説明

射出成形機

【課題】
射出工程で発生するスプルー若しくはこれに付随するランナ或いはゲートなどの廃棄部分を、再生樹脂として射出シリンダーに供給できるようにした射出成形機であって、再生樹脂の射出シリンダー内への送り込みが良好となり、且つ、計量への影響を低減させた射出成形機の提供。
【解決手段】
スクリュ123上のフライト21に切り欠き23を形成することで、当該切り欠き23によって再生樹脂を巻き込み、切断し、射出シリンダー120内への送り込みを良好なものとし、切り欠き23を形成する範囲を、スクリュ123が射出シリンダー120に備えられた状態で、再生樹脂供給口112aに対向し得る部分であって、1ピッチ分の範囲に留めることにより、計量への影響を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出工程で発生するスプルー若しくはこれに付随するランナ或いはゲートなどの廃棄部分を、再生樹脂としてリサイクルする射出成形機に関し、特に、再生樹脂の射出シリンダーへの供給を円滑に行うことが可能な射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、材料のリサイクル化を図ること等により、廃棄物の発生を可能な限り低減させる努力が産業界においてなされており、射出成形機においても特許文献1などに示されるように、射出工程で発生するスプルー若しくはランナ或いはゲートなどの廃棄部分を、再生樹脂としてそのまま射出シリンダーに供給(リサイクル化)できるようにしたものが用いられるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−179777号公報
【特許文献2】特開2002−192583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出工程で発生するスプルー若しくはランナ或いはゲートなどの廃棄部分を、再生樹脂として使用する場合、当該廃棄部(再生樹脂)は、新規樹脂(ペレット)に比べて大きいのが通常であるため、これをそのまま射出シリンダー内に供給する場合、射出シリンダー内壁とスクリュとの間の隙間(スクリュ溝部)に廃棄部(再生樹脂)がうまく入り込んでいかない(すなわちスクリュ先端部へと移送されていかない)場合があるという問題があった。(再生樹脂を射出シリンダー内に供給する前工程として、再生樹脂を粉砕する工程を設ければ、このような問題は生じないといえるが、この場合、粉砕装置等を別途必要とするためコスト高となってしまう。)
【0005】
また、射出成形機は、生産効率を上げるため等の理由により、射出工程のサイクル時間の短縮化が進んでいるが、これに伴い、スプルーなどの廃棄部をリサイクル供給する際に、廃棄部(再生樹脂)が完全に硬化する前に射出シリンダー内に供給される事態が生じ、射出シリンダー内壁とスクリュとの間の隙間(スクリュ溝部)に廃棄部(再生樹脂)がうまく入り込んでいかないという問題が助長される場合があった。すなわち、廃棄部(再生樹脂)が硬化している場合には、射出シリンダー内に供給された際に、射出シリンダー内で高速で回転しているスクリュと接触することにより廃棄部(再生樹脂)の粉砕が比較的容易になされるため(硬化しているものは衝撃に弱いため)、粉砕された廃棄部(再生樹脂)は、射出シリンダー内壁とスクリュとの間の隙間に入り込んで行き易いが、廃棄部(再生樹脂)が硬化していない場合には、スクリュとの接触による衝撃を吸収してしまい(廃棄部が柔らかいため、変形して衝撃を吸収してしまう)、廃棄部(再生樹脂)が粉砕され難くなり、射出シリンダー内壁とスクリュとの間の隙間に入り込んでいかないという状況が生じてしまう問題があった。
【0006】
このような問題に対し、スクリュに設けられるフライトに切り欠きを設ける(目的は異なるものであるが特許文献2に記載されている)ようにすれば、これと接触する廃棄部(再生樹脂)を巻き込み、粉砕(切断)する力を高めることができるが、フライトに切り欠きを多数(スクリュの軸線方向に長い範囲となるように)設けると、樹脂の搬送(スクリュ先端部への移送)能力を低下させることとなり、計量時間の変動をも惹起し、背圧への影響も生ずる等、計量工程への影響が大きくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記した点に鑑み、射出工程で発生するスプルー若しくはランナ或いはゲートなどの廃棄部分を、再生樹脂として射出シリンダーに供給できるようにした射出成形機であって、再生樹脂の射出シリンダー内への送り込みが良好となり、且つ、計量への影響を低減させた射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の射出成形機は、内部にスクリュが往復且つ回転可能に設けられ、新規樹脂より大きな形状である再生樹脂を供給する供給口が形成された射出シリンダーを備えた射出成形機であって、少なくとも、前記スクリュが往復移動する際に前記供給口と対向し得る範囲において、前記スクリュに設けられるフライトの一部に切り欠きを形成したことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、少なくとも、スクリュが往復移動する際に再生樹脂を供給する供給口と対向し得る範囲において、スクリュに設けられるフライトに切り欠きが形成されるため、供給口から再生樹脂が射出シリンダー内に投入される際に再生樹脂が接触し得るフライトは、切り欠きが形成されている範囲のフライトとなる。
