説明

導波型音響波共振装置およびその装置の製造方法

【課題】導波型音響波共振装置及び該装置の製造方法の提供。
【解決手段】少なく共2つのフィルタ(F、・・・、F)を含む導波型音響波共振装置で、各フィルタが少なく共2つの音響波共振器(R11−R12、・・・、RN1−RN2)を含み、各フィルタが、中心周波数(f、・・・、f)を中心とする有用な周波数帯域(BF、・・・、BF)によって特徴づけられ、各共振器が、周期(∧ij)の周期的構造を有する少なく共一組の相互噛合型上部電極と圧電材料の層とを含み、各共振器が結合係数及び共振周波数によって特徴づけられる、導波型音響波共振装置において、共振器の少なく共1つが差別化層(CDfi)を含んで、相互噛合型電極の周期と併せて前記共振器の結合係数変更を可能とし有用な帯域及び中心周波数が、決定された有用な帯域幅を有する様に構成される共振器の共振周波数及び結合係数によって決定される導波型音響波共振装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、特に、センサ、帯域通過フィルタなどの時間ベースフィルタや電気的フィルタに関する働きをする共振装置を製造する目的で、圧電薄層における音響波の伝播を利用する電気機械装置の分野である。
【背景技術】
【0002】
そのような装置は、動作周波数が数百MHz〜数GHz程度であり、無線周波伝送回路(携帯電話、無線リンク、無線データ交換など)、信号処理回路またはセンサシステムにおいて使用されている。
【0003】
一般的には、導波型共振器は、電界が印加されると変形する圧電材料の能力を利用する。交流電気信号の存在下で音響波は発生する。これらの音響波が構造(例えば、層)の一部に構造的に閉じ込められると、導波と呼ぶ。最も一般的な例は、固体/空気の界面において反射されて生じ、平板中を伝播してこの平板に閉じ込められる波に対応するラム波の例である。閉じ込めはまた、(光ファイバーへの光の閉じ込めと同様に)内部全反射のために所与の媒質に波が伝播できないことによってもたらされ得る。これはまた、音響ミラーを使用することによってももたらされ得る。逆圧電効果によって、弾性波の伝播に関連した応力が電極に電流を発生させ、これが電気的共振として現れる。
【0004】
それゆえ、これらの共振器は圧電層の形態をとり、偏波に関わらず音響波を反射させそれゆえ圧電媒質にそれらを閉じ込めることが可能なブラッグ(Bragg)ミラーと呼ばれる積層体に、任意選択的に堆積される。ブラッグミラーに取り付けられたかまたは堆積された層構造によって、共振器を垂直方向において絶縁すること、および基板における音響放射による損失を回避することが可能となる。以下引用する特許出願または特許に記載されているように、電極を圧電層の表面、またはその両側のいずれかに位置決めして、活性物質において電界を励起させるようにする:A.Khelif、A.ChoujaaおよびV.Laude、Dispositif a ondes acoustiques haute frequence[High−frequency acoustic wave device](国際公開第2006/087496A1号パンフレット)、R.AignerおよびJ.Ella、Component for forming vertically standing waves of a wavelength(米国特許第6734600B2号明細書)、R.F.Milsom、F.W.Vanhelmont、A.Jansman、J.RuigrokおよびH.P.Loebl、Bulk acoustic wave resonator device(国際公開第2006/126168A1号パンフレット)。
【0005】
上部電極は2つの相互噛合型くし歯Ei1の形状をしており、くし歯の周期∧は半波長と等しく、かつ圧電材料Pの平板表面に作製される。下部電極が存在する場合には、それらは、電気的な平面板Eに限定されるか、または同様に2つの相互噛合型くし歯Ei2の形態のいずれかとし得る。これらの様々な共振器構造をそれぞれ図1a〜図1cに示す。
【0006】
圧電材料中に音響波を閉じ込めるために、基板Sの表面上に作製されたブラッグミラー構造MRを使用した導波型共振器構造を図1d〜図1fに示す。いずれの場合も、電極の周期が共振周波数を決定する。これは、これら2つの量が波の伝播速度によって結合されているためである:
【数1】

