説明

定着装置およびそれを備える画像形成装置、ならびに定着方法およびそれを用いる画像形成方法

【課題】 カプセルトナーを用いて形成されるトナー像を高い定着強度で記録媒体に定着させることのできる定着装置および定着方法、前記定着装置を備える画像形成装置、ならびに前記定着方法を用いる画像形成方法を提供する。
【解決手段】 定着装置12に、第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ40とを含み、第1加圧ローラ40が第1加熱ローラ30に押圧されて弾性変形する第1の加熱加圧部14と、第2加熱ローラ50と第2加圧ローラ60とを含み、第2加熱ローラ50および第2加圧ローラ60が互いに押圧されて弾性変形する第2の加熱加圧部15とを設ける。これによって、第1の加熱加圧部14でカプセルトナー24のシェル部分を破壊または溶融させてカプセルトナーを圧潰した後、第2の加熱加圧部15でさらに加熱および加圧することができるので、カプセルトナー24をより確実に溶融させることができ、記録用紙25への定着性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセルトナーを用いて記録媒体に形成されるトナー像を定着する定着装置および定着方法、前記定着装置を備える画像形成装置、ならびに前記定着方法を用いる画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーを用いて画像を形成する画像形成方法たとえば電子写真法では、像担持体である感光体の表面に静電潜像を形成した後、トナーを含む現像剤で現像してトナー像を形成し、形成されたトナー像を記録用紙などの記録媒体に転写して定着することによって画像が形成される。トナーとしては、たとえば結着樹脂に着色剤などが分散されたトナーが用いられる。
【0003】
記録媒体にトナーを定着する定着方法としては、たとえばトナー像が転写された記録媒体を一対の定着部材で挟持して加熱および加圧することによってトナーを記録媒体に定着する熱圧定着法がある。熱圧定着法では、定着装置として、たとえば熱源を内部に備える加熱ローラと加熱ローラに圧接させて設けられる加圧ローラとの一対のローラを定着部材として備える、いわゆるヒートローラが用いられる。定着装置の消費エネルギの観点から、定着部材のトナーに接する表面の温度(以後、定着温度とも称する)は低い方が好ましい。熱圧定着法ではトナーを溶融させて定着するので、定着温度を低下させるためには、トナーの溶融温度は低い方が好ましい。
【0004】
このように定着温度を低下させるという観点からは、トナーの溶融温度は低い方が好ましいが、トナーの溶融温度が低いほど、トナーが収容容器中に収容されている間に、たとえば定着装置に備わる熱源からの熱の影響でトナーが融着して凝集しやすくなるので、保存安定性が悪くなる。トナーの溶融温度を低下させるために結着樹脂の溶融温度よりも低い融点を有するワックスをトナー中に含有させる場合には、ワックス同士の融着によってトナーの凝集が一層生じやすくなるので、保存安定性がさらに悪くなる。トナーの保存安定性が悪く、収容容器内でトナーの凝集が生じると、像担持体にトナーを安定して供給することができず、現像できなくなるという問題が生じる。
【0005】
トナーの保存安定性を向上させるための技術としては、結着樹脂に着色剤などが分散された粒子をコア部分とし、コア部分に含有される結着樹脂よりも溶融温度の高い結着樹脂を含有するシェル部分でコア部分を被覆してカプセル化し、カプセルトナーとして用いることが考えられる(たとえば、特許文献1参照)。このようにカプセルトナーとすることによってトナーの保存安定性は向上されるが、定着させるときにはシェル部分が溶融しにくいので、カプセル化する前に比べて定着温度を高くすることが必要になる。したがって、定着温度を低下させるためにコア部分の溶融温度を低下させたにも関わらず、定着温度を低下させることはできず、逆に定着温度が高くなるという問題が生じる。
【0006】
またヒートローラで定着するときには、トナー像とともに記録媒体が加熱および加圧されるので、定着温度を高くし過ぎると、記録媒体の加熱ローラへの巻きつき、および記録媒体がカールした状態で排出されるという問題が生じる。またトナーが溶融しすぎてトナー同士の凝集力が低下し、トナーが定着部材に融着して取去られる高温オフセット現象が発生するという問題がある。カプセルトナーの場合、コア部分の結着樹脂の溶融温度はシェル部分の結着樹脂の溶融温度よりも低いので、定着温度をシェル部分が溶融可能な温度にすると、コア部分が溶融しすぎて高温オフセット現象が発生しやすくなる。
【0007】
熱圧定着法に関する技術ではないが、カプセルトナーの定着性を向上させるための技術として、特定の平均粒径を有する小粒径トナーと、小粒径トナーよりも大きい平均粒径を有する大粒径トナーとを含むカプセルトナーを用いる技術がある(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2に開示の技術では、トナーを加熱せずに定着部材で加圧して塑性変形させて定着する圧力定着法によってトナー像を定着する。圧力定着法では、トナーは溶融されないので、熱圧定着法に比べて定着性が悪く、擦過などによってトナーが記録媒体から剥離しやすいという問題がある。
【0008】
圧力定着法では、カプセルトナーは、粒径が小さくなるほど機械的に破壊されにくくなり、定着性が低下するので、定着性の低下を防ぐために定着させるときの圧力を高くする必要がある。特許文献2に開示の技術では、定着に必要な圧力を高くすることなく、小粒径トナーを用いた場合の定着性の低下を防ぐために、大粒径カプセルトナーを破壊させ、大粒径カプセルトナーのコア部分に含まれる結着樹脂で未破壊の小粒径カプセルトナーを結着させることによって定着させることを開示する。
【0009】
特許文献2に開示の技術では、小粒径カプセルトナーのみを用いる場合に比べれば定着に必要な圧力を低減することは可能であるが、カプセル化されていないトナーを用いる場合に比べると、カプセルトナーを機械的に破壊するための圧力は高くなる。トナーを破壊するための圧力を高くするためには、定着装置の剛性を強くする必要があり、定着装置の大型化、ひいては画像形成装置の大型化を招く。したがって仮に特許文献2に開示の技術を熱圧定着法に適用し、定着させるときに加える圧力を高めようとした場合、定着装置の剛性を強くするために、定着装置が大型化し、ひいては画像形成装置が大型化するという問題が生じる。
【0010】
また圧力定着法の一つとして、記録媒体に形成されたトナー像を、無端型フィルムを介して予熱した後に、定着部材で加圧して定着する方法がある(たとえば、特許文献3参照)。特許文献3に開示の技術では、カプセルトナーのシェル部分の溶融温度によっては、予熱によってシェル部分を溶融させることができず、コア部分まで溶融させることができないので、予熱後に加圧しても記録媒体への定着強度が充分に得られない場合がある。
【0011】
【特許文献1】特開2000−284525号公報(第2−3頁)
【特許文献2】特開平8−190220号公報(第4−5頁,第2−3図)
【特許文献3】特開平5−11651号公報(第3−4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、カプセルトナーを用いて形成されるトナー像を高い定着強度で記録媒体に定着させることができ、定着性に優れる画像を形成することのできる定着装置および定着方法、前記定着装置を備える画像形成装置、ならびに前記定着方法を用いる画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、着色剤および第1の結着樹脂を含有するコア部分と、コア部分を被覆し、第2の結着樹脂を含有するシェル部分であって、コア部分の溶融温度よりも高い溶融温度を有するシェル部分とを有するカプセルトナーを用いて記録媒体に形成されるトナー像を記録媒体に定着させる定着装置であって、
トナー像が形成された記録媒体を挟持して加熱および加圧可能な一対の第1定着部材を含み、前記一対の第1定着部材は、一方の第1定着部材がローラ状に形成され、他方の第1定着部材が一方の第1定着部材に押圧されて弾性変形する第1の加熱加圧手段と、
第1の加熱加圧手段よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、前記記録媒体を挟持して加熱および加圧可能な一対の第2定着部材を含み、前記一対の第2定着部材は、互いに押圧されて弾性変形する第2の加熱加圧手段とを備えることを特徴とする定着装置である。
【0014】
本発明に従えば、トナー像が形成された記録媒体を、第1の加熱加圧手段が一対の第1定着部材に挟持して加熱および加圧した後、第2の加熱加圧手段が一対の第2定着部材に挟持して加熱および加圧する。第1の加熱加圧手段の一対の第1定着部材は、ローラ状の一方の第1定着部材に押圧されて他方の第1定着部材が弾性変形するので、一対の第1定着部材が互いに押圧されて弾性変形する場合に比べて、同じ大きさの力で押圧させたとき、一対の第1定着部材の圧接された部分の面積を小さくし、一対の第1定着部材によって記録媒体に加わる圧力を大きくすることができる。また第2の加熱加圧手段の一対の第2定着部材は、互いに押圧されて弾性変形するので、一方の第2定着部材がローラ状に形成され、このローラ状の一方の第2定着部材に押圧されて他方の第2定着部材が弾性変形する場合に比べて、同じ大きさの力で押圧させたとき、一対の第2定着部材の互いに押圧される部分の面積を大きくすることができる。
【0015】
また本発明は、一対の第1定着部材は、
一方の第1定着部材が芯材を含み、他方の第1定着部材が、芯材と、芯材を被覆し、ゴム弾性を有するゴム弾性層とを含み、
一対の第2定着部材は、
各第2定着部材が、芯材と、芯材を被覆し、ゴム弾性を有するゴム弾性層とを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明に従えば、第1の加熱加圧手段の一対の第1定着部材が互いに押圧されるとき、一方の第1定着部材の芯材と他方の第1定着部材のゴム弾性層とが押圧されるので、他方の第1定着部材のゴム弾性層が一方の第1定着部材の芯材に押圧されて弾性変形する。また第2の加熱加圧手段の一対の第2定着部材が互いに押圧されるとき、一方の第2定着部材のゴム弾性層と他方の第2定着部材のゴム弾性層とが押圧されるので、一対の第2定着部材の各ゴム弾性層が互いに押圧されて弾性変形する。
【0017】
また本発明は、着色剤および第1の結着樹脂を含有するコア部分と、コア部分を被覆し、第2の結着樹脂を含有するシェル部分であって、コア部分の溶融温度よりも高い溶融温度を有するシェル部分とを有するカプセルトナーを用いて記録媒体にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記本発明の定着装置とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0018】
本発明に従えば、トナー像形成手段によって、着色剤および第1の結着樹脂を含有するコア部分が、第2の結着樹脂を含有するシェル部分であってコア部分の溶融温度よりも高い溶融温度を有するシェル部分で被覆されるカプセルトナーを用いて記録媒体にトナー像が形成され、前記本発明の定着装置によって定着される。
【0019】
また本発明は、コア部分は、さらに離型剤を含有し、
コア部分中の離型剤の含有率は5重量%以上30重量%以下であることを特徴とする。
【0020】
本発明に従えば、カプセルトナーのコア部分には離型剤が5重量%以上30重量%以下の含有率で含有される。コア部分中の離型剤の含有率が5重量%未満であると、コア部分中の離型剤の含有率が5重量%以上である場合に比べて、コア部分が溶融しにくくなるので、カプセルトナーの記録媒体への定着性が低くなる。コア部分中の離型剤の含有率が30重量%を超えると、コア部分中の離型剤の含有率が30重量%以下である場合に比べて、保存されている間に離型剤がカプセルトナー表面に滲出しやすくなるので、カプセルトナー同士が凝集するおそれがあり、カプセルトナーの保存安定性が低くなる。コア部分中の離型剤の含有率を5重量%以上30重量%以下にすることによって、カプセルトナーの保存安定性を低下させることなく、記録媒体への定着性を向上させることができる。
【0021】
また本発明は、コア部分は、さらに離型剤を含有し、
離型剤の融点は、50℃以上80℃以下であることを特徴とする。
【0022】
本発明に従えば、カプセルトナーのコア部分に含有される離型剤の融点は50℃以上80℃以下である。離型剤の融点が50℃未満であると、トナー作製の過程、たとえばコア部分の材料を混練する混練工程において離型剤が流出し、滑りやすくなるため、十分に混練できないおそれがある。十分に混練できないと、たとえばコア部分における第1の結着樹脂への着色剤の分散性が低下し、形成される画像の濃度が低下するおそれがある。離型剤の融点が80℃を超えると、離型剤の融点が50℃以上80℃以下である場合に比べて、第2の加熱加圧手段の一対の第2定着部材で加熱および加圧するときにコア部分が溶融しにくくなるので、トナーの溶融粘度を低下させる効果が充分に発揮されず、カプセルトナーの記録媒体への定着性が低くなる。コア部分に含有される離型剤の融点を50℃以上80℃以下にすることによって、トナーの作製過程たとえば混練工程において、離型剤の流出を防ぎ、十分に混練することができるので、たとえば第1の結着樹脂への着色剤の分散性を向上させ、画像濃度の低下を抑えることができる。またカプセルトナーの記録媒体への定着性を向上させることができる。
【0023】
また本発明は、カプセルトナーは、シェル部分の重量比が、コア部分100重量部に対して1.0重量部以上5.0重量部以下であることを特徴とする。
【0024】
