説明

対象物検出装置及びプログラム

【課題】対象物の存在する環境に植物が存在する場合に、対象物の誤検出を低減する。
【解決手段】対象物として歩行者を検出する歩行者検出装置は、周辺環境を撮像して画像を生成するカメラ10と、生成された画像に対して歩行者の候補となる候補領域を設定する候補領域設定部20と、設定された候補領域の周波数分析を行い、周波数分析結果に基づいて、前記設定された候補領域が植物を含む植物領域であるかを判定する植物領域判定部30と、候補領域のうち植物領域と判定されたものを除外した候補領域に対して歩行者があるかを検出する歩行者識別部40と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物検出装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライバの安全運転を支援すべく、車載カメラにより生成された画像を用いて歩行者等の様々な対象物を検出する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1には、テンプレート用の画像を予め周波数展開してテンプレートとして用い、カメラにより撮影された画像から切り出した判定対象領域を周波数展開して歩行者の輪郭に相当する周波数成分とテンプレートと比較することで、テンプレート量を削減し、処理負荷を軽減した画像認識装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、矩形物はライン間のパターンが類似していることを考慮し、画像の各ラインの位相不変の特徴量を用いてライン間のパターンの類似度を評価し、評価した類似度に基づいて物体を識別することにより、矩形物の誤検出を抑制する画像処理装置が開示されている。
【特許文献1】特開2008−181422号公報
【特許文献2】特開2008−65464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、対象物の存在する環境に樹木などの植物が存在する場合、樹木の葉に相当する画像領域は細かなテクスチャ(texture)で構成されているので、歩行者の輪郭に相当する周波数成分も含まれている。したがって、特許文献1の技術は、対象物の存在する環境に樹木などの植物が存在する場合、対象物と歩行者を区別することが困難であり、対象物の検出精度が劣化する問題がある。
【0006】
また、特許文献2の技術は、画像のライン間の位相不変な特徴量に基づいて、幅や高さが一様な矩形物を検出することができるが、樹木の葉の領域を検出することができないため、誤検出する問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するために提案されたものであり、対象物の存在する環境に植物が存在する場合に、対象物の誤検出を低減できる対象物検出装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る対象物検出装置は、周辺環境を撮像して画像を生成する撮像手段と、前記撮像手段により生成された画像に対して対象物の候補となる候補領域を設定する候補領域設定手段と、前記候補領域設定手段により設定された候補領域の周波数分析を行い、周波数分析結果に基づいて、前記設定された候補領域が植物を含む植物領域であるかを判定する植物領域判定手段と、前記候補領域設定手段により設定された候補領域のうち前記植物判定手段により植物領域と判定されたものを除外した候補領域に対して、予め記憶された対象物モデルを照合することで、前記対象物があるかを検出する対象物検出手段と、を備えている。
【0009】
本発明に係る対象物検出プログラムは、コンピュータを、周辺環境を撮像して画像を生成する撮像手段により生成された画像に対して対象物の候補となる候補領域を設定する候補領域設定手段と、前記候補領域設定手段により設定された候補領域の周波数分析を行い、周波数分析結果に基づいて、前記設定された候補領域が植物を含む植物領域であるかを判定する植物領域判定手段と、前記候補領域設定手段により設定された候補領域のうち前記植物判定手段により植物領域と判定されたものを除外した候補領域に対して、予め記憶された対象物モデルを照合することで、前記対象物があるかを検出する対象物検出手段と、して機能させるためのプログラムである。
【0010】
候補領域設定手段は、撮像手段により生成された画像に対して対象物の候補となる候補領域を設定する。植物領域判定手段は、設定された候補領域の周波数分析を行い、周波数分析結果に基づいて、前記設定された候補領域が植物を含む植物領域であるかを判定する。
