説明

定着装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】端部の磁性体コアが加熱部材の温度変化に対して良好な温度追随性を有し、また、加熱部材が耐熱限界を越えて破損することがない定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】磁性体コア39は、コイル37を囲み用紙搬送方向に直交する方向に複数配列されるアーチコア41と、コイル37の中空部37a内で用紙搬送方向に直交する方向の両端部においてアーチコア41に対して発熱ベルト26に近接して配設される端部センターコア42と、を有し、端部センターコア42は、アーチコア41に比べて熱容量が小さく構成されて、端部センターコア42のキュリー温度は発熱ベルト26が定着可能温度となった時の端部センターコア42の温度以上であり、且つコイル37の冷却設定温度以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等に用いる定着装置及びそれを備えた画像形成装置に関し、特に、電磁誘導加熱方式の定着装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁誘導加熱方式の定着装置は、励磁コイルによる磁束で加熱部材内に設けた誘導発熱層に渦電流を発生させ、これによって発生するジュール熱により発熱させて加熱部材を所定の定着温度に加熱するものである。この種の定着装置では、誘導発熱層の熱容量を小さくできるので、ウォームアップ時間を短縮することができ、コンパクトで高い熱変換効率が得られるが、用紙が通過する通紙領域では加熱部材の表面から用紙に熱が奪われることにより、用紙が通過しない非通紙領域と比べて低温になりやすい。したがって、搬送される用紙のサイズが小さい場合、特に連続的に通紙する場合、加熱部材の通紙領域を定着処理温度に維持すると、非通紙領域で過昇温し、加熱部材や励磁コイルが耐熱限界を越えて破損するといった不具合が発生する。
【0003】
そこで、例えば特許文献1、2に記載されるように、定着処理温度よりもやや高い温度に設定されたキュリー温度をもつ磁性体コアと、この磁性体コアによって加熱部材を誘導加熱する磁界を発生させるコイルと、を備えたものが提案されている。そして、小サイズ用紙を連続して通紙し多量に定着処理した場合、加熱部材表面の用紙の接触する通紙領域と用紙の接触しない非通紙領域とで大きな温度差が生じるのを防ぐために、磁性体コアは、用紙搬送方向に直交する方向にキュリー温度を異ならせている。小サイズ用紙通紙時の非通紙領域に相当する両端部分の端部磁性体コアは、小サイズ用紙の通紙領域である中央部磁性体コアに比べてキュリー温度が低いものを用いている。小サイズ用紙にトナー像を定着させる場合、加熱部材のうち非通紙領域の温度が過大に上昇して、加熱部材からの熱放射或いは熱伝導によって端部磁性体コアがキュリー温度以上になると、端部磁性体コアの透磁率の低下によって、加熱部材上の非通紙領域の発熱量が減少する。この結果、加熱部材の非通紙領域の温度が下がるようになっている。
【0004】
また、特許文献3に記載の定着装置は、加熱部材を誘導加熱するための磁界を発生させるコイルに沿い、用紙搬送方向に直交する方向に複数配列された磁性体コアを備える。この磁性体コアの非通紙領域に対応する部分のキュリー温度は、加熱部材が定着温度になった時の磁性体コアの非通紙領域に対応する部分の温度以上であって、加熱部材やコイルが耐熱温度になった時の磁性体コアの非通紙領域に対応する部分の温度を超えない範囲に設定されている。これによって、用紙を加熱定着することが可能であるとともに加熱部材やコイルが耐熱限界を越えて破損することがないようにしている。
【0005】
また、特許文献4に記載の定着装置では、磁性体コアは、誘導加熱するための磁界を発生させるコイルを覆うように用紙搬送方向に直交する方向に複数配列された台形状の第1磁性体コアと、ループ状に巻回されたコイルの輪が形成する隙間に用紙搬送方向に直交する方向に複数配列された第2磁性体コアとを含んでいる。第2磁性体コアの非通紙領域に対応する端部磁性体コアのキュリー温度が第1磁性体コアのキュリー温度に比べて低く設定されている。そして端部磁性体コアは、第1磁性体コアに対して別体として配置されているので、第1磁性体コアに比して熱容量が小さくなっている。このために、非通過領域の温度が過大に上昇したとき、加熱部材から端部磁性体コアへの熱放射或いは熱伝導によって、端部磁性体コアは比較的迅速に温度上昇が生じ、非通過領域の過昇温を迅速に防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−162912号公報(段落[0050]〜[0054]、第2図)
【特許文献2】特開2001−318545号公報(段落[0045]〜[0047]、第5図)
【特許文献3】特開2009−150972号公報(段落[0057]〜[0062]、第4図、第6図)
