説明

密封された空洞を備えたMEMSデバイスおよび装置

【課題】MEMSコンポーネントを収納する密封空洞を備えたMEMSデバイスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】MEMSデバイス1は、MEMSコンポーネント6を収納した密封空洞5を備え、空洞5は、ある厚さtを有する絶縁体層スタック3の中に形成され、これにより空洞5および絶縁体層6のスタック3は、基板2と、厚さtを有する封止絶縁体層4との間に挟まれており、MEMSコンポーネント6は、絶縁体層スタック3の厚さtおよび封止絶縁体の厚さtに渡って延びた少なくとも1つの溝8によって取り囲まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、密封空洞を備え、MEMSデバイスとしても知られているマイクロ電気機械システムに関する。特に、本開示は、半導体・オン・インシュレータ(SOI)基板上に形成されたMEMSデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ電気機械システム(MEMS)は、微細加工技術によって共通の基板上に電子回路を備えた、カンチレバー、センサ、アクチュエータなどのマイクロ機械コンポーネントの集積体を参照する。電子回路コンポーネントは、集積回路(IC)製造技術を用いて製造され、一方、マイクロ機械コンポーネントは、電子回路コンポーネントと適合した「マイクロ加工」技術を用いて製造される。このマイクロ加工技術は、基板の一部を選択的にエッチング除去したり、新しい構造層を追加してマイクロ機械コンポーネントを形成する。
【0003】
マイクロ機械コンポーネントは、多くの用途で良好に管理された環境を有する必要がある空洞内に収納される。従って、この空洞は、MEMSデバイスが動作する環境から密封されるべきである。空洞の封止は、理想的には、基板がダイスカットされて個々のMEMSデバイスを生産する前に行われる。典型的には、薄膜キャッピングを用いて、MEMSコンポーネントを収納する空洞の上に横たわって封止する隔膜(membrane)を形成する。
【0004】
シリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板のシリコン層を、MEMSコンポーネントをマイクロ加工するための構造層として使用した場合、空洞の密封は問題になることがある。空洞の側壁は、シリコン層をキャリア基板から分離する二酸化シリコン層に少なくとも部分的に形成されるため、これらの側壁は、空洞と、例えば、製造時または動作時にMEMSデバイスが設置される環境との間の漏れ経路を構成するようになる。
【0005】
二酸化シリコンは、水素拡散について0.3eVという低い活性化エネルギーで示されるように、低い気密性を有することが知られている。この気密性は、MEMSデバイスの後の処理時にさらに劣化することがある。さらに、二酸化シリコンは、室温であっても水分および酸素を吸収することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、特にこの空洞が二酸化シリコン層に少なくとも部分的に形成された場合、密封された空洞を形成するニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本開示は、MEMSコンポーネントを収納する密封空洞を備えたMEMSデバイスを製造する方法に関する。該方法は、
主面上に、第1絶縁体(dielectric)層の上に構造層スタックを有する基板を用意するステップと、
構造層をパターン化して、MEMSコンポーネントを形成するステップと、
MEMSコンポーネントの上に横たわる第2絶縁体層を形成するステップと、
第2絶縁体層の上に横たわる封止絶縁体層を形成するステップと、
絶縁体層スタックの中に、基板まで延びてMEMSコンポーネントを取り囲む溝を形成するステップと、
封止層の上に横たわる隔膜(membrane)層を堆積し、これにより溝を充填するステップと、
隔膜層をパターン化して、これによりMEMSコンポーネントの場所に隔膜を形成し、充填された溝を覆う電極を形成するステップと、を含む。
【0008】
