説明

定着装置、画像形成装置、定着装置の制御方法、および定着装置の制御プログラム

【課題】温度の誤検出を少なくすることができる定着装置を提供する。
【解決手段】非接触サーミスタの測定結果を用いて、加熱ローラを所定温度(例えば定着温度である180℃)とする(S101)。非接触サーミスタの近傍に設けられた非接触型センサユニット(サーモパイル)を用いて、加熱ローラの温度を測定する(S103)。非接触サーミスタの測定温度(実測値を補正した補正後温度)と、非接触型センサユニットの測定温度との差を演算する(S105)。その差が所定値(例えば3℃)を超えると(S107でYES)、非接触型センサユニットの汚れなどによる、非接触型センサユニットの測定エラーが生じているとして、エラー表示を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、定着装置、画像形成装置、定着装置の制御方法、および定着装置の制御プログラムに関し、特に、2種類の温度検出センサにより温度の検出を行なう定着装置、画像形成装置、定着装置の制御方法、および定着装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の画像形成装置(MFP(Multi Function Peripheral)、ファクシミリ装置、複写機、プリンタ、複合機など)には、用紙(記録メディア)上のトナーを熱と圧力で用紙に定着させる定着装置(定着器)が設けられている。
【0003】
定着装置は一般的に、加熱(定着)ローラ(または定着ベルト)と、加圧ローラとによって構成される。両ローラ間の圧力と熱とによって、トナーは用紙に定着する。加熱ローラは、芯金と弾性のあるゴムとで形成されている。それによってNIP(ニップ)が形成され、十分な定着性能を確保できるようにされている。
【0004】
高耐久性を目指す定着装置においては、定着ベルトや定着ローラの温度を非接触で測定できる非接触型温度検出素子を使用することが望ましい。接触部での磨耗による、定着ベルトや定着ローラの傷などを防止するためである。このような背景のもと、非接触での温度検出手法が各種提案され、実施されている。例えば、定着装置内の温度検出素子として、赤外線量に応じて温度を検出するサーモパイルを用いるものがある。
【0005】
サーモパイルは、非接触型の温度検出素子であり、2種類の金属または半導体を接合した熱電対が、多数直列に接続されて構成されたものである。
【0006】
サーモパイルは、定着ベルトや定着ローラが熱せられることにより放射される赤外線を、赤外線透過フィルタ(赤外フィルタ)へ透過させ、透過した赤外線を受光部(熱電対の温接点)で受光する。ゼーベック効果により熱電対の冷接点との間に発生する熱起電力が測定される。熱起電力の大きさに基づいて、定着ベルトや定着ローラの表面温度が算出される。
【0007】
また、サーモパイルを用いると、被測定物の測定距離が長い場合でも温度測定が可能である。このため、定着装置内ではなく、本体側にサーモパイルを設置して、定着ベルトや定着ローラの温度を測定することが可能である。このため、定着装置の寿命によって定着装置の交換の必要が生じても、高価な温度検出素子であるサーモパイルを交換しなくても良い。これにより、ユーザのメンテナンス費用を削減できる効果もある。
【0008】
下記特許文献1は、感光体の温度制御に関する技術を開示する。この文献には、温度検出を行なうときに、エアフローの発生を停止させることが記載されている。
【0009】
下記特許文献2は、あらかじめ決められた汚れ補正係数をプリント枚数に応じて設定する定着装置を開示する。
【特許文献1】特開2006−184071号公報
【特許文献2】特開平11−272119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非接触型の温度センサー(サーモパイル)では、その赤外フィルタが汚れると、赤外線受光センサ(サーモパイルセンサ)への入射光量が減る。この場合、温度の誤検知が発生するという問題がある。
【0011】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、温度の誤検出を少なくすることができる定着装置、画像形成装置、定着装置の制御方法、および定着装置の制御プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、定着装置は、被測定体とは非接触に配置され、被測定体から放射される赤外線量に応じて温度を検出する第1の温度検出部材と、被測定体とは非接触に配置され、被測定体からの対流、熱伝導、および輻射の少なくともいずれかによる熱を検出する第2の温度検出部材と、被測定体を加熱する加熱源と、画像を形成しないときに、被測定体をある一定温度に保った状態とし、その時の第1の温度検出部材と第2の温度検出部材との検出温度に基づいて、第1の温度検出部材の検出状態を取得する取得手段とを備える。
【0013】
好ましくは取得手段は、検出状態情報取得モードにおいて取得を行ない、検出状態情報取得モードにおいては、被測定体は、画像形成時の設定温度に保たれる。
【0014】
好ましくは画像形成時の設定温度は、100℃〜220℃である。
【0015】
好ましくは取得手段は、第1の温度検出部材と第2の温度検出部材との検出温度の差が、予め設定された温度差以上となった場合、第1の温度検出部材の検出状態が異常であるとする。
【0016】
好ましくは定着装置は、第1の温度検出部材の検出状態が異常である場合、加熱源の加熱を停止する。
【0017】
好ましくは第1の温度検出部材はサーモパイルであり、第2の温度検出部材はサーミスタである。
【0018】
好ましくは被測定体は、加熱ローラであり、第1の温度検出部材は、複数配置されており、第2の温度検出部材は、1つが配置される。
【0019】
好ましくは複数の第1の温度検出部材と、1つの第2の温度検出部材は、ほぼ同一線上に配置される。
【0020】
好ましくは取得手段は、複数の第1の温度検出部材のそれぞれの検出温度に基づいて、複数の第1の温度検出部材のそれぞれの検出状態を取得する。
【0021】
この発明の他の局面に従うと画像形成装置は、上述のいずれかに記載の定着装置と、記録媒体に画像を形成する画像形成手段とを備える。
【0022】
