説明

定着ロール、定着装置及び画像形成装置

【課題】芯金との接着耐久性に優れ、ニップ状態での放置に対しても凹みが生じにくい定着ロールを提供すること。
【解決手段】円筒状の芯金611の周囲に(A)1分子中に2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサンとを含む付加反応型シリコーンゴムの硬化物からなる弾性層612を有し、230℃×168時間の加熱老化試験での硬度変化±5°以内、180℃×22時間の圧縮永久ひずみ試験でのひずみ率10%以内且つ反発弾性率70%以上である定着ロール61。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着ロール等に関し、より詳しくは、定着ロール、定着装置及びこれらを用いる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の複写機やプリンタ−あるいはファクシミリ等に用いられる画像形成装置には、用紙等の記録媒体上に転写された未定着のトナー像を加熱および加圧することによりそのトナー像を記録媒体に定着させる画像定着装置が備えられている。このような画像定着装置としては、定着部材とベルト管状体(例えば、エンドレスベルト等の樹脂フィルム管状体)との間に形成されたニップ部に記録媒体を通過させトナーを定着させる、いわゆるベルトニップ方式を採用する画像定着装置が知られている。
【0003】
このようなベルトニップ方式を採用する画像定着装置は、例えば、加熱源を有する回転可能な加熱定着ロールと、この加熱定着ロールに圧接されるとともに回転移動する樹脂フィルム管状体と、この樹脂フィルム管状体の内側に配設されて、上記樹脂フィルム管状体を加熱定着ロールに向けて押圧してその樹脂フィルム管状体と加熱定着ロールとの間にニップ部を形成する圧力パッドとを備えている。そして、このニップ部に、未定着のトナー像を担持した記録媒体を通過させ、加熱および加圧して未定着トナー像を記録媒体上に定着する構成が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
これらの定着装置に使用する定着ロールは、特にカラー用途において弾性ロールが使用される。弾性ロールには弾性体として特に耐熱性ゴムであるシリコーンゴムが多く用いられる。また、近年では、トナーにワックスを添加することによって、従来のオイルを用いるトナー剥離アシストを必要としない、いわゆるオイルレストナーに対する適合性を高めるために、弾性ロールの表面にフッ素樹脂のチューブを被覆し、これをトナー離型層とする構造のものが多く提案されている。
この場合のフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、FEPと略称することがある。)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略称することがある。)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、PFAと略称することがある。)等を用いるものが報告されている。なかでも、加工性、耐磨耗性及び柔軟性その他の観点より、主にPFAが用いられることが多い。
【0005】
弾性ロールの表面にフッ素樹脂のチューブを被覆する方法は主に2つ挙げられる。例えば、所定の金型を用いて、予めチューブ状に成形したフッ素樹脂とゴム材料からなる弾性層との一体成型またはチューブを後工程で被覆する方法である。他の方法としては、弾性層表面にフッ素樹脂ディスパージョンをスプレーコートやディップコート等でコーティングし、その後に焼成して被覆する方法である。耐磨耗性の観点から、チューブを使用する場合が多い。
【0006】
【特許文献1】特開平08−262903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような弾性ロールの場合、特に以下に説明するような2つの問題点がある。
一つは、近年の複写機やプリンタ−の高速化に伴う定着温度の高温化により、例えば、耐熱性に優れたシリコーンゴムを使用しても、熱による劣化のためにシリコーンゴムが芯金から剥がれてしまうという問題である。これは、シリコーンゴム自体が芯金の金属よりも熱伝導率が低いことと、紙に常に熱を奪われる弾性層の表面と内部から熱が伝わる芯金との界面間の温度差が大きいことに原因があると考えられる。さらに、定着温度の高温化と単位時間当りの通紙枚数の増大が、このような劣化を更に促進させる結果となっている。
【0008】
また、他の問題は、弾性体であるゴムの表面を非弾性体のフッ素樹脂が覆っていることから生じる問題である。即ち、ロールと加圧部材とをニップした状態で一定時間以上放置すると、ロール表面の加圧された部分に凹部が残る。ロール表面にこのような凹部が残ると、トナー定着時に凹部が画像表面に欠陥として残るという問題である。
【0009】
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものである。
即ち、本発明の目的は、高速プリント時の芯金との接着耐久性に優れ、また、ニップ状態での放置に対しても凹みが生じにくい定着ロールを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高速プリント時に画像欠陥を生じない定着装置を提供することにある。
さらにまた、本発明の他の目的は、これらの定着ロール、定着装置を備える画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かくして本発明によれば、記録材に担持したトナー像を定着する定着装置に使用する定着ロールであって、円筒状芯金の周囲に形成した弾性層と、弾性層表面を被覆するフッ素樹脂層と、を有し、弾性層は、JIS K6257における230℃×168時間の加熱老化試験でのJIS K6253におけるタイプAデュロメータ硬さ変化が加熱老化試験前の硬さ−5以上、加熱老化試験前の硬さ+5以下、JIS K6262における180℃×22時間の圧縮永久ひずみ試験でのひずみ率が10%以内、且つ、JIS K6255における反発弾性率が70%以上であることを特徴とする定着ロールが提供される。