【0011】
ここで、画像の中の植物領域には細かなテクスチャが含まれていることから、画像の周波数分析が行われると、植物領域と他の領域とで周波数分析結果に違いが生じる。よって、植物判定手段は、この周波数分析結果に基づいて、候補領域が植物を含む領域であるかを判定できる。
【0012】
そして、対象物検出手段は、候補領域のうち植物領域と判定されたものを除外した候補領域に対して、予め記憶された対象物モデルを照合することで、対象物があるかを検出する。よって、候補領域の中から予め植物領域を除外して対象物の検出を行うので、植物を対象物であると誤って検出することを低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る対象物検出装置及びプログラムは、対象物の候補となる候補領域の周波数分析を行い、周波数分析結果に基づいて候補領域が植物を含む植物領域であるかを判定し、候補領域のうち植物領域と判定されたものを除外した候補領域に対して対象物があるかを検出することにより、対象物の存在する環境に植物が存在する場合でも、対象物の誤検出を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は、例えば以下の各実施形態に示すように、対象物として歩行者を検出する歩行者検出装置に適用可能である。なお、検出される対象物は、歩行者に限定されるものではない。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る歩行者検出装置の構成を示すブロック図である。なお、各実施形態に係る歩行者検出装置は、例えば車両に搭載された状態で、車両前方に存在する歩行者を検出する。但し、歩行者検出装置は、車両に搭載される場合に限定されるものではなく、その他の移動体、又は建造物等の静止物体に取り付けられてもよい。
【0016】
歩行者検出装置は、車両前方の環境を撮像して画像を生成するカメラ10と、生成された画像の中から歩行者の存在する可能性のある候補領域を設定する候補領域設定部20と、候補領域に植物が存在するかを判定する植物領域判定部30と、候補領域に歩行者が存在するかを識別する歩行者識別部40と、候補領域の設定、植物判定、歩行者検出等に必要な学習済みデータ(画像パターン等)を記憶しているデータベース50と、歩行者識別部40の識別結果を出力する出力部60と、を備えている。
【0017】
また、植物領域判定部30は、候補領域設定部20で設定された各候補領域の周波数を分析する周波数分析部32と、周波数分析結果に基づいて各候補領域に植物が存在するかを判定する植物判定部34と、を備えている。
【0018】
図2は、歩行者検出処理ルーチンを示すフローチャートである。以上のように構成された歩行者検出装置は、歩行者検出ルーチンに従って歩行者を検出する。
【0019】
ステップS1では、カメラ10は、車両の周辺環境を撮像して画像を生成して、その画像を候補領域設定部20に入力する。なお、画像はモノクロでもカラーでもよい。そして、ステップS2に進む。
【0020】
ステップS2では、候補領域設定部20は、カメラ10で生成された画像全体に対して、検出したい対象物(本実施形態では歩行者)の画像パターンをもつ複数サイズの候補領域をスキャンする。そして、候補領域設定部20は、カメラ10で生成された画像の中から歩行者のパターンに似て歩行者の候補となる候補領域をN個抽出し、各々の候補領域の位置及び大きさを決定する。この段階では、設定された各候補領域には、歩行者の他に様々な物体が存在する。
【0021】
図3及び図4は、候補領域内の歩行者を示す図である。図5及び図6は、候補領域内の植物を示す図である。図3〜図6に示すように、候補領域内には歩行者だけでなく樹木等の植物、その他の物体が含まれる。これらは見た目には全く異なる画像パターンであるが、局所的な画像パターンではこれらを区別することができない。そこで、ステップS3以降の処理が実行される。
【0022】
ステップS3では、植物領域判定部30の周波数分析部32は、k=1に設定して、ステップS4に進む。なお、kは、N個の候補領域のうち周波数分析の対象となる候補領域を示すパラメータであり、1〜Nのいずれかの値になる。
【0023】
ステップS4では、周波数分析部32は、k番目の候補領域に対して周波数分析を行ってパワースペクトルを得て、ステップS5に進む。
