説明

射出成形機の型締力設定方法および型締力設定装置

【課題】金型が開かない必要最小限の設定型締力を求めることで、バリを防ぎ、ガス抜きされた成形による品質の向上や、金型の寿命を短くしない射出成形機の型締力設定方法および型締力設定装置を提供する
【解決手段】状態2(設定型締力を下げると射出時の型締力最大増加量が増加する区間)から状態3(型締力最大増加量が状態2よりも大きく増加する区間)の移行点の検出は、2区間の任意の2点で測定を行い、測定された型締力最大増加量Amax、と型締力最大増加量Bmaxを取得し、線形近似式Fmax=a*Fs+bを求め、状態2にある設定型締力Cは測定された型締力最大増加量Cmax≦(a*C+b)+βを満たし、状態3にある設定型締力Dは測定された型締力最大増加量Dmax>(a*D+b)+βとなることから、状態3に移行したことを判別でき、適正な型締力は状態2から状態3へ移行したときの設定型締力を基に設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機において、金型内に樹脂を射出する際に発生する樹脂圧力に応じてバリを発生させることがなく、かつ、金型の変形が生じない適正な型締力を求める型締力設定方法および型締力設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成型サイクルでは型閉じ工程によって金型を閉じ、さらに型締め工程によって設定の型締力を発生させた後、金型内に溶融樹脂を射出する。金型内に溶融樹脂を射出する際、溶融樹脂が発生する圧力に対して型締力が不足すると金型が開いてバリを発生させる恐れがある。一方、型締力が過大な場合にはバリの心配はないものの、ガス抜けが悪く品質が低下したり、必要以上の型締力が金型にかかり金型の寿命低下、エネルギー消費増大などの問題がある。そのため型締力は、射出する際に金型が開かない最小限の値にすることでバリの発生を防ぎ、かつ、ガス抜けが生じやすい状態や金型に必要以上の負担をかけないことを可能にするため、このような金型が開かない最小限の型締力を求め設定することが望ましい。型締力を設定する技術として、特許文献1には、型締力を徐々に変化させ、検出された型締力の変化に基づいて金型に加わるべき最小型締力を求める技術が開示されている。特許文献2には、射出圧力、投影面積、安全率などの係数から、最小型締力を求める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−6651号公報
【特許文献2】特開平8−252849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術で説明した特許文献1に開示された技術では、型締力の変化が大きいかどうかの許容値(許容できる型開量から求められた値)になるまで試行錯誤する必要があり、適切な型締力を効率的に求めることができないという問題がある。また、特許文献2に開示された技術では、投影面積、安全率等の係数を求める必要がある。投影面積を、金型図面を分析して求めなくてはならない煩雑さがあり、また、安全率は一般に経験値であるから正確な値を求めることは極めて難しい。よって、特許文献2の技術では正確な最小型締力を求めることは困難である。
そこで本発明の目的は、金型が開かない必要最小限の設定型締力を求めることで、金型が開くことにより生じるバリを防ぐことができ、また、ガス抜けが生じやすい状態で成形することによる品質の向上や、金型に必要以上の負担をかけず金型の寿命を不必要に短くしない射出成形機の型締力設定方法および型締力設定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の請求項1に係る発明は、設定型締力に基づいて型締機構によって金型を閉じて型締力を発生させ、射出機構によって前記金型内に溶融樹脂を射出する射出成型機において、任意の異なる大きさの設定型締力で射出を行い、前記金型が閉じた際に発生する型締力と、該金型内に溶融樹脂を射出する際に発生する射出中の型締力の最大値を検出し、該金型が閉じた際に発生する型締力と該射出中の型締力の最大値の差である型締力最大増加量を算出し、型締力最大増加量が異なり、かつ、金型が開かない設定型締力を2つ以上抽出し、前記抽出した2つ以上の設定型締力と前記型締力最大増加量の組み合わせから設定型締力に対する前記型締力最大増加量を示す関係式を求め、前記抽出した2つ以上の異なる設定型締力より小さい設定型締力で射出を行って前記型締力最大増加量を算出し、前記算出した型締力最大増加量が前記関係式に基づく比較値を超えた時点の設定型締力を求め、前記求めた設定型締力の直前の型締力を金型が開かない必要最小限の型締力として設定することを特徴とする射出成型機の型締力設定方法である。
請求項2に係る発明は、前記型締力最大増加量が異なり、かつ、金型が開かない設定型締力を2つ以上抽出することは、設定型締力の大きさを大きい値から小さい値へ変化させて射出を行った場合に、型締力最大増加量の変化量が第1の所定の値より小さい場合、変化させる前の設定型締力を除くことを含むことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機の型締力設定方法である。
請求項3に係る発明は、前記型締力最大増加量が異なり、かつ、金型が開かない設定型締力を2つ以上抽出することは、前記型締力最大増加量が第2の所定の値より小さい場合の設定型締力を除くことを含むことを特徴とする請求項1に記載の射出成型機の型締力設定方法である。
請求項4に係る発明は、前記関係式は線形近似を適用して求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の射出成形機の型締力設定方法である。
請求項5に係る発明は、前記比較値に1つの項として用いる閾値はあらかじめ設定するか、または型締力測定値から自動で決定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の射出成形機の型締力設定方法である。
【0006】
請求項6に係る発明は、前記任意の異なる2つ以上の大きさの設定型締力で射出を行う場合、最大射出圧と金型の投影面積から考えて十分に足りている設定型締力で射出を開始し、該設定型締力を下げながら各射出中の型締力最大増加量を算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の射出成型機の型締力設定方法である。