構造層は、例えば、シリコン−ゲルマニウムまたはシリコンなどの半導体材料からなる単一層またはスタック層とすることができる。代替として、構造層は、例えば、チタンまたはニッケルなどの導電材料からなる単一層またはスタック層とすることができる。
【0009】
該方法は、封止絶縁体層に対して選択的な第1および第2絶縁体を除去するステップを含んでもよく、これにより隔膜の下方に、MEMSコンポーネントを収納する空洞を作成してもよい。特定の実施形態において、MEMSコンポーネントの場所に、隔膜および封止絶縁体層を通る開口が形成され、その開口を通じて第1および第2絶縁体を除去される。第1および第2絶縁体の除去後、これらの開口は封止される。
【0010】
封止絶縁体は、第1および第2絶縁体がシリコン酸化物である場合、好ましくはシリコン炭化物またはアルミナ酸化物のグループから選択される。
【0011】
基板は、半導体・オン・インシュレータ(SOI)基板とすることができ、この場合、その半導体層は、MEMSコンポーネントをマイクロ加工するために用いられる構造層であり、半導体層を基板から分離する絶縁層は、第1絶縁体層である。シリコン・オン・インシュレータ基板がシリコン層、シリコン酸化物層およびシリコンキャリア基板のスタックである場合、シリコン層は、構造層として用いられ、シリコン酸化物層は、第1絶縁体層として用いられる。
【0012】
好ましくは、隔膜層は、シリコン−ゲルマニウムSiGe1−x(0<x<1)に形成される。
【0013】
他の態様において、本開示は、MEMSコンポーネントを収納した密封空洞を備えたMEMSデバイスに関する。空洞は、ある厚さを有する絶縁体層スタックの中に形成され、これにより空洞および絶縁体層は、基板と封止絶縁体層との間に挟まれて、MEMSコンポーネントは、絶縁体層スタックの厚さに渡って延びた溝によって取り囲まれる。
【0014】
封止絶縁体は、絶縁体層スタックがシリコン酸化物を含むか、またはシリコン酸化物からなる場合、好ましくは、シリコン炭化物またはアルミナ酸化物のグループから選択される。
【0015】
MEMSデバイスは、空洞の場所に封止層を覆う隔膜と、溝を被覆し充填する電極とをさらに備える。好ましくは、隔膜および電極は同じ材料の中に形成される。この材料は、シリコン−ゲルマニウムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本開示に係る、部分的に処理したMEMSデバイスの概略断面図を示す。
【図2】図1に示すMEMSデバイスの概略平面図を示す。
【図3】本開示に係るMEMSデバイスの概略断面図を示す。
【図4】本開示に係るMEMSデバイスの概略断面図を示す。
【図5】図4に示すMEMSデバイスの概略平面図を示す。
【図6】本開示に係るMEMSデバイスの概略断面図を示す。
【図7】本開示に係るMEMSデバイスを製造するための処理ステップを概略断面図で示す。
【図8】本開示に係るMEMSデバイスを製造するための処理ステップを概略断面図で示す。
【図9】本開示に係るMEMSデバイスを製造するための処理ステップを概略断面図で示す。
【図10】本開示に係るMEMSデバイスを製造するための処理ステップを概略断面図で示す。
【図11】本開示に係るMEMSデバイスを製造するための処理ステップを概略断面図で示す。
【図12】本開示に係るMEMSデバイスを製造するための処理ステップを概略断面図で示す。
【図13】本開示に係るMEMSデバイスを製造するための処理ステップを概略断面図で示す。
【図14】本開示に係るMEMSデバイスを製造するための処理ステップを概略断面図で示す。
【図15】本開示に係るMEMSデバイスを製造するための処理ステップを概略断面図で示す。
【図16】本開示に係るMEMSデバイスを製造するための処理ステップを概略断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を特定の実施形態に関して一定の図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されず、請求項のみによって限定される。説明する図面は、概略的に過ぎない。図面において、幾つかの要素のサイズは、説明目的のために誇張したり、縮尺どおり描写していないことがある。寸法および相対寸法は、本発明の実際の具体化に必ずしも対応していない。