【特許文献4】特開2009−198665号公報(段落[0046]〜[0058]、第4図、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、非通紙領域の過昇温を迅速に抑えるために、加熱部材の温度変化に対して端部磁性体コアの温度追随性を良好にすることが必要である。また、例えば、コイルはループ状に複数回巻回しコイル表層の溶融層を熱溶融して成形固化されるが、コイルが過昇温してコイルの成形が崩れる等のコイル破損がないように、コイルが所定の温度(コイル冷却温度)以上にならないようにコイルを冷却する必要がある。コイルに対する冷却の影響を受けて、コイルの近傍に配置される端部磁性体コアの温度はコイル冷却温度以上に上昇することはないので、このことを加味して端部磁性体コアのキュリー温度を設定する必要がある。つまり、コイルの近傍に配置される端部磁性体コアのキュリー温度を、コイルを冷却する温度を加味した温度に設定する必要がある。しかしながら、上述した特許文献1〜3に記載の定着装置では、端部磁性体コアが加熱部材の温度変化に対して良好な温度追随性を有するものではなく、また、特許文献4に記載の定着装置では、端部磁性体コアの下限のキュリー温度は設定されているが、上限のキュリー温度の限界が設定されておらず、加熱部材の耐熱限界を越えて加熱部材を破損させるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、端部の磁性体コアが加熱部材の温度変化に対して良好な温度追随性を有し、また、加熱部材が耐熱限界を越えて破損することがない定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために第1の発明は、加熱部材と該加熱部材に圧接される加圧部材とにより形成されるニップ部で未定着トナー像を担持する記録媒体を挟持して、記録媒体上の未定着トナー像を溶融定着する定着装置において、前記加熱部材の長手方向に沿ってループ状に巻回され前記加熱部材を誘導加熱する磁束を発生させるコイルと、該コイルを冷却する冷却機構と、前記コイルの近傍に前記記録媒体の搬送方向に直交する方向に配設され前記加熱部材の誘導発熱層に磁束を導く磁性体コアと、前記加熱部材の表面に対向し、前記加熱部材に対向する面の反対側の取り付け面に前記コイルと前記磁性体コアとが取り付けられる支持部材と、を備え、前記磁性体コアは、前記コイルを囲み前記記録媒体の搬送方向に直交する方向に複数配列される第1のコア部と、前記コイルのループが形成する中空部内で記録媒体の搬送方向に直交する方向の両端部において前記第1のコア部に対して前記加熱部材に近接して配設される第2のコア部と、を有し、前記第2のコア部は前記第1のコア部に比べて熱容量が小さく構成されて、前記第2のコア部のキュリー温度は前記加熱部材が定着可能温度となった時の前記第2のコア部の温度以上であり、且つ前記コイルの冷却設定温度以下であることを特徴としている。
【0010】
また、第2の発明では、上記の定着装置において、前記磁性体コアと前記コイルを覆うように前記支持部材に取り付けられるカバー部材を更に備え、前記冷却機構は、前記コイル周囲の空気を排気する排気ファンと、前記カバー部材に設けた開口から前記カバー部材内の空気を外部に排気する通気路と、を有することを特徴としている。
【0011】
また、第3の発明では、上記の定着装置において、前記支持部材には前記第2のコア部と前記コイルとを仕切る立ち壁部が形成され、前記立ち壁部には複数の突起部が設けられ、前記第2のコア部は、前記複数の突起部に当接するとともに前記支持部材の取り付け面に対面して取り付けられることを特徴としている。
【0012】
また、第4の発明では、上記の定着装置において、前記コイルの中空部に対応する部分の前記支持部材の厚みは、前記第2のコア部の取り付け部が他の部分に比べて小さいことを特徴としている。
【0013】
また、第5の発明では、上記の定着装置において、前記支持部材の前記第2のコア部の取り付け部は、前記加熱部材側を開放した開口部を有することを特徴としている。
【0014】
また、第6の発明では、上記の構成の定着装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、小サイズの記録媒体にトナー像を定着させる場合、加熱部材のうち非通紙領域である記録媒体の搬送方向に直交する方向の両端部の温度が過大に上昇して、加熱部材からの熱放射或いは熱伝導によって第2のコア部の温度がキュリー温度以上になると、第2のコア部の透磁率の低下によって、加熱部材の非通紙領域の発熱量が減少し、加熱部材の非通紙領域の温度が下がる。第2のコア部は、第1のコア部に比べて熱容量が小さいので、加熱部材の昇温に対して第2のコア部は迅速に温度上昇し、この結果、非通過領域の過昇温を迅速に防止することができる。また、第2のコア部のキュリー温度はコイルの冷却設定温度以下であるために、加熱部材が過昇温するのを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図
【図2】第1実施形態に係る誘導加熱部を備えた定着装置を示す側面断面図
【図3】第1実施形態に係る誘導加熱部を示す側面断面図
【図4】第1実施形態に係る誘導加熱部のアーチコアホルダーに対するアーチコアの配置を示す平面図
【図5】第1実施形態に係る誘導加熱部のボビンに対する端部センターコアの配置を示す平面図
【図6】第1実施形態に係る端部センターコアのボビンへの取り付けを示す平面図
【図7】第2実施形態に係る端部センターコアのボビンへの取り付けを示す平面断面図
【図8】第3実施形態に係る端部センターコアのボビンへの取り付けを示す平面断面図
【図9】第4実施形態に係る誘導加熱部の熱を排気する排気ファン及び通風ダクトを示す平面断面図
【図10】第4実施形態に係る排気ファン及び通風ダクトの配置の変形例を示す平面断面図
【図11】第4実施形態に係る排気ファン及び通風ダクトの配置の別の変形例を示す平面断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図である。画像形成装置1は、その下部に配設された給紙部2と、この給紙部2の側方に配設された用紙搬送部3と、この用紙搬送部3の上方に配設された画像形成部4と、この画像形成部4よりも排出側に配設された定着装置5と、画像形成部4及び定着装置5の上方に配設された画像読取部6とを備えている。
【0019】
給紙部2は、記録媒体である用紙9を収容する複数の給紙カセット7を備えており、給紙ローラー8の回転により、複数の給紙カセット7のうち選択された給紙カセット7から用紙9を1枚ずつ用紙搬送部3に送り出す。
【0020】
