説明

射出成形システム

【課題】遮断バルブを開く時機の設定を簡素化し、成形材料の射出成形機への供給を過剰に行うことなく、生産性を向上させる射出成形システムを提供する。
【解決手段】射出成形システムには成形材料供給装置13、真空脱気装置14、射出成形機15が具備されている。成形材料供給装置13の第1のホッパ1及び第2のホッパ2には、真空計16及び真空計17が設けられている。また、真空計16及び真空計17で測定された真空度を比較する真空比較装置18が具備されている。真空比較装置18は、各々の真空度の差を比較し、真空度差が所定の値(圧力差によって遮断バルブ3が開となったときに少なくとも第2のホッパ2に衝撃が加えられることのない値)以下になったところで真空比較装置18は遮断バルブ3を開とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、射出成形において、溶解中に成形材料から発生する水分や揮発分を効率的に除去できる真空脱気装置を含む射出成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形において、樹脂等の成形材料に含まれている水分や揮発分は、成形品に樹脂やけ、気泡等のさまざまな不良を生じさせる。したがって、射出する前に成形材料をあらかじめ所定の温度で予備加熱させ、水分や揮発分を除去する材料乾燥工程が必要であった。また、成形材料を射出するスクリュを内蔵し、且つ成形材料を溶解することの出来る加熱筒の途中に脱気孔が設けられたベント式射出成形機で成形する必要があった。ベント式射出成形機では、成形材料を加熱筒内で溶解しながら、水分や揮発分を自然排気させることが出来る。
【0003】
しかしながら、これらは、成形準備に費やす時間や労力の増大を招き、製品を生産する上で生産効率を下げる要因となっていた。
【0004】
この問題を解決するために、材料乾燥工程を省略することができる射出成形機の付帯機器として、真空脱気装置がある。真空脱気装置は、真空吸引することによって、成形材料から発生する水分や揮発分を除去するものである。
【0005】
図2は、成形材料供給装置13、真空脱気装置14、及び射出成形機15を備える従来の射出成形システムの構成を示した図である。
【0006】
成形材料供給装置13には、外部よりペレット状の成形材料が投入される第1のホッパ1が具備されている。第1のホッパ1の鉛直下方向には、遮断バルブ3を介して第2のホッパ2が具備されている。また、第2のホッパ2の、遮断バルブ3が具備されている箇所の反対側には、回転させることによって成形材料を送出するフィードスクリュ4を格納しているフィードスクリュ筐体5が具備されている。フィードスクリュ4の送出先には射出成形機15に連通する供給筒6が鉛直下方向に設けられており、成形材料は射出成形機15に落下するように送られる。
【0007】
射出成形機15には、成形材料に熱を加えるヒータ10を備える加熱筒11と、加熱筒11内に加熱筒11の軸方向に沿って移動可能かつ加熱筒11の軸周りに回転可能な射出スクリュ12とが具備されている。
【0008】
また、供給筒6は、真空ポンプ7に第1の真空配管8を用いて接続されており、加熱筒11、供給筒6、フィードスクリュ筐体5及び第2のホッパ2を真空状態にすることが出来る構造となっている。したがって、加熱筒11で溶解される成形材料から発生する水分や揮発分は、真空ポンプ7によって供給筒6から吸引される。加熱筒11で溶解された成形材料は、射出時には水分や揮発分が除去され、樹脂やけや気泡等の不良を生ずることなく、製品を成形することが可能となる。
【0009】
さらに、第1のホッパ1も第2の真空配管9によって真空ポンプ7と接続されている。第1のホッパ1と第2のホッパ2との間には遮断バルブ3が具備されているため、第1のホッパ1と第2のホッパ2とを個別で真空状態とすることが可能である。第1のホッパ1から第2のホッパ2へ成形材料を供給するときには、第1のホッパ1を真空状態にした後で遮断バルブ3を開くことによって、供給筒6等の真空状態を保持することが出来る。また、大気圧下で第1のホッパ1に成形材料を投入するときには、遮断バルブ3を閉鎖しておけば、外気が第2のホッパ2へ流入することはない。
【0010】
供給筒6と第1の真空配管8との接続部や、第1のホッパ1と第2の真空配管9との接続部にはフィルタ等が具備されており、成形材料が真空ポンプに吸引されないようになっている。また、第2の真空配管9には第1のホッパ1と真空ポンプ7を遮断するバルブ25が具備されている。遮断バルブ3を閉とし、第1のホッパ1に大気圧下で成形材料を投入するとき、バルブ25を閉とすることによって真空ポンプ7による吸引を停止することが出来る。
