説明

導電性ゴムローラの製造方法、導電性ゴムローラ及び転写ローラ

【課題】転写ローラや帯電ローラ等の導電性ゴムローラにおいて、発泡ムラ、内径ばらつきが少ない導電性ゴムローラの製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも導電性芯材上に発泡ゴム層が形成されている導電性ゴムローラの製造方法において、該ゴム層の材料となるゴム組成物を円筒状に押出し成形する工程及び加硫発泡工程を有し、該ゴム組成物が、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムの混合物をゴム主成分とし、更に100℃において15度以上40度以下のムーニー粘度(ML1+4 100℃)を有し、該押出し工程において、該ゴム組成物を、押出し機にてニップル径を1としたときに押出された該円筒状のゴム成形物の内径が、1.0以上2.5以下となるように押し出すことを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真複写装置、プリンタ、静電記録装置等の画像形成装置において使用される導電性ローラに関する。詳しくは電子写真複写機、レーザプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置内の転写ローラ、帯電ローラ等の発泡弾性を有する導電性ゴムローラであり、あるいは製造工程において、少なくとも加硫発泡させたゴムチューブに芯金を圧入する工程が含まれる発泡導電性後ムローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなど、電子写真方式の画像形成装置の多くに帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等の導電性ローラが用いられている。これらのゴムローラに導電性を付与するのに、カーボンブラックなどの導電性の充填材を加える方法、あるいはアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性のゴム組成物を配合する方法が挙げられる。イオン導電性を持つゴム組成物は、ゴム材自身が導電性を持つため抵抗のばらつきが小さく、電気抵抗の電圧依存性が小さいため、導電性ゴムローラの組成物として主に使われている。
【0003】
上記の導電性ゴムローラの弾性体層に求められる体積固有抵抗は2×109Ωcm以下の場合が多く、ゴム成分がアクリロニトリルブタジエンゴム単独の場合は、その体積抵抗値が2×109〜1×1010Ω・cm程度であるため、導電性が不十分になってしまう。また、アクリロニトリルブタジエンゴムは二重結合を有するため、オゾン劣化を受けやすく十分な通電耐久性が得られない。
【0004】
そのため、加硫物の体積固有抵抗が1×107〜3×109Ω・cm程度であるエピクロルヒドリン系ゴムをアクリロニトリルブタジエンゴムにブレンドすることで、所望の体積固有抵抗が得られるように調整する方法が一般的に用いられている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、導電性ゴムローラにおいては、感光ドラムとの密着性を高めるために上記の特性以外に適度に低硬度であることが求められている。ローラ硬度が高すぎる場合、感光ドラムとのニップ幅が小さくなるため、例えば転写ローラの場合、転写率が低下したり、ドラム表面の磨耗や損傷によって画像の結果を生じやすい。又、硬度が低すぎる場合は、軟らかすぎるために圧縮永久歪が大きくなり耐久性が劣るほか、搬送力が大きくなりすぎるため画像に欠陥を生じやすくなる。
【0006】
導電性ゴムローラを低硬度化する方法としては、軟化剤や可塑剤等の各種添加剤を用いる方法が挙げられるが、軟化剤や可塑剤を添加した導電性ゴムローラを感光ドラムと接触使用した場合、導電性ゴムローラ内から低分子量の各種添加剤がブリードアウトして感光ドラム表面に付着することで、画像劣化や感光体汚染等を起こすという問題が生じやすい。
【0007】
そのため、導電性ゴムローラの低硬度化は、一般的に化学発泡剤を用いて発泡弾性ゴムローラを得る方法が用いられている。
【0008】
又上記の導電性ゴムローラは、ポリマーに加硫剤、発泡剤、充填材等を混練したゴム組成物を、押出し機等で未加硫ゴムチューブとした後、加硫発泡させる方法として、加硫缶を用いた直接蒸気加硫法が一般的に用いられている。しかしながら、加硫缶はバッチ方式のため、押出された未加硫チューブを一定長に切断して加硫発泡させるので、チューブの長手方向に対して熱が均一に伝わりにくく、長手方向で発泡ムラや内径ばらつきを生じやすい。
