説明

定着装置および画像形成装置

【課題】ニップ幅の調節用の部材を意図した位置に確実に位置させることができる定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】定着装置7は、記録シートを加熱する加熱部材(加熱ローラ71)と、当該加熱部材との間でニップ部を形成するバックアップ部材(加圧ローラ72)と、バックアップ部材を支持する支持部材(支持アーム73)と、支持部材を加熱ローラ71側に向けて付勢する付勢部材(コイルバネ74)と、支持部材を付勢部材の付勢力に抗して押圧する押圧位置と、当該押圧を解除する解除位置との間で回動可能な調節カム76と、調節カム76の押圧面76Cと当該押圧面76Cに押圧される支持部材の被押圧面D3との間に進入する進入位置と、当該進入位置から退避する退避位置との間で移動可能なスペーサ部材75を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱部材とバックアップ部材のニップ幅を調整可能な定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定着装置として、用紙を加熱する加熱ローラ(加熱部材)と、加熱ローラとの間でニップ部を形成する加圧ローラ(バックアップ部材)と、加圧ローラを支持する支持部材と、支持部材を加熱ローラに向けて付勢するバネと、支持部材をバネの付勢力に抗して押圧する調節カムを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
具体的に、この技術では、調節カムが回転方向における3つの位置(向き)に保持されることで、ニップ部の幅を、普通紙用の幅と、これよりも狭い封筒用の幅と、ゼロ(各ローラを離間させる)の3段階に切り替えることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3155862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、調節カムを3つの位置のうち真中の位置に位置させる場合に、真中の位置を通り過ぎて意図しない位置で保持されてしまうおそれがあった。特に、調節カムが画像形成装置の後面に設けられたリアカバーを開放することで外部に露出し、かつ、画像形成装置の後面と部屋の壁との間が狭い場合には、ユーザは狭い隙間に手を入れて調節カムを目視しないで手の感覚だけで調節することがある。そのため、この場合には、調節カムの誤った位置への保持がより一層生じるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、ニップ幅の調節用の部材を意図した位置に確実に位置させることができる定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明は、記録シートを加熱する加熱部材と、当該加熱部材との間でニップ部を形成するバックアップ部材と、前記加熱部材および前記バックアップ部材の一方を支持する支持部材と、前記支持部材を前記一方側から他方側に向けて付勢する付勢部材と、前記支持部材を前記付勢部材の付勢力に抗して押圧する押圧位置と、当該押圧を解除する解除位置との間で回動可能な調節カムと、を備えた定着装置であって、前記調節カムの押圧面と当該押圧面に押圧される前記支持部材の被押圧面との間に進入する進入位置と、当該進入位置から退避する退避位置との間で移動可能なスペーサ部材が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、調節カムを2つの位置のいずれかに位置させるとともに、スペーサ部材を2つの位置のいずれかに位置させることで、ニップ幅を3段階に調節できる。すなわち、本発明では、ニップ幅の調節用の各部材を2つの位置の中間の位置に位置させることがないので、従来のように1つの調節カムを3つの位置に保持させる構造に比べ、調節カムが真中の位置を行き過ぎて意図しない位置で保持されるような誤操作を防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ニップ幅の調節用の部材を意図した位置に確実に位置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置を簡略して示す説明図である。
【図2】定着装置を示す断面図である。
【図3】支持アームとスペーサ部材を分解して示す分解斜視図である。
【図4】スペーサ部材を示す拡大図である。
【図5】スペーサ部材を進入位置から退避位置に移動させる動作を示す説明図(a)〜(c)である。
【図6】リアシュートを開いた状態を示す斜視図である。
【図7】ニップ幅が最大の状態からニップ幅をゼロにするときの操作方法を示す説明図である。
