室圧制御装置および室圧制御方法
【課題】対象室の扉が開いたときに通路等の基準室と他の部屋の室圧に対する影響を最小限に抑える。
【解決手段】室圧制御装置は、部屋毎に設置された室圧調整用ダンパ7−3,7−9,8−3,8−9と、扉の開閉を検出する扉センサ3−3と、基準室である通路HWとクリーンルームR−3との間の扉1−3を開く操作が開始されたことを示す扉開信号が扉センサ3−3から出力されたときに、クリーンルームR−3の室圧調整用ダンパ8−3を制御して、クリーンルームR−3の室圧を扉開時の所定値に減圧するコントローラ10と、クリーンルームR−3の室圧が扉開時の所定値に達した後に、扉1−3を駆動して開く扉駆動機構4−3とを備える。
【解決手段】室圧制御装置は、部屋毎に設置された室圧調整用ダンパ7−3,7−9,8−3,8−9と、扉の開閉を検出する扉センサ3−3と、基準室である通路HWとクリーンルームR−3との間の扉1−3を開く操作が開始されたことを示す扉開信号が扉センサ3−3から出力されたときに、クリーンルームR−3の室圧調整用ダンパ8−3を制御して、クリーンルームR−3の室圧を扉開時の所定値に減圧するコントローラ10と、クリーンルームR−3の室圧が扉開時の所定値に達した後に、扉1−3を駆動して開く扉駆動機構4−3とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばクリーンルーム施設や実験施設等において、室内清浄度の維持や汚染室内空気の漏出防止等を可能とするための室圧制御装置および室圧制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薬品の製造施設や半導体電子部品の製造施設において複数の部屋の室圧を制御するための室圧制御装置は、部屋の扉が開いたときに、扉両側の室圧を制御するコントローラの制御動作を一旦停止し、扉が閉まったときに、室圧を制御するコントローラの制御動作を再開するようにしていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2に開示された室圧制御装置では、部屋の扉が開いたときに、扉両側の室圧を制御するコントローラのPID制御の計測値入力を設定値あるいはその他の固定値に切り替えるなどの方法で偏差のない模擬信号を作り、コントローラの制御動作を継続しながら、室圧を制御するダンパの位置を保持する。そして、扉が閉まったときに、室圧を制御するコントローラのPID制御の入力を通常状態に戻すようにしていた。
【0004】
また、特許文献3に開示された室圧制御装置では、扉の開放動作の開始と同時に、扉両側の室圧を制御するダンパの位置を保持し、ダンパの保持後に扉が開くように設定し、扉の閉鎖動作時には、扉が閉まった後に、室圧を制御するダンパの制御動作を再開するようにしていた。
【0005】
また、特許文献4に開示された室圧制御装置では、部屋の扉が開いたときに、扉両側の各室の給気と排気のうち少なくとも一方を室圧制御から風量制御に切り替えて、扉開口部に一定風速の風量を通過させ、扉が閉まったときに、扉両側各室の給排気制御を室圧制御に戻すようにしていた。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−247542号公報
【特許文献2】特開2002−181361号公報
【特許文献3】特開2004−232976号公報
【特許文献4】特開2006−292280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来は、扉の開閉による室圧の均一化が各部屋の室圧制御の基準となる通路の室圧を急激に変化させるため、この通路の室圧の急激な変化が、他の部屋の室圧制御の外乱となり、各部屋の室圧制御がハンチング状態に陥ってしまうという問題点があった。また、室圧制御がハンチング状態になっているときに扉を開くと、例えばクリーンルームから通路への一定方向の空気流動を保障することができなくなり、クロスコンタミネーション(交差汚染)が生じる恐れがあった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、対象室の扉が開いたときに、通路等の基準室とそれを基準にする他の部屋の室圧に対する影響を最小限に抑えることができる室圧制御装置および室圧制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の室圧制御装置は、部屋毎に設けられた排気ダクト及び給気ダクトのうち少なくとも一方に設置された室圧調整用ダンパと、各部屋の扉毎に設置され、扉の開閉を検出する扉センサと、基準室圧に設定された基準室と対象室との間の扉を開く操作が開始されたことを示す扉開信号が、この扉に設置された扉センサから出力されたときに、前記対象室の室圧調整用ダンパを制御して、前記対象室の室圧を扉開時の所定値に減圧又は増圧する対象室圧制御手段とを備えるものである。
また、本発明の室圧制御装置の1構成例は、さらに、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達した後に、前記基準室と対象室との間の扉を駆動して開く扉駆動手段を備えるものである。
また、本発明の室圧制御装置の1構成例は、さらに、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達してから前記基準室と対象室との間の扉が全開するまでの間、この扉の開度に応じて前記基準室の室圧調整用ダンパの風量を増量又は減量させる基準室圧制御手段を備え、前記対象室圧制御手段は、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達してから前記基準室と対象室との間の扉が全開するまでの間、この扉の開度に応じて前記対象室の室圧調整用ダンパの風量を減量又は増量させるものである。
【0010】
また、本発明の室圧制御装置の1構成例は、さらに、前記対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、前記基準室と対象室との間の扉を一部開いて停止させ、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達した時点で、この扉の開放を再開する扉駆動手段と、前記対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、前記基準室の室圧調整用ダンパを制御して、前記基準室の基準室圧を維持する基準室圧制御手段とを備えるものである。
また、本発明の室圧制御装置の1構成例において、前記対象室圧制御手段は、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達してから前記基準室と対象室との間の扉が全開するまでの間、この扉の開度に応じて前記対象室の室圧調整用ダンパの風量を減量又は増量させ、前記基準室圧制御手段は、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達してから前記基準室と対象室との間の扉が全開するまでの間、この扉の開度に応じて前記基準室の室圧調整用ダンパの風量を増量又は減量させるものである。
【0011】
また、本発明の室圧制御装置の1構成例において、前記扉開時の所定値は、前記対象室と基準室との間に一定風速の通過風量を維持できる差圧が生じるように設定された前記対象室の室圧である。
また、本発明の室圧制御装置の1構成例において、前記対象室圧制御手段は、前記基準室と対象室との間の扉が閉まったことを示す扉閉完了信号が、この扉に設置された扉センサから出力されたときに、前記対象室の室圧調整用ダンパを制御して、前記対象室の室圧を扉閉時の所定値に戻すものである。
【0012】
また、本発明の室圧制御方法は、基準室圧に設定された基準室と対象室との間の扉を開く操作が開始されたことを示す扉開信号が、この扉に設置された扉センサから出力されたときに、前記対象室の室圧調整用ダンパを制御して、前記対象室の室圧を扉開時の所定値に減圧又は増圧する対象室圧制御ステップを備えるものである。
また、本発明の室圧制御方法の1構成例は、さらに、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達した後に、前記基準室と対象室との間の扉を駆動して開く扉開放ステップを備えるものである。
また、本発明の室圧制御方法の1構成例は、さらに、前記対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、前記基準室と対象室との間の扉を一部開いて停止させる第1の扉駆動ステップと、前記対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、前記基準室の室圧調整用ダンパを制御して、前記基準室の基準室圧を維持する基準室圧制御ステップと、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達した時点で、前記基準室と対象室との間の扉の開放を再開する第2の扉駆動ステップとを備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基準室と対象室との間の扉を開く操作が開始されたことを示す扉開信号が、この扉に設置された扉センサから出力されたときに、対象室の室圧調整用ダンパを制御して、対象室の室圧を扉開時の所定値に減圧又は増圧することにより、基準室とそれを基準にする他の部屋の室圧に対する影響を最小限に抑えることができ、各室圧調整用ダンパの安定性を向上させることができる。これにより、本発明では、扉を開閉しない他の部屋の室圧制御に外乱を与えることがなく、他の扉の開閉による制御のハンチングもなくなるので、他の扉の開閉があった場合でも安定した室圧制御を行うことが可能となる。
【0014】
また、本発明では、対象室の室圧が扉開時の所定値に達した後に、基準室と対象室との間の扉を駆動して開く扉駆動手段を設けることにより、基準室と他の部屋の室圧に対する影響をより確実に抑えることができる。
【0015】
また、本発明では、対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、基準室と対象室との間の扉を一部開いて停止させ、基準室の室圧調整用ダンパを制御して、基準室の基準室圧を維持し、対象室の室圧が扉開時の所定値に達した時点で、扉の開放を再開することにより、基準室とそれを基準にする他の部屋の室圧に対する影響をできるだけ抑えつつ、扉を開く時間を短縮することができる。本発明によれば、対象室の室圧調整用ダンパの応答能力が追いつかない場合でも、基準室の室圧調整用ダンパを利用することで、基準室の室圧を維持しつつ、対象室の室圧を短時間で扉開時の所定値に変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず、本発明の原理について説明する。図1に示したように、複数の部屋がある施設において、図示しない給気ダンパ又は排気ダンパの風量制御により各部屋の室内静圧(以下、室圧と略する)が一定に制御されているものとする。図1において、R−1〜R−8はクリーンルーム、MRは給気ファンや排気ファン等の機械が設置されている機械室、ARは機械室MRやクリーンルームR−1〜R−8に入るための前室、HWは通路、1−1〜1−8はクリーンルームR−1〜R−8の扉、1−9は前室ARから通路HWへ入るための扉、1−10は機械室MRの扉、1−11は施設外から前室ARへ入るための扉、2−1〜2−8はクリーンルームR−1〜R−8と通路HWとの差圧を測定する差圧センサ、2−9は前室ARと通路HWとの差圧を測定する差圧センサである。