本発明が適用される定着ロールの弾性層が、かかる範囲内の物理特性を有することにより、芯金との接着耐久性に優れ、且つ、ニップ状態で長時間放置される場合でも、定着ロール表面に凹みが生じにくく、画像欠陥を発生させることがない。
【0011】
ここで、本発明が適用される定着ロールは、弾性層が、(A)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合するアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサンと、(B)1分子中に少なくともケイ素原子結合水素原子を2個以上含有するオルガノハイドロジェンシロキサンとを含む付加反応型シリコーンゴムの硬化物から構成されることが好ましい。
この場合、対向部材との圧接挟持でニップを得るために、弾性層の硬さ(JIS−A)がA50/S以下であることが好ましい。
さらに、弾性層は、熱伝導フィラーとしてアルミナ微粉末を含むことが好ましく、充分な熱老化特性を確保するためにアルミナ微粉末中に含まれるNaイオン含有量が30ppm以下であることが好ましい。
【0012】
また、本発明が適用される定着ロールは、トナーと離型性及び加工性の観点から、弾性層の表面を被うフッ素樹脂層としては、厚さ20μm〜40μmを有するテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)のチューブから構成されることが好ましい。
【0013】
次に、本発明によれば、定着ロールと定着ロールに対向配置した加圧部材とで形成するニップ部によりトナーの定着を行う電子写真の定着装置であって、定着ロールは、円筒状芯金の周囲に形成したJIS K6257における230℃×168時間の加熱老化試験でのJIS K6253におけるタイプAデュロメータ硬さ変化が加熱老化試験前の硬さ−5以上、加熱老化試験前の硬さ+5以下、JIS K6262における180℃×22時間の圧縮永久ひずみ試験でのひずみ率が10%以内、且つ、JIS K6255における反発弾性率が70%以上である弾性層を有することを特徴とする定着装置が提供される。
ここで、本発明が適用される定着装置における加圧部材は、定着ロールに接触しながら移動可能なエンドレスベルトと、エンドレスベルトの内側に配置されてエンドレスベルトを介して定着ロールを圧接する圧力部材と、を有することを特徴とすることができる。
【0014】
さらに本発明によれば、トナー像形成手段、トナー像を記録材上に転写する転写手段及びトナー像を記録材に定着する定着手段とを有する画像形成装置において、定着装置が、定着ロールと定着ロールに対向配置した加圧部材とを備えるものであり、定着ロールは、円筒状芯金の周囲に形成したJIS K6257における230℃×168時間の加熱老化試験でのJIS K6253におけるタイプAデュロメータ硬さ変化が加熱老化試験前の硬さ−5以上、加熱老化試験前の硬さ+5以下、JIS K6262における180℃×22時間の圧縮永久ひずみ試験でのひずみ率が10%以内、且つ、JIS K6255における反発弾性率が70%以上である弾性層を有することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明が適用される定着ロールによれば、ニップ状態での放置に対しても凹みが生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態(実施の形態)について説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、使用する図面は、本実施の形態を説明するために使用するものであり、実際の大きさを表すものではない。
図1は、本実施の形態が適用される画像形成装置100を示した概略構成図である。図1に示す画像形成装置100は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置100であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)する一次転写部10、中間転写ベルト15上に転写した重畳トナー画像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写部20、二次転写したトナー像を用紙P上に定着する定着装置60を備えている。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
【0017】
本実施の形態において、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム11の周囲に、これらの感光体ドラム11を帯電する帯電器12、感光体ドラム11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中、露光ビームを符号Bmで示す)、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14、感光体ドラム11上に形成した各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラムクリーナ17等の電子写真用デバイスが順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0018】
中間転写体である中間転写ベルト15は、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の無端ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は10Ωcm〜1014Ωcmとなるように形成されており、その厚みは、例えば、0.1mm程度に構成されている。中間転写ベルト15は、各種ロールによって図1に示す矢印B方向に所定の速度で循環駆動(回動)する。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト15を回動する駆動ロール31、各感光体ドラム11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能するテンションロール33、二次転写部20に設けられるバックアップロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール34を有している。