【0011】
図2で示すような、射出成形システムを使用する場合、フィードスクリュ4による供給量が所定の供給量を超過すると、成形材料によって供給筒6が閉塞される。また、射出成形機15の射出スクリュ12の回転が停止しているときに成形材料が供給されると、射出スクリュ12が回転を開始した際に加熱筒11内と射出スクリュ12との隙間を埋め、水分や揮発分を吸引する経路を塞いでしまう。
【0012】
これらの閉塞によって、成形材料の水分や揮発分が吸引されず、水分や揮発分が成形材料に残留した状態で製品を成形することになり、不良を生じてしまう。そこで、特許文献1では、フィードスクリュ4の回転速度を変化させることによって加熱筒11への成形材料の供給量を制御し、供給筒6等の閉塞を防止している。
【0013】
また、特許文献2では、供給筒6の内部に供給筒6の内径よりも小さい遮蔽筒を設置することによって、供給筒6と遮蔽筒とで形成される空間を一つの経路とし、遮蔽筒内部を異なる経路としている。フィードスクリュ4によって送出される成形材料は、フィードスクリュ筐体5から鉛直下方向へ落下する。つまり、供給筒6と遮蔽筒とで形成される経路が成形材料の供給路となり、遮蔽筒が水分や揮発分の吸引路となる。したがって、加熱筒11に供給される成形材料による吸引路の閉塞を防止することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−347051号公報
【特許文献2】特開2005−119090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
第1のホッパ1と第2のホッパ2との間に具備されている遮断バルブ3の解放は、第1のホッパ1が真空状態になるまでの時間を推定し、遮断バルブ3を開とする時間を設定することにより行っていた。しかしながら、真空配管等の接続不良や、第1のホッパ1と真空配管9との接続部等に具備されているフィルタの詰りが発生すると、第1のホッパ1が真空状態に達するまでに推定の時間よりも長い時間を必要とする。この場合、第1のホッパ1が真空状態に到達する前に遮断バルブ3が開いてしまう虞がある。
【0016】
第1のホッパ1が真空状態に達する前に遮断バルブ3を開いた場合、つまり、第1のホッパ1と第2のホッパ2との圧力に大差がある状態で遮断バルブ3を開いた場合、第1のホッパ1の圧力によって第2のホッパ2やフィードスクリュ筐体5に衝撃が加わる。その結果、第2のホッパ2等に残存していた成形材料は、第1のホッパ1の圧力によって押し出され、射出成形機15に直接供給されてしまう。これにより供給筒6が閉塞され、加熱筒11での成形材料の水分や揮発分の除去が十分に行われず、成形品に不良を生ずるかもしれない。
【0017】
特許文献1では、各々のホッパに真空計を設置し、各々の真空度が近い値になったことを確認して遮断バルブ3を開放する方法が開示されている。この方法では、第1のホッパ1の真空度と第2のホッパ2の真空度が近い値になった直後に遮断バルブ3の開放を行うことが出来ず、成形品の供給に時間がかかってしまい、生産性が低下する虞がある。
【0018】
また、第1のホッパ1の真空度が第2のホッパ2の真空度に達してからも必要以上に真空ポンプ7を運転させるため、コストアップとなるかもしれない。大型の射出成形機では、各々の真空計の間の距離が離れると、操作員が各真空計を確認して遮断バルブ3を開く時機を決めるにあたって労力を要する問題も発生する。
【0019】
そこで、本発明は、遮断バルブを開く時機の設定を簡素化し、成形材料の射出成形機への供給を過剰に行うことなく、生産性を向上させる射出成形システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明は、上記目的を達成するために、成形品を構成する成形材料が投入される第1のホッパと、成形材料を該第1のホッパから受け取り射出成形機に供給するための第2のホッパと、第1のホッパと第2のホッパとを遮断する遮断バルブと、各々のホッパを真空状態にする真空脱気装置と、を備えた射出成形システムにおいて、
第1のホッパと第2のホッパとの真空度差を比較し、該真空度差が所定の値以下であるときに遮断バルブを開く真空比較装置をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、遮断バルブを開く時機の設定を簡素化し、成形材料の射出成形機への供給を過剰に行うことなく、生産性を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態における射出成形システムの構成を示した図である。