請求項7に係る発明は、前記型締力最大増加量の変化が異なり、かつ、金型が開かない設定型締力は、射出を行い型締力最大増加量を算出し、該型締力最大増加量に変化が生じる設定型締力において、成形品が良品と判断できる場合の設定型締力であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の射出成型機の型締力設定方法である。
請求項8に係る発明は、前記必要最小限の型締力はあらかじめ設定したマージン分だけ補正を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の射出成形機の型締力設定方法である。
請求項9に係る発明は、設定型締力に基づいて金型を閉じて型締力を発生させる型締部と、前記金型内に溶融樹脂を射出する射出部と、任意の設定型締力で射出を行い、前記金型が閉じた際に発生する型締力および前記金型内に溶融樹脂を射出する際に発生する射出中の型締力の最大値を検出する検出部と、前記金型が閉じた際に発生する型締力と前記金型内に溶融樹脂を射出する際に発生する射出中の型締力の最大値の差から型締力最大増加量を求める型締力増加量算出部と、前記金型が閉じた際に発生する型締力と前記型締力最大増加量を対応させて記憶する記憶部と、前記型締力最大増加量の算出を少なくとも2つ以上の異なる大きさの設定型締力で行い、型締力最大増加量が異なり、かつ、金型が開かない設定型締力を2つ以上抽出する抽出部と、前記抽出された前記金型が閉じた際に発生する型締力と前記型締力最大増加量の組み合わせから設定型締力に対する型締力最大増加量を示す関係式を求める関係式算出部と、前記2つ以上の異なる設定型締力より小さい設定型締力で射出を行い、前記型締力最大増加量を算出し、該型締力最大増加量が前記関係式に基づく比較値を超える設定型締力を求める型締力検出部と、を備え、前記型締力検出部により検出された型締力の直前の設定型締力を金型が開かない必要最小限の型締力として設定することを特徴とする射出成形機の型締力設定装置である。
請求項10に係る発明は、前記抽出部は、設定型締力の大きさを大きい値から小さい値へ変化させて射出を行った場合に、型締力最大増加量の変化量が第1の所定の値より小さい場合、変化させる前の設定型締力を除くことを含むことを特徴とする請求項9に記載の射出成形機の型締力設定装置である。
請求項11に係る発明は、前記抽出部は、前記型締力最大増加量が第2の所定の値より小さい場合の設定型締力を除くことを含むことを特徴とする請求項9に記載の射出成型機の型締力設定装置である。
【0007】
請求項12に係る発明は、前記関係式は線形近似を適用して求めることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一つに記載の射出成型機の型締力設定装置である。
請求項13に係る発明は、前記比較値に1つの項として用いる閾値はあらかじめ設定するか、または型締力測定値から自動で決定されることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一つに記載の射出成形機の型締力設定装置である。
請求項14に係る発明は、前記任意の異なる2つ以上の大きさの設定型締力で射出を行う場合、最大射出圧と金型の投影面積から考えて十分に足りている設定型締力で射出を開始し、該設定型締力を下げながら各射出中の型締力最大増加量を算出することを特徴とする請求項9〜13のいずれか一つに記載の射出成型機の型締力設定装置である。
請求項15に係る発明は、前記型締力最大増加量の変化が異なり、かつ、金型が開かない設定型締力を求める手段は、射出を行い型締力最大増加量を算出し、該型締力最大増加量に変化が生じる設定型締力において、成形品が良品と判断できる場合の設定型締力を選択する手段であることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一つに記載の射出成型機の型締力設定装置である。
請求項16に係る発明は、前記必要最小限の型締力はあらかじめ設定したマージン分だけ補正を行うことを特徴とする請求項9〜15のいずれか一つに記載の射出成形機の型締力設定装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、金型が開かない必要最小限の設定型締力を求めることで、金型が開くことにより生じるバリを防ぐことができ、また、ガス抜けが生じやすい状態で成形することによる品質の向上や、金型に必要以上の負担をかけず金型の寿命を不必要に短くしない射出成形機の型締力設定方法および型締力設定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】設定型締力と射出時の型締力最大増加量の関係を示すグラフである。
【図2】型締力の時間変化を示すグラフである。
【図3】設定型締力と射出時の金型状態を説明する図である。
【図4】型締力最大増加量の変化量判定方法を説明するグラフである。
【図5】射出成形機の概略ブロック図である。
【図6−1】線形近似式を用い適正な型締力を求める処理のアルゴリズムを示すフローチャートである(その1)。
【図6−2】線形近似式を用い適正な型締力を求める処理のアルゴリズムを示すフローチャートである(その2)。
【図7】線形近似式の交点を基に適正な型締力を求めることを説明するグラフである。
【図8−1】線形近似式の交点を基に適正な型締力を算出する処理のアルゴリズムを示すフローチャートである(その1)。
【図8−2】線形近似式の交点を基に適正な型締力を算出する処理のアルゴリズムを示すフローチャートである(その2)。
【図8−3】線形近似式の交点を基に適正な型締力を算出する処理のアルゴリズムを示すフローチャートである(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
溶融樹脂が発生する圧力に対して型締力が不足すると金型が開いてバリが発生することとなる。最大射出圧と金型の投影面積を参考に考えられる十分に足りている型締力から金型が開く状態まで型締力を下げたときの設定型締力と射出時の射出圧力に負けて金型が開いたときの型開き量を表す型締力最大増加量の関係を図1に示す。ここで型締力最大増加量とは図2に示すように設定型締力と射出中の型締力(検出値)の最大値との差を意味する。この関係を分析すると以下の3つの状態に分けて考えることができる。それぞれの状態における射出時の金型状態を図3に示す。金型の型厚はLとする。