【0018】
さらに、説明および請求項での用語「第1」「第2」「第3」などは、類似の要素を区別するための使用しており、必ずしも連続した順または時間順を記述するためではない。こうした用語は、適切な状況下で交換可能であり、本発明の実施形態は、ここで説明したり図示したものとは別の順番で動作可能である。
【0019】
さらに、説明および請求項での用語「上(top)」、「下(bottom)」、「の上に(over)」、「の下に(under)」等は、説明目的で使用しており、必ずしも相対的な位置を記述するためのものでない。こうして用いた用語は、適切な状況下で交換可能であって、ここで説明した実施形態がここで説明または図示した以外の他の向きで動作可能である。
【0020】
請求項で使用される用語「備える、含む(comprising)」は、それ以降に列挙された手段に限定されるものと解釈すべきでなく、他の要素またはステップを除外していない。それは、記載した特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を参照したように特定しているものと解釈する必要があるが、1つ又はそれ以上の他の特徴、整数、ステップまたは構成要素、あるいはそのグループの存在または追加を排除していない。そして「手段A,Bを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素A,Bだけからなるデバイスに限定すべきでない。本開示および請求項に関して、少なくとも構成要素A,Bはデバイスの一部であることを意味する。
【0021】
一態様において、本開示は、MEMSコンポーネント6を収納する空洞5を備えたMEMSデバイス1に関するものであり、空洞5は、厚さtを有する絶縁体層スタック3の中に形成され、これにより空洞5および絶縁体層スタック3は、基板2と、厚さtを有する封止絶縁体層4との間に挟まれており、MEMSコンポーネント6は、絶縁体層スタック3の厚さtおよび封止絶縁体の厚さtに渡って延びた、少なくとも1つの溝8によって取り囲まれる。
【0022】
こうしたデバイスは、図1〜図3に図示している。空洞5は、絶縁体層スタック3の中に作成される。MEMSコンポーネント6、例えば、カンチレバーは、この絶縁体層スタック3から空洞5の中に延びている。隔膜7が、空洞5の上に横たわって封止しており、空洞5は、隔膜7にある開口17を介してアクセス可能である。少なくとも1つの電極9が、絶縁体層スタック3を通る溝8を介してキャリア基板2と接触している。電極9は、分離溝13によって隔膜7から分離されている。
【0023】
特にMEMSデバイスの動作時に、空洞5内の環境を保存し、環境から絶縁体層スタック3を通じて空洞5の中に至る漏れを防止するために、MEMSコンポーネント6および空洞5を収納する絶縁体スタック3の一部は、絶縁体スタック3よりも、少なくとも水素に対してより良好な封止を提供する材料によって縁取られる。
【0024】
基板2に対して垂直な方向zにおいて、この封止が、片側ではキャリア基板2によって、反対側では封止絶縁体層4および隔膜7によって提供される。封止絶縁体4は絶縁体スタック3の上にあるとともに、隔膜7は封止絶縁体4の上にある。図2に示すように、隔膜7での開口17は、封止絶縁体4まで延びており、隔膜封止部14によって閉じられている。封止絶縁体4は、絶縁体スタック3を覆うため、この片側で均一な封止を提供している。開口8,17をこの封止絶縁体4の中に作成した場合、これらの開口は、例えば、電極9および隔膜封止部14によってさらに封止される。
【0025】
基板2に対して平行な方向xにおいて、この封止が、少なくとも絶縁体スタック3の厚さtに渡って延びる少なくとも1つの溝8によって提供される。この溝8は、MEMSコンポーネント6を取り囲み、絶縁体スタック3の材料とは異なる材料で充填される。
【0026】
図2は、図1のMEMSデバイス1の概略平面図を示す。封止絶縁体4の上に、隔膜7および電極9が見える。隔膜7は、空洞5に通ずる開口17を収納する。本開示の他の態様で説明したように、これらの開口17は、MEMSコンポーネント6の場所において絶縁体スタック3の選択的除去を行って空洞5の作成を可能にし、これによりMEMSコンポーネント6を開放する。