用紙搬送部3に送られた用紙9は、用紙搬送部3に備えられた用紙搬送経路10を経由して画像形成部4に向けて搬送される。画像形成部4は、電子写真プロセスによって、用紙9にトナー像を形成するものであり、図1の矢印方向に回転可能に支持された感光体11と、この感光体11の周囲にその回転方向に沿って、帯電部12、露光部13、現像部14、転写部15、クリーニング部16、及び除電部17を備えている。
【0021】
帯電部12は、高電圧を印加される帯電ワイヤーを備えており、この帯電ワイヤーからのコロナ放電によって感光体11表面に所定電位を与えると、感光体11表面が一様に帯電させられる。そして、画像読取部6によって読み取られた原稿の画像データに基づく光が、露光部13により感光体11に照射されると、感光体11の表面電位が選択的に減衰され、感光体11表面に静電潜像が形成される。
【0022】
次いで、現像部14が感光体11表面の静電潜像を現像し、感光体11表面にトナー像が形成される。このトナー像が転写部15によって感光体11と転写部15との間に供給される用紙9に転写される。
【0023】
トナー像が転写された用紙9は、画像形成部4の用紙搬送方向の下流側に配置された定着装置5に向けて搬送される。定着装置5では用紙9が加熱加圧され、用紙9上にトナー像が溶融定着される。次いで、トナー像が定着された用紙9は、排出ローラー対20によって排出トレイ21上に排出される。
【0024】
転写部15による用紙9へのトナー像の転写後、感光体11表面に残留しているトナーは、クリーニング部16により除去され、また感光体11表面の残留電荷は除電部17により除去される。そして、感光体11は帯電部12によって再び帯電され、以下同様にして画像形成が行われる。
【0025】
定着装置5は図2に示すように構成される。図2は定着装置を概略的に示す側面断面図である。
【0026】
定着装置5は、電磁誘導加熱方式の熱源を用いた定着方式であり、加熱部材である発熱ベルト26と、加圧部材である加圧ローラー19と、発熱ベルト26を一体的に取り付けた定着ローラー18と、発熱ベルト26に磁束を供給する誘導加熱部30と、を備える。加圧ローラー19及び定着ローラー18は定着装置5のハウジング(図略)の長手方向に回転可能に支持され、誘導加熱部30はハウジングに固定支持される。
【0027】
発熱ベルト26は、無端状の耐熱ベルトであり、内周側から順に、例えば厚み30〜50μmの電鋳ニッケルからなる誘導発熱層26aと、例えば厚み200〜500μmのシリコーンゴム等からなる弾性層26bと、フッ素樹脂等からなりニップ部Nで未定着トナー像を溶融定着する際の離型性を向上させる離型層26cと、が積層されて構成される。
【0028】
定着ローラー18は、発熱ベルト26を一体回転可能とするために、発熱ベルト26の内周面を張架している。例えば、定着ローラー18は、外径39.8mmに設定され、ステンレス鋼の芯金18a上に厚み5〜10mmのシリコーンゴム製の弾性層18bを有し、弾性層18bは発熱ベルト26を張架している。
【0029】
加圧ローラー19は、円筒型の芯金19aと、芯金19a上に形成される弾性層19bと、弾性層19bの表面を覆う離型層19cと、を備える。例えば、加圧ローラー19は、外径35mmに設定され、ステンレス鋼の芯金19a上に厚み2〜5mmのシリコーンゴム製の弾性層19bを有し、弾性層19b上にフッ素樹脂等からなる離型層19cを有する。また、加圧ローラー19は図示しないモーター等の駆動源によって回転駆動させられ、加圧ローラー19の回転によって発熱ベルト26は従動回転する。加圧ローラー19と発熱ベルト26との圧接する部分にニップ部Nが形成され、ニップ部Nでは、搬送される用紙9上の未定着トナー像を加熱及び加圧し用紙9上にトナー像を定着する。
【0030】
誘導加熱部30は、コイル37と、ボビン38と、磁性体コア39とを備え、電磁誘導により発熱ベルト26を発熱させるものである。誘導加熱部30は、長手方向(図2の紙面の表面から裏面方向)に延びて、発熱ベルト26の外周の略半分を囲うように発熱ベルト26に対向して配設される。
【0031】
コイル37は、発熱ベルト26の長手方向に沿ってループ状に複数回巻回してボビン38に取り付けられる。またコイル37は、図示しない電源に接続され、電源から供給される高周波電流により交流磁束を発生させる。コイル37からの磁界は磁性体コア39を通過し、図2の紙面に平行な方向に導かれ、発熱ベルト26の誘導発熱層26aに沿って通過する。誘導発熱層26aを通過する磁束の交流的な強さの変化によって誘導発熱層26aには渦電流が生じる。誘導発熱層26aに渦電流が流れると、誘導発熱層26aの電気抵抗によってジュール熱が発生して、発熱ベルト26が発熱(自己発熱)することになる。
【0032】
発熱ベルト26が加熱され所定の温度に昇温すると、ニップ部Nで挟持された用紙9が加熱されるとともに、加圧ローラー19によって加圧されることにより、用紙9上の粉体状態のトナーが用紙9に溶融定着される。このように、発熱ベルト26は薄肉の熱伝導性の良好な材質からなり熱容量が小さいため、短時間でウォーミングアップを行なうことができ、画像形成が迅速に開始される。
【0033】
誘導加熱部30の詳しい構成を図3に示す。図3は誘導加熱部30を示す側面断面図である。
【0034】
誘導加熱部30は前述のようにコイル37と支持部材であるボビン38と磁性体コア39とを備え、磁性体コア39は第1コアであるアーチコア41と、第2コアである端部センターコア42、及びサイドコア43からなる。さらに誘導加熱部30は、アーチコア41を取り付けるためのアーチコアホルダー45と、磁性体コア39とコイル37を覆うカバー部材47と、を備える。
【0035】