本発明に従えば、カプセルトナーのシェル部分の重量比は、コア部分100重量部に対して1.0重量部以上5.0重量部以下である。シェル部分の重量比がコア部分100重量部に対して1.0重量部未満であると、コア部分をシェル部分で被覆してカプセルトナーにする効果が充分に発揮されず、保存安定性の向上効果が充分に得られないおそれがある。シェル部分の重量比がコア部分100重量部に対して5.0重量部を超えると、定着装置の第1の加熱加圧手段によってシェル部分が破壊または溶融されにくくなるので、シェル部分が破壊または溶融されていない状態でカプセルトナーが第2の加熱加圧手段で加熱および加圧されるおそれがあり、コア部分が充分に溶融せず、記録媒体への定着性が低下するおそれがある。前述のようにカプセルトナーのシェル部分の重量比をコア部分100重量部に対して1.0重量部以上5.0重量部以下にすることによって、トナーの保存安定性を低下させることなく、カプセルトナーの記録媒体への定着性をより確実に向上させることができる。
【0025】
また本発明は、着色剤および第1の結着樹脂を含有するコア部分と、コア部分を被覆し、第2の結着樹脂を含有するシェル部分であって、コア部分の溶融温度よりも高い溶融温度を有するシェル部分とを有するカプセルトナーを用いて記録媒体に形成されるトナー像を記録媒体に定着させる定着方法であって、
トナー像が形成された記録媒体を、一対の第1定着部材であって、一方の第1定着部材がローラ状に形成され、他方の第1定着部材が一方の第1定着部材に押圧されて弾性変形する一対の第1定着部材によって挟持して加熱および加圧する第1の加熱加圧工程と、
第1の加熱加圧工程で加熱および加圧された記録媒体を、一対の第2定着部材であって、互いに押圧されて弾性変形する一対の第2定着部材によって挟持して加熱および加圧する第2の加熱加圧工程とを含むことを特徴とする定着方法である。
【0026】
本発明に従えば、トナー像が形成された記録媒体を、第1の加熱加圧工程において一対の第1定着部材に挟持して加熱および加圧した後、第2の加熱加圧工程において一対の第2定着部材に挟持して加熱および加圧する。第1の加熱加圧工程で用いられる一対の第1定着部材は、ローラ状の一方の第1定着部材に押圧されて他方の第1定着部材が弾性変形するので、一対の第1定着部材が互いに押圧されて弾性変形する場合に比べて、同じ大きさの力で押圧させたとき、一対の第1定着部材の圧接された部分の面積を小さくし、一対の第1定着部材によって記録媒体に加わる圧力を大きくすることができる。また第2の加熱加圧工程で用いられる一対の第2定着部材は、互いに押圧されて弾性変形するので、一方の第2定着部材がローラ状に形成され、このローラ状の一方の第2定着部材に押圧されて他方の第2定着部材が弾性変形する場合に比べて、同じ大きさの力で押圧させたとき、一対の第2定着部材の互いに押圧される部分の面積を大きくすることができる。
【0027】
また本発明は、着色剤および第1の結着樹脂を含有するコア部分と、コア部分を被覆し、第2の結着樹脂を含有するシェル部分であって、コア部分の溶融温度よりも高い溶融温度を有するシェル部分とを有するカプセルトナーを用いて記録媒体にトナー像を形成し、前記本発明の定着方法によって記録媒体に定着させることを特徴とする画像形成方法である。
【0028】
本発明に従えば、着色剤および第1の結着樹脂を含有するコア部分が、第2の結着樹脂を含有するシェル部分であってコア部分の溶融温度よりも高い溶融温度を有するシェル部分で被覆されるカプセルトナーを用いて記録媒体にトナー像が形成され、前記本発明の定着方法によって定着される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、第1の加熱加圧手段では、一対の第1定着部材によって記録媒体に加わる圧力を大きくすることができるので、トナー像を構成するカプセルトナーのシェル部分を破壊または溶融させ、カプセルトナーを圧潰することができ、記録媒体に形成されるトナー層の厚さを小さくすることができる。また第2の加熱加圧手段では、一対の第2定着部材の互いに押圧される部分の面積を大きくすることができるので、記録媒体に形成されたトナー層を包み込むようにして加熱および加圧することができる。このように第1の加熱加圧手段の一対の第1定着部材でカプセルトナーを圧潰して、トナー層の厚さを小さくした後、第2の加熱加圧手段の一対の第2定着部材で包み込むようにして加熱および加圧することによって、第1および第2定着部材による各加熱温度を高くすることなく、トナー層を全体にわたって溶融させることができる。したがって、カプセルトナーの記録媒体への定着強度を高め、定着性に優れる画像を形成することができる。またトナー層を構成する各カプセルトナー粒子同士を融着させることができるので、トナー層の表面を平滑にすることができ、たとえばカプセルトナーがカラートナーの場合、彩度の高い画像を形成することができる。
【0030】
また本発明によれば、第1の加熱加圧手段の一対の第1定着部材は、他方の第1定着部材のゴム弾性層が一方の第1定着部材の芯材に押圧されて弾性変形するので、他方の第1定着部材が一方の第1定着部材に押圧されて弾性変形する一対の第1定着部材が実現される。また第2の加熱加圧手段の一対の第2定着部材は各ゴム弾性層が互いに押圧されて弾性変形するので、互いに押圧されて弾性変形する一対の第2定着部材が実現される。
【0031】
また本発明によれば、トナー像形成手段によって、着色剤および第1の結着樹脂を含有するコア部分が、第2の結着樹脂を含有するシェル部分であってコア部分の溶融温度よりも高い溶融温度を有するシェル部分で被覆されるカプセルトナーを用いて記録媒体にトナー像が形成され、前記本発明の定着装置によって定着されるので、定着性に優れる画像を形成することができる。また前記カプセルトナーは保存安定性に優れ、記録媒体に安定して供給することができるので、定着性に優れる画像を安定して形成することができる。
【0032】
また本発明によれば、カプセルトナーのコア部分には離型剤が5重量%以上30重量%以下の含有率で含有されるので、カプセルトナーの保存安定性を低下させることなく、記録媒体への定着性を向上させることができる。
【0033】
また本発明によれば、カプセルトナーのコア部分に含有される離型剤の融点は50℃以上80℃以下であるので、トナーの作製過程たとえば混練工程において、離型剤の流出を防いで十分に混練することができ、たとえば第1の結着樹脂への着色剤の分散性を向上させ、画像濃度の低下を抑えることができる。また記録媒体への定着性をより確実に向上させることができる。
【0034】
また本発明によれば、カプセルトナーのシェル部分の重量比は、コア部分100重量部に対して1.0重量部以上5.0重量部以下であるので、カプセルトナーの保存安定性を低下させることなく、カプセルトナーの記録媒体への定着性をより確実に向上させることができる。
【0035】
また本発明によれば、第1の加熱加圧工程では、一対の第1定着部材によって記録媒体に加わる圧力を大きくすることができるので、トナー像を構成するカプセルトナーのシェル部分を破壊または溶融させ、カプセルトナーを圧潰することができ、記録媒体に形成されるトナー層の厚さを小さくすることができる。また第2の加熱加圧工程では、一対の第2定着部材の互いに押圧される部分の面積を大きくすることができるので、記録媒体に形成されたトナー層を包み込むようにして加熱および加圧することができる。このように第1の加熱加圧工程で一対の第1定着部材でカプセルトナーを圧潰して、トナー層の厚さを小さくした後、第2の加熱加圧工程で一対の第2定着部材で包み込むようにして加熱および加圧することによって、第1および第2定着部材による各加熱温度を高くすることなく、トナー層を全体にわたって溶融させることができる。したがって、カプセルトナーの記録媒体への定着強度を高め、定着性に優れる画像を形成することができる。またトナー層を構成する各カプセルトナー粒子同士を融着させることができるので、トナー層の表面を平滑にすることができ、たとえばカプセルトナーがカラートナーの場合、彩度の高い画像を形成することができる。
【0036】
また本発明によれば、着色剤および第1の結着樹脂を含有するコア部分が、第2の結着樹脂を含有するシェル部分であってコア部分の溶融温度よりも高い溶融温度を有するシェル部分で被覆されるカプセルトナーを用いて記録媒体にトナー像が形成され、前記本発明の定着方法によって定着されるので、定着性に優れる画像を形成することができる。また前記カプセルトナーは保存安定性に優れ、記録媒体に安定して供給することができるので、定着性に優れる画像を安定して形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1は、本発明の実施の一形態である画像形成装置1の構成を簡略化して示す部分断面図である。図2は、図1に示す画像形成装置1に備わる定着装置12を拡大して示す断面図である。図1および図2では、一部分の厚みを省略して示す。本実施形態の画像形成装置1は、白黒画像およびカラー画像を形成可能に構成される。本実施の形態として例示する画像形成装置1は、デジタルカラープリンタであり、図示しないパーソナルコンピュータなどの画像入力装置から入力される画像情報に基づいて、フルカラー画像、多色もしくは単色のカラー画像、または白黒画像を形成する。
【0038】
画像形成装置1は、トナー像形成手段である画像形成ユニット11と、本発明の実施の一形態である定着装置12と、転写搬送ベルト機構13とを含んで構成される。定着装置12は、複数の加熱加圧部、本実施形態では2つの加熱加圧部14,15を備える。画像形成装置1は、複数、より詳細には4つの画像形成ユニット11を備え、4つの画像形成ユニット11が並設されるタンデム型の画像形成装置である。
【0039】
本実施形態において画像形成装置1は、外部に設けられる図示しない画像入力装置から入力される画像情報を、複数の色相、より詳細にはイエロー色(y)、マゼンタ色(m)、シアン色(c)および黒色(k)の4つの色相に色分解し、各色相に対応するトナー像を画像形成ユニット11によってそれぞれ形成する。画像形成ユニット11は、イエロー色(y)、マゼンタ色(m)、シアン色(c)および黒色(k)の各色相に対応して4つが設けられる。4つの画像形成ユニット11は、各色相に対応する色のトナーが現像に用いられることおよび各色相に対応する画像情報が画像入力装置から入力されること以外は同様の構成を有するので、イエロー色(y)の画像形成ユニット11yについて説明し、他の色相の画像形成ユニット11については説明を省略する。以後、各色相に対応する画像形成ユニット11を個々に示す場合には、参照符号の後に色を表すアルファベットの添字を付与し、総称する場合には参照符号のみで表す。アルファベットの添字は、イエロー色については「y」を付し、マゼンタ色については「m」を付し、シアン色については「c」を付し、黒色については「k」を付す。
【0040】
画像形成ユニット11yは、円柱状であって画像形成装置1本体に回転可能に設けられる感光体16yと、感光体16yの周方向に感光体16yの回転方向上流側から下流側に向かって順次配置される帯電装置17y、露光装置18y、現像装置19y、転写ローラ20yおよびクリーニング装置21yを含んで構成される。図1では、理解を容易にするために感光体16yは、後述する転写搬送ベルト22と離隔するように図示しているが、実際には感光体16yは、転写搬送ベルト22に当接するように設けられ、転写搬送ベルト22を介して転写手段である転写ローラ20yに対向するように配置される。感光体16yの形状は円柱状に限定されず、円筒状または無端ベルト状などであってもよい。
【0041】
帯電装置17yは、感光体16yの表面を一様に帯電させる帯電手段である。帯電装置17yは、本実施の形態ではチャージャー型帯電装置であり、感光体16yの外周面に対向するように配置される。帯電装置17は、チャージャー型帯電装置に限定されるものではなく、たとえばブラシ型帯電装置またはロール型帯電装置などであってもよい。
【0042】
露光装置18yは、たとえば半導体レーザ素子などの光源を備え、光源から出射されるレーザ光などの光を感光体16yに照射することによって、帯電装置17yで帯電された感光体16yを露光して静電潜像を生成させる露光手段である。イエロー色の画像形成ユニット11に備わる露光装置18yは、一様に帯電された感光体16yの表面を、イエロー色の色相の画像情報に応じた光で露光し、イエロー色の画像情報に対応する静電潜像を形成する。
【0043】
現像装置19yは、感光体16yの表面にトナーを供給することによって、露光装置18yによる露光によって感光体16yの表面に形成された静電潜像を現像し、トナー像を形成する。トナーとしては、後述するカプセルトナー24が用いられる。現像装置19の現像剤収容容器23に収容されるカプセルトナー24の色は、各色相に対応して選択される。イエロー色の画像形成ユニット11yに備わる現像装置19yは、イエロー色に対応する着色剤をコア部分に含有するイエロー色のカプセルトナー24yを現像剤収容容器23yに収容する。イエロー色用の現像装置19yは、イエロー色の画像情報に対応する静電潜像が形成された感光体16yの表面に、イエロー色のカプセルトナー24yを供給することによって、イエロー色のトナー像を形成する。
【0044】
転写ローラ20yは、転写搬送ベルト22の内周面に接し、転写搬送ベルト22を介して感光体16yに当接するように設けられる。転写ローラ20yは、転写搬送ベルト22によって送給される記録媒体である記録用紙25をトナー24yと逆の極性に帯電させることによって、現像されて感光体16yの外周面上に形成されるトナー像を記録用紙25に転写させる。
【0045】
クリーニング装置21yは、たとえばクリーニングブレードを備え、感光体16yの外周面にクリーニングブレードを当接させることによって、記録用紙25に転写されずに感光体16y表面に残留するトナーを感光体16yの表面から掻取り、廃トナー収容容器に収容する。クリーニング装置21yは、図示しない除電ランプなどの除電手段とともに設けられる。
【0046】
4つの画像形成ユニット11は、記録用紙25の搬送方向上流側から下流側に向かって、イエロー色用の画像形成ユニット11y、マゼンタ色用の画像形成ユニット11m、シアン色用の画像形成ユニット11cおよび黒色用の画像形成ユニット11kの順に並設される。