【0009】
そこで、上記のような課題を解決する方法として、加硫発泡工程の温度条件を制御する方法(例えば、特許文献2)や、加硫と発泡のバランスを加硫剤、加硫促進剤、発泡剤、発泡助剤の組み合わせによって制御する方法(例えば、特許文献3)が提案されている。
【特許文献1】特許第3656904号公報
【特許文献2】特許平11−114978号公報
【特許文献3】特開2006−231617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献2では、加硫系及び発泡剤系について十分な検討されておらず、特許文献3では、加硫剤、加硫促進剤、発泡剤、発泡助剤についても検討されているが、押し出し工程については検討されておらず、改善の余地がある。
【0011】
従って、本発明は、押出し加工条件を適正なものとし、加硫発泡後のゴムチューブにおける発泡ムラ、内径ばらつきが小さく、硬度ムラが少ないものであって、電子写真装置等に好適な低硬度の発泡導電性ゴムローラとして提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、少なくとも導電性芯材上に発泡ゴム層が形成されている導電性ゴムローラの製造方法において、
該ゴム層の材料となるゴム組成物を円筒状に成形する押出し工程及び加硫発泡工程を有し、
該ゴム組成物が、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムの混合物をゴム主成分とし、更に100℃において15度以上40度以下のムーニー粘度(ML1+4 100℃)を有し、
該押出し工程において、該ゴム組成物を、押出し機にてニップル径を1としたときに押出された該円筒状のゴム成形物の内径が、1.0以上2.5以下となるように押し出すことを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法である。
【0013】
また本発明にしたがって、上記方法により成形された事を特徴とする導電性ローラが提供される。
【0014】
本発明では、このような導電性ローラを転写ローラとして利用することにより、この用途での有用性を増すものである。
【発明の効果】
【0015】
上記の発明によって得られる発泡導電性ゴムローラは、加硫発泡後のゴムチューブにおける発泡ムラ、内径ばらつきが小さいため、硬度ムラが少なく電子写真装置等に好適な低硬度の発泡導電性ゴムローラとして提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の導電性ゴムローラの製造方法について詳細に説明する。
【0017】
本発明は、少なくとも導電性芯材上に発泡ゴム層が形成されている導電性ゴムローラの製造方法において、ゴム層の材料となるゴム組成物を円筒状に押出し成形する工程及び加硫発泡工程を有する。ゴム組成物は、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムの混合物をゴム主成分とし、更に100℃において15度以上40度以下のムーニー粘度(ML1+4 100℃)を有する。また、押出し工程において、ゴム組成物を、押出し機にてニップル径を1としたときに押出された円筒状のゴム成形物の内径が、1.0以上2.5以下となるように押し出すことを特徴とする。
【0018】
本発明の発泡ゴム層の材料として使用するゴム組成物は、ゴム成分としてアクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムの混合物を主成分とする。アクリロニトリルブタジエンゴムの平均結合アクリロニトリル量は、各ローラで所望する電気抵抗等の諸特性を有していれば、特に限定されるものではないが、アクリロニトリル含量は、15.0〜30.0質量%であることが好ましい。アクリロニトリル含量が15.0質量%未満ではゴム組成物中の二重結合が相対的に大きくなって耐オゾン性が低下や導電性ローラとして所望の抵抗値が得られなくなり、アクリロニトリル含量が30.0質量%よりも大きいアクリロニトリルブタジエンゴムを用いると、アクリロニトリルユニットの結晶化が起こり、ゴム組成物のゴム硬度が上昇してしまうためである。なお、本発明におけるアクリロニトリルブタジエンゴムは、常温で固体状であり、常温で液状である液状アクリロニトリルブタジエンゴムは含まないものとする。
【0019】
また、エピクロロヒドリンゴムとしては特に限定されるものではないが、エチレンオキサイドを共重合したゴムが好ましい。エチレンオキサイドを共重合したゴムは低抵抗であり、添加量を変化させることによる抵抗調整の幅が広がる。エチレンオキサイド含量としては30モル%以上のゴムが抵抗も低くなり好ましく、更に35モル%以上であればより好ましく使用できる。