【0010】
請求項2の射出成形機は、請求項1記載の射出成形機であって、前記フライトに形成する前記切り欠きを、前記フライトの1ピッチの範囲内に形成したことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、切り欠きが、フライトの1ピッチ(すなわち螺旋状に形成されるフライトの1周期分)の範囲内のみに形成される。
【0012】
請求項3の射出成形機は、請求項1又は請求項2に記載の射出成形機であって、前記フライトに形成する前記切り欠きを、前記フライトの1ピッチ当たりに4つ形成したことを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、切り欠きが、フライトの1ピッチ(すなわち螺旋状に形成されるフライトの1周期分)の範囲内に4つの割合で形成される。
【0014】
請求項4の射出成形機は、請求項1又は請求項2に記載の射出成形機であって、前記フライトに形成する前記切り欠きを、前記フライトの1ピッチ当たりに8つ形成したことを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、切り欠きが、フライトの1ピッチ(すなわち螺旋状に形成されるフライトの1周期分)の範囲内に8つの割合で形成される。
【0016】
請求項5の射出成形機は、請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の射出成形機であって、前記切り欠きを、略V字型とし、当該V字型を形成する2辺の内、前記スクリュの回転方向の前方側となる辺を、後方側となる辺より長く形成したことを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、フライトに形成される切り欠きが、スクリュの回転方向の前方側となる辺が後方側となる辺より長い略V字型となるように形成される。「スクリュの回転方向の前方側となる辺が後方側となる辺より長い」とは、すなわち、図4(c)に示されるように、スクリュの回転方向Rの前方側となる辺43aとフライト41の外周41aとの交点における接線L1と、辺43aと、が成す角θ1よりも、スクリュの回転方向Rの後方側となる辺43bとフライト41の外周41aとの交点における接線L2と、辺43bと、が成す角θ2の方が大きくなることを意味し、このような形状とすることにより、当該切り欠き部分43へ再生樹脂が入り込み易くなると共に、当該入り込んだ再生樹脂と、辺43bとの衝突角度が深くなる傾向となる。
【0018】
請求項6の射出成形機は、内部にスクリュが往復且つ回転可能に設けられ、新規樹脂より大きな形状である再生樹脂を供給する供給口が形成された射出シリンダーを備えた射出成形機であって、少なくとも、前記スクリュが往復移動する際に前記供給口と対向し得る範囲において、前記スクリュに設けられるフライトの間となる谷底部に前記フライトより高さの低い凸部を、若しくは、前記スクリュに設けられるフライトの側面部に凸部を、形成したことを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、少なくとも、スクリュが往復移動する際に再生樹脂を供給する供給口と対向し得る範囲において、スクリュに設けられるフライトの間となる谷底部にフライトより高さの低い凸部が、若しくは、スクリュに設けられるフライトの側面部に凸部が、形成されるため、供給口から再生樹脂が射出シリンダー内に投入される際に再生樹脂が接触し得るスクリュは、フライトの間となる谷底部に凸部が若しくはフライトの側面部に凸部が形成されている範囲のスクリュとなる。
【0020】
請求項7の射出成形機は、請求項6記載の射出成形機であって、前記スクリュに形成する前記凸部を、前記フライトの1ピッチの範囲内に形成したことを特徴とする。
【0021】