【図2】従来の射出成形システムの構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、この発明の実施形態を図1に基づいて説明する。
【0024】
図1は本発明の一実施形態による射出成形システムの概略構成を示す図である。射出成形システムは、成形材料供給装置13、真空脱気装置14、及び射出成形機15を備えていえる。成形材料供給装置13に具備されている第1のホッパ1、第2のホッパ2、遮断バルブ3、フィードスクリュ4、フィードスクリュ筐体5、及び供給筒6は、図2に示した成形材料供給装置13の各構成と同様であるため、それらの説明は省略する。真空脱気装置14に具備されている真空ポンプ7、第1の真空配管8、第2の真空配管9及びバルブ25、並びに射出成形機15に具備されているヒータ10、加熱筒11及び射出スクリュ12についても、従来の各構成と同様であるため、説明は省略する。
【0025】
本発明の実施形態では、第1のホッパ1及び供給筒6に各々の真空度を測定するための第1の真空計16及び第2の真空計17が具備されている。供給筒6と、加熱筒11、フィードスクリュ筐体5、及び第2のホッパ2はバルブ等で区切られていないため、圧力は等しい。したがって、第2の真空計17は第2のホッパ2の真空度を測定していることになる。
【0026】
また、第1の真空計16及び第2の真空計17は、測定した真空度を比較する真空比較装置18に接続されている。接続方法は、真空計の測定値の変換方法によるが、測定値を電気信号に変換する場合、第1の真空計16及び第2の真空計17と真空比較装置18とは電気配線等で電気的に接続される。
【0027】
真空比較装置18は、遮断バルブ3とも電気配線等を用いて電気的に接続されており、遮断バルブ3を開閉する信号を送信することが出来るようになっている。
【0028】
続いて、本発明における第1のホッパ1へ成形材料を投入する構成を説明する。本発明では、特許文献1で開示されているブロワを用いた投入方法を用いている。
【0029】
第1のホッパ1は、ペレット状の成形材料を供給する材料タンク19と搬送配管20によって接続されている。また、材料タンク19から第1のホッパ1に成形材料を搬送するためのブロワ21も第1のホッパ1とブロワ配管22を用いて接続されている。第1のホッパ1とブロワ配管22の接続部には、第1のホッパ1にある成形材料がブロワ21に搬送されないように、フィルタ等が具備されていても良い。搬送配管20及びブロワ配管22には各々の配管を開閉可能なバルブ23、24がそれぞれ具備されている。各々のバルブは電磁バルブ等で構成されていればよい。
【0030】
次に、図1に示した射出成形システムによる成形材料の射出成形機15への供給方法を説明する。
【0031】
まず、バルブ25及び遮断バルブ3を閉の状態にして、真空ポンプ7により供給筒6から吸引を行い、加熱筒11、供給筒6、フィードスクリュ筐体5及び第2のホッパ2を真空状態にする。次に、バルブ23及びバルブ24を開にし、ブロワ21を用いて、材料タンク19、搬送配管20、及び第1のホッパ1の内部に存在する雰囲気を吸引することによって、材料タンク19から第1のホッパ1に成形材料を搬送する。第1のホッパ1とブロワ配管22とはフィルタで隔てられているため、成形材料はブロワ21まで搬送されず、第1のホッパ1へ滞留する。第1のホッパ1へ十分な量の成形材料が搬送されたところで、ブロワ21を停止し、バルブ23及びバルブ24を閉とする。
【0032】
今、第1のホッパ1は大気圧となっているため、第1のホッパ1に滞留している成形材料を第2のホッパ2へ移動させるには、第1のホッパ1を個別に真空にしなければならない。そこで、バルブ25を開とし、真空ポンプ7によって第1のホッパ1の雰囲気を吸引する。
【0033】
第1のホッパ1に具備されている第1の真空計16と、供給筒6に具備されている第2の真空計17の測定値は真空比較装置18に送られる。真空計16と真空計17との測定値の差が所定の値以下になったとき、すなわち、第1のホッパ1と第2のホッパ2との真空度差が所定の真空度差以下となったとき、真空比較装置18は遮断バルブ3を開く信号を遮断バルブ3へ与える。
【0034】
真空比較装置18からの信号により遮断バルブ3が開となり、第1のホッパ1に滞留している成形材料は第2のホッパ2へと移動する。このとき、所定の値を第1のホッパ1の圧力によって、第2のホッパ2及びフィードスクリュ筐体5に衝撃が加わることのない圧力値とする。第2のホッパ2の圧力に近い値に設定する方がよい。