【0019】
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に対向して配置される一次転写ロール16で構成される。一次転写ロール16は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5Ωcm〜108.5Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に圧接配置され、さらに一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加される。これにより、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成される。
【0020】
二次転写部20は、中間転写ベルト15のトナー像担持面側に配置される二次転写ロール22と、バックアップロール25とによって構成される。バックアップロール25は、例えば、表面がカーボンを配合したエチレン−プロピレン−ジエンゴム(以下、EPDMと記すことがある。)とアクリルニトリル−ブタジエンゴム(以下、NBRと記すことがある。)とのブレンドゴムのチューブ、内部がEPDMゴムで構成されている。そして、その表面抵抗率が10Ω/□〜1010Ω/□となるように形成され、硬さは、例えば、70°(アスカーC:高分子計器株式会社製、以下同様。)に設定される。このバックアップロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極をなし、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が当接配置されている。
【0021】
一方、二次転写ロール22は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBR、スチレン−ブタジエンゴム(以下、SBRと記すことがある。)とEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5〜108.5Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25に圧接配置され、さらに二次転写ロール22は接地されてバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙P上にトナー像を二次転写する。
【0022】
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられた所定のマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
【0023】
さらに、本実施の形態が適用される画像形成装置100では、用紙搬送系として、用紙Pを収容する用紙トレイ50、この用紙トレイ50に集積された用紙Pを所定のタイミングで取り出して搬送するピックアップロール51、ピックアップロール51により繰り出された用紙Pを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Pを二次転写部20へと送り込む搬送シュート53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Pを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、用紙Pを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
【0024】
次に、本実施の形態が適用される画像形成装置100の基本的な作像プロセスについて説明する。図1に示すような画像形成装置100では、画像読取装置(IIT:図示せず)やパーソナルコンピュータ(PC:図示せず)等から出力される画像データは、画像処理装置(IPS:図示せず)により所定の画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。IPSでは、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の所定の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0025】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば、半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体ドラム11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C、1Kの各感光体ドラム11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0026】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが当接する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0027】
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、用紙搬送系では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせてピックアップロール51が回転し、用紙トレイ50から所定サイズの用紙Pが供給される。ピックアップロール51により供給された用紙Pは、搬送ロール52により搬送され、搬送シュート53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Pは一旦停止され、トナー像が担持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0028】