請求項8の射出成形機は、請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の射出成形機であって、前記切り欠きが形成されている範囲内となる部分であって、前記スクリュに設けられるフライトの間となる谷底部に前記フライトより高さの低い凸部を、若しくは、前記スクリュに設けられるフライトの側面部に凸部を、形成したことを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、フライトに切り欠きが形成されている部分となる範囲内において、スクリュに設けられるフライトの間となる谷底部にフライトより高さの低い凸部が、若しくは、スクリュに設けられるフライトの側面部に凸部が、形成される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の請求項1の、内部にスクリュが往復且つ回転可能に設けられ、新規樹脂より大きな形状である再生樹脂を供給する供給口が形成された射出シリンダーを備えた射出成形機であって、少なくとも、前記スクリュが往復移動する際に前記供給口と対向し得る範囲において、前記スクリュに設けられるフライトの一部に切り欠きを形成したことを特徴とする射出成形機によれば、供給口から再生樹脂が射出シリンダー内に投入される際に再生樹脂が接触し得るフライトは、切り欠きが形成されている範囲のフライトとなるため、当該切り欠きが形成されているフライトと接触する再生樹脂を巻き込み、粉砕(切断)する力を高めることができ、従って、再生樹脂の射出シリンダー内への送り込みを良好なものとすることができる。また、切り欠きを形成する範囲を、スクリュが往復移動する際に再生樹脂を供給する供給口と対向し得る範囲内にとどめれば、フライトに切り欠きを形成することによって生じ得る計量への影響を可及的に低減させることができる。
【0024】
本発明の請求項2の、前記フライトに形成する前記切り欠きを、前記フライトの1ピッチの範囲内に形成したことを特徴とする請求項1記載の射出成形機によれば、切り欠きが、フライトの1ピッチ(すなわち螺旋状に形成されるフライトの1周期分)の範囲内のみに形成されるため、フライトに切り欠きを形成することによって生じ得る計量への影響を低減させることができる。
【0025】
本発明の請求項5の、前記切り欠きを、略V字型とし、当該V字型を形成する2辺の内、前記スクリュの回転方向の前方側となる辺を、後方側となる辺より長く形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の射出成形機によれば、当該切り欠き部分へ再生樹脂が入り込み易くなると共に、当該入り込んだ再生樹脂と、V字型の切り欠きのスクリュの回転方向の後方側となる辺(図4(c)における辺43b)との衝突角度が深くなる(直角に近くなる)傾向となるため、再生樹脂を粉砕・切断する力を高めることができる。
【0026】
本発明の請求項6の、内部にスクリュが往復且つ回転可能に設けられ、新規樹脂より大きな形状である再生樹脂を供給する供給口が形成された射出シリンダーを備えた射出成形機であって、少なくとも、前記スクリュが往復移動する際に前記供給口と対向し得る範囲において、前記スクリュに設けられるフライトの間となる谷底部に前記フライトより高さの低い凸部を、若しくは、前記スクリュに設けられるフライトの側面部に凸部を、形成したことを特徴とする射出成形機によれば、供給口から再生樹脂が射出シリンダー内に投入される際に再生樹脂が接触し得るスクリュは、フライトの間となる谷底部に凸部が若しくはフライトの側面部に凸部が形成されている範囲のスクリュとなるため、当該凸部が形成されているスクリュ(フライト)と接触する再生樹脂を巻き込み、粉砕(切断)する力を高めることができる。
【0027】
本発明の請求項8の、前記切り欠きが形成されている範囲内となる部分であって、前記スクリュに設けられるフライトの間となる谷底部に前記フライトより高さの低い凸部を、若しくは、前記スクリュに設けられるフライトの側面部に凸部を、形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の射出成形機によれば、フライトに切り欠きが形成されている部分となる範囲内(すなわち、再生樹脂が射出シリンダー内に投入される際に再生樹脂が接触し得る範囲内)において、スクリュに設けられるフライトの間となる谷底部にフライトより高さの低い凸部が、若しくは、スクリュに設けられるフライトの側面部に凸部が、形成されるため、再生樹脂を巻き込み、粉砕(切断)する力をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の具体的実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施態様は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するためのものではない。
【実施例1】
【0029】
図1は本実施例の射出成形機の本発明に関する部分の概略図であり、図2は同射出成形機に備えられるスクリュの概略を示す図である。図3は射出シリンダー内に樹脂材料が供給される様子を説明するための概念図である。
【0030】