式中、λは波長であり、Vは波の伝播速度であり、fは共振周波数である。
【0007】
共振器の縁部におけるエネルギー漏れを回避するために、図2aに示すような垂直な側面Fによって、波が伝播する圧電層を制限することは一般的な方法である。この側面を正確に堆積させることは、利用される振動モードに依存するが、また、振動の波腹に対応して、共振器の動作が可能な限り妨害されないようにする必要がある。このエッチングを、ブラッグミラーの層または実際には基板をエッチングすることによって、より深くに拡げることもできることに留意されたい。
【0008】
図2bに示すように、圧電材料Pの基板Sの表面に作製された膜を含む装置の場合には、短絡した電極Ei1cで構成された反射アレーを使用して、圧電材料に音響波を閉じ込める機能を確実にする空隙Gairを形成することも可能であり、それによりブラッグミラー構造の省略が可能となる。
【0009】
導波型共振器の電気的応答は、周波数に応じて電気インピーダンスの急激な変動として現れる。このタイプの構成要素の主な量は圧電結合係数である。この係数の測定は、以下の式:
【数2】

(式中、fは共振周波数(共振器の最低インピーダンスに対応する)であり、fは反共振周波数(共振器の最大インピーダンスに対応する)である)
によって得ることができる。
【0010】
例えば帯域通過フィルタを作製するためには、一般的に少なくとも2つの共振器が必要である。帯域通過フィルタを、電気的な相互関連によってまたは共振器の音響結合によって公知の方法で得る。これらの相互関連または結合は、電気信号を特定の周波数範囲にわたってのみ構成要素の全体を通過させ、かつスペクトルの残りの部分を通過させないようにするためのものである。
【0011】
同様に、一連のフィルタを作製することが可能である。そのような構成要素は、ほぼ同じ帯域幅を有するいくつかのフィルタを結び付けるが、それらの各々がより広域のスペクトルの一部を通過できるようにするために、どれも互いに対して帯域がシフトされる。周知の例は、各フィルタに対してテレビまたはラジオチャンネルのフィルタを可能にする一連のフィルタを設けることであろう。全てのフィルタが同じ帯域幅を示す必要があるために、様々な周波数であるが同程度の圧電結合係数を有する共振器を設ける必要がある。
【0012】
それゆえ、TE1(厚み拡張部1)として示す厚み振動モードを用いる導波型共振器に基づいて、異なる周波数を有するフィルタを作製することは簡単である:幾何学的なパラメータ、特に励起電極の周期を修正するのに十分である。
【0013】
例示的な積層体、すなわちブラッグミラーを構成する層Mo、SiO、SiN、SiOC、SiN、SiOCの積層体を以下の表T1に要約する。圧電層は、不活性化層の機能を果たすSiNで覆われたAINで作製されている。
【0014】
【表1】

【0015】
例えば、2GHz、1.98GHzおよび1.96GHzにおけるフィルタを、以下説明するような2つの共振器を結合させることによって作製し得る。
【0016】
【表2】

【0017】
【表3】

【0018】
【表4】

【0019】
それでもなお、この場合、図3に示すように、それぞれフィルタF10には18MHz〜2000MHz、フィルタF20には25MHz〜1980MHzおよびフィルタF30には40MHz〜1960MHzの異なる帯域幅を呈する一連の3つの導波フィルタが作製される。
【0020】
本出願人は、所与の有用な帯域(この有用な帯域は、帯域通過フィルタの場合の通過帯域に対応する)において一定の伝送を確実にするために、第1のタイプの共振器の反共振周波数を第2のタイプの共振器の共振周波数によって、近似的に調整し、これが上述の圧電結合係数に対応し、それにより到達可能な帯域幅を直接定める必要があったという発見から始めた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
それゆえ、本発明の目的は、導波型共振器に基づく一連のフィルタの各フィルタに対して、周波数に応じて結合係数の均一性を保証することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の原理は、構造固有の要素(電極のアーキテクチャ、装置において使用された技術的な積層体に属する層(以下差別化(differentiation)層と称す)など)に関連した音響波の伝播特性に関する結合係数および共振周波数の依存関係を用いることにある。