【0011】
状態1:設定型締力を下げても射出時の型締力最大増加量が変化しない区間。この区間では、射出圧に対して型締力が十分に足りているため金型は押し縮められるようにひずみを生じる。理想的には射出時の型締力最大増加量に変化は生じない。型締力によって金型がひずみ量δ1だけ圧縮されて型厚はL−δ1となり、プラテン間(可動プラテンと固定プラテンの間)の距離もL−δ1となる。
状態2:設定型締力を下げると射出時の型締力最大増加量が増加する区間。この区間では、状態1よりも型締力が下がることにより射出圧に負けて金型が開こうとするため、状態1で生じていた金型のひずみは徐々に解放される。そのため射出時にひずみが解放された分だけ射出時の型締力最大増加量が増えて行く。ひずみが少し解放され、金型の圧縮はδ1より小さいひずみ量δ2となる。そのため、型厚はL−δ2(0<δ2<δ1)となりプラテン間の距離もL−δ2(0<δ2<δ1)となる。
状態3:設定型締力を下げると射出時の型締力最大増加量が状態2よりも大きく増加する区間。この区間では状態1,2で生じていた金型のひずみが射出時に完全に解放されるため型厚はLとなり、加えて型開き量δ3が起きるためプラテン間の距離はL+δ3となる。
【0012】
なお、上記の射出とはスクリュを動作させて金型内のキャビティ空間に溶融樹脂を充填させる全ての工程を指しており、保圧工程と呼ばれ溶融樹脂に圧力を加えて金型内のキャビティ空間に溶融樹脂を完全に充填する工程も含む。
【0013】
図4は、型締力の最大増加量の変化量判定方法を説明する図であり、図4には型締力最大増加量の変化量が状態2から状態3に移行する点を判別する方法を説明するグラフが図示されている。横軸は設定型締力(Fs)、縦軸は射出中の型締力最大増加量(Fmax)である。状態2と状態3の移行点を検出するために、まず状態2の変化を線形近似式で求める。そのために、図3にあるように、金型のひずみの解放が生じて型締力最大増加量に変化が生じる状態2区間の任意の2点での測定を行い、設定型締力Aに対して測定された型締力最大増加量Amax、と設定型締力B対して測定された型締力最大増加量Bmaxを取得する。このとき型締力最大増加量AmaxとBmaxが等しい場合は、その点が状態1区間であるため設定型締力を下げて図3に示すようなAmax<Bmaxとなる点で再度測定を行う。
【0014】
そしてこの測定値AmaxとBmaxの値をもとに状態2の型締力最大増加量を示す線形近似式Fmax=a*Fs+bを算出できる。この線形近似式Fmax=a*Fs+bが状態2における金型のひずみの解放による型締力の増加を表すため、状態2区間にある設定型締力Cに対して測定された型締力最大増加量Cmaxは、Cmax≦(a*C+b)+βを満たす値となる。このときβは、測定誤差やバラツキを考慮した閾値とし、任意の同じ設定型締力で数回射出をして型締力最大増加量の検出を行い、検出値の最大値と最小値の差を閾値とすることができる。なお、閾値の求め方はこの方法に限ったものではない。
【0015】
次に、状態3は金型のひずみの解放が終わり金型が開く状態にあるから型締力の増加量が大きく変化する。このため、状態3区間にある設定型締力Dに対して測定された型締力最大増加量Dmaxは、Dmax>(a*D+b)+βとなる。つまり状態2から状態3への移行点の判別方法は、状態2区間における任意の2点の型締力最大増加量から線形近似式Fmax=a*Fs+bを求め、設定型締力Xを下げていく過程で計測された型締力最大増加量Xmaxが、Xmax>(a*X+b)+βとなった場合に状態3への移行点として判別する。そして、その移行点の手前の点の設定型締力を金型が開かない最低型締力として検出する。なお、わずかなバリも許されない場合にはマージン分として検出された最低型締力を状態2区間の区間内で補正してもよい。また、状態2から状態3への移行を1つの設定型締力によらず連続した2つの異なる設定型締力によってもよい。この場合、連続してXmax>(a*X+b)+βとなった場合に、状態2から状態3へ移行したと判断する。
【0016】
金型のひずみの解放が生じる状態2の設定型締力は、最大射出圧と金型の投影面積を参考に考えられる十分に足りている状態1の型締力で射出を行い、型締力を下げながら各射出中の型締力最大増加量を算出し、型締力最大増加量の変化が生じる点から求めることができる。また、前記の状態1から状態2へ型締力を変化させて状態2の設定型締力を求める方法以外にも、任意の設定型締力で型締力最大増加量を算出し、型締力最大増加量に変化が生じる設定型締力において、オペレータやカメラの監視、良否判別機能によって成形品が良品と判断できる場合の型締力も状態2の設定型締力として求めることができる。
【0017】
本発明の実施形態は、型締力検出装置を備えた射出成型機において、最大射出圧と金型の投影面積を参考に考えられる十分に足りている型締力から射出を試行して、型締力を下げながら各射出中の型締力最大増加量を計測することに対応できる。つまり状態1に該当する任意の型締力を設定することによって、型締力を下げながら各射出中の型締力最大増加量を計測することに対応できる。なお、本発明の実施形態は、少なくとも状態2において少なくとも異なる2つの型締力を設定し2つの型締力最大増加量を求め、状態3において少なくとも1つの型締力を設定し1つの型締力最大増加量を求める必要がある。
【0018】
前述したように型締力最大増加量とは設定型締力と射出中の型締力の最大値との差を意味する。金型の大きさや構造によって必ずしも設定型締力と金型に印加される実際の型締力が一致するとは限らないため、本発明の実施形態では型締め後であって射出前に検出される型締力と射出中に検出される型締力の最大値の差から正確な型締力最大増加量を測定してもよい。そして射出中の型締力最大増加量が状態2から状態3に移行する点(型締力最大増加量が大きく変化する点)を検出し、その直前の型締力を金型が開かない必要最小限の設定型締力として求めることができる。また、他の実施形態として状態2と状態3でそれぞれ線形近似式を求め、それらの線形近似式の交点を基に金型が開かない必要最小限の設定型締力として求めることができる。
【0019】
図5は、射出成形機の概略ブロック図である。図5に示される射出成形機は、本発明による型締力設定方法を用いて型締力を設定することのできる射出成形機として構成される。射出成形機Mは、機台上(図示省略)に型締部Mc、および射出部Miを備える。射出部Miは樹脂材料(ペレット)を加熱溶融し、当該溶融樹脂を金型40のキャビティ内に射出するものである。型締部Mcは主に金型40(40a,40b)の開閉を行うものである。
