説明

定着装置及び該定着装置を備えた画像形成装置

【課題】加熱部材及び加熱部材を介して当接する定着ベルトを充分に加熱することができる定着装置及び該定着装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着部材2と加熱部材6との間に張架された無端状の定着ベルト4と、該定着ベルト4の表面温度を検知する温度検出手段10a、10bと、定着ベルト4を介して定着部材2に対向圧接する位置に加圧部材3を備え、該加圧部材3と定着ベルト4とで形成される定着ニップ部Nにおいて、記録媒体P上に担持されているトナー像Tを記録媒体P上に加熱加圧して定着する定着装置1であって、加熱部材6の内周面に接触して当接されたコア5aと、該コア5aに巻回されたコイル5bから構成される加熱手段5を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び該定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着ローラあるいは定着ベルトのような定着部材を用いた定着装置において、ヒータランプあるいはセラミックヒータのような加熱手段によって加熱が開始され、定着部材が定着温度に達して定着動作を行える状態になるまでのウォームアップ時間の短縮を図るために、定着部材の表面や内面を加熱手段によって直接接触させながら加熱することで、定着部材への熱供給時に発生する放熱による損失を低減する方法等が提案されている。
【0003】
例えば、特開2002−333788号公報(特許文献1)では、図3に示すように、定着部材としての定着ベルト100を、面状発熱体のような加熱部材101によって接触させながら加熱することで、ウォームアップ時間の短縮を図る定着装置102が提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1では、ウォームアップ時間の短縮に限界がある場合があった。そこで、導電性材料により形成された定着ローラの内部に、該定着ローラの軸方向に向かって、鉄心のようなコアを貫通させ、該コアにコイルを巻装し、該コイルに低周波の交流電流を通電することで、コイルに磁束を生じさせ、この磁束の作用で、定着ローラに渦電流を誘起させ、定着ローラを充分に加熱する低周波誘導加熱方式を利用することも考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−333788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような低周波誘導加熱方式を、定着ベルトのように厚みが1mm以下と薄い定着部材を用いた定着装置に適用しようとすると、定着ベルトを充分に加熱できなかった。
【0007】
これは、電磁誘導による加熱の場合、厚みに対して周波数依存性があるため、定着ベルトの厚みが薄いと、高周波の交流電流であれば大きな渦電流が誘起できるが、低周波の交流電流では誘起される渦電流が小さく、発熱量も小さいからである。
【0008】
したがって、低周波の交流電流を用いる場合、誘起される渦電流および発熱量を大きくするには、定着ベルトの厚みを厚くすればよいものの、厚くすると、割れが生じるため好ましくない。そのため、定着ベルトに当接する加熱部材の厚みを厚くすることとなる。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、定着ベルトの内側に加熱部材が配設された定着装置に、加熱部材の内周面に接触して当接されたコアと、該コアに巻回されたコイルから構成される加熱手段が配設されることで、可聴周波数帯域の低周波の交流電流がコイルに通電されれば、コイルに生じる磁束の作用で、コアに接触して当接する加熱部材及び加熱部材を介して当接する定着ベルトも充分に加熱することができる定着装置及び該定着装置を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、定着部材と加熱部材との間に張架された無端状の定着ベルトと、該定着ベルトの表面温度を検知する温度検出手段と、前記定着ベルトを介して前記定着部材に対向圧接する加圧部材を備える定着装置であって、前記加熱部材は加熱手段を有しており、該加熱手段は、前記加熱部材の内周面に接触して当接されたコアと、該コアに巻回されたコイルから構成されることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明は、前記定着装置は、前記コイルに可聴周波数帯域の低周波の交流電流を通電する電源を有することが好ましい。