ステップS5では、植物領域判定部30の植物判定部34は、k番目の候補領域に所定値以上の高周波成分が含まれるかを判定し、肯定判定の場合はステップS6に進み、否定判定の場合はステップS7に進む。
【0024】
なお、所定値の求め方は、特に限定されるものではないが、例えば(1)対象物サンプル(ここでは歩行者サンプル)と植物サンプルで差の生じる周波数を実験的に求める、(2)候補領域内の数画素に対応する周波数を設定する、という方法がある。
【0025】
(2)の場合、「数画素」は固定値であってもよいが、周波数は画像中における候補領域の高さの例えば5%に相当する画素数(例えば候補領域の高さが60画素であれば3画素)に対応する周波数よりも高い周波数が存在するか否かで判定してもよい。なお、「5%」という数値も限定されるものではなく、例えば3〜8%のいずれかの値であってもよい。
【0026】
なお、周波数分析方法は、特に限定されるものではないが、例えば、フーリエ変換(高速フーリエ変換(FFT)、短時間フーリエ変換(STFT)、離散フーリエ変換(DFT))、離散コサイン変換(DCT)、Modified−DCT、ウェーブレット変換、ウィグナー分布、ウォルシュ変換等が挙げられる。
【0027】
ここで、候補領域に高周波成分が含まれているかを判定するのは、次の理由による。植物は、一般に歩行者として誤って検出されやすい。しかし、候補領域中の植物(特に葉)の領域の特徴として細かいテクスチャ(texture)があるが、候補領域中の歩行者の領域はそのような特徴がない。そこで、周波数分析部32が候補領域に周波数分析を行い、植物判定部34が候補領域に高周波成分が存在する(高周波成分のパワースペクトルが高い)かを判定することで、候補領域に植物が含まれるかの判定が可能になる。
【0028】
ステップS6では、k番目の候補領域は、高周波成分が含まれていることから、植物の存在する候補領域と判定され、歩行者の検出対象の候補領域から除外される。そこで、周波数分析部32は、次の候補領域を植物判定の対象にすべく、k=k+1に更新して、ステップS4に戻る。
【0029】
一方、ステップS7では、歩行者識別部40は、k番目の候補領域に対して公知の歩行者識別処理を実行して、ステップS8に進む。ここでは、例えば、歩行者識別部40は、予めデータベース50に記憶された歩行者パターンと照合して歩行者らしさを識別し、歩行者らしさを示す識別値を生成する。そして、歩行者識別部40は、この識別値が予め設定された閾値より高い場合に、そのk番目の候補領域を歩行者位置として出力する。
【0030】
ステップS8では、周波数分析部32は、候補領域設定部20で設定されたすべての候補領域について植物判定処理が行われたかを判定すべく、k<Nであるかを判定し、肯定判定の場合はステップS6に戻り、否定判定の場合はステップS9に進む。
【0031】
ステップS9では、出力部60は、歩行者識別部40の識別結果を出力して、本ルーチンを終了する。例えば、出力部60は、歩行者がいると識別された候補領域をモニタ画面に画像出力してもよいし、又は歩行者の存在をドライバに報知すべく警報音を出力してもよい。
【0032】
以上のように、第1の実施形態に係る歩行者検出装置は、歩行者の存在する可能性のある各々の候補領域に対して周波数分析を行い、植物の存在する候補領域は高周波成分が多いことを考慮して、高周波成分の多い候補領域を除外した候補領域に対して歩行者検出処理を行う。
【0033】
これにより、歩行者検出装置は、歩行者として誤って検出されやすいような植物が存在する場合でも、複数の候補領域の中から予め植物の存在する候補領域を除外してから歩行者検出を行うので、歩行者の誤検出を低減することができる。
【0034】
[第2の実施形態]
つぎに、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同一の部位には同一の符号を付し、重複する記載は省略する。
【0035】
第2の実施形態に係る歩行者検出装置は、第1の実施形態と同様に、図1に示すように構成されている。但し、図2に示す歩行者検出ルーチンにおいて、ステップS4及びステップS5の代わりに、次の高速フーリエ変換(FFT)による植物判定ルーチンが行われる。
【0036】
図7は、FFTによる植物判定ルーチンを示すフローチャートである。すなわち、図2に示すステップS4及びステップS5の代わりに、次のステップS11からステップS16が実行される。
【0037】
周波数分析部32は、候補領域設定部20から候補領域の画像を取得し(ステップS11)、取得した画像から矩形中心を通る垂直線上の画素値(1次元データ)を取得する(ステップS12)。