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22がバックアップロール25に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Pは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22とバックアップロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に担持された未定着トナー像は、二次転写ロール22とバックアップロール25とによって押圧される二次転写部20において、用紙P上に一括して静電転写される。
【0029】
その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Pを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱および圧力で定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置100の排出部に設けられた排紙載置部に搬送される。
一方、用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回動に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール34および中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
【0030】
次に、本実施の形態の画像形成装置100に用いる定着装置60について説明する。図2は、本実施の形態が適用される定着装置60の構成を示す側断面図である。定着装置60は、回動部材の一例としての定着ロール61、エンドレスベルト62、エンドレスベルト62を介して定着ロール61から押圧される圧力部材の一例としての圧力パッド64により主要部が構成されている。
【0031】
定着ロール61は、金属製のコア(円筒状芯金)611の周囲に弾性層612、およびフッ素樹脂層613を積層して構成されたものである。
定着ロール61の内部には、発熱源としてのハロゲンランプ66が配設されている。一方、定着ロール61の表面には温度センサ69が接触して配置されている。画像形成装置100の制御部40は、この温度センサ69による温度計測値に基づいてハロゲンランプ66の点灯を制御し、定着ロール61の表面温度が所定の設定温度(例えば、170℃)を維持するように調整している。エンドレスベルト62は、圧力パッド64とベルト走行ガイド63とによって回動自在に支持されている。そして、ニップ部Nにおいて定着ロール61に対して圧接されて配置されている。
【0032】
圧力パッド64は、エンドレスベルト62の内側において、エンドレスベルト62を介して定着ロール61に押圧される状態で配置され、定着ロール61との間でニップ部Nを形成している。圧力パッド64は、幅の広いニップ部Nを確保するためのプレニップ部材64aをニップ部Nの入口側に配置し、定着ロール61に歪みを与えるための剥離ニップ部材64bをニップ部Nの出口側に配置している。さらに、エンドレスベルト62の内周面と圧力パッド64との摺動抵抗を小さくするために、プレニップ部材64aおよび剥離ニップ部材64bのエンドレスベルト62と接する面に低摩擦シート68が設けられている。そして、圧力パッド64と低摩擦シート68とは、金属製のホルダ65に保持されている。
【0033】
さらに、ホルダ65には、ベルト走行ガイド63が取り付けられ、エンドレスベルト62がスムーズに回動することができるように構成されている。すなわち、ベルト走行ガイド63は、エンドレスベルト62内周面と摺擦するため、静止摩擦係数の小さな材質で形成されている。また、ベルト走行ガイド63は、エンドレスベルト62から熱を奪い難いように熱伝導率の低い材質で形成されている。
【0034】
定着ロール61は、図示しない駆動モータにより矢印C方向に回転し、この回転によりエンドレスベルト62も従動回転する。図1に示す画像形成装置100の二次転写部20においてトナー像を静電転写した用紙Pは、定着入口ガイド56によって導かれ、ニップ部Nに搬送される。そして、用紙Pがニップ部Nを通過する際に、用紙P上のトナー像はニップ部Nに作用する圧力と、定着ロール61から供給される熱とによって定着される。本実施の形態の定着装置60では、定着ロール61の外周面に倣う凹形状のプレニップ部材64aによりニップ部Nを広く構成し、安定した定着性能を確保している。
【0035】
また、本実施の形態の定着装置60では、定着ロール61の外周面に対し突出させて剥離ニップ部材64bを配置し、ニップ部Nの出口領域(剥離ニップ部)において定着ロール61の歪みが局所的に大きくなるように構成している。
なお、剥離の補助手段として、定着ロール61のニップ部Nの下流側に、剥離部材70を配設している。剥離部材70は、剥離バッフル71が定着ロール61の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ロール61と近接する状態でホルダ72によって保持されている。
【0036】
次に、定着ロール61について説明する。
本実施の形態が適用される定着ロール61は、円筒状の芯金611の周りに形成した弾性層612が、JIS K6257における230℃×168時間の加熱老化試験でのJIS K6253におけるタイプAデュロメータ硬さ変化が加熱老化試験前の硬さ−5以上、加熱老化試験前の硬さ+5以下、JIS K6262における180℃×22時間の圧縮永久ひずみ試験でのひずみ率が10%以内、且つ、JIS K6255における反発弾性率が70%以上であることを特徴としている。
