説明

官能化ポリオレフィン、複合繊維、不織布、および衛生吸収性製品の製造方法

本発明は、遊離基開始剤をその中に分配して含んでいるプロピレンポリマーおよび/またはコポリマー0.5〜25wt%(ポリオレフィンおよびモノマーの全重量を基準とする)の存在下で、ポリオレフィンをモノマーと遊離基グラフト化することによる官能化ポリオレフィンの製造方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンをモノマーと遊離基グラフト化(free radical grafting)することによる官能化ポリオレフィン(functionalised polyolefin)の製造方法、同様に官能化ポリオレフィンを含む複合繊維および不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
モノマーのポリオレフィンへのグラフト化は、技術的に知られたプロセスである。グラフト化は、一般に、有用な接着特性を有するポリオレフィンを製造するのに用いられている。
【0003】
グラフト化ポリオレフィン、およびそれらを含む混合物は、一般に、金属、ポリマーフィルム、紙、木材、ガラスの押出しコーティングに有用である。それらはまた、複合繊維の作製、ならびに熱可塑挙動、加工性、テナシティ、および/または接着性が望まれる他の用途などにおいて、多層構造の接着層として有用である。
【0004】
高められた接着および粘着特性を示す繊維は、グラフト化ポリマーと一種以上の他のポリマーとの混合物から作製され、バインダー繊維として用いられる。混合物はまた、鞘として、性能繊維の芯の上に押出し成形されて、性能繊維の接着特性を高めるであろう。これらの複合繊維においては、グラフト化ポリマーは、繊維の芯および鞘の間、および/または複合繊維および他の天然または合成繊維の間に粘着性を提供するのに用いられるであろう。複合繊維は、特に、性能繊維から調製される不織布の用途がある。これは、さもなければ、織物が容易に分離する傾向があろう。
【0005】
従来、ポリオレフィンのグラフト化は、熔融されたポリオレフィン中で、遊離基開始剤(free radical initiator)の存在下のラジカルグラフト化反応によって行われる。
【0006】
米国特許第A−4,599,385号明細書には、コポリマーをグラフト化するための方法が開示される。その際、マレイン酸または無水マレイン酸が、ポリ(プロピレン−ブテン)骨格にグラフト化される。
【0007】
米国特許第A−4,762,890号明細書には、遊離基開始剤としての過酸化物の存在下に、無水マレイン酸をポリエチレンにグラフト化するための方法が記載される。
【0008】
ポリエチレンは、熱およびせん断下で架橋を経る。架橋は、過酸化物の存在下で増大されて観察される。従来のグラフト化方法によって得られる生成物は、実質量の架橋ポリマ−物質および遊離モノマーを含む。架橋ポリマ−物質または遊離モノマーを含むグラフト化ポリオレフィンは、従来のプロセスによって得られるが、これは、多くの用途で望ましくない。
【0009】
繊維紡糸プロセスにおいては、架橋ポリマー物質は、繊維の破断を引起す。架橋ポリマー物質を紡糸ラインにおいて除去するためには、用いられるフィルターは、頻繁に交換されなければならない。繊維紡糸プロセスの生産性および紡糸速度は、したがって、かなり減少される。同時に、ポリマー中の遊離モノマー0.1wt%超の量は、繊維の破断、煙霧の生成、および過重な維持作業の原因である。
【0010】
米国特許第A−6,331,595号明細書には、過酸化物の存在下にモノマーをポリオレフィンにグラフト化することによって得られる生成物中の架橋画分(cross-linked fraction)を低減するための方法が記載される。該方法によれば、過酸化物は、キャリヤポリマーに被覆されて導入される。
【0011】
米国特許第A−4,612,155号明細書の目的は、モノマーをポリオレフィンにグラフト化する際に、均一な生成物を得ることである。それには、モノマーを、第二のポリマーの存在下に、エチレンのホモポリマーまたはエチレンおよびC4〜C10のより高級なアルファ−オレフィンのコポリマーにグラフト化するための連続プロセスが開示される。第二のポリマーは、広範囲のポリマーから選択される。
【0012】
既知のプロセスによって得られる生成物のグラフト化レベルは、多くの用途で不十分である。繊維用途においては、例えば、繊維の芯および繊維の鞘の間、同様に個々の繊維間の結合は十分でない。これは、特に、不織布の製造において不都合である。