【0017】
クリーンルームR−1〜R−8は、基準室である通路HWとの差圧が+10[Pa]になるように室圧が制御されている。図1の例では、通路HWの基準室圧が10[Pa]なので、クリーンルームR−1〜R−8の室圧は20[Pa]である。
【0018】
ここで、図2に示すようにクリーンルームR−3の扉1−3が開いた場合を考える。図2の例は、各部屋の差圧を変更しない従来の場合を示している。通路HWの体積VHWを576[m3]、設計室圧SPHWを10[Pa]、クリーンルームR−3の体積VR-3を192[m3]、設計室圧SPR-3を20[Pa]とすると、質量保存法則により、扉1−3の開放後の通路HWとクリーンルームR−3の空気密度ρは次式のようになる。
【0019】
【数1】
【0020】
式(1)において、ρHWは扉開放前の通路HWの空気密度、ρR-3は扉開放前のクリーンルームR−3の空気密度である。
そして、扉1−3の開放後の通路HWとクリーンルームR−3の室圧SPは、以下のようになる。
【0021】
【数2】
【0022】
式(2)より、通路HWとクリーンルームR−3の室圧SPは12.5[Pa]となるので、他のクリーンルームR−1,R−2,R−4〜R−8の室圧は22.5[Pa]となる。このように、扉1−3の開放が通路HWの室圧に影響を与え、通路HWの室圧変化が他のクリーンルームR−1,R−2,R−4〜R−8の室圧に影響を与えることになる。扉開放後の通路HWの室圧は自身の体積比と比例するため、通路HWの体積が大きければ大きいほど、通路HWの室圧変化は小さく、他のクリーンルームの室圧に対する影響は小さくなる。
【0023】
純粋の圧力制御が使われる場合、1つの部屋の室圧が変動すれば、排気ダクトや通路HWの室圧を通して、他の部屋の室圧に影響し、他の部屋の室圧制御に外乱を与える。したがって、各部屋の扉が順番に開くと、各部屋の室圧制御は頻繁に外乱を受けることになり、各部屋の室内が頻繁に変動するハンチング状態に陥ってしまう。特に、各部屋の室圧の基準となる通路HWの室圧変化は、各部屋の室圧を変化させる。このように、通路HWの室圧を変化させないことは、室圧制御にとって重要なポイントである。
【0024】
また、扉が閉まった状態と扉が開いた状態という異なる状態に対して、メインダクトの所要静圧は大きく変わる。定静圧でファン制御をすると、余圧はすべて給気ダンパや排気ダンパに掛けられ、室圧制御が不安定に導かれ、ファンの動力も無駄に使われる。
【0025】
以上のような点に鑑み、本発明では、対象室を減圧又は増圧してから扉を開くことにより、通路HWの静圧を安定させるようにした。対象室を減圧又は増圧してから扉を開くことは通路の静圧を安定させる重要なポイントである。
【0026】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図3は本発明の第1の実施の形態に係る室圧制御装置の構成を示すブロック図である。ここでは、室圧制御の直接の対象となるクリーンルームR−3(対象室)と通路HW(基準室)についての構成のみを記載している。
【0027】
図3において、1−3はクリーンルームR−3の扉、2−3はクリーンルームR−3と通路HWとの差圧を測定する差圧センサ、3−3は扉1−3の開閉及び扉1−3を開閉しようとする操作を検出する扉センサ、4−3は扉1−3の開閉を制御する扉駆動機構、5−3はクリーンルームR−3の給気ダクト、5−9は通路HWの給気ダクト、6−3はクリーンルームR−3の排気ダクト、6−9は通路HWの排気ダクト、7−3はクリーンルームR−3の給気ダンパ、7−9は通路HWの給気ダンパ、8−3はクリーンルームR−3の排気ダンパ、8−9は通路HWの排気ダンパ、9−3はクリーンルームR−3への給気の風速センサ、9−9は通路HWへの給気の風速センサ、10はコントローラである。
コントローラ10は、対象室圧制御手段と基準室圧制御手段とを構成し、またコントローラ10と扉駆動機構4−3とは、扉駆動手段を構成している。
【0028】
給気SAは、機械室MRの図示しない給気ファンから送り出され、給気ダンパ7−3,7−9を経由して給気ダクト5−3,5−9からクリーンルームR−3と通路HWに送り出される。また、クリーンルームR−3と通路HWの排気RAは、機械室MRの図示しない排気ファンによって、排気ダクト6−3,6−9から排気ダンパ8−3,8−9を経由して吸い出される。
【0029】
コントローラ10は、給気ダンパ7−9と排気ダンパ8−9の開度(通過風量)を制御することにより、通路HWの室圧を制御する。また、コントローラ10は、差圧センサ2−3の検出結果に応じて給気ダンパ7−3と排気ダンパ8−3の開度を制御することにより、通路HWとの差圧が一定値(例えば+10[Pa])になるようにクリーンルームR−3の室圧を制御する。
【0030】
なお、給気が定風量制御の場合は、給気ダンパ7−3,7−9、風速センサ9−3,9−3及びコントローラ10の給気制御に関わる構成については、定風量制御装置CAVで置き換えることができる。
【0031】
以上のような状態において、クリーンルームR−3の扉1−3が開く場合の室圧制御装置の動作について説明する。
扉1−3が開いたとき、その扉開口部における風速vは次式のようになる。
【0032】
【数3】
【0033】
式(3)において、αは流量係数(α=0.6〜0.7)、ρは空気密度[kg/m3]、ΔPは差圧[Pa]である。式(3)より、扉1−3が開かれるときに、扉開口部に一定風速v(例えば0.3[m/s])の通過風量を維持できる所要差圧ΔPは0.13[Pa]となる。つまり、扉1−3が開く場合には、クリーンルームR−3の室圧を10.13[Pa]にすればよいことになる。
【0034】
図4は本実施の形態の室圧制御装置の動作を示すフローチャート、図5は室圧制御装置の動作を示す特性図であり、図5(A)は扉1−3の開度を示す図、図5(B)は給気ダンパ、排気ダンパの開度を示す図、図5(C)はクリーンルームR−3の室圧を示す図である。図5(B)において、OSAR-3はクリーンルームR−3の給気ダンパ7−3の開度、ORAR-3はクリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の開度、ORAHWは通路HWの排気ダンパ8−9の開度である。
【0035】
コントローラ10は、扉1−3を開く操作が開始されたことを示す扉開信号を扉センサ3−3から受信したとき(図4ステップS1においてYES)、クリーンルームR−3の室圧設定値を20[Pa]から扉開時の所定値10.13[Pa]に変更し、クリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の開度を所定の開度変更速度で制御し、クリーンルームR−3の室圧を20[Pa]から10.13[Pa]に減圧する(ステップS2)。図5(A)〜図5(C)の例では、時刻t1において扉開信号を受信し、図5(B)のように排気ダンパ8−3を制御することにより、図5(C)に示すようにクリーンルームR−3の室圧が低下する。
【0036】
扉センサ3−3は、扉1−3を開くための操作ボタン等が操作されたときに扉開信号を出力してもよいし、扉1−3を開こうとする力を検出して扉開信号を出力してもよい。
次に、コントローラ10は、クリーンルームR−3の室圧が10.13[Pa]まで減圧された時点(図5(A)〜図5(C)の時刻t2)、あるいは排気ダンパ8−3の開度の波動が所定範囲内で、かつクリーンルームR−3の室圧が所定の10.13[Pa]に近付いた値10.5[Pa](ここでは通路HWの室圧制御の許容誤差が±0.5[Pa]と仮定)まで減圧された時点で、扉駆動機構4−3を制御し、扉1−3を開く(ステップS3)。
【0037】
次に、扉1−3を閉じるための操作ボタン等が操作され、扉駆動機構4−3が扉1−3を閉めたときの動作を説明する。
コントローラ10は、扉1−3が閉まったことを示す扉閉完了信号を扉センサ3−3から受信したとき(ステップS4においてYES)、クリーンルームR−3の室圧設定値を10.13[Pa]から扉閉時の所定値20[Pa]に戻し、クリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の開度を所定の開度変更速度で制御し、クリーンルームR−3の室圧を10.13[Pa]から20[Pa]に増圧する(ステップS5)。
【0038】
クリーンルームR−3の扉1−3が開いた場合の室圧変動を図6に示す。本実施の形態では、扉1−3が開いたときに、クリーンルームR−3から通路HWに向かって風速0.3m/sの風量を維持することができる。
従来は、クリーンルームR−3の扉1−3を開いたときに、通路HWの室圧が急激に変動し、通路HWの室圧制御及び通路HWを室圧の基準にする他のクリーンルームR−1,R−2,R−4〜R−8の室圧制御に影響を及ぼす。
【0039】
これに対して、本実施の形態では、扉1−3を開く前にクリーンルームR−3の室圧設定値を扉開時の値にして、室圧が予定の室圧設定値になってから扉1−3を開くことにより、通路HWとそれを基準にする他の部屋の室圧に対する影響を低減することができ、各ダンパの安定性を向上させることができる。これにより、本実施の形態では、扉を開閉しない他の部屋の室圧制御に外乱を与えることがなく、他の扉の開閉による制御のハンチングもなくなるので、他の扉の開閉があった場合でも安定した室圧制御を行うことが可能となる。
【0040】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、排気ダンパの開度を制御して室圧を変更しているが、排気ダンパの通過風量を制御する風量制御を行うことで、制御の安定性と追従性をより向上させることができる。図7は本発明の第2の実施の形態に係る室圧制御装置の構成を示すブロック図であり、図3と同一の構成には同一の符号を付してある。
【0041】
図7において、11−3はクリーンルームR−3の排気の風速センサ、11−9は通路HWの排気の風速センサである。
コントローラ10aは、対象室圧制御手段と基準室圧制御手段とを構成し、またコントローラ10aと扉駆動機構4−3とは、扉駆動手段を構成している。
【0042】
第1の実施の形態と同様に、給気が定風量制御の場合は、給気ダンパ7−3,7−9、風速センサ9−3,9−3及びコントローラ10の給気制御に関わる構成については、定風量制御装置CAVで置き換えることができる。
また、排気が変風量制御の場合は、排気ダンパ8−3,8−9、風速センサ11−3,11−9及びコントローラ10の排気制御に関わる構成については、変風量制御装置VAVで置き換えることができる。
【0043】
図8は本実施の形態の室圧制御装置の動作を示すフローチャート、図9は室圧制御装置の動作を示す特性図であり、図9(A)は扉1−3の開度を示す図、図9(B)は給気ダンパ、排気ダンパの風量を示す図、図9(C)はクリーンルームR−3の室圧を示す図である。図9(B)において、FSAR-3はクリーンルームR−3の給気ダンパ7−3の通過風量、FRAR-3はクリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の通過風量、FRAHWは通路HWの排気ダンパ8−9の通過風量である。