【0038】
図8は、FFTの対象となる歩行者の画像を示す図である。図9は、FFTの対象となる植物の画像を示す図である。図8及び図9に示すように、各候補領域の中心点を通る垂直線上の画素値がサンプリングされる。
【0039】
そして、周波数分析部32は、1次元データをFFTにより周波数領域へ変換することでパワースペクトルを得て(ステップS13)、これを特徴量として識別器である植物判定部34へ入力する(ステップS14)。
【0040】
図10は、歩行者と植物の各画像データについてのFFTの分析結果を示す図である。なお、横軸のbin数は周波数、縦軸は振幅を示している。植物(葉)領域は、低周波側の振幅も大きいが100bin以上の高周波領域でも比較的高いスペクトルが得られている。一方、歩行者領域は、50bin以下の周波数成分が主体的である。そこで、植物判定部34は、これらのパワースペクトルの特性を入力特徴量として利用できるように、予め用意された学習サンプルに基づいて学習されている。
【0041】
よって、植物判定部34は、周波数分析部32で得られたパワースペクトルとデータベース50に予め記憶されている学習モデルとを照合して植物らしさを識別する(ステップS15)。そして、植物判定部34は、植物らしさを示す値に応じて候補領域が植物か否かを判定する(ステップS16)。
【0042】
なお、本実施形態では、周波数分析部32は、1次元FFTを行ったが、2次元FFTを行ってもよい。また、周波数分析部32は、垂直方向に限らず水平方向の画素値を取得してもよいし、この場合、1ラインに限らず複数ラインの画素値を取得してもよい。
【0043】
なお、本実施形態では、植物判定において識別器が用いられたが、第1の実施形態と同様に、閾値処理などで判定してもよい。
【0044】
[第3の実施形態]
つぎに、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と同一の部位には同一の符号を付し、重複する記載は省略する。
【0045】
第3の実施形態に係る歩行者検出装置は、第1の実施形態と同様に、図1に示すように構成されている。但し、図2に示す歩行者検出ルーチンにおいて、ステップS4及びステップS5の代わりに、次の離散直交変換(DCT)による植物判定ルーチンが行われる。
【0046】
図11は、DCTによる植物判定ルーチンを示すフローチャートである。すなわち、ステップS4及びステップS5の代わりに、次のステップS21からステップS24が実行される。
【0047】
周波数分析部32は、候補領域設定部20から候補領域の画像を取得し(ステップS21)、取得した画像を2次元DCTにより周波数領域へ変換する(ステップS22)。
【0048】
図12は、DCTの対象となる歩行者の画像を示す図である。図13は、DCTの対象となる植物の画像を示す図である。これに対して、図14は、DCT後の歩行者のDCT画像を示す図である。図15は、DCT後の植物のDCT画像を示す図である。
【0049】
DCT画像の左上の領域が低周波成分、右下の領域が高周波成分を示している。そして、周波数成分の振幅が大きいほど白く表示されている。歩行者領域では右下の領域が黒く表示され高周波成分が少ないが、植物(葉)の領域では高周波成分が多く含まれていることが分かる。よって、歩行者と植物とを識別するためには、右下の領域を比較すればよい。
【0050】
そこで、植物判定部34は、DCT画像の予め設定した高周波領域の各画素値を合計し(ステップS23)、その合計値が閾値以上であればその候補領域は植物領域であると判定する(ステップS24)。
【0051】
なお、ここでは、周波数分析部32は候補領域の全体に対してDCT処理を行ったが、候補領域を複数の小さなブロックに分割し、分割領域毎にDCT処理を施してもよい。その場合、植物判定部34は、分割領域毎に高周波成分の有無を確認するだけでなく、分割領域の位置に応じて重み付けをして、上記の判定を行ってもよい。例えば、植物判定部34は、各分割領域のうち、候補領域の中心部に近いほど重み付けを大きくし、候補領域の端に近いほど重み付けを小さくするとよい。これにより、候補領域の中心部には前景に存在する物体が映っている可能性が高いため、背景に撮像された植物の影響による誤判定を低減することができる。
【0052】
また、植物判定部34は、第2の実施形態で用いた高速フーリエ変換(FFT)と同様に、DCT画像から算出できる特徴量を入力とする識別器を構築して判定することもできる。
【0053】
[第4の実施形態]