【0013】
複合繊維を含む不織布物質は、米国特許第A−5,981,410号明細書に開示される。従来の不織布の性能は、しばしば、大部分の繊維がいかなる他の繊維にも結合されないことから不十分であるか、さもなければ他の繊維を結合することによって形成された構造により、そこに保持される。これらの不織布物質は、不十分な耐磨耗性、および低い引張り強さを示すであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
先行技術の欠点を考慮すると、グラフト化して、その結果少量の架橋ポリマー物質および遊離モノマーを有する生成物を得ることによる官能化ポリオレフィンの製造方法を提供することは、依然として好都合である。
【0015】
また、グラフト化して、その結果高グラフト化レベルを有する生成物を得ることによる官能化ポリオレフィンの製造方法を提供することは、依然として望ましい。
【0016】
加えて、繊維の鞘および繊維の芯の間、同様に繊維間の接着特性を向上した複合繊維を提供すること、および高い引張り強さを有する不織布を提供することは、依然として望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明にしたがって、官能化ポリオレフィンの製造方法が提供される。この方法は、プロピレンポリマーまたはコポリマーが遊離基開始剤をその中に分配して含んでいるプロピレンポリマーおよび/またはコポリマー0.5〜25wt%(ポリオレフィンおよびモノマーの全重量を基準とする)の存在下で、ポリオレフィンをモノマーと遊離基グラフト化することによる。
【0018】
プロピレンポリマーおよび/またはコポリマー中に分配される遊離基開始剤により、グラフト化反応は、ずっとより良好に制御されるであろう。本発明にしたがって得られる官能化ポリオレフィンの架橋画分および遊離モノマー画分は、しばしば実質的に、減少され、いくつかの実施形態においては、ソックスレー抽出によって検知されない量まで減少されることが認められている。
【0019】
加えて、驚くべきことに、本発明にしたがって得られる官能化ポリオレフィンのグラフトレベルは、より従来的な方法によって得られる官能化ポリオレフィンに比較して、増大されるであろうことが認められている。
【0020】
本発明のポリマー生成物中の低減された量の架橋画分および遊離モノマー画分により、繊維の破断は、紡糸処理中に減少され、優れた繊維延伸性が達成される。
【0021】
したがって、紡糸ラインにおけるフィルターの閉塞、およびダイ圧力の増大の問題はまた、低減される。これにより、スクリーンパックを交換する前に、より長い安定運転が可能になり、スクリーンパックの交換および清浄化の面倒な処理が減少される。
【0022】
紡糸処理の向上、および紡糸装置の保全の減少により、紡糸処理の生産性は、顕著に増大される。
【0023】
グラフト化ポリマーが、二元または多元成分繊維の鞘物質として用いられる場合には、より高いグラフト化レベルにより、繊維の芯および鞘の間に、優れた結合性能がもたらされ、芯/鞘の層間剥離が減少される。加えて、個々の繊維間の結合性能は、大きく向上されるであろう。
【0024】
結果として、不織布物質の製造で用いられる場合には、粉塵の生成が減少される。加えて、不織布の製造プロセスから得られる廃棄物は、減少され、製造装置の保全が簡単化される。これは、製造プロセスの効率を向上する効果を有する。加えて、得られる不織布の引張り強さおよび耐磨耗性は、高められ、より高い品質の製品がもたらされる。
【0025】
図1および2は、本発明を用いて得られるであろう結果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を実施するに際して用いられるであろうグラフト化されるべきポリオレフィン物質の例には、エチレンホモポリマー、およびエチレンと一種以上のC4〜C10α−オレフィンとのコポリマーが含まれる。
【0027】