【0023】
伝播特性(伝播速度および/または質量)の変化が、実に著しく結合係数および共振周波数に影響を及ぼし、構造の、音響場が最も高い領域において変更が発生するときには、より顕著になる。
【0024】
より正確には、本発明の原理は、結合係数の、技術的な積層体の層の1つ(以下差別化層と称す)の伝播特性との依存関係を用いることにある。この層の伝播特性(伝播速度および/または質量)の変化は、結合係数に著しく影響を及ぼし、従って、この層は構造の音響場が最も高い領域に配置される必要がある。
【0025】
より正確には、本発明の主題は、少なくとも2つのフィルタを含む導波型音響波共振装置であって、各フィルタは少なくとも2つの音響波共振器を含み、各フィルタは、中心周波数を中心とする有用な周波数帯域によって特徴づけられ、各共振器は、ある周期の周期的構造を有する少なくとも一組の相互噛合型上部電極と圧電材料の層とを含み、各共振器は、結合係数および共振周波数によって特徴づけられる、導波型音響波共振装置において、共振器の少なくとも1つがいわゆる差別化層を含み、相互噛合型電極の周期と併せて前記共振器の結合係数を変更することを可能にし、有用な帯域および中心周波数は、決定された有用な帯域幅を有するように構成される共振器の共振周波数および結合係数によって決定されることを特徴とする、導波型音響波共振装置である。
【0026】
本発明の変形例によれば、共振器の差別化層はさらに、相互噛合型電極の周期と併せて共振周波数を変更することを可能にする。
【0027】
結合係数および共振周波数を独立して調整し得ることが好都合である。
【0028】
本発明の変形例によれば、共振器の差別化層はさらに、相互噛合型電極の周期と併せて共振周波数を変更することを可能にする。
【0029】
本発明の変形例によれば、差別化層を共振器の表面に位置決めする。
【0030】
本発明の変形例によれば、差別化層を共振器と基板との間に位置決めする。
【0031】
本発明の変形例によれば、共振器を、ブラッグミラー機能を保証する共通の積層体の表面に作製し、前記ブラッグミラーは基板の表面上にある。
【0032】
本発明の変形例によれば、差別化層は、ブラッグミラーの積層体の構成要素層の1つに属する。
【0033】
本発明の変形例によれば、差別化層は多孔質要素を含んで、その音響特性を変更することを可能にする。
【0034】
音響特性を、特に層の密度、それらのパターンの寸法、それらの形状によって変更することが好都合である。
【0035】
本発明の変形例によれば、差別化層は、サブミクロンのパターンを有する構造を含んで、その密度を変更することを可能にする。
【0036】
本発明の変形例によれば、共振器の少なくとも一部分はいくつかの差別化層を含む。
【0037】
本発明の変形例によれば、共振器はさらにいわゆる下部電極を含む。
【0038】
本発明の変形例によれば、いわゆる下部電極は連続的な電極である。
【0039】
本発明の変形例によれば、下部電極は相互噛合型電極のくし歯である。
【0040】
本発明の変形例によれば、装置は、共振器に結合された膜構造を含んで、圧電材料に音響波を閉じ込めることができる間隙を形成することを可能にする。
【0041】
添付の図面による以下の非限定的な説明を読むことから本発明はより理解され、他の利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1a−1f】公知の技術分野による、ブラッグミラーに作製された導波型音響波共振器の構造を示す。
【図2a−2b】エネルギー漏れを制限することを可能にするラム波共振器の構造の例を示す。
【図3】表T1に記載の積層体に基づく導波型共振器構造を含む例示的な一連の3つのフィルタによって得られる性能を示す。
【図4】本発明の装置の第1の変形例を示す。
【図5】表T1に要約した導波成分に対する周波数の関数としての結合係数の変動を示す。
【図6】ブラッグミラーの上部層のいくつかの厚みに対する周波数の関数としての結合係数の変動を示す。
【図7】本発明の例示的な装置において、ブラッグミラーの上部層の厚みがそれぞれ510、310および210nmの積層体で作製された1.96、1.98および2.00GHzにおけるフィルタの応答を示す。
【図8a−8d】本発明の装置の第1の変形例を作製するためのステップを示す。
【図9a−9d】本発明の第2の変形例を作製するためのステップを示す。