【0020】
また、ゴム組成物は、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムからなるゴム主成分の100質量部に対し、液状アクリロニトリルブタジエンゴムを10質量部以上30質量部以下含有することが好ましい。10質量部未満では液状アクリロニトリルブタジエンゴムの効果が得られず、30質量部より大きいとゴム組成物のムーニー粘度が低くなり、加硫時にゴムチューブが形状を保てなくなる。また、液状アクリロニトリルブタジエンゴムは、重量平均分子量(Mw)が1000〜2000の範囲で好適に用いることができる。
【0021】
100℃におけるムーニー粘度(ML1+4 100℃)が15度以上40度以下であるゴム組成物を用いるのは、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4 100℃)が15度未満の場合、押出し加工及び一次加硫の際、成形体が軟化して形状を保つのが困難になり、40度よりも大きい場合は、ゴム組成物の加工性が悪化するためである。
【0022】
なお、本発明の押出し工程において、該ゴム組成物を、押出し機にてニップル径を1としたときに押出された円筒状のゴム成形物(未加硫ゴムチューブ)の内径が1.0以上2.5以下となるように押し出すことが重要である。内径が1.0より小さい、又は2.5より大きいの場合、押出したゴム組成物に対して大きなストレスが加わっているため、加硫後のゴムチューブで発泡ムラ、内径ばらつきが発生するため、該ゴムチューブを使用して、作製した導電性ゴムローラは、硬度及び電気抵抗にムラがあり、画像に欠陥を生じやすい。
【0023】
また、該ゴム組成物を押出すために使用される押出し機については、特に制限されるものではなく、一軸スクリュー押出し機、ニ軸スクリュー押出し機などが挙げられる。また、押出し機のスクリューサイズ、シリンダ及びスクリューの温度設定、スクリュー回転数においても、押出された円筒状のゴム成形物の内径が、ニップル径を1としたときに1.0以上2.5以下の条件下あれば、特に制限されるものではない。
【0024】
また、ゴムチューブを用い電子写真等に好適な導電性ゴムローラを得るためには、該ゴムチューブの内径値の最大値と最小値との差が平均内径値の25%以下であることが好ましい。25%より大きい場合には、導電性芯金に圧入した後にゴムチューブに歪みが生じ易く、特に内径が上記導電性芯金に対して小さい部分では上記歪みが顕著になる。そのため、硬度ムラが生じる場合があり好ましくない。より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。
【0025】
次に、該ゴム組成物により成形した発泡導電性ゴムローラの硬度としては、φ6mmの導電性芯材に4mm厚の発泡ゴム層を設けた発泡導電性ゴムローラにおいては、アスカーC硬度で20度以上40度以下が好ましく、より好ましくは25度以上35度である。硬度が20度未満ではセットが悪くなり、硬度が40度より大きいと、感光ドラムと当接した際に感光ドラム表面を傷つけるためである。
【0026】
また、本発明の発泡導電性ゴムローラに使用されるゴム組成物には、一般のゴムに使用されるその他の成分を必要に応じて含有させることができる。例えば、硫黄や有機硫黄化合物等の加硫剤、各種加硫促進剤、カーボンブラック、炭酸カルシウムやクレー、シリカ、タルク等の各種充填剤、可塑剤等の加工助剤、各種老化防止剤、酸化亜鉛やステアリン酸の加硫助剤、尿素等の各種発泡助剤、導電性調整のための各種イオン導電剤等が必要に応じて含有される。
【0027】
化学発泡剤としては、主にアゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’‐オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)が挙げられる。ジニトロソペンタメチレンテトラミンの場合は、分解副生成物として毒性のあるホルムアルデヒドやアミン臭の強いヘキサメチレンテトラミンが発生するため、本発明で使用する発泡剤としては、アゾジカルボンアミド及び4,4’‐オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)が好ましい。
【0028】
上記原料物質を所定量混合して、ゴム組成物を得る。原料物質を混合する練り手段としては、公知のバンバリーミキサーやニーダー等の混練り機で均一に混練りし、未加硫原料組成物をオープンロールでシート状にし、本発明の押出し工程を経て、ゴムチューブ状の未加硫ゴム組成物を製造する。
