説明

密閉型容器及び半導体製造装置

【課題】本発明は、密閉型容器内部の雰囲気に起因する反応物の生成を抑制することを目的とする。
【解決手段】半導体製造装置1は、被処理物であるウエーハ10、ウエーハ10を収納する密閉型容器のFOUP20、半導体処理装置であるエッチング装置30及びFOUP20とエッチング装置30との間を密閉状態でウエーハ10の搬送を行うEFEM40を有する。FOUP20は、前面扉20a、内側に温度と湿度とガス濃度との少なくとも一つを検知するセンサ部21及びこのセンサ部が検知した情報を送信する送信装置25を有する。受信装置31は、送信装置25からの情報を受信し、その情報をパージ部43に供給する。パージ部43は、FOUP20内の温度などが予め定められた基準値を満足するまでパージを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハなどの半導体基板を収納し搬送に用いられる密閉型容器及びそれを含む半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体処理装置などの処理過程においては、次のような問題がある。ウエーハなどの被処理物に、例えばハロゲン原子を含む生成物や吸着物などが残留し、これが真空処理室外の大気中の水分等に触れて反応し、微小なパーティクルやディフェクトが発生する。
【0003】
微細化が著しい半導体においては、これら微小な異物が、半導体デバイスの歩留まりに大きく影響する。これら微小な異物を無くすためには、例えば、処理後にハロゲン原子を含む生成物や吸着物を半導体基板から除去する。しかし、このためには、被処理物の加熱機構や水洗機構などの設備が必要である。
【0004】
例えば、特許文献1においては、処理後のウエーハ上に堆積したハロゲン系ケイ素や、ウエーハ上に物理吸着しているCl、HBrなどをハロゲン化アンモニウムに転化する技術が開示されている。このハロゲン化アンモニウムは水溶性物質であるため、ウエット洗浄工程で容易に除去できる。
【0005】
特許文献2においては、処理室へウエーハを搬送する際に通過する真空予備室に、絶えず不活性ガスを流入し続ける技術が開示されている。この技術では、真空予備室から処理室へウエーハを搬送する際の帯電や、処理室から真空予備室へ搬送する際のウエーハ上の自然酸化膜成長を防ぐことができる。
【0006】
一方、ウエーハ搬送用のカセット内に設けたセンサによって、カセット内のスロット上に載置されたウエーハの有無を検出する技術として、特許文献3の技術が知られている。この技術においては、センサからの情報を記憶部に記憶し、記憶されたスロット情報を、カセットの外部の設備機器へ送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−12940号公報
【特許文献2】特開平5−36618号公報
【特許文献3】特開2009−158600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の発明は、ウエット洗浄工程を設けてウエーハ上のハロゲン化アンモニウムを除去している。特許文献2に記載の発明は、予備室での不活性ガスによる自然酸化膜成長の防止をしている。しかし、これらの技術では、処理後のウエーハが収納容器に収納された場合に、その容器の内部の温度、湿度、ガス濃度などが制御されていない。そのため、容器内部の雰囲気に起因するパーティクルやディフェクトが発生するという問題は解決されていない。
【0009】
一方、特許文献3に記載の発明は、カセット内にセンサを設置して、無線で情報を送信しているが、この情報はウエーハの有無を示すスロット情報であり、温度などの環境情報は考慮されていない。
【0010】
本発明は、密閉型容器内部の雰囲気に起因する反応物の生成を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の密閉型容器及び半導体製造装置は、次のような特徴を有する。
(1)半導体基板を収容し搬送に用いられる密閉型容器と、前記半導体基板を処理する処理装置と、前記密閉型容器と前記処理装置とを密閉状態で接続して、前記半導体基板を前記密閉型容器から前記処理装置に搬送する搬送装置とを備えた半導体製造装置であって、前記密閉型容器は、容器本体の内側に設けられ当該容器内の温度と湿度とガス濃度との少なくとも一つを検知するセンサ部と、このセンサ部で検知された情報を出力する送信装置と、を備え、前記搬送装置は、前記密閉型容器の内部の雰囲気を調整するパージ部を有し、このパージ部が、前記送信装置からの情報に基づいて、前記密閉型容器の内部の温度、湿度、ガス濃度の少なくとも一つが予め定められた基準値を満足するまでガスパージをすることを特徴とする半導体製造装置である。