【0044】
コントローラ10aは、扉1−3を開く操作が開始されたことを示す扉開信号を扉センサ3−3から受信したとき(図8ステップS10においてYES)、クリーンルームR−3の室圧設定値を20[Pa]から扉開時の所定値10.13[Pa]に変更し、風速センサ11−3で検出される風速から排気ダンパ8−3の通過風量を求め、排気ダンパ8−3の通過風量を所定の風量変更速度で制御して、クリーンルームR−3の室圧を20[Pa]から10.13[Pa]に減圧する(ステップS11)。図9(A)〜図9(C)の例では、時刻t1において扉開信号を受信し、図9(B)のように排気ダンパ8−3の風量を制御することにより、図9(C)に示すようにクリーンルームR−3の室圧が低下する。
【0045】
コントローラ10aは、クリーンルームR−3の室圧が10.13[Pa]まで減圧された時点(図9(A)〜図9(C)の時刻t2)、あるいは排気ダンパ8−3の風量の波動が所定範囲内で、かつクリーンルームR−3の室圧が所定の10.13[Pa]に近付いた値10.5[Pa](ここでは通路HWの室圧制御の許容誤差が±0.5[Pa]と仮定)まで減圧された時点で、扉駆動機構4−3を制御し、扉1−3を開く(ステップS12)。
【0046】
コントローラ10aは、扉駆動機構4−3による扉1−3の開放動作によって扉1−3が全開するまでの間(図9(A)〜図9(C)の時刻t2からt3)、扉1−3の開度と反比例してクリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の風量を減らし、この減少量の絶対値と同量だけ通路HWの排気ダンパ8−9の風量を増やす(ステップS13,S14)。排気ダンパ8−9については、風速センサ11−9で検出される風速から排気ダンパ8−9の通過風量を求めることにより、風量制御を行うことができる。ステップS14のような風量制御を行う理由は、扉の通過風速を一定に維持するためである。
【0047】
次に、扉1−3を閉じるための操作ボタン等が操作され、扉駆動機構4−3が扉1−3を閉めたときの動作を説明する。
コントローラ10aは、扉1−3を閉じる操作が開始されたことを示す扉閉信号を扉センサ3−3から受信したとき(図8ステップS15においてYES)、扉1−3の開度と反比例してクリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の風量を増やし、この増加量の絶対値と同量だけ通路HWの排気ダンパ8−9の風量を減らす(ステップS16)。
扉センサ3−3は、扉1−3を閉じるための操作ボタン等が操作されたときに扉閉信号を出力してもよいし、扉1−3を閉じようとする力を検出して扉閉信号を出力してもよい。
【0048】
コントローラ10aは、扉1−3が閉まったことを示す扉閉完了信号を扉センサ3−3から受信したとき(ステップS17においてYES)、クリーンルームR−3の室圧設定値を10.13[Pa]から扉閉時の所定値20[Pa]に戻し、クリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の風量を所定の風量変更速度で制御し、クリーンルームR−3の室圧を10.13[Pa]から20[Pa]に増圧する(ステップS18)。
【0049】
以上のようにして、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態では、排気ダンパの風量制御を行うことで、第1の実施の形態に比べて制御の安定性と追従性をより向上させることができる。
【0050】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、クリーンルームR−1〜R−8の室圧が通路HWの室圧より高い場合について説明したが、対象となる部屋の室圧が通路HWの室圧より低い場合についても本発明を適用することができる。本実施の形態においても、室圧制御装置の構成は第2の実施の形態と同様であるので、図7の符号を用いて説明する。ただし、クリーンルームR−3という名称を使う代わりに、通路HWより室圧が低い部屋を対象室と呼ぶことにする。
【0051】
図10は本実施の形態の室圧制御装置の動作を示すフローチャート、図11は室圧制御装置の動作を示す特性図であり、図11(A)は扉1−3の開度を示す図、図11(B)は給気ダンパ、排気ダンパの風量を示す図、図11(C)は対象室の室圧を示す図である。図11(B)において、FSARは対象室の給気ダンパ7−3の通過風量、FRARは対象室の排気ダンパ8−3の通過風量、FRAHWは通路HWの排気ダンパ8−9の通過風量である。
【0052】
コントローラ10aは、扉開信号を扉センサ3−3から受信したとき(図10ステップS20においてYES)、対象室の室圧設定値を扉開時の所定値に変更し、対象室の排気ダンパ8−3の通過風量を所定の風量変更速度で制御して、対象室の室圧を扉開時の所定値に増圧する(ステップS21)。図11(A)〜図11(C)の例では、時刻t1において扉開信号を受信し、図11(B)のように排気ダンパ8−3の風量を制御することにより、図11(C)に示すように対象室の室圧が上昇する。
【0053】
コントローラ10aは、対象室の室圧が所定値まで増圧された時点(図11(A)〜図11(C)の時刻t2)で、扉駆動機構4−3を制御し、扉1−3を開く(ステップS22)。コントローラ10aは、扉1−3が全開するまでの間(図11(A)〜図11(C)の時刻t2からt3)、扉1−3の開度と比例して対象室の排気ダンパ8−3の風量を増やし、この増加量の絶対値と同量だけ通路HWの排気ダンパ8−9の風量を減らす(ステップS23,S24)。
【0054】
次に、コントローラ10aは、扉1−3を閉じる操作が開始されたことを示す扉閉信号を扉センサ3−3から受信したとき(ステップS25においてYES)、扉1−3の開度と比例して対象室の排気ダンパ8−3の風量を減らし、この減少量の絶対値と同量だけ通路HWの排気ダンパ8−9の風量を増やす(ステップS26)。
【0055】
コントローラ10aは、扉1−3が閉まったことを示す扉閉完了信号を扉センサ3−3から受信したとき(ステップS27においてYES)、対象室の室圧設定値を扉閉時の所定値に戻し、対象室の排気ダンパ8−3の風量を所定の風量変更速度で制御し、対象室の室圧を扉閉時の所定値に減圧する(ステップS28)。
【0056】
以上のようにして、本実施の形態では、扉1−3を開く前に対象室の室圧設定値を扉開時の値にして、室圧が予定の室圧設定値に増圧してから扉1−3を開くことにより、通路HWから対象室に向かって所定の風速の風量を維持することができ、通路HWとそれを基準にする他の部屋の室圧に対する影響を低減することができ、各ダンパの安定性を向上させることができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、対象室の室圧が通路HWの室圧より低い場合の室圧制御を第2の実施の形態に適用する場合について説明したが、第1の実施の形態に適用してもよい。対象室の室圧が通路HWの室圧より低い場合は、第1の実施の形態のステップS2において対象室の室圧を扉開時の所定値に増圧し、ステップS5において対象室の室圧を扉閉時の所定値に減圧すればよい。
【0058】
また、第1〜第3の実施の形態では、対象室の扉がコントローラによって開閉制御される電動扉の場合について説明しているが、これに限るものではない。扉が手動の場合であっても、例えば対象室の扉が急速に開くことが難しい引き戸などの場合で、扉が開く前に対象室の室圧を扉開時の所定値に減圧又は増圧できるのであれば、適用することができる。
【0059】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。第1〜第3の実施の形態では、対象室の扉を開く速度が対象室の排気ダンパの応答能力によって決まるため、扉を開く時間が遅くなるという問題がある。そこで、本実施の形態では、扉を開く時間を短縮する。本実施の形態においても、室圧制御装置の構成は第2の実施の形態と同様であるので、図7の符号を用いて説明する。
【0060】
図12は本実施の形態の室圧制御装置の動作を示すフローチャート、図13は室圧制御装置の動作を示す特性図であり、図13(A)は扉1−3の開度を示す図、図13(B)は給気ダンパ、排気ダンパの風量を示す図、図13(C)はクリーンルームR−3の室圧を示す図である。
【0061】
コントローラ10aは、扉開信号を扉センサ3−3から受信したとき(図12ステップS30においてYES)、クリーンルームR−3の室圧設定値を20[Pa]から扉開時の所定値10.13[Pa]に変更し、排気ダンパ8−3の通過風量を所定の風量変更速度で制御して、クリーンルームR−3の室圧を20[Pa]から10.13[Pa]に減圧する(ステップS31)。図13(A)〜図13(C)の例では、時刻t10において扉開信号を受信し、図13(B)のように排気ダンパ8−3の風量を制御することにより、図13(C)に示すようにクリーンルームR−3の室圧が低下し始める。
【0062】
コントローラ10aは、排気ダンパ8−3でクリーンルームR−3の室圧を変更すると同時に、図13(B)に示すように通路HWの排気ダンパ8−9の風量を増やし(ステップS32)、また扉駆動機構4−3を制御して、図13(A)の時刻t10からt11で示すように扉1−3を少し開き、その状態で扉1−3を一時停止させる(ステップS33)。
【0063】
次に、コントローラ10aは、クリーンルームR−3の室圧が扉開時の所定値10.13[Pa]に達した時点で(ステップS34においてYES)、扉駆動機構4−3を制御して、図13(A)の時刻t12に示すように扉1−3の開放を再開させる(ステップS35)。
【0064】
コントローラ10aは、扉駆動機構4−3による扉1−3の開放動作によって扉1−3が全開するまでの間(図13(A)〜図13(C)の時刻t12からt13)、扉1−3の開度と反比例してクリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の風量を減らし、この減少量の絶対値と同量だけ通路HWの排気ダンパ8−9の風量を増やす(ステップS36,S37)。
扉1−3を閉じる場合のステップS38〜S41の処理は、図8のステップS15〜S18と同じなので、説明は省略する。
【0065】
以上のようにして、本実施の形態では、扉1−3を開く時間を短縮するために、排気ダンパ8−3でクリーンルームR−3の室圧を変更すると同時に扉1−3を少し開き、通路HWの排気ダンパ8−9を利用して、通路HWの室圧を維持する。本実施の形態では、通路HWの排気ダンパ8−9の応答能力に応じて、扉1−3の開きを制御し、扉1−3を通す排気量を抑え、通路HWの静圧の安定性を維持しながら、扉1−3を開くことにより、第2の実施の形態と同様の効果を実現しつつ、扉1−3を開く時間を短縮することができる。本実施の形態によれば、クリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の応答能力が追いつかない場合でも、通路HWの排気ダンパ8−9を利用することで、通路HWの室圧を維持しつつ、クリーンルームR−3の室圧を短時間で扉開時の所定値に変更することができる。