【0027】
隔膜7のレイアウトは、形成されるMEMSデバイス1に依存することがあり、図2に示す特定の設計に限定されない。同様に、開口17の数、分布およびレイアウトは、MEMSデバイス1に依存することがあり、図2に示す特定の設計に限定されない。
【0028】
隔膜7を取り囲み、分離溝13によって離隔するように、電極9は、閉じたリングのように構成され、存在している。電極9のレイアウト、およびこの電極9で充填された溝8のレイアウトは、形成されるMEMSデバイス1に依存することがあり、図2に示す特定の設計に限定されない。この電極9は、基板2にバイアス印加するために、例えば、基板にグランド接続を提供するために使用できる。
【0029】
図3は、MEMSデバイス1の概略断面図を示す。図1と図2に示すMEMSデバイスに加えて、MEMSコンポーネント6に対する電極10も存在できる。この電極10は、MEMSコンポーネント6に電圧を供給するために使用できる。金属コンタクト15がMEMSコンポーネント電極10および基板電極9の上に形成され、電極材料とのより良好な電気的コンタクトを得ている。隔膜7での開口17が隔膜封止部14によって閉じられている。
【0030】
封止絶縁体4は、絶縁体スタック3がシリコン酸化物を含むか、またはシリコン酸化物からなる場合、好ましくは、シリコン炭化物またはアルミナ酸化物のグループから選択される。後者は、半導体・オン・インシュレータ基板をMEMSコンポーネント6をマイクロ加工するために使用した場合であろう。半導体・オン・インシュレータ基板は、絶縁体層によってより厚い半導体基板から隔離された薄い半導体層を備える。典型的には、この半導体基板はシリコン基板であり、この絶縁体層はシリコン酸化物層である。MEMSコンポーネントは、構造層16として用いられる薄い半導体層の中にマイクロ加工される。絶縁層は、絶縁体スタック3の一部となり、それをシリコン酸化物で形成した場合、漏れ経路を構成することがある。
【0031】
シリコン酸化物の0.3eVという活性化エネルギーと比較して、シリコン炭化物、例えば、SiC、やアルミナ酸化物、例えば、Alなどの材料は、水素の拡散に関してそれぞれ3eVや1eVという比較的高い活性化エネルギーを有する。この活性化エネルギーは、シリコン酸化物を緻密にすることによって増加できるが、これは、MEMSマイクロ加工とは不適合である500℃超の温度を必要とするであろう。
【0032】
隔膜7および電極9は、好ましくは、同じ材料の中に形成され、好ましくは、同じ材料層の中に形成される。この隔膜および電極材料は、シリコン−ゲルマニウムSiGe1−x(0<x<1)とすることができる。
【0033】
隔膜7および電極9を同じ層中に形成した場合、これらは、封止絶縁体4から同じ高さhに突出するようになる。隔膜7および電極9の上側表面は、同一平面上(coplanar)にある。
【0034】
図1〜図3において、1つの封止溝8だけを示している。電極材料で充填された1つより多くの封止溝8が、MEMSコンポーネント6を取り囲んだ場合、封止効果はより改善できる。好ましくは、これらの封止溝8は、空洞5と同心(concentric)である。これらの封止溝8は、単一の電極9と重なってもよく、あるいは各溝8は別々の電極9と重なってもよい。
【0035】
図1〜図3に示すMEMSデバイスでは、溝8を充填する電極9は、基板2との電気的コンタクトおよび密閉空洞5の横方向での改善した封止を同時に提供している。図4〜図6に示すMEMSデバイスでは、電気的基板コンタクトおよび横方向の空洞封止は、開口21および溝8の中にそれぞれ形成される。図3に示すMEMSデバイスに加えて、図4のMEMSデバイス1は、基板電極9と、充填された封止溝20とを含む。図5の平面図は、充填された封止溝20が、破線で示すMEMSコンポーネント6を取り囲んでいることを示す。開口21および溝8を作成することによって、電気的コンタクトや封止特性などの必要な機能性に応じて、溝8、開口21及び/又は充填材料9,20のレイアウトを個別に最適化できる。封止溝20は、図4に示すように、封止絶縁体4の上面に達するまで充填でき、あるいは封止絶縁体4の上方に延長できる。
【0036】