【図10a−10d】本発明の第3の変形例を作製するためのステップを示す。
【図11a−11f】本発明の第4の変形例を作製するためのステップを示す。
【図12a−12f】本発明の第5の変形例を作製するためのステップを示す。
【図13a−13f】本発明の第6の変形例を作製するためのステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
一般的な方法では、本発明の装置は、好都合には公知の方法で、基板の表面に、積層体で作製されたブラッグミラーを含むことができ、その表面には、ラム波タイプの音響波が伝播できる圧電材料が位置決めされている。
【0044】
相互噛合型くし歯電極の形態に作製された上部電極を前記圧電材料の表面に位置決めして、電気的励起に基づいて、音響波の発生および伝播を可能にするようにするのが好都合である。それらは周期的パターンの間隔を有し、それを変更することにより、前記共振器の結合係数を調整することができる。
【0045】
結合係数をさらに最適化させることから利益を得るために、本発明は、波の伝播特性をより大きく変更できるように、相互噛合型くし歯電極、ひいては電極の配列の間隔を、差別化層と呼ばれる層の導入と関連付けることに関する設計の規則を提案する。
【0046】
本発明者らは、以下、ブラッグミラーの表面に作製された共振器の範囲内の本発明の装置について説明するが、本発明を、より一般的な方法で、ブラッグミラーを用いない装置、一般に、圧電材料内に音響波を絶縁することを可能にする空隙を含む膜構造に適用することも可能である。
【0047】
簡潔にするために、残りの説明は、帯域通過フィルタを形成する共振器に基づいている。
【0048】
図4に示すように、この構成においては、装置は一組の、例えば3つのフィルタF、FおよびFを含む。
【0049】
各フィルタは、それぞれR11およびR12、R21およびR22、R31およびR32の2つの共振器を含み、それら共振器は、ブラッグミラー構造の表面に作製され、かつそれぞれ電極間隔Δ11、Δ12、Δ21、Δ22、Δ31、Δ32(図示せず)で相互噛合型くし歯電極を含む。
【0050】
フィルタF、FおよびFの帯域幅B、B、Bは、反共振周波数のように同一のフィルタ内で各共振周波数が接近していると考えられる場合には約kの第一近似である。
【数3】

【0051】
図4に示す例によれば、装置はさらに、2つの差別化層CDf2およびCDf3を含み、それら差別化層を、一般にブラッグミラーの上部層の位置レベルに配置された要素とし得る。
【0052】
実際に、どのように厚さを変更しても、ブラッグミラーに入りかつそこから出る波の音響経路の変化に起因してこのミラーの反射係数の位相の変動を生じる。この変動は、共振周波数に一次的に作用し、かつ導波路(圧電層)の境界条件に作用し、それにより圧電結合係数の変動ももたらす。
【0053】
さらに、共振周波数における変動を、相互噛合型くし歯様電極の周期の変動によって補償して、圧電結合係数の変動のみそのままとなるが、もはや周波数は変化しないようにする。
【0054】
密度変化も同様の効果を有し得る:媒質のそのような変更は、用いられる材料の多孔化(porosifying)を行うことによって、例えば、以下の文献に記載されるように多孔質シリコンの層の多孔性を変更することによって:R.J.M.Da Fonseca、J.M.Saurel、G.Despaux、A.Foucaran、E.Massonne、T.TaliercoおよびP.Lefebvre、Superlattices Microstruct.第16巻、21頁(1994)、D.Bellet、P.Lamagnere、A.VincentおよびY.Brechet、J.Appl.Phys.第80巻、第3772頁(1996)、G.T.Andrews、J.Zuk、H.Kiefte、M.J.ClouterおよびE.Nossarzewska−Orlowska、Appl.Phys.Lett.第69巻、第1217頁(1996)、あるいは、R.Aignerによる米国特許第6 657 363B1号明細書、Thin Film Piezoelectric Resonatorに記載されているように媒体およびその包含物がほとんど均質な物質として働くように、波長と比較してごく小さいサイズのパターンに従って人工的に構造化することによって、得ることができる。
【0055】
