、安定して残り、そして薬理学的に許容されるからである。これらの利点は、本明細書中に記載するような、保護剤とバルキング剤のユニークな組合せにより提供される。
【0006】
上記の新規組成物は、ビオチン化生体分子と共に、生体分子保護剤、所望のpHを維持するためのバッファー手段、及び1以上の水溶性、非イオン性ポリマー・バルキング剤を含む。好ましくは、本組成物はさらに、最終滅菌、例えば、ガンマ線照射の有害な効果に対し本組成物を保護するための剤を含む。上記生体分子は、ビオチン化形態で使用されることが予定されるいずれかの所望の酵素又はタンパク質であることができる。多くのビオチン化生体分子が、従来技術において存在し、そしてそれらの従来の生体分子の全てが本発明において同様に有用である。先に参照したEP 592242 における新規のフィブリン・モノマー・プロセスに関しては、トロンビニ−様酵素がビオチン化形態において有用である。このようなトロンビン−様酵素は、トロンビン又は、アクチン(Acutin) 、ベンザイム(Venzyme) 、アンクロッド(Ancrod) 、アスペラーゼ(Asperase) 、(B. Altrox, B. Moojeni 又はB. Maranhao 由来の)バトロキソビン(Batroxobin) 、ボトロパーゼ(Botropase) 、クロトラーゼ(Crotolase) 、フラボクソジン(Flavoxogin) 及びガボナーゼ(Gabonase) を含む。他のビオチン化生体分子の非限定的な例は、ビオチン化レクチン、抗体、マイトジェン、DNA, RNA, tRNA, rRNA断片、ヌクレオソーム、膜、膜タンパク質、糖タンパク質及び合成ペプチドを含む。
【0007】
ビオチン化生体分子のビオチン成分は、ビオチン又はそのいずれかの誘導体化形態又はアナログ、又はモノマー・アビジン、ストレプトアビジンを含むアビジン、又はビオチン結合特性をもついずれかのタンパク質についてのアフィニティーをもついずれかの分子であって、上記のものの中のいずれかの組換え形態を含むものであることができる。本願発明に使用するためのさまざまなスペーサー、連結基その他を含むさまざまなビオチン化合物が特許及び文献中に十分に記載されている。非限定的な例は、M. D. Savage, et al. (1992), Pierce Chemical Co., Avidin-Biotin Chemistry : A Handbook ; DE 3629194, U.S. 5,180,828, U.S. 4,709,037 及びU.S. 5,252,743, U.S. 4,798,795, U.S. 4,794,082, WO85/05638(これらを援用する。)中に見られる。
【0008】
新規のビオチン組成物の生体分子保護剤は、その生体分子の所望の活性を保護することができ、そしてそれによりその生体分子組成物に安定性を付与することができるいずれかの剤である。生体分子は、非限定的に、トレハロース、グリセロール、硫酸アンモニウム及びアミノ酸を含む。好ましくは、上記生体分子保護剤は、アミノ酸であり、そしてより好ましくは、そのアミノ酸は、単純な両性イオン、例えば、グリシン、アラニン及びバリンであり、グリシンが最も好ましい。
【0009】
本ビオチン組成物のバッファー手段は、所望のレベルにおいて上記組成物のpHを維持するために好適ないずれかの便利なバッファーであることができる。EP 592242 のフィブリン・モノマー・プロセスにおいては、約pH7にそのビオチン化生体分子を維持することが望ましく、それ故、ナトリウム・バルビタール、シトレート、ナトリウム・バルビタール・ホスフェート、リン酸カリウム、イミダゾール−HCl 、ピペラジン、重炭酸ナトリウム−5% CO2、トリエタノ・アミノ−HCl −NaOH、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及びリン酸ナトリウム・バッファーが有用であり、リン酸ナトリウムが好ましい。
【0010】
本ビオチン−生体分子組成物のバルキング剤は、水溶性の、非イオン性ポリマーから選ばれる。このバルキング剤は、本組成物に化学的安定性と物理的安定性の両方を提供し、例えば、それは、凍結乾燥ケーキの形態にあるとき新規組成物が崩壊することを防ぐ。この非イオン性水溶性ポリマーは、上記生体分子に対する保護をも提供する。デキストラン及び類似の多糖類は、本組成物の安定性を高めることが見い出されている。このようなバルキング剤の非限定的な例は、ギキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、加水分解デンブン及びデキストランを含む多糖類(例えば、ラクトース、グルコース、マルトース、マンニトール、等)を含み、特に、50,000と 100,000ダルトンの間の分子量をもつデキストラン(例えば、Pharmacia Co. からのDextran T−70)が好ましい。