【0020】
まず、射出部Miを説明する。射出シリンダ1の先端にはノズル2が取り付けられ、射出シリンダ1内には、スクリュ3が挿通されている。スクリュ3には、スクリュ3に掛る圧力により樹脂圧力を検出するロードセル等を用いた樹脂圧力センサ5が設けられている。樹脂圧力センサ出力信号は、A/D変換器16によりデジタル信号に変換されサーボCPU15に入力する。
スクリュ3は、スクリュ回転用サーボモータM2により、プーリ,ベルト等で構成された伝動機構6を介して回転させられる。また、スクリュ3は、スクリュ前後進用サーボモータM1によって、プーリ,ベルト,ボールねじ/ナット機構などの回転運動を直線運動に変換する機構を含む伝動機構7を介して駆動され、スクリュ3の軸方向に移動させられる。なお、符号P1はスクリュ前後進用サーボモータM1の位置,速度を検出することによって、スクリュ3の軸方向の位置,速度を検出する位置・速度検出器であり、符号P2はサーボモータM2の位置,速度を検出することによって、スクリュ3の軸周り回転位置,速度を検出する位置・速度検出器である。符号4は射出シリンダ1に樹脂を供給するホッパである。
【0021】
次に、型締部Mcを説明する。型締部Mcは、可動プラテン30を前後進させる可動プラテン前後進サーボモータM3、リアプラテン31、成形品を金型から押し出すエジェクタピンを突き出すためのエジェクタ前後進サーボモータM4、可動プラテン30、タイバー32、固定プラテン33、クロスヘッド34、エジェクタ機構35、トグル機構36を備える。リアプラテン31と固定プラテン33とは複数本のタイバー32で連結されており、可動プラテン30はタイバー32にガイドされるように配置されている。可動プラテン30に可動側金型40a,固定プラテン33に固定側金型40bが取り付けられている。トグル機構36は、可動プラテン前後進サーボモータM3によって駆動されるボールねじ軸38に取り付けられたクロスヘッド34を進退させることによって、トグル機構36を作動させることができる。この場合、クロスヘッド34を前進(図における右方向に移動)させると、可動プラテン30が前進させられて型閉じが行われる。そして、可動プラテン前後進サーボモータM3による推進力による推進力にトグル倍率を乗じた型締力が発生させられ、その型締力によって型締が行われる。
【0022】
タイバー32の一つに型締力センサ41が配設されている。型締力センサ41は、タイバー32の歪み(主に、伸び)を検出するセンサである。タイバー32には、型締めの際に型締力に対応して引張力が加わり、型締力に比例してわずかであるが伸長する。したがって、タイバー32の伸び量を型締力センサ41によって検出することで、金型40に実際に印加されている型締力を知ることができる。型締力センサ41としては例えば歪センサを用いることができる。型締力センサ41からの検出信号はA/D変換器27を介してサーボCPU15に送られる。図2に示される型締力(検出値)と時間との関係のグラフは型締力センサ41からの検出信号を基に得られる。そして、設定型締力と、設定型締力と射出中の最大型締力の差分である型締力最大増加量をサーボCPU15にて算出し、得られたデータをRAM14に記憶する。ここで前記差分は型閉じ終了後であって射出開始前の検出した型締力を用いる。あるいは、設定した型締力の値を用いてもよい。
【0023】
リアプラテン31には型締位置調整用モータM5が配設されている。型締位置調整用モータM5の回転軸には、図示しない駆動用歯車が取り付けられている。図示しないタイバーナットの歯車および前記駆動用歯車には歯付きベルトなどの動力伝達部材が架け回されている。そのため、型締位置調整用モータM5を駆動して、前記駆動用歯車を回転させると、それぞれのタイバー32のねじ部37に螺合されたタイバーナットが同期して回転させられる。これにより、型締位置調整用モータM5を所定の方向に所定の回転数だけ回転させて、リアプラテン31を所定の距離だけ進退させることができる。型締位置調整用モータM5は図示されるようにサーボモータが好ましく、回転位置検出用の位置検出器P5を備えている。位置検出器P5によって検出された型締位置調整用モータM5の回転位置の検出信号はサーボCPU15に入力する。本発明においては型締位置調整用モータM5を駆動することにより、例えば図6や図8に示される処理を実行することによって最適な型締力を設定することができる。
【0024】
射出成形機Mの制御装置100は、数値制御用のマイクロプロセッサであるCNCCPU20、プログラマブルマシンコントローラ用のマイクロプロセッサであるPMCCPU17、及びサーボ制御用のマイクロプロセッサであるサーボCPU15を有し、バス26を介して相互の入出力を選択することにより各マイクロプロセッサ間で情報伝達が行えるように構成されている。
【0025】
サーボCPU15には、位置ループ,速度ループ,電流ループの処理を行うサーボ制御専用の制御プログラムを格納したROM13はデータの一時記憶に用いられるRAM14が接続されている。また、サーボCPU15は、A/D(アナログ/デジタル)変換器16を介して射出成形機本体側に設けられた射出圧などの各種圧力を検出する樹脂圧力センサ5からの圧力信号を検出できるように接続されている。サーボCPU15には、サーボCPU15からの指令に基づいて、射出軸に接続されたスクリュ前後進用サーボモータM1,スクリュ回転軸に接続されたスクリュ回転用サーボモータM2を駆動するサーボアンプ11,12が接続され、各サーボモータM1,M2に取り付けられた位置・速度検出器P1,P2からの出力がサーボCPU15に帰還されるようになっている。各サーボモータM1,M2の回転位置は、位置・速度検出器P1,P2からの位置のフィードバック信号に基づいてサーボCPU15により算出され、各現在位置記憶レジスタに更新記憶される。
【0026】
金型の型締めを行う型締め軸を駆動するサーボモータM3,成形品を金型から取り出すエジェクタ軸用サーボモータM4には、それぞれサーボアンプ8,9が接続されている。各サーボモータM3,M4に取り付けられた位置・速度検出器P3,P4からの出力がサーボCPU15に帰還されるようになっている。各サーボモータM3,M4の回転位置は位置・速度検出器P3,P4からの位置のフィードバック信号に基づいてサーボCPU15により算出され、各現在位置記憶レジスタに更新記憶される。