ボビン38は、発熱ベルト26の表面と所定の間隔を隔てて定着ローラー18の回転中心軸と同心に配置され、発熱ベルト26の表面の略半分を囲う円弧部38iと、円弧部38iの両端に延設されるフランジ部38dとを有する。円弧部38iとフランジ部38dは、ボビン38の主たる骨格を構成し、その骨格部における強度を維持するために例えば厚み1〜2mm、望ましくは厚み1.5mmであって、また、発熱ベルト26からの放熱に耐えるためにLCP樹脂(液晶ポリマー)、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂)等の耐熱性樹脂にて形成される。
【0036】
ボビン38の円弧部38iは、発熱ベルト26の表面と所定の間隔を隔てて対向する対向面38aと、この対向面38aの反対側に位置する円弧状の取り付け面38bとを有する。取り付け面38bの略中央、つまり、定着ローラー18と加圧ローラー19(図2参照)の各回転中心軸を結ぶ直線上には、一対の端部センターコア42が接着剤によって取り付けられる。端部センターコア42の周囲には、取り付け面38bから立設する立ち壁部38cが長手方向(図3の紙面の表裏方向)に延びて形成される。また、取り付け面38bにはコイル37が取り付けられる。発熱ベルト26の表面とボビン38の対向面38aとの間隔は、発熱ベルト26が回転するときに接触しないように、例えば1.5〜3mmに設定され、端部センターコア42が発熱ベルト26表面から4mm離間して配置される。
【0037】
コイル37は、複数本を撚り合せたエナメル線に融着層をコートしたものを用い、例えば、耐熱温度が略200℃であるAIW線を用い、取り付け面38bに沿って断面視円弧状で長手方向(図3の紙面の表裏方向)の周りをループ状に巻回した状態で加熱することで融着層を溶融させ、その後冷却することで所定の形状(ループ状)に成形される。この場合、コイル37の融着層の耐熱温度は例えば180℃であるので、コイル37の耐熱温度を加味したコイル37の冷却設定温度は略160℃である。所定形状に固化されたコイル37は、ボビン38の立ち壁部38cの周りに配置されてシリコン接着剤等によって取り付け面38b上に取り付けられる。
【0038】
各フランジ部38d、38dの円弧部38i側には、長手方向に複数個配列されたサイドコア43が接着剤によって取り付けられる。またフランジ部38dの外縁側には、アーチコアホルダー45が取り付けられる。
【0039】
アーチコアホルダー45は、ボビン38のフランジ部38dに取り付けられるホルダーフランジ部45aと、各ホルダーフランジ部45aからアーチ状に形成され長手方向に複数個形成されるコア装着部45bと、を有する。各コア装着部45bには、コア装着部45bと略同じアーチ形状のアーチコア41が接着剤によって取り付けられる。
【0040】
従って、上述のようにアーチコア41と端部センターコア42及びサイドコア43が夫々ボビン38及びアーチコアホルダー45の所定の位置に取り付けられると、アーチコア41とサイドコア43はコイル37の外側を囲むことになり、また、端部センターコア42はアーチコア41に比べて発熱ベルト26の表面に近接して配置されることになる。さらに、コイル37は、発熱ベルト26の表面と、サイドコア43と、アーチコア41、及び端部センターコア42により取り囲まれることになる。コイル37に高周波電流が供給されると、コイル37から発生した磁束は、サイドコア43、アーチコア41及び端部センターコア42に導かれ発熱ベルト26に沿って流れる。このとき発熱ベルト26の誘導発熱層26aには渦電流が生じることで、誘導発熱層26aの電気抵抗によって誘導発熱層26aにジュール熱が発生し、発熱ベルト26が発熱することになる。
【0041】
カバー部材47は、誘導加熱部30から発せられる磁気をシールドするものであり、例えばアルミニウムの板材にてコイル37と磁性体コア39をボビン38の反対側から四囲を覆うように構成される。カバー部材47の取り付けは、ボビン38のフランジ部38d上にアーチコアホルダー45のホルダーフランジ部45aとカバー部材47のフランジ部とを順に積み重ねた状態で、ネジ51をナット52に締結することによって行われる。
【0042】
図4〜図6にコイル37及び磁性体コア39の詳しい配置を示す。図4は、図3の下側(ボビン38側)から見たアーチコアホルダー45に対するアーチコア41の配置を示す平面図である。図5は、図3の上側(アーチコアホルダー45側)から見たボビン38に対するコイル37と端部センターコア42及びサイドコア43の配置を示す平面図である。また図6は端部センターコア42の取り付けの詳細を示す平面図である。
【0043】
図4に示すように、アーチコアホルダー45には、アーチコア41を所定の位置に取り付けるためのコア装着部45bが形成される。コア装着部45bは長手方向X(用紙搬送方向に直交する方向)に略均等に複数個形成される。隣接するコア装着部45bの間にはホルダー開口部45cが形成され、またコア装着部45bの周りには、アーチコアホルダー45をボビン38(図3参照)に取り付けるためのネジ51(図3参照)を嵌装する複数のネジ孔45dが形成される。
【0044】
アーチコア41は、MnZn合金系等の高透磁率のフェライトによって断面視矩形でアーチ状に形成される。アーチコア41のキュリー温度は、ニップ部Nが定着可能温度になった時のアーチコア41の温度に対応する温度以上に設定されている。アーチコア41の温度がそのキュリー温度を超えるとアーチコア41の透磁率が急激に低下して、磁性体として作用しなくなる。アーチコア41のキュリー温度は、MnZn合金のMnとZnの割合を調節することで、例えば200℃に設定される。アーチコア41のサイズは、例えば幅(長手方向Xの長さ)が10mmで、厚みが4.5mmに設定され、アーチコア41はコイル37(図5参照)の長手方向Xの長さ内に収められ、例えば長さ310mmの区間に13個均等に配置される。アーチコア41のサイズと比重及び比熱から熱容量を算出すると、一つのアーチコア41の熱容量は、15J/Kとなる。アーチコア41は、アーチ形状等の構成において熱容量が比較的に大きくなり、また、発熱部材26から比較的に離間して配置されるために、発熱部材26の温度変化に対する温度の追随性が端部センターコア42に比べると劣ることになる。