【0012】
また、本発明は、前記加熱手段は、前記定着ベルトの幅方向に複数配設されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明は、前記加熱手段は、前記定着ベルトの幅方向に、一部が重なるように、複数配設されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記加熱手段は、前記コイルごとに通電を制御する制御手段を備えることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、前記定着装置を備えた画像形成装置を用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、定着ベルトの内側に加熱部材が配設された定着装置に、加熱部材の内周面に接触して当接されたコアと、該コアに巻回されたコイルから構成される加熱手段が配設されることで、可聴周波数帯域の低周波の交流電流がコイルに通電されれば、コイルに生じる磁束の作用で、コアに接触して当接する加熱部材及び加熱部材を介して当接する定着ベルトも充分に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の定着装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】定着ベルトの幅方向に複数の加熱手を配置した様子を示す概略図である。(a)加熱手段を一列に配設した様子を示す。(b)加熱手段を千鳥配置に配設した様子を示す。(c)加熱手段を所定の角度を有して斜めになるように配設した様子を示す。
【図3】本発明の従来例となる定着装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の定着装置について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の定着装置1の構成を示す概略断面図である。以下には、本発明の定着装置1に関して説明するが、その他の構成については、画像形成装置の一般的な技術が適用できることはいうまでもない。
【0020】
定着装置1は、定着部材である定着ローラ2と、加圧部材である加圧ローラ3と、定着ベルト4と、加熱手段5と、加熱部材6を含んで構成される。定着装置1においては、定着ベルト4が定着ローラ2と加熱部材6との間に張架され、加圧ローラ3が定着ベルト4を介して定着ローラ2に対向圧接するように配置されている。そして、定着ローラ2と加熱部材6とは、定着ローラ2の軸線方向において、略平行となるように配置されている。
【0021】
定着装置1は、加熱部材6が定着ベルト4と接触して定着ベルト4を加熱し、記録媒体である記録紙Pが、定着ローラ2と加圧ローラ3とで形成する定着ニップ部Nに所定の定着速度もしくは複写速度で進行方向Y0方向に通過したとき、記録紙P上に担持されている未定着のトナー像Tを記録紙P上に加熱加圧して定着する装置である。本実施例では、定着ニップ部Nの記録紙Pの搬送方向の長さは7mm、定着速度は225mm/secとした。
【0022】
なお、未定着のトナー像Tは、例えば、非磁性一成分現像剤(非磁性トナー)、非磁性二成分現像剤(非磁性トナー及びキャリア)、磁性現像剤(磁性トナー)等の現像剤(トナー)によって形成される。また、定着速度とはプロセス速度のことであり、複写速度とは1分あたりの複写枚数のことである。また、記録紙Pが定着ニップ部Nを通過するときには、定着ベルト4は、記録紙Pのトナー像担持面に当接するようになっている。
【0023】
定着ローラ2は、定着ベルト4を介して加圧ローラ3に圧接することで定着ニップ部Nを形成すると同時に、回転軸周りに回転自在に設けられている。定着ローラ2は、定着ベルト4の回転に従動して回転方向Y1方向に回転する。
【0024】