【0011】
任意の最終滅菌保護剤は、抗酸化剤、フリー・ラジカル除去剤及び還元剤から選ばれる。好ましいのは抗酸化剤、例えば、還元型グルタチオン、α−トコフェロール、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン及びアスコルビン酸ナトリウムであり、アスコルビン酸ナトリウムが最も好ましい。
【0012】
ビオチン化分子の調製は、知られた技術により達成される。例えば、(先に討議したように、スペーサー・アーム及び/又は脱離基をもついずれかの所望のビオチン化合物であることができる)ビオチン誘導体、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド−ビオチン(NHS−ビオチン)を、溶媒中及びバッファーの存在下で、所望の生体分子、例えば、可溶性酵素バトロキソビンと反応させることができる。このNHS は、脱離基として機能して、上記のように形成されたビオチン・バトロキソビンを提供する。これは、標準的な方法論を使用して、例えば、上記ビオチン・バトロキソビンをSephadexTMクロマトグラフィー・カラム上の精製に供して、遊離のビオチン、 NHS−ビオチン及び他の低分子量溶質を除去することにより精製されることができる。
【0013】
その後、上記組成物の成分、すなわち、ビオチン化生体分子、生体分子保護剤、バッファー手段及びバルキング剤を含む水溶液が調製される。好ましくは、上記精製段階は、その最終製品中に存在することが望まれるバッファーを使用することができ、これは、水及びバルキング剤が上記ビオチン化生体分子及びバッファーに添加されて、上記水溶液を形成することを提供する。
【0014】
本発明に係る水溶液は:
0.01〜50重量%の生体分子保護剤;
1〜50重量%のバルキング剤;
特定の適用に従って選ばれた濃度におけるビオチン化生体分子;
水;及び
所望のpHを維持するために必要なバッファー、を含んで成る。
【0015】
上記溶液又は懸濁液は、上記ビオチン化生体分子の有用で、安定な形態でもあり、そしてそれ自体、本発明の一部と考えられる。無菌性が要求される場合、上記は、無菌的に調製されることができ、又は最終滅菌、例えば、ガンマ線照射が使用される予定である場合、任意の最終滅菌保護剤を含むことができる。この最終滅菌保護剤は、典型的には、約0.01%〜約10%の量で、上記水溶液中に存在する。
【0016】
上記範囲は、上記組成物1ml当り、 0.1〜約 1.0mgの酵素又は生体分子を含有する組成物について特に有用であり、そして上記組成物1ml当り5mgまでの酵素を含有する組成物にかなりの保護をも提供するであろう。好ましくは、1mg/mlを超える酵素を含有する組成物については、そして特に、5mg/mlを超えるもの含有する組成物については、各成分のパーセンテージは、酵素濃度における増加に凡そ比例するように、増加するはずである。
【0017】
好ましい本発明に係る水性組成物は、約2%の生体分子保護剤、約2%のバルキング剤、約50mMのバッファー、約0.25%の最終滅菌保護剤及び要求される濃度(好ましくは、 0.1〜0.5 mg/ml)の生体分子を含んで成る。
【0018】
最も好ましいのは、その生体分子が、溶液1ミリリッター当り約50〜200 活性単位の量で存在するバトロキソビンであるとき、その組成物は、2重量%のグリシン、(pH7を維持するための)50ミリモルのリン酸ナトリウム・バッファー、2重量%のデキストラン及び0.25重量%のアスコルビン酸ナトリウムを含む。
【0019】
本発明の好ましい態様においては、上記水溶液は、典型的にはケーキの形態にある便利な粉末組成物を提供するために凍結乾燥される。凍結乾燥技術は周知であり、そして好適な技術のいずれも使用されることができる。1の好適な凍結乾燥(lyophilization)、すなわち、凍結乾燥(freeze drying) プロセスは、−45℃へのその凍結乾燥装置の事前冷却、−40℃へのその溶液の冷凍、−25℃へのその製品の暖め、そして11時間以上にわたる保持、−43℃へのその製品の冷却、約 0.1ミリバールへの減圧(すなわち、真空)の導入、そして水蒸気の放散の停止により確認されるような乾燥が完結するまで、−43℃において減圧を維持し、30℃まで5℃/時の増分においてその温度を上昇させながら、最低の設定までその圧力を減少させ、そして少なくとも5時間にわたり30℃において、そのように処理された製品を保持することを含む。