【0035】
第1のホッパ1から第2のホッパ2へ成形材料が移動を完了したところで、遮断バルブ3及びバルブ25を閉とする。第2のホッパ2に移動した成形材料は、フィードスクリュ4によって供給筒6に押し出され、供給筒6の内部を落下することによって射出成形機15の加熱筒11に供給される。
【0036】
加熱筒11に供給された成形材料は、射出スクリュ12の回転に伴って発生する摩擦熱やせん断熱と、加熱筒11の外周に設けられたヒータ10から加えられる熱とによって、溶解される。そのとき、成形材料に含まれていた水分や揮発分を放出する。放出された水分や揮発分は、真空ポンプ7によって供給筒6から吸引される。したがって、加熱筒11に水分や揮発分が滞留することなく成形材料を溶解でき、成形材料からの水分や揮発分の除去が可能になる。よって、成形品の製造にあたり、樹脂やけ、気泡等の不良を発生させることなく成形することができる。
【0037】
第2のホッパ2に成形材料を追加するときには、再度、材料タンク19から第1のホッパ1へ成形材料を搬送しなければならない。あらかじめ第2のホッパ2へ成形材料を追加しなければならないことが分かっている場合には、第1のホッパ1から第2のホッパ2への成形材料の移動が完了したところで、材料タンク19から第1のホッパ1への搬送を開始してもよい。
【0038】
バルブ23及びバルブ24を開とし、ブロワ21を運転し、材料タンク19から第1のホッパ1へ成形材料を搬送する。搬送後、ブロワ21を停止し、バルブ23及びバルブ24を閉とする。続いてバルブ25を開とし、真空ポンプ7によって第1のホッパ1を真空状態とする。
【0039】
第1のホッパ1と第2のホッパ2との真空度差が所定の値以下となったところで遮断バルブ3は開となる。所定の値は、第1のホッパ1の圧力によって第2のホッパ2及びフィードスクリュ筐体5に衝撃が加わることのない値である。したがって、遮断バルブ3が開となるときに、第2のホッパ2及びフィードスクリュ筐体5に残存する成形材料に衝撃が加わることなく、第1のホッパ1の成形材料を第2のホッパ2に移動させることができる。
【0040】
また、第1のホッパ1の真空度と第2のホッパ2の真空度の比較は真空比較装置18によって行われる。さらに、遮断バルブ3の開も真空比較装置18からの信号によって行われる。したがって、遮断バルブ3を開にする時機の精度を高めることが可能であり、第1のホッパ1の真空度が十分な値に達した後の、必要以上の真空ポンプの運転を削減することができる。また、大型の射出成形機において、各々の真空計の間の距離が離れていたとしても、真空比較装置18が各々の真空度を比較して遮断バルブ3を開閉するため、真空度の確認に操作員の労力を必要としない。
【0041】
以上により、遮断バルブを開く時機の設定を簡素化し、成形材料の射出成形機への供給を過剰に行うことなく、生産性を向上させることが出来る。
【符号の説明】
【0042】
1 ホッパ
2 ホッパ
3 遮断バルブ
4 フィードスクリュ
5 フィードスクリュ筐体
6 供給筒
7 真空ポンプ
8 真空配管
9 真空配管
10 ヒータ
11 加熱筒
12 射出スクリュ
13 成形材料供給装置
14 真空脱気装置
15 射出成形機
16 真空計
17 真空計
18 真空比較装置
19 材料タンク
20 搬送配管
21 ブロワ
22 ブロワ配管
23 バルブ
24 バルブ
25 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品を構成する成形材料が投入される第1のホッパと、該成形材料を該第1のホッパから受け取り射出成形機に供給するための第2のホッパと、前記第1のホッパと前記第2のホッパとを遮断する遮断バルブと、前記各々のホッパを真空状態にする真空脱気装置と、を備えた射出成形システムにおいて、
前記第1のホッパと前記第2のホッパとの真空度の差を比較し、該真空度の差が所定の値以下であるときに前記遮断バルブを開く真空比較装置をさらに備えることを特徴とする射出成形システム。
【請求項2】
前記所定の値は、第1のホッパの圧力によって、少なくとも第2のホッパに衝撃が加わることのない前記真空度の差であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−83953(P2011−83953A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238095(P2009−238095)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】