【0066】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。第4の実施の形態では、クリーンルームR−1〜R−8の室圧が通路HWの室圧より高い場合について説明したが、対象室の室圧が通路HWの室圧より低い場合についても本発明を適用することができる。本実施の形態においても、室圧制御装置の構成は第2の実施の形態と同様であるので、図7の符号を用いて説明する。ただし、第3の実施の形態と同様に、通路HWより室圧が低い部屋を対象室と呼ぶことにする。
【0067】
図14は本実施の形態の室圧制御装置の動作を示すフローチャート、図15は室圧制御装置の動作を示す特性図であり、図15(A)は扉1−3の開度を示す図、図15(B)は給気ダンパ、排気ダンパの風量を示す図、図15(C)は対象室の室圧を示す図である。
【0068】
コントローラ10aは、扉開信号を扉センサ3−3から受信したとき(図14ステップS50においてYES)、対象室の室圧設定値を扉開時の所定値に変更し、対象室の排気ダンパ8−3の通過風量を所定の風量変更速度で制御して、対象室の室圧を扉開時の所定値に増圧する(ステップS51)。図15(A)〜図15(C)の例では、時刻t10において扉開信号を受信し、図15(B)のように排気ダンパ8−3の風量を制御することにより、図15(C)に示すように対象室の室圧が上昇し始める。
【0069】
コントローラ10aは、排気ダンパ8−3で対象室の室圧を変更すると同時に、図15(B)に示すように通路HWの排気ダンパ8−9の風量を減らし(ステップS52)、また扉駆動機構4−3を制御して、図15(A)の時刻t10からt11で示すように扉1−3を少し開き、その状態で扉1−3を一時停止させる(ステップS53)。
【0070】
次に、コントローラ10aは、対象室の室圧が扉開時の所定値に達した時点で(ステップS54においてYES)、扉駆動機構4−3を制御して、図15(A)の時刻t12に示すように扉1−3の開放を再開させる(ステップS55)。
【0071】
コントローラ10aは、扉駆動機構4−3による扉1−3の開放動作によって扉1−3が全開するまでの間(図15(A)〜図15(C)の時刻t12からt13)、扉1−3の開度と比例して対象室の排気ダンパ8−3の風量を増やし、この増加量の絶対値と同量だけ通路HWの排気ダンパ8−9の風量を減らす(ステップS56,S57)。
扉1−3を閉じる場合のステップS58〜S61の処理は、図10のステップS25〜S28と同じなので、説明は省略する。
【0072】
以上のようにして、本実施の形態では、第4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
なお、第1〜第5の実施の形態では、室圧調整用ダンパとして主として排気ダンパを用いて室圧を制御しているが、これに限るものではなく、室圧調整用ダンパとして給気ダンパを用いて室圧を制御してもよく、また排気ダンパと給気ダンパの両方を用いて室圧を制御してもよい。
【0073】
また、第1〜第5の実施の形態で説明したコントローラ10,10aは、CPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。これらのコンピュータのCPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第5の実施の形態で説明した処理を実行する。
【0074】
また、第1〜第5の実施の形態では、一つの扉を開閉する場合について説明したが、本発明は多数の扉が同時に開閉する場合に対応することもできる。この場合は、共通の基準である通路HWの排気ダンパ8−9の風量を、各扉の開閉に対する要求風量の和にすれば、各扉を同時に開閉することができる。ただし、通路HWの排気ダンパ8−9の風量は、このダンパの最大風量を超えることはできない。したがって、各扉の開閉に対する要求風量の和が通路HWの排気ダンパ8−9の最大風量を超える恐れがある場合には、扉の同時開閉数を制限する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、複数の部屋の室圧を制御する技術に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明において室圧制御の対象となる施設の1例を示す平面図である。
【図2】図1の施設においてクリーンルームの扉が開いた場合の室圧変動を示す平面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る室圧制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示す特性図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態においてクリーンルームの扉が開いた場合の室圧変動を示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る室圧制御装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示す特性図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示す特性図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示す特性図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第5の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示す特性図である。
【符号の説明】
【0077】
R−1〜R−8…クリーンルーム、MR…機械室、AR…前室、HW…通路、1−1〜1−11…扉、2−1〜2−9…差圧センサ、3−3…扉センサ、4−3…扉駆動機構、5−3,5−9…給気ダクト、6−3,6−9…排気ダクト、7−3,7−9…給気ダンパ、8−3,8−9…排気ダンパ、9−3,9−9,11−3,11−9…風速センサ、10,10a…コントローラ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばクリーンルーム施設や実験施設等において、室内清浄度の維持や汚染室内空気の漏出防止等を可能とするための室圧制御装置および室圧制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薬品の製造施設や半導体電子部品の製造施設において複数の部屋の室圧を制御するための室圧制御装置は、部屋の扉が開いたときに、扉両側の室圧を制御するコントローラの制御動作を一旦停止し、扉が閉まったときに、室圧を制御するコントローラの制御動作を再開するようにしていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2に開示された室圧制御装置では、部屋の扉が開いたときに、扉両側の室圧を制御するコントローラのPID制御の計測値入力を設定値あるいはその他の固定値に切り替えるなどの方法で偏差のない模擬信号を作り、コントローラの制御動作を継続しながら、室圧を制御するダンパの位置を保持する。そして、扉が閉まったときに、室圧を制御するコントローラのPID制御の入力を通常状態に戻すようにしていた。
【0004】
また、特許文献3に開示された室圧制御装置では、扉の開放動作の開始と同時に、扉両側の室圧を制御するダンパの位置を保持し、ダンパの保持後に扉が開くように設定し、扉の閉鎖動作時には、扉が閉まった後に、室圧を制御するダンパの制御動作を再開するようにしていた。
【0005】
また、特許文献4に開示された室圧制御装置では、部屋の扉が開いたときに、扉両側の各室の給気と排気のうち少なくとも一方を室圧制御から風量制御に切り替えて、扉開口部に一定風速の風量を通過させ、扉が閉まったときに、扉両側各室の給排気制御を室圧制御に戻すようにしていた。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−247542号公報
【特許文献2】特開2002−181361号公報
【特許文献3】特開2004−232976号公報
【特許文献4】特開2006−292280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来は、扉の開閉による室圧の均一化が各部屋の室圧制御の基準となる通路の室圧を急激に変化させるため、この通路の室圧の急激な変化が、他の部屋の室圧制御の外乱となり、各部屋の室圧制御がハンチング状態に陥ってしまうという問題点があった。また、室圧制御がハンチング状態になっているときに扉を開くと、例えばクリーンルームから通路への一定方向の空気流動を保障することができなくなり、クロスコンタミネーション(交差汚染)が生じる恐れがあった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、対象室の扉が開いたときに、通路等の基準室とそれを基準にする他の部屋の室圧に対する影響を最小限に抑えることができる室圧制御装置および室圧制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の室圧制御装置は、部屋毎に設けられた排気ダクト及び給気ダクトのうち少なくとも一方に設置された室圧調整用ダンパと、各部屋の扉毎に設置され、扉の開閉を検出する扉センサと、基準室圧に設定された基準室と対象室との間の扉を開く操作が開始されたことを示す扉開信号が、この扉に設置された扉センサから出力されたときに、前記対象室の室圧調整用ダンパを制御して、前記対象室の室圧を扉開時の所定値に減圧又は増圧する対象室圧制御手段とを備えるものである。
また、本発明の室圧制御装置の1構成例は、さらに、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達した後に、前記基準室と対象室との間の扉を駆動して開く扉駆動手段を備えるものである。
また、本発明の室圧制御装置の1構成例は、さらに、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達してから前記基準室と対象室との間の扉が全開するまでの間、この扉の開度に応じて前記基準室の室圧調整用ダンパの風量を増量又は減量させる基準室圧制御手段を備え、前記対象室圧制御手段は、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達してから前記基準室と対象室との間の扉が全開するまでの間、この扉の開度に応じて前記対象室の室圧調整用ダンパの風量を減量又は増量させるものである。
【0010】
また、本発明の室圧制御装置の1構成例は、さらに、前記対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、前記基準室と対象室との間の扉を一部開いて停止させ、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達した時点で、この扉の開放を再開する扉駆動手段と、前記対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、前記基準室の室圧調整用ダンパを制御して、前記基準室の基準室圧を維持する基準室圧制御手段とを備えるものである。