【図8】ニップ幅が最大の状態からニップ幅を狭い幅にするときの操作方法を示す説明図である。
【図9】加熱部材やスペーサ部材の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<レーザプリンタの全体構成>
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、画像形成装置の一例としてのレーザプリンタの全体構成を説明した後、本発明の特徴部分を詳細に説明することとする。
【0012】
以下の説明において、方向は、レーザプリンタ使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって左側を「前側(手前側)」、紙面に向かって右側を「後側(奥側)」とし、紙面に向かって奥側を「左側」、紙面に向かって手前側を「右側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0013】
図1に示すように、レーザプリンタ1は、装置本体2と、記録シートの一例としての用紙Pを装置本体2内に給紙するためのフィーダ部3と、用紙Pに画像を形成するための画像形成部4とを備えている。
【0014】
装置本体2は、フィーダ部3や画像形成部4を収容する箱状の筐体であり、その後壁22には、後述する定着装置7を外部に露出するための開口部22Aが形成されている。そして、この開口部22Aは、カバーの一例としてのリアカバー23によって開閉されるようになっている。
【0015】
フィーダ部3は、装置本体2の下部に着脱可能に装着される給紙トレイ31と、給紙トレイ31内の用紙Pを画像形成部4に向けて給紙する給紙機構32を主に備えている。
【0016】
画像形成部4は、スキャナユニット5、プロセスカートリッジ6、転写ローラCRおよび定着装置7などを備えている。
【0017】
スキャナユニット5は、装置本体2内の上部に設けられ、図示しないレーザ発光部、ポリゴンミラー、レンズおよび反射鏡などを備えている。このスキャナユニット5では、レーザビームを、後述する感光ドラム81の表面上に高速走査にて照射する。
【0018】
プロセスカートリッジ6は、装置本体2に着脱可能であり、感光ドラム81を有するドラムカートリッジ8と、現像ローラ91や現像剤の一例としてのトナーを有する現像カートリッジ9とを備えている。
【0019】
このプロセスカートリッジ6では、回転する感光ドラム81の表面が、図示せぬ帯電器により一様に帯電された後、スキャナユニット5からのレーザビームの高速走査により露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、感光ドラム81の表面に画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0020】
次いで、回転駆動される現像ローラ91によって現像カートリッジ9内のトナーが感光ドラム81の静電潜像に供給されて、感光ドラム81の表面上にトナー像が形成される。その後、感光ドラム81と転写ローラCRの間で用紙Pが搬送されることで、感光ドラム81の表面に担持されているトナー像が用紙P上に転写される。
【0021】
定着装置7は、用紙Pを加熱する加熱部材の一例としての加熱ローラ71と、加熱ローラ71との間でニップ部を形成するバックアップ部材の一例としての加圧ローラ72とを備えている。なお、定着装置7の詳細については、後述する。
【0022】
そして、このように構成される定着装置7では、用紙P上に転写されたトナーを、用紙Pが加熱ローラ71と加圧ローラ72との間を通過する間に熱定着している。なお、定着装置7で熱定着された用紙Pは、定着装置7の下流側に配設される排紙ローラRに搬送され、この排紙ローラRから排紙トレイ21上に送り出される。
【0023】
<定着装置の詳細構造>
次に、定着装置7の詳細構造について説明する。
図2に示すように、定着装置7は、前述した加熱ローラ71および加圧ローラ72を備える他、支持部材の一例としての支持アーム73、付勢部材の一例としてのコイルバネ74、スペーサ部材75および調節カム76を備えている。
【0024】
加熱ローラ71は、円筒状に形成され、内部に配設されたハロゲンヒータHHによって加熱されるようになっている。
【0025】
加圧ローラ72は、シリコンゴム等からなる円柱状の部材であり、加熱ローラ71に向けて付勢されて変形することで、ニップ部を形成している。
【0026】
支持アーム73は、加圧ローラ72を軸受Bを介して回転可能に支持するとともに、定着装置7の筐体7Aに回動可能に設けられている。具体的に、支持アーム73は、軸受Bを支持するベース部73Aと、ベース部73Aから前方に延びる基端側アーム部73Bと、ベース部73Aから上方に延びるバネ係合用アーム部73Cと、ベース部73Aから略後方に延びる揺動アーム部73Dとを備えている。