つぎに、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と同一の部位には同一の符号を付し、重複する記載は省略する。
【0054】
図16は、本発明の第4の実施形態に係る歩行者検出装置の構成を示すブロック図である。上記歩行者検出装置は、図1に示す構成に比べて、新たに車両情報取得部11を備えると共に、植物領域判定部30の代わりに識別器を用いた植物領域判定部30Aを備えている。
【0055】
さらに、植物領域判定部30Aは、候補領域設定部20で設定された各候補領域に対して正規化処理を行う正規化処理部31と、正規化処理された候補領域の周波数分析を行う周波数分析部32と、特徴量を抽出する特徴量抽出部33と、植物か否かを識別する植物識別器35と、を備えている。
【0056】
車両情報取得部11は、本装置が搭載された車両についての車両情報(例えば、速度、ヨーレート、ステアリング角など)を取得する。この場合、候補領域設定部20は、車両情報取得部11により取得された車両情報を用いて現時刻から所定時間後までの車両の走行軌跡を予測し、カメラ10で生成された画像中で、歩行者を探索すべき領域をその予測した走行軌跡近傍の領域に限定することができる。
【0057】
また、車両情報取得部11はナビゲーション装置で使用される地図データから走行中の道路情報を取得してもよい。この場合、候補領域設定部20は、車両情報取得部11で取得された道路情報を用いて入力画面中でこれから走行する道路領域を設定し、その道路領域の周辺で歩行者を探索することによって、処理の高速化と誤検出の低減を図っている。
【0058】
ところで、同一物体を撮像した候補領域であっても、その候補領域に含まれる高周波成分は、撮像対象の距離に応じて変化する。対象までの距離が近ければ大きく鮮明な画像になるため、高周波成分が抽出され易いが、遠方になるほど解像度が低くなるため、高周波成分が抑制される。このように、候補領域の高周波成分は、カメラ10の画角や画素数によって変化する。この場合、植物識別器35は、候補領域の大きさに応じて識別のための閾値を変更すればよい。
【0059】
また、周波数分析の前に候補領域の大きさを調整することも有効である。そこで、正規化処理部31は、候補領域設定部20で設定された候補領域の大きさを予め想定している検出範囲の最遠方の大きさに縮小してもよい。また、正規化処理部31は、候補領域の大きさを段階的に大きく又は小さく変化させてもよい。この場合、植物判定部34は、候補領域の大きさ別の周波数分析結果を利用して、候補領域に植物があるか否かを識別する。これにより、対象物までの距離による検出精度の低下を抑制することができる。
【0060】
さらに、周波数分析の前に候補領域の明るさを調整してもよい。この場合、正規化処理部31は、例えば、ガンマ補正を行うことで明るさを調整し、又は、候補領域内の画素値の最大値と最小値に合わせて候補領域内の階調(例えばモノクロ画像であれば256階調)を補正すればよい。これにより、周波数分析結果の振幅値の分散(ばらつき)を抑えることができ、閾値判定の精度を向上させることができる。
【0061】
また、特徴量抽出部33は、周波数分析部32による候補領域の周波数分析結果に基づいて周波数成分の分布又は強度に関する特徴量を算出する。そして、植物識別器35は、データベース50にアクセスし、データベース50に予め記憶されているモデルを取得して、特徴量抽出部33で算出された特徴量を用いて候補領域が植物か否かを判定する。このように、データベース50に対して事前にモデルを用意しておくことで、識別器を使った植物判定も可能である。
【0062】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で設計上の変更をされたものにも適用可能であるのは勿論である。例えば、上述した実施形態では、検出すべき対象物として歩行者を例に挙げて説明したが、本発明は歩行者の検出に限定されるものではない。例えば、歩行者識別部40は、歩行者パターンを用いる代わりに、検出したい対象物の画像パターンを用いれば、その対象物を識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る歩行者検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】歩行者検出処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】候補領域内の歩行者を示す図である。