図4と図5に示すMEMSデバイスでは、MEMSコンポーネント6を取り囲む溝8は、基板電極9及び/又は隔膜7を形成するために使用した材料以外の材料で充填した。処理の容易さのため、基板電極溝8〜9、封止溝8〜20、MEMSコンポーネント溝19を充填するため、そして、図6に示すように隔膜7を形成するために、同じ材料を使用することを選択してもよい。
【0037】
他の態様において、本開示は、MEMSコンポーネント6を収納する空洞5を備えたMEMSデバイス1を製造する方法に関するものであり、空洞5は、厚さtを有する絶縁体層スタック3の中に形成され、これにより空洞5および絶縁体層スタック3は、基板2と、厚さtを有する封止絶縁体層4との間に挟まれており、MEMSコンポーネント6は、絶縁体層スタック3の厚さtおよび封止絶縁体の厚さtに渡って延びた、少なくとも1つの溝8によって取り囲まれる。
【0038】
該方法は、主面上に構造層スタック3を有する基板2を設けることを含み、これによりMEMSコンポーネント6は、絶縁体スタック3の中に埋め込まれる。該方法は、絶縁体スタックの上に横たわる封止絶縁体4を形成することと、MEMSコンポーネント6を取り囲み、基板2まで延びている少なくとも1つの溝8を形成することと、絶縁体スタック3とは異なる材料で溝8を充填することととをさらに含む。
【0039】
図7〜図14は、こうしたMEMSデバイス1を製造する方法を示す。基板2の上に、第1絶縁体層11が形成される。第1絶縁体層11の上に、構造層16が形成される。こうした層状基板は、図7に示している。層状基板は、絶縁体層によってより厚い半導体層から隔離された薄い半導体層からなる半導体・オン・インシュレータ基板とすることができる。典型的には、この半導体基板は、シリコン基板であり、これによりこの絶縁体層はシリコン酸化物層である。そして、MEMSコンポーネントは、構造層16として用いられる薄い半導体層の中にマイクロ加工される。絶縁層は、第1絶縁体層11を構成し、絶縁体スタック3の一部になり、そして、シリコン酸化物で形成した場合、それは漏れ経路を構成することがある。
【0040】
構造層16は、パターン化され、MEMSコンポーネント6を形成する。MEMSコンポーネント6のレイアウトは、形成すべきMEMSデバイス1に依存することなるが、図7〜図14に示した特定の設計に限定されない。このMEMSコンポーネントの上に横たわって、第2絶縁体層12が形成される。この第2絶縁体層12は、シリコン酸化物を含み、またはシリコン酸化物から成る。第1絶縁体層11および第2絶縁体層12は、厚さtを有する絶縁体スタック3を形成する。
【0041】
この絶縁体スタック3の上に、tを有する封止絶縁体4は形成される。この封止絶縁体4は、この絶縁体スタック3の上面の均一な封止を提供する。図8に示すように、絶縁体スタック3は、MEMSコンポーネント6が埋め込まれ、基板2と封止絶縁体4との間に挟まれており、これにより基板2に垂直な方向zにおいて絶縁体スタック3の封止を提供する。
【0042】
封止絶縁体4は、絶縁体スタック3がシリコン酸化物を含み、またはシリコン酸化物から成る場合、好ましくはシリコン炭化物またはアルミナ酸化物のグループから選択される。
【0043】
シリコン酸化物と比べて、シリコン炭化物、例えば、SiC、やアルミナ酸化物、例えば、Alなどの材料は、水素の拡散に関してそれぞれ3eVや1eVという比較的高い活性化エネルギーを有する。
【0044】
基板2の一部を露出するように、開口8が封止絶縁体4および絶縁体スタック3の中に形成される。必要であれば、図9に示すように、MEMSコンポーネント6の一部を露出するように、開口19が封止絶縁体4および絶縁体スタック3の中に形成できる。図10に示す平面図は、開口8は、MEMSコンポーネント6(破線で示す)を取り囲む閉じたリングとして構成された溝であり、一方、開口19は、MEMSコンポーネント6へのアクセスを提供する孔であることを明確に示している。
【0045】
溝8を作成した後、この溝は充填され、隔膜7は、空洞5が形成される場所に封止絶縁体4の上に形成される。
【0046】
隔膜7および溝充填は、好ましくは同じ材料、好ましくは同じ材料層で形成される。この隔膜7および溝充填の材料は、シリコン−ゲルマニウムSiGe1−x(0<x<1)とすることができる。
【0047】