弾性層612が、上述した物性値を有することにより、定着ロール61がニップ状態で放置された場合でもニップ変形量を極めて小さい範囲に抑制することができる。その結果、定着ロール61表面の凹みによる画像ディフェクトが発生することなく、また良好な耐久性を有することができる。
【0037】
弾性層612を形成する材料としては、耐熱性の高い弾性材料が挙げられ、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。定着ロール61の弾性層612は、耐熱性と共に対向部材との圧接狭持でニップを得るために、より低硬度の材料が必要とされることから、JIS K6253におけるタイプAデュロメータ硬さA50/S以下、特にA10/S〜A50/Sのシリコーンゴムが好ましい。
シリコーンゴムとしては、付加反応型シリコーンゴムを用いることが望ましい。付加反応型シリコーンゴムは、架橋後の構造が分子の自由末端鎖が少なく、低硬度でも高い機械的特性を示すので好ましい。
【0038】
付加反応型シリコーンゴムは、主剤として、(A)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合するアルケニル基を含有する常温で液状のポリオルガノシロキサンと、架橋剤として、(B)1分子中に少なくともケイ素原子結合水素原子を2個以上含有するオルガノハイドロジェンシロキサンとを、主剤の(A)ポリオルガノシロキサンが有するアルケニル基に対して、(B)オルガノハイドロジェンシロキサン中のケイ素原子結合水素原子のモル比で0.3〜5になる量を添加して使用する。
【0039】
(A)ポリオルガノシロキサンが有するアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等が挙げられる。
また、(A)ポリオルガノシロキサンは、上述したアルケニル基以外の置換基を有することがある。このようなアルケニル基以外の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等の置換基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換したものが挙げられる。
尚、(A)オルガノポリシロキサンの構造は、直鎖状構造を有するものが好ましいが、部分的には分岐状の構造、環状構造等であってもよい。
【0040】
(B)オルガノハイドロジェンシロキサンとしては、例えば、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(CSiO3/2単位とからなる共重合体等が挙げられる。
【0041】
付加反応型シリコーンゴムは、通常、付加反応触媒の存在下、(A)ポリオルガノシロキサンと(B)オルガノハイドロジェンシロキサンとの付加反応を行う。付加反応触媒としては、例えば、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコ−ルとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテ−ト等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属系触媒が挙げられる。
【0042】
定着ロール61の弾性層612には、高熱伝導率が要求されることから、通常、熱伝導性フィラーが配合される。熱伝導性フィラーとしては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、石英粉、珪藻土、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭化珪素、窒化珪素、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等が挙げられる。これらの中でも、特に、アルミナが好適に用いられる。また、これら熱伝導性フィラーは、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。更に、同種のもの、例えばアルミナでも、平均粒子径、製造方法、純度、表面処理の有無等が異なる2品種以上を併用してもよい。
熱伝導性フィラーの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して10質量部〜300質量部、好ましくは50質量部〜200質量部である。熱伝導性フィラーの配合量が過度に少ないと高熱伝導性が得られず、熱伝導性フィラーの配合量が過度に多いと配合が困難となるばかりでなく、ゴム物性が著しく低下する傾向がある。
【0043】
本実施の形態においては、熱伝導性フィラーとしては、特に、平均粒子径0.1μm〜50μm、好ましくは0.5μm〜40μmである酸化アルミニウム(アルミナ)微粉末を使用することにより、弾性層612の高熱伝導率と高充填における高反発弾性とを確保することができる。
このような酸化アルミニウム(アルミナ)微粉末の配合量は、弾性層612を構成する付加反応型シリコーンゴム組成物全体に対する体積分率が、通常10%〜35%、好ましくは20%〜30%の範囲になるように添加する。体積分率が過度に小さいと定着ロール61の弾性層612としての十分な熱伝導率を得ることができない傾向があり、体積分率が過度に大きいと反発弾性率が低下する傾向がある。
また、酸化アルミニウム(アルミナ)微粉末中のNaイオン含有量が30ppm以下のものを使用することが好ましい。酸化アルミニウム(アルミナ)微粉末中のNaイオン含有量が過度に多いと、弾性層612の耐熱性能が低下、すなわち、加熱老化試験後の硬さの変化および圧縮永久歪みが大きくなる傾向があり、必要とする熱老化特性を得ることができなくなる傾向がある。
【0044】
弾性層612を形成する材料として挙げられるフッ素ゴムとしては、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン二元共重合体、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体、ビニリデンフルオライド−トリフルオロクロロエチレン二元共重合体、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン二元共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン−プロピレン三元共重合体、ヘキサフルオロプロピレン−エチレン二元共重合体等が例示される。