この発明のさらに他の局面に従うと画像形成装置の制御方法は、被測定体とは非接触に配置され、被測定体から放射される赤外線量に応じて温度を検出する第1の温度検出部材と、被測定体とは非接触に配置され、被測定体からの対流、熱伝導、および輻射の少なくともいずれかによる熱を検出する第2の温度検出部材と、被測定体を加熱する加熱源とを備えた定着装置の制御方法であって、画像を形成しないときに、被測定体をある一定温度に保った状態とし、その時の第1の温度検出部材と第2の温度検出部材との検出温度に基づいて、第1の温度検出部材の検出状態を取得する取得ステップを備える。
【0023】
この発明のさらに他の局面に従うと画像形成装置の制御プログラムは、被測定体とは非接触に配置され、被測定体から放射される赤外線量に応じて温度を検出する第1の温度検出部材と、被測定体とは非接触に配置され、被測定体からの対流、熱伝導、および輻射の少なくともいずれかによる熱を検出する第2の温度検出部材と、被測定体を加熱する加熱源とを備えた定着装置の制御プログラムであって、画像を形成しないときに、被測定体をある一定温度に保った状態とし、その時の第1の温度検出部材と第2の温度検出部材との検出温度に基づいて、第1の温度検出部材の検出状態を取得する取得ステップをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0024】
これらの発明に従うと、温度の誤検出を少なくすることができる定着装置、画像形成装置、定着装置の制御方法、および定着装置の制御プログラムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態における電子写真方式の画像形成装置について説明する。
【0026】
画像形成装置は、電子写真方式により記録材に画像を形成する。画像形成装置は、加熱定着装置を備える。非接触型サーミスタとサーモパイル(非接触型温度検出素子)の2つのセンサにより、定着装置の温度検出が行なわれる。定着装置は、加熱ローラを一定温度に保った状態(温調状態)でサーモパイルの汚れ検知を行なうモード(検出状態情報取得モード)を有する。このモードにより取得された検出状態情報に基づいて、サーモパイルの汚れ具合が未然に検出され、温度誤検知が防止される。汚れ検知を行なうモードでは、非接触型サーミスタの検出温度とサーモパイルの検出温度とにより、サーモパイルの汚れが検出される。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおける画像形成装置の構成を示す図である。
【0028】
先ず、画像形成装置1501の概略構成を説明する。画像形成装置1501は、その内部のほぼ中央部にベルト部材として中間転写ベルト1502を備えている。中間転写ベルト1502は、ローラ1504、1505の外周部に支持されて矢印A方向に回転駆動される。中間転写ベルト駆動ローラ1505は、図示しない駆動モータに連結され、この中間転写ベルト駆動ローラ1505の回転に伴い、ローラ1504が従動回転するようになっている。
【0029】
中間転写ベルト1502の下部水平部の下には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(K)の各色にそれぞれ対応する4つの作像ユニット1506Y、1506M、1506C、1506Kが、中間転写ベルト1502に沿って並んで配置されている。
【0030】
各作像ユニット1506Y、1506M、1506C、1506Kは、感光体ドラム1507Y、1507M、1507C、1507Kをそれぞれ有している。各感光体ドラム1507Y、1507M、1507C、1507Kの周囲には、その回転方向に沿って順に、帯電器1508と、プリントヘッド部1509と、現像器1510と、中間転写ベルト1502を挟んで各感光体ドラム1507Y、1507M、1507C、1507Kと対向する1次転写ローラ1511Y、1511M、1511C、1511Kと、クリーナ1512とがそれぞれ配置されている。
【0031】
中間転写ベルト1502の中間転写ベルト駆動ローラ1505で支持された部分には、2次転写ローラ1503が圧接されており、2次転写ローラ1503と中間転写ベルト1502とのニップ(NIP)部が、2次転写領域1530になっている。
【0032】
2次転写領域1530後方の搬送路1541下流位置には、加熱ローラ1521、加圧ローラ1522、および磁束発生部1523から構成される定着装置1520が配置されている。加熱ローラ1521と加圧ローラ1522との圧接部が定着NIP領域1531となっている。
【0033】
画像形成装置1501の下部には、給紙カセット1517が着脱可能に配置されている。給紙カセット1517内に積載収容された用紙Pは、給紙ローラ1518の回転によって最上部のものから1枚ずつ搬送路1540に送り出されることになる。
【0034】
中間転写ベルト1502の最下流側の作像ユニット1506Kと、2次転写領域1530との間には、レジストセンサを兼用するAIDC(画像濃度)センサ1519が設置されている。このレジストセンサ1519は、中間転写ベルト1502上に形成された各色のパターンの間隔を測定し、その間隔を予め定められた基準値と比較することにより、各色の画像の書き出し開始タイミングを調整するためのものである。
【0035】
次に、以上の構成からなる画像形成装置1501の概略動作について説明する。
【0036】
外部装置(例えばパソコン)から画像形成装置1501の画像信号処理部(図示せず)に画像信号が入力されると、画像信号処理部ではこの画像信号をイエロー、シアン、マゼンタ、およびブラックに色変換したデジタル画像信号を作成し、入力されたデジタル信号に基づいて、各作像ユニット1506Y、1506M、1506C、1506Kのプリントヘッド部1509を発光させて露光を行う。これにより、各感光体ドラム1507Y、1507M、1507C、1507Kの表面には、各色用の静電潜像がそれぞれ形成される。
【0037】
各感光体ドラム1507Y、1507M、1507C、1507K上に形成された静電潜像は、各現像器1510によりそれぞれ現像されて各色のトナー画像となる。そして、各色のトナー画像は、各1次転写ローラ1511Y、1511M、1511C、1511Kの作用により、矢印A方向に移動する中間転写ベルト1502上に順次重ね合わせて1次転写される。
【0038】
このようにして中間転写ベルト1502上に形成された重ね合わせトナー画像は、中間転写ベルト1502の移動に従って2次転写領域1530に達する。この2次転写領域1530において、重ね合わされた各色トナー画像は、2次転写ローラ1503の作用により、タイミングローラ1570によって搬送された用紙Pに一括して2次転写される。
【0039】