図11は、隔膜7および溝充填が同じ材料層18で形成される場合を示す。封止絶縁体4の上方に高さhを有するこの層18を堆積した場合、全ての開口8,19は充填される。
【0048】
図10に示すように、層18を堆積した後、この層18はパターン化され、隔膜7、封止溝8を充填し、その上に位置する電極9、および開口19を充填し、その上に位置する電極10を作成する。隔膜7および電極9,10は、封止絶縁体4を露出する分離溝13によって互いに分離している。これらの分離溝13を介して空洞5に向かう漏れは発生しなくなる。図12に示すように、その底部では、分離溝13と整列し、そのエリアを超えて延びるように封止絶縁体4が存在するためである。
【0049】
隔膜7での開口17は、封止絶縁体4を通って延びており、これにより図12に示すように、絶縁体スタック3を露出している。これらの開口を通じて、絶縁体スタック3は、局所的に除去され、これにより、図13に示すように、空洞5を作成し、MEMSコンポーネント6を開放する。封止絶縁体4は、隔膜7の外側エリアでも封止機能性を提供しているため、空洞は、隔膜7のエリアを超えて延びることができ、これにより隔膜7のレイアウトおよび位置についてより多くの自由度を提供する。
【0050】
絶縁体スタック7は、その封止機能性に影響しないように、封止絶縁体4に対して選択的に除去する必要がある。封止絶縁体4がシリコン炭化物またはアルミナ酸化物のグループから選択され、絶縁体層スタック3がシリコン酸化物を含み、またはシリコン酸化物から成る場合、封止絶縁体4での開口17は、ドライエッチングによって作成でき、絶縁体スタック3で停止するとともに、この絶縁体スタック3の選択的除去が、湿式または気相のHFベースのエッチャントを用いて行うことができる。
【0051】
MEMSコンポーネント6を開放した後、空洞5の封止は、図14に示すように、隔膜7の開放孔17を覆う封止部14を形成する封止プロセスによって終了する。
【0052】
図7〜図14に示す処理シーケンスは、図4〜図5または図6に示すMEMSデバイス1を製造する場合、少し変更する必要がある。
【0053】
図6に係るMEMSデバイスを製造をする場合、図9に示すようなパターニングステップは、少し変更される。パターニングステップは、堆積の際、隔膜−電極層18を受け入れるための絶縁体開口21を形成することも含む。
【0054】
図4〜図5に係るMEMSデバイス1を製造をする場合、少なくとも1つの追加のパターニングステップおよび堆積ステップが処理フローに含まれる。封止絶縁体4を堆積した後、パターニングステップを行って封止溝8を作成する。封止溝8は、所望の封止特性を提供し、MEMSプロセスに適合した材料20で充填される。充填された溝20は、封止絶縁体4とともに平面的(planar)である。
【0055】
図15は、封止溝8を作成し充填した後のMEMSデバイスを示す。そして、処理フローは、図16に示すように、基板電極9を受け入れるための絶縁体開口21および、MEMSコンポーネント電極10を受け入れるためのコンタクト開口19をパターン化することによって続行できる。隔膜−電極層18は堆積され、図11で行ったように、これにより開口19,21を充填する。
【0056】
こうして密封空洞5が製造され、絶縁体スタック3中のシリコン酸化物の存在に起因した可能性のある漏れ経路を排除している。さらに、この封止は、基板2との電気接続9を提供することができる。
【0057】
また、密封したMEMSデバイス1の処理は、例えば、電極9,10との電気接続15を形成することや、個々のパッケージ化されたMEMSデバイスのダイスカットなど、既知の製造テクニックを用いて行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
1 MEMSデバイス
2 キャリア基板
3 空洞5が作成された絶縁体スタック
4 封止絶縁体
5 MEMSコンポーネント6を含む空洞
6 MEMSコンポーネント
7 空洞5の上に横たわる隔膜
8 封止絶縁体4および絶縁体スタック3を通って、キャリア基板2の一部を露出する溝
9 キャリア基板2に対する電極
10 MEMSコンポーネント6に対する電極
11 絶縁体スタック3の第1層
12 絶縁体スタック3の第2層
13 隔膜−電極層18での分離溝
14 封止隔膜