【0027】
PMCCPU17には射出成形機のシーケンス動作を制御するシーケンスプログラム等を記憶したROM18および演算データの一時記憶等に用いられるRAM19が接続され、CNCCPU20には、射出成形機を全体的に制御する自動運転プログラム、本発明に関連した型締力設定方法を実現する制御プログラムなどの各種プログラムを記憶したROM21および演算データの一時記憶に用いられるRAM22が接続されている。成形データ保存用RAM23は、不揮発性のメモリであって、射出成形作業に関する成形条件と各種設定値,パラメータ,マクロ変数等を記憶する成形データ保存用のメモリである。表示装置/MDI(手動データ入力装置)25はインタフェース(I/F)を介してバス26に接続され、機能メニューの選択および各種データの入力操作等が行えるようになっている。数値データ入力用のテンキーおよび各種のファンクションキー等が設けられている。なお、表示装置としては、LCD(液晶表示装置)、CRT、その他の表示装置を用いたものでもよい。
【0028】
以上の射出成形機の構成により、PMCCPU17が射出成形機全体のシーケンスを制御し、CNCCPU20がROM21の運転プログラムや成形データ保存用RAM23に格納された成形条件等に基づいて各軸のサーボモータに対して移動指令の分配を行い、サーボCPU15は各軸に対して分配された移動指令と位置・速度検出器P1,P2,P3,P4,53,54で検出された位置および速度のフィードバック信号等に基づいて、ディジタルサーボ処理を実行し、サーボモータM1,M2,M3,M4,M5を駆動制御する。
【0029】
上記射出成形機Mを用いた成形動作を説明する。可動プラテン前後進サーボモータM3を正方向に回転させると、ボールねじ軸38が正方向に回転させられ、ボールねじ軸38に螺合したクロスヘッド34は前進(図4における右方向)させられ、トグル機構36が作動させられると、可動プラテン30が前進させられる。
【0030】
可動プラテン30に取り付けられた可動側金型40aが固定側金型40bと接触すると(型閉状態)、型締工程に移行する。型締工程では、可動プラテン前後進サーボモータM3を更に正方向に駆動することで、トグル機構36によって金型40に型締力が発生する。そして、射出部Miに設けられたスクリュ前後進用サーボモータM1が駆動されてスクリュ3の軸方向に前進することにより、金型40内に形成されたキャビティ空間に溶融樹脂が充填される。型開きを行う場合、可動プラテン前後進サーボモータM3を逆方向に駆動すると、ボールねじ軸38が逆方向に回転させられる。それに伴って、クロスヘッド34が後退し、トグル機構36が屈曲する方向に作動し、可動プラテン30がリアプラテン31の方向に後退する。型開工程が完了すると、成形品を可動側金型40aから押し出すエジェクタピンを突き出すためのエジェクタ前後進サーボモータM4が作動する。これによって、エジェクタピン(図示せず)が可動側金型40aの内面から突きだされ、可動側金型40a内の成形品は可動側金型40aより突き出される。
【0031】
次に、本発明の実施形態による型締力設定方法および型締力設定装置について説明する。本発明の実施形態では、射出成形機の適切な型締力を設定するために、タイバー32に取り付けられた型締力センサ41を用いる。型締力センサ41は成形中の型締力を検出するために設けられたセンサである。本発明の実施形態は、元来備わっている型締力センサ41の検出値に基づいて適切な型締力を求める方法および装置である。
【0032】
図6は線形近似式を用い適正な型締力を求める処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSA01]N=1と初期値を設定する。なお、Nは最大型締力増加量を特定する試行回数を表す指標である。
●[ステップSA02]設定型締力FsNで5成形サイクル実行し、射出中の最大型締力増加量を計測し、計測値のバラツキや誤差を除くために頻繁値や中心値などを用いて、設定型締力FsNと設定型締力FsNに対する最大型締力増加量FmaxNを一点記憶する。なお、ここで5成形サイクルとしているが、5成形サイクルに限定されるものではなく、測定値のバラツキが無い場合には1成形サイクルでもよいし、測定値のバラツキがある場合にはよりサンプル数を増加して測定してもよい。5成形サイクルとしている他のステップについても同様である。頻繁値は5つの最大型締力増加量FmaxNの内で最も出現度数の高い値である。
●[ステップSA03]設定型締力FsN+1を(FsN―ΔFs)とする。ΔFsは正の値である。
●[ステップSA04]設定型締力FsN+1で5成形サイクル実行し、射出中の最大型締力増加量を計測し、計測値のバラツキや誤差を除くために頻繁値や中心値などを用いて、設定型締力FsN+1と設定型締力FsN+1に対する最大型締力増加量FmaxN+1を一点記憶する。
●[ステップSA05]直前に得られたFmaxNと直近に得られたFmaxN+1とが、FmaxN+1>FmaxN+αの場合(つまりYESの場合)にはステップSA07へ移行し、FmaxN+1>FmaxN+αではない場合(つまりNOの場合)にはステップSA06へ移行する。なお、α(>0)は状態1における測定誤差を許容する値であり、請求項2や請求項10に記載の第1の所定の値に対応する。
具体的に説明すると、フローチャートの処理を開始し、N=1の場合、ステップSA02でFs1とFmax1が記憶される。ステップSA04ではFs2とFmax2とが記憶される。ステップSA05ではこのFmax2とFmax1とが比較される。ここで、ステップSA05の関係を満たさない場合、ステップSA06へ移行し、N=2とされ、ステップSA03へ戻り、さらに、ステップSA04において、Fs3とFmax3とが記憶され、ステップSA05においてFmax3とFmax2とが比較される。そして、ステップSA05の関係を満たすまでステップSA03〜ステップSA06の処理を継続する。
●[ステップSA06]指標Nを一つ増加しN+1とし、ステップSA03へ戻る。
●[ステップSA07]指標Nを一つ増加しN+1とし、ステップSA08へ移行する。
●[ステップSA08]設定型締力FsN+1を(FsN―ΔFs)とする。ΔFsは正の値である。