次に、用紙Pに2次転写されたトナー画像は、定着NIP領域1531に達する。この定着NIP領域1531において、トナー画像は、磁束発生部1523により誘導発熱する加熱ローラ1521及び加圧ローラ1522の作用により用紙Pに定着される。
【0040】
トナー画像が定着された用紙Pは、排紙ローラ1514を介して排紙トレイ1513に排出される。
【0041】
また、タイミングローラ1570により用紙Pの基準位置が確定される。
【0042】
なお、図1における各エレメントの配置や方式などは、装置に応じて適時変更してかまわない。
【0043】
また、画像形成装置は、モノクロ/カラーの複写機、プリンタ、FAXやこれらの複合機などどれであってもよい。
【0044】
図2は、図1の定着装置1520の断面構成を示す図である。
【0045】
ここでは、カラーレーザープリンタ用の定着装置を例示している。
【0046】
図を参照して、定着装置は、加熱ローラ1521と、加圧ローラ1522と、磁束発生部1523と、分離爪8とを備える。磁束発生部1523は、励磁コイル31と、磁性コア32と、コイルボビン33とから構成される。図において、用紙Pの上面にトナーが付着しており、ローラ70によって、用紙Pが図面の左から右へ搬送されている状態を示している。
【0047】
加熱ローラ1521と加圧ローラ1522とは、上下に並行に配列して、それぞれ両端側を不図示の軸受部材に回転自在に支持されている。バネなどを用いた不図示の加圧機構によって、加圧ローラ1522を加熱ローラ1521の回転軸方向に付勢している。加熱ローラ1521の下面部に加圧ローラ1522を所定の加圧力で圧接させることで、圧接ニップ部(定着ニップ部)が形成されている。
【0048】
加圧ローラ1522は、不図示の駆動機構により矢印の時計方向に所定の周速度で回転駆動される。加熱ローラ1521は圧接ニップ部での加圧ローラ1522との圧接摩擦力によって、加圧ローラ1522の回転に従動回転する。尚、加熱ローラ1521を回転駆動させて加圧ローラ1522を従動回転させてもよい。すなわち、駆動と従動との関係は、逆であってもよい。
【0049】
図3は、加熱ローラ1521の概略概念を示す図である。
【0050】
加熱ローラ1521は、層構成を有し、内側から外側に順に、支持層としての芯金11、断熱層(Siスポンジ層)12、電磁誘導発熱層13、弾性層(Siゴム層)14、および離型層(フッ素樹脂層)15の5層構成を有する。ローラ硬度は、例えばASKER−C硬度で30〜90度のものが用いられる。
【0051】
支持層としての芯金11は、厚さ4mmのアルミ製である。材質は強度が確保できればよく、例えば鉄や、PPS(ポリフェニレンサルファイド)のような耐熱性のモールドのパイプを使用することが可能である。但し、芯金が発熱するのを防ぐ為に、電磁誘導加熱の影響が少ない非磁性材料を用いることが望ましい。
【0052】
断熱層12は、電磁誘導発熱層13を断熱保持する為のものであり、耐熱性・弾性を有するゴム材や樹脂材のスポンジ体(断熱構造体)が用いられる。断熱層12に耐熱性・弾性を有するゴム材や樹脂材のスポンジ体(断熱構造体)を用いることにより、電磁誘導発熱層13が断熱保持される。また、電磁誘導発熱層13のたわみを許容して圧接ニップ幅を増やし、ローラ硬度を小さくして排紙性・記録材分離性能を向上させる役目が果たされる。
【0053】
断熱層12は、ゴム材及びスポンジ体の2層構成としてもよい。
【0054】
例えば、断熱層12にシリコンスポンジ材を用いる場合は、その厚さは2〜12mm(望ましくは3〜10mm)、その硬度は、アスカーゴム硬度計で20〜60度(望ましくは30〜50度)に設定される。
【0055】
本実施の形態における電磁誘導発熱層13は、厚さ10〜100μm(望ましくは20〜50μm)の無端状のニッケル電鋳ベルト層である。電磁誘導発熱層13の他の材料として、例えば磁性ステンレスのような磁性材料(磁性金属)といった、比較的透磁率μが高く、適当な抵抗率ρを持つ物を用いてもよい。さらに非磁性材料でも、金属などの導電性のある材料であれば材料を薄膜にする事などにより使用可能である。
【0056】
尚、電磁誘導発熱性層13は、樹脂に発熱粒子を分散させたものを用いても良い。電磁誘導発熱層13に樹脂ベースのものを用いる事によって、分離性を良くすることが可能となる。
【0057】
次に、弾性層14について説明する。弾性層14は、記録材と加熱ローラ表面との密着性を高める役目をするものである。弾性層14は、耐熱性・弾性を有するゴム材や樹脂材の層であり、定着温度での使用に耐えられるシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性エラストマーを用いることができる。
【0058】
弾性層14に熱伝導性の向上、補強等を目的として各種充填剤を混入してもかまわない。熱伝導性粒子としては、ダイヤモンド、銀、銅、アルミニウム、大理石、ガラス等あるが、実用的にはシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、酸化ベリリウムなどが用いられる。
【0059】
弾性層14の厚みは、例えば厚さ10〜800μmが好ましく、100〜300μmがより好ましい。弾性層の厚さが10μm未満であると、目的である厚み方向の弾力性を得ることが難しくなる。一方、800μmを超える厚さになると、発熱層で発生した熱が定着フィルム外周面に達し難くなり、熱効率が悪化する傾向がある。
【0060】
弾性層14は、JIS硬度で1〜80度(望ましくは5〜30度)のシリコンゴムからなることが好ましい。このJIS硬度の範囲であれば、弾性層の強度の低下、密着性の不良を防止しつつ、トナーの定着性の不良を防止できる。
【0061】
このシリコンゴムとしては具体的には、1成分系、2成分系又は3成分系以上のシリコンゴム、LTV型、RTV型又はHTV型のシリコンゴム、縮合型又は付加型のシリコンゴム等を使用できる。本実施の形態においては、弾性層14は、JIS硬度10度、厚さ200μmのシリコンゴムの層である。
【0062】
最外層の離型層15は、加熱ローラ表面の離型性を高めるためのものである。離型層15は、定着温度での使用に耐えられる上に、トナー離型性を有するものである。離型層15としては、例えばシリコンゴム、フッ素ゴムや、PFA、PTFE、FEP、PFEP等のフッ素樹脂が好ましく用いられる。離型層の厚さは、5〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。また、層間接着力を向上させるために、プライマー等による接着処理を行ってもよい。なお、離型層15の中に必要に応じて、導電材、耐摩耗材、良熱伝導材をフィラーとして添加することもできる。