【0045】
フッ素ゴムのムーニー粘度(ML1+4)は、特に限定されないが、通常、30〜150、好ましくは、40〜100である。ムーニー粘度が過度に大きいと、材料の流動性が低下し加工性が低下する傾向があり、ムーニー粘度が過度に小さいと、加硫物の引張り強さが低下する傾向がある。
【0046】
尚、弾性層612には、必要に応じて他の配合剤を加えることができる。他の配合剤としては、例えば、シリカヒドロゲル(含水珪酸)、シリカエアロゲル(無水珪酸−煙霧質シリカ)等の補強性シリカ充填剤;クレイ、炭酸カルシウム、二酸化チタン等の充填剤;酸化鉄、酸化セリウム、オクチル酸鉄等の耐熱性向上剤;接着性や成形加工性を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン;難燃性を付与させる窒素化合物、ハロゲン化合物等が挙げられる。
【0047】
上述したシリコーンゴム組成物等により定着ロール61の弾性層612を形成することにより、芯金611との接着耐久性に優れ、且つ、ニップ状態で放置された場合であっても凹みが生じにくく、画像欠陥を発生させない定着ロール61を得ることが可能である。
尚、本実施の形態が適用される定着ロール61は、芯金611の材料、寸法等は、必要に応じて適宜選定し得る。また、シリコーンゴム組成物等の成形、硬化法は特に限定されないが、通常、注入成形、移送成形、射出成形、コーティング等の成形法により成形することができる。
【0048】
また、本実施の形態が適用される定着ロール61には、通常、弾性層612の上に定着ロール61の表面層としてフッ素樹脂層613が設けられる。フッ素樹脂層613は、例えば、フッ素樹脂チューブまたはフッ素樹脂コーティング材等により形成できる。中でも、ロールの成型加工性及び耐磨耗性の観点から、予めチューブ形状に予備成型されたフッ素樹脂チューブを定着ロール61表面に被覆することが好ましい。
フッ素系樹脂チューブとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、フッ化エチレン−プロピレン共重合体樹脂(FEP)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリフッ化ビニル樹脂等のチューブが挙げられる。これらの中でも、特にPFAチューブを用いたものが好ましい。
尚、フッ素系樹脂コーティング材を用いる場合は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)のラテックスやテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)のディスパージョン等を弾性層612の外周面上に積層すればよい。
【0049】
フッ素樹脂層613の厚さは、20μm〜40μmであることが好ましい。フッ素樹脂層613の厚さが過度に薄いと、定着ロールの耐久性が低下する傾向があり、フッ素樹脂層613の厚さが過度に厚いと、弾性層612の柔軟性が損なわれる傾向がある。
【0050】
尚、以下に定着装置60を構成する他の部材について説明する。
エンドレスベルト62は、原形が円筒形状に形成された無端ベルトであり、ベース層と、このベース層の定着ロール61側の面または両面に被覆された離型層とから構成されている。ベース層は、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のポリマーやSUS、ニッケル、銅等の金属により形成され、その厚みは、30〜200μm、好ましくは50〜125μm、より好ましくは75〜100μm程度である。ベース層の表面に被覆される離型層としては、フッ素樹脂、例えばPFA、PTFE、FEPで形成され、その厚みは5〜100μm、好ましくは10〜30μm程度である。
【0051】
圧力パッド64は、プレニップ部材64a、剥離ニップ部材64bで構成され、ホルダ65に支持されている。プレニップ部材64aには、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体や板バネ等を用いることができ、定着ロール61側の面は、ほぼ定着ロール61の外周面に倣う凹形状で形成されている。
剥離ニップ部材64bは、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の耐熱性を有する樹脂、または鉄、アルミニウム、SUS等の金属で形成されている。剥離ニップ部材64bの形状としては、ニップ部Nにおける外面形状が一定の曲率半径を有する凸曲面状に形成される。
【0052】
低摩擦シート68は、エンドレスベルト62内周面と圧力パッド64との摺動抵抗(摩擦抵抗)を低減するために設けられ、摩擦係数が小さく、耐摩耗性・耐熱性に優れた材質が適している。具体的には、シンタード成型したPTFE樹脂シート、テフロン(登録商標)を含浸させたガラス繊維シート等を用いることができる。なお、低摩擦シート68は、プレニップ部材64aや剥離ニップ部材64bと別体に構成しても、プレニップ部材64aや剥離ニップ部材64bと一体的に構成しても、いずれでもよい。
【0053】
また、ベルト走行ガイド63は、上述したように、エンドレスベルト62の内周面と摺擦するため、摩擦係数が低く、かつ、エンドレスベルト62から熱を奪い難いように熱伝導率が低い材質が適しており、PFAやPPS等の耐熱性樹脂が用いられる。
ベルト走行ガイド63には、定着装置60の長手方向に亘って、潤滑剤塗布部材67が配設されている。潤滑剤塗布部材67は、エンドレスベルト62内周面に対して接触するように配置され、アミン変性シリコーンオイル等の潤滑剤を適量供給する。これにより、エンドレスベルト62と低摩擦シート68との摺動部に潤滑剤を供給し、低摩擦シート68を介したエンドレスベルト62と圧力パッド64との摺動抵抗をさらに低減して、エンドレスベルト62の円滑な回動を図っている。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例に基づき本実施の形態をさらに詳細に説明する。なお、本実施の形態は実施例に限定されるものではない。以下本実施例において特に断りの限り「部」は質量部を意味する。