【0027】
基端側アーム部73Bは、その先端が鉤状に形成されており、この先端が筐体7Aの支持軸A1に係合することで、当該支持軸A1に回動可能に支持されている。
【0028】
バネ係合用アーム部73Cは、その先端が鉤状に形成されており、この先端にコイルバネ74が取り付けられている。コイルバネ74は、引っ張りコイルバネであり、その一端がバネ係合用アーム部73Cに取り付けられ、他端が筐体7Aのフック部A2に取り付けられている。これにより、コイルバネ74は、支持アーム73を加圧ローラ72側(一方側)から加熱ローラ71側(他方側)に向けて付勢している。
【0029】
揺動アーム部73Dは、スペーサ部材75を前後にスライド可能に支持しており、図3に示すように、その先端には、スペーサ部材75の後述する係合溝75Eに係合する係合突起D1が右側に突出するように形成されている。また、揺動アーム部73Dの先端には、スペーサ部材75の後述する抜け止め部75Jと当接する規制部D2が下方に突出した段差状に形成されている。
【0030】
そして、揺動アーム部73Dの上面は、調節カム76の後述する押圧面76C(図2参照)によって下方に押圧される被押圧面D3となっている。
【0031】
スペーサ部材75は、揺動アーム部73Dの被押圧面D3に沿って加圧ローラ72(図2参照)に近接・離間する方向にスライド可能となっており、図4に示すように、揺動アーム部73Dを覆うように配設された右側壁75A、上壁75B、左側壁75Cおよび後壁75Dを備えている。右側壁75Aには、揺動アーム部73Dの係合突起D1と前後方向に相対移動可能に係合する係合溝75Eが、前後方向に延びるとともに左右に貫通するように形成されている。
【0032】
係合溝75Eの後端側の上下面には、ユーザがスペーサ部材75を前方に押し込んだときに、最前の位置まで押し込んだことをユーザに認識させるための一対の凸部75F,75Gが形成されている。一対の凸部75F,75Gは、係合突起D1の径と略同じ距離(または径より僅かに短い距離)だけ離れるように、前後にずれて配置されており、これにより適切なクリック感(節度感)をユーザに与えることが可能となっている。
【0033】
また、係合溝75Eの前側部分の上部は、上方に向けて凹む曲面状に形成されている。これにより、スペーサ部材75を、後述するように揺動することが可能となっている。
【0034】
上壁75Bは、上方に突出するように形成されるスペーサ部75Hを有している。そして、スペーサ部材75は、スペーサ部75Hが揺動アーム部73Dの被押圧面D3と調節カム76の押圧面76Cとの間に進入する進入位置(図7(b)参照)と、当該進入位置から退避する退避位置(図8(b)参照)との間で移動可能となっている。そのため、スペーサ部材75の進退によって、調節カム76で支持アーム73を押圧したときの支持アーム73の揺動角度に差を付けることができるので、ニップ幅を2段階に調節することが可能となっている。
【0035】
左側壁75Cの後側には、ユーザの指を引っ掛ける部分である複数の操作用突起75Mが形成されている。これにより、ユーザが確実にスペーサ部材75を把持して操作することが可能となっている。
【0036】
また、右側壁75Aの前端部75K(他端部)側の下部には、スペーサ部材75が揺動アーム部73Dから後方に抜け出るのを規制するための抜け止め部75Jが、左右方向内側に突出するように形成されている。この抜け止め部75Jは、図5(b)に示すように、支持アーム73の規制部D2に当接した際に、スペーサ部材75の後端部75Lに図示奥方向に力が加わった場合であっても、規制部D2から外れないような長さで形成されている。これにより、スペーサ部材75が支持アーム73から外れるのをより抑えることが可能となっている。
【0037】
そして、スペーサ部材75は、図5(a),(b)に示すように、進入位置から後方に移動して抜け止め部75Jが規制部D2に当接した際(加圧ローラ72から離間した際)に、その後端部75Lが、図2に示すように、筐体7Aから大きく(進入位置のときよりも)外側に突出するようになっている。
【0038】
そして、抜け止め部75Jが規制部D2に当接した後は、図5(c)に示すように、当該抜け止め部75Jと規制部D2との当接点を中心にして、スペーサ部材75の後端部75Lが下方の退避位置へ向けて揺動可能となっている。一方、図2や図8に示すように、リアカバー23は、抜け止め部75Jと規制部D2とが当接する位置まで引き出されたスペーサ部材75と干渉可能な位置であって、かつ、当接点を中心にして退避位置まで揺動したスペーサ部材75と干渉しない位置に配置されている。