【0063】
磁束発生部1523は、加熱ローラ1521の外側に配置され、発生磁束を加熱ローラ1521の外面側から電磁誘導発熱層13に作用させる。
【0064】
発熱に寄与し、渦電流を発生させる電磁誘導発熱層13の熱容量が小さくて、且つ、電磁誘導発熱層13がスポンジ層12により断熱保持されるため、加熱ローラ表層側にある弾性層14あるいは離型層15が迅速に加熱される。加熱ローラ表面は、定着に必要な温度に迅速に到達するとともに、紙、OHPシート等の用紙Pに熱が奪われても、熱の供給を追いつかせることができる。
【0065】
図4は、加圧ローラ1522の概略構成を示す図である。
【0066】
加圧ローラ1522は、厚さ3mmのアルミ製芯金21の外周に、厚さ3〜10mmのシリコンスポンジゴムの弾性層22と、さらに加熱ローラ1521と同様に、表面の離型性を高めるための離型層25とを設けて作られている。
【0067】
離型層25として、例えばPTFEやPFA等の厚さ10〜50μmのフッ素系樹脂製離型層が設けられ、ローラが形成される。
【0068】
芯金21の材質は、強度が確保できれば、例えば鉄、PPS(ポリフェニレンサルファイド)のような耐熱性のモールドのパイプを使用することが可能であるが、芯金が発熱するのを防ぐ為に電磁誘導加熱の影響が少ない非磁性材料を用いるのが望ましい。
【0069】
加圧ローラ1522は、加熱ローラ1521に対して300〜500Nの荷重で加圧されている。その場合のニップ幅は、約5〜15mmになる。都合によっては荷重を変化させてニップ幅を変えてもよい。
【0070】
断熱層22の厚さは、3〜10mmの範囲で使用条件に合わせて適宜変更可能である。また、断熱層22はシリコンゴム及びシリコンスポンジの2層構成としてもよい。
【0071】
なお、ローラなどの材質や構成は本実施の形態に限定されない。装置に応じて適時変更してもよい。
【0072】
図2において、磁束発生部1523は、励磁コイル31と磁性体コア32とコイルボビン33とからなる。磁束発生部1523は、加熱ローラ1521の外側において加熱ローラ1521に対向させて加熱ローラの長手方向に沿わせて配設してある。
【0073】
磁性体コア32は、横断面が台形形状で、加熱ローラ1521の長手方向寸法に略対応した長さ寸法を有する長尺部材である。さらに、横断面をE字形状として、中央部に加熱ローラ側に突出したコアを設けることにより、発熱効率を高めることもできる。磁性体コア32としては、高透磁率かつ低損失のものを用いる。パーマロイのような合金の場合は、コア内の渦電流損失が高周波で大きくなるため積層構造にしてもよい。
【0074】
コア32は、磁気回路の効率を上げるため、および磁気遮蔽のために用いている。この励磁コイル31とコア32の磁気回路部分は、磁気遮蔽が十分にできる機構がある場合は空芯(コア無し)にしてもよい。また、樹脂材に磁性粉を分散させたものを用いると、透磁率は比較的低いが形状を自由に設定する事ができる。
【0075】
励磁コイル31は、横断面が台形形状で定着ローラ1521の長手方向に沿わせて導線を巻いたような構造であり、励磁コイル31の外面を覆うように磁性体コア32が設けられている。
【0076】
励磁コイル31は、図示しない高周波インバータに接続されて、10〜100[kHz]、100〜2000[W]の高周波電力が供給される。励磁コイル31としては、細い線を数十から数百本を束ねてリッツ線にしたものが用いられており、巻き線に伝熱した場合を考え、耐熱性の樹脂で被覆した物が使用される。
【0077】
交流電流によって誘導された磁束は、磁性体コア32の内部を外部に漏れることなく通り、コアの突起部間で初めて磁性体コア外部に漏れ、加熱ローラ1521の電磁誘導発熱層13(図3)を貫く。これにより、電磁誘導発熱層13に渦電流が流れて導電層自体がジュール発熱する。この電磁誘導発熱層13の発熱で、加熱ローラ1521が加熱状態となる。
【0078】
定着動作では、加圧ローラ1522が回転駆動され、これに伴い加熱ローラ1521も従動回転する。磁束発生部1523の発生磁束の作用により、加熱ローラ1521の電磁誘導発熱性層としての導電層13が電磁誘導発熱して、加熱ローラ1521の表面温度が所定の一定温度になる様自動制御される。この状態において、加熱ローラ1521と加圧ローラ1522との圧接ニップ部に、タイミングローラ1570から搬送され、2次転写領域にてトナー画像が2次転写された、未定着トナー像を形成担持した用紙Pが導入される。この場合、用紙Pの未定着トナー像の形成担持面側が加熱ローラ1521に対面する。
加熱ローラ1521と加圧ローラ1522との圧接ニップ部に導入された記録材Pは、圧接ニップ部を挟持搬送され、加熱ローラ1521で加熱されて、未定着トナー像が用紙Pに溶融定着される。
【0079】
圧接ニップ部を通った用紙Pは、加熱ローラ1521から分離して排出搬送されていく。分離爪8は、加熱ローラ1521の表面に当接させて配置される。用紙Pが圧接ニップ部通過後に加熱ローラ1521面に張り付いてしまった場合に、分離爪8は、それを加熱ローラ1521面から強制的に分離させてジャムを防止するためのものである。
【0080】
なお分離爪8の配置は、加熱ローラ1521に対して接触させるだけでなく、非接触としてもよい。
【0081】
加熱ローラ1521は、内側から外側へ順に、支持層(芯金)11、断熱層12、電磁誘導発熱層13、および離型層15の少なくとも4層から構成することができる。さらに本実施の形態においては図3に示すように、カラー画像に対応するための弾性層14が設けられている。
【0082】
図5は、定着装置1520の中央断面の詳細な構成を示す図である。
【0083】
前述の通り、定着装置1520は、加熱ローラ1521、加圧ローラ1522、および磁束発生部1523で構成される。
【0084】
本実施の形態では、加熱ローラ1521と加圧ローラ1522とを圧接することで構成される定着ニップ部の、長手方向の温度むらを緩和するため、均熱ローラ9が加圧ローラ1522に圧接されている。
【0085】
加熱ローラ1521の表面温度を測定し、温度制御を行うため、非接触型温度センサユニット40が加熱ローラ1521を覗ける位置に配置されている。非接触型温度センサユニット40は、温度センサユニット駆動基板41に取り付けられている。非接触型温度センサユニット40は3つ備えられているが、その配置については図6で説明する。
【0086】
温度センサユニット駆動基板41は、図示しないメカコン(メカコントローラ)基板(コントロールボード)に接続され、メカコン基板のCPUを介して磁束発生部1523がコントロールされる。温度センサユニット駆動基板41は、温度センサユニット取り付け板42により本体フレームに固定されている。