(実施例1)
(1)シリコーンゴム組成物
予め、ジメチルポリオルガノシロキサン(ビニル基含有量0.08mmol/g、粘度(25℃)30,000mPa・s)100部のうち40部を混練装置に配合し、そこに、アルミナ微粉末(Naイオン含有量10ppm、平均粒子径3μm)100部を配合し、これらを150℃で2時間加熱混練した後、残りのジメチルポリオルガノシロキサン60部で希釈し、さらに、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量3mmol/g、粘度(25℃)5mPa・s)4.0部、触媒として塩化白金酸−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金含有量として10ppm、硬化遅延剤として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.1部、さらに酸化第二鉄(Fe)2部を均一に混合し、シリコーンゴム組成物を調製した。
【0055】
(2)テストピース
上述したシリコーンゴム組成物を、120℃×20分間プレス成型した後、さらに200℃×4時間加熱して厚み12mmの硬さ測定用テストピースを作成した。
また、この硬さ測定用テストピースを用いて、JIS K6257に準じ、加熱老化試験(230℃×168時間)を行いその前後での硬さ変化を測定した。
硬さについては、JIS K6253に準じて測定装置としてタイプAデュロメータ硬さ試験機であるアスカーゴム硬度計A型(高分子計器社製)を用いタイプAデュロメータ硬さを測定した。
圧縮永久ひずみについては、上述したシリコーンゴム組成物を、120℃×20分間プレス成型した後、さらに200℃×4時間加熱してJIS K6262に準じた大型試験片(直径=29mm、厚さ=12.5mm)を作製した。
この試験片を用いてJIS K6262に準じ、圧縮永久ひずみ試験(180℃×22時間、25%圧縮)でのひずみ率を圧縮永久歪試験機(高分子計器社製)を用いて測定した。
反発弾性率については、上述したシリコーンゴム組成物を、120℃×20分間プレス成型した後、さらに200℃×4時間加熱してJIS K6255に準じた大型試験片(直径=29mm、厚さ=12.5mm)を作製した。この試験片を用いてJIS K6255に準じ、株式会社東洋精機製、トリプソ式レジリエンステスター(型番無し)を用いて、反発弾性率(%)の測定を行った。それらの結果を表1に示す。
【0056】
(3)定着ロール
前述したシリコーンゴム組成物を用いて、A4サイズの定着ロールの成型を行った。成型方法は、円筒状の金型内壁に沿うように予めPFAチューブを設置しておき、さらに金型内部中央にプライマーを塗布した芯金を、円筒状金型両端にはめ合わせたキャップ型で両端から保持する形でセットし、PFAチューブと芯金との間の空隙に前述したシリコーン組成物を流し込み、これをオーブン内で加熱成型する、一般に一体成型と呼ばれる方法で成型した。定着ロールは、弾性層厚み0.6mm、PFAチューブ厚み30μmである。
【0057】
(4)定着ロールのニップ変形量
上述した定着ロールを、実際のA4サイズプリンターにおける図2と同様な定着装置にセットし、ニップ変形量の測定と、通紙による耐久枚数の確認を行った。定着装置は、定着ロールに対して内側に加圧部材を配したベルトを圧接してニップを形成する方式のもので、ニップ総荷重25kgf、最大面圧8kg/cmである。また、通紙枚数35枚/分、定着ロールの表面制御温度195℃である。
ニップ変形量の確認は、定着装置に定着ロールをセットし、ニップさせたままの状態で、150℃×24時間放置、及び、室温×1ヶ月間放置した場合の、実際のロール表面の凹み量を測定した(単位:μm)。数値が小さいほど、ニップ変形が少ない。結果を表1に記す。
【0058】
(比較例1)
実施例1で使用したシリコーンゴム組成物におけるアルミナ微粉末(Naイオン含有量30ppm以下、平均粒子径3μm)の代わりに、Naイオン含有量200ppmのアルミナ微粉末を配合した以外は、実施例1と同様の操作によりシリコーンゴム組成物を調製し、実施例1と同様に、硬さ測定用テストピースを作成し、加熱老化試験での硬さ変化、圧縮永久ひずみ試験でのひずみ率及び反発弾性率を測定した。さらに、実施例1と同様な操作により成形した定着ロールのニップ変形量を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
(比較例2)
実施例1で使用したシリコーンゴム組成物におけるアルミナ微粉末(Naイオン含有量30ppm以下、平均粒子径3μm)の代わりに、粉砕石英粉末(平均粒子径5μm)80部を配合し、さらに、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量3mmol/g、粘度(25℃)5mPa・s)の配合量を3.5部とした以外は、実施例1と同様の操作によりシリコーンゴム組成物を調製し、実施例1と同様に、硬さ測定用テストピースを作成し、加熱老化試験での硬さ変化、圧縮永久ひずみ試験でのひずみ率及び反発弾性率を測定した。さらに、実施例1と同様な操作により成形した定着ロールのニップ変形量を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例3)