【0047】
転写搬送ベルト機構13は、駆動ローラ26と、従動ローラ27と、駆動ローラ26と従動ローラ27とによって略平行に伸びるように張架される無端ベルト状の転写搬送ベルト22とを備える。転写搬送ベルト22は、駆動ローラ26の軸線まわりの回転によって矢符Z方向に摩擦駆動される。転写搬送ベルト22は、図示しない用紙吸着用帯電器によって帯電され、これによって記録用紙25を静電的に吸着して搬送する。
【0048】
定着装置12は、前述のように加熱加圧手段である加熱加圧部を複数、本実施形態では2つ備える。2つの加熱加圧部14,15である第1の加熱加圧部14および第2の加熱加圧部15は、記録用紙25の搬送方向Xに並んで設けられる。2つの加熱加圧部14,15のうち、第2の加熱加圧部15は、第1の加熱加圧部14よりも記録用紙25の搬送方向Xの下流側に設けられる。第1の加熱加圧部14は、第1の加熱加圧手段に相当し、第2の加熱加圧部15は、第2の加熱加圧手段に相当する。記録用紙25の搬送方向Xにおける第1の加熱加圧部14と第2の加熱加圧部15との間には、支持台70が設けられる。第1の加熱加圧部14から排出される記録用紙25は、支持台70を介して第2の加熱加圧部15に搬送される。
【0049】
第1の加熱加圧部14は、一対の第1定着部材である一対のローラ30,40を備える。より詳細には、第1の加熱加圧部14は、一対のローラとして、第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ40とを備える。このように本実施形態では、一対の第1定着部材の各第1定着部材はローラ状に形成される。また一対の第1定着部材である一対のローラ30,40は、第1加圧ローラ40が第1加熱ローラ30に押圧されて弾性変形するように構成される。第1加熱ローラ30は、第1の加熱加圧手段の一方の第1定着部材に相当し、第1加圧ローラ40は、第1の加熱加圧手段の他方の第1定着部材に相当する。
【0050】
第1加熱ローラ30は、図2に示すように、第1加熱側芯材31と、第1加熱側離型層32と、加熱手段である第1加熱側熱源33とを含んで構成される。第1加熱ローラ30は中空に形成される。第1加熱ローラ30の外径はたとえば40mmである。第1加熱ローラ30は、たとえば軸線方向両端部が絞り加工され、両端部が図示しない軸受けに回転可能に支持される。軸受けは、たとえば、ボールベアリングなどのころがり軸受またはすべり軸受によって実現される。第1加熱ローラ30の軸線方向両端部は、たとえば外径30mm、厚さ1.5mmに絞り加工される。
【0051】
第1加熱側芯材31は、中空状、本実施形態では円筒状に形成される。第1加熱側芯材31は、剛性を有する材料、より詳細には剛性および耐熱性を有する材料から成る。第1加熱側芯材31の材料としては、たとえばアルミニウムおよび鉄などの金属材料、ならびにステンレス鋼を含むアルミニウム鉄合金などの合金材料が挙げられる。第1加熱側芯材31の厚さは、たとえば3mmである。
【0052】
第1加熱側離型層32は、第1加熱側芯材31の軸線方向における両端部間の中間部を被覆するように設けられる。第1加熱側離型層32は、離型性を有する材料、より詳細には離型性および耐熱性を有する材料から成る。第1加圧側離型層43の材料としては、たとえばパーフルオロアルコキシテトラフルオロエチレン(Perfluoroalcoxy
tetrafluoroethylene;略称PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(
Polytetrafluoroethylene;略称PTFE)などのフッ素系樹脂が挙げられる。第1加熱側離型層32は、たとえば第1加熱側離型層32の材料を塗布した後焼成することによって形成される。また第1加熱側離型層32は、第1加熱側離型層32の材料をチューブ状に成形したものを第1加熱側芯材31に被覆するチューブ被覆によって形成されてもよい。第1加熱側離型層32は、たとえば厚さ30μmのPFAチューブによって実現される。
【0053】
第1加熱側離型層32の厚さは、5μm以上50μm以下に選ばれる。第1加熱側離型層32の厚さは前記範囲に限定されないが、第1の加熱加圧部14によってカプセルトナー24をより確実に圧潰するためには、本実施形態のように5μm以上50μm以下であることが好ましい。第1加熱側離型層32の厚さが50μmを超えると、第1加圧ローラ40の外周面部の硬度によっては、第1加熱ローラ30が第1加圧ローラ40との圧接によって弾性変形するおそれがあり、第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ40との接触面積が大きくなり、第1の加熱加圧部14においてカプセルトナー24に加わる圧力が不足し、カプセルトナー24を圧潰できなくなるおそれがある。また第1加熱側芯材31からの熱が第1加熱ローラ30の外周面部まで伝導されにくくなるので、第1の加熱加圧部14においてカプセルトナー24を充分に加熱することができず、圧潰できないおそれがある。また第1加熱ローラ30の外周面部の温度を所定の温度にするために要する熱エネルギが増大し、消費エネルギが増大するという問題もある。第1加熱側離型層32の厚さが5μm未満であると、耐熱性が保たれない問題点がある。
【0054】
第1加熱側離型層32は、第1加熱ローラ30の最外層である。第1加熱ローラ30の最外層は、記録用紙25に転写されたカプセルトナー24と直接接触する。第1加熱ローラ30の最外層として第1加熱側離型層32を設けることによって、第1加熱側離型層32がない場合に比べて、カプセルトナー24と第1加熱ローラ30との離型性を高め、定着するときに第1加熱ローラ30にカプセルトナー24が付着することをより確実に防止することができる。第1加熱側離型層32にはフィラーが含有されてもよい。第1加熱側離型層32の厚さは、第1加熱側芯材31の厚さよりも小さく、より詳細には第1加熱ローラ30の外周面部が第1加熱側芯材31の剛性を反映して第1加熱側芯材31と同程度の剛性を有するようになるように選ばれる。本実施形態では、第1加熱側離型層32の厚さは、第1加熱側芯材31の厚さの0.1〜2%程度と極めて小さいので、第1加熱ローラ30の外周面部は第1加熱側芯材31と同程度の剛性を有する。
【0055】
第1加熱側熱源33は、第1加熱側芯材31の半径方向内方に、第1加熱側芯材31から離隔して設けられる。第1加熱側熱源33は、第1加熱側芯材31および第1加熱側離型層32を加熱する。第1加熱側熱源33は、第1加熱側芯材31および第1加熱側離型層32を加熱することのできるものであればよく、たとえばハロゲンランプまたはセラミックヒータによって実現される。第1加熱ローラ30の加熱手段は、これに限定されず、たとえば誘導加熱によって第1加熱側芯材31を加熱し、第1加熱側芯材31の熱によって第1加熱側離型層32を加熱するものであってもよい。
【0056】
第1加圧ローラ40は、第1加圧側芯材41と、第1加圧側弾性層42と、第1加圧側離型層43と、第1加圧側熱源44とを含んで構成される。第1加圧側芯材41は中空に形成される。本実施形態において第1加圧側芯材41は、円筒状に形成される。第1加圧側芯材41は、剛性を有する材料、より詳細には剛性を有し、かつ耐熱性を有する材料から成る。第1加圧側芯材41の材料としては、たとえば鉄およびアルミニウムなどの金属材料、ならびに鉄アルミニウム合金およびステンレス鋼などの合金材料が挙げられる。第1加圧側芯材41の厚さは、たとえば3mmである。
【0057】
第1加圧側弾性層42は、ゴム弾性を有する材料、より詳細にはゴム弾性を有し、かつ耐熱性を有する材料から成る。第1加圧側弾性層42は、ゴム弾性層に相当する。第1加圧側弾性層42の材料としては、たとえばシリコーンゴムなどのゴム材料、シリコーンゴムを発泡させたシリコーン系スポンジゴムなどの発泡性スポンジゴムなどのスポンジゴム材料が挙げられる。第1加圧側弾性層42は、たとえばゴム弾性および耐熱性を有する材料を円筒状に成形した円筒状部材によって実現される。第1加圧側弾性層42は、たとえば、第1加圧側芯材41と第1加圧側離型層43であるPFAチューブとをセットした注型金型に、第1加圧側弾性層42の材料を注入し、1次加硫およびオーブンによる2次加硫をした後に、端部を成形することによって形成される。
【0058】
本実施形態において第1加圧側弾性層42の厚さは、0.5mm以上5.0mm以下、より詳細には1.0mm以上3.0mm以下に選ばれる。第1加圧側弾性層42の厚さは前記範囲に限定されないが、本実施形態のように0.5mm以上5.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上3.0mm以下であることがさらに好ましい。第1加圧側弾性層42の厚さを0.5mm以上5.0mm以下、特に1.0mm以上3.0mm以下にすることによって、記録用紙25の搬送方向Xにおける第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ40との圧接部の幅(以下、「第1ニップ幅」ということがある)W1、ひいては第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ40との接触面積をカプセルトナー24が充分に加熱される程度に確保することができる。したがって、第1の加熱加圧部14における加熱温度を高めることなく、カプセルトナー24のシェル部分を破壊または溶融させ、より確実に圧潰させることができる。
【0059】
第1加圧側弾性層42の厚さが0.5mm未満であると、第1ニップ幅W1が不足して、第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ40との接触面積が不足し、カプセルトナー24のシェル部分が充分に破壊または溶融されず、圧潰させることができないおそれがある。またカプセルトナー24を圧潰させるために第1の加熱加圧部14における加熱温度である定着温度を高める必要が生じ、定着温度を低下させることができるという本発明の効果が充分に発揮されないおそれがある。またカプセルトナー24が圧潰されずに第2の加熱加圧部15に供されると、充分に溶融させることができず、記録媒体への定着性が低下する。第2の加熱加圧部15においてカプセルトナー24をより確実に溶融させるためには、第2の加熱加圧部15における加熱温度である定着温度を高める必要があり、定着温度の上昇を招く。
【0060】
第1加圧側弾性層42の厚さが5.0mmを超えると、第1加圧側芯材41からの熱が第1加圧ローラ40の表面に伝導されにくくなるので、第1の加熱加圧部14においてカプセルトナー24を充分に加熱することができず、圧潰できないおそれがある。また第1加圧ローラ40の外周面部の温度を所定の温度にするために要する熱エネルギが増大し、消費エネルギが増大するという問題もある。
【0061】
第1加圧側離型層43は、離型性を有する材料、より詳細には離型性および耐熱性を有する材料から成る。第1加圧側離型層43の材料としては、第1加熱側離型層32の材料と同様の材料が挙げられる。第1加圧側離型層43は、たとえば厚さ30μmのPFAチューブによって実現される。第1加圧側離型層43の厚さは、10μm以上50μm以下に選ばれる。第1加圧側離型層43の厚さは前記範囲に限定されないが、第1の加熱加圧部14によってカプセルトナー24をより確実に圧潰するためには、本実施形態のように10μm以上50μm以下であることが好ましい。第1加圧側離型層43の厚さが50μmを超えると、第1加熱ローラ30に押圧されたときに第1加圧ローラ40が弾性変形しにくくなるので、第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ40との接触面積が過度に小さくなり、第1の加熱加圧部14においてカプセルトナー24に加わる熱量が不足してシェル部分が破壊または溶融されず、カプセルトナー24を圧潰できなくなるおそれがある。第1加圧側離型層43の厚さが10μm未満であると、耐久性に問題を生じる。
【0062】
第1加圧側離型層43の厚さは、より詳細には第1加圧側弾性層42の厚さよりも小さく、第1加圧ローラ40の外周面部が第1加圧側弾性層42のゴム弾性を反映して、第1加熱ローラ30に押圧されて弾性変形可能になるように選ばれる。本実施形態では、第1加圧側離型層43の厚さは、第1加圧側弾性層42の厚さの5%以下に選ばれる。このように第1加圧側離型層43の厚さは、第1加圧側弾性層42の厚さの5%以下と小さいので、第1加圧ローラ40の外周面部は第1加圧側弾性層42のゴム弾性を反映し、第1加熱ローラ30に押圧されて弾性変形する。
【0063】
第1加圧側熱源44は、第1加圧側芯材41の半径方向内方に、第1加圧側芯材41から離隔して設けられる。第1加圧側熱源44は、第1加圧側芯材41、第1加圧側弾性層42および第1加圧側離型層43を加熱する。第1加圧側熱源44は、第1加圧側芯材41、第1加圧側弾性層42および第1加圧側離型層43を加熱することのできるものであればよく、たとえばハロゲンランプまたはセラミックヒータによって実現される。第1加圧ローラ40の加熱手段は、これに限定されず、たとえば誘導加熱によって第1加圧側芯材41を加熱し、第1加圧側芯材41の熱によって第1加圧側弾性層42および第1加圧側離型層43を加熱するものであってもよい。
【0064】
このように本実施形態では第1加圧ローラ40は、加熱手段として第1加圧側熱源44を有するが、加熱手段を有しない構成としてもよい。この場合、第1加圧ローラ40は、第1加熱ローラ30と圧接するときに第1加熱ローラ30の表面から熱を授受することによって加熱される。また本実施形態では、一対の第1定着部材である一対のローラ30,40は、互いに押圧されたときに第1加圧ローラ40が弾性変形し、第1加熱ローラ30は弾性変形しないように構成されるが、第1加熱ローラ30が弾性変形し、第1加圧ローラ40が弾性変形しないように構成されてもよい。
【0065】