【0020】
トロンビン又はトロンビン−様酵素、例えば、バトロキソビンのビオチン化形態を含む本発明に係る組成物は、フィブリノーゲン又はフィブリノーゲン含有組成物を、フィブリン・モノマー又はフィブリン・モノマー含有組成物に変換するために有用である。従って、本発明は、例えば、フィブリン接着剤の調製において有用なフィブリン・モノマーを調製するための新規の方法をさらに含む。この新規の方法は、本明細書中に定義するような安定な、ビオチン化トロンビン又はトロンビン様酵素組成物にフィブリノーゲン源を供してフィブリノーゲンをフィブリン・モノマーに変換させ、アビジン材料を用いてこのビオチン化酵素を“捕獲”し、そしてこのように形成されたビオチン/アビジン複合体の一部である酵素を除去することを含む。
【0021】
理想的な環境においては、アビジンのいくつかはそのアガロース(又は他の不活性な)支持体から浸出するはずであり、そして望ましくは、そのビオチン化生体分子の全てがアビジン/不活性支持体材料により捕獲されるであろうが、これは、常にそうであることはできないと理解される。その不活性支持体から浸出した遊離のアビジンは、ビオチン化生体分子(例えば、バキソトロビン)とカップリングすることができ、又はその逆であることができ、溶液からの上記酵素複合体の捕獲及び除去を可能にすることが今般発見された。従って、本組成物及び方法の信頼性は、本明細書中に記載する自己除去メドニウム(self-scavenging medonium) によりさらに高められる。
【0022】
本発明に係る組成物は、処理装置、例えば、先に定義したようなフィブリン・モノマーを調製するための自動遠心分離装置内にさらに取り込まれることができる。このビオチン化生体分子組成物は、粉末形態で上記処理装置内に事前ロードされることができ、又はその装置内でその場で凍結乾燥され、又はその装置の制御された放出区画内で凍結乾燥されることができる。
上記生体分子のビオチン化は、先に討議したように、公知のビオチン化プロセスのいずれかにより、達成されることができる。ビオチン対生体分子の比を注意深く制御することは、その生体分子の最終的に所望される性能において重要であることが発見された。例えば、EP 592242 におけるフィブリン・モノマーの製造プロセスにおいて使用されるビオチン化バトロキソビンに関しては、フィブリノーゲンをフィブリン・モノマーに効率的に変換するために十分な活性を、そのバトロキソビンが保持していることが重要である。そのフィブリン・モノマー製品からのその酵素の完全分離のために、そのビオチン化バトロキソビンがアビジン材料により容易に捕獲されることも重要である。バトロキソビンの場合には、理論的には、14のビオチン分子がその酵素に結合されることができる。本発明によって、1の組成物中のバトロキソビン分子当りのビオチン分子の平均数は、5〜12の範囲内、そして好ましくは6〜8の範囲内にあるべきであることが発見された。その平均が約5未満である場合、かなりの数のバトロキソビン分子が実際にビオチン化されておらず、不完全な酵素捕獲がもたらされると信じられる。その平均が約8を超える場合、バトロキソビン活性が減少されることも発見された。これは、他の生体分子にも同様に、特にトロンビン及びトロンビン様酵素にも適用されると信じられる。従って、ビオチン化試薬と反応することができる生体分子当り10以上の結合部位をもつ生体分子を含む組成物は、少なくとも5、そして好ましくは、6ビオチン/生体分子の平均数をもつべきである。生体分子当りのビオチンの上記の好ましい範囲は、その生体分子上の表面反応部位のいずれかが超活性である場合、又はそのビオチン化のプロセスが、例えば、その生体分子を固体表面に可逆的に結合させることにより、(ビオチン化剤)からその生体分子表面の一部の物理的保護を含む場合に、減少されることができるということは当業者に理解されるはずである。
【0023】
本発明に係るビオチン化生体分子組成物は、顕著な量の生体分子の完全性及びアビジン分子による優れた取り込みを維持しながら、凍結乾燥、最終滅菌に耐えることができる安定な組成物である。本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、本発明は、そこに記載する細目により限定されるべきではない。
