説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】トナー物性に違いによるオフセットトナーの取り残しを軽減し、オフセットトナーによる画像汚れのない画像を出力できる定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】加熱ローラ21によって加熱される定着ベルト23と、定着ベルト23に圧接される加圧ローラ24と、加圧ローラ24の表面にクリーニングウェブ31を送り出して該表面を清掃するクリーニング手段30とを有する定着装置20であり、加圧ローラ24の表面温度を検出する温度センサ38と、クリーニングウェブ31の送り出し量を制御するウェブモータ制御部37とを有し、ウェブモータ制御部37は、トナーカートリッジのIDチップに記憶されたトナー情報に基づいてクリーニング手段30のクリーニングウェブ31の送り出し量を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術を用いた画像形成装置において、トナー画像を用紙等の転写材に定着するための定着手段に用いる技術として、定着回転体の一例であるハロゲンランプ等の熱源を内蔵した加熱ローラと、加圧回転体の一例であるその加熱ローラと圧接しながら回転する加圧ローラとが形成するニップに、トナー画像を担持した転写材を通過させてトナー画像を転写材に定着する、いわゆる熱圧着方式が広く採用されている。かかる方式の定着の技術において、トナー画像は、加圧ローラによってトナー画像を担持した転写材が加熱ローラに所定の圧力で押圧されることにより、加熱ローラからの加熱を受け、溶融状態となる。溶融したトナーは、その全てが転写材に定着されることが望ましいが、実際にはトナーと加熱ローラとの付着力により、そのごく一部が加熱ローラに付着する。一般にこの現象はオフセット現象と呼ばれている。
【0003】
オフセット現象の種類としては、低温オフセットと高温オフセットとがある。低温オフセットとは、トナーに対する加熱が不十分で、トナー画像を形成しているトナー層の内部まで充分に熱が伝達されないことからトナーの溶融が不完全となり、転写材への融着がなされなかったトナー層の一部が破砕して加熱ローラに付着するものである。この場合、転写材へのトナー画像の融着も不十分となることから、出力されたコピーからトナー画像を容易にこすり取ることができる、いわゆる定着不良が発生する。高温オフセットとは、必要以上の高温でトナーが加熱された場合、トナーの粘弾性が変化し、トナーと加熱ローラの付着力がトナー粒子の凝集力よりも高くなりトナーが加熱ローラに付着するものである。
【0004】
一方、電子写真方式の画像形成装置により出力されるコピー画像に対しては、ますます高画質化への要求が高くなっている。オフセット画像同等の印刷品質を確保するため、トナーを小径化、あるいは重合トナーのように球形化する方向がトレンドである。このため従来トナーと比較して、トナーに対して熱が伝わりにくく、溶解が十分でないため、低温オフセットがおきやすいという問題が生じてきた。特に、非コート紙のような紙表面が凸凹の転写材の場合に発生しやすくなる。
【0005】
この問題への対応としては、特許文献1等に記載されているように、加熱ローラに不織布等のクリーニングウェブを押圧ローラにより押し当て、回転する加熱ローラの表面を常に拭うようにした定着クリーニング手段を設けることが一般的に行われている。ところが、球形で小径のトナーは、クリーニングウェブと加熱ローラの間に生ずるわずかな間隙を通り抜けやすく、これを防ぐためには、トナーが付着していないクリーニングウェブの新しい部分を常に加熱ローラあるいは、加圧ローラに押圧することによって、できるかぎり間隙が生じないようにする必要がある。しかしながら、コピーを出力する毎に常に充分な面積のクリーニングウェブを供給することは、画像形成装置のメンテナンス頻度の増加、あるいは環境面からみた廃棄物の増加という点では望ましいことではない。
【0006】
この問題を鑑みて特許文献2では、画像データに基づき、クリーニングウェブの供給量を制御することで、無駄なウェブの供給を防止できるようにしたクリーニング手段を提案している。特許文献2では、ウェブの送り量を画像データ(=トナー画像面積/画像面積)が多いほど、送り量を増加させることでウェブ紙からのすり抜けが発生しにくくなる。
【0007】