【図4】候補領域内の歩行者を示す図である。
【図5】候補領域内の植物を示す図である。
【図6】候補領域内の植物を示す図である。
【図7】第2の実施形態に係る歩行者検出装置におけるFFTによる植物判定ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】FFTの対象となる歩行者の画像を示す図である。
【図9】FFTの対象となる植物の画像を示す図である。
【図10】歩行者と植物の各画像についてのFFTの分析結果を示す図である。
【図11】第3の実施形態に係る歩行者検出装置におけるDCTによる植物判定ルーチンを示すフローチャートである。
【図12】DCTの対象となる歩行者の画像を示す図である。
【図13】DCTの対象となる植物の画像を示す図である。
【図14】DCT後の歩行者のDCT画像を示す図である。
【図15】DCT後の植物のDCT画像を示す図である。
【図16】本発明の第4の実施形態に係る歩行者検出装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0064】
10 カメラ
20 候補領域設定部
30 植物領域判定部
31 正規化処理部
32 周波数分析部
33 特徴量抽出部
34 植物判定部
35 植物識別器
40 歩行者識別部
50 データベース
60 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺環境を撮像して画像を生成する撮像手段と、
前記撮像手段により生成された画像に対して対象物の候補となる候補領域を設定する候補領域設定手段と、
前記候補領域設定手段により設定された候補領域の周波数分析を行い、周波数分析結果に基づいて、前記設定された候補領域が植物を含む植物領域であるかを判定する植物領域判定手段と、
前記候補領域設定手段により設定された候補領域のうち前記植物判定手段により植物領域と判定されたものを除外した候補領域に対して、予め記憶された対象物モデルを照合することで、前記対象物があるかを検出する対象物検出手段と、
を備えた対象物検出装置。
【請求項2】
前記植物領域判定手段は、前記候補領域の大きさ又は輝度値を正規化する正規化処理手段と、前記正規化処理手段により正規化された候補領域の周波数分析を行う周波数分析手段と、前記周波数分析手段の周波数分析結果に基づいて、対象物と植物とを識別するための特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、前記特徴量抽出手段により抽出された特徴量と、前記対象物モデルとを照合することで、前記候補領域が植物領域であるかを識別する植物識別手段と、を有する
請求項1に記載の対象物検出装置。
【請求項3】
前記植物領域判定手段は、フーリエ変換又は離散コサイン変換を行うことにより、前記候補領域の周波数分析を行う
請求項1または請求項2に記載の対象物検出装置。
【請求項4】
前記候補領域設定手段は、当該対象物検出装置が搭載された車両の運動情報又は前記車両が走行する道路の道路情報に基づいて、前記撮像手段により生成された画像の探索範囲を限定し、限定した探索範囲において前記候補領域を設定する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の対象物検出装置。
【請求項5】
コンピュータを、
周辺環境を撮像して画像を生成する撮像手段により生成された画像に対して対象物の候補となる候補領域を設定する候補領域設定手段と、
前記候補領域設定手段により設定された候補領域の周波数分析を行い、周波数分析結果に基づいて、前記設定された候補領域が植物を含む植物領域であるかを判定する植物領域判定手段と、
前記候補領域設定手段により設定された候補領域のうち前記植物判定手段により植物領域と判定されたものを除外した候補領域に対して、予め記憶された対象物モデルを照合することで、前記対象物があるかを検出する対象物検出手段と、
して機能させるための対象物検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図16】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−224797(P2010−224797A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70441(P2009−70441)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】