【実施例】
【0024】
実施例1
0.2Mの重炭酸(炭酸水素)ナトリウム・バッファー、pH8.5 (1.6ml)中のバトロキソビン(10.75mg ; 3560単位)の溶液に、水(1.6ml)を、その後、DMSO(1ml)中にヒドロキシスクシンイミド・ビオチン(13.5mg)を含む溶液0.08mlを添加した。この混合物を、20℃で1時間撹拌し、次に、10mMリン酸ナトリウム・バッファー、pH7.0 とグリシン(1% w/v)を含む溶液中で事前に平衡化されたSephadex G-25 クロマトグラフィー媒質のカラム(直径1cm×40cm)に直接適用した。ビオチン−バトロキソビンを、 0.4ml/分の流速で上記カラムから溶出した。上記カラムから溶出されるべき最初のUV吸収ピークは、残存ビオチン化試薬及び関連分解生成物のいずれをも含んでいないことが測定された、精製されたビオチン・バトロキソビンを含んでいた。これらは、上記カラムから溶出されるべき第2のUV吸収ピーク中に存在した。この精製されたビオチン−バトロキソビンは、バトロキソビンの1モル当り 6.9モルのビオチンを含んでいた。この精製されたビオチン化バトロキソビンが、20℃で5分間、 0.2M酢酸ナトリウム・バッファー、pH4.0 中のアビジン・アガロース・ゲルの懸濁液と混合されたとき、その精製されたビオチン化バトロキソビンの>99.5%が捕獲された。
【0025】
実施例2
実施例1に記載したように調製された精製ビオチン−バトロキソビンを、10mMリン酸ナトリウム・バッファー、pH7.0 及びグリシン(1% w/v)を含む溶液で溶出させて、1ミリリッター当り 235バトロキソビン活性単位を含むビオチン−バトロキソビンの溶液を提供した。この溶液の1容量を、グリシン(3% w/v)、デキストラン(4% w/v)、アスコルビン酸(0.5% w/v)及びオルトリン酸2水素ナトリウム(90mM)を含み、水酸化ナトリウムの添加によりpH7.0 に調製された溶液1容量と混合した。このやり方で配合されたビオチン−バトロキソビンは、−20℃,4℃及び20℃で1ヶ月保存されるとき酵素活性の損失を全く示さないことが発見された。
【0026】
実施例3
実施例2に記載したように調製した配合ビオチン−バトロキソビンを、ガラス・バイアルに充填し(バイアル当り 0.3ml)、そして凍結乾燥装置内に入れた。この配合ビオチン−バトロキソビンを−40℃に冷却し、次に−25℃に暖め、そして11時間この温度に保った。この期間の終わりに、上記配合ビオチン・バトロキソビンを−43℃に冷却し、そしてその圧力を、 0.1ミリバールに減少させた。これらの条件を、主乾燥期間の全体にわたり維持し、これは22時間後に完結した。主乾燥の完結時、その圧力を0.08ミリバールに減少させ、そしてその凍結乾燥されたビオチン・バトロキソビンを、1時間当り5℃の段階的増加において30℃まで暖めた。この凍結乾燥されたビオチン−バトロキソビンを、上記凍結乾燥装置から取り出す前5時間にわたり30℃に保った。
【0027】
凍結乾燥されたビオチン・バトロキソビンの検査は、その凍結乾燥プロセスの間にバトロキソビン活性の損失が全く生じなかったことを示した。このやり方で調製されたビオチン−バトロキソビンの凍結乾燥配合物は、3ヶ月間4℃での保存後にバトロキソビン活性の損失を全く示さなかった。この凍結乾燥されたビオチン−バトロキソビンが水で再構築され、そして 0.2M酢酸ナトリウム・バッファー、pH4.0 中のアビジン・アガロース・ゲルの懸濁液と20℃で5分間混合されたとき、そのビオチン化バトロキソビンの>99.5%が捕獲された。
【0028】
実施例4
実施例3中に記載するように調製した凍結乾燥ビオチン−バトロキソビンを、滅菌照射量(25キロ・グレイ)のガンマ線照射に供した。存在する初期活性の10〜15%を構成するバトロキソビン活性の初期損失後、1ヶ月の期間にわたり、バトロキソビン活性のさらなる損失は、観察されなかった。照射されたビオチン−バトロキソビンの分解は、ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動による電気泳動分析後にも明らかでなかった。ガンマ線照射された凍結乾燥されたビオチン−バトロキソビンが水で再構築され、そして 0.2M酢酸ナトリウム・バッファー中アビジン・アガロース・ゲルの懸濁液と20℃で5分間混合されたとき、そのビオチン化バトロキソビンの>99.5%が捕獲された。