【0087】
非接触型温度センサユニット40としては、いわゆるサーモパイルと呼ばれるものを用いることが好ましい。本実施の形態によると、非接触型温度センサユニット40の汚れによる不具合を解決するための制御が行なわれる。
【0088】
定着装置は、図中の一点鎖線の部分で分離する構成となっている。右側が定着装置のユニット部であり、左側が画像形成装置の本体側である。磁束発生部1523と、非接触型温度センサユニット40とは、画像形成装置の本体側に取付けられている。これにより、定着装置のユニット部を交換した場合にも、磁束発生部1523と、非接触型温度センサユニット40とはそのまま再利用することができる。
【0089】
図6は、図5の各ローラの配置の平面図である。
【0090】
非接触型センサユニット(サーモパイル)401〜403は、加熱ローラ1521の長手方向に並べて、定着装置内ではなく画像形成装置の本体側に配置されている。この3つの非接触型センサユニット(サーモパイル)は、それぞれ違う機能を有している。
【0091】
本実施の形態では、ほぼ中央に配置された非接触型センサユニット401の出力に基づいて、温調(加熱ローラの温度調節)が行なわれる。
【0092】
非接触型センサユニット402は、図中の加熱ローラ1521の中央部より左に寄った位置の温度を測定する。その位置の測定温度は、通紙枚数を制限することに使用される。つまり、非接触型センサユニット402は、温度があらかじめ決められた基準以上まで上昇すると、通紙を停止する(または通紙間隔(紙間)をあける)制御である、いわゆるCPM制御を実施することに用いられる。
【0093】
非接触型センサユニット403は、図中の加熱ローラ1521の中央部より右に寄った位置(加熱ローラ1521の端部付近)の温度を測定する。その位置の測定温度は、加熱ローラ1521の加熱状態を切り替えることに用いられる。すなわち、非接触型センサユニット403は、温度があらかじめ決められた基準以上まで上昇すると、ローラ両端部の発熱量を少なくする制御に用いられる。発熱量を少なくする方法としては、分割したコイルの両端部への通電を停止する、両端部に配置したキャンセルコイルを作動させ、両端部の磁束を制御する、などが考えられる。
【0094】
非接触型センサユニット401の近傍には、非接触型サーミスタ6が配置されている。非接触型センサユニット401〜403は、赤外線量を検出して温度を測定するのに対し、サーミスタ6は、対流、熱伝導、輻射による熱を直接検出することで温度を測定する。このため、測定対象物である加熱ローラ1521から距離を離して配置するほど、測定誤差が大きくなってしまう特徴がある。
【0095】
非接触型サーミスタ6と、非接触型センサユニット401〜403とは、ほぼ同一線上に配置されている。同一線上に配置することで、ローラの周方向の温度差を無視することができる。
【0096】
本実施の形態では、非接触型サーミスタ6は、加熱ローラ1521に非接触とされている。非接触型サーミスタ6は、定着装置ユニット側に配置されている。非接触型サーミスタ6は、非接触型センサユニット401が故障したときのプロテクト用に配置されているものである。非接触型サーミスタ6の検出温度があらかじめ決められた値を超えたとき、異常高温として、給電を停止する、警告出すなどの処置が行なわれる。
【0097】
また、非接触型センサユニット401と非接触型センサユニット403との間には、非接触サーモスタット451が設けられている。均熱ローラ9に対しては、その温度を測定する非接触サーミスタ452,453と、非接触サーモスタット454とが設けられている。
【0098】
図7は、非接触型温度センサユニット40の一部を破断させた斜視図である。
【0099】
非接触型温度センサユニット40は、加熱ローラ1521から放出された赤外線を受光する非接触型温度センサとしてのサーモパイルチップ51と、サーモパイルチップ51を温度補償する補正センサとしてのサーミスタ52と、これらを収めるユニットケース53とで構成される。
【0100】
ユニットケース53は、周囲にフランジ部をもつ略円柱状のベース54と、フランジと嵌め合う形で一体化する筒状の筐体55とで構成される。筒状の筐体55は、頂上部に穴56があいていて、この穴56より赤外線を受光する。穴56は、赤外線透過フィルタ57で封止されている。ユニット内には、不活性ガス(窒素ガスやアルゴンガスなど)を封入しておくことが好ましい。
【0101】
サーモパイルチップ51は、測温素子であるサーモパイル51aの温接点を、図示しない熱容量の小さい絶縁被膜に、また冷接点をシリコン製ヒートシンク51bに配置したものである。ベース54からは接点が3本出ている。これら接点はそれぞれ、サーモパイル出力端子58a、温度補償サーミスタ出力端子58b、GND58cである。これらの端子は、温度センサユニット基板41(図5)に接続される。温度は補正処理され、誤差の小さい実体温度として出力される。
【0102】
図8は、画像形成装置1501が備える温度制御装置を示すブロック図である。
【0103】
図を参照して温度制御装置は、前述した非接触サーミスタ6と、非接触型センサユニット401〜403と、CPUを備えるコントロールボード601と、ユーザに警告を表示する表示部603と、サービスセンターとの通信を行なう通信部605とを備える。磁束発生部1523は、温度の検出結果に基づき制御される。
【0104】
図9は、画像形成装置1501が実行する非接触型センサユニット401のセルフチェック動作を示すフローチャートである。
【0105】
このセルフチェックは、「検出状態情報取得モード」で実行される。「検出状態情報取得モード」では、画像を形成しないとき(プリントを行なわないとき)にセルフチェックが実行される。
【0106】
検出状態情報取得モードは、所定期間が経過する毎に、電源ON時に、またはユーザからのコマンド入力により実行される。すなわち検出状態情報取得モードには、非接触型センサユニットの汚れ検出の指示が行なわれたときに入るように制御することができる。また、一定プリント枚数毎に定期的に入るようにしてもよいし、一定稼動時間毎に入るようにしてもよい。
【0107】
ステップS101において、非接触サーミスタ6の測定結果を用いて、加熱ローラ1521を所定温度(例えば定着温度である180℃)とする。加熱ローラ1521を画像形成時の設定温度に保った状態にして、ステップS103において、非接触サーミスタ6の近傍に設けられた非接触型センサユニット401を用いて、加熱ローラ1521の温度を測定する。