ポリオレフィンにグラフト化されるべきモノマーは、好ましくは、エチレン性不飽和化合物であり、この化合物は、エチレン性不飽和化合物の二重結合と共役されるカルボニル基を含む。これらの化合物の典型は、カルボン酸、無水物、エステル、およびそれらの塩(金属性および非金属性のいずれも)である。好ましくは、オレフィン性不飽和有機モノマーは、カルボニル基と共役された少なくとも一種のエチレン性不飽和によって特性付けられる。好ましいモノマーは、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、アルファ−メチルクロトン酸、および桂皮酸、ならびにそれらの無水物、エステル、および塩誘導体であり、同様にN−ビニルピロリドンである。モノマーは、最も好ましくは、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、およびグリシジルメタクリレートからなる群から選択される。しかし、ビニルシロキサンなどの他のモノマーはまた、本方法にしたがって用いられるであろう。
【0028】
本発明を実施するに際して用いられる遊離基開始剤は、好ましくは過酸化物である。有用な過酸化物の例には、芳香族ジアシルペルオキシド、脂肪族ジアシルペルオキシド、二塩基酸ペルオキシド、ケトンペルオキシド、アルキルペルオキシエステル、アルキルヒドロペルオキシド、アルキルおよびジアルキルペルオキシドが含まれる。例えば、ジアセチルペルオキシド、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、または2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルぺルオキシ)ヘキシン−3などである。
【0029】
好ましくは、本発明を実施するに際して用いられるプロピレンポリマーは、ポリピレンホモポリマー、またはプロピレンおよびC4〜C10α−オレフィンのコポリマーである。
【0030】
好ましい実施形態においては、グラフト化処理は、次の工程を含む。すなわち、
ポリオレフィンを、好ましくは押出し成形装置、より好ましくは同時回転双スクリュー押出し成形機において、加熱およびせん断によって熔融する工程(ポリオレフィンは、ペレット形態で、押出し成形機のバレルに送られるであろう)、
熔融されたポリマーに、そこに分配された遊離基開始剤、およびグラフト化されるべきモノマーを有するプロピレンポリマーおよび/またはコポリマーを、好ましくは押出し成形機のポリオレフィンが充填されかつ加圧された部位中に添加する工程、および
この混合物を、ポリオレフィンをグラフト化するのに十分な条件で保持する工程、
である。
【0031】
反応条件は、種々の要因(これには、グラフト化される特定のポリオレフィン、ポリオレフィンにグラフト化されるモノマー、ポリプロピレン、および遊離基開始剤が含まれる)によるであろう。グラフト化反応は、好ましくは、190℃〜210℃の温度で、30〜110秒の時間行われる。
【0032】
反応に続いて、反応生成物は、好ましくは押出し成形機の一つ以上の減圧部位において揮発分が除去されるであろう。
【0033】
本発明を実施するに際して、遊離基開始剤は、好ましくは、プロピレンポリマーおよび/またはコポリマー中に均質に分配される。均質な分配により、プロピレンポリマーおよび/またはコポリマー、ならびに遊離基開始剤は、同時に、グラフト化されるべきポリオレフィンと接触される。理論に縛られるものではないが、過酸化物の均質な分配は、より均質な反応をもたらし、架橋画分が低減されると考えられる。加えて、遊離基開始剤の特定の分配パターンをプロピレンポリマーおよび/またはコポリマー中に設定すると、異なる特性を有する生成物が得られるであろう。実際に、遊離基開始剤の分配は、所望の特性のグラフト化ポリマーを得るのを促進するために確立されるであろう。
【0034】
グラフト化反応で用いられるプロピレンポリマーおよび遊離基開始剤の量は、種々の要因によるであろう。これには、グラフト化される特定のポリオレフィン、グラフト化の条件、およびグラフト化の所望量が含まれる。一般に、ポリプロピレンポリマーは、0.5〜25、好ましくは1〜10wt%の範囲で用いられる。その際、wt%は、ポリオレフィンおよびモノマーの全重量に基づく。遊離基開始剤の量は、一般に、ポリオレフィンおよびモノマーの全重量を基準として100〜20,000、好ましくは500〜10,000ppmである。
【0035】
本発明は、好ましくは、0.1〜4、好ましくは0.2〜3%のグラフトレベルを有する官能化ポリオレフィンを得るために用いられる。官能化ポリオレフィンのメルトインデックスは、好ましくは、0.1〜500g/10分、好ましくは0.2〜400g/10分の範囲である。
【0036】
得られた官能化ポリオレフィンは、多層構造の接着剤として、ケーブル、管、ホイル、またはフィルムなどにおいて用いられるであろう。用語「接着剤」とは、粘着剤に関する本発明の生成物のいかなる機能をも含む。例えば、粘着促進剤である。