第1加熱ローラ30および第1加圧ローラ40には、たとえば図示しない軸受けを介して加圧ばねなどの加圧手段によって、第1加熱ローラ30および第1加圧ローラ40を互いに近づける方向に力が加えられる。これによって第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ40とが互いに押圧され、圧接される。第1加熱ローラ30は、図示しない駆動源からの駆動力を受けて、たとえば矢符Aで示される時計まわり方向に回転駆動される。第1加圧ローラ40は、第1加熱ローラ30の回転に伴って従動回転し、第1加熱ローラ30の回転方向Aと反対の方向である矢符Bで示される反時計まわり方向に回転する。トナー像が形成された記録用紙25は、第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ40とによって狭持されて搬送される。第1の加熱加圧部14は、第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ40とによって記録用紙25を挟持して搬送するとともに、トナー像を構成するカプセルトナー24を加熱および加圧する。これによって、カプセルトナー24のシェル部分が破壊されるか、または溶融し、カプセルトナー24が圧潰される。
【0066】
第1加熱ローラ30および第1加圧ローラ40に対して、第1加熱ローラ30および第1加圧ローラ40を互いに近づける方向に加えられる力、たとえば加圧ばねによって第1加熱ローラ30および第1加圧ローラ40の両端部に加えられる力は、特に制限されないが、本実施形態では、合計で、9.8×10N以上4.9×10N以下に選ばれる。この力によって第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ40との当接部に1.0kgf/cm以上5.0kgf/cm以下の圧力が生じる。この圧力によってカプセルトナー24が圧潰される。
【0067】
第2の加熱加圧部15は、一対の第2定着部材である一対のローラ50,60を備える。より詳細には、第2の加熱加圧部15は、一対のローラとして、第2加熱ローラ50と第2加圧ローラ60とを備える。このように本実施形態では、一対の第2定着部材は、各第2定着部材がローラ状に形成される。また一対の第2定着部材である第2加熱ローラ50および第2加圧ローラ60は、互いに押圧されて弾性変形するように構成される。第2加熱ローラ50は、第2の加熱加圧手段の一方の第2定着部材に相当し、第2加圧ローラ60は、第2の加熱加圧手段の他方の第2定着部材に相当する。
【0068】
第2加熱ローラ50の第2加圧ローラ60に当接される表面部である外周面部の硬度、および第2加圧ローラ60の第2加熱ローラ50に当接される表面部である外周面部の硬度は、第2加熱ローラ50および第2加圧ローラ60が互いに押圧されたときに弾性変形可能なように選ばれる。本実施形態では、第2加熱ローラ50の外周面部の硬度は、第2加圧ローラ60の外周面部の硬度よりも大きい値に選ばれる。第2加熱ローラ50の外周面部の硬度は、これに限定されず、第2加圧ローラ60の外周面部の硬度と等しくてもよく、また第2加圧ローラ60の外周面部の硬度よりも小さくてもよい。
【0069】
第2加熱ローラ50は、第2加熱側芯材51と、第2加熱側弾性層52と、第2加熱側離型層53と、加熱手段である第2加熱側熱源54とを含んで構成される。第2加熱ローラ50の外径はたとえば40mmである。第2加熱側芯材51は中空に形成される。本実施形態において第2加熱側芯材51は、円筒状に形成される。第2加熱側芯材51の厚さは、たとえば1mm以上3mm以下に選ばれる。第2加熱側芯材51は、第1加熱側芯材31と同様に、剛性を有する材料、より詳細には剛性および耐熱性を有する材料から成る。第2加熱側芯材51の材料としては、たとえばアルミニウムおよび鉄などの金属材料、アルミニウム鉄合金などの合金材料が挙げられる。
【0070】
第2加熱側弾性層52は、第2加熱側芯材51を半径方向外方側から被覆するように設けられる。第2加熱側弾性層52は、第1加圧側弾性層42と同様に、ゴム弾性を有する材料、より詳細にはゴム弾性を有し、かつ耐熱性を有する材料から成る。第2加熱側弾性層52は、ゴム弾性層に相当する。第2加熱側弾性層52の材料としては、たとえばシリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。本実施形態において第2加熱側弾性層52の厚さは、1.0mm以上5.0mm以下、より詳細には1.0mm以上3.0mm以下に選ばれる。
【0071】
第2加熱側離型層53は、離型性を有する材料、より詳細には離型性および耐熱性を有する材料から成る。第2加熱側離型層53の材料としては、たとえばパーフルオロアルコキシテトラフルオロエチレン(Perfluoroalcoxy tetrafluoroethylene;略称PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene;略称PTFE)などのフッ素系樹脂が挙げられる。第2加熱側離型層53の厚さは、たとえば10μm以上50μm以下に選ばれる。第2加熱側離型層53は、たとえば厚さ30μmのPFAチューブによって実現される。第2加熱側離型層53は、第2加熱ローラ50の最外層を形成する。第2加熱ローラ50の最外層は、記録用紙25に転写されたカプセルトナー24と直接接触する。第2加熱ローラ50の最外層として第2加熱側離型層53を設けることによって、カプセルトナー24と第2加熱ローラ50との離型性を高めて、第2加熱ローラ50にトナーが付着することを防止することができる。
【0072】
第2加熱側離型層53の厚さは、より詳細には第2加熱側弾性層52の厚さよりも小さく、第2加熱ローラ50の外周面部が第2加熱側弾性層52のゴム弾性を反映して、第2加圧ローラ60に押圧されて弾性変形可能になるように選ばれる。本実施形態では、第2加熱側離型層53の厚さは、第2加熱側弾性層52の厚さの5%以下に選ばれる。このように第2加熱側離型層53の厚さは、第2加熱側弾性層52の厚さの5%以下と小さいので、第2加熱ローラ50の外周面部は第2加熱側弾性層52のゴム弾性を反映し、第2加圧ローラ60に押圧されて弾性変形する。
【0073】
第2加熱側熱源54は、第2加熱側芯材51の半径方向内方に、第2加熱側芯材51から離隔して設けられる。第2加熱側熱源54は、第2加熱側芯材51、第2加熱側弾性層52および第2加熱側離型層53を加熱する。第2加熱側熱源54は、第2加熱側芯材51、第2加熱側弾性層52および第2加熱側離型層53を加熱することのできるものであればよく、たとえばハロゲンランプまたはセラミックヒータによって実現される。第2加熱ローラ50の加熱手段は、これに限定されず、たとえば誘導加熱によって第2加熱側芯材51を加熱し、第2加熱側芯材51を介して第2加熱側弾性層52および第2加熱側離型層53を加熱するものであってもよい。
【0074】
第2加圧ローラ60は、第2加圧側芯材61と、第2加圧側弾性層62と、第2加圧側離型層63と、第2加圧側熱源64とを含んで構成される。第2加圧側芯材61は、第2加熱側芯材51と同様の構成を有する。第2加圧側弾性層62は、第2加熱側弾性層52と同様の構成を有し、ゴム弾性を有する材料、より詳細にはゴム弾性を有し、かつ耐熱性を有する材料から成る。第2加圧側弾性層62は、ゴム弾性層に相当する。第2加圧側弾性層62の厚さは、第2加熱側弾性層52の厚さと同様に、1.0mm以上5.0mm以下、より詳細には1.0mm以上3.0mm以下に選ばれる。第2加圧側離型層63は、第2加熱側離型層53と同様の構成を有する。第2加圧側離型層63の厚さは、第2加熱側離型層53の厚さと同様に、10μm以上50μm以下に選ばれ、より詳細には第2加圧側弾性層62の厚さよりも小さく、第2加圧ローラ60の外周面部が第2加圧側弾性層62のゴム弾性を反映して、第2加熱ローラ50に押圧されて弾性変形可能になるように選ばれる。本実施形態では、第2加圧側離型層63の厚さは、第2加圧側弾性層62の厚さの5%以下に選ばれ、第2加圧ローラ60の外周面部は第2加圧側弾性層62のゴム弾性を反映し、第2加熱ローラ50に押圧されて弾性変形する。第2加圧側熱源64は、第2加熱側熱源54と同様の構成を有する。
【0075】
本実施形態では第2加圧ローラ60は、加熱手段として第2加圧側熱源64を有するが、加熱手段を有しない構成としてもよい。この場合、第2加圧ローラ60は、第2加熱ローラ50と圧接するときに第2加熱ローラ50の表面から熱を授受することによって加熱される。
【0076】
第2加熱ローラ50および第2加圧ローラ60には、たとえば図示しない軸受けを介して、加圧ばねなどの加圧手段によって、第2加熱ローラ50および第2加圧ローラ60を互いに近づける方向に力が加えられる。これによって第2加熱ローラ50と第2加圧ローラ60とが圧接される。第2加熱ローラ50は、図示しない駆動源からの駆動力を受けて、矢符Aで示される時計まわり方向に回転駆動される。第2加熱ローラ50は、第1加熱ローラ30と同じ方向に回転駆動される。第2加圧ローラ60は、第2加熱ローラ50の回転に伴って従動回転し、第2加熱ローラ50の回転方向Aと反対の方向である矢符Bで示される反時計まわり方向に回転する。トナー像が形成された記録用紙25は、第2加熱ローラ50と第2加圧ローラ60とによって狭持されて搬送される。第2の加熱加圧部15は、第2加熱ローラ50と第2加圧ローラ60とによって記録用紙25を挟持して搬送するとともに、トナー像を構成するカプセルトナー24を加熱および加圧する。これによって、カプセルトナー24が溶融して記録用紙25に固着し、定着される。
【0077】
第2加熱ローラ50および第2加圧ローラ60に対して、第2加熱ローラ50および第2加圧ローラ60を互いに近づける方向に加えられる力、たとえば加圧ばねによって第2加熱ローラ50および第2加圧ローラ60の両端部に加えられる力は、特に制限されないが、本実施形態では、合計で、9.8×10N以上4.9×10N以下に選ばれる。この力によって第2加熱ローラ50と第2加圧ローラ60との当接部に1.0kgf/cm以上5.0kgf/cm以下の圧力が生じる。この圧力によって、溶融したカプセルトナー24が記録用紙25に浸透し、強固に固着される。
【0078】
定着装置12によれば、記録媒体である記録用紙25に付着したカプセルトナー24を、第1の加熱加圧部14によって加熱および加圧して圧潰し、第2の加熱加圧部15によってさらに加熱および加圧して溶融させて記録用紙25に固着させる。これによってトナー像が記録用紙25に定着される。
【0079】
本実施形態では、第1の加熱加圧部14を構成する一対のローラのうち、第1加圧ローラ40は第1加熱ローラ30に押圧されて弾性変形するが、第1加熱ローラ30はゴム弾性層を有さず、第1加圧ローラ40に押圧されて弾性変形する層を有しないので、第1加圧ローラ40に押圧されても弾性変形しない。このように一対のローラのうち一方が弾性変形するようにすることによって、第2の加熱加圧部15のように一対のローラが互いに押圧されて弾性変形する場合に比べて、一対のローラを同じ大きさの力で押圧させたときに、第1ニップ幅W1を小さくし、第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ40との圧接部の面積を小さくすることができる。これによって、第1の加熱加圧部14の第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ40との間を通過するときに記録用紙25に加わる圧力を大きくすることができるので、カプセルトナー24のシェル部分を破壊または溶融させ、カプセルトナー24を圧潰することができる。
【0080】
このように第1の加熱加圧部14においてカプセルトナー24を圧潰することによって、記録用紙25に付着したトナーによって形成される層(以下、「トナー層」という)の厚さを小さくすることができるので、第2の加熱加圧部15では、第1の加熱加圧部14でカプセルトナー24が圧潰されない場合に比べてより低い温度での加熱によってカプセルトナー24を溶融温度に加熱することができる。したがって、第1の加熱加圧部14を設けない場合に比べて、より低い温度でトナー層を全体にわたって溶融させることができるので、記録用紙25へのトナーの定着性を低下させることなく、第2の加熱加圧部15における加熱温度を低下させることができる。
【0081】
また第2の加熱加圧部15の第2加熱ローラ50および第2加圧ローラ60は、ゴム弾性層として第2加熱側弾性層52および第2加圧側弾性層62を有し、互いに押圧されて弾性変形する。このように一対のローラが互いに弾性変形するように構成することによって、第1の加熱加圧部14のように一対のローラのうち一方が弾性変形する場合に比べて、一対のローラを同じ大きさの力で押圧させたときに、記録用紙25の搬送方向Xにおける第2加熱ローラ50と第2加圧ローラ60との圧接部の幅である第2ニップ幅W2を小さくし、第2加熱ローラ50と第2加圧ローラ60との圧接部の面積を大きくすることができる。これによって、第2の加熱加圧部15では、記録用紙25に形成されたトナー層を包み込むようにして加熱および加圧することができるので、トナー層全体にわたって溶融させることができる。
【0082】
このように本実施形態では、第1の加熱加圧部14でカプセルトナー24を圧潰して、トナー層の厚さを小さくした後、第2の加熱加圧部15で包み込むようにして加熱および加圧するので、第1および第2の加熱加圧部14,15による各加熱温度を高くすることなく、トナー層を全体にわたって溶融させることができる。したがって、カプセルトナー24の記録用紙25への定着強度を高め、定着性に優れる画像を形成することができる。またトナー層を構成する各カプセルトナー粒子同士を融着させることができるので、トナー層の表面を平滑にすることができ、たとえばカプセルトナー24がカラートナーの場合、彩度の高い画像を形成することができる。このように本実施形態の定着装置12は、彩度の高いカラー画像を形成することができるので、カラートナー定着用定着装置として好適である。