●[ステップSA09]設定型締力FsN+1で5成形サイクル実行し、射出中の最大型締力増加量を計測し、計測値のバラツキや誤差を除くために頻繁値や中心値などを用いて、設定型締力FsN+1と設定型締力FsN+1に対する最大型締力増加量FmaxN+1を一点記憶する。
●[ステップSA10]ステップSA04で記憶した最も新しい(FsN,FmaxN)とステップSA09で記憶した(FsN+1,FmaxN+1)を用いて、線形近似式Fmax=a*Fs+bを求める。
なお、ステップSA04とステップSA09のみを見ると両方とも(FsN+1,FmaxN+1)で表されているが、ステップSA07において指標Nを1つ増加しているので、ステップSA09で記憶したものが(FsN+1,FmaxN+1)で記述されると、直前に記憶したものは(FsN,FmaxN)と記述される。
●[ステップSA11]指標Nを一つ増加しN+1とし、ステップSA12へ移行する。
●[ステップSA12]設定型締力FsN+1を(FsN―ΔFs)とする。ΔFsは正の値である。
●[ステップSA13]設定型締力FsN+1で成形サイクル実行し、射出中の最大値型締力増加量を計測し、設定型締力FsN+1と最大型締力増加量FmaxN+1を記憶する。
●[ステップSA14]ステップSA10で求めた線形近似式から求められる設定型締力FsN+1に対する最大型締力増加量a*FsN+1+bと、ステップSA13で計測した最大型締力増加量FmaxN+1が、FmaxN+1≦(a*FsN+1+b)+βの場合(つまりYESの場合)はステップSA11へ戻り、FmaxN+1≦(a*FsN+1+b)+βではない場合(つまりNOの場合)はステップSA15へ移行する。
ここで、NOの場合には状態2から状態3へ移行したことを示している。状態2から状態3への移行を一つの測定値で判断しているがステップSA02,SA04,SA09と同様に複数回測定することによってもよい。または、設定型締力を変化させて連続して2回以上ステップSA14の式を満たす(つまりYES)の場合に状態2から状態3へ移行したと判断してもよい。
なお、βはステップSA10において測定値のバラツキや測定誤差を基に線形近似式と同時に求めてもよいし、射出成形機の機差に応じて予めパラメータとして設定しておいてもよい。
●[ステップSA15]FsNを金型が開かない必要最小限の型締力として設定型締力に設定し、処理を終了する。なお、FsNはステップSA13において記憶された最新の値である。
【0033】
次に、線形近似式の交点を基に適正な型締力を求める本発明の実施形態を説明する。図7は線形近似式の交点を基に適正な型締力を求めることを説明する図である。上述した実施形態では状態2(図4参照)において線形近似式を求めるが、本実施形態では状態2と状態3においてそれぞれ線形近似式Fmax=a*Fs+b,Hmax=c*Fs+dを求める。適正な型締力は線形近似式Fmax=a*Fs+bとHmax=c*Fs+dの交点を基に設定することができる。
【0034】
図8は線形近似式の交点を基に適正な型締力を算出する処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSB01]N=1と初期値を設定する。なお、Nは最大型締力増加量を特定する試行回数を表す指標である。
●[ステップSB02]設定型締力FsNで5成形サイクル実行し、射出中の最大型締力増加量を計測し、計測値のバラツキや誤差を除くために頻繁値や中心値などを用いて、設定型締力FsNと設定型締力FsNに対する最大型締力増加量FmaxNを一点記憶する。なお、ここで5成形サイクルとしているが、5成形サイクルに限定されるものではなく、測定値のバラツキが無い場合には1成形サイクルでもよいし、測定値のバラツキがある場合にはよりサンプル数を増加して測定してもよい。5成形サイクルとしている他のステップについても同様である。頻繁値は5つの最大型締力増加量FmaxNの内で最も出現度数の高い値である。
●[ステップSB03]設定型締力FsN+1を(FsN―ΔFs)とする。ΔFsは正の値である。
●[ステップSB04]設定型締力FsN+1で5成形サイクル実行し、射出中の最大型締力増加量を計測し、計測値のバラツキや誤差を除くために頻繁値や中心値などを用いて、設定型締力FsN+1と設定型締力FsN+1に対する最大型締力増加量FmaxN+1を一点記憶する。
●[ステップSB05]直前に得られたFmaxNと直近に得られたFmaxN+1とが、FmaxN+1>FmaxN+αの場合(つまりYESの場合)にはステップSB07へ移行し、FmaxN+1>FmaxN+αではない場合(つまりNOの場合)にはステップSB06へ移行する。なお、α(>0)は状態1における測定誤差を許容する値であり、請求項2や請求項10に記載の第1の所定の値に対応する。
具体的に説明すると、フローチャートの処理を開始し、N=1の場合、ステップSA02でFs1とFmax1が記憶される。ステップSB04ではFs2とFmax2とが記憶される。ステップSB05ではこのFmax2とFmax1とが比較される。ここで、ステップSB05の関係を満たさない場合、ステップSB06へ移行し、N=2とされ、ステップSB03へ戻り、さらに、ステップSB04において、Fs3とFmax3とが記憶され、ステップSB05においてFmax3とFmax2とが比較される。そして、ステップSB05の関係を満たすまでステップSB03〜ステップSB06の処理を継続する。
●[ステップSB06]指標Nを一つ増加しN+1とし、ステップSB03へ戻る。
●[ステップSB07]指標Nを一つ増加しN+1とし、ステップSB08へ移行する。
●[ステップSB08]設定型締力FsN+1を(FsN―ΔFs)とする。ΔFsは正の値である。
●[ステップSB09]設定型締力FsN+1で5成形サイクル実行し、射出中の最大型締力増加量を計測し、計測値のバラツキや誤差を除くために頻繁値や中心値などを用いて、設定型締力FsN+1と設定型締力FsN+1に対する最大型締力増加量FmaxN+1を一点記憶する。
●[ステップSB10]ステップSB04で記憶した最も新しい(FsN,FmaxN)とステップSB09で記憶した(FsN+1,FmaxN+1)を用いて、線形近似式Fmax=a*Fs+bを求める。
なお、ステップSB04とステップSB09のみを見ると両方とも(FsN+1,FmaxN+1)で表されているが、ステップSB07において指標Nを1つ増加しているので、ステップSB09で記憶したものが(FsN+1,FmaxN+1)で記述されると、直前に記憶したものは(FsN,FmaxN)と記述される。