【0037】
得られた官能化ポリオレフィンは、繊維に有用である。繊維の紡糸処理は、技術的に周知であり、これには、繊維または短繊維の押出し成形、冷却、および延伸が含まれる。繊維の紡糸は、従来の溶融紡糸処理(また「長紡糸処理」として知られる)を用いて達成され、紡糸および引張りが、二つの異なる工程において行われるであろう。代替的に、「短紡糸処理」は、一工程運転であるが、用いられるであろう。
【0038】
本発明にしたがって得られる官能化ポリオレフィンは、特に、複合繊維に有用である。複合繊維は、熱結合条件下で、熱可塑性ポリマー(主に、その機械的特性または性能により選択される)を含む芯成分、および上記される方法によって得られる官能化ポリオレフィンを含む鞘成分を接触させることによって製造されるであろう。複合繊維は、技術的に周知の技術を用いて、芯成分および鞘成分を共押出し成形することによって製造されるであろう。得られる繊維は、いかなる断面形態をも有するであろう。例えば、対称または非対称の鞘/芯、または並行の形態である。製造される繊維は、メルトブローン(melt-blown)、スパンボンド(spunbond)、またはステープル(staple)繊維の用途に用いられるであろう。
【0039】
一般に、および記載されるように、芯成分は、主に、その機械的特性または性能に基づいて選択される。例えば、芯成分は、複合繊維に剛性を提供するように選択されるであろう。殆どの用途においては、芯物質は、好ましくはポリエステルたとえばポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートなど、ポリオレフィンたとえばポリプロピレンなど、またはポリアミドたとえばナイロンなどを含む。
【0040】
鞘成分は、一般に、複合繊維の表面の少なくとも一部分を構成する。本発明の方法にしたがって得られる官能化ポリオレフィンは、鞘成分として、単独に、または非グラフト化オレフィン性ポリマーとの混合物中の一成分としてのいずれかで用いられるであろう。非グラフト化ポリマーとの組合せで用いられる場合には、官能化ポリマーは、好ましくは、混合物の全重量を基準として1〜30、より好ましくは2〜25wt%の量で用いられる。
【0041】
本発明の複合繊維は、不織布の製造プロセスにおいて、一般に所謂バインダー繊維として用いられるであろう。バインダー繊維として用いられる場合には、バインダー繊維、ならびに一種以上の天然および/または合成繊維(ポリエーテル、ポリアミド、セルロース誘導体、変性セルロース誘導体、羊毛など)を含む繊維混合物は、熱結合されて、不織布を調製する。
【0042】
不織布は、フィルター、膜、フィルム、および衛生吸収性製品(使い捨ておむつ、女性用衛生製品、および成人用失禁製品など)で用いられるであろう。本発明の複合繊維に加えて、吸収性製品の吸収性芯は、天然繊維(セルロースフラフパルプ(cellulose fluff pulp)繊維など)、合成繊維(例えばポリオレフィンおよび/またはポリエステルに基づく)、および高吸収性ポリマー(SAP)を含むであろう。
【0043】
複合繊維はまた、従来の織物処理(カーディング、サイジング、ウィービングなど)で用いられるであろう。本発明の複合繊維を含む織物はまた、熱処理されて、得られる織物の特性を変えるであろう。
【0044】
次の実施例は、本発明を例証するために示され、その範囲を限定するものではないであろう。全ての百分率および部は、特段に示されない限り重量に基づく。
【実施例】
【0045】
実施例1
無水マレイン酸(MAH)のポリマーへのグラフト化
次に特定されるポリマー98部、無水マレイン酸(MAH)2部、ポリプロピレン/過酸化物マスターバッチ(Colux社(ドイツ国)からPEROX PP 5として入手可能であり、全マスターバッチの重量を基準として5wt%の2,5−ジメチレン−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン含有量を有する)2部、および安定化剤(Ciba社から入手可能なIrganox 1010)0.1部を、Coperion Krupp Werner/Pfleiderer ZSK 25中で、スクリュー速度150/分および温度180℃でグラフト化した。
【0046】
次のポリマーをグラフト化処理で用いた。