また、本発明の室圧制御装置の1構成例において、前記対象室圧制御手段は、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達してから前記基準室と対象室との間の扉が全開するまでの間、この扉の開度に応じて前記対象室の室圧調整用ダンパの風量を減量又は増量させ、前記基準室圧制御手段は、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達してから前記基準室と対象室との間の扉が全開するまでの間、この扉の開度に応じて前記基準室の室圧調整用ダンパの風量を増量又は減量させるものである。
【0011】
また、本発明の室圧制御装置の1構成例において、前記扉開時の所定値は、前記対象室と基準室との間に一定風速の通過風量を維持できる差圧が生じるように設定された前記対象室の室圧である。
また、本発明の室圧制御装置の1構成例において、前記対象室圧制御手段は、前記基準室と対象室との間の扉が閉まったことを示す扉閉完了信号が、この扉に設置された扉センサから出力されたときに、前記対象室の室圧調整用ダンパを制御して、前記対象室の室圧を扉閉時の所定値に戻すものである。
【0012】
また、本発明の室圧制御方法は、基準室圧に設定された基準室と対象室との間の扉を開く操作が開始されたことを示す扉開信号が、この扉に設置された扉センサから出力されたときに、前記対象室の室圧調整用ダンパを制御して、前記対象室の室圧を扉開時の所定値に減圧又は増圧する対象室圧制御ステップを備えるものである。
また、本発明の室圧制御方法の1構成例は、さらに、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達した後に、前記基準室と対象室との間の扉を駆動して開く扉開放ステップを備えるものである。
また、本発明の室圧制御方法の1構成例は、さらに、前記対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、前記基準室と対象室との間の扉を一部開いて停止させる第1の扉駆動ステップと、前記対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、前記基準室の室圧調整用ダンパを制御して、前記基準室の基準室圧を維持する基準室圧制御ステップと、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達した時点で、前記基準室と対象室との間の扉の開放を再開する第2の扉駆動ステップとを備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基準室と対象室との間の扉を開く操作が開始されたことを示す扉開信号が、この扉に設置された扉センサから出力されたときに、対象室の室圧調整用ダンパを制御して、対象室の室圧を扉開時の所定値に減圧又は増圧することにより、基準室とそれを基準にする他の部屋の室圧に対する影響を最小限に抑えることができ、各室圧調整用ダンパの安定性を向上させることができる。これにより、本発明では、扉を開閉しない他の部屋の室圧制御に外乱を与えることがなく、他の扉の開閉による制御のハンチングもなくなるので、他の扉の開閉があった場合でも安定した室圧制御を行うことが可能となる。
【0014】
また、本発明では、対象室の室圧が扉開時の所定値に達した後に、基準室と対象室との間の扉を駆動して開く扉駆動手段を設けることにより、基準室と他の部屋の室圧に対する影響をより確実に抑えることができる。
【0015】
また、本発明では、対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、基準室と対象室との間の扉を一部開いて停止させ、基準室の室圧調整用ダンパを制御して、基準室の基準室圧を維持し、対象室の室圧が扉開時の所定値に達した時点で、扉の開放を再開することにより、基準室とそれを基準にする他の部屋の室圧に対する影響をできるだけ抑えつつ、扉を開く時間を短縮することができる。本発明によれば、対象室の室圧調整用ダンパの応答能力が追いつかない場合でも、基準室の室圧調整用ダンパを利用することで、基準室の室圧を維持しつつ、対象室の室圧を短時間で扉開時の所定値に変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず、本発明の原理について説明する。図1に示したように、複数の部屋がある施設において、図示しない給気ダンパ又は排気ダンパの風量制御により各部屋の室内静圧(以下、室圧と略する)が一定に制御されているものとする。図1において、R−1〜R−8はクリーンルーム、MRは給気ファンや排気ファン等の機械が設置されている機械室、ARは機械室MRやクリーンルームR−1〜R−8に入るための前室、HWは通路、1−1〜1−8はクリーンルームR−1〜R−8の扉、1−9は前室ARから通路HWへ入るための扉、1−10は機械室MRの扉、1−11は施設外から前室ARへ入るための扉、2−1〜2−8はクリーンルームR−1〜R−8と通路HWとの差圧を測定する差圧センサ、2−9は前室ARと通路HWとの差圧を測定する差圧センサである。
【0017】
クリーンルームR−1〜R−8は、基準室である通路HWとの差圧が+10[Pa]になるように室圧が制御されている。図1の例では、通路HWの基準室圧が10[Pa]なので、クリーンルームR−1〜R−8の室圧は20[Pa]である。
【0018】
ここで、図2に示すようにクリーンルームR−3の扉1−3が開いた場合を考える。図2の例は、各部屋の差圧を変更しない従来の場合を示している。通路HWの体積VHWを576[m3]、設計室圧SPHWを10[Pa]、クリーンルームR−3の体積VR-3を192[m3]、設計室圧SPR-3を20[Pa]とすると、質量保存法則により、扉1−3の開放後の通路HWとクリーンルームR−3の空気密度ρは次式のようになる。
【0019】
【数1】
【0020】
式(1)において、ρHWは扉開放前の通路HWの空気密度、ρR-3は扉開放前のクリーンルームR−3の空気密度である。
そして、扉1−3の開放後の通路HWとクリーンルームR−3の室圧SPは、以下のようになる。
【0021】
【数2】
【0022】
式(2)より、通路HWとクリーンルームR−3の室圧SPは12.5[Pa]となるので、他のクリーンルームR−1,R−2,R−4〜R−8の室圧は22.5[Pa]となる。このように、扉1−3の開放が通路HWの室圧に影響を与え、通路HWの室圧変化が他のクリーンルームR−1,R−2,R−4〜R−8の室圧に影響を与えることになる。扉開放後の通路HWの室圧は自身の体積比と比例するため、通路HWの体積が大きければ大きいほど、通路HWの室圧変化は小さく、他のクリーンルームの室圧に対する影響は小さくなる。
【0023】
純粋の圧力制御が使われる場合、1つの部屋の室圧が変動すれば、排気ダクトや通路HWの室圧を通して、他の部屋の室圧に影響し、他の部屋の室圧制御に外乱を与える。したがって、各部屋の扉が順番に開くと、各部屋の室圧制御は頻繁に外乱を受けることになり、各部屋の室内が頻繁に変動するハンチング状態に陥ってしまう。特に、各部屋の室圧の基準となる通路HWの室圧変化は、各部屋の室圧を変化させる。このように、通路HWの室圧を変化させないことは、室圧制御にとって重要なポイントである。
【0024】
また、扉が閉まった状態と扉が開いた状態という異なる状態に対して、メインダクトの所要静圧は大きく変わる。定静圧でファン制御をすると、余圧はすべて給気ダンパや排気ダンパに掛けられ、室圧制御が不安定に導かれ、ファンの動力も無駄に使われる。
【0025】
以上のような点に鑑み、本発明では、対象室を減圧又は増圧してから扉を開くことにより、通路HWの静圧を安定させるようにした。対象室を減圧又は増圧してから扉を開くことは通路の静圧を安定させる重要なポイントである。
【0026】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図3は本発明の第1の実施の形態に係る室圧制御装置の構成を示すブロック図である。ここでは、室圧制御の直接の対象となるクリーンルームR−3(対象室)と通路HW(基準室)についての構成のみを記載している。
【0027】
図3において、1−3はクリーンルームR−3の扉、2−3はクリーンルームR−3と通路HWとの差圧を測定する差圧センサ、3−3は扉1−3の開閉及び扉1−3を開閉しようとする操作を検出する扉センサ、4−3は扉1−3の開閉を制御する扉駆動機構、5−3はクリーンルームR−3の給気ダクト、5−9は通路HWの給気ダクト、6−3はクリーンルームR−3の排気ダクト、6−9は通路HWの排気ダクト、7−3はクリーンルームR−3の給気ダンパ、7−9は通路HWの給気ダンパ、8−3はクリーンルームR−3の排気ダンパ、8−9は通路HWの排気ダンパ、9−3はクリーンルームR−3への給気の風速センサ、9−9は通路HWへの給気の風速センサ、10はコントローラである。
コントローラ10は、対象室圧制御手段と基準室圧制御手段とを構成し、またコントローラ10と扉駆動機構4−3とは、扉駆動手段を構成している。
【0028】
給気SAは、機械室MRの図示しない給気ファンから送り出され、給気ダンパ7−3,7−9を経由して給気ダクト5−3,5−9からクリーンルームR−3と通路HWに送り出される。また、クリーンルームR−3と通路HWの排気RAは、機械室MRの図示しない排気ファンによって、排気ダクト6−3,6−9から排気ダンパ8−3,8−9を経由して吸い出される。
【0029】
コントローラ10は、給気ダンパ7−9と排気ダンパ8−9の開度(通過風量)を制御することにより、通路HWの室圧を制御する。また、コントローラ10は、差圧センサ2−3の検出結果に応じて給気ダンパ7−3と排気ダンパ8−3の開度を制御することにより、通路HWとの差圧が一定値(例えば+10[Pa])になるようにクリーンルームR−3の室圧を制御する。
【0030】
なお、給気が定風量制御の場合は、給気ダンパ7−3,7−9、風速センサ9−3,9−3及びコントローラ10の給気制御に関わる構成については、定風量制御装置CAVで置き換えることができる。
【0031】
以上のような状態において、クリーンルームR−3の扉1−3が開く場合の室圧制御装置の動作について説明する。
扉1−3が開いたとき、その扉開口部における風速vは次式のようになる。
【0032】
【数3】
【0033】
式(3)において、αは流量係数(α=0.6〜0.7)、ρは空気密度[kg/m3]、ΔPは差圧[Pa]である。式(3)より、扉1−3が開かれるときに、扉開口部に一定風速v(例えば0.3[m/s])の通過風量を維持できる所要差圧ΔPは0.13[Pa]となる。つまり、扉1−3が開く場合には、クリーンルームR−3の室圧を10.13[Pa]にすればよいことになる。
【0034】
図4は本実施の形態の室圧制御装置の動作を示すフローチャート、図5は室圧制御装置の動作を示す特性図であり、図5(A)は扉1−3の開度を示す図、図5(B)は給気ダンパ、排気ダンパの開度を示す図、図5(C)はクリーンルームR−3の室圧を示す図である。図5(B)において、OSAR-3はクリーンルームR−3の給気ダンパ7−3の開度、ORAR-3はクリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の開度、ORAHWは通路HWの排気ダンパ8−9の開度である。