(2)半導体基板を収容し搬送に用いられる密閉型容器であって、この容器本体の内側に設けられ当該容器内の温度と湿度とガス濃度との少なくとも一つを検知するセンサ部と、このセンサ部で検知された情報を出力する送信装置と、前記容器本体に設けられ、前記センサ部からの情報に基づいて温度と湿度とガス濃度との少なくとも一つの中から選択されたパージガスが注入されるガス注入部と、を備えることを特徴とする密閉型容器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、密閉型容器内部の雰囲気に起因する反応物の生成を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態の半導体製造装置の構成を示す側面図である。
【図2】実施形態の半導体製造装置の構成を示す機能ブロック図である
【図3】実施形態のパージ出力部を示す平面図である。
【図4】実施形態の半導体製造装置の作用を示すフローチャートである。
【図5】他の実施形態における密閉型容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態の構成]
図1に示す実施形態の半導体製造装置1は、基本的には、次の構成を有する。
(1)被処理物である一つまたは複数のウエーハ10を収納する密閉型容器の一例であるFOUP(Front Opening Unified Pod)20
(2)ウエーハ10を加工する処理装置の一例であるエッチング装置30
(3)FOUP20とエッチング装置30との間で、密閉状態でウエーハ10を搬送する搬送装置の一例であるEFEM(Equipment Front End Module)40
図2を用いて、半導体製造装置1の構成について説明する。FOUP20は、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)規格に準拠している300ミリウエーハ用の搬送容器であり、ウエーハ10をある工程から別の工程に向かって密閉を維持して搬送する。FOUP20は、前面扉20aと、センサ部21と、外部出力部としての送信装置25とを有している。
【0015】
センサ部21は、FOUP本体20b(容器本体)の内側に、熱電対やIC温度センサや放射温度計などの温度センサ22と、IC湿度センサなどの湿度センサ23と、ガス濃度センサ24とを有している。センサ部21の各センサで検知されたそれぞれの情報(例えば、センサの計測値、計測値に基づいた異常の有無などの情報)は、送信装置25に供給される。
【0016】
センサ部21は、FOUP本体(容器本体)内において、FOUP本体を平面視したときに、このFOUP本体内に収納されたウエーハの存在領域と重なる位置で、かつウエーハの保持方向(図1において上下方向)において上方に設けることができる。そうすれば、特にガス濃度を検知するときに、処理後のウエーハ10の表面より発生する毒ガス濃度を検知することが容易となる。毒ガスは空気よりも軽く、発生した後は、ウエーハの表面より上方に移動するためである。
【0017】
また、センサ部21は温度、湿度、ガス濃度を検知する3つのセンサをすべて有していなくても、少なくともいずれか1つのセンサを有し、温度、湿度、ガス濃度いずれか1つを検知するようにしてもよい。
【0018】
送信装置25は、一例として、制御部26と入力部27と記憶部28と送信部29とを有している。制御部26は、送信装置25の各部を制御する。入力部27には、センサ部21からの各情報が入力される。記憶部28は、入力部27に入力された情報を記憶する。送信部29は、記憶部28に記憶されている情報、つまりセンサ部21からの情報をエッチング装置30に送信する。
【0019】
エッチング装置30は、例えば、ドライエッチング装置である。このドライエッチング装置は、反応性ガスによる低温プラズマ中の活性化原子と試料の化学反応により揮発性化合物を作りウエーハ10を加工する。このエッチング装置30は、前記FOUP20の送信装置25からの情報を受信する受信装置31を備えている。
【0020】
受信装置31は、一例として、制御部32と受信部33と記憶部34と出力部35とを有している。制御部32は、受信装置31の各部を制御する。受信部33は、送信部29から送信された情報(各センサの計測値)を受信する。記憶部34は、受信部33で受信された情報を記憶し、後述する基準値との比較を行い、その結果も記憶する。出力部35は、記憶部34に記憶されている情報をEFEM40に出力する。なお、送信装置25と受信装置31の通信は有線でも無線通信でもよいが、特に無線通信であると、ユニット間の配線による接続を無くすことによって、配線の煩わしさや、配線間違い防止、配線材コストの削減を図ることができる。無線通信の例として無線LAN方式、高速PHS方式、CDMA方式、W−CDMA方式、赤外線方式などを用いることができる。