ポリマーA:制約形状触媒(constrained geometry catalyst)を用いて作製された線形低密度ポリエチレン(Dow Chemical Companyから入手可能なAffinity* XU 58200.03):0.913g/cm3;MFI(190℃、2.16kg):30
ポリマーB:中密度線形低密度ポリエチレン(Dow Chemical Companyから入手可能なASPUN* 6806A):0.930g/cm3;MFI(190℃、2.16kg):105
ポリマーC:高密度ポリマー(ガス相)(Dow Chemical CompanyからDMDA 8940として入手可能である):0.951g/cm3;MFI(190℃、2.16kg):40
ポリマーD:高密度ポリマー(ガス相)(Dow Chemical CompanyからDMDA 8980として入手可能である):0.952g/cm3;MFI(190℃、2.16kg):80
* Dow Chemical Companyの商標
【0047】
試料25kgを調製し、これを、架橋画分、グラフトレベル、および遊離モノマーの含有量に関して分析した。架橋画分は、キシレンを用いるソックスレー抽出によって決定された。結果を表1に示した。密度0.953g/cm3およびメルトフローインデックス(190℃、2.16kg)11を有する高密度ポリエチレンを、参照試料として用いた。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示されるように、本発明の方法によって得られた試料の架橋画分は、実質的に、高密度ポリマーの対照物より低かった。実際には、記載された試験を用いて、架橋画分は、グラフト化ポリマーC(DMDA 8940/MAH)およびポリマーAの試料については全く検知されなかった。加えて、実質的により高いMAHグラフトレベルは、参照試料に比較して、XU 58200.03/MAH、およびDMDA 8980/MAHについて検知された。
【0050】
実施例2
種々の複合化条件下での無水マレイン酸(MAH)のXU 58200.03へのグラフト化
(XU 58200.03)98部、無水マレイン酸(MAH)2部、実施例1で用いられたと同じポリプロピレン/過酸化物マスターバッチ2部を、高速回転混合装置中で予混合した。押出し成形を、長さ/直径比40DのTheysohn TSK 30共回転双スクリュー押出し成形機で、種々のグラフト化条件下で行った。
【0051】
生成物中の不溶解(架橋)画分のグラフトレベルおよびその量を、次のパラメーターに関して分析した。すなわち、
滞留時間(tV最小値、tV最大値;着色マスターバッチを添加することによって評価された)
ダイの全体温度(TM
スクリュー速度(n)
押出し成形機のフィラーレベル(M)
質量流速(m’)
結果を表2に示した。スクリューの形態は、実施例1で用いられたZSK 25のスクリュー形態に同等であった。さらなる混練要素を、試料17〜22に対して用いた。
【0052】
【表2】

【0053】
表2の結果によって示されるように、グラフト化反応の条件は結果に影響を及ぼし、この場合には、最適性能は、グラフトレベルおよび架橋画分に関して試料17のグラフト化条件によって得られる。
【0054】
実施例3
鞘成分の組成に関する複合繊維の紡糸性
表3に同定される複合繊維の紡糸性を評価した。この表においては、ポリマーA、B、C、および対照物は、実施例1で全く同じに同定されたポリマーと同じものであった。
【0055】
【表3】

【0056】
表3に記されるように、複合繊維の全ての試料においては、芯ポリマーはポリプロピレン(Dow Chemical Companyから入手可能なメルトフローレート20のInspire* ポリプロピレン認定H505−20Z)であった。全ての試料の鞘は、密度0.953g/cm3およびメルトフローインデックス17(190℃、2.16kg)を有する線形低密度ポリエチレンであった。これは、Dow Chemical CompanyからAspun*XU 61800.34として入手可能である。鞘は、鞘およびグラフト化ポリマーの全重量を基準としてグラフト化ポリマー10wt%を有した。
【0057】
繊維の紡糸処理は、次の紡糸パタメーターにしたがって行われた。
【0058】
紡糸
紡糸口金:2×175孔=全350孔、0.4mm
紡糸されたままの繊維のデニール目標:5.8dpf(デニール/繊維)
ダイの孔数:全350(175孔×2パック)
ダイ孔の範囲:0.4mm
複合繊維層の比率(鞘/芯):50/50
繊維形状:丸