最近では、例えば、特許文献3に記載されているように、定着ローラ側(画像面側)に清掃部材を配置せず、加圧側にクリーニングウェブを配置する機構も出てきている。これは画像面側にクリーニングウェブを付加すると、ローラあるいはベルト面側が傷つき、縦スジ等の異常画像が発生してしまうためである。ところが、加圧面側に清掃部材を付加すると、トナーの物性であるトナーの流出開始温度によって、オフセットトナーの染み込み度合いが変わるため、クリーニングウェブの最適な送り量が変わってくる。例えば通紙により加圧ローラ温度が低くなると、ウェブへ染み込み難くなり、ウェブからのすり抜けが発生しやすくなる。一方、加圧ローラ温度は印刷品質(トナーブリスタ等)の点からあまり高くすることができないという事情がある。なお、上記したトナーの流出開始温度の測定装置は樹脂などの流動性材料について、温度・圧力・流れ速度の関係から流動特性を評価するフローテスタを使用する。また、トナーブリスタとは塗工紙上にトナー画像が形成されている場合に起こるものであり、トナーとトナーの隙間、トナーと記録媒体の隙間の空気(および水分)が定着される際に膨張し、塗工された紙側は通気性が悪いためこの熱膨張した気体の逃げ場がなくなり、その結果、トナー層内に気泡が発生し、定着画像が乱れるという現象である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来の問題を解消し、トナー物性に違いによるオフセットトナーの取り残しを軽減し、オフセットトナーによる画像汚れのない画像を出力できる定着装置及び画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、加熱手段よって加熱される定着回転体と、該定着回転体に圧接される加圧回転体と、加圧回転体の表面にクリーニングウェブを送り出して当該表面を清掃するクリーニング手段とを有し、未定着トナー像を担持した転写材が定着回転体と加圧回転体のニップを通紙されることにより、熱及び圧の作用で未定着トナー像が転写材に定着される定着装置において、前記クリーニング手段のクリーニングウェブの送り出し量を制御する制御手段を有し、該制御手段は、使用されるトナー情報に基づいて前記クリーニング手段のクリーニングウェブの送り出し量を決定することを特徴とする定着装置を提案する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オフセットによりベルトあるいはローラに付着したトナーを除くためのクリーニングウェブの送り量を、使用するトナーの情報に基づいて、ウェブの送り量を制御することによって、オフセットトナー量に応じて、適切な量だけウェブを送れるようになり、経時にわたり安定した印刷品質を確保し、さらにクリーニングウェブの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の定着装置を説明する模式図である。
【図3】定着クリーニング手段の巻き取りの動作機構を説明する模式図である。
【図4】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の制御フローである。
【図5】加圧ローラ温度とトナー固着の関係を示す表である。
【図6】定着装置のウェブ制御テーブルの一例を示す表である。
【図7】定着装置のウェブ制御テーブルの別の例を示す表である。
【図8】定着装置のウェブ制御テーブルのさらに別の例を示す表である。
【図9】転写材毎のウェブ送り量にかける係数の表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を用いて説明する。
図1は、画像形成装置の一例を示す概略断面図である。ここに示した画像形成装置は、ドラム状の感光体より成る複数の像担持体2Y,2C,2M,2Kと、これらの像担持体の周面に当接した無端ベルトより成る中間転写ベルト3を有している。中間転写ベルト3は支持ローラ4,5,6に巻きかけられていると共に、ガイドローラ8によって案内され、図示していない駆動モータによって矢印A方向に回転駆動される。一方、各像担持体2Y乃至2Kも図示していないモータによって図1における反時計方向に回転駆動される。
【0013】
各像担持体2Y乃至2Kには、互いに異なる色のトナー像がそれぞれ形成され、図示した例では、イエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像及び黒トナー像が各像担持体2Y乃至2Kに形成される。各像担持体の表面に形成されたトナー像は、中間転写ベルト3の表面に転写される。