定着ローラ2は、軸線方向の長さが320mm、直径が30mmで、その内側から順に芯金2a、弾性層2bが形成された2層構造からなり、芯金2aには、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられる。また、弾性層2bにシリコーンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料が適している。なお、本実施例では、定着ローラ2が定着ベルト4を介して加圧ローラ3に対向圧接するときの力は、216N程度であり、芯金2aが直径15mmのステンレス鋼、弾性層2bが厚さ7.5mmのシリコーンスポンジゴムであるものを使用した。
【0025】
加圧ローラ3は、図示しない駆動モータにより回転軸周りに回転方向Y2方向に回転駆動することによって、定着ベルト4を搬送する。加圧ローラ3は、直径が30mmで、その内側から順に芯金3a、弾性層3b、離型層3cが形成された3層構造からなっている。芯金3aには、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられる。また、弾性層3bにはシリコーンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料が適しており、離型層3cにはPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が適している。
【0026】
本実施例では、芯金3aが直径24mm、肉厚2mmのSTKM(機械構造用炭素鋼鋼管)の鉄、弾性層3bが厚さ3mmのシリコーンソリッドゴム、離型層3cが厚さ30μmのPFAチューブであるものを使用した。
【0027】
また、加圧ローラ3の内部には、加圧ローラ3を加熱するヒータランプ3dが配置されている。定着装置1の定着動作の温度制御を行う制御手段200は、図示しない電源回路から、ヒータランプ3dに電力を供給させることによって、ヒータランプ3dが発光し、ヒータランプ3dから赤外線が放射される。これによって、加圧ローラ3の内周面が赤外線を吸収して加圧ローラ3全体が加熱される。本実施例では、定格電力300Wのヒータランプ3dを使用した。
【0028】
定着ベルト4は、定着ローラ2の回転時には、定着ローラ2に従動して回転方向Y3方向に回転するようになっている。定着ベルト4は、加熱部材6によって所定の温度に加熱され、定着ニップ部Nを通過する未定着のトナー像T及び記録紙Pを加熱する。本実施例では、定着ベルト4の表面温度を175℃に設定した。
【0029】
定着ベルト4は、長さ315mm、直径50mmの無端状のベルトで、加熱部材6と定着ローラ2によって張架され、定着ローラ2に所定の角度θで巻きかかっている。
【0030】
所定の角度θとは、定着ベルト4の回転によって、定着ベルト4が定着ローラ2に当接しはじめる点と定着ローラ2の軸心とを結ぶ直線と、定着ベルト4が定着ローラ2から離れはじめる点と定着ローラ2の軸心とを結ぶ直線とのなす角度であり、本実施例では、185°とした。
【0031】
定着ベルト4は、ポリイミド等の耐熱性樹脂あるいはステンレスやニッケル等の金属材料からなる基材の表面に、弾性層として耐熱性及び弾性に優れたシリコーンゴム等のエラストマー材料が形成され、更にその表面に離型層として耐熱性及び離型性に優れたPFAやPTFE等のフッ素樹脂が形成された3層構造となっている。また、加熱部材6と接する基材のポリイミドにフッ素樹脂を内添してもよい。これによって、加熱部材6との摺動負荷を低減することができるとともに、定着ベルト4が摺動するとき、定着ベルト4が蛇行するのを防止して、定着ベルト4の耐久性を高く維持することができる。
【0032】
本実施例では、基材に厚さ70μmのポリイミド、弾性層に厚さ150μmのシリコーンゴム、離型層に厚さ30μmのPFAチューブが被覆された定着ベルト4を使用した。
【0033】
また、基材として、ポリイミドの代わりに、アルミニウムを用いてもよい。アルミニウムは熱伝導性が高いため、定着ベルト4と当接する加熱部材6からの熱を定着ベルト4に供給しやすくなる。これにより、定着ベルト4を充分に加熱することができ、加熱ムラも生じることはない。
【0034】
また、ポリイミドの代わりに、ポリイミド中に、カーボンブラックやグラファイトのような導電性を有する粉末を分散させてもよい。加熱手段5からの磁束の作用で、定着ベルト4にも、すでに、渦電流が誘起されているため、この渦電流によって、カーボンブラック自ら発熱することで、定着ベルト4が発熱する。したがって、定着ベルト4の加熱ムラが生じることはなく、定着ベルト4も充分に加熱することができる。