紡糸の延伸比:1:1.02
【0059】
複合繊維の繊維紡糸の条件を表4に示した。表4に列記された個々の数値および領域は、当業者には周知であった。
【0060】
【表4】

【0061】
延伸
延伸比:4.38:1
延伸されたデニールの目標:1.5dpf(デニール/繊維)
ステープルのカットの長さ:1/8インチ
【0062】
複合繊維の延伸およびクリンプの条件を表5に示した。表5に列記された個々の数値は、当業者には周知であった。
【0063】
【表5】

【0064】
延伸比は、#2延伸ロール速度(500m/分で一定)/デニールロール速度(490m/分で一定)として定義された。これは、1:1.02に等しい。延伸は、作製の第二工程で行われた。その際、繊維パッケージ(試料について全86繊維;2分間の紡糸パッケージ)が、延伸され、クリンプされ、乾燥され、そしてエアーレード(airlaid)試験のためにカットされた。各試料について、約25ポンド(1.13kg)のクリンプされたステープル繊維を集めた。
【0065】
表3の複合繊維の試料を、伸び、テナシティ、ステープル繊維のdpf(デニール/繊維)、ステープルの長さ、およびエアーレード処理の処理性に関して評価した。結果を表6に示した。
【0066】
【表6】

【0067】
鞘成分が鞘添加剤を含まない試料1は、本発明の複合繊維について測定されたものよりずっと低いテナシティを示す。
【0068】
実施例4
エアーレード試験
エアーレード試験における複合バインダー繊維の分散性を評価するために、表3に記載された試料を調製した。これは、オレンジ色顔料を含んだ。エアーレード形成試験を、Dan−Webエアーレードパイロットプラント装置で行った。複合繊維の各試料を、バインダー繊維の全重量を基準としてセルロースフラフパルプ12wt%と混合した。不織布物質を調製した。これは、芯/パッド100g/m2を有した。
【0069】
エアーレード芯/パッドの作製に続いて、芯/パッドを、結合窓(bonding window)を評価するために、平圧盤で、275、300、325、および350゜F(135℃、149℃、163℃、および177℃)で30秒未満加熱し、バインダー繊維をセルロースパルプに結合した。この工程に続いて、10個の引張り試験片を、各芯/パッド(および上記の各繊維組成物)から切出し、Instron装置で、0.5”/分の試験速度で試験した。上記試験からの各エアーレード不織布の乾燥引張り強さ(または結合強度)を測定した。加えて、顕微鏡写真を、種々の繊維組成物の結合特性を評価するために作成した。
【0070】
結合窓の評価
バインダー繊維の結合窓を275゜F(135℃)〜350゜F(177℃)の範囲で評価することにより、低すぎる結合温度がエアーレード不織布の過少結合(低い乾燥引張り強さ)をもたらすであろうか否が示される。代わりに、高すぎる結合温度は、過結合をもたらしうる。これは、バインダー繊維が完全に溶融し、その特性を失うことを意味する。
【0071】
図1に示される顕微鏡写真は、分析の一部分を示す。これには、過少結合、および過結合の例が含まれる。この例においては、複合繊維は、275゜F(135℃)で溶融特性を示し、良好な結合は300゜F(149℃)で観察され、過結合は325゜F(163℃)で示される。
【0072】
乾燥引張り強さの評価
表3の複合繊維を含む不織布の結合性能(乾燥引張り強さまたは結合強度)を評価するために、引張り強さを、300゜F(149℃)で結合されて作製されたエアーレード不織布について測定した。この評価の結果を図2および3に示した。分析にはまた、同じ条件下で結合され、そして試験されたFibervisionのバインダー繊維について得られたデータが含まれた。
【0073】
図2には、グラフト化ポリマーの添加は、エアーレード不織布の結合強度に実質的な効果を有するであろうことが示される。特に、本発明の複合繊維の乾燥引張り強さに関して、実質的な向上が、試料1、およびFibervisionによって供給される商業的に入手可能な繊維に比較して示された。
【0074】
グラフト化の量は、対応する不織布物質の引張り強さに影響を有する。特に、試料1の引張り強さは、10psi(pounds per square inch)未満であり、一方グラフト化ポリマーから調製された不織布物質はすべて、45psiより大きい平均引張り強さを示した。試料2の平均引張り強さは、49psiであり、試料3は50psiであり、試料5は53psiであった。試料4は、70psi超の引張り強さを示す。したがって、この例においては、不織布の最高引張り強さは、グラフト濃度0.9wt%で検知された(試料4)。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】結合の効果を示す顕微鏡写真である。