●[ステップSB11]指標Nを一つ増加しN+1とし、ステップSB12へ移行する。
●[ステップSB12]設定型締力FsN+1を(FsN―ΔFs)とする。ΔFsは正の値である。
●[ステップSB13]設定型締力FsN+1で成形サイクル実行し、射出中の最大型締力増加量を計測し、設定型締力FsN+1と最大型締力増加量FmaxN+1を記憶する。
●[ステップSB14]ステップSB10で求めた線形近似式から求められる設定型締力FsN+1に対する最大型締力増加量a*FsN+1+bと、ステップSB13で計測した最大型締力増加量FmaxN+1が、FmaxN+1≦(a*FsN+1+b)+βの場合(つまりYESの場合)はステップSB11へ戻り、FmaxN+1≦(a*FsN+1+b)+βではない場合(つまりNOの場合)はステップSB15へ移行する。
ここでNOの場合には状態2から状態3へ移行したことを示している。状態2から状態3への移行を一つの測定値で判断しているがステップSB02,SB04,SB09と同様に複数回測定することによってもよい。または、設定型締力を変化させて連続して2回以上ステップSB14の式を満たす(つまりYES)の場合に状態2から状態3へ移行したと判断してもよい。
なお、βはステップSB10において測定値のバラツキや測定誤差を基に線形近似式と同時に求めてもよいし、射出成形機の機差に応じて予めパラメータとして設定しておいてもよい。
●[ステップSB15]指標Nを一つ増加しN+1とし、ステップSB16へ移行する。
●[ステップSB16]設定型締力FsN+1を(FsN―ΔFs)とする。ΔFsは正の値である。
●[ステップSB17]設定型締力FsNで5成形サイクル実行し、射出中の最大型締力増加量を計測し、計測値のバラツキや誤差を除くために頻繁値や中心値などを用いて、設定型締力FsN+1と設定型締力FsN+1に対する最大型締力増加量FmaxN+1を一点記憶する。
●[ステップSB18]ステップSB13で記憶した最も新しい(FsN,FmaxN)とステップSB17で記憶した(FsN+1,FmaxN+1)を用いて、線形近似式Hmax=c*Fs+dを求める。
なお、ステップSB13とステップSB17のみを見ると両方とも(FsN+1,FmaxN+1)で表されているが、ステップSB07において指標Nを1つ増加しているので、ステップSB17で記憶したものが(FsN+1,FmaxN+1)で記述されると、直前に記憶したものは(FsN,FmaxN)と記述される。
●[ステップSB19]線形近似式Fmaxと線形近似式Hmaxの交点の設定型締力を基に金型が開かない必要最小限の型締力を求めて設定型締力に設定し、処理を終了する。
【0035】
図6−1,図6−2、図8−1,図8−2に示されるフローチャートの処理は、基本的には状態1から状態2へ,そして、状態3へ型締力を変化させて状態2の関係式を求めるものである。本発明の他の実施形態として、設定型締力Fsを任意に変更し状態1,状態2,状態3において型締力最大増加量を測定し、上述したフロチャートにおいて記憶したように、設定型締力Xと型締力最大増加量Xmaxとを記憶し、記憶したデータを用いて、例えば、設定型締力Xの小さいほうから順に前記フローチャートの判断手順に従って関係式を求めるようにしてもよい。
あるいは、前記記憶したデータを表示装置/MDI25(図5参照)の表示画面にグラフ表示し、オペレータが状態2と判断する適宜の2つの点を選択し、選択された2つの点に基づいて関係式を演算するようにしてもよい。オペレータが選択する2点は、例えば、型締力最大増加量の増加率を基にしたり、成形品が良品と判断できる設定型締力のデータを選択するとよい。また、最大射出圧と金型の投影面積から考えて状態2に該当する設定型締力から型締力最大増加量を測定するようにしてもよい。または、成形品の良否判断をカメラなどを用いた良否判別機能を用い、製品が良品と判断できる場合の型締力を状態2の設定型締力とし、そのときの型締力最大増加量のデータを関係式を求めるためのデータとして用いてもよい。または、状態1において型締力最大増加量に変化がない場合においては第2の所定の値を比較の基準として用いて、設定型締力が状態1であるのか状態2であるのか判断してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 射出シリンダ
2 ノズル
3 スクリュ
4 ホッパ
5 樹脂圧力センサ
6 伝動機構
7 伝動機構
8 サーボアンプ
9 サーボアンプ
10 サーボアンプ
11 サーボアンプ
12 サーボアンプ
13 ROM
14 RAM
15 サーボCPU
16 A/D変換器
17 PMCCPU
18 ROM
19 RAM
20 CNCCPU
21 ROM
22 RAM
23 成形データ保存用RAM
24 インタフェース
25 表示装置/MDI(手動データ入力装置)
26 バス
27 A/D変換器

30 可動プラテン
31 リアプラテン
32 タイバー
33 固定プラテン
34 クロスヘッド
35 エジェクタ機構
36 トグル機構
37 ねじ部
38 ボールねじ軸

40 金型
40a 可動側金型
40b 固定側金型
41 型締力センサ

M 射出成形機
Mc 型締部
Mi 射出部
M1 スクリュ前後進用サーボモータ
M2 スクリュ回転用サーボモータ
M3 可動プラテン前後進サーボモータ
M4 エジェクタ前後進サーボモータ
M5 型締位置調整用モータ

P5 位置検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定型締力に基づいて型締機構によって金型を閉じて型締力を発生させ、射出機構によって前記金型内に溶融樹脂を射出する射出成型機において、
任意の異なる大きさの設定型締力で射出を行い、前記金型が閉じた際に発生する型締力と、該金型内に溶融樹脂を射出する際に発生する射出中の型締力の最大値を検出し、該金型が閉じた際に発生する型締力と該射出中の型締力の最大値の差である型締力最大増加量を算出し、型締力最大増加量が異なり、かつ、金型が開かない設定型締力を2つ以上抽出し、
前記抽出した2つ以上の設定型締力と前記型締力最大増加量の組み合わせから設定型締力に対する前記型締力最大増加量を示す関係式を求め、
前記抽出した2つ以上の異なる設定型締力より小さい設定型締力で射出を行って前記型締力最大増加量を算出し、
前記算出した型締力最大増加量が前記関係式に基づく比較値を超えた時点の設定型締力を求め、