【0039】
これにより、スペーサ部材75を進入位置と退避位置のどちらの位置に位置させても、確実にリアカバー23を閉じることが可能となっている。また、スペーサ部材75を進入位置から単に後方に引き出した位置に止めずに下方へ揺動させるので、リアカバー23をできる限り定着装置7の筐体7Aに近づけることができ、レーザプリンタ1を前後方向で小型化することが可能となっている。
【0040】
また、図6に示すように、筐体7Aの後壁を構成するリアシュートRSは、筐体7Aのベース部7Bに対して回動軸RS2を中心にして開閉(回動)可能となっている。そして、リアシュートRSの左右両側には、スペーサ部材75が進入位置と退避位置のどちらの位置に位置する場合であっても、リアシュートRSの開閉時にスペーサ部材75との干渉を避けるための逃げ溝RS1が形成されている。ここで、図6では、便宜上、リアシュートRSに設けられる調節カム76は省略している。
【0041】
図2に示すように、調節カム76は、支持アーム73の揺動アーム部73Dの上方の位置で、筐体7A(詳しくは、リアシュートRS)に回動可能に支持されている。具体的に、調節カム76は、筐体7Aの支持軸A3に回動可能に支持される基部76Aと、基部76Aから後方に延びた後上方に延びる略L字状のアーム部76Bとを備えている。
【0042】
アーム部76Bの後面の下側は、略曲面状の押圧面76Cとなっており、この押圧面76Cによって、支持アーム73の揺動アーム部73Dを直接またはスペーサ部材75を介して間接的に押圧するようになっている。具体的に、調節カム76は、支持アーム73をコイルバネ74の付勢力に抗して押圧する押圧位置(図7(b)または図8(b)参照)と、当該押圧を解除する解除位置(図2参照)との間で回動可能となっている。
【0043】
また、アーム部76Bの上側部分は、定着装置7の筐体7Aから後側(外側)に突出する操作部76Dとなっており、操作部76Dの先端76Eは、ユーザの指の滑り止めとなる複数の突起が形成されている。そして、この先端76Eは、解除位置から押圧位置まで揺動する間で、筐体7Aから離れる方向に膨らむ軌跡を描くように構成されている。
【0044】
より具体的には、解除位置と押圧位置は前後方向で略同じ位置であり、先端76Eが揺動している最中において最も後方となる位置よりも解除位置と押圧位置が内側(前側)に位置している。一方、リアカバー23は、操作部76Dの先端76Eが描く軌跡と重なる位置であって、かつ、押圧位置および解除位置に位置する調節カム76とは干渉しない位置に配置されている(図7参照)。
【0045】
これにより、調節カム76を押圧位置と解除位置のどちらの位置に位置させても、確実にリアカバー23を閉じることが可能となっている。また、調節カム76を押圧位置と解除位置との中間の位置で止めないため、リアカバー23を先端76Eの軌跡に重なる位置まで前方に寄せることができ、レーザプリンタ1を前後方向で小型化することが可能となっている。
【0046】
<ニップ幅の調節方法>
次に、ニップ幅の調節方法について説明する。
まず、図7(a)に示すように、普通紙を印刷する場合には、ユーザは、調節カム76を解除位置に位置させる。これにより、コイルバネ74によって支持アーム73が加熱ローラ71側に最大限引き寄せられるので、ニップ幅が最大の状態となって、普通紙を良好に印刷することができる。
【0047】
加熱ローラ71と加圧ローラ72との間で用紙Pが詰まった場合には、ユーザは、図7(b)に示すように、スペーサ部材75を進入位置に位置させた状態で、調節カム76を押圧位置まで回動させる。これにより、調節カム76がスペーサ部材75を間に挟んだ状態で支持アーム73を押圧するので、支持アーム73が加熱ローラ71から最大限遠ざけられて、加熱ローラ71から加圧ローラ72が離間、すなわちニップ幅がゼロとなり、用紙Pを良好に取り除くことができる。
【0048】
封筒などを印刷するべく、普通紙のニップ幅よりも小さなニップ幅で印刷を行う場合には、図8(a)に示すように、ユーザは、まず、調節カム76が解除位置に位置している状態において、スペーサ部材75を進入位置から退避位置まで移動させる。その後、図8(b)に示すように、調節カム76を押圧位置まで回動させると、調節カム76が支持アーム73を直接押圧することにより、調節カム76と支持アーム73との間にスペーサ部材75を挟む場合(図7(b)参照)よりも支持アーム73は大きく揺動しない。
【0049】
これにより、ニップ幅はゼロよりも大きく、かつ、最大の幅よりも小さな幅となるため、封筒などを良好に印刷することができる。なお、スペーサ部材75を進入位置に戻す場合には、調節カム76を解除位置に戻した後で、スペーサ部材75を進入位置に戻せばよい。