【0014】
各像担持体2Y,2C,2M,2K上にトナー像を形成し、そのトナー像を中間転写ベルト3に転写する構成は、そのトナー像の色が異なるだけで、実質的に全て同一であるため、そのうちの1つの像担持体2Yにトナー像を形成し、そのトナー像を中間転写ベルト3に転写する構成だけを説明する。図1に示すように、像担持体2Yのまわりには、該像担持体2Yの表面にトナー像を形成するための作像手段が設けられており、像担持体2Yが図1における反時計方向に回転駆動されるとき、帯電電圧を印加された帯電ローラ7より成る帯電装置によって像担持体2Yが所定の極性に帯電される。帯電後の像担持体2Yには、図示していない光書き込み装置から出射する光変調されたレーザビームLが照射され、これによって像担持体2Yに静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置9によってイエロートナー像として可視像化される。
【0015】
中間転写ベルト3を挟んで、像担持体2Yと反対側に転写ローラ10より成る一次転写装置が配置され、この転写ローラ10に転写電圧が印加されることにより、像担持体2Yに形成されたトナー像が、矢印A方向に回転する中間転写ベルト3上に転写される。トナー像転写後の像担持体2Y上に付着する転写残トナーはクリーニング装置11によって除去される。
【0016】
上述したところと全く同様にして、図1に示した像担持体2C,2M,2K上にシアントナー像、マゼンタトナー像及び黒トナー像がそれぞれ形成され、これらのトナー像がイエロートナー像の転写された中間転写ベルト3上に順次重ねて転写され、中間転写ベルト3上に合成トナー像が形成される。トナー像転写後の各像担持体2C,2M,2K上の転写残トナーがクリーニング装置により除去されることも第1の像担持体2Yの場合と変わりはない。
【0017】
一方、中間転写ベルト3が巻き掛けられた支持ローラのうちの最も下方に位置する支持ローラ6には、中間転写ベルト3を挟んで、二次転写装置の一例である転写ローラ16が配置され、この転写ローラ16と、支持ローラ6に巻き掛けられた中間転写ベルト部分との間に、例えば紙又は樹脂シートなどから成る転写材Pが矢印で示すように給送される。このとき、転写ローラ16に所定の転写電圧が印加され、これによって中間転写ベルト3上の合成トナー像が転写材P上に転写される。転写ローラ16に代え、転写ベルト、転写ブラシ、或いはコロナ放電器などの転写装置を用いることもできる。いずれの形式の転写装置も、中間転写ベルト3に転写されたトナー像を転写材Pに転写する用をなす。トナー像を転写された転写材Pは、さらに図1における左方に搬送され、定着装置20を通過する。
【0018】
図2は、定着装置20の構成を示す概略構成図である。
図2において、定着装置20はベルト定着方式であり、定着回転体として加熱ローラ21と定着ローラ22とに巻き掛けられた定着ベルト23と、該定着ベルト23を介して定着ローラに圧接する加圧回転体としての加圧ローラ24とを備えている。定着ローラ22、加圧ローラ24及び加熱ローラ21は、定着装置20の筐体(図示せず)の長手方向に回転可能に軸支され、図示していない駆動手段によってそれぞれ矢印方向に回転する。なお、加熱ローラ21の加熱方式は種々のものが適用できるが、本例では中空内に配置したヒータランプ25によって加熱している。
【0019】
定着ベルト23は、厚さ90μmのPI層で形成される無端ベルトであって、外周表面にPFA膜等のオフセット防止剤がコーティングされたものである。定着ローラ22と加圧ローラ24とは、対向して配置されるゴムローラであり、加圧ローラ24が定着ベルト23を介して定着ローラ22の中心方向に加圧されることにより、加圧ローラ24と定着ベルト23との間でニップ部が形成される。なお、符号26は定着ベルト23にテンションを与えるテンションローラであり、円筒形をしたアルミ管で形成されている。なお、加圧ローラ24は図示していない脱圧機構によって定着ローラ22への加圧が脱圧可能となっている。また、符号27は加圧ローラ24の中空内に配設されたヒータランプである。
【0020】
駆動手段は、モータと減速ギア列を備えて、定着ローラ22にギア接続され、図2に示す矢印方向に回転駆動すると、定着ローラ22が矢印方向に回転する。定着ローラ22の回転により、定着ローラ22に圧接する加圧ローラ24および定着ベルト23が同速でそれぞれ矢印方向に回転する。