【0035】
コントローラ10は、扉1−3を開く操作が開始されたことを示す扉開信号を扉センサ3−3から受信したとき(図4ステップS1においてYES)、クリーンルームR−3の室圧設定値を20[Pa]から扉開時の所定値10.13[Pa]に変更し、クリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の開度を所定の開度変更速度で制御し、クリーンルームR−3の室圧を20[Pa]から10.13[Pa]に減圧する(ステップS2)。図5(A)〜図5(C)の例では、時刻t1において扉開信号を受信し、図5(B)のように排気ダンパ8−3を制御することにより、図5(C)に示すようにクリーンルームR−3の室圧が低下する。
【0036】
扉センサ3−3は、扉1−3を開くための操作ボタン等が操作されたときに扉開信号を出力してもよいし、扉1−3を開こうとする力を検出して扉開信号を出力してもよい。
次に、コントローラ10は、クリーンルームR−3の室圧が10.13[Pa]まで減圧された時点(図5(A)〜図5(C)の時刻t2)、あるいは排気ダンパ8−3の開度の波動が所定範囲内で、かつクリーンルームR−3の室圧が所定の10.13[Pa]に近付いた値10.5[Pa](ここでは通路HWの室圧制御の許容誤差が±0.5[Pa]と仮定)まで減圧された時点で、扉駆動機構4−3を制御し、扉1−3を開く(ステップS3)。
【0037】
次に、扉1−3を閉じるための操作ボタン等が操作され、扉駆動機構4−3が扉1−3を閉めたときの動作を説明する。
コントローラ10は、扉1−3が閉まったことを示す扉閉完了信号を扉センサ3−3から受信したとき(ステップS4においてYES)、クリーンルームR−3の室圧設定値を10.13[Pa]から扉閉時の所定値20[Pa]に戻し、クリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の開度を所定の開度変更速度で制御し、クリーンルームR−3の室圧を10.13[Pa]から20[Pa]に増圧する(ステップS5)。
【0038】
クリーンルームR−3の扉1−3が開いた場合の室圧変動を図6に示す。本実施の形態では、扉1−3が開いたときに、クリーンルームR−3から通路HWに向かって風速0.3m/sの風量を維持することができる。
従来は、クリーンルームR−3の扉1−3を開いたときに、通路HWの室圧が急激に変動し、通路HWの室圧制御及び通路HWを室圧の基準にする他のクリーンルームR−1,R−2,R−4〜R−8の室圧制御に影響を及ぼす。
【0039】
これに対して、本実施の形態では、扉1−3を開く前にクリーンルームR−3の室圧設定値を扉開時の値にして、室圧が予定の室圧設定値になってから扉1−3を開くことにより、通路HWとそれを基準にする他の部屋の室圧に対する影響を低減することができ、各ダンパの安定性を向上させることができる。これにより、本実施の形態では、扉を開閉しない他の部屋の室圧制御に外乱を与えることがなく、他の扉の開閉による制御のハンチングもなくなるので、他の扉の開閉があった場合でも安定した室圧制御を行うことが可能となる。
【0040】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、排気ダンパの開度を制御して室圧を変更しているが、排気ダンパの通過風量を制御する風量制御を行うことで、制御の安定性と追従性をより向上させることができる。図7は本発明の第2の実施の形態に係る室圧制御装置の構成を示すブロック図であり、図3と同一の構成には同一の符号を付してある。
【0041】
図7において、11−3はクリーンルームR−3の排気の風速センサ、11−9は通路HWの排気の風速センサである。
コントローラ10aは、対象室圧制御手段と基準室圧制御手段とを構成し、またコントローラ10aと扉駆動機構4−3とは、扉駆動手段を構成している。
【0042】
第1の実施の形態と同様に、給気が定風量制御の場合は、給気ダンパ7−3,7−9、風速センサ9−3,9−3及びコントローラ10の給気制御に関わる構成については、定風量制御装置CAVで置き換えることができる。
また、排気が変風量制御の場合は、排気ダンパ8−3,8−9、風速センサ11−3,11−9及びコントローラ10の排気制御に関わる構成については、変風量制御装置VAVで置き換えることができる。
【0043】
図8は本実施の形態の室圧制御装置の動作を示すフローチャート、図9は室圧制御装置の動作を示す特性図であり、図9(A)は扉1−3の開度を示す図、図9(B)は給気ダンパ、排気ダンパの風量を示す図、図9(C)はクリーンルームR−3の室圧を示す図である。図9(B)において、FSAR-3はクリーンルームR−3の給気ダンパ7−3の通過風量、FRAR-3はクリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の通過風量、FRAHWは通路HWの排気ダンパ8−9の通過風量である。
【0044】
コントローラ10aは、扉1−3を開く操作が開始されたことを示す扉開信号を扉センサ3−3から受信したとき(図8ステップS10においてYES)、クリーンルームR−3の室圧設定値を20[Pa]から扉開時の所定値10.13[Pa]に変更し、風速センサ11−3で検出される風速から排気ダンパ8−3の通過風量を求め、排気ダンパ8−3の通過風量を所定の風量変更速度で制御して、クリーンルームR−3の室圧を20[Pa]から10.13[Pa]に減圧する(ステップS11)。図9(A)〜図9(C)の例では、時刻t1において扉開信号を受信し、図9(B)のように排気ダンパ8−3の風量を制御することにより、図9(C)に示すようにクリーンルームR−3の室圧が低下する。
【0045】
コントローラ10aは、クリーンルームR−3の室圧が10.13[Pa]まで減圧された時点(図9(A)〜図9(C)の時刻t2)、あるいは排気ダンパ8−3の風量の波動が所定範囲内で、かつクリーンルームR−3の室圧が所定の10.13[Pa]に近付いた値10.5[Pa](ここでは通路HWの室圧制御の許容誤差が±0.5[Pa]と仮定)まで減圧された時点で、扉駆動機構4−3を制御し、扉1−3を開く(ステップS12)。
【0046】
コントローラ10aは、扉駆動機構4−3による扉1−3の開放動作によって扉1−3が全開するまでの間(図9(A)〜図9(C)の時刻t2からt3)、扉1−3の開度と反比例してクリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の風量を減らし、この減少量の絶対値と同量だけ通路HWの排気ダンパ8−9の風量を増やす(ステップS13,S14)。排気ダンパ8−9については、風速センサ11−9で検出される風速から排気ダンパ8−9の通過風量を求めることにより、風量制御を行うことができる。ステップS14のような風量制御を行う理由は、扉の通過風速を一定に維持するためである。
【0047】
次に、扉1−3を閉じるための操作ボタン等が操作され、扉駆動機構4−3が扉1−3を閉めたときの動作を説明する。
コントローラ10aは、扉1−3を閉じる操作が開始されたことを示す扉閉信号を扉センサ3−3から受信したとき(図8ステップS15においてYES)、扉1−3の開度と反比例してクリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の風量を増やし、この増加量の絶対値と同量だけ通路HWの排気ダンパ8−9の風量を減らす(ステップS16)。
扉センサ3−3は、扉1−3を閉じるための操作ボタン等が操作されたときに扉閉信号を出力してもよいし、扉1−3を閉じようとする力を検出して扉閉信号を出力してもよい。
【0048】
コントローラ10aは、扉1−3が閉まったことを示す扉閉完了信号を扉センサ3−3から受信したとき(ステップS17においてYES)、クリーンルームR−3の室圧設定値を10.13[Pa]から扉閉時の所定値20[Pa]に戻し、クリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の風量を所定の風量変更速度で制御し、クリーンルームR−3の室圧を10.13[Pa]から20[Pa]に増圧する(ステップS18)。
【0049】
以上のようにして、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態では、排気ダンパの風量制御を行うことで、第1の実施の形態に比べて制御の安定性と追従性をより向上させることができる。
【0050】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、クリーンルームR−1〜R−8の室圧が通路HWの室圧より高い場合について説明したが、対象となる部屋の室圧が通路HWの室圧より低い場合についても本発明を適用することができる。本実施の形態においても、室圧制御装置の構成は第2の実施の形態と同様であるので、図7の符号を用いて説明する。ただし、クリーンルームR−3という名称を使う代わりに、通路HWより室圧が低い部屋を対象室と呼ぶことにする。
【0051】
図10は本実施の形態の室圧制御装置の動作を示すフローチャート、図11は室圧制御装置の動作を示す特性図であり、図11(A)は扉1−3の開度を示す図、図11(B)は給気ダンパ、排気ダンパの風量を示す図、図11(C)は対象室の室圧を示す図である。図11(B)において、FSARは対象室の給気ダンパ7−3の通過風量、FRARは対象室の排気ダンパ8−3の通過風量、FRAHWは通路HWの排気ダンパ8−9の通過風量である。
【0052】
コントローラ10aは、扉開信号を扉センサ3−3から受信したとき(図10ステップS20においてYES)、対象室の室圧設定値を扉開時の所定値に変更し、対象室の排気ダンパ8−3の通過風量を所定の風量変更速度で制御して、対象室の室圧を扉開時の所定値に増圧する(ステップS21)。図11(A)〜図11(C)の例では、時刻t1において扉開信号を受信し、図11(B)のように排気ダンパ8−3の風量を制御することにより、図11(C)に示すように対象室の室圧が上昇する。
【0053】
コントローラ10aは、対象室の室圧が所定値まで増圧された時点(図11(A)〜図11(C)の時刻t2)で、扉駆動機構4−3を制御し、扉1−3を開く(ステップS22)。コントローラ10aは、扉1−3が全開するまでの間(図11(A)〜図11(C)の時刻t2からt3)、扉1−3の開度と比例して対象室の排気ダンパ8−3の風量を増やし、この増加量の絶対値と同量だけ通路HWの排気ダンパ8−9の風量を減らす(ステップS23,S24)。
【0054】
次に、コントローラ10aは、扉1−3を閉じる操作が開始されたことを示す扉閉信号を扉センサ3−3から受信したとき(ステップS25においてYES)、扉1−3の開度と比例して対象室の排気ダンパ8−3の風量を減らし、この減少量の絶対値と同量だけ通路HWの排気ダンパ8−9の風量を増やす(ステップS26)。
【0055】