【0045】
図5に示すように、ボビン38には、取り付け面38bから立設した立ち壁部38cと、フランジ部38dと、ネジ51(図3参照)を嵌装する複数のネジ孔38eとが形成されている。フランジ部38dには複数のサイドコア43が取り付けられる。
【0046】
サイドコア43は、MnZn合金系等の高透磁率のフェライトによって直方体状に形成され、そのキュリー温度は、ニップ部Nが定着可能温度になった時のサイドコア43の温度以上に設定されている。サイドコア43の温度がキュリー温度を超えるとサイドコア43の透磁率が急激に低下して、磁性体として作用しなくなる。サイドコア43のキュリー温度は、MnZn合金の割合を調節することで、例えば120℃に設定される。サイドコア43のサイズは、例えば長さ(長手方向Xの長さ)が57mmで、幅(Y方向の長さ)が12mmで、厚みが3.5mmに設定され、ボビン38の一方のフランジ部38dに長手方向Xに互いに側面を接触して6個配置され、また、他方のフランジ部38dに長手方向Xに互いに側面を接触して6個配置される。サイドコア43のサイズと比重及び比熱から熱容量を算出すると、一つのサイドコア43の熱容量は、10J/Kとなる。サイドコア43は、そのサイズ及び夫々接触して配置される構成において熱容量が比較的に大きくなるために、発熱部材26の温度変化に対する温度の追随性が端部センターコア42に比べると劣ることになる。
【0047】
ボビン38の立ち壁部38cは、長手方向Xに互いに延びて対向する壁部と、該対向する壁部に延在し長手方向Xの両端部の外縁を円弧状に形成される壁部とを有する。
【0048】
立ち壁部38cの外縁は、巻回したコイル37のループ内に形成された中空部37aと略同じ形状で構成され、コイル37の中空部37aを嵌め込んで取り付けることを可能にする。例えば、コイル37の中空部37aは長手方向Xに330mmで、長手方向Xと直交するY方向(用紙搬送方向)に10mmに設定される一方、立ち壁部38cの外縁は長手方向Xに329mmでY方向に9.4mmに設定される。
【0049】
立ち壁部38cの内縁には、一対の端部センターコア42を配置するための矩形の空間が形成される。この矩形の空間は、長手方向Xにおいて定着可能な最大サイズの用紙Pの通紙領域Aに対応する長さを有する。立ち壁部38cの厚みは、励磁したコイル37の熱が端部センターコア42へ放射、伝導するのを抑制するように設定され、例えば立ち壁部38cの厚み(外縁から内縁までの長さ)を1.5mmとし、矩形空間のY方向長さを6.4mmに設定している。
【0050】
立ち壁部38cの矩形空間には一対の端部センターコア42、42が取り付けられる。一対の端部センターコア42、42は、最大サイズの用紙Pより小サイズの用紙Pがニップ部Nに通紙されたときに、用紙Pの通紙領域Bの両端部に形成される用紙が接触しない非通紙領域Cに対応するように配置される。
【0051】
端部センターコア42は、MnZn合金系等の高透磁率のフェライトによって直方体状に形成され、また、そのキュリー温度は、ニップ部Nが定着可能温度になった時の端部センターコア42の温度(120℃)以上であって、アーチコア41(図4参照)のキュリー温度よりも低い温度に設定されている。端部センターコア42の温度がキュリー温度を超えると端部センターコア42の透磁率が急激に低下して、磁性体として作用しなくなる。端部センターコア42のキュリー温度は、MnZn合金の割合を調節することで、例えば130℃に設定される。また、端部センターコア42の熱容量はアーチコア41より小さくに設定されている。端部センターコア42のサイズは、例えば長さ(長手方向Xの長さ)が18mmで、幅(Y方向の長さ)が5mmで、高さが7mmに設定され、端部センターコア42のサイズと比重及び比熱から端部センターコア42の熱容量を算出すると、一つの端部センターコア42の熱容量は、2.7J/Kとなる。端部センターコア42は、アーチコア41に対して熱容量が小さく、また発熱ベルト26に接近して配置されているために、発熱ベルト26の温度変化に対する温度の追随性がアーチコア41に比べると良好である。
【0052】
また、端部センターコア42のキュリー温度は、コイル37の冷却設定温度(略160℃)以下に設定される。コイル37の耐熱温度は200℃であるが、冷却設定温度は、コイル37の溶融層の耐熱温度(180℃)を加味して設定される温度であり、この冷却設定温度を超えると、溶融層が溶けて電気的なショートが発生するおそれがある。従って、後述する排気ファン57(図9〜図11参照)によって、コイル37を冷却するとともに、端部センターコア42のキュリー温度を冷却設定温度以下とすることで、発熱ベルト26の非通紙領域が過昇温した場合でも、端部センターコア42が適切にキュリー温度になってその磁性を消失し、発熱ベルト26の熱による破損を防いでいる。
【0053】
本実施形態の定着装置5では、コイル37が通電されたとき、ニップ部Nがほぼ所定の定着温度かまたはそれ以下に維持されている限り、アーチコア41、サイドコア43とともに、端部センターコア42の透磁率が高い状態にある。従って図3において、コイル37から発生した磁束(磁界)は、通紙領域B(図5参照)では、発熱ベルト26の誘導発熱層26a、サイドコア43、及びアーチコア41の磁路を通る。これにより、電磁誘導によって発熱ベルト26の誘導発熱層26aに渦電流が流れて、発熱ベルト26の誘導発熱層26aが発熱する。一方、非通紙領域C(図5参照)では、コイル37から発生した磁束(磁界)は、端部センターコア42、発熱ベルト26の誘導発熱層26a、サイドコア43、及びアーチコア41の磁路を通る。これにより、電磁誘導によって発熱ベルト26の誘導発熱層26aに渦電流が流れて、発熱ベルト26の誘導発熱層26aが発熱する。通常、発熱ベルト26を含む加熱部材の長手方向Xの両端部は、熱放射或いは熱伝導等により加熱部材の中央部より温度が低下しやすいが、端部センターコア42が両端部に配置されることで、両端部の発熱ベルト26の発熱量が増加して、用紙搬送方向と直交する方向(長手方向X)に温度分布を均一にすることができる。