【0108】
ステップS105において、非接触サーミスタ6の測定温度(実測値を補正した補正後温度)と、非接触型センサユニット401の測定温度との差を演算する。ステップS107において、その差が所定値(例えば3℃)を超えるかを判定する。
【0109】
ステップS107でYESであれば、非接触型センサユニット401の汚れなどによる、非接触型センサユニット401の測定エラーが生じているとして、ステップS109で表示部603にエラー表示を行ない、通信部605でサービスセンターにコールを送る。また、加熱ローラの加熱源の加熱を停止する。
【0110】
一方ステップS107でNOであれば、ステップS111で結果が良好であるとして、セルフチェックを終了する。
【0111】
図10は、非接触型センサユニット401と、非接触サーミスタ6との測定温度の具体例を示す図である。
【0112】
本実施の形態では、非接触型センサユニット(サーモパイル)401の検出温度と、非接触型サーミスタ6の補正後温度とを比較することで、非接触型センサユニット(サーモパイル)401の汚れを検出する。なお、非接触型サーミスタ6の補正値は、実験により求めるものであり、構成が変わるとそれにあわせて設定される。
【0113】
図10では、横軸に定着装置のウォームアップからの時間(秒)が、縦軸に加熱ローラ1521の温度が示されている。定着装置のウォームアップ、待機、通紙、待機の順に温度推移が示されている。
【0114】
グラフ中の最も下のラインは、非接触サーミスタ6の実測温度を示す。非接触サーミスタ6は非接触で測定を行なうため、実際の温度よりは低い値が検出される。このため、実測温度を補正することで、その上の細線で示される温度とする(補正後温度)。
【0115】
非接触型センサユニット(サーモパイル)401の検出温度は、上記細線とほぼ重なる太線で示されている。
【0116】
例えば、ウォームアップ中(図中の80秒〜320秒付近)、ウォームアップから待機に移るとき(図中の320秒〜400秒付近)、通紙から待機に移るとき(図中の1050秒〜1200秒付近)など、温度が大きな変化を示す箇所では、非接触型センサユニット401の検出温度と非接触型サーミスタ6の補正後温度との差が大きくなってしまうことがわかる。これは、非接触型サーミスタ6の応答性が悪いために起こっている現象である。また、通紙時(図中の850秒〜1050秒付近)では、非接触型センサユニット401は、通紙時の温度変化を精度良くとらえる(グラフが細かく変動する)のに対して、非接触型サーミスタ6の補正後温度は、通紙時の温度変化をリアルタイムで精度良くとらえることができない(グラフは平坦になっている)。
【0117】
本実施の形態では、非接触型センサユニット401の検出温度と、非接触型サーミスタ6の補正後温度とを比較して、非接触型センサユニット401の検出温度が小さくなると、非接触型センサユニット401のフィルタが汚れていると判断する。
【0118】
非接触型センサユニット401のフィルタが汚れていない状態であっても、非接触型サーミスタ6の補正後温度と、非接触型センサユニット401との測定温度に差が出てしまうと、汚れを検出することができなくなってしまう。
【0119】
本実施の形態における画像形成装置は、非接触型センサユニット401の検出温度と非接触型サーミスタ6の補正後温度とを比較し、フィルタの汚れを検出するモード(「検出状態情報取得モード」)を有する。このモードでは、接触型センサユニット401のフィルタが汚れていなければ非接触型センサユニット401の検出温度と非接触型サーミスタ6の補正後温度とに差が出ない環境で、温度測定を実行する。すなわちこれは、測定対象物の温度変化があまりない、測定対象物の温度が安定した環境である。
【0120】
図11は、検出状態情報取得モードにおいて、サーモパイルが汚れていない場合の非接触型センサユニット401の検出温度と非接触型サーミスタ6の補正後温度との関係を示す図である。
【0121】
このモードでは、定着装置をある一定温度(ここでは180℃)に保った状態で、非接触型センサユニット401の検出温度と、非接触型サーミスタ6の補正後温度とが比較される。非接触型センサユニット401のフィルタが汚れていない状態であれば、2つの温度にほとんど差がないことがわかる。
【0122】
このように、一定温度に保持した状態であれば、非接触型センサユニット401の検出温度と非接触型サーミスタ6の補正後温度とを比較することで、汚れを検出することが可能である。
【0123】
汚れを検出するためには、赤外線の放出が多い状態、すなわち高温状態で検出を行なうことが好ましい。望ましくは、定着の許容温度である100℃〜220℃である。
【0124】
図12は、検出状態情報取得モードにおいて、サーモパイルが汚れている場合の非接触型センサユニット401の検出温度と非接触型サーミスタ6の補正後温度との関係を示す図である。
【0125】
ここでは、非接触型センサユニット401のフィルタが汚れているために、非接触型センサユニット401の検出温度が下がっている。このように温度差がみられたとき、異常である旨の警告を出し、非接触型センサユニット401の清掃を促す。あるいは、交換を促す、給電を停止するなどの処置を行なってもよい。温度差は、それぞれのセンサの温調誤差も考慮して、3℃以上でフィルタが汚れたと判断することが好ましい。
【0126】
なお、図11、12ではわかりやすくするため、非接触型サーミスタ6の補正後の値を用いて説明したが、非接触型サーミスタ6の補正を行う前の生データを用いて汚れの検出を行なうことも可能である。
【0127】
図13は、検出状態情報取得モードにおいて、サーモパイルが汚れていない場合の非接触型センサユニット401の検出温度と非接触型サーミスタ6の補正前温度との関係を示す図である。
【0128】
非接触型サーミスタ6の測定温度は、補正前温度(生値)であるため、実際の温度よりは低くなっている。このため、図に示されるように、非接触型センサユニット401が汚れていない状態でも両測定温度には、約20℃の温度差(180℃−160℃の温度差)がある。この温度差が小さくなってくれば、汚れが発生したと判断することができる。
【0129】
フィルタが汚れていない状態(新品時)の非接触型センサユニット401の検出温度と、非接触型サーミスタ6の補正前温度(生値)との差は、あらかじめ記憶され、汚れの検出に用いられる。
【0130】
図14は、検出状態情報取得モードにおいて、サーモパイルが汚れている場合の非接触型センサユニット401の検出温度と非接触型サーミスタ6の補正前温度との関係を示す図である。