差別化層を、ブラッグミラーのより深層とすることができるが、この場合、共振器に求められる同一の全体的影響に対して、はるかに重要な特性の変化を予測する必要がある。
【0056】
あるいは、導波型共振器の上側に堆積された層を、ブラッグミラーの使用の有無に関わらず同様に調整することができる。使用しない場合、共振器の下側にこの層を位置決めすることを考慮することも可能である。
【0057】
最後に、様々な手法を組み合わせることができる。
【0058】
実際には、1つまたは複数の差別化層を、一連の様々なフィルタが作製される箇所において局所的に変更することによって、同一の平板に作製されたいくつかの積層体を成功裏にもたらすことが可能となり、異なる周波数を目的とするものの等しい帯域幅を有するフィルタの製造を可能にする。
【0059】
差別化層を同じ材料を使用して作製する必要はなく、これにより、下部層の品質を低下させないようにエッチングの選択性を活用することが可能になる。関連する全ての場合において、これらの層は導波の伝播特性を変更する必要があるが、ブラッグミラーによって生じた閉じ込めの品質を低下させることはない。
【0060】
例示的な実施形態
本発明によれば、積層体を各フィルタの位置レベルにおいて局所的に変更し、それによりブラッグミラー構造の位置レベルにおいて差別化層を組み込むことが可能である。
【0061】
既に説明した表T1のような積層体の場合、結合係数に影響を及ぼすために、ブラッグミラーの上部層の厚さ、すなわちSiO層の厚さを変更することが可能である。
【0062】
この点において、図5に、表T1に要約した導波成分に対する周波数の関数として結合係数の変動を示す。
【0063】
図6に、ブラッグミラーの上部のSiO層のいくつかの厚さに対するこの結合係数の変化の様子を示す。種々の共振器に対して確実に類似の結合係数(0.6%程度)を与えることができるためには、この層に、2GHzのフィルタには厚さ210nm、1.98GHzのフィルタには厚さ310nmおよび1.96GHzのフィルタには厚さ510nmを使用することが必要であることは非常に明白である。
【0064】
このことは、ブラッグミラーの上部層の厚さの変動が、導波層に与えられた境界条件に変化をもたらし、それゆえ、有効圧電結合係数の変更をもたらすという事実に関係している。
【0065】
しかしながら、この変化の様子は、図6の表を構成する可視曲線同士の交点で示されるように全ての周波数で同じであるわけではない。
【0066】
曲線6aは、厚さ110nmに対応する。
【0067】
曲線6bは、厚さ210nmに対応する。
【0068】
曲線6cは、厚さ310nmに対応する。
【0069】
曲線6dは、厚さ410nmに対応する。
【0070】
曲線6eは、厚さ510nmに対応する。
【0071】
このような表を使用することによって、ひいては異なる厚さのSiO差別化層を組み込むことによって、表T1で説明した積層体で作製された3つのフィルタF、FおよびFの幅を、均一にすることが可能となる(差別化されるSiO層内に)。
【0072】
ブラッグミラー構造を含む3つのフィルタを含み、かつそこに、ブラッグミラー構造の位置レベルに存在するSiOの上部層の厚さを変更することによって差別化層が作製された本発明の例示的な装置の特徴を、以下示す。
【0073】
【表5】

【0074】
【表6】

【0075】
【表7】

【0076】
この例示的な一連のフィルタの性能を図7に示す。図7は、3つのフィルタの曲線F、FおよびFの1.96、1.98および2.00GHzにおける応答が、ブラッグミラーの上部層の厚みがそれぞれ510、310および210nmである積層体によってもたらされたことを示す。
【0077】
これらの曲線は、実質的に等しい帯域幅を有するフィルタが上手く作製できることを実証する。
【0078】
本発明による装置の例示的な実施形態:
本発明の例示的な装置の第1の実施形態によれば、図8a〜8dに示す様々なステップは以下の通りである:
−図8aに示すステップ1:ブラッグミラーMを形成する層を基板Sの表面に堆積させる。金属層を使用する場合には、共振器間のいかなる漂遊容量結合も回避するようにこれらの層を構造化する必要がある;