【0021】
加熱ローラ21の中空内に配設されたヒータランプ25からの熱が加熱ローラ21を介して定着ベルト23に伝わり、定着ベルト23が加熱される。加圧ローラ24と定着ベルト23の互いの逆回転により、転写材Pはトナー像Tをニップ部で加熱溶融させながら搬送される。
【0022】
上記構成の定着装置においては、トナー像を形成された転写材Pは、定着ベルト23の転写材搬送方向の上流側に配された定着前ガイド28から、図1に示す矢印方向に搬送され、転写材のトナー像がニップ部で加熱溶融されることによって、トナー像が定着される。その後、転写材Pは、ニップ出口後の分離板29により定着ベルト23と転写材が剥離され、転写材搬送方向下流側に配された搬送ローラ17により、転写材排出部(図略)に排出される。定着出口部には転写材が所定のタイミングで通過していることを確認するために、排紙センサ18を配置している。
【0023】
上記定着装置20には定着クリーニング手段30が設けられている。定着クリーニング手段30は、芳香族ポリアミド系不織布に離型剤であるシリコンオイルを含浸させたクリーニングウェブ31と、新品ウェブを巻いている供給ローラ32、使用済みウェブを回収する巻き取りローラ33、発泡シリコン樹脂の押圧ローラ34等から構成される。巻き取りローラ33に巻かれたクリーニングウェブ31は、後述するウェブモータ36により所定の量が送られ、一定のトルクにて巻き取り動作が行われる。前記押圧ローラ34は、支持部材(図略)と押圧バネ(図略)とによりクリーニングウェブ31を加圧ローラ24に押圧している。この押圧によりクリーニングウェブ31と加圧ローラ24との間に3〜6mmのクリーニングニップが形成され、オフセットにより加圧ローラ24の表面に付着したトナーTは、加圧ローラ24が矢印の方向に回転することによってクリーニングニップにてクリーニングウェブ31により拭われる。
【0024】
図3は、定着クリーニング手段30の巻き取りの動作機構を説明する模式図である。クリーニングウェブ31は、巻き取りローラ33の回転量により送り量が決定される。巻き取りローラ33は、その並行して設置されている回転軸に減速ギア35が取り付けられており、減速ギア35を介してステップモータで構成されるウェブモータ36の回転により回転する。本実施の形態においては、ウェブモータ36の1ステップ回転によりクリーニングウェブ31が0.82mm送られるように、ギアの減速比が設定されている。またウェブモータ36はモータ制御部37で、ある所定の通紙枚数に一度、所定時間モータが動作する間欠制御により、新しいウェブが送り出されるようになっている。
【0025】
本実施形態の定着装置20では、ウェブモータ36を動作する時間(以降、ウェブモータ動作時間という。)を変えることで、クリーニングウェブ31の送り量を変化させている。モータ動作間隔は15sec(周期)としている。
【0026】
次に、上記した定着装置20を有する画像形成装置の制御フローを図4に記す。
定着装置20の制御部には、画像形成に用いるトナーの情報が入力されている。このトナー情報を得る最良の方法としては、トナーカートリッジ(図示せず)等のトナー収納容器に設けられているIDチップ40の情報を用いる。IDチップ40には、収納したトナーの残量を記憶する他、そのトナーの製造の製造Lot情報、さらにトナーの製造時に確認されたトナー情報、例えば、トナーの物性情報としてトナーの流出開始温度が記憶されている。そして、本実施形態ではこの情報を元にクリーニングウェブ31の送り量をコントロールする。トナーの流出開始温度が高い場合、クリーニングウェブ31に対してオフセットしたトナーが十分に溶け込まないため、再度加圧ローラ24の表面に付着し、トナー固着として用紙上に付着してしまう。図5にトナーの流出開始温度とトナー固着の関係を記す。クリーニングウェブ31からのすり抜けによるトナー固着を発生させないようにするため、ウェブモータ36の動作時間を長くすることにより、トナー固着を防止する。トナーの流出開始温度に関しては、先に説明したフローテスター(CFT-500D/100D)にて測定することが可能である。
【0027】