【0083】
また本実施形態では、第1の加熱加圧部14および第2の加熱加圧部15の2つの加熱加圧部が設けられる。このように複数の加熱加圧部を設けることによって、記録用紙25の搬送速度を低下させることなく、トナー像が形成された記録用紙25の加熱時間および加圧時間を増加させることができるので、記録用紙25の搬送速度を維持したまま、定着性を向上させることができる。
【0084】
また本実施形態では、第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ40との押圧力を高めることなく、記録用紙25に転写されたカプセルトナー24に加わる圧力を大きくすることができるので、第1加熱ローラ30および第1加圧ローラ40を保持する手段、たとえば軸受けおよび筐体などの剛性を高める必要がない。このように第1加熱ローラ30および第1加圧ローラ40を支持する手段の剛性を高めることなく、カプセルトナー24に加える圧力を高めることができるので、定着装置12の大型化、ひいては画像形成装置1の大型化を抑制することができる。
【0085】
また第1加熱ローラ30はゴム弾性層を有さず、第2加熱ローラ50は第2加熱側弾性層52を有するので、第1加熱ローラ30の第1加熱側芯材31および第2加熱ローラ50の第2加熱側芯材51の内周面に同じ熱エネルギを加えたとき、第1加熱ローラ30の外周面の温度を第2加熱ローラ50の外周面の温度よりも高くすることができる。これによって、ゴム弾性層を有する場合に比べて、カプセルトナー24のシェル部分をより容易に破壊または溶融させることができるので、より確実に圧潰させることができる。
【0086】
第1の加熱加圧部14においてカプセルトナー24のシェル部分をより確実に破壊または溶融させて圧潰させるためには、第1の加熱加圧部14における第1ニップ幅W1は、2mm以上8mm以下であることが好ましい。第1ニップ幅W1は、第1加熱ローラ30および第1加圧ローラ40を構成する各芯材および各層の材料を適宜選択することによって前記範囲にすることができる。したがって第1加熱ローラ30および第1加圧ローラ40を構成する各芯材および各層の材料は、第1ニップ幅W1が前記範囲になるように選ばれることが好ましい。
【0087】
また第2の加熱加圧部15においてカプセルトナー24をより確実に溶融させるためには、第2の加熱加圧部15における第2ニップ幅W2は、2mm以上12mm以下であることが好ましい。第2ニップ幅W2は、第2加熱ローラ50および第2加圧ローラ60を構成する各芯材および各層の材料を適宜選択することによって前記範囲にすることができる。したがって第2加熱ローラ50および第2加圧ローラ60を構成する各芯材および各層の材料は、第2ニップ幅W1が前記範囲になるように選ばれることが好ましい。第1ニップ幅W1および第2ニップ幅W2は、第2ニップ幅W2が第1ニップ幅W1よりも大きく(W2>W1)なるように、前記範囲からそれぞれ選ばれる。
【0088】
また第1の加熱加圧部14による加熱温度である第1加熱ローラ30および第1加圧ローラ40の外周面部の温度(以下、「第1の加熱加圧部14の定着温度」ということがある)は、第2の加熱加圧部15による加熱温度である第2加熱ローラ50および第2加圧ローラ60の外周面部の温度(以下、「第2の加熱加圧部15の定着温度」ということがある)以下であることが好ましい。第1の加熱加圧部14では、カプセルトナー24のシェル部分が破壊または溶融されていない状態で加熱されるので、定着温度を高くしても、与えられた熱エネルギがシェル部分の溶融に使用される。また第1の加熱加圧部14では、第1ニップ幅W1が小さく、第2の加熱加圧部15に比べて、一対の定着部材の圧接部を通過するときにカプセルトナー24が加熱される時間は短いので、第1の加熱加圧部14の定着温度を第2の加熱加圧部15の定着温度よりも高くしても、加熱効率が悪い。したがって、第1の加熱加圧部14の定着温度は、第2の加熱加圧部15の定着温度以下であることが好ましい。
【0089】
第1の加熱加圧部14と第2の加熱加圧部15との間隔Dは、第1の加熱加圧部14による加熱および加圧の終了から、第2の加熱加圧部15による加熱および加圧の開始までの時間が0.5秒以内になるように選ばれる。「第1の加熱加圧部14と第2の加熱加圧部15との間隔D」とは、第1の加熱加圧部14の第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ31との当接部の記録用紙25の搬送方向Xにおける中央部から、第2の加熱加圧部15の第2加熱ローラ50と第2加圧ローラ60との当接部の記録用紙25の搬送方向Xにおける中央部までの距離のことである。
【0090】
画像形成装置1によれば、まず制御部からの指示によって、帯電装置17によって感光体16の外周面が所定の電位に均一に帯電される。次いで、帯電された感光体16に露光装置18から画像情報に応じた光を照射することによって感光体16を露光する。これによって、各感光体16に各色毎の静電潜像が生成される。次に、現像装置19から感光体16の外周面にカプセルトナー24が供給され、感光体16の外周面に形成された静電潜像がカプセルトナー24によって可視化されトナー像が形成される。感光体16に形成される各色毎のトナー像は、記録用紙25に順次積層転写され、フルカラーのトナー像となる。トナー像の記録用紙25への転写後にさらに回転駆動される感光体16は、その外周面に残留するトナーがクリーニング装置21によって除去された後、除電ランプから照射される除電光によって除荷される。これによって感光体16表面の静電潜像が消失する。
【0091】
トナー像が転写された記録用紙25は定着装置12へ搬送される。定着装置12は、トナー像が転写された記録用紙25を、第1の加熱加圧部14で加熱および加圧した後、第2の加熱加圧部15でさらに加熱および加圧して、記録用紙25にトナー像を定着させる。第1の加熱加圧部14での加熱および加圧によって、カプセルトナー24の少なくともシェル部分が破壊または溶融してカプセルトナー24が圧潰され、トナー層の厚さが記録用紙25に転写されたときの厚さよりも小さくなる。このように厚さが小さくなったトナー層は第2の加熱加圧部15での加熱によって容易に溶融し、記録用紙25に定着される。したがって本実施形態では、第2の加熱加圧部15における加熱温度である定着温度を、第1の加熱加圧部14が設けられない場合に比べて低くすることができる。また第1の加熱加圧部14では、カプセルトナー24をシェル部分全体が溶融する温度に加熱する必要はなく、少なくともシェル部分が破壊または溶融し、カプセルトナー24が圧潰可能な温度になるように加熱すればよい。
【0092】
このように第1の加熱加圧部14では、カプセルトナー24をシェル部分全体が溶融可能な温度に加熱する必要はないので、第1の加熱加圧部14における加熱温度をシェル部分全体が溶融可能な温度よりも低い温度にすることができる。これによって第1の加熱加圧部14においてコア部分が過度に溶融することを防ぐことができるので、高温オフセット現象が発生し始める温度である高温オフセット開始温度が低下することを防ぐことができる。
【0093】
またカプセルトナー24は、後述するようにコア部分に離型剤を5重量%以上30重量%以下含有するので、第2の加熱加圧部15においてカプセルトナー24が溶融温度以上に加熱されても、高温オフセット現象の発生を防ぐことができる。したがって、高温オフセット開始温度の低下をより確実に防ぐことができる。
【0094】
以上のようにしてトナー像が定着された記録用紙25は、図示しない搬送手段によって画像形成装置1の外部に排出される。このようにしてトナー像が定着されて形成された画像が外部に排出されると、画像形成装置1による一連の画像形成動作が終了する。
【0095】
本実施形態の画像形成装置1によれば、トナー像形成手段である画像形成ユニット11によって、カプセルトナー24を用いて記録媒体である記録用紙25にトナー像が形成され、定着装置12によって定着されるので、定着性に優れる画像を形成することができる。また本実施形態ではカプセルトナー24は保存安定性に優れるので、現像剤収容容器23内におけるカプセルトナー24の凝集および現像剤収容容器23への固着を防ぐことができる。したがって画像形成装置1は、現像装置19によって記録用紙25に安定してカプセルトナー24を供給することができるので、定着性に優れる画像を安定して形成することができる。
【0096】
以上に述べたように本実施形態の画像形成装置1に備わる定着装置12は、支持台70を介して第1の加熱加圧部14から第2の加熱加圧部15に記録媒体を搬送するが、本発明の実施の他の形態の定着装置では、支持台70に代えて、搬送ベルトを備えてもよい。搬送ベルトは、無端状に形成され、たとえば第1加圧ローラ40および第2加圧ローラ60に張架される。搬送ベルトは、第1加熱ローラ30および第2加熱ローラ50の回転駆動によって摩擦駆動され、この搬送ベルトの摩擦駆動によって第1加圧ローラ40および第2加圧ローラ60が従動回転する。搬送ベルトを設けることによって、第1の加熱加圧部14から第2の加熱加圧部15により確実に記録用紙25を搬送することができる。
【0097】
また第1の加熱加圧部14の他方の第1定着部材はローラ状の第1加圧ローラ40であるが、他方の第1定着部材はローラ状に限定されず、第1加圧ローラ30に押圧されて弾性変形可能であればよく、たとえばベルト状であってもよい。また第2の加熱加圧部15の一対の第2定着部材はローラ状の第2加熱ローラ50および第2加圧ローラ60であるが、各第2定着部材はローラ状に限定されず、互いに押圧されて弾性変形可能なものであればよく、たとえばベルト状であってもよい。
【0098】
また以上の本実施形態では、定着装置12は、第1の加熱加圧部14と第2の加熱加圧部15との2つの加熱加圧部を備えるが、3つ以上の加熱加圧部を備えてもよい。この場合、3つ以上の加熱加圧部は、記録媒体である記録用紙25の搬送方向Xに並んで設けられる。3つ以上の加熱加圧部のうち、第1の加熱加圧部14および第2の加熱加圧部15を除く残余の加熱加圧部は、記録用紙25の搬送方向Xにおける第1の加熱加圧部14と第2の加熱加圧部15との間に設けられてもよく、第1の加熱加圧部14よりも記録用紙25の搬送方向Xの上流側に設けられてもよく、第2の加熱加圧部15よりも記録用紙25の搬送方向Xの下流側に設けられてもよい。
【0099】
また第1の加熱加圧部14の第1加熱ローラ30よりも記録用紙25の搬送方向Xの下流側には、記録用紙25を機械的に剥離させるための剥離爪が第1加熱ローラ30に当接するように設けられてもよい。同様に第2の加熱加圧部15の第2加熱ローラ50よりも記録用紙25の搬送方向Xの下流側には剥離爪が設けられてもよい。本実施形態では、第1加熱ローラ30および第2加熱ローラ50のトナー像に接する表面の温度である定着温度をたとえば145℃程度と低くすることができるので、記録用紙25の第1加熱ローラ30および第2加熱ローラ50への巻きつきおよび貼り付きを防止することができる。したがって本実施形態では剥離爪は設けられなくてよい。本実施形態では、剥離爪を設けなくても、記録用紙25の腰によって記録用紙25を第1加熱ローラ30および第2加熱ローラ50から剥離させることができる。
【0100】
図3は、本発明の実施の他の形態である画像形成方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態の画像形成方法は、前述の図1および図2に示す画像形成装置1によって実行される。本実施形態の画像形成方法は、潜像形成工程(ステップs1)と、現像工程(ステップs2)と、転写工程(ステップs3)と、第1の加熱加圧工程(ステップs4)と、第2の加熱加圧工程(ステップs5)とを含む。ステップs1の潜像形成工程、ステップs2の現像工程およびステップs3の転写工程は、記録媒体にトナー像を形成するトナー像形成工程に相当する。本実施形態の画像形成方法は、記録媒体に形成されるトナー像を、本発明の実施の一形態である定着方法によって定着する。本実施形態の画像形成方法は、たとえば前述の図1に示す画像形成装置1によって実行される。ステップs4の第1の加熱加圧工程およびステップs5の第2の加熱加圧工程は、本発明の実施の一形態である定着方法に含まれる。本発明の実施の一形態である定着方法は、たとえば前述の図2に示す定着装置12によって実行される。
【0101】
ステップs1の潜像形成工程では、像担持体に潜像が形成される。本実施形態では、像担持体として感光体が用いられ、感光体の表面に静電潜像が形成される。より詳細には、感光体の表面をたとえばコロナ帯電装置などの帯電装置によって帯電させた後、形成するべき画像に対応するようにレーザ光などを照射することによって静電潜像を形成する。
【0102】
ステップs2の現像工程では、ステップs1の潜像形成工程で形成された潜像を、カプセルトナーを用いて現像する。カプセルトナーは、着色剤および第1の結着樹脂を含有するコア部分と、コア部分を被覆し、第2の結着樹脂を含有するシェル部分であって、コア部分の溶融温度よりも高い溶融温度を有するシェル部分とを有する。本実施形態のトナーは、カラートナーとして好適である。
【0103】
(a)コア部分
コア部分は、着色剤および第1の結着樹脂を含有する。本実施形態においてコア部分は、さらに離型剤を含有する。コア部分は、着色剤、第1の結着樹脂および離型剤以外の添加剤、たとえば帯電制御剤を含有してもよい。
【0104】
〔第1の結着樹脂〕
コア部分に含有される第1の結着樹脂(以後、「コア結着樹脂」とも称する)としては、結着性を有し、かつ加熱によって溶融可能な樹脂であれば、特に制限されずに用いることができる。「溶融」とは、流動化することを意味し、軟化を含む。コア部分は加熱によって溶融する成分としてコア結着樹脂を含有するので、コア部分の溶融温度はコア結着樹脂の溶融温度Tm(c)に近くなる。またコア部分が離型剤を含有する場合には、コア部分の溶融温度はコア結着樹脂の溶融温度Tm(c)よりもさらに低くなる。