【0054】
小サイズ用紙にトナー像を定着させる場合、ニップ部Nのうち非通紙領域C(図5参照)の温度が所定の定着温度を超えて過大に上昇したとき、発熱ベルト26から端部センターコア42への熱放射或いは熱伝導によって、非通紙領域Cに対向して配置された端部センターコア42では比較的に迅速に温度上昇が生じる。端部センターコア42が迅速に温度上昇するのは、端部センターコア42は、発熱ベルト26に近い位置に配置され、また、熱容量が比較的に小さいことによる。同様の理由により、発熱ベルト26の温度下降に対しても端部センターコア42は迅速に温度追随する。そして、端部センターコア42の温度がこのキュリー温度を超えると、端部センターコア42はその透磁率が急激に低下して、磁性体として作用しなくなる。従って、端部センターコア42、発熱ベルト26の誘導発熱層26a、サイドコア43、及びアーチコア41の磁路が遮断されることで、発熱ベルト26の誘導発熱層26aの発熱度合いが、磁路が遮断される前と比較して大幅に低下するので、発熱ベルト26の表面温度が低下する。ニップ部Nの非通紙領域Cの温度が所定の定着温度に戻ると、端部センターコア42の温度がこのキュリー温度を下回るので、再び電磁誘導によって、発熱ベルト26の誘導発熱層26aが通常通りに発熱する。
【0055】
尚、磁性体コア39のキュリー温度は、ニップ部Nの所定の定着温度と、加熱部材やコイル37等の耐熱温度を勘案して設定される。発熱ベルト26の温度上昇に対して温度追随性がよくないと、非通紙領域Cにおいて発熱ベルト26が温度上昇しても、磁性体コア39が温度上昇するまでに時間がかかるが、その間に定着ローラー18やコイル37の温度が耐熱限界を越えて破損することがないように、磁性体コア39のキュリー温度を設定する必要がある。端部センターコア42は、発熱ベルト26の温度上昇に対する温度追随性が良好であるために、端部センターコア42に設定されるキュリー温度では、定着ローラー18やコイル37を熱破壊させることはない。
【0056】
図6に示すように、ボビン38の立ち壁部38cは、その矩形空間側の壁面に複数(本実施形態では5個)の突起部38fを有する。複数の突起部38fは、端部センターコア42をボビン38に取り付ける際の位置決めを行うものである。長手方向Xの一方の壁面に二つの突起部38fが並べて設けられ、その他方の壁面に前記二つの突起部38fに対向して二つの突起部38fが並べて設けられる。さらにY方向の端部の壁面に一つの突起部38fが設けられる。尚、突起部38fは、一方或いは他方の壁面のいずれかの壁面と端部の壁面とに夫々一つだけ設ける構成であってもよい。また、上記実施形態では、立ち壁部38cが設けられ、突起部38fが立ち壁部38cと一体に形成される構成であるが、立ち壁部38cがボビン38に設けられない構成である場合には、突起部38fがボビン38の取り付け面38bに直接に設けられる構成であってもよい。
【0057】
従って、端部センターコア42をボビン38に取り付けるには、ボビン38の取り付け面38bの所定の位置に接着剤を塗布し、次に端部センターコア42を複数の突起部38fに当接させて、取り付け面38bに当接するまで押し込む。また、もう一方の端部センターコア42は上記構成と同様に取り付けられる。これによって、端部センターコア42と取り付け面38bとの間に接着剤が均一にいきわたり、ボビン38の所定位置に位置決めされて確実に取り付けられる。このボビン38の所定位置への正確な取り付けと、前述の端部センターコア42の熱容量と発熱ベルト26への近接配置によって、非通過領域Cの過昇温を正確に迅速に防止することができる。
【0058】
また、上記実施形態では、ボビン38の立ち壁部38cが端部センターコア42とコイル37とを仕切る構成を備える。コイル37に磁界を発生させるために通電すると、コイル37は自己発熱し温度上昇するが、立ち壁部38cはコイル37の熱が端部センターコア42に放射されることを防ぎ、発熱ベルト26の温度変化に対する端部センターコア42の温度追随性が一層良好になる。
【0059】
また、上記実施形態では、立ち壁部38cには複数の突起部38fが設けられ、端部センターコア42を位置決めするために、複数の突起部38fが端部センターコア42に当接する。この構成によって、端部センターコア42の立ち壁部38cへの接触部分が少なくなるので、自己発熱したコイル37の熱が端部センターコア42に伝導し難くなり、発熱ベルト26の温度変化に対する端部センターコア42の温度追随性が一層良好になる。
【0060】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係るボビン38への端部センターコア42の取り付けを示す平面断面図である。第2実施形態では、第1実施形態のボビン38の端部センターコア42の取り付け部に段差部38gを形成したものであり、第1実施形態と異なる取り付け部について主に説明し、以降、第1実施形態と同じ部分の説明を省略する。
【0061】
ボビン38の立ち壁部38cが形成する矩形空間内(つまり、コイル37の中空部37a)には、端部センターコア42が配置される。端部センターコア42は複数の突起部38fによって位置決めされる。取り付け面38bは、ボビン38の矩形空間内に形成した段差部38gに設けられる。段差部38gの厚み(ボビン38の対向面38aから取り付け面38bまでの長さ)は、例えば0.5〜1mmに設定され、ボビン38の他の部分の厚みより小さい構成になっている。端部センターコア42は取り付け面38bに接着剤によって取り付けられる。