【0021】
EFEM40は、FOUP20とエッチング装置30とに密閉状態で接続され、ウエーハ10を外気にさらすことなく取り扱う装置である。EFEM40は、FOUP20の開閉用のロードポート41と、FOUP20とエッチング装置30との間のウエーハ10の搬送を行う搬送ロボット42と、EFEM40のパージ部43と、パージガスの排気部48とを有する。
【0022】
より具体的には、ロードポート41は、FOUP20を載置してウエーハ10をEFEM40内に移動するためのインタフェースである。搬送ロボット42は、FOUP20に収納されているウエーハ10をエッチング装置に搬送するためのクリーンロボットである。
【0023】
パージ部43は、ガス切替部44とガス出力部47とを有する。ガス切替部44は、パージ部43からの温度パージ用ガス、湿度パージ用ガス、濃度パージ用ガスの各出力を、例えば、各配管のバルブで切り替える。なお、パージ部43は、受信装置31の出力部35からの出力に従ってガス切替部44とガス出力部47の制御を行う図示しない制御部も有している。
【0024】
温度パージ用ガスは、FOUP20内を最適な温度にするためにFOUP20内に導入する、冷却または温めるためのガスである。湿度パージ用ガスは、FOUP20内を最適な湿度にするためにFOUP20内に導入する、乾燥または湿ったガスである。なお、ウエーハ10上の生成物と水分の反応物を抑制するために、湿度を外部雰囲気よりも低い状態にすることが望ましい。濃度パージ用ガスは、FOUP20内にAr、NなどをパージしてFOUP20内の毒ガスなどの濃度を希釈化する。
【0025】
図3に示すように、ガス出力部47は、前面扉20aが開いている状態のFOUP20内に対して、例えば2箇所からガスをパージする。排気部48は、上記のパージに伴いFOUP20及びEFEM40内に供給されたパージガスを排気する。
【0026】
なお、図示されていないが、例えば、ガス出力部47の前方に風向板を設け、ガス流の方向を調整できるようにしても良い。パージガスをFOUP20内に向けて集中して供給する場合には、ガス出力部47から出力されるパージガスがFOUP20内に向けて流れるように、風向板をFOUP20に向けて固定する。また、パージガスをFOUP20とEFEM40との両方に供給する場合には、風向板を揺動させるようにすると良い。
【0027】
また、図1においては、ガス出力部47がEFEM40の底部から延びているが、EFEM40の天井付近に設けるようにすることもできる。この場合、排気部48がEFEM40の底部に設けられるから、ダウンフローのガス流が形成され、パージが効率的に行われるとともに、パーティクルなどの舞い上がりも防止できる。
[実施形態の作用]
図4のフローチャートを用いて、本実施形態の作用について説明する。
【0028】
FOUP20は、密閉された内部にウエーハ10を収納して、半導体製造装置の各工程間をロボットなどにより搬送される。このとき、送信装置25は、センサ部21で検知されているFOUP20内部の温度などの情報を外部に送信している。なお、本実施形態の場合の「外部」とは、受信装置31を指す。
【0029】
FOUP20に収納されているウエーハ10に対してエッチング装置30による処理を行うために、FOUP20は、ロードポート41に設置され、固定される(ステップS100、S110)。
【0030】
ウエーハ10をエッチング装置30に搬送できるように、ロードポート41は、FOUP20の前面扉20aを開く(ステップS120)。この状態において、本実施形態のパージ処理が行われる(ステップS300)。
【0031】
パージ処理(ステップS300)は、ステップS310〜ステップS350の工程を含む。以下、この工程を説明する。
【0032】
まずエッチング装置30側の受信装置31が、FOUP20の送信装置25からFOUP20内部の雰囲気に関する情報を受信する(ステップS310)。
【0033】
受信されたこれらの情報は、例えば、記憶部34に予め記憶されているそれぞれの基準値と比較される(ステップS320)。これらの情報が基準値を満足する場合は、このパージ処理を行うことなく終了する(ステップS320:Yes)。
【0034】