図1を参照しつつ本実施例の射出成形機1の構成(主に本発明に関する部分のみ)の概略を説明する。射出成形機1は、射出ユニット100と型締めユニット200とに大別され、型締めユニット200(本発明には直接的には関連しないため図では主に金型210部分のみとしている)は主に金型210の開閉を行うものであり、射出ユニット100は樹脂材料(新規樹脂:ペレット、及び、再生樹脂:スプルー若しくはランナ或いはゲートなどの廃棄部分)を加熱溶融し、当該溶融樹脂を金型210のキャビティ211内に射出するものである。
【0031】
射出ユニット100は、樹脂材料を供給するためのホッパ110と、樹脂材料を加熱溶融するための射出シリンダー120と、射出シリンダー120内に備えられるスクリュ123を回転駆動するための駆動装置であるサーボモータ131及びスクリュ123を進退運動させる(射出動作)ための駆動装置であるサーボモータ132などによって構成される。本実施例の射出成形機1は、樹脂材料を供給するためのホッパ110として、新規樹脂(ペレット)を供給するためのホッパ111と、再生樹脂(スプルーなど)を供給するためのホッパ112を備え、再生樹脂を供給するためのホッパ112の方が、新規樹脂を供給するためのホッパ111より上流側(金型210から遠い側)に備えられる。スプルーなどの再生樹脂のホッパ112への供給は、金型210部分に配置された取出機(図示せず)が金型210から再生樹脂を取出し、当該取出された再生樹脂が再生樹脂搬送路30を介してホッパ112へと搬送されることによって行われる。
【0032】
射出シリンダー120には、樹脂材料を攪拌及び混練しつつ溶融し射出シリンダー120の先端部に溶融樹脂を溜める(計量)ため及び当該計量された溶融樹脂を金型210内に射出するためのスクリュ123が備えられ、ホッパ111からの新規樹脂を供給するための新規樹脂供給口111aと、ホッパ112からの再生樹脂を供給するための再生樹脂供給口112aとが形成される。さらに、射出シリンダー120には、樹脂材料を溶融するため加熱ヒータや、溶融樹脂に混入した空気を脱気するためのベント孔などが設けられる。
【0033】
本実施例の射出成形機1に備えられるスクリュ123には、図2に示されるように、主フライト21及びサブフライト22が形成され、主フライト21には、スクリュ123が射出シリンダー120に備えられた状態で、再生樹脂供給口112aに対向する部分であって、1ピッチ分の範囲に切り欠き23が形成される。切り欠き23は、図2(a)のA−A線に沿った概略断面図である図2(c)に示されるように、主フライト21の1周期(1ピッチ)に相互の位置関係が均等となるように(90度ごとに)4つ形成される。なお、本実施例の射出成形機1では、スクリュ123の往復移動距離が主フライト21の1ピッチよりも短いため、主フライト21の1ピッチ分の範囲に切り欠き23を形成することにより、「スクリュ123が往復移動する際に再生樹脂供給口112aと対向し得る範囲」を満たすことができる。
【0034】
次に図3を参照しつつ、本実施例の射出成形機1の射出シリンダー120内への再生樹脂の供給の概略を説明する。図3は射出シリンダー120内の状態を時系列にそって示した図であり、図2(a)〜(c)は計量工程における各状態、(d)は射出工程における状態を示した図である。なお、射出シリンダー120内の状態を説明しているため、計量工程と射出工程のみの説明となっているが、実際には各工程の間若しくは各工程に重複して他の工程(例えば形締・形開き工程など)も行われる。
【0035】
図3(d)に示される射出工程(射出工程ではスクリュ123の回転は停止している)が終了すると、計量工程(図3(a))へと移行し、樹脂材料が射出シリンダー120内へ供給される(ホッパ111から新規樹脂33が、ホッパ112から再生樹脂34がそれぞれ供給される)。計量工程の開始によりスクリュ123は回転を開始し、図3(b)に示されるように、当該回転により、主フライト21に形成された切り欠き23に再生樹脂34が巻き込まれ、切断・粉砕される。切断・粉砕された再生樹脂34及び、新規樹脂33は、攪拌及び混練されつつ溶融され射出シリンダー120の先端部に溜められる(スクリュ123が後退する)ことで計量され(図3(c))、計量が終了すると、スクリュ123が前進して射出動作を行う(図3(d))。射出工程が終了すると計量工程(図3(a))へと移行し、以下上記処理を繰り返す。
【0036】