−図8bに示すステップ2:差別化層CDf1およびCDf2を作製する。このために、層の有効密度およびその均一性を低減するために、波長と比較して小さいパターンがエッチング形成される。マトリックスを形成する材料と、包含物を形成する材料とを適合させる媒質を提供するために、これらのパターンを別の材料で充填してから平坦化し得る。ここで、マトリックスに対する包含物の体積比を、各共振器に異なる有効媒質を提供するために変化させる。特性のこの変動をフォトリソグラフィーパターンによって規定する。それゆえ、別の技術的なステップを加えることなく多数の変動を考慮することができる。代替的な方法は、同じ効果を得るために場所によって多孔性を変えることによって層を多孔化させることとし得る。それにも関わらず、これは、作製される各構成要素に特有のマスキングを必要とし、かつこれは高価になものとなり得る;
−図8cに示すステップ3:3つのフィルタF、FおよびFの境界を定めるために圧電材料層Pを堆積させ、かつ構造化する。
−図8dに示すステップ4:上部電極を形成する、構成要素である相互噛合型くし歯電極ERijを作製するために、金属層を圧電材料の様々な構造化要素に堆積させ、かつ構造化する。
【0079】
第2の実施形態によれば、図9a〜9dに示す様々なステップは以下の通りである:
−図9aに示すステップ1:ブラッグミラーMを形成する層を堆積させる。金属層を使用する場合には、共振器間のいかなる漂遊容量結合も回避するようにこれらの層を構造化する必要がある;
−図9bに示すステップ2:3つのフィルタF、FおよびFの範囲を定めるために圧電材料層を堆積させ、かつ構造化する;
−図9cに示すステップ3:上部電極ERijを形成する、構成要素である相互噛合型くし歯電極を作製するために、金属層を圧電材料の様々な構造化要素に堆積させ、かつ構造化する;
−図9dに示すステップ4:上部層を堆積させ、かつ構造化する。この後、この層を、任意選択的に充填材料が充填されたサブ波長パターンでエッチングするが、これは、マトリックスに対する包含物の体積比によって変更された、包含物の有効特性とマトリックスの有効特性との間にある有効特性を有するメタマテリアルを提供するためには、必要ではない。これらの体積比は、所望の効果を得るために共振器毎に異なり、かつ2つの層CDf1およびCDf2を規定することを可能にする。この解決法の利点は、差別化が、使用されたフォトリソグラフィーパターンによって、ひいては設計者によって完全に制御されることである。別の方法は、局所的な多孔性を変えることによる材料の多孔化とし得る。しかしながら、構造化に関して、この解決法は、各共振器またはフィルタを絶縁することを可能にする一連のマスキングを必要とする。
【0080】
第3の実施形態によれば、図10a〜10dに示す様々なステップは以下の通りである:
−図10aに示すステップ1:ブラッグミラーを構成する層を堆積させる。最も一般的な場合には、単純な堆積で十分である。導電性材料を使用する場合には、共振器間のいかなる容量結合も回避するために、金属層を構造化することが有用であり得る;
−図10bに示すステップ2:ブラッグミラーの上部層にいくつかの厚みをもたらすために一連の部分エッチングが行われ、厚みの異なる差別化層CDf1およびCDf2を規定することを可能にする;
−図10cに示すステップ3:圧電層Pの堆積を行う。これは、任意選択的に第1の金属層の堆積および構造化の後に続く;
−図10dに示すステップ4:金属層の堆積および圧電層の上にある電極ERijの構造化を行う。構成部品を不活性化するために、または他の規格に準拠するために、別の堆積を行ってもよい。
【0081】
第4の実施形態によれば、図11a〜11fに示す様々なステップは以下の通りである:
−図11aに示すステップ1:ブラッグミラーMを形成する層を堆積させる。前述の場合のように、金属層を使用する場合には、共振器間のいかなる漂遊容量結合も回避するようにこれらの層を構造化する必要がある;
−図11bに示すステップ2:第1の層CDの堆積および構造化を行う;
−図11cに示すステップ3:第2の層CDの堆積および構造化を行う;積層体CDおよびCDは、差別化層CDf1の等価物を構成し、かつ層CD単独で差別化層CDf2の等価物を構成する;
−図11dに示すステップ4:金属層の堆積および下部電極Eiの構造化を行う;
−図11eに示すステップ5:圧電層の堆積および構造化(必要であれば)を行う;
−図11fに示すステップ6:上部電極の堆積および構造化を行う。例えば、構成部品を不活性化させるために他の堆積を続けて行うことができる。
【0082】