【0105】
コア結着樹脂としては、たとえばポリエステル樹脂およびスチレンアクリル樹脂などが挙げられる。コア結着樹脂はこれに限定されず、トナーの結着樹脂として使用される公知の樹脂をコア結着樹脂として用いることができる。これらの樹脂は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0106】
コア結着樹脂の溶融温度Tm(c)は、100℃以上130℃以下であることが好ましい。コア結着樹脂の溶融温度Tm(c)が100℃未満であると、低温定着は可能であるが、高温オフセットが出やすくなる問題がある。コア結着樹脂の溶融温度Tm(c)が130℃を超えると、第2の加熱加圧工程においてコア部分が溶融しにくくなるので、トナーの記録媒体への定着性が低下し、充分な定着強度が得られないおそれがある。
【0107】
コア結着樹脂のガラス転移温度Tg(c)は、50℃以上70℃以下であることが好ましい。コア結着樹脂のガラス転移温度Tg(c)が50℃未満であると、コア部分をシェル部分で被覆しても充分な保存安定性が得られないおそれがある。コア結着樹脂のガラス転移温度Tg(c)が70℃を超えると、第2の加熱加圧工程においてコア部分が溶融しにくくなるので、トナーの記録媒体への定着性が低下し、充分な定着強度が得られないおそれがある。本実施形態ではコア部分はシェル部分で被覆されるので、ガラス転移温度Tg(c)が50℃程度のコア結着樹脂を用いても、トナーの保存安定性を確保することができる。
【0108】
〔着色剤〕
着色剤としては、たとえば染料もしくは顔料、またはこれらの混合物が用いられる。その中でも、顔料を用いることが好ましい。顔料は染料に比べて耐光性および発色性に優れるので、顔料を用いることによって耐光性および発色性に優れるトナーを得ることができる。着色剤の具体例としては、たとえば、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルーおよびインダスレンブルーなどが挙げられる。着色剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。着色剤は、トナーに要求される色に応じて適宜選択される。着色剤の重量比は、特に制限されないが、コア結着樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上20重量部以下であることが好ましい。着色剤の重量比が0.1重量部未満であると、充分な着色力が得られないおそれがある。着色剤の重量比が20重量部を超えると、コア結着樹脂中における着色剤の分散性が低下し、形成される画像の画像濃度の均一性が低下するおそれがある。
【0109】
〔離型剤〕
本実施形態においてコア部分は離型剤を含有する。コア部分に離型剤を含有させることによって、トナーを記録媒体に定着させるときにトナーに離型性を付与することができるので、離型剤を用いない場合に比べて、第2の加熱加圧工程における高温オフセット現象の発生をより確実に防ぐことができる。
【0110】
コア部分中の離型剤の含有率は、5重量%以上であることが好ましい。コア部分中の離型剤の含有率が5重量%未満であると、コア部分中の離型剤の含有率が5重量%以上である場合に比べて、第2の加熱加圧工程において、たとえば前述の図2に示す第2の加熱加圧部15で加熱および加圧するときにコア部分が溶融しにくくなるので、カプセルトナーの記録媒体への定着性が低くなる。
【0111】
コア部分中の離型剤の含有率の上限値は、コア結着樹脂、後述するシェル結着樹脂および離型剤の種類などによって異なる。たとえばコア結着樹脂がポリエステル樹脂であり、シェル結着樹脂がスチレンアクリル樹脂であり、離型剤がポリオレフィンワックスである場合、コア部分中の離型剤の含有率は、20重量%以下であることが好ましい。また、離型剤がカルナバもしくはエステル系ワックスである場合、コア部分中の離型剤の含有率は、15重量%以下であることが好ましい。
【0112】
このようにコア部分中の離型剤の含有率の上限値は、コア結着樹脂、後述するシェル結着樹脂および離型剤の種類などによって異なるが、コア部分中の離型剤の含有率は、最大でも30重量%であることが好ましい。コア部分中の離型剤の含有率が30重量%を超えると、コア部分中の離型剤の含有率が30重量%以下である場合に比べて、保存されている間に離型剤がカプセルトナー表面に滲出しやすくなるので、カプセルトナー同士が凝集するおそれがあり、カプセルトナーの保存安定性が低くなる。したがって、コア部分中の離型剤の含有率は、30重量%以下であることが好ましい。
【0113】
離型剤の融点は、50℃以上80℃以下である。離型剤の融点は前記範囲に限定されないが、50℃以上80℃以下であることが好ましい。離型剤の融点が50℃未満であると、トナー作製の過程、たとえば後述する混練工程において離型剤が流出し、滑りやすくなるため、十分に混練できないおそれがある。十分に混練できないと、たとえばコア結着樹脂への着色剤の分散性が低下し、形成される画像の濃度が低下するおそれがある。また高温オフセット現象が発生し始める温度である高温オフセット開始温度が低下し、非オフセット域が狭くなる。離型剤の融点が80℃を超えると、離型剤の融点が50℃以上80℃以下である場合に比べて、第2の加熱加圧工程においてコア部分が溶融しにくくなるので、トナーの溶融粘度を低下させる効果が充分に発揮されず、カプセルトナーの記録媒体への定着性が低くなる。融点が50℃以上80℃以下である離型剤を用いることによって、トナーを定着させるときの加熱によって離型剤を溶融させ、トナーの溶融粘度を低下させることができるので、低温オフセット現象が発生し始める温度を低下させ、第2の加熱加圧工程における定着温度を低下させることができる。したがって、カプセルトナーの保存安定性と記録媒体への定着性とを一層確実に両立させることができる。「低温オフセット現象」とは、一対の定着部材を用いてトナーを加熱および加圧して記録媒体に定着させるときに、トナーが充分に溶融されず、トナーと記録媒体との接着力がトナーと定着部材との接着力を下回り、トナーの一部が定着部材に付着して取去られる現象のことである。
【0114】
離型剤としては、コア結着樹脂の溶融温度よりも低い融点を有する離型剤が用いられる。離型剤としては、たとえばパラフィンワックス、エステル系ワックス、低分子量ポリプロピレンなどのポリオレフィンワックス、低分子量ポリウレタンなどのポリウレタンワックス、カルナバワックス、マイクロクリスタリングワックス、ホホバワックス、ライスワックス、モンタン酸ワックスなどのワックスが挙げられる。「低分子量ポリプロピレン」とは、絶対分子量5000以下のポリプロピレンのことである。「低分子量ポリウレタン」とは、絶対分子量5000以下のポリウレタンのことである。用語「ワックス」は、ワックス状の物理的性質を示す物質を含む。離型剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
【0115】
〔帯電制御剤〕
本実施形態ではコア部分は帯電制御剤を含有する。帯電制御剤をコア部分に含有させることによって、トナーの帯電特性を制御することができる。帯電制御剤としては、たとえばモノアゾ染料の金属錯塩、ニトロフミン酸およびその塩、サリチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸のコバルト、クロムまたは鉄などの金属との金属錯体、アミノ化合物、第4級アンモニウム化合物などが挙げられる。また有機染料として知られる材料を帯電制御剤として用いることもできる。帯電制御剤は、1種が単独で用いられてもよく、また2種以上が併用されてもよい。帯電制御剤の重量比は特に制限されないが、コア結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下であることが好ましい。
【0116】
(b)シェル部分
シェル部分は第2の結着樹脂を含有する。シェル部分にはコア部分と同様に前述の離型剤などの添加剤が含有されてもよいが、離型剤はコア部分に含有される方が好ましく、シェル部分には含有されない方が好ましい。離型剤をコア部分のみに含有させることによって、現像剤収容容器中において離型剤がカプセルトナーの表面に滲み出すことを防ぐことができる。これによってカプセルトナー粒子同士の融着を防ぎ、カプセルトナーの凝集を防ぐことができるので、カプセルトナーの保存安定性をより確実に向上させることができる。
【0117】
〔第2の結着樹脂〕
シェル部分に含有される第2の結着樹脂(以後、「シェル結着樹脂」とも称する)としては、コア部分に含有される第1の結着樹脂であるコア結着樹脂と同一の結着樹脂が用いられてもよいが、本実施形態ではコア部分に含有される第1の結着樹脂であるコア結着樹脂の溶融温度Tm(c)よりも高い溶融温度Tm(s)を有する結着樹脂が用いられる。シェル部分は加熱によって溶融する成分としてシェル結着樹脂を含有するので、シェル部分の溶融温度はシェル結着樹脂の溶融温度Tm(s)に近くなる。本実施形態ではコア結着樹脂の溶融温度Tm(c)よりも高い溶融温度を有する結着樹脂がシェル結着樹脂として用いられるので、シェル部分の溶融温度はコア部分の溶融温度よりも高くなる。シェル部分の溶融温度をコア部分の溶融温度よりも高くする、より詳細にはシェル結着樹脂の溶融温度Tm(s)をコア結着樹脂の溶融温度Tm(c)よりも高くすることによって、現像剤収容容器中でのカプセルトナーの溶融を防ぎ、カプセルトナー粒子同士の融着およびカプセルトナーの現像剤収容容器への融着を防ぐことができるので、カプセルトナーの保存安定性を向上させることができる。
【0118】
シェル結着樹脂の溶融温度Tm(s)とコア結着樹脂の溶融温度Tm(c)との差(Tm(s)−Tm(c))は、5℃以上であることが好ましく、5℃以上40℃以下であることがさらに好ましい。シェル結着樹脂の溶融温度Tm(s)とコア結着樹脂の溶融温度Tm(c)との差が5℃未満であると、保存安定性の向上効果が充分に発揮されないおそれがある。またシェル結着樹脂の溶融温度Tm(s)とコア結着樹脂の溶融温度Tm(c)との差が40℃を超えると、シェル部分の溶融温度が高くなり過ぎ、第1の加熱加圧工程で、たとえば前述の図2に示す第1の加熱加圧部14によって加熱および加圧するときに、シェル部分が充分に溶融されないという問題が生じることがある。
【0119】
シェル結着樹脂としては、結着性を有し、かつ加熱によって溶融可能な樹脂であれば特に制限されず、公知の樹脂を用いることができるが、コア結着樹脂は、ポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂、メラミン樹脂およびウレタン樹脂から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。これらの樹脂は、他の樹脂に比べて機械的強度に優れる。したがってこれらの樹脂をシェル結着樹脂として用いることによって、他の樹脂を用いる場合に比べて、カプセルトナーが収容容器内に収容されているときにシェル部分が機械的に破壊されてコア部分が露出することをより確実に防ぐことができるので、トナーの保存安定性をより確実に向上させることができる。
【0120】
シェル結着樹脂の溶融温度Tm(s)は、120℃以上150℃以下であることが好ましい。シェル結着樹脂の溶融温度Tm(s)が120℃未満であると、充分な保存安定性が得られないおそれがある。シェル結着樹脂の溶融温度Tm(s)が150℃を超えると、第1の加熱加圧工程においてシェル部分が溶融しにくくなるので、第2の加熱加圧工程においてコア部分が溶融しにくくなり、トナーの記録媒体への定着性が低下するおそれがある。
【0121】
シェル結着樹脂のガラス転移温度Tg(s)は、60℃以上70℃以下であることが好ましい。シェル結着樹脂のガラス転移温度Tg(s)が60℃未満であると、充分な保存安定性が得られないおそれがある。シェル結着樹脂のガラス転移温度Tg(s)が70℃を超えると、第1の加熱加圧工程においてシェル部分が溶融しにくくなるので、第2の加熱加圧工程においてコア部分が溶融しにくくなり、トナーの記録媒体への定着性が低下するおそれがある。シェル結着樹脂のガラス転移温度Tg(s)は、コア結着樹脂のガラス転移温度Tg(c)よりも高いことが好ましい。シェル結着樹脂のガラス転移温度Tg(s)をコア結着樹脂のガラス転移温度Tg(c)よりも高くすることによって、本実施形態のカプセルトナーの保存安定性をより確実に向上させることができる。
【0122】
シェル成分の重量比は、コア成分100重量部に対して、1.0重量部以上5.0重量部以下であることが好ましい。シェル部分の重量比がコア部分100重量部に対して1.0重量部未満であると、コア部分をシェル部分で被覆してカプセルトナーにする効果が充分に発揮されず、保存安定性の向上効果が充分に得られないおそれがある。シェル部分の重量比がコア部分100重量部に対して5.0重量部を超えると、第1の加熱加圧工程でシェル部分を充分に破壊または溶融させることができず、シェル部分が充分に破壊または溶融されていない状態で第2の加熱加圧工程で加熱および加圧されるおそれがあり、コア部分が充分に溶融されず、定着性が低下するおそれがある。前述のようにカプセルトナーのシェル部分の重量比をコア部分100重量部に対して1.0重量部以上5.0重量部以下にすることによって、トナーの保存安定性および定着性をより確実に向上させることができる。
【0123】
本実施形態で用いられるカプセルトナーは、たとえばコア部分を製造した後、コア部分をシェル部分で被覆してカプセル化することによって製造することができる。コア部分の製造方法としては、カプセル化されていないトナーの製造方法として知られている各種の方法を用いることができ、たとえば溶融乳化法などのケミカル法、乳化重合凝集法などの重合法、粉砕法などが挙げられる。たとえば粉砕法によってコア部分を製造する場合、まず、コア部分の材料であるコア結着樹脂および着色剤の適量、ならびに添加剤を添加する場合には添加剤の適量を、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミルまたはQ型ミキサなどの混合機によって混合した後、2軸混練機、2軸押出機または1軸混練機などの混練機によってたとえば70〜180℃程度の温度で溶融混練し、混練物を生成する。得られる混練物を冷却固化し、固化物をジェットミルなどのエアー式粉砕機によって粉砕し、必要に応じてたとえば粉砕によって得られる粒子の粒径および粒径分布が、得ようとするコア粒子の粒径および粒径分布と異なる場合には風力分級などによって分級し、コア部分であるコア粒子を得る。