【0062】
この構成によって、端部センターコア42は、発熱ベルト26に対してさらに接近して配置されることになり、用紙搬送方向に直交する方向の両端部では、電磁誘導による発熱ベルト26の発熱量が迅速に増加して、用紙搬送方向に直交する方向における温度分布を迅速に均一化することができる。また、トナー像を小サイズ用紙に定着させる場合、発熱ベルト26の温度上昇に対して、端部センターコア42は迅速に温度追随するために、非通過領域の過昇温を迅速に防止することができる。
【0063】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係るボビン38への端部センターコア42の取り付けを示す平面断面図である。第3実施形態では、第1実施形態のボビン38の端部センターコア42の取り付け部に開口部38hを形成したものである。
【0064】
ボビン38の立ち壁部38cが形成する矩形空間内(つまり、コイル37の中空部37a)には、端部センターコア42が配置される。端部センターコア42は複数の突起部38fによって位置決めされる。ボビン38の端部センターコア42が取り付けられる部分には、発熱ベルト26側を開放した開口部38hが形成されている。端部センターコア42が取り付け面38bに接着剤によって取り付けられると、発熱ベルト26の熱は端部センターコア42に開口部38hを介して伝わる。
【0065】
この構成によって、用紙搬送方向に直交する方向の両端部では、電磁誘導による発熱ベルト26の発熱量が迅速に増加して、用紙搬送方向に直交する方向における温度分布を迅速に均一化することができる。また、トナー像を小サイズ用紙に定着させる場合、発熱ベルト26の温度上昇に対して、端部センターコア42は迅速に温度追随するために、非通過領域の過昇温を迅速に防止することができる。
【0066】
(第4実施形態)
第4実施形態は、誘導加熱部30の熱を排気する排気ファン及び通風ダクトを備えるものである。図9は、第1〜第3実施形態に係るカバー部材47内の熱を排気する排気ファン及び通風ダクトを横側から見た平面断面図である。また、図10、図11は、夫々図9の変形例であって排気ファン及び通風ダクトの配置を上側から見た平面断面図である。
【0067】
図9に示すように、コイル37(図3参照)が磁界を発生させるために通電すると自己発熱し、カバー部材47内の温度が上昇するが、コイル37の温度上昇を抑えるために、排気ファン57と通気路である通風ダクト55、56が設けられる。排気ファン57と通風ダクト55、56は冷却機構を構成する。
【0068】
カバー部材47の上面部には上面開口47a、47aが形成される。上面開口47a、47aは夫々カバー部材47の長手方向Xの両端側に設けられる。一方の上面開口47aに対向させて通風ダクト55が設けられ、また、他方の上面開口47aに対向させて通風ダクト56が設けられる。通風ダクト56は、その一端側の開口が上面開口47aに対向し、その他端側の開口が排気ファン57に対向して取り付けられる。
【0069】
排気ファン57が回転駆動すると、通風ダクト55から上面開口47aを介してカバー部材47内に外部の空気が入る。この排気ファン57の空気流によって、コイル37(図3参照)から発生する熱が上面開口47aを介して通風ダクト56から外部に排気される。
【0070】
排気ファン57によってコイル37を冷却することで、コイル37の熱が磁性体コア39に放射されるのを抑えられるので、発熱ベルト26の温度変化に対する磁性体コア39の温度追随性が良好になる。
【0071】
図10に示す変形例では、カバー部材47の両側面部に夫々複数の側面開口47bが形成される。一方の側面開口47bに対向させて通風ダクト55が設けられ、また、他方の側面開口47bに対向させて通風ダクト56が設けられる。通風ダクト56は、その一端側の開口が側面開口47bに対向し、その他端側の開口が排気ファン57に対向して取り付けられる。
【0072】
排気ファン57が回転駆動すると、通風ダクト55から側面開口47bを介してカバー部材47内に外部の空気が入る。この排気ファン57の空気流によって、コイル37(図3参照)から発生する熱が側面開口47bを介して通風ダクト56から外部に排気される。
【0073】
排気ファン57によってコイル37を冷却することで、コイル37の熱が磁性体コア39に放射されるのを抑えられるので、発熱ベルト26の温度変化に対する磁性体コア39の温度追随性が良好になる。
【0074】
図11に示す別の変形例では、カバー部材47の上面部には上面開口47a、47aが形成され、上面開口47a、47aは夫々カバー部材47の長手方向Xの両端側に設けられる。また、カバー部材47の一側面部には複数の側面開口47bが形成される。各上面開口47a、47aに対向させて図示しない通風ダクトが夫々設けられ、また側面開口47bに対向させて通風ダクト56が設けられる。通風ダクト56は、その一端側の開口が側面開口47bに対向し、その他端側の開口が排気ファン57に対向して取り付けられる。
【0075】
排気ファン57が回転駆動すると、各上面開口47a、47aに対向して設けた通風ダクト(図略)から上面開口47a、47aを介してカバー部材47内に外部の空気が入る。この排気ファン57の空気流によって、コイル37(図3参照)から発生する熱が側面開口47bを介して通風ダクト56から外部に排気される。
【0076】
排気ファン57によってコイル37を冷却することで、コイル37の熱が磁性体コア39に放射されるのを抑えられるので、発熱ベルト26の温度変化に対する磁性体コア39の温度追随性が良好になる。