【0035】
また、定着装置1においては、温度検出手段として、定着ベルト4の周面には定着ローラ2の軸方向中央部及び端部に加熱部材側サーミスタ10a、10b、加圧ローラ3の周面には加圧ローラ側サーミスタ10cが配設されており、それぞれの表面温度を検出するようになっている。
【0036】
加熱部材側サーミスタ10a、10bによって検出された定着ベルト4の表面温度に基づいて、加熱手段5からの通電が制御される。また、加圧ローラ側サーミスタ10cによって検出された加圧ローラ3の表面温度に基づいて、ヒータランプ3dからの通電が制御される。なお、本実施例における加熱部材側サーミスタ10a、10b及び加圧ローラ側サーミスタ10cは、接触式の温度検出手段であり、赤外線検知型の温度センサとした。
【0037】
加熱部材側サーミスタ10a、10b、加圧ローラ側サーミスタ10cの温度検出結果は、制御手段200に伝達され、各々の温度検出結果に基づいて、制御手段200は、定着ベルト4、加圧ローラ3の表面温度を所定の温度に近づけるように、加熱手段5及びヒータランプ3dへの通電を制御する。
【0038】
また、定着ベルト4の周面近傍に、定着ベルト4の異常昇温を検知して所定の温度以上になると通電を切断する、サーモスタットまたはサーマルプロテクタが配設されていてもよい。
【0039】
加熱手段5は、加熱部材6の内周面に接触して当接されたコア5aと、該コア5aに巻回されたコイル5bから構成される。
【0040】
まず、コイル5bに交流電流を通電する電源7から低周波の交流電流がコイル5bに通電されることで、コイル5bに磁束が生じる。この磁束の作用で、加熱部材6は加熱される。コア5aに接触していない部分には、熱が伝播されることで、加熱される。定着ベルト4も、加熱部材6を介して加熱される。また、この磁束の作用で、定着ベルト4にも、渦電流が誘起されるため、加熱部材6を介さず、加熱される。
【0041】
このように、コイル5bに生じた磁束の作用で、定着ベルト4は、加熱部材6を介して加熱されるとともに、加熱部材6を介さず、加熱される。コア5aは、トランス等に用いられる鉄心であり、フェライト、鉄、磁性ステンレス、珪素鋼板、電磁鋼板、ニッケル鋼等の透磁率の大きいものが好ましい。これらは、渦電流が発生したとき、発熱が大きいからである。本実施例では、珪素鋼板積層鉄心を用いた。
【0042】
コイル5bは、本実施例では、1.6mmの太さの銅線の表面に、絶縁層として、エナメル、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド等の樹脂を被覆したが、エナメル線等を撚り線にしたリッツ線を用いてもよい。抵抗は、コイル5bでのジュール損を抑えるため、極力、小さくするのが好ましい。
【0043】
電源7は、100Vもしくは200Vの商用電源を用い、周波数として、50Hzあるいは60Hzの低周波の交流電流をコイル5bに通電したが、周波数は、可聴周波数帯域である10kHz以下の低周波であればよい。
【0044】
電磁誘導による加熱の場合、厚みに対して周波数依存性があるため、定着ベルト4のように厚みが1mm以下と薄い場合、高周波の交流電流であれば、加熱手段5によって、大きな渦電流が誘起されるが、低周波の交流電流では、誘起される渦電流が小さく、発熱量も小さい。
【0045】
すなわち、低周波の交流電流を用いて、加熱手段5によって誘起される渦電流および発熱量を大きくするには、定着ベルト4の厚みを厚くすればよい。しかしながら、定着ベルト4を厚くすると、割れが生じるため好ましくない。したがって、定着ベルト4に当接する加熱部材6の厚みを厚くすることとする。
【0046】
以上により、定着ベルト4のように厚みが薄くても、加熱部材6の厚みを厚くしておけば、商用電源程度の低周波で、電磁誘導による加熱を用いて、加熱部材6及び、加熱部材6を介して定着ベルト4を充分に加熱することができる。逆に、高周波の交流電流とすれば、定着ベルト4も加熱部材6も薄くてもよいものの、低周波の商用電源を、交流から直流に一旦整流した後、高周波の交流電流に変換させるインバータ基板を別途配設しなくてはならない。
【0047】