【0050】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
調節カム76を2つの位置のいずれかに位置させるとともに、スペーサ部材75を2つの位置のいずれかに位置させることで、ニップ幅を3段階に調節できる。すなわち、ニップ幅の調節用の各部材76,75を2つの位置の中間の位置に位置させることがないので、従来のように1つの調節カムを3つの位置に保持させる構造に比べ、調節カムが真中の位置を行き過ぎるといったことがなく、調節用の各部材76,75を意図した位置に確実に位置させることができる。
【0051】
操作部76Dの先端76Eが、解除位置から押圧位置まで揺動する間で、筐体7Aから離れる方向に膨らむ軌跡を描くように構成されているので、先端76Eの軌跡に重なるようにリアカバー23を設けても、調節カム76を解除位置と押圧位置のどちらか一方に配置させれば、調節カム76に干渉することなくリアカバー23を閉めることができる。そのため、従来のような調節カムを押圧位置と解除位置の間の位置で止める構造に比べ、リアカバー23を定着装置7の筐体7Aに近づけることができ、レーザプリンタ1の小型化を図ることができる。
【0052】
また、このようにリアカバー23を定着装置7の筐体7Aに近づけることで、装置本体2の後側の開口部22Aを調節カム76に近づけることができるので、ユーザが開口部22Aから装置本体2内の奥に手を突っ込むことなく、調節カム76を簡単に操作することができる。
【0053】
スペーサ部材75が筐体7Aから大きく後方に突出しても、スペーサ部材75を揺動させることで筐体7Aに寄せることができるので、リアカバー23を筐体7Aに近づけることができ、レーザプリンタ1の小型化を図ることができる。
【0054】
また、このようにリアカバー23を定着装置7の筐体7Aに近づけることで、装置本体2の後側の開口部22Aをスペーサ部材75に近づけることができるので、ユーザが開口部22Aから装置本体2内の奥に手を突っ込むことなく、スペーサ部材75を簡単に操作することができる。
【0055】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、バックアップ部材(加圧ローラ72)を支持部材(支持アーム73)で支持したが、本発明はこれに限定されず、例えば図9に示すように、加熱部材としてのニップ板100を支持アーム73で支持してもよい。以下に、図9の構造を説明するが、図9において、前記実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0056】
具体的に、この構造は、図示せぬハロゲンヒータによってニップ板100が加熱される構造であり、このニップ板100と加圧ローラ72との間でニップ部を形成している。ニップ板100は、直接または間接的にガイド部材110に固定され、このガイド部材110が支持アーム73のベース部73Aに固定されている。
【0057】
すなわち、ニップ板100は、ガイド部材110を介して支持アーム73に支持されている。このような構造であっても、調節カム200とスペーサ部材210の2つの部材によってニップ幅を3段階に切り替えることができる。
【0058】
ここで、図9では、前記実施形態と異なる調節カム200とスペーサ部材210を採用している。すなわち、前記実施形態では、スペーサ部材75を支持アーム73に移動可能に設けたが、本発明はこれに限定されず、図9に示すようにスペーサ部材210を調節カム200に移動可能に設けてもよい。
【0059】
具体的に、この構造では、調節カム200の曲面状の押圧面201が前記実施形態よりも長く(大きく)形成されており、この押圧面201上をスペーサ部材210がスライド移動可能に設けられている。そして、スペーサ部材210には前後に離れた凹部211,212が形成され、調節カム200の側面には前後に離れた凸部202,203が設けられている。
【0060】
そして、スペーサ部材210の前側の凹部211が調節カム200の前側の凸部202に係合した状態で、スペーサ部材210が進入位置に維持され、スペーサ部材210の後側の凹部212が調節カム200の後側の凸部203に係合した状態で、スペーサ部材210が退避位置に維持されるようになっている。この構造によっても、スペーサ部材210を、調節カム200と支持アーム73との間に進退させることができるので、ニップ幅を3段階に調節することができる。なお、スペーサ部材は、定着装置の筐体などに移動可能に設けられていてもよい。
【0061】
前記実施形態では、記録シートの一例として、厚紙、はがき、薄紙などの用紙Pを採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばOHPシートであってもよい。