一方、これらの情報が基準値を満足するものでない場合には(ステップS320:No)、パージ部43は、FOUP20内の1または複数のウエーハ10に対してガスパージを開始する(ステップS330)。すなわち、受信装置31が受信したFOUP20内部の雰囲気に応じて、パージ部43が有する図示しない制御部は、当該雰囲気の調整に必要とするガスを選択する。この選択結果は、ガス切替部44に送られ、ガス切替部44は予め用意されている複数のガスボンベやガス配管の中から、必要なガスを選定し、ガス出力部47を介してFOUP20内部に送り込む。
【0035】
例えば、温度パージ用ガスは、配管の途中に設けられた加熱器や冷却器によって温度調整されたNガスなどであって、ガス出力部47からFOUP20内部に供給されることで、FOUP20内部の温度が基準値を満足するように、加熱あるいは冷却する。同様に、湿度パージ用ガスは、FOUP20内の湿度が基準値を満足するように、配管の途中などに設けられた加湿器あるいは除湿器を通過させたものである。このように調湿されたガスをFOUP20内にパージすることで、FOUP20内の湿度雰囲気を基準値内とすることができる。湿度の基準値は好ましくは5%とすることができる。例えばセンサ部21が検知して湿度が5%以上であった場合、後述するようにして、5%以下の湿度になるまで除湿パージを行う。
【0036】
濃度パージ用ガスは、FOUP20内のガス濃度を予め定められた一定値にするために、ガス出力部47からFOUP20内にNなどをパージする。例えば、AS(砒素)やP(リン)をドープしたPOLY−Siなどにおいて、プロセスガスに毒性の極めて強いAsH(アルシン)、PH(ホスフィン)などのガスを使用する場合、ウエーハ10の膜中および膜表面に存在する毒ガス成分が脱離し、FOUP20内の毒ガス濃度が増加する。このような毒性ガスには、許容ガス濃度(TLV値)があり、例えば、アルシンの場合は0.05ppm、ホスフィンの場合は0.3ppmであり、この値以下であることを確認すると良い。また、このようにNなどのガスをFOUP20内にパージすることで、FOUP20内の毒ガスなどの濃度を希釈化し、基準値内とすることができる。
【0037】
なお、これらのパージガスとしては、予め複数種類のものを用意しておいて、ガス切替部44で切り替えて使用しても良いし、1種類のガスの配管の途中に加熱器、冷却器、除湿器、加湿器を配置しておき、要求されるガスの特性に合わせて、これらの機器を動作させることで、必要なパージガスを得ても良い。
【0038】
上記のガスパージ開始以降においても、FOUP20側の温度センサ22、湿度センサ23、ガス濃度センサ24は、それらの情報を、FOUP20側の送信部29からエッチング装置30側の受信部33に送信し続ける。エッチング装置30で受信されたこれらの情報は、例えば、記憶部34に予め記憶されているそれぞれの基準値と逐次比較される(ステップS340)。これらの情報が基準値と一致するまでパージは継続し(ステップS340:No)、これらの情報が基準値を満足する状態になった時点で、パージは終了する(ステップS340:Yes、S350)。
【0039】
このようにしてウエーハ10の搬送開始前におけるガスパージが終了した後、搬送ロボット42は、ウエーハ10をFOUP20から搬出し、EFEM40の内部を経由してエッチング装置30に搬送する(ステップS130)。搬送されたウエーハ10は、エッチング装置で処理される(ステップS140)。このエッチング処理が終了すると(ステップS150)、ウエーハ10は、搬送ロボット42で搬送され、FOUP20に収納される(ステップS160)。FOUP20に未処理のウエーハ10がまだ収納されていれば、残りのウエーハ10についてプロセス処理が繰り返される。その場合、FOUP20の雰囲気が基準値を満足させない状態になった場合には、パージ処理(ステップS300)が行われる(ステップS170:No)。
【0040】
FOUP20に収納されているウエーハ10が、全て処理されると(ステップS170:Yes)、再びパージ処理が行われる(ステップS300)。この場合、FOUP20の内部雰囲気が基準値を満足する場合には、パージ処理は実行されない(ステップS320:YES)。パージ処理が終了すると、ロードポート41は、FOUP20の前面扉20aを閉じ、FOUP20の固定を解く(ステップS180、S190)。その後、FOUP20は、ロードポート41から取り上げられて、次の工程へロボットなどで搬送される(ステップS200)。
[実施形態の効果]
本実施形態の半導体製造装置1とFOUP20とは、次のような効果を奏する。