比較例1で使用したシリコーンゴム組成物のアルミナ微粉末(Naイオン含有量200ppm,平均粒径3μm)の表面を、ビニルメトキシシランで表面処理した以外、同じ組成のシリコーンゴム組成物を用いた以外は比較例1と同様の操作によりシリコーンゴム組成物を調製し、実施例1と同様に、硬さ測定用テストピースを作成し、加熱老化試験での硬さ変化、圧縮永久ひずみ試験でのひずみ率及び反発弾性率を測定した。さらに、実施例1と同様な操作により成形した定着ロールのニップ変形量を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示す結果から、実施例1における定着ロールは、150℃×24時間放置及び室温×1ヶ月間放置のいずれの場合でも、ニップ変形量が、それぞれ12μm、18μmと極めて小さいことが分かる。また、このニップ変形による凹みが生じた定着ロールで画出しを行ったところ、画像ディフェクトの存在は見られなかった。
これに対して、比較例1における定着ロールでは、150℃×24時間放置した場合のニップ変形量が24μmとなった。さらに、ニップ変形によるロールの凹み部分が光沢の低いスジとなって画像全面にわたり確認された。
また、比較例2における定着ロールでは、150℃×24時間放置及び室温×1ヶ月間放置の場合のニップ変形量が、それぞれ25μm、36μmと大きいことが分かる。さらに、比較例1の場合と同様に、ニップ変形によるロールの凹み部分が光沢の低いスジとなって画像全面にわたり確認された。
さらに、比較例3においても、比較例1と同様に、ニップ変形によるロールの凹み部分が光沢の低いスジとなって画像全面にわたり確認された。
【0063】
次に、実施例1及び比較例1と比較例2と比較例3において使用した定着ロールをそれぞれ用い、実際に通紙による耐久性評価を行った。
耐久性評価の結果、実施例1と比較例2と比較例3で使用した定着ロールでは、どちらも15万枚の通紙後も異常は見られなかった。しかし、比較例1で使用した定着ロールは、7万枚経過時点でシリコーンゴム弾性層の一部で凝集破壊が発生し、用紙詰まりが頻発した。
【0064】
以上説明したとおり、本実施の形態が適用される定着ロールは、ニップ状態で放置された場合でも表面の凹みによる画像ディフェクトが発生することなく、また良好な耐久性を示すことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施の形態が適用される画像形成装置を示した概略構成図である。
【図2】本実施の形態が適用される定着装置の構成を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1Y,1M,1C,1K…画像形成ユニット、11…感光体ドラム、12…帯電器、13…レーザ露光器、14…現像器、15…中間転写ベルト、16…一次転写ロール、17…ドラムクリーナ、20…二次転写部、60…定着装置、61…定着ロール、62…エンドレスベルト、63…ベルト走行ガイド、64…圧力パッド、64a…プレニップ部材、64b…剥離ニップ部材、65…ホルダ、66…ハロゲンランプ、67…潤滑剤塗布部材、68…低摩擦シート、69…温度センサ、70…剥離部材、100…画像形成装置、611…コア(円筒状芯金)、612…弾性層、613…フッ素樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に担持したトナー像を定着する定着装置に使用する定着ロールであって、
円筒状芯金の周囲に形成した弾性層と、
前記弾性層表面を被覆するフッ素樹脂層と、を有し、
前記弾性層は、JIS K6257における230℃×168時間の加熱老化試験でのJIS K6253におけるタイプAデュロメータ硬さの変化が加熱老化試験前の硬さ−5以上、加熱老化試験前の硬さ+5以下、JIS K6262における180℃×22時間の圧縮永久ひずみ試験でのひずみ率が10%以内、且つ、JIS K6255における反発弾性率が70%以上であることを特徴とする定着ロール。
【請求項2】
前記弾性層は、(A)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合するアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサンと、(B)1分子中に少なくともケイ素原子結合水素原子を2個以上含有するオルガノハイドロジェンシロキサンとを含む付加反応型シリコーンゴムの硬化物から構成されることを特徴とする請求項1記載の定着ロール。
【請求項3】
定着ロールと当該定着ロールに対向配置した加圧部材とで形成するニップ部によりトナーの定着を行う電子写真の定着装置であって、
前記定着ロールは、円筒状芯金の周囲に形成したJIS K6257における230℃×168時間の加熱老化試験でのJIS K6253におけるタイプAデュロメータ硬さ変化が加熱老化試験前の硬さ−5以上、加熱老化試験前の硬さ+5以下、JIS K6262における180℃×22時間の圧縮永久ひずみ試験でのひずみ率が10%以内、且つ、JIS K6255における反発弾性率が70%以上である弾性層を有することを特徴とする定着装置。
【請求項4】
前記加圧部材は、前記定着ロールに接触しながら移動可能なエンドレスベルトと、当該エンドレスベルトの内側に配置されて当該エンドレスベルトを介して当該定着ロールを圧接する圧力部材と、を有することを特徴とする請求項3記載の定着装置。
【請求項5】
トナー像形成手段、トナー像を記録材上に転写する転写手段及び当該トナー像を当該記録材に定着する定着手段とを有する画像形成装置において、
前記定着装置は、定着ロールと当該定着ロールに対向配置した加圧部材とを備え、
前記定着ロールは、円筒状芯金の周囲に形成したJIS K6257における230℃×168時間の加熱老化試験でのJIS K6253におけるタイプAデュロメータ硬さの変化が加熱老化試験前の硬さ−5以上、加熱老化試験前の硬さ+5以下、JIS K6262における180℃×22時間の圧縮永久ひずみ試験でのひずみ率が10%以内、且つ、JIS K6255における反発弾性率が70%以上である弾性層を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−233084(P2007−233084A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55375(P2006−55375)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】