上記構成の定着装置においては、図5から明らかなように、トナーの流出開始温度が110℃以上であると大量のすり抜けが発生する。これを防止するため、トナーの流出開始温度に基づきその温度が高くなるにつれ、ウェブモータ動作時間を長くするように制御している。トナーの流出開始温度、本例では110℃以上になると、クリーニングウェブ31に対してオフセットトナーが染み込まない(トナー粒として紙に留まってしまう)ため、クリーニングウェブ31からのすり抜け現象が発生しやすくなってしまう。このため、ウェブモータ動作時間を長く設定することで、オフセットしたトナーが再度、転写材に付着しないように制御することができる。具体的には、トナー交換時のIDチップ40内の情報に基づき、図6に示すウェブ制御テーブルに基づいたウェブ制御テーブル記憶部38より必要なウェブ送り量を算出し、その算出値に基づき、ウェブモータ制御部37で所望の動作時間ウェブモータ36を動作させ、本例の定着装置において通紙中は常に上記のように制御される。
【0028】
また、図6に示したウェブ制御テーブルではトナーの流出開始温度に加えて画像形成モードが片面印刷と両面印刷において、モータの巻き取り時間を変えている。両面印刷の場合、ベルト側へのオフセットに加え、加圧側へもオフセットするため、クリーニングウェブ31への入力量が多くなる。このため図6に示したウェブ制御テーブルではトナーの流出開始温度の制御に加えて両面印刷時のクリーニングウェブ31の巻き取り量を片面印刷時よりも多くするように変更している。
【0029】
ところで、通紙する転写材Pの用紙サイズによって通紙中の紙間隔が変化する画像形成装置では、通紙中の紙間隔が変化すると、クリーニングウェブ31にオフセットするトナー量が変わるため、転写材Pの用紙サイズによってクリーニングウェブ31の巻き取り量をコントロールすることが好ましい。
【0030】
そこで、本定着装置20においては、トナーカートリッジのIDチップ40に記憶されたトナーの流出開始温度と転写材Pの用紙サイズに応じて、クリーニングウェブ31の巻き取り量を図7に示すウェブ制御テーブルに基づいてコントロールする。トナーの流出開始温度がある一定温度以上で、且つ、紙間が広い用紙サイズの転写材の場合、クリーニングウェブ31の巻き取り時間を長くすることによって、クリーニングウェブ31からのすり抜けを抑制することができる。
【0031】
このように、トナーカートリッジ内にあるIDチップ40内に記憶されたトナー物性情報に基づいて、クリーニングウェブ31の送り量を通紙する転写材の用紙サイズによって変更することで、どのような用紙サイズにおいても、オフセットトナー量に応じて、適切な量だけウェブを送れるようになり、経時にわたり安定した印刷品質を確保し、さらにクリーニングウェブの長寿命化を図ることができる。
【0032】
ところで、通紙する転写材Pがコート紙の場合、非コート紙に比べてクリーニングウェブ31に対するオフセット量が少ないため、非コート紙と同程度の送り量とすると送り過剰になってしまう。これは非コート紙に対して、コート紙は表面が平滑であることから、トナーに対して、熱が伝わりやすく、オフセット量が少ないためであると考えられる。
【0033】
そこで、本実施形態の定着装置では非コート紙に対してコート紙の場合、ウェブモータ動作時間を短くする設定となっている。具体的には、転写材Pがコート紙と非コート紙の場合において、図8に示すウェブ制御テーブルに示すように、クリーニングウェブ31の巻き取り時間を設定する。これによりクリーニングウェブ31からのすり抜け等が無い状態を維持することができる。
【0034】
このように、トナーカートリッジのIDチップ40に記憶されたトナーの流出開始温度の情報に基づき、クリーニングウェブ31の送り量をコート紙と非コート紙で変更することによって、安定した印刷品質を維持することができる。
【0035】
また、本定着装置20ではユーザの使用する転写材P各々を予め最適な送り量を把握しておき、制御部に記憶させるようにしている。この最適なウェブ送り量に対して、トナーの流出開始温度の情報に基づいてある係数をかけた値をウェブ送り量としてコントロールする。このように各々の紙種で最適な送り量のコントロールをすることにより、すり抜けの無い高画質な画像を経時に渡って維持することが可能となる。なお、図9はその最適なウェブ送り量に対して、トナーの流出開始温度に対してかける係数のウェブ送り量テーブルを示している。このように使用する転写材毎に予め設定されたウェブ送り量の参照テーブルを制御手段のメモリに持ち、さらにトナーの流出開始温度の情報によって、クリーニングウェブ31の送り量を制御することにより、どのような転写材に対しても、常に最適なウェブ送り量が確保され、安定した画像を出力することができる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態のみに限定されず、各種改変することができるものである。