(1)半導体製造装置1は、FOUP20内部の温度、湿度、ガス濃度などをセンサ部21で測定でき、それらの測定情報を送信装置25から受信装置31に送信できることより、簡単な構成でFOUP20内の雰囲気をモニタし、異常を検知できる。またセンサ部21によってFOUP20内の雰囲気を直接測定するため、雰囲気異常をリアルタイムに検知することができる。そしてFOUP20の内部雰囲気が正常になるまでパージ部43からのドライパージやNパージを行うようにしているので、密閉型容器内部の雰囲気に起因する反応物の発生を抑制することができる。
(2)半導体製造装置1は、同理由から、ウエーハ10への反応物を抑制することができることにより、ウエーハ10の生産性、すなわち歩留まりを向上することができる。
(3)FOUP20は、半導体製造装置の各工程間で搬送される場合に、内部の温度などの環境情報を送信装置で外部に供給することができ、異常などをリアルタイムに供給することができる。
[他の実施形態]
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような他の実施形態も含有する。
(1)実施形態の処理装置は、半導体処理装置であるエッチング装置30であるがこれに限定されない。例えば、液晶やMDなどの処理装置でも良い。
(2)実施形態の被処理物は半導体基板であるウエーハ10であるが、これに限定されない。例えば、液晶用の基板やMD用の基板でも良い。
(3)図1及び図2の実施形態では、前面扉20aが開いている状態のFOUP20内に対して、2箇所からガスをパージする構成であるが、これに限定されない。例えば、図5(A)、(B)に示すような構成でも良い。この他の実施形態では、図5(A)に示すように、前面扉20a(図1参照)が閉じている状態で、パージ部43からのパージガスが、ロードポート41に設けられるガス注入部50aと、FOUP本体20bに形成されるガス排出部50bとを経由してFOUP20に注入される。FOUP20内のガスは、ロードポート41に設けられるガス排出部51aと、FOUP本体20bに形成される51bを経由して排気部48に排気される。また図5(A)ではガス注入部50aがFOUP本体20bの底部に接続されているが、ガス注入部50bをFOUP本体20bの天井部に設け、このガス注入部50bに対向するように、ガス注入部50aをロードポート41に設けるようにしても良い。この場合、ガス排出部51bが図5(A)のようにFOUP20の底部に設けられていれば、FOUP20内でダウンフローのガス流が形成され、パージが効率的に行われるとともに、パーティクルなどの舞い上がりも防止できる。
【0041】
図5(B)は、ガス注入部50a,50bの接続前と接続後を示している。図5(B)に示すように、ガス注入部50bは、FOUP20内を密閉するための密閉蓋52、密閉蓋52を上下に移動できるようにガイドする密閉蓋ガイド53、及び密閉蓋52を押し下げるコイルバネ54を有している。ガス注入部50aは、前記密閉蓋52を押し上げるプラグ55を有している。ガス注入部50a,50bが接続されると、プラグ55が密閉蓋52を押し上げて、NなどのパージガスがFOUP20に注入される。
(4)図1及び図2の実施形態では、エッチング装置30に受信装置31を取り付けたが、これに限られない。例えば、FOUP20を載置するロードポート41に受信装置31を設け、送信装置25との通信を行うようにしてもよい。
(5)実施形態のパージ処理は、ウエーハ10がプロセス処理をされている間、行われていないがこれに限定されない。例えば、このプロセス処理の間、FOUP20内に他のウエーハ10が収納されていれば、パージ処理を行っても良い。図4のフローチャートはあくまでも一例であり、ウエーハのプロセス処理とは無関係にFOUP20内部の雰囲気を調整することも可能である。
(6)実施形態では、センサ部21から検知した情報を通信する送信部29と受信部33を備えているが、これらを備えていなくてもよい。例えば、外部出力部として、センサ部21からの情報を表示するモニタなどの表示部をFOUP本体に設けることで、FOUP20内の雰囲気状態をこの表示部を介して外部に知らせることができる。この場合、オペレータがこの表示部を見て必要に応じてパージ部43を作動させ、FOUP内のパージ処理を行うことができる。これによっても、密閉型容器内部の雰囲気に起因する反応物の生成を抑制することが可能となる。
(7)実施形態のパージ処理では、FOUP20内の温度、湿度、ガス濃度の基準値を全て満足するようにしているが、より具体的には、まず、いずれか1つの基準値を満足させた後に、残りの条件を満足させるようにパージすることができる。例えば、アルシンなどの毒ガスはFOUP内に残存した水分と結びつくと、ただちに化学反応を起こし、半導体基板に多大な悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、濃度パージを先に行い、毒ガス濃度を下げた上で、温度、湿度の調整を行うようにすれば、化学反応による悪影響を抑止することができる。