コントローラ10aは、扉1−3が閉まったことを示す扉閉完了信号を扉センサ3−3から受信したとき(ステップS27においてYES)、対象室の室圧設定値を扉閉時の所定値に戻し、対象室の排気ダンパ8−3の風量を所定の風量変更速度で制御し、対象室の室圧を扉閉時の所定値に減圧する(ステップS28)。
【0056】
以上のようにして、本実施の形態では、扉1−3を開く前に対象室の室圧設定値を扉開時の値にして、室圧が予定の室圧設定値に増圧してから扉1−3を開くことにより、通路HWから対象室に向かって所定の風速の風量を維持することができ、通路HWとそれを基準にする他の部屋の室圧に対する影響を低減することができ、各ダンパの安定性を向上させることができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、対象室の室圧が通路HWの室圧より低い場合の室圧制御を第2の実施の形態に適用する場合について説明したが、第1の実施の形態に適用してもよい。対象室の室圧が通路HWの室圧より低い場合は、第1の実施の形態のステップS2において対象室の室圧を扉開時の所定値に増圧し、ステップS5において対象室の室圧を扉閉時の所定値に減圧すればよい。
【0058】
また、第1〜第3の実施の形態では、対象室の扉がコントローラによって開閉制御される電動扉の場合について説明しているが、これに限るものではない。扉が手動の場合であっても、例えば対象室の扉が急速に開くことが難しい引き戸などの場合で、扉が開く前に対象室の室圧を扉開時の所定値に減圧又は増圧できるのであれば、適用することができる。
【0059】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。第1〜第3の実施の形態では、対象室の扉を開く速度が対象室の排気ダンパの応答能力によって決まるため、扉を開く時間が遅くなるという問題がある。そこで、本実施の形態では、扉を開く時間を短縮する。本実施の形態においても、室圧制御装置の構成は第2の実施の形態と同様であるので、図7の符号を用いて説明する。
【0060】
図12は本実施の形態の室圧制御装置の動作を示すフローチャート、図13は室圧制御装置の動作を示す特性図であり、図13(A)は扉1−3の開度を示す図、図13(B)は給気ダンパ、排気ダンパの風量を示す図、図13(C)はクリーンルームR−3の室圧を示す図である。
【0061】
コントローラ10aは、扉開信号を扉センサ3−3から受信したとき(図12ステップS30においてYES)、クリーンルームR−3の室圧設定値を20[Pa]から扉開時の所定値10.13[Pa]に変更し、排気ダンパ8−3の通過風量を所定の風量変更速度で制御して、クリーンルームR−3の室圧を20[Pa]から10.13[Pa]に減圧する(ステップS31)。図13(A)〜図13(C)の例では、時刻t10において扉開信号を受信し、図13(B)のように排気ダンパ8−3の風量を制御することにより、図13(C)に示すようにクリーンルームR−3の室圧が低下し始める。
【0062】
コントローラ10aは、排気ダンパ8−3でクリーンルームR−3の室圧を変更すると同時に、図13(B)に示すように通路HWの排気ダンパ8−9の風量を増やし(ステップS32)、また扉駆動機構4−3を制御して、図13(A)の時刻t10からt11で示すように扉1−3を少し開き、その状態で扉1−3を一時停止させる(ステップS33)。
【0063】
次に、コントローラ10aは、クリーンルームR−3の室圧が扉開時の所定値10.13[Pa]に達した時点で(ステップS34においてYES)、扉駆動機構4−3を制御して、図13(A)の時刻t12に示すように扉1−3の開放を再開させる(ステップS35)。
【0064】
コントローラ10aは、扉駆動機構4−3による扉1−3の開放動作によって扉1−3が全開するまでの間(図13(A)〜図13(C)の時刻t12からt13)、扉1−3の開度と反比例してクリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の風量を減らし、この減少量の絶対値と同量だけ通路HWの排気ダンパ8−9の風量を増やす(ステップS36,S37)。
扉1−3を閉じる場合のステップS38〜S41の処理は、図8のステップS15〜S18と同じなので、説明は省略する。
【0065】
以上のようにして、本実施の形態では、扉1−3を開く時間を短縮するために、排気ダンパ8−3でクリーンルームR−3の室圧を変更すると同時に扉1−3を少し開き、通路HWの排気ダンパ8−9を利用して、通路HWの室圧を維持する。本実施の形態では、通路HWの排気ダンパ8−9の応答能力に応じて、扉1−3の開きを制御し、扉1−3を通す排気量を抑え、通路HWの静圧の安定性を維持しながら、扉1−3を開くことにより、第2の実施の形態と同様の効果を実現しつつ、扉1−3を開く時間を短縮することができる。本実施の形態によれば、クリーンルームR−3の排気ダンパ8−3の応答能力が追いつかない場合でも、通路HWの排気ダンパ8−9を利用することで、通路HWの室圧を維持しつつ、クリーンルームR−3の室圧を短時間で扉開時の所定値に変更することができる。
【0066】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。第4の実施の形態では、クリーンルームR−1〜R−8の室圧が通路HWの室圧より高い場合について説明したが、対象室の室圧が通路HWの室圧より低い場合についても本発明を適用することができる。本実施の形態においても、室圧制御装置の構成は第2の実施の形態と同様であるので、図7の符号を用いて説明する。ただし、第3の実施の形態と同様に、通路HWより室圧が低い部屋を対象室と呼ぶことにする。
【0067】
図14は本実施の形態の室圧制御装置の動作を示すフローチャート、図15は室圧制御装置の動作を示す特性図であり、図15(A)は扉1−3の開度を示す図、図15(B)は給気ダンパ、排気ダンパの風量を示す図、図15(C)は対象室の室圧を示す図である。
【0068】
コントローラ10aは、扉開信号を扉センサ3−3から受信したとき(図14ステップS50においてYES)、対象室の室圧設定値を扉開時の所定値に変更し、対象室の排気ダンパ8−3の通過風量を所定の風量変更速度で制御して、対象室の室圧を扉開時の所定値に増圧する(ステップS51)。図15(A)〜図15(C)の例では、時刻t10において扉開信号を受信し、図15(B)のように排気ダンパ8−3の風量を制御することにより、図15(C)に示すように対象室の室圧が上昇し始める。
【0069】
コントローラ10aは、排気ダンパ8−3で対象室の室圧を変更すると同時に、図15(B)に示すように通路HWの排気ダンパ8−9の風量を減らし(ステップS52)、また扉駆動機構4−3を制御して、図15(A)の時刻t10からt11で示すように扉1−3を少し開き、その状態で扉1−3を一時停止させる(ステップS53)。
【0070】
次に、コントローラ10aは、対象室の室圧が扉開時の所定値に達した時点で(ステップS54においてYES)、扉駆動機構4−3を制御して、図15(A)の時刻t12に示すように扉1−3の開放を再開させる(ステップS55)。
【0071】
コントローラ10aは、扉駆動機構4−3による扉1−3の開放動作によって扉1−3が全開するまでの間(図15(A)〜図15(C)の時刻t12からt13)、扉1−3の開度と比例して対象室の排気ダンパ8−3の風量を増やし、この増加量の絶対値と同量だけ通路HWの排気ダンパ8−9の風量を減らす(ステップS56,S57)。
扉1−3を閉じる場合のステップS58〜S61の処理は、図10のステップS25〜S28と同じなので、説明は省略する。
【0072】
以上のようにして、本実施の形態では、第4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
なお、第1〜第5の実施の形態では、室圧調整用ダンパとして主として排気ダンパを用いて室圧を制御しているが、これに限るものではなく、室圧調整用ダンパとして給気ダンパを用いて室圧を制御してもよく、また排気ダンパと給気ダンパの両方を用いて室圧を制御してもよい。
【0073】
また、第1〜第5の実施の形態で説明したコントローラ10,10aは、CPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。これらのコンピュータのCPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第5の実施の形態で説明した処理を実行する。
【0074】
また、第1〜第5の実施の形態では、一つの扉を開閉する場合について説明したが、本発明は多数の扉が同時に開閉する場合に対応することもできる。この場合は、共通の基準である通路HWの排気ダンパ8−9の風量を、各扉の開閉に対する要求風量の和にすれば、各扉を同時に開閉することができる。ただし、通路HWの排気ダンパ8−9の風量は、このダンパの最大風量を超えることはできない。したがって、各扉の開閉に対する要求風量の和が通路HWの排気ダンパ8−9の最大風量を超える恐れがある場合には、扉の同時開閉数を制限する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、複数の部屋の室圧を制御する技術に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明において室圧制御の対象となる施設の1例を示す平面図である。
【図2】図1の施設においてクリーンルームの扉が開いた場合の室圧変動を示す平面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る室圧制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示す特性図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態においてクリーンルームの扉が開いた場合の室圧変動を示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る室圧制御装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示す特性図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示す特性図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示す特性図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第5の実施の形態に係る室圧制御装置の動作を示す特性図である。
【符号の説明】
【0077】
R−1〜R−8…クリーンルーム、MR…機械室、AR…前室、HW…通路、1−1〜1−11…扉、2−1〜2−9…差圧センサ、3−3…扉センサ、4−3…扉駆動機構、5−3,5−9…給気ダクト、6−3,6−9…排気ダクト、7−3,7−9…給気ダンパ、8−3,8−9…排気ダンパ、9−3,9−9,11−3,11−9…風速センサ、10,10a…コントローラ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部屋の室圧を制御する室圧制御装置において、
部屋毎に設けられた排気ダクト及び給気ダクトのうち少なくとも一方に設置された室圧調整用ダンパと、