加熱部材6は、外径28mmの略半円弧状の断面形状となっており、定着ベルト4の内側から順に、基材層6a、表面層6bで構成される。本実施例では、基材層6aとして、厚さ2mmのSTKMの鉄を用い、表面層6bとして、厚さ100μmのアルミニウムを用いた。
【0048】
基材層6aとして、鉄を用いたのは、加熱部材6の周面の全域に熱を分散させるためである。
【0049】
表面層6bとして、アルミニウムを用いたのは、基材層6aの鉄よりも熱伝導性が高いためで、これにより、定着ベルト4の加熱ムラが生じることはなく、定着ベルト4も充分に加熱することができる。基材層6aとして、熱伝導性が鉄よりも高い銅をあらかじめ用いる場合には、わざわざ表面層6bを設けなくてもよい。
【0050】
本実施例では、表面層6bとして、熱伝導性が高いアルミニウムを用いたが、カーボンブラックやグラファイトのような導電性を有する粉末を混入させてもよい。この場合、加熱手段5からの磁束の作用で、カーボンブラック自ら発熱するため、加熱部材6の外周面、及び加熱部材6と当接する定着ベルト4も充分に加熱することができ、定着ベルト4の加熱ムラも生じることはない。
【0051】
表面層6bの上に、定着ベルト4と接するコート層として、PFAやPTFE等のフッ素樹脂を形成させてもよい。これは、加熱部材6と定着ベルト4との間の摩擦抵抗を低減させるためで、定着ベルト4の磨耗が防止され、定着ベルト4の耐久性を向上させることができるとともに、定着ベルト4を駆動する定着ローラ2及び加圧ローラ3への負荷も低減することができる。これにより、定着ローラ2及び加圧ローラ3の耐久性も向上できる。また、定着ベルト4と加熱部材6の表面の密着性が上がり、定着ベルト4への伝熱効率が高くなるため、低電力で定着ベルト4を駆動することができる。更に、定着ベルト4の表面温度が均一となり、面圧も調整されることから、定着ベルト4の蛇行も抑制できる。
【0052】
定着装置1では、画像形成装置の全動作を制御する主制御部であるCPU(Central Processing Unit)(図示せず)からの画像形成指示の命令、及び加熱部材側サーミスタ10a、10b、加圧ローラ側サーミスタ10cの温度検出結果、さらにサーモスタットまたはサーマルプロテクタによって検出された定着ベルト4の異常昇温データに基づいて、定着装置1の定着動作の温度制御を行う。この温度制御は、制御手段200によって行われ、定着ベルト4、加圧ローラ3の表面温度を所定の温度に近づけるように、加熱手段5及びヒータランプ3dへの通電を制御する。
【0053】
制御手段200による加熱手段5への通電は、電源7から低周波の交流電流がコイル5bに通電されることで行われ、ヒータランプ3dへの通電は、図示しない電源回路から電力を供給されることで行われる。
【0054】
本実施例では、電力の制御は、所定の一定期間内での通電される期間と通電されない期間の割合を代えるデューティ制御としたが、低周波の交流電流の半波長の位相を変える位相制御を用いてもよい。なお、通電される期間と通電されない期間の割合は、記録紙Pのサイズや厚み、画像形成装置の動作モードに応じて、適宜、調整すればよい。
【0055】
制御手段200は、CPUによって統括的に制御されるものの、CPUに備えられていてもよい。制御手段200は、各種データを一時的に記憶する図示しないRAM(Random Access Memory)を備えており、必要に応じて、読み出すことが可能である。なお、画像形成指示は、画像形成装置に設けられる操作パネルまたは画像形成装置に接続されるコンピュータ等の外部機器から入力される指示であり、この画像形成指示が入力されることによって、定着装置1は定着処理動作を開始する。
【0056】
図2は、定着ベルト4の幅方向に向かって、定着ベルト4及び加熱部材6の内側に、加熱手段5のコア5a及びコイル5bを複数配設した様子を示す概略図である。
【0057】
図2(a)は、コイル5bを一列に配設した様子であり、図2(b)は、コイル5bの一部が重なるように、千鳥配置した様子であり、図2(c)は、コイル5bの一部が重なるように、所定の角度を有して斜め配置した様子を示す概略図である。
【0058】
図2(a)、図2(b)、図2(c)いずれも、加熱手段5のコア5a及びコイル5bは、定着ベルト4の軸方向に複数配設されているため、定着ベルト4の軸方向で加熱ムラが生じることはなく、定着ベルト4も充分に加熱することができる。
【0059】