前記求めた設定型締力の直前の型締力を金型が開かない必要最小限の型締力として設定することを特徴とする射出成型機の型締力設定方法。
【請求項2】
前記型締力最大増加量が異なり、かつ、金型が開かない設定型締力を2つ以上抽出することは、
設定型締力の大きさを大きい値から小さい値へ変化させて射出を行った場合に、型締力最大増加量の変化量が第1の所定の値より小さい場合、変化させる前の設定型締力を除くことを含むことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機の型締力設定方法。
【請求項3】
前記型締力最大増加量が異なり、かつ、金型が開かない設定型締力を2つ以上抽出することは、前記型締力最大増加量が第2の所定の値より小さい場合の設定型締力を除くことを含むことを特徴とする請求項1に記載の射出成型機の型締力設定方法。
【請求項4】
前記関係式は線形近似を適用して求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の射出成形機の型締力設定方法。
【請求項5】
前記比較値に1つの項として用いる閾値はあらかじめ設定するか、または型締力測定値から自動で決定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の射出成形機の型締力設定方法。
【請求項6】
前記任意の異なる2つ以上の大きさの設定型締力で射出を行う場合、最大射出圧と金型の投影面積から考えて十分に足りている設定型締力で射出を開始し、該設定型締力を下げながら各射出中の型締力最大増加量を算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の射出成型機の型締力設定方法。
【請求項7】
前記型締力最大増加量の変化が異なり、かつ、金型が開かない設定型締力は、射出を行い型締力最大増加量を算出し、該型締力最大増加量に変化が生じる設定型締力において、成形品が良品と判断できる場合の設定型締力であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の射出成型機の型締力設定方法。
【請求項8】
前記必要最小限の型締力はあらかじめ設定したマージン分だけ補正を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の射出成形機の型締力設定方法。
【請求項9】
設定型締力に基づいて金型を閉じて型締力を発生させる型締部と、前記金型内に溶融樹脂を射出する射出部と、
任意の設定型締力で射出を行い、前記金型が閉じた際に発生する型締力および前記金型内に溶融樹脂を射出する際に発生する射出中の型締力の最大値を検出する検出部と、
前記金型が閉じた際に発生する型締力と前記金型内に溶融樹脂を射出する際に発生する射出中の型締力の最大値の差から型締力最大増加量を求める型締力増加量算出部と、
前記金型が閉じた際に発生する型締力と前記型締力最大増加量を対応させて記憶する記憶部と、
前記型締力最大増加量の算出を少なくとも2つ以上の異なる大きさの設定型締力で行い、型締力最大増加量が異なり、かつ、金型が開かない設定型締力を2つ以上抽出する抽出部と、
前記抽出された前記金型が閉じた際に発生する型締力と前記型締力最大増加量の組み合わせから設定型締力に対する型締力最大増加量を示す関係式を求める関係式算出部と、
前記2つ以上の異なる設定型締力より小さい設定型締力で射出を行い、前記型締力最大増加量を算出し、該型締力最大増加量が前記関係式に基づく比較値を超える設定型締力を求める型締力検出部と、
を備え、
前記型締力検出部により検出された型締力の直前の設定型締力を金型が開かない必要最小限の型締力として設定することを特徴とする射出成形機の型締力設定装置。
【請求項10】
前記抽出部は、設定型締力の大きさを大きい値から小さい値へ変化させて射出を行った場合に、型締力最大増加量の変化量が第1の所定の値より小さい場合、変化させる前の設定型締力を除くことを含むことを特徴とする請求項9に記載の射出成形機の型締力設定装置。
【請求項11】
前記抽出部は、前記型締力最大増加量が第2の所定の値より小さい場合の設定型締力を除くことを含むことを特徴とする請求項9に記載の射出成型機の型締力設定装置。
【請求項12】
前記関係式は線形近似を適用して求めることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一つに記載の射出成型機の型締力設定装置。
【請求項13】
前記比較値に1つの項として用いる閾値はあらかじめ設定するか、または型締力測定値から自動で決定されることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一つに記載の射出成形機の型締力設定装置。
【請求項14】
前記任意の異なる2つ以上の大きさの設定型締力で射出を行う場合、最大射出圧と金型の投影面積から考えて十分に足りている設定型締力で射出を開始し、該設定型締力を下げながら各射出中の型締力最大増加量を算出することを特徴とする請求項9〜13のいずれか一つに記載の射出成型機の型締力設定装置。
【請求項15】
前記型締力最大増加量の変化が異なり、かつ、金型が開かない設定型締力を求める手段は、射出を行い型締力最大増加量を算出し、該型締力最大増加量に変化が生じる設定型締力において、成形品が良品と判断できる場合の設定型締力を選択する手段であることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一つに記載の射出成型機の型締力設定装置。
【請求項16】
前記必要最小限の型締力はあらかじめ設定したマージン分だけ補正を行うことを特徴とする請求項9〜15のいずれか一つに記載の射出成形機の型締力設定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【公開番号】特開2013−75382(P2013−75382A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215504(P2011−215504)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【特許番号】特許第5180357号(P5180357)
【特許公報発行日】平成25年4月10日(2013.4.10)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】