【図2】結合強度に関するグラフト化ポリマーの効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンポリマーまたはコポリマーが遊離基開始剤をその中に分配して含んでいるプロピレンポリマーおよび/またはコポリマー0.5〜25wt%(ポリオレフィンおよびモノマーの全重量を基準とする)の存在下で、ポリオレフィンをモノマーと遊離基グラフト化することによる官能化ポリオレフィンの製造方法。
【請求項2】
前記ポリオレフィンはエチレンホモポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリオレフィンは、エチレン/C4〜C10α−オレフィンコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プロピレンポリマーはプロピレンホモポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プロピレンコポリマーは、プロピレン/C4〜C10α−オレフィンコポリマーである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記遊離基開始剤は、前記プロピレンポリマーおよび/またはコポリマー中に均質に分配される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記遊離基開始剤は過酸化物であり、該過酸化物は、ポリオレフィンおよびモノマーの500〜10,000wppm部の量で用いられる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記モノマーはエチレン性不飽和化合物であり、該エチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和化合物の二重結合と共役されるカルボニル基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記モノマーは、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、およびグリシジルメタクリレートからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の官能化ポリオレフィンの製造方法によって得られる官能化ポリオレフィン。
【請求項11】
0.1〜4wt%のグラフトレベルを有する、請求項10に記載の官能化ポリオレフィン。
【請求項12】
芯成分および鞘成分を含み、該鞘成分は、請求項10に記載の官能化ポリオレフィンを含む複合繊維。
【請求項13】
前記芯成分は、ポリエステル、ポリオレフィン、および/またはポリアミドを含む、請求項12に記載の複合繊維。
【請求項14】
前記芯成分は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、またはそれらの組合せからなる群から選択される、請求項12に記載の複合繊維。
【請求項15】
前記鞘成分は請求項10に記載の官能化ポリオレフィンの混合物を含む、請求項13に記載の複合繊維。
【請求項16】
前記鞘成分は、前記混合物の全重量を基準として1〜30wt%の官能化ポリオレフィンを含む、請求項15に記載の複合繊維。
【請求項17】
請求項10に記載の官能化ポリオレフィンを含む不織布。
【請求項18】
請求項12に記載の複合繊維を含む不織布。
【請求項19】
請求項18に記載の不織布を含む衛生吸収性製品。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−530712(P2007−530712A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518968(P2006−518968)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/022325
【国際公開番号】WO2005/007716
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】