【0124】
またコア部分を溶融乳化法によって製造する場合、粉砕法と同様にして混練物を生成した後、混練物を水性媒体中に投入し、粒子化装置を用いて加熱しながら攪拌することよって混練物にせん断力を加えて粒子化する。水性媒体としては、たとえば水および分散剤を含有する水性媒体が用いられる。分散剤としては、たとえばスチレン−アクリル酸共重合体などのスチレンアクリル系共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム塩などのスチレンアクリル系共重合体塩などが挙げられる。
【0125】
粒子化装置としては、混練物と水性媒体とを収容可能な容器、加熱装置および撹拌装置を備え、混練物と水性媒体との混合物にせん断力を付与することによって混練物を粒子化し、コア部分として混練物粒子を生成させることができるものであればよく、たとえばエム・テクニック株式会社製のクレアミックス(商品名)などが挙げられる。混練物の粒子化は、たとえば前述のクレアミックスを用い、ロータの回転速度を14000回/分、スクリーンの回転速度を12000回/分とし、0.2MPaの加圧下で、温度100℃に加熱しながら15分間撹拌することによって行なわれる。
【0126】
以上のようにして製造されるコア部分であるコア粒子をカプセル化することによってカプセルトナーが得られる。コア部分のカプセル化方法としては、公知の方法を用いることができ、たとえば、界面重合法およびin-situ法などの化学的方法、メカノケミカル法および流動層法などの機械的方法、ならびにコアセルベーション法などの物理化学的方法などが挙げられる。
【0127】
たとえば乾式法によってカプセル化する場合、コア部分にシェル結着樹脂などのシェル部分の材料を付着させた後、シェル部分が均一になるように固定化することによってカプセルトナーが得られる。この場合、シェル結着樹脂などのシェル部分の材料は粒子として用いられる。シェル部分の材料のコア部分への付着は、たとえば機械的衝撃力を与える方法または乾式メカノケミカル法などによって行なわれる。機械的衝撃力は、たとえばヘンシェルミキサ(商品名:FM−20、三井鉱山株式会社製)などの混合装置を用い、粒子同士の衝突および粒子と機壁との衝突によって与えられる。シェル部分の材料の固定化は、前述のようにしてコア部分にシェル部分の材料を付着させた後、シェル部分の材料が表面に付着したコア粒子に、たとえば熱風球形化処理などの加熱処理を施すことによって実行される。この加熱処理によって、シェル結着樹脂が相互に融着して被覆層としてシェル部分が形成され、カプセルトナーが得られる。「熱風球形化処理」とは、シェル部分が付着したコア粒子を熱風によって加熱して球形化する処理のことである。シェル部分の材料は固定化されなくてもよく、前述のようにしてコア部分にシェル部分の材料が付着された粒子がそのままカプセルトナーとして用いられてもよい。
【0128】
本実施形態のカプセルトナーにおいて、シェル結着樹脂の溶融温度Tm(s)はコア結着樹脂の溶融温度Tm(c)よりも高く、シェル結着樹脂とコア結着樹脂とは溶融温度Tmが異なる樹脂であるが、シェル結着樹脂とコア結着樹脂とは溶融温度Tmの等しい樹脂であってもよく、たとえば同一の樹脂であってもよい。コア部分にコア結着樹脂の溶融温度Tm(c)よりも低い融点を有する離型剤が含有される場合、コア部分の溶融温度は離型剤を含有しない場合よりも低くなるので、このコア部分を、コア結着樹脂と同一の樹脂から成るシェル結着樹脂を含有し、前記離型剤を含有しないシェル部分で被覆すれば、シェル部分の溶融温度はコア部分の溶融温度よりも高くなる。したがって、シェル結着樹脂とコア結着樹脂とが溶融温度Tmの等しい樹脂であっても、シェル部分でコア部分を被覆してカプセル化することによって、保存安定性を向上させることができる。より優れた保存安定性を実現するためには、本実施形態のようにシェル結着樹脂の溶融温度Tm(s)は、コア結着樹脂の溶融温度Tm(c)よりも高い方が好ましい。
【0129】
ステップs2の現像工程では、ステップs1の潜像形成工程において像担持体に形成された潜像が、以上に述べたカプセルトナーを用いて現像される。これによって像担持体の表面にトナー像が形成される。カプセルトナーは、単独で1成分現像剤として用いられてもよく、キャリアと混合されて2成分現像剤として用いられてもよい。本実施形態ではステップs1の潜像形成工程において感光体の表面に静電潜像が形成されるので、第2実施形態のカプセルトナーは摩擦帯電によって帯電され、現像剤担持体に担持されて感光体の表面に供給され、感光体の表面に静電的に付着する。これによって感光体の表面に形成された静電潜像が現像され、トナー像が形成される。感光体などの像担持体の表面にトナー像が形成されると、ステップs3に進む。
【0130】
ステップs3の転写工程では、像担持体の表面に形成されたトナー像を転写手段によって記録用紙などの記録媒体に転写する。これによって記録媒体に未定着のトナー像が形成される。転写手段としては、たとえばトナー像が形成された感光体の表面に記録用紙などの記録媒体を接触または近接させた状態で、記録媒体にトナー像を構成するカプセルトナーと逆極性の電荷を付与することによって、カプセルトナーを記録媒体に静電的に付着させてトナー像を転写する転写手段を用いることができる。このようにしてトナー像が記録媒体に転写されて、記録媒体に未定着のトナー像が形成されると、ステップs4に進む。
【0131】
ステップs4の第1の加熱加圧工程では、ステップs3の現像工程において記録媒体に形成されるトナー像を、第1の加熱加圧部14で加熱および加圧する。これによって、トナー像を形成するカプセルトナーの少なくともシェル部分が破壊されるか、または溶融し、カプセルトナーが圧潰される。
【0132】
ステップs5の第2の加熱加圧工程では、ステップs4の第1の加熱加圧工程において圧潰されたカプセルトナーが、第2の加熱加圧部15でさらに加熱および加圧される。これによって、トナー層が全体にわたって溶融し、記録用紙に定着される。
【0133】
以上のように本実施形態の画像形成方法では、カプセルトナーを用いて記録媒体にトナー像を形成し、本発明の他の実施形態の定着方法によって定着するので、定着性に優れる画像を形成することができる。またカプセルトナーは保存安定性に優れるので、ステップs2の現像工程において記録媒体に安定して供給することができる。したがって定着性に優れる画像を安定して形成することができる。
【実施例】
【0134】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載内容に限定されるものではない。
【0135】
(a)測定方法
以下の実施例および比較例で用いた結着樹脂の溶融温度Tm、ガラス転移温度Tg、数平均分子量Mnおよび重量平均分子量Mw、離型剤の融点、ならびに粒子の体積平均粒径は、以下のようにして測定した。
【0136】
〔結着樹脂の溶融温度〕
降下式フローテスタ(商品名:CFT−100D、株式会社島津製作所製)を用い、試料1gに対し、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出されるようにプランジャーで1.96MPaの荷重を与えながら、温度60℃から昇温速度6℃/分で試料を加熱して溶融流出させ、試料の流出量と加熱温度との関係を表す流出量−温度特性曲線を求めた。得られたS字型の流出量−温度特性曲線の流出開始点から流出終了点までの高さhの2分の1(1/2)に対応する温度を求め、この温度を試料の溶融温度Tmとした。
【0137】
〔結着樹脂のガラス転移温度Tg〕
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度Tgとして求めた。
【0138】
〔結着樹脂の数平均分子量Mnおよび重量平均分子量Mw〕
GPC装置(商品名:HLC−8220GPC、東ソー株式会社製)にて、温度40℃に設定したカラムを用い、試料溶液の注入量を100mLとして測定した。試料溶液としては、乾燥後の試料の0.25重量%(固形分濃度)テトラヒドロフラン溶液を一晩放置したものを用いた。分子量校正曲線は標準ポリスチレン(単分散ポリスチレン)を用いて作成した。
【0139】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量分析計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、試料1gを温度20℃から200℃まで1分間当たり10℃の割合で昇温させ、次いで200℃から20℃まで1分間当たり10℃の割合で降温させる操作を2回繰返し、DSC曲線を求めた。得られた2つのDSC曲線について、最大吸熱ピークの頂点の温度をそれぞれ求め、これらの平均値を離型剤の融点とした。リファレンスサンプルにはアルミナを用いた。
【0140】
〔粒子の体積平均粒径〕
コールターマルチサイザーII(商品名、コールター株式会社製)を用いて測定した。測定粒子数は50000カウントとし、アパーチャ径は100μmとした。
【0141】
(b)シェル結着樹脂の製造
シェル結着樹脂としてスチレンアクリル樹脂から成る樹脂微粒子Aを以下のようにして製造した。
【0142】
攪拌装置、温度計、窒素導入管および冷却管を備えた反応容器に、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム20重量部および脱イオン水1680重量部を投入し、窒素雰囲気下で70℃に昇温した。この溶液中に、温度を70℃に保持しながら、以下に示す組成のモノマー混合液(プレエマルション)4440重量部と重合開始剤溶液560重量部とを同時に90分間かけて滴下した。重合開始剤溶液は、ペルオキソ二硫酸アンモニウム5重量部を脱イオン水620重量部に溶解させることによって調製した。モノマー混合液(プレエマルション)および重合開始剤溶液の滴下速度は、各溶液がそれぞれ90分間かけて滴下されるように調整した。
【0143】
<モノマー混合液の組成>
ドデシル硫酸ナトリウム(乳化剤) 20重量部
脱イオン水 2520重量部
スチレン 500重量部
n−ブチルアクリレート 300重量部
メチルメタクリレート 1000重量部
エチレングリコールジメタクリレート 100重量部
【0144】
モノマー混合液および重合開始剤溶液の滴下後、反応容器内の反応液を、温度を100℃に保持しながら3時間撹拌して反応させ、数平均分子量Mn3900、重量平均分子量Mw31000、ガラス転移温度Tg(s)64℃、溶融温度Tm(s)130℃の樹脂微粒子Aを得た。得られた樹脂微粒子Aの体積平均粒径は0.3μmであった。
【0145】
(c)トナーの製造
(トナーA)
コア結着樹脂としてポリエステル樹脂(商品名:FC1469、三菱レイヨン株式会社製、溶融温度Tm(c)120℃、ガラス転移温度Tg(c)62℃)78重量部と、着色剤として銅フタロシアニン(カラーインデックスナンバー:ピグメントブルー15:3)6.0重量部と、帯電制御剤(商品名:NP4、クラリアント株式会社製)1.0重量部と、離型剤としてパラフィンワックス(商品名:HNP−10、日本精鑞株式会社製、融点75℃)15重量部とを、ヘンシェルミキサ(商品名:FM−20、三井鉱山株式会社製)に投入して10分間混合して原料混合物を調製した。得られた原料混合物を、混練機(商品名:ニーディックスMOS140−800、三井鉱山株式会社製)にて、温度130℃に加熱して混練し、混練物を調製した。得られた混練物を冷却して粗粉砕した後、ジェットミルで微粉砕した。得られた微粉砕物を、風力分級機で分級し、コア部分として体積平均粒径6.5μmのコア粒子の粉体を得た。
【0146】
得られたコア粒子100重量部と、シェル結着樹脂として樹脂微粒子Aの4.0重量部とをヘンシェルミキサ(商品名:FM−20、三井鉱山株式会社製)に投入して10分間混合して、熱風処理装置(商品名:表面改質機メテオレインボーMR−10A型、日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて混合物を熱風加熱処理することによって、シェル結着樹脂である樹脂微粒子Aを互いに融着させてシェル層を形成させ、カプセルトナーを得た。熱風加熱処理は、熱風温度を300℃とし、熱風流量を1.0m/minとし、混合物投入速度を1.0kg/hとし、熱風処理時間を0.03sとして行なった。得られたカプセルトナーを「トナーA」という。トナーAにおいて、シェル部分の重量比はコア部分100重量部に対して4.0重量部である。
【0147】
(トナーB)
離型剤であるパラフィンワックスの配合量を4.0重量部に変更すること以外はトナーAと同様にしてカプセルトナーを製造した。得られたカプセルトナーを「トナーB」という。
【0148】
(トナーC)
離型剤として、融点75℃のパラフィンワックス(商品名:HNP10、日本精鑞株式会社製)に代えて、融点90℃のパラフィンワックス(商品名:MDP7010、日本精鑞株式会社製)を用いること以外はトナーAと同様にして、カプセルトナーを製造した。得られたカプセルトナーを「トナーC」という。
【0149】
(トナーD)
シェル結着樹脂である樹脂微粒子Aの配合量を10重量部に変更すること以外はトナーAと同様にしてカプセルトナーを製造した。得られたカプセルトナーを「トナーD」という。トナーDにおいて、シェル部分の重量比はコア部分100重量部に対して10重量部である。
【0150】
(トナーE)