以上のごとく本実施例の射出成形機1によれば、再生樹脂供給口112aから再生樹脂34が射出シリンダー120内に投入される際に再生樹脂34が接触し得る主フライト21は、切り欠き23が形成されている範囲の主フライト21となるため、切り欠き23が形成されている主フライト21と接触する再生樹脂34を効率よく巻き込み、粉砕(切断)することができる。従って、再生樹脂34の射出シリンダー120内への送り込みを良好なものとすることができると共に、再生樹脂34に対する粉砕力が大きく、再生樹脂34がより細かく粉砕されるため、比較的大きな再生樹脂34が射出シリンダー120内へ送り込まれることにより生じる隙間の発生(射出シリンダー120内の樹脂材料の密度が変化する)も低減され、計量への影響を低減させることができる。また、切り欠き23が、主フライト21の1ピッチの範囲内のみに形成されるため、フライトに切り欠きを形成することによって生じ得る計量への影響を低減させることができる(本実施例では、スクリュ123の最も上流側であって、新規樹脂供給口111aに対向する位置よりも上流側の位置となる部分の主フライト21に、切り欠き23が形成されているため、より計量への影響が低減される)。
【実施例2】
【0037】
図4は本実施例の射出成形機に備えられるスクリュの概略を示す図である。なお、本実施例の射出成形機の構成や動作の概略は、スクリュを除き、実施例1と同様であるためここでの説明を省略し、必要があるときは図1などを参照して(実施例1と同一の符号を使用して)説明する。
【0038】
本実施例の射出成形機に備えられるスクリュ40の構成を、図4を参照しつつ説明する。スクリュ40には主フライト41及びサブフライト(図示しないが実施例1のサブフライトと同様である)が形成され、スクリュ40が射出シリンダー120(図1)に備えられた状態で、再生樹脂供給口112aに対向する部分であって1ピッチ分の範囲に、主フライト41に切り欠き43が形成され、さらに、主フライト41の間となる谷底部45に主フライト41より高さの低い凸部47が形成される。切り欠き43及び凸部47は、図4(a)のB−B線に沿った概略断面図である図4(b)に示されるように、主フライト41の1周期(1ピッチ)に相互の位置関係が均等となるように(45度ごとに)8つ形成される。なお、実施例1で説明したのと同様に、スクリュ40の往復移動距離が主フライト41の1ピッチよりも短いため、主フライト41の1ピッチ分の範囲に切り欠き43及び凸部47を形成することにより、「スクリュ40が往復移動する際に再生樹脂供給口112aと対向し得る範囲」を満たすことができる。
【0039】
切り欠き43は、図4(c)に示されるように、スクリュ40の回転方向Rの前方側となる辺43aが後方側となる辺43bより長い略V字型となるように形成される。「スクリュの回転方向の前方側となる辺が後方側となる辺より長い」とは、すなわち、図4(c)に示されるように、辺43aと主フライト41の外周41aとの交点における接線L1と、辺43aと、の角度θ1よりも、辺43bと主フライト41の外周41aとの交点における接線L2と、辺43bとの角度θ2の方が大きくなることを意味し、このような形状とすることにより、当該切り欠き43部分へ再生樹脂が入り込み易くなると共に、当該入り込んだ再生樹脂と、辺43bとの衝突角度が深くなる傾向となる。本実施例では、θ1が63度、θ2が90度となるように形成される。凸部47は、断面がくさび形であって、高さが主フライト41より低く、スクリュの軸線方向に沿って谷底部45を横断するように(両端が隣り合う主フライト41に接するように)形成される。
【0040】
以上のごとく本実施例によれば、主フライト41に形成した切り欠き43部分へ再生樹脂が入り込み易くなる(巻き込まれ易くなる)と共に、当該入り込んだ再生樹脂と、辺43b(スクリュ40の回転方向Rの後方側となる辺)との衝突角度が深くなる(直角に近くなる)傾向となるため、辺43bと再生樹脂とが衝突する際の衝撃が有効に再生樹脂に伝わり、再生樹脂を粉砕・切断する力を高めることができる。さらに、主フライト41の間となる谷底部45に凸部47が形成されているため、これによっても再生樹脂を射出シリンダー120内へ巻き込み、粉砕(切断)する力が高められる。なお、本実施例では、切り欠き43と凸部47とを、同じ範囲内(主フライト41の1ピッチ内)に形成するものとしたが、必ずしも両者の形成範囲を同一とする必要は無く、両者の形成範囲が異なるものであっても良い。また、切り欠き43を設けずに、凸部47のみを形成するようにしてもよい。この場合、切り欠き43を形成したものに比べ、再生樹脂を巻き込み切断する効果は低減するが、計量への影響がほとんど生じない(切り欠き43がないため)。
【0041】
また、本実施例では、凸部47を、断面がくさび形であって、高さが主フライト41より低く、スクリュの軸線方向に沿って谷底部45を横断するように形成するものとしたが、本発明をこれに限るというものではなく、凸部47は「再生樹脂を巻き込み切断する効果」を有するように形成されれば良い。すなわち、谷底部45(若しくは主フライト41の側面部)に何らかの凸部を形成すれば、平滑な谷底部45に比して「再生樹脂を巻き込み切断する効果」が高くなると言え、凸部47はどのような形状であっても良いといえる(ただし、凸部の高さをフライトと同等とすると、投入された再生樹脂をスクリュの先端部へ搬送する能力が著しく低減してしまうため、高さはフライトより低くする必要がある)。
【0042】