(8)実施形態の密閉型容器はFOUPを挙げているが、形、大きさにかかわらず、半導体基板を収納できる容器ならば、考え得る限り何でもよい。例えば、キャリア、カセット、ポッド、ストッカーと呼ばれるような容器であれば、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1…半導体製造装置、10…ウエーハ、20…FOUP、20a…前面扉、21…センサ部、22…温度センサ、23…湿度センサ、24…ガス濃度センサ、25…送信装置、26…制御部、27…入力部、28…記憶部、29…送信部、30…エッチング装置、31…受信装置、32…制御部、33…受信部、34…記憶部、35…出力部、40…EFEM、41…ロードポート、42…搬送ロボット、43…パージ部、44…ガス切替部、47…ガス出力部、48…排気部、50a,50b…ガス注入部、51a,51b…ガス排出部、52…密閉蓋、53…密閉蓋ガイド、54…コイルバネ、55…プラグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板を収容し搬送に用いられる密閉型容器と、前記半導体基板を処理する処理装置と、前記密閉型容器と前記処理装置とを密閉状態で接続して、前記半導体基板を前記密閉型容器から前記処理装置に搬送する搬送装置とを備えた半導体製造装置であって、
前記密閉型容器は、容器本体の内側に設けられ当該容器内の温度と湿度とガス濃度との少なくとも一つを検知するセンサ部と、
このセンサ部で検知された情報を出力する送信装置と、
を備え、
前記搬送装置は、前記密閉型容器の内部の雰囲気を調整するパージ部を有し、
このパージ部が、前記送信装置からの情報に基づいて、前記密閉型容器の内部の温度、湿度、ガス濃度の少なくとも一つが予め定められた基準値を満足するまでガスパージをすることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項2】
前記パージ部は、
温度パージ用ガス、湿度パージ用ガス、濃度パージ用ガスの出力を切り替えるガス切替部と、
前記送信装置からの情報に基づいて、前記密閉型容器内の雰囲気の調整に必要となるガスを選択する制御部を有し、
前記ガス切替部は、前記制御部の選択結果に基づいて必要なガスを選定することを特徴とする請求項1記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記センサ部は、前記容器内の温度と湿度とガス濃度とを検知し、
前記パージ部は前記送信装置からの情報に基づき、予め定められたガス濃度の基準値を満足した上で、予め定められた温度または湿度の基準値を満足させるようにパージガスを導入することを特徴とする請求項1記載の半導体製造装置。
【請求項4】
半導体基板を収容し搬送に用いられる密閉型容器であって、
この容器本体の内側に設けられ当該容器内の温度と湿度とガス濃度との少なくとも一つを検知するセンサ部と、
このセンサ部で検知された情報を出力する送信装置と、
前記容器本体に設けられ、前記センサ部からの情報に基づいて温度と湿度とガス濃度との少なくとも一つの中から選択されたパージガスが注入されるガス注入部と、
を備えることを特徴とする密閉型容器。
【請求項5】
前記センサ部は、前記容器本体を平面視したときに、この容器本体内に収納された前記半導体基板の存在領域と重なる位置で、かつ前記半導体基板の保持方向において上方に設けられることを特徴とする請求項4記載の密閉型容器。
【請求項6】
前記ガス注入部は、前記容器本体の天井部に設けられていることを特徴とする請求項4記載の密閉型容器。
【請求項7】
前記容器本体には、パージガスが排気されるガス排出部が設けられていることを特徴とする請求項4記載の密閉型容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−248887(P2012−248887A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182580(P2012−182580)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【分割の表示】特願2011−181838(P2011−181838)の分割
【原出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】