第5の実施形態によれば、図12a〜12fに示す様々なステップは以下の通りである:
−図12aに示すステップ1:ブラッグミラーMを形成する層を基板Sの表面に堆積させる。前述の場合のように、金属層を使用する場合には、共振器間のいかなる漂遊容量結合も回避するようにこれらの層を構造化する必要がある;
−図12bに示すステップ2:下部電極Eiijの堆積および構造化(必要であれば)を行う;
−図12cに示すステップ3:圧電層Pの堆積および構造化(必要であれば)を行う;
−図12dに示すステップ4:上部電極ERijの堆積および構造化を行う;
−図12eに示すステップ5:第1の層CDの堆積および構造化を行う;
−図12fに示すステップ6:第2の層CDの堆積を行う。フィルタF、FおよびF間の差別化層は、それぞれ積層体CDおよびCDの層と層CDとからなる。その後、本発明によって網羅される主題以外の目的で(例えば不活性化など)後者の堆積に別の堆積を続けて行うことができる。あるいは、フィルタおよび/または共振器間の差別化を、この層の部分エッチングによって行うことができる。
【0083】
第6の実施形態によれば、図13a〜13fに示す様々なステップは以下の通りである:
−図13aに示すステップ1:ブラッグミラーを形成する層の堆積を行う。前述の場合のように、金属層を使用する場合には、共振器間のいかなる漂遊容量結合も回避するようにこれらの層を構造化する必要がある;
−図13bに示すステップ2:圧電層Pの堆積および構造化(必要であれば)を行う;
−図13cに示すステップ3:上部電極ERijの堆積および構造化を行う;
−図13dに示すステップ4:差別化層を形成する働きをする層CDの堆積を行う;
−図13eに示すステップ5:層CDの部分エッチングを行う;
−図13fに示すステップ6:差別化層が必要ない箇所にのみ差別化層の全エッチングを行う。それゆえ、単一の層に基づいてかつ異なるエッチング操作によって、差別化層CDf1、差別化層CDf2および差別化層の間隔は、3つのフィルタF、FおよびFの位置レベルに規定されている。
【0084】
これらの上述の実施形態の各々に対して、異なる共振器およびフィルタのタイプが考えられるが、これは単に例示的なものであった。共振器のタイプは自由に取り換えることができる。同様に、上述の同一の実施形態に対して、上述のもの以外の導波型共振器構造を用いてもよい。
【0085】
同様に、ブラッグミラーを使用する共振器の製造のみを説明したが、同じ手法を膜上の共振器の構造に使用してもよい。一般に3つのフィルタの場合、3つの膜が作製され、それにより、上部電極の上にまたは膜の空隙の位置レベルに差別化層を作製することを可能にする。
【符号の説明】
【0086】
CD 第1の層
CD 第2の層
CDf1〜CDfN 差別化層
電気的な平面板
Ei 下部電極
Ei1 上部電極
Ei1c 短絡した電極
Ei2 下部電極
Eiij 下部電極
Rij 上部電極
〜F フィルタ
Gair 空隙
ブラッグミラー
P 圧電層
11〜RN1、R12〜RN2音響波共振器
S 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのフィルタ(F、・・・、F、・・・、F)を含む導波型音響波共振装置であって、各フィルタが少なくとも2つの音響波共振器(R11−R12、・・・、Ri1−Ri2、・・・、RN1−RN2)を含み、各フィルタが、中心周波数(f、・・・、f、・・・、f)を中心とする有用な周波数帯域(BF、・・・、BF、・・・、BF)によって特徴づけられ、各共振器が、周期(∧ij)の周期的構造を有する少なくとも一組の相互噛合型上部電極と圧電材料の層とを含み、各共振器が、結合係数(k1、k2、・・・、kn)および共振周波数(fr1、・・・、fr2、・・・、frN)によって特徴づけられる、導波型音響波共振装置において、
前記共振器の少なくとも1つが、差別化層(CDfi)を含んで、前記相互噛合型電極の周期と併せて前記共振器の結合係数を変更することを可能にし、有用な帯域および中心周波数が、決定された有用な帯域幅を有するように構成される前記共振器の共振周波数および結合係数によって決定されることを特徴とする、導波型音響波共振装置。
【請求項2】
前記共振器の前記差別化層(CDfi)がさらに、前記相互噛合型電極の周期と併せて前記共振周波数を変更することを可能にすることを特徴とする請求項1に記載の音響波共振装置。
【請求項3】