更に、加熱手段5のコイル5bごとに、通電を制御する制御手段200を複数配設させれば、コイル5bごとに加熱制御させられるため、定着ベルト4を細やかに温度制御することができ、画像欠陥のない良好な画像を提供できる。
【0060】
また、小サイズの記録紙Pを連続で印字した場合、記録紙Pが通過していない定着ベルト4の軸方向の端部で、過度の温度上昇が発生してしまうことはなく、サイズの異なる記録紙Pへの対応が可能となる。
【0061】
複数配設されたコイル5bごとに対する低周波の交流電流の通電制御は、コイル5bごとに、スイッチング素子を配設するだけで容易に制御することができる。スイッチング素子は、ON/OFFを切り替えるだけでよく、このことで、定着ベルト4の幅方向に対する加熱領域の制御を容易に行うことができる。
【0062】
図2(a)では、定着ベルト4の幅方向に向かって、定着ベルト4及び加熱部材6の内側に、加熱手段5のコア5a及びコイル5bを複数配設しているため、定着ベルト4の幅方向で加熱ムラが生じることはなく、定着ベルト4も充分に加熱することができる。
【0063】
図2(b)では、定着ベルト4の幅方向に、隣接するコイル5b1とコイル5b2の一部が、重なるように配設されているため、重ならないように配設された図2(a)の場合に比べて、定着ベルト4の幅方向で加熱ムラが生じることはなく、定着ベルト4も充分に加熱することができる。加熱手段5のコア5a及びコイル5bを、千鳥配置となるように配設しているが、これは、定着ベルト4の温度分布に応じて、自在に配置させるためであり、このことで、定着ベルト4の幅方向で加熱ムラが生じることはない。
【0064】
図2(c)では、定着ベルト4の幅方向に、隣接するコイル5b3とコイル5b4の一部が重なるように、所定の角度を有して斜め配置しているが、これも、定着ベルト4の温度分布に応じて、自在に配置させるためであり、このことで、定着ベルト4の幅方向で加熱ムラが生じることはない。
【符号の説明】
【0065】
1 定着装置
2 定着ローラ
2a 芯金(3a)
2b 弾性層(3b)
3 加圧ローラ
3c 離型層
3d ヒータランプ
4 定着ベルト
5 加熱手段
5a コア
5b コイル(5b1〜5b4)
6 加熱部材
6a 基材層
6b 表面層
7 電源
10a 加熱部材側サーミスタ(10b)
10c 加圧ローラ側サーミスタ
200 制御手段
N 定着ニップ部
P 記録紙
T 未定着のトナー像
Y0 進行方向(Y1、Y2、Y3)
θ 所定の角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着部材と加熱部材との間に張架された無端状の定着ベルトと、該定着ベルトの表面温度を検知する温度検出手段と、前記定着ベルトを介して前記定着部材に対向圧接する加圧部材を備える定着装置であって、
前記加熱部材は加熱手段を有しており、該加熱手段は、前記加熱部材の内周面に接触して当接されたコアと、該コアに巻回されたコイルから構成されることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着装置は、前記コイルに可聴周波数帯域の低周波の交流電流を通電する電源を有することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、前記定着ベルトの幅方向に複数配設されていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
前記加熱手段は、前記定着ベルトの幅方向に、一部が重なるように配設されていることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記加熱手段は、前記コイルごとに通電を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項3または4に記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−145662(P2012−145662A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2638(P2011−2638)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】