各部屋の扉毎に設置され、扉の開閉を検出する扉センサと、
基準室圧に設定された基準室と対象室との間の扉を開く操作が開始されたことを示す扉開信号が、この扉に設置された扉センサから出力されたときに、前記対象室の室圧調整用ダンパを制御して、前記対象室の室圧を扉開時の所定値に減圧又は増圧する対象室圧制御手段とを備えることを特徴とする室圧制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の室圧制御装置において、
さらに、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達した後に、前記基準室と対象室との間の扉を駆動して開く扉駆動手段を備えることを特徴とする室圧制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の室圧制御装置において、
さらに、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達してから前記基準室と対象室との間の扉が全開するまでの間、この扉の開度に応じて前記基準室の室圧調整用ダンパの風量を増量又は減量させる基準室圧制御手段を備え、
前記対象室圧制御手段は、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達してから前記基準室と対象室との間の扉が全開するまでの間、この扉の開度に応じて前記対象室の室圧調整用ダンパの風量を減量又は増量させることを特徴とする室圧制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の室圧制御装置において、
さらに、前記対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、前記基準室と対象室との間の扉を一部開いて停止させ、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達した時点で、この扉の開放を再開する扉駆動手段と、
前記対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、前記基準室の室圧調整用ダンパを制御して、前記基準室の基準室圧を維持する基準室圧制御手段とを備えることを特徴とする室圧制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の室圧制御装置において、
前記対象室圧制御手段は、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達してから前記基準室と対象室との間の扉が全開するまでの間、この扉の開度に応じて前記対象室の室圧調整用ダンパの風量を減量又は増量させ、
前記基準室圧制御手段は、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達してから前記基準室と対象室との間の扉が全開するまでの間、この扉の開度に応じて前記基準室の室圧調整用ダンパの風量を増量又は減量させることを特徴とする室圧制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の室圧制御装置において、
前記扉開時の所定値は、前記対象室と基準室との間に一定風速の通過風量を維持できる差圧が生じるように設定された前記対象室の室圧であることを特徴とする室圧制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の室圧制御装置において、
前記対象室圧制御手段は、前記基準室と対象室との間の扉が閉まったことを示す扉閉完了信号が、この扉に設置された扉センサから出力されたときに、前記対象室の室圧調整用ダンパを制御して、前記対象室の室圧を扉閉時の所定値に戻すことを特徴とする室圧制御装置。
【請求項8】
複数の部屋の室圧を制御する室圧制御方法において、
基準室圧に設定された基準室と対象室との間の扉を開く操作が開始されたことを示す扉開信号が、この扉に設置された扉センサから出力されたときに、前記対象室の室圧調整用ダンパを制御して、前記対象室の室圧を扉開時の所定値に減圧又は増圧する対象室圧制御ステップを備えることを特徴とする室圧制御方法。
【請求項9】
請求項8記載の室圧制御方法において、
さらに、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達した後に、前記基準室と対象室との間の扉を駆動して開く扉開放ステップを備えることを特徴とする室圧制御方法。
【請求項10】
請求項8記載の室圧制御方法において、
さらに、前記対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、前記基準室と対象室との間の扉を一部開いて停止させる第1の扉駆動ステップと、
前記対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、前記基準室の室圧調整用ダンパを制御して、前記基準室の基準室圧を維持する基準室圧制御ステップと、
前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達した時点で、前記基準室と対象室との間の扉の開放を再開する第2の扉駆動ステップとを備えることを特徴とする室圧制御方法。
【請求項1】
複数の部屋の室圧を制御する室圧制御装置において、
部屋毎に設けられた排気ダクト及び給気ダクトのうち少なくとも一方に設置された室圧調整用ダンパと、
各部屋の扉毎に設置され、扉の開閉を検出する扉センサと、
基準室圧に設定された基準室と対象室との間の扉を開く操作が開始されたことを示す扉開信号が、この扉に設置された扉センサから出力されたときに、前記対象室の室圧調整用ダンパを制御して、前記対象室の室圧を扉開時の所定値に減圧又は増圧する対象室圧制御手段とを備えることを特徴とする室圧制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の室圧制御装置において、
さらに、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達した後に、前記基準室と対象室との間の扉を駆動して開く扉駆動手段を備えることを特徴とする室圧制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の室圧制御装置において、
さらに、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達してから前記基準室と対象室との間の扉が全開するまでの間、この扉の開度に応じて前記基準室の室圧調整用ダンパの風量を増量又は減量させる基準室圧制御手段を備え、
前記対象室圧制御手段は、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達してから前記基準室と対象室との間の扉が全開するまでの間、この扉の開度に応じて前記対象室の室圧調整用ダンパの風量を減量又は増量させることを特徴とする室圧制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の室圧制御装置において、
さらに、前記対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、前記基準室と対象室との間の扉を一部開いて停止させ、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達した時点で、この扉の開放を再開する扉駆動手段と、
前記対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、前記基準室の室圧調整用ダンパを制御して、前記基準室の基準室圧を維持する基準室圧制御手段とを備えることを特徴とする室圧制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の室圧制御装置において、
前記対象室圧制御手段は、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達してから前記基準室と対象室との間の扉が全開するまでの間、この扉の開度に応じて前記対象室の室圧調整用ダンパの風量を減量又は増量させ、
前記基準室圧制御手段は、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達してから前記基準室と対象室との間の扉が全開するまでの間、この扉の開度に応じて前記基準室の室圧調整用ダンパの風量を増量又は減量させることを特徴とする室圧制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の室圧制御装置において、
前記扉開時の所定値は、前記対象室と基準室との間に一定風速の通過風量を維持できる差圧が生じるように設定された前記対象室の室圧であることを特徴とする室圧制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の室圧制御装置において、
前記対象室圧制御手段は、前記基準室と対象室との間の扉が閉まったことを示す扉閉完了信号が、この扉に設置された扉センサから出力されたときに、前記対象室の室圧調整用ダンパを制御して、前記対象室の室圧を扉閉時の所定値に戻すことを特徴とする室圧制御装置。
【請求項8】
複数の部屋の室圧を制御する室圧制御方法において、
基準室圧に設定された基準室と対象室との間の扉を開く操作が開始されたことを示す扉開信号が、この扉に設置された扉センサから出力されたときに、前記対象室の室圧調整用ダンパを制御して、前記対象室の室圧を扉開時の所定値に減圧又は増圧する対象室圧制御ステップを備えることを特徴とする室圧制御方法。
【請求項9】
請求項8記載の室圧制御方法において、
さらに、前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達した後に、前記基準室と対象室との間の扉を駆動して開く扉開放ステップを備えることを特徴とする室圧制御方法。
【請求項10】
請求項8記載の室圧制御方法において、
さらに、前記対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、前記基準室と対象室との間の扉を一部開いて停止させる第1の扉駆動ステップと、
前記対象室の減圧又は増圧を開始すると同時に、前記基準室の室圧調整用ダンパを制御して、前記基準室の基準室圧を維持する基準室圧制御ステップと、
前記対象室の室圧が前記扉開時の所定値に達した時点で、前記基準室と対象室との間の扉の開放を再開する第2の扉駆動ステップとを備えることを特徴とする室圧制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−68796(P2009−68796A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239083(P2007−239083)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
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