15 電極8,10に対する金属コンタクト
16 MEMSコンポーネント6を形成するための構造層
17 隔膜7での開放開口
18 隔膜−電極層
19 封止絶縁体4および絶縁体スタック3を通って、MEMSコンポーネント6の一部を露出する開口
20 封止溝
21 封止絶縁体4および絶縁体スタック3を通って、キャリア基板2の一部を露出する開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMSコンポーネント(6)を収納する密封空洞(5)を備えたMEMSデバイス(1)を製造する方法であって、
・主面上に、第1絶縁体層(11)の上に構造層(16)スタックを有する基板を用意するステップと、
・構造層(16)をパターン化して、MEMSコンポーネント(6)を形成するステップと、
・MEMSコンポーネント(6)の上に横たわる第2絶縁体層(12)を形成するステップと、
・第2絶縁体層(12)の上に横たわる封止絶縁体層(4)を形成するステップと、
・絶縁体層(4,11,12)スタック(3)の中に、MEMSコンポーネント(6)を取り囲み、基板(2)まで延びる溝(8)を形成するステップと、
・封止層(4)の上に横たわる隔膜層(18)を堆積し、これにより溝(8)を充填するステップと、
・隔膜層(18)をパターン化して、これにより空洞(5)の場所に隔膜(7)を形成し、充填された溝を覆う電極(9)を形成するステップと、を含む方法。
【請求項2】
封止絶縁体層(4)に対して選択的な第1および第2絶縁体(11,12)を除去し、これによりMEMSコンポーネント(6)を収納する空洞(5)を形成するステップをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
MEMSコンポーネントの場所に、隔膜(7)および封止絶縁体層(4)を通る開口(17)を形成し、この開口を通じて第1および第2絶縁体(11,12)を除去するステップをさらに含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
第1および第2絶縁体(11,12)の選択的除去の後、隔膜(7)での開口(17)を封止(14)するステップをさらに含む請求項3記載の方法。
【請求項5】
封止絶縁体層(4)は、シリコン炭化物またはアルミナ酸化物のグループから選択され、第1および第2絶縁体(11,12)は、シリコン酸化物である請求項1記載の方法。
【請求項6】
隔膜層(18)は、シリコン−ゲルマニウム層である請求項1記載の方法。
【請求項7】
基板(2)は、半導体・オン・インシュレータ(SOI)基板であり、その半導体層は構造層(16)である請求項1記載の方法。
【請求項8】
MEMSコンポーネント(6)を収納した密封空洞(5)を備えたMEMSデバイス(1)であって、
空洞(5)は、ある厚さを有する絶縁体層スタック(3)の中に形成され、これにより空洞(5)および絶縁体層(6)は、基板(2)と封止絶縁体層(4)との間に挟まれており、
MEMSコンポーネント(6)は、絶縁体層スタック(3)の厚さ(t)に渡って延びた溝(8)によって取り囲まれているMEMSデバイス(1)。
【請求項9】
封止絶縁体層(4)は、シリコン炭化物またはアルミナ酸化物のグループから選択され、絶縁体層スタック(3)は、シリコン酸化物を含む請求項8記載のMEMSデバイス(1)。
【請求項10】
空洞(5)の場所に封止層(4)を覆う隔膜(7)と、溝(8)を被覆し充填する電極(9)とをさらに備える請求項8または9記載のMEMSデバイス(1)。
【請求項11】
隔膜(7)および電極(8)は、同じ材料(18)の中に形成される請求項10記載のMEMSデバイス(1)。
【請求項12】
この同じ材料(18)は、シリコン−ゲルマニウムである請求項11記載のMEMSデバイス(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−20396(P2012−20396A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−154463(P2011−154463)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【Fターム(参考)】