例えば、ベルト定着方式の定着装置20で説明したが、定着装置20はローラ定着方式でもよく、したがって定着回転体は定着ローラのものであっても良い。さらに、加圧回転体も加圧ローラに限定されず、本発明は加圧ベルトを用いる定着装置においても適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
20 定着装置
21 加熱ローラ
22 定着ローラ
23 定着ベルト
24 加圧ローラ
30 定着クリーニング手段
31 クリーニングウェブ
32 供給ローラ
33 巻き取りローラ
36 ウェブモータ
37 ウェブモータ制御部
40 IDチップ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開2002−258657号公報
【特許文献2】特開2005−024619号公報
【特許文献3】特開2008−040053号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段よって加熱される定着回転体と、該定着回転体に圧接される加圧回転体と、加圧回転体の表面にクリーニングウェブを送り出して当該表面を清掃するクリーニング手段とを有し、未定着トナー像を担持した転写材が定着回転体と加圧回転体のニップを通紙されることにより、熱及び圧の作用で未定着トナー像が転写材に定着される定着装置において、
前記クリーニング手段のクリーニングウェブの送り出し量を制御する制御手段を有し、
該制御手段は、使用されるトナー情報に基づいて前記クリーニング手段のクリーニングウェブの送り出し量を決定することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置において、前記トナー情報が使用するトナーを収納したトナーカートリッジに設けられたIDチップに記憶されたトナー物性情報であることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項2に記載の定着装置において、前記トナー物性情報がトナーの流出開始温度であることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載の定着装置において、前記制御手段はクリーニングウェブの送り出し量を片面印刷と両面印刷とで変更することを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項4に記載の定着装置において、前記制御手段は両面印刷時が片面印刷時よりもクリーニングウェブの送り出し量を長くするように変更することを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の定着装置において、前記制御手段はクリーニングウェブの送り出し量を片面印刷と両面印刷とで変更することを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1に記載の定着装置において、前記制御手段はクリーニングウェブの送り出し量を通紙する用紙サイズで変更することを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項1に記載の定着装置において、前記制御手段はクリーニングウェブの送り出し量をコート紙と非コート紙で変更することを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れかに記載の定着装置において、通紙する用紙毎に予め設定されたクリーニングウェブの送り出し量の参照テーブルを前記制御手段のメモリに持つことを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れかに記載の定着装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−29575(P2013−29575A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164131(P2011−164131)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】