【0131】
ここでは、非接触型センサユニット401のフィルタの汚れにより両センサの測定温度が、約15℃の温度差(175℃−160℃の温度差)となっている。すなわち、図13と比較して、非接触型センサユニット401の測定温度が低くなっている。このような温度差を検出することで、フィルタの汚れを検出することができる。
【0132】
図15は、非接触型サーミスタ6の補正を行う前の生データを用いた非接触型センサユニット401のセルフチェック動作を示すフローチャートである。
【0133】
このセルフチェックは、上述の通り「検出状態情報取得モード」で実行される。「検出状態情報取得モード」では、画像を形成しないとき(プリントを行なわないとき)にセルフチェックが実行される。
【0134】
ステップS201において、非接触サーミスタ6の測定結果を用いて、加熱ローラ1521を所定温度(例えば定着温度である180℃)とする。加熱ローラ1521を画像形成時の設定温度に保った状態にして、ステップS203において、非接触サーミスタ6の近傍に設けられた非接触型センサユニット401を用いて、加熱ローラ1521の温度を測定する。
【0135】
ステップS205において、非接触サーミスタ6の測定温度(実測値を補正していない補正前温度)と、非接触型センサユニット401の測定温度との差(A)を演算する。ステップS207において、上記演算された差(A)と、非接触型センサユニット401の新品時にあらかじめ記憶していた、非接触サーミスタ6の測定温度(実測値を補正していない補正前温度)、および非接触型センサユニット401の測定温度の差(B)とを比較する。ステップS209において、B−Aの値が所定値(例えば3℃)を超えるかを判定する。
【0136】
ステップS209でYESであれば、非接触型センサユニット401の汚れなどによる、非接触型センサユニット401の測定エラーが生じているとして、ステップS211で表示部603にエラー表示を行ない、通信部605でサービスセンターにコールを送る。また、加熱ローラの加熱源の加熱を停止する。
【0137】
一方ステップS209でNOであれば、ステップS213で結果が良好であるとして、セルフチェックを終了する。
【0138】
なお、汚れ検出は、非接触型センサユニット401に限らず、非接触型センサユニット402と非接触型サーミスタ6との間で行なうことも可能である。この場合、測定位置が非接触型センサユニット402と非接触型サーミスタ6とで異なっているため(両測定位置が一定距離以上離れているため)、初期状態(汚れがない状態)での温度差を記憶しておき、その差に変化が生じたときに汚れたと判断すればよい。
【0139】
同様に、非接触型センサユニット403と非接触型サーミスタ6とを用いての汚れ検出も可能である。非接触型センサユニット401〜403のすべての汚れ検出を行なってもよい。
【0140】
[実施の形態における効果]
【0141】
定着用温度検出センサとして非接触型温度センサ(サーモパイル)を用いたとき、赤外線透過フィルタ(フィルム)が汚れると、検出温度に誤差が出る問題が発生する。本実施の形態によると、画像形成装置は、一定に保った温度でサーモパイルの汚れ検知を行うモードを持ち、非接触型サーミスタの検出温度と非接触型温度センサの検出温度とにより、非接触型温度センサの汚れを検出することができる。
【0142】
すなわち、非接触型サーミスタの検出温度と非接触型温度検出素子(サーモパイル)との検出温度の差の変化から、非接触型温度検出素子の汚れが検出され、汚れが検出された場合、警告、清掃、交換、給電の停止などの制御が行なわれる。
【0143】
これにより、電磁誘導加熱方式の定着装置において非接触型センサの汚れを検出することができ、検出誤差のない安定した温度検出を実現することができる。また、サーミスタで汚れ具合を検出するため、精度の高い補正を行なうことができる。
【0144】
また、汚れによる温調温度の高ぶれに起因する、定着ベルトや定着ローラなどの損傷などを防止することができる。
【0145】
[その他]
【0146】
なお上述の実施の形態では、汚れによる温度誤差について説明したが、その他、サーモパイルの変形による温度検出誤差に対しても対処することができる。また、サーモパイルと温度測定位置との間にレンズを設ける場合は、レンズの変形、レンズとサーモパイル素子との位置ずれ、レンズの角度ずれ、レンズの傷などによる温度検出誤差に対しても対処することができる。
【0147】
また上述の実施の形態では、誘導加熱方式のベルト定着器について説明したが、加熱方式としては、ハロゲンランプなど別の加熱源を用いてもよく、ローラ定着器、ベルト定着器、パッド定着器など他の定着方式であっても本発明を適用することができる。
【0148】
また、画像形成装置としては、モノクロ/カラーの複写機、プリンタ、ファクシミリ装置やこれらの複合機(MFP)などいずれであってもよい。
【0149】
また、上述の実施の形態における処理は、ソフトウエアによって行なっても、ハードウエア回路を用いて行なってもよい。
【0150】
また、上述の実施の形態における処理を実行するプログラムを提供することもできるし、そのプログラムをCD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、メモリカードなどの記録媒体に記録してユーザに提供することにしてもよい。また、プログラムはインターネットなどの通信回線を介して、装置にダウンロードするようにしてもよい。
【0151】
なお、上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明の実施の形態の1つにおける画像形成装置の構成を示す図である。
【図2】図1の定着装置1520の断面構成を示す図である。
【図3】加熱ローラ1521の概略概念を示す図である。
【図4】加圧ローラ1522の概略構成を示す図である。
【図5】定着装置1520の中央断面の詳細な構成を示す図である。
【図6】図5の各ローラの配置の平面図である。
【図7】非接触型温度センサユニット40の一部を破断させた斜視図である。
【図8】画像形成装置1501が備える温度制御装置を示すブロック図である。
【図9】画像形成装置1501が実行する非接触型センサユニット401のセルフチェック動作を示すフローチャートである。
【図10】非接触型センサユニット401と、非接触サーミスタ6の測定温度との具体例を示す図である。
【図11】検出状態情報取得モードにおいて、サーモパイルが汚れていない場合の非接触型センサユニット401の検出温度と非接触型サーミスタ6の補正後温度との関係を示す図である。