前記実施形態では、バックアップ部材として加圧ローラ72を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ベルト状の加圧部材などであってもよい。
【0062】
前記実施形態では、付勢部材として、引きバネであるコイルバネ74を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばトーションバネ、板バネ、押しバネなどを採用してもよい。
前記実施形態では、回動式の調節カム76を採用したが、本発明はこれに限定されず、入力された力の方向を変換させて出力するものであればどのようなものでもよい。例えば、直線方向に移動して、当該直線方向とは異なる方向に支持部材を押圧する傾斜面を有するカムであってもいい。
【0063】
前記実施形態では、カバーとしてリアカバー23を採用したが、本発明はこれに限定されず、定着装置(調節カムやスペーサ部材)の配置によっては例えばサイドカバーなどを採用してもよい。
前記実施形態では、加熱部材を加熱する熱源としてハロゲンヒータHHを採用したが、本発明はこれに限定されず、例えば誘導加熱方式のIH(Induction Heating)ヒータや発熱抵抗体などを採用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
7 定着装置
7A 筐体
71 加熱ローラ
72 加圧ローラ
73 支持アーム
74 コイルバネ
75 スペーサ部材
76 調節カム
76C 押圧面
D3 被押圧面
P 用紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シートを加熱する加熱部材と、
当該加熱部材との間でニップ部を形成するバックアップ部材と、
前記加熱部材および前記バックアップ部材の一方を支持する支持部材と、
前記支持部材を前記一方側から他方側に向けて付勢する付勢部材と、
前記支持部材を前記付勢部材の付勢力に抗して押圧する押圧位置と、当該押圧を解除する解除位置との間で回動可能な調節カムと、を備えた定着装置であって、
前記調節カムの押圧面と当該押圧面に押圧される前記支持部材の被押圧面との間に進入する進入位置と、当該進入位置から退避する退避位置との間で移動可能なスペーサ部材が設けられていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記調節カムは、定着装置の筐体から外側に突出する操作部を有し、
前記操作部の先端は、前記解除位置から前記押圧位置まで揺動する間で、前記筐体から離れる方向に膨らむ軌跡を描くことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記スペーサ部材は、
前記被押圧面に沿って前記バックアップ部材に近接・離間する方向にスライド可能となるように前記支持部材に設けられ、
前記バックアップ部材から離間した際に、定着装置の筐体から一端部が突出するとともに、他端部に設けられた抜け止め部が前記支持部材に設けられる規制部に当接するように構成され、当該規制部と前記抜け止め部との当接点を中心にして前記一端部が揺動可能となっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
請求項2に記載の定着装置を備えた画像形成装置であって、
前記定着装置を収容する装置本体と、
前記装置本体に形成され、前記定着装置を外部に露出させる開口部と、
前記開口部を開閉するカバーと、を備え、
前記カバーが、前記操作部の先端が描く軌跡と重なる位置であって、かつ、前記押圧位置および前記解除位置に位置する調節カムとは干渉しない位置に配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3に記載の定着装置を備えた画像形成装置であって、
前記定着装置を収容する装置本体と、
前記装置本体に形成され、前記定着装置を外部に露出させる開口部と、
前記開口部を開閉するカバーと、を備え、
前記カバーが、前記抜け止め部と前記規制部とが当接する位置まで引き出されたスペーサ部材と干渉可能な位置であって、かつ、前記当接点を中心にして前記退避位置まで揺動したスペーサ部材と干渉しない位置に配置されていることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−8376(P2012−8376A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144882(P2010−144882)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】