【0077】
尚、上記実施形態では、発熱ベルト26が定着ローラー18に張架される定着装置5に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、無端状の発熱ベルトが誘導加熱部に対向配置されるヒートローラーと、加圧ローラーを圧接させる定着ローラーとで張架される定着処置に適用してもよい。また、無端状の発熱ベルトを加熱する誘導加熱部と、発熱ベルトの外周面を圧接させる加圧ローラーと、発熱ベルトの内周面に配設され加圧ローラーとの間で用紙と発熱ベルトとを圧接させる押圧部材と、を備える定着装置に適用してもよい。さらに、加圧ローラーと加圧ローラーに圧接される加熱ローラーを備え、加熱ローラーが誘導発熱層を内包するとともに誘導加熱部に対向配置される定着装置等、誘導加熱部を備える種々の定着装置に適用することができる。
【0078】
また、上記実施形態では、アーチコア41とサイドコア43とを夫々別設する構成を示したが、本発明はこれに限らず、アーチコア41をサイドコア43側にさらに延ばし、サイドコア43の機能をアーチコア41に代用させるように構成してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、アーチコア41はアーチコアホルダー45を介してボビン38に取り付ける構成を示したが、本発明はこれに限らず、アーチコア41はボビン38に直接取り付けられる構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等に用いる定着装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができ、特に、電磁誘導加熱方式の定着装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 画像形成装置
5 定着装置
18 定着ローラー
19 加圧ローラー(加圧部材)
26 発熱ベルト(加熱部材)
26a 誘導発熱層
30 誘導加熱部
37 コイル
37a 中空部
38 ボビン(支持部材)
38a 対向面
38b 取り付け面
38c 立ち壁部
38d フランジ部
38e ネジ孔
38f 突起部
38g 段差部
38h 開口部
38i 円弧部
39 磁性体コア
41 アーチコア(第1のコア部)
42 端部センターコア(第2のコア部)
43 サイドコア
45 アーチコアホルダー
45a ホルダーフランジ部
45b コア装着部
45d ネジ孔
47 カバー部材
47a 上面開口
47b 側面開口
51 ネジ
52 ナット
55、56 通風ダクト(通気路)
57 排気ファン
A 最大サイズ用紙の通紙領域
B 小サイズ用紙の通紙領域
C 非通紙領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部材と該加熱部材に圧接される加圧部材とにより形成されるニップ部で未定着トナー像を担持する記録媒体を挟持して、記録媒体上の未定着トナー像を溶融定着する定着装置において、
前記加熱部材の長手方向に沿ってループ状に巻回され前記加熱部材を誘導加熱する磁束を発生させるコイルと、
該コイルを冷却する冷却機構と、
前記コイルの近傍に前記記録媒体の搬送方向に直交する方向に配設され前記加熱部材の誘導発熱層に磁束を導く磁性体コアと、
前記加熱部材の表面に対向し、前記加熱部材に対向する面の反対側の取り付け面に前記コイルと前記磁性体コアとが取り付けられる支持部材と、を備え、
前記磁性体コアは、前記コイルを囲み前記記録媒体の搬送方向に直交する方向に複数配列される第1のコア部と、前記コイルのループが形成する中空部内で記録媒体の搬送方向に直交する方向の両端部において前記第1のコア部に対して前記加熱部材に近接して配設される第2のコア部と、を有し、
前記第2のコア部は前記第1のコア部に比べて熱容量が小さく構成されて、前記第2のコア部のキュリー温度は前記加熱部材が定着可能温度となった時の前記第2のコア部の温度以上であり、且つ前記コイルの冷却設定温度以下であることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記磁性体コアと前記コイルを覆うように前記支持部材に取り付けられるカバー部材を更に備え、
前記冷却機構は、前記コイル周囲の空気を排気する排気ファンと、前記カバー部材に設けた開口から前記カバー部材内の空気を外部に排気する通気路と、を有することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記支持部材には前記第2のコア部と前記コイルとを仕切る立ち壁部が形成され、前記立ち壁部には複数の突起部が設けられ、
前記第2のコア部は、前記複数の突起部に当接するとともに前記支持部材の取り付け面に対面して取り付けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記コイルの中空部に対応する部分の前記支持部材の厚みは、前記第2のコア部の取り付け部が他の部分に比べて小さいことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記支持部材の前記第2のコア部の取り付け部は、前記加熱部材側を開放した開口部を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の定着装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−68685(P2013−68685A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205442(P2011−205442)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】