シェル結着樹脂である樹脂微粒子Aの配合量を0.80重量部に変更すること以外はトナーAと同様にしてカプセルトナーを製造した。得られたカプセルトナーを「トナーE」という。トナーEにおいて、シェル部分の重量比はコア部分100重量部に対して0.80重量部である。
【0151】
(トナーF)
トナーAと同様にしてコア粒子を製造し、これをトナーFとした。
【0152】
(d)トナーの評価
(c)において得られたトナーA〜Fについて、以下のようにして保存安定性を評価した。
【0153】
トナー10gをガラス瓶に入れ、温度60℃の環境下に48時間放置した後、ガラス瓶中のトナーを目視によって観察し、凝集したトナー(以後、「凝集トナー」とも称する)の量を確認した。凝集トナーの量を評価指標として用い、以下の評価基準に基づいてトナーの保存安定性を評価した。評価結果を表1に示す。表1では後述する実施例の評価結果と合わせて各トナーの保存安定性の評価結果を示す。
○:良好。凝集トナーがない。
△:実用上問題無し。凝集トナーが存在するが、わずかである。
×:不良。凝集トナーが多量に存在する。
【0154】
(e)実施例
(実施例1)
トナーAを用い、前述の図1に示す画像形成装置1によって、記録媒体である記録用紙(商品名:PPC用紙SF−4AM3、シャープ株式会社製)に、縦20mm、横50mmの長方形状のシアン色べた画像部を含むサンプル画像を、べた画像部における未定着状態でのトナーの記録用紙への付着量が0.5mg/cmになるように調整して形成し、これを評価用画像とした。
【0155】
前述の図1に示す画像形成装置1の定着装置12は、第1の加熱加圧部14と、第2の加熱加圧部15とを備える。本実施例では第1加熱ローラ30および第1加圧ローラ40、ならびに第2加熱ローラ50および第2加圧ローラ60の外周面部の温度は145℃に設定し、定着装置12への記録用紙の搬送速度である定着速度は120mm/sに設定した。この定着速度では、記録用紙への第1の加熱加圧部14による加熱および加圧の終了から第2の加熱加圧部15による加熱および加圧の開始までの時間は0.5秒以内になる。また第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ40との押圧力および第2加熱ローラ50と第2加圧ローラ60との押圧力は等しくした。この押圧力のとき、第1ニップ幅W1は5mmであり、第2ニップ幅W2は8mmであった。
【0156】
(実施例2〜5)
トナーAに代えて、トナーB〜Eをそれぞれ用いる以外は、実施例1と同様にして評価用画像を形成した。
【0157】
(実施例6)
第1加熱ローラ30および第1加圧ローラ40の外周面部の温度を160℃に設定し、第2加熱ローラ50および第2加圧ローラ60の外周面部の温度を130℃に設定すること以外は実施例1と同様にして評価用画像を形成した。
【0158】
(比較例1)
前述の図1に示す画像形成装置1に代えて、前述の図1に示す画像形成装置1から第1の加熱加圧部14を取除いた画像形成装置を用い、第2加熱ローラ50および第2加圧ローラ60の外周面部の温度を180℃に設定する以外は、実施例1と同様にして評価用画像を形成した。具体的には、定着装置への記録用紙の搬送速度である定着速度は実施例1と同様に120mm/sに設定し、第2加熱ローラ50と第2加圧ローラ60との押圧力は実施例1と同様にした。
【0159】
(比較例2)
前述の図1に示す画像形成装置1に代えて、前述の図1に示す画像形成装置1から第2の加熱加圧部15を取除いた画像形成装置を用い、第1加熱ローラ30および第1加圧ローラ40の外周面部の温度を180℃に設定する以外は、実施例1と同様にして評価用画像を形成した。具体的には、定着装置への記録用紙の搬送速度である定着速度は実施例1と同様に120mm/sに設定し、第1加熱ローラ30と第1加圧ローラ40との押圧力は実施例1と同様にした。
【0160】
(比較例3)
トナーAに代えて、トナーFを用いる以外は、実施例1と同様にして評価用画像を形成した。
【0161】
(f)評価用画像の評価
(e)の実施例1〜6および比較例1〜3において形成された評価用画像について、以下のようにして定着性および彩度を評価した。
【0162】
〔定着性〕
分光光度計(商品名:X−Rite938、X−Rite社製)を用いて、評価用画像のべた画像部の反射率濃度を画像濃度として測定し、これを粘着テープ貼付け前の画像濃度とした。次いで、評価用画像のべた画像部に粘着テープを貼付けた後、粘着テープを剥離し、粘着テープが貼付けられていた部分の画像濃度を前述の分光光度計によって測定し、これを粘着テープ剥離後の画像濃度とした。測定結果から、下記式に基づいて、粘着テープ貼付け前の画像濃度に対する粘着テープ剥離後の画像濃度の比率をトナー残存率として求めた。
【0163】
(トナー残存率)=(テープ剥離後の画像濃度/テープ貼付け前の画像濃度)
求めたトナー残存率を評価指標として用い、以下の評価基準に基づいて定着性を評価した。
○:良好。トナー残存率が0.80以上である。
△:実用上問題なし。トナー残存率が0.60以上0.80未満である。
×:不良。トナー残存率が0.60未満である。
【0164】
〔彩度〕
評価用画像のべた画像部について、分光光度計(商品名:X−Rite938、X−Rite社製)を用いて、日本工業規格(JIS)Z8729に規定されるL表色系(CIE1976)における色座標aおよびbを測定し、下記式(1)に基づいて、abクロマCabの値を算出した。
ab=[(a+(b1/2 …(1)
【0165】
算出したabクロマCabの値を評価指標として用い、以下の評価基準に基づいて彩度を評価した。
○:良好。abクロマCabが60以上である。
△:実用上問題なし。abクロマCabが55以上60未満である。
×:不良。abクロマCabが55未満である。
以上の評価結果を表1に示す。表1において「−」は評価していないことを表す。
【0166】
【表1】

【0167】
実施例1〜6と比較例1および2との比較から、実施例1〜6のようにカプセルトナーを用いてトナー像を形成し、第1の加熱加圧部14および第2の加熱加圧部15を備える定着装置12で定着させることによって、比較例1および2に比べて、定着性および彩度に優れる画像を形成できることが判る。
【0168】
これに対し、比較例1および2のように、一対の定着部材が互いに押圧されて弾性変形する第2の加熱加圧部15のみを備える定着装置、または一対の定着部材のうち他方の定着部材が一方の定着部材に押圧されて弾性変形する第1の加熱加圧部14のみを備える定着装置によって定着させると、トナー残存率が0.60未満になり、充分な定着性が得られないことが判る。また比較例1および2では、abクロマCabが55未満になり、充分な彩度が得られないことが判る。
【0169】
また比較例3で用いられるトナーFのようにシェル部分を有しないトナーは、保存安定性が悪く、凝集したトナーが多量に発生することが判る。
【0170】
実施例1と実施例2との比較から、コア部分中の離型剤の含有率が5.0重量%以上であるカプセルトナーを用いることによって、コア部分中の離型剤の含有率が5.0重量%未満であるカプセルトナーを用いる場合に比べて、定着性が向上されることが判る。
【0171】
実施例1と実施例3との比較から、離型剤の融点が50℃以上80℃以下であるカプセルトナーを用いることによって、離型剤の融点が80℃を超えるカプセルトナーを用いる場合に比べて、定着性が向上され、また彩度が向上されることが判る。
【0172】
実施例1と実施例4との比較から、シェル部分の重量比がコア部分100重量部に対して1.0重量部以上5.0重量部以下であるカプセルトナーを用いることによって、シェル部分の重量比が5.0重量部を超えるカプセルトナーを用いる場合に比べて、定着性が向上され、また彩度が向上されることが判る。
【0173】
実施例1〜3および6と実施例5との比較から、シェル部分の重量比がコア部分100重量部に対して1.0重量部以上5.0重量部以下であるカプセルトナーA〜Cを用いることによって、シェル部分の重量比が1.0重量部未満であるカプセルトナーEを用いる場合に比べて、彩度が向上されることが判る。またトナーA〜Cのようにシェル部分の重量比がコア部分100重量部に対して1.0重量部以上5.0重量部以下であるトナーは、トナーEのようにシェル部分の重量比が1.0重量部未満であるトナーに比べて、保存安定性に優れることが判る。
【0174】
以上のように、第1加熱ローラ30が芯材と離形層とによって構成され、第1加圧ローラ40が第1加熱ローラ30に押圧されて弾性変形する第1の加熱加圧部14と、第2加熱ローラ50が芯材と離形層との間にゴム弾性層を有する構造を有し、第2加熱ローラ50と第2加圧ローラ60とが互いに押圧されて弾性変形する第2の加熱加圧部15とを備える定着装置を用いることによって、カプセルトナーの定着性を向上させることができることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明の実施の一形態である画像形成装置1の構成を簡略化して示す部分断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置1に備わる定着装置12を拡大して示す断面図である。
【図3】本発明の実施の他の形態である画像形成方法の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0176】
1 画像形成装置
11 画像形成ユニット
12 定着装置
13 転写搬送ベルト機構
14 第1の加熱加圧部
15 第2の加熱加圧部
16 感光体
17 帯電装置
18 露光装置
19 現像装置
20 転写ローラ
21 クリーニング装置
30 第1加熱ローラ
40 第1加圧ローラ
50 第2加熱ローラ
60 第2加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤および第1の結着樹脂を含有するコア部分と、コア部分を被覆し、第2の結着樹脂を含有するシェル部分であって、コア部分の溶融温度よりも高い溶融温度を有するシェル部分とを有するカプセルトナーを用いて記録媒体に形成されるトナー像を記録媒体に定着させる定着装置であって、
トナー像が形成された記録媒体を挟持して加熱および加圧可能な一対の第1定着部材を含み、前記一対の第1定着部材は、一方の第1定着部材がローラ状に形成され、他方の第1定着部材が一方の第1定着部材に押圧されて弾性変形する第1の加熱加圧手段と、
第1の加熱加圧手段よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、前記記録媒体を挟持して加熱および加圧可能な一対の第2定着部材を含み、前記一対の第2定着部材は、互いに押圧されて弾性変形する第2の加熱加圧手段とを備えることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
一対の第1定着部材は、
一方の第1定着部材が芯材を含み、他方の第1定着部材が、芯材と、芯材を被覆し、ゴム弾性を有するゴム弾性層とを含み、
一対の第2定着部材は、
各第2定着部材が、芯材と、芯材を被覆し、ゴム弾性を有するゴム弾性層とを含むことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
着色剤および第1の結着樹脂を含有するコア部分と、コア部分を被覆し、第2の結着樹脂を含有するシェル部分であって、コア部分の溶融温度よりも高い溶融温度を有するシェル部分とを有するカプセルトナーを用いて記録媒体にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
請求項1または2に記載の定着装置とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
コア部分は、さらに離型剤を含有し、
コア部分中の離型剤の含有率は5重量%以上30重量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
コア部分は、さらに離型剤を含有し、
離型剤の融点は、50℃以上80℃以下であることを特徴とする請求項3または4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
カプセルトナーは、シェル部分の重量比が、コア部分100重量部に対して1.0重量部以上5.0重量部以下であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項7】
着色剤および第1の結着樹脂を含有するコア部分と、コア部分を被覆し、第2の結着樹脂を含有するシェル部分であって、コア部分の溶融温度よりも高い溶融温度を有するシェル部分とを有するカプセルトナーを用いて記録媒体に形成されるトナー像を記録媒体に定着させる定着方法であって、
トナー像が形成された記録媒体を、一対の第1定着部材であって、一方の第1定着部材がローラ状に形成され、他方の第1定着部材が一方の第1定着部材に押圧されて弾性変形する一対の第1定着部材によって挟持して加熱および加圧する第1の加熱加圧工程と、
第1の加熱加圧工程で加熱および加圧された記録媒体を、一対の第2定着部材であって、互いに押圧されて弾性変形する一対の第2定着部材によって挟持して加熱および加圧する第2の加熱加圧工程とを含むことを特徴とする定着方法。
【請求項8】
着色剤および第1の結着樹脂を含有するコア部分と、コア部分を被覆し、第2の結着樹脂を含有するシェル部分であって、コア部分の溶融温度よりも高い溶融温度を有するシェル部分とを有するカプセルトナーを用いて記録媒体にトナー像を形成し、請求項7に記載の定着方法によって記録媒体に定着させることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−316557(P2007−316557A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149015(P2006−149015)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】