【0029】
表Iは、実施例1と実施例2の方法により調製されることができる配合ビオチン−バトロキソビン組成物のさらなる例を与える。但し、実施例1におけるカラム平衡バッファーと実施例2における配合バッファーを、表1のII,III 及びIV列内に示す最終的な配合ビオチン−バトロキソビン溶液中に、対応量のデキストラン、グリシン及びアスコルビン酸を提供するように調整した。これらの、ビオチン−バトロキソビンの配合溶液を、実施例3の方法に従って凍結乾燥させ、そして実施例4の方法に従ってガンマ線照射に供した。ガンマ線照射後に残存するバトロキソビン活性のパーセンテージを、表1のV列内に与える。本発明の実施例番号を、表IのI列に与える。
【0030】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定性及び生体分子活性を維持しながら組成物に無菌性を提供する、ビオチン化生体分子の最終滅菌方法であって、以下のステップ:
ビオチン化生体分子のための安定な組成物であって:
ビオチン化生体分子;
上記ビオチン化生体分子の所望の活性を実質的に維持することができる生体分子保護剤、ここで当該生体分子保護剤は、トレハロース、ブリセロール、硫酸アンモニウム、グリシン、アラニン、及びバリンから選ばれる;
上記組成物のpHを所望の値に維持するためのバッファー手段;
1以上の水溶性バルキング剤であって、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、デキストラン、加水分解デンプン、ラクトース、グルコース、マルトース、及びマンニトールから選ばれるもの;及び
最終滅菌の間に前記組成物及び生体分子を分解又は不安定化から保護するための剤;
を含む前記組成物を、最終滅菌プロセスに供することを含む前記方法。
【請求項2】
前記ビオチン化生体分子が、乾燥粉末形態にある、請求項に記載の方法。
【請求項3】
10以上の結合部位をもつ生体分子をビオチン化する方法であって、5〜12の間の、ビオチン対生体分子の平均値を提供することを含む前記方法。
【請求項4】
前記平均値が6〜8の間にある、請求項に記載の方法。
【請求項5】
ビオチンをアビジンにカップリングさせ、そしてビオチン化生体分子と不活性支持体上のアビジンとの複合体を形成させるために、ビオチン化生体分子を、不活性支持体材料上のアビジンに供することを含むビオチン−アビジン・アフィニティーの使用方法であって、請求項1に記載のビオチン化生体分子を使用することを含む前記方法。
【請求項6】
フィブリノーゲン含有組成物をビオチン化酵素に供してそのフィブリノーゲンをフィブリン・モノマーに変換させ;
ビオチンについてのアフィニティーをもつ材料であってその多量が不活性支持体上に固定化されているものを、上記のように形成されたフィブリン・モノマー/ビオチン化酵素混合物に導入して、上記の固定化されたアフィニティー材料と上記のビオチン化酵素の第1複合体を形成し;
複合体を形成していないビオチン化酵素と、固定化されていない少量の上記材料との間で、フィブリン・モノマー/ビオチン化酵素混合物内で第2複合体を形成し;そして
上記のように形成された第1複合体と第2複合体を上記フィブリン・モノマー組成物から除去する、
ことを含む、フィブリン・モノマーの製造方法。
【請求項7】
ビオチン−アビジン・アフィニティー機構を使用する方法であって;
ビオチン化生体分子を、アビジンであってその多量のものが不活性支持体上に固定化されているものに供して、上記ビオチン化生体分子と上記固定化されたアビジンとの間に第1複合体を形成させ;そして
上記の複合体を形成していないビオチン化生体分子と固定化されていない少量のアビジンとの間で第2複合体を形成させる、
ことを含む前記方法。

【公開番号】特開2007−295936(P2007−295936A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207925(P2007−207925)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【分割の表示】特願平9−518214の分割
【原出願日】平成8年10月24日(1996.10.24)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】