【図12】検出状態情報取得モードにおいて、サーモパイルが汚れている場合の非接触型センサユニット401の検出温度と非接触型サーミスタ6の補正後温度との関係を示す図である。
【図13】検出状態情報取得モードにおいて、サーモパイルが汚れていない場合の非接触型センサユニット401の検出温度と非接触型サーミスタ6の補正前温度との関係を示す図である。
【図14】検出状態情報取得モードにおいて、サーモパイルが汚れている場合の非接触型センサユニット401の検出温度と非接触型サーミスタ6の補正前温度との関係を示す図である。
【図15】非接触型サーミスタ6の補正を行う前の生データを用いた非接触型センサユニット401のセルフチェック動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0153】
6 非接触型サーミスタ
8 分離爪
9 均熱ローラ
11 芯金
12 断熱層
13 電磁誘導発熱層
14 弾性層
15 離型層
21 芯金
22 弾性層
25 離型層
31 励磁コイル
32 コア
33 コイルボビン
40,401〜403 非接触型温度センサユニット
41 温度センサ基板ユニット
42 温度センサユニット取付板
1501 画像形成装置
1502 中間転写ベルト
1503 2次転写ローラ
1504 中間転写ベルトテンションローラ
1505 中間転写ベルト駆動ローラ
1506Y,M,C,K 作像ユニット
1507Y,M,C,K 感光体ドラム
1508 帯電器
1509 プリントヘッド部
1510 現像器
1511Y,M,C,K 1次転写ローラ
1512 クリーナ
1513 排紙トレイ
1514 排紙ローラ
1517 給紙カセット
1518 給紙ローラ
1519 AIDC(画像濃度)センサ
1520 定着装置
1521 加熱ローラ
1522 加圧ローラ
1523 磁束発生部
1530 2次転写領域
1531 定着NIP領域
1540、1541、1542 搬送路
1570 タイミングローラ
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定体とは非接触に配置され、前記被測定体から放射される赤外線量に応じて温度を検出する第1の温度検出部材と、
前記被測定体とは非接触に配置され、前記被測定体からの対流、熱伝導、および輻射の少なくともいずれかによる熱を検出する第2の温度検出部材と、
前記被測定体を加熱する加熱源と、
画像を形成しないときに、前記被測定体をある一定温度に保った状態とし、その時の前記第1の温度検出部材と前記第2の温度検出部材との検出温度に基づいて、前記第1の温度検出部材の検出状態を取得する取得手段とを備えた、定着装置。
【請求項2】
前記取得手段は、検出状態情報取得モードにおいて取得を行ない、
前記検出状態情報取得モードにおいては、前記被測定体は、画像形成時の設定温度に保たれる、請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記画像形成時の設定温度は、100℃〜220℃である、請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記第1の温度検出部材と前記第2の温度検出部材との検出温度の差が、予め設定された温度差以上となった場合、前記第1の温度検出部材の検出状態が異常であるとする、請求項1から3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記第1の温度検出部材の検出状態が異常である場合、前記加熱源の加熱を停止する、請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記第1の温度検出部材はサーモパイルであり、
前記第2の温度検出部材はサーミスタである、請求項1から5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記被測定体は、加熱ローラであり、
前記第1の温度検出部材は、複数配置されており、
前記第2の温度検出部材は、1つが配置される、請求項1から6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
前記複数の第1の温度検出部材と、前記1つの第2の温度検出部材は、ほぼ同一線上に配置される、請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
前記取得手段は、前記複数の第1の温度検出部材のそれぞれの検出温度に基づいて、前記複数の第1の温度検出部材のそれぞれの検出状態を取得する、請求項7または8に記載の定着装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の定着装置と、
記録媒体に画像を形成する画像形成手段とを備えた、画像形成装置。
【請求項11】
被測定体とは非接触に配置され、前記被測定体から放射される赤外線量に応じて温度を検出する第1の温度検出部材と、
前記被測定体とは非接触に配置され、前記被測定体からの対流、熱伝導、および輻射の少なくともいずれかによる熱を検出する第2の温度検出部材と、
前記被測定体を加熱する加熱源とを備えた定着装置の制御方法であって、
画像を形成しないときに、前記被測定体をある一定温度に保った状態とし、その時の前記第1の温度検出部材と前記第2の温度検出部材との検出温度に基づいて、前記第1の温度検出部材の検出状態を取得する取得ステップを備えた、定着装置の制御方法。
【請求項12】
被測定体とは非接触に配置され、前記被測定体から放射される赤外線量に応じて温度を検出する第1の温度検出部材と、
前記被測定体とは非接触に配置され、前記被測定体からの対流、熱伝導、および輻射の少なくともいずれかによる熱を検出する第2の温度検出部材と、
前記被測定体を加熱する加熱源とを備えた定着装置の制御プログラムであって、
画像を形成しないときに、前記被測定体をある一定温度に保った状態とし、その時の前記第1の温度検出部材と前記第2の温度検出部材との検出温度に基づいて、前記第1の温度検出部材の検出状態を取得する取得ステップをコンピュータに実行させる、定着装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−181081(P2009−181081A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22287(P2008−22287)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】