上記各実施例では、主フライトに形成する切り欠きを、フライトを貫通するように形成するもの(図5(a))としたが、本発明をこれに限るものではなく、例えば、図5(b)に示すように、フライトを貫通することなく、フライトの側面にくさび形の切り欠き51を形成するようにしてもよい。この場合、再生樹脂を巻き込み切断する効果は低減すると言えるが、計量への影響がほとんど生じない。また、これと同様の効果を得るものとして、図5(c)に示すように、図5(b)のような切り欠き51を形成するのではなく、フライトの側面に凸部52を形成するようにしてよい。加えて、上記実施例中では、切り欠きや凸部を形成する範囲をフライトの1ピッチ内としているが、本発明をこれに限るものではなく、再生樹脂供給口から再生樹脂が射出シリンダー内に投入される際に再生樹脂が接触し得る範囲に形成されていれば良い(さらに言えば再生樹脂が投入されるタイミングに、再生樹脂供給口と対向し得るスクリュの範囲内)。従って、射出成形機の各仕様(スクリュのストローク量など)の異同に伴ない切り欠きや凸部を形成する範囲は適宜変更されて適用されるものである。実施例中の射出成形機においても、「再生樹脂供給口から再生樹脂が射出シリンダー内に投入される際に再生樹脂が接触し得る範囲」はフライトの1ピッチの範囲よりもわずかに短いため、切り欠きや凸部を形成する範囲を1ピッチ以下としてもよいが、スクリュは高速回転する部材であり、その質量配分は軸線に対して均等であることが望ましいため、切り欠きや凸部を1ピッチ(1周期)の範囲内に均等に形成するようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】射出成形機の本発明に関する部分の概略図
【図2】実施例1のスクリュの概略を示す図
【図3】射出シリンダー内に樹脂材料が供給される様子を説明するための概念図
【図4】実施例2のスクリュの概略を示す図
【図5】別のスクリュの概略を示す図
【符号の説明】
【0044】
1 射出成形機
21 フライト
33 新規樹脂(ペレット)
34 再生樹脂
45 谷底部
47・52 凸部
112a 再生樹脂供給口
120 射出シリンダー
123 スクリュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にスクリュが往復且つ回転可能に設けられ、新規樹脂より大きな形状である再生樹脂を供給する供給口が形成された射出シリンダーを備えた射出成形機であって、少なくとも、前記スクリュが往復移動する際に前記供給口と対向し得る範囲において、前記スクリュに設けられるフライトの一部に切り欠きを形成したことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記フライトに形成する前記切り欠きを、前記フライトの1ピッチの範囲内に形成したことを特徴とする請求項1記載の射出成形機。
【請求項3】
前記フライトに形成する前記切り欠きを、前記フライトの1ピッチ当たりに4つ形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記フライトに形成する前記切り欠きを、前記フライトの1ピッチ当たりに8つ形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記切り欠きを、略V字型とし、当該V字型を形成する2辺の内、前記スクリュの回転方向の前方側となる辺を、後方側となる辺より長く形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の射出成形機。
【請求項6】
内部にスクリュが往復且つ回転可能に設けられ、新規樹脂より大きな形状である再生樹脂を供給する供給口が形成された射出シリンダーを備えた射出成形機であって、少なくとも、前記スクリュが往復移動する際に前記供給口と対向し得る範囲において、前記スクリュに設けられるフライトの間となる谷底部に前記フライトより高さの低い凸部を、若しくは、前記スクリュに設けられるフライトの側面部に凸部を、形成したことを特徴とする射出成形機。
【請求項7】
前記スクリュに形成する前記凸部を、前記フライトの1ピッチの範囲内に形成したことを特徴とする請求項6記載の射出成形機。
【請求項8】
前記切り欠きが形成されている範囲内となる部分であって、前記スクリュに設けられるフライトの間となる谷底部に前記フライトより高さの低い凸部を、若しくは、前記スクリュに設けられるフライトの側面部に凸部を、形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−205461(P2006−205461A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18602(P2005−18602)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】