前記差別化層が前記共振器の表面に位置決めされていることを特徴とする、請求項1または2に記載の共振器を含む導波型音響波共振装置。
【請求項4】
前記差別化層が前記共振器と基板との間に位置決めされていることを特徴とする、請求項1または2に記載の共振器を含む導波型音響波共振装置。
【請求項5】
前記共振器が、ブラッグミラー機能を保証する共通の積層体の表面に作製されており、前記ブラッグミラーが基板の表面にあることを特徴とする、請求項4に記載の一組の共振器を含む導波型音響波共振装置。
【請求項6】
前記差別化層が、前記ブラッグミラーの前記積層体の構成要素層の1つに属していることを特徴とする、請求項5に記載の一組の共振器を含む導波型音響波共振装置。
【請求項7】
前記差別化層が多孔質要素を含み、その音響特性を変更することを可能にすることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の一組の共振器を含む導波型音響波共振装置。
【請求項8】
前記差別化層がサブミクロンのパターンを有する構造を含んで、その音響特性を変更することを可能にすることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の一組の共振器を含む導波型音響波共振装置。
【請求項9】
前記共振器の少なくとも一部分がいくつかの差別化層を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の一組の共振器を含む導波型音響波共振装置。
【請求項10】
前記共振器がさらにいわゆる下部電極を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の一組の共振器を含む導波型音響波共振装置。
【請求項11】
いわゆる下部電極が連続的な電極であることを特徴とする、請求項10に記載の一組の共振器を含む導波型音響波共振装置。
【請求項12】
前記下部電極が相互噛合型電極のくし歯であることを特徴とする、請求項10に記載の一組の共振器を含む導波型音響波共振装置。
【請求項13】
前記装置が、前記共振器に結合された膜構造を含んで、前記圧電材料に前記音響波を閉じ込めることができる間隙を形成することを可能にすることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の一組の共振器を含む導波型音響波共振装置。

【図1a−1f】
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【図2a−2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a−8d】
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【図9a−9d】
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【図10a−10d】
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【図11a−11f】
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【図12a−12f】
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【図13a−13f】
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【公開番号】特開2011−15397(P2011−15397A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−147517(P2010−147517)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(510163846)コミシリア ア レネルジ アトミック エ オ エナジーズ オルタネティヴズ (47)
【出願人】(509197324)サントル ナショナル ド ラ ルシェルシュ シアンティフィク (10)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【出願人】(398048925)エスティマイクロエレクトロニクス エスエー (14)
【Fターム(参考)】