【0029】
次に、発泡ゴムチューブ成形物の製造を加熱水蒸気を用いた加硫缶で行う。まず、加硫トレーに未加硫ゴムチューブを入れ、それを加硫缶内に設置し加硫缶を密閉する。なお、上述の方法で製造したゴムチューブの発泡反応ならびに加硫反応が完全には進行しなかった場合は、熱風炉で更に加熱してもよい。これにより、発泡体中に残留した発泡剤や加硫剤を完全に反応させることが可能となる。
【0030】
また、加硫トレーについては、未加硫ゴムチューブの加熱後の外径より大きい内径を有する保持手段と、且つ、加硫ゴムチューブの長手方向の長さより長い受け部をもつ貫通孔を少なくとも1個以上設置した加熱トレーであれば、特に限定されない。なお、加熱トレーと円筒状ゴム組成物との接触により、ゴム組成物に温度ムラが発生する場合は該加熱トレーを回転させながら加熱しても差し支えない。
【0031】
また、該加熱トレーを回転させる場合、未加硫ゴムチューブに粘着性があって加熱トレーに付着する場合は未加硫ゴムチューブの表面にタルク等の打ち粉をすることにより、未加硫ゴム組成物の表面の粘着性が低下し、接触部への防着が可能である。打ち粉としては、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、カーボン等の微粉末の採用が好ましく、またスラリーにして塗布してもよい。
【0032】
次いでホットメルト接着剤、または加硫接着剤等の接着剤を所望の領域に塗布した導電性芯材を前記発泡ゴムチューブ成形物の内径部に圧入し、導電性芯材上に発泡ゴムチューブ成形物を接着して発泡ゴム層としたローラ状の成形体を得る。このローラ状成形体を、研磨機(不図示)にセットし、所定の研磨条件で研磨し所定の外径を有する導電性ゴムローラを作製する。
【0033】
なお、得られた導電性ゴムローラを基層部材とし、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等の導電性ゴムローラを得ることができる。
【0034】
例えば、現像ローラや帯電ローラは、上記導電性ゴムローラの発泡ゴム層の外周面に、発泡ゴム層からブリードアウトすることを防止するしみ出し防止層、電極層や電気特性を制御する抵抗制御層、および感光ドラム等に傷や汚染を与えないために設けられる被覆層等の所望の機能を付与するための層を必要に応じて設けて作製すればよい。前記しみ出し防止層、電極層や抵抗制御層、および被覆層等を設ける方法としては、公知の方法、例えば、ディップコート法またはロールコート法等の塗工液を用いる方法や、同時成形多層シームレスチューブを被覆する方法等を挙げることができる。
【0035】
また、例えば、転写ローラは、上記導電性ゴムローラの発泡ゴム層の外周面に、発泡ゴム層からブリードアウトすることを防止するしみ出し防止層、電気特性を制御する抵抗制御層、被転写材の搬送性を改良するため表面性状を制御する表面性状制御層等の所望の機能を付与するための層を必要に応じて設けて作製すればよい。これらの層は、上記現像ローラや帯電ローラの場合と同様の方法で形成することができる。また、所望の性能を有する場合は、上記導電性ゴムローラは、そのままで、転写ローラとして用いてもよい。転写ローラは、画像形成装置の転写装置に搭載して用いることができる。
【実施例】
【0036】
以下に各実施例及び比較例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定するものではない。
【0037】
各実施例及び比較例に用いたゴム組成物の配合割合は表1の通りである。なお、配合量の単位は質量部である。
【0038】
はじめに、表1に示す原組成物をオープンロールで混練を行い、各実施例及び比較例のゴム組成物である配合1〜7を作製した。
【0039】
【表1】

【0040】
上記実施例及び比較例において、使用した資材は以下のとおりである。
・アクリロニトリルブタジエンゴム1
アクリロニトリル含量:18.0% ムーニー粘度(ML1+4 100℃):32
[商品名:Nipol DN401LL 日本ゼオン(株)社製]
・アクリロニトリルブタジエンゴム2
アクリロニトリル含量:18.0% ムーニー粘度(ML1+4 100℃):78
[商品名:Nipol DN401 日本ゼオン(株)社製]
・液状アクリロニトリルブタジエンゴム
[商品名:Nipol 1312 日本ゼオン(株)社製]
・エピクロルヒドリンゴム
[商品名:Hydrin TX3 日本ゼオン(株)社製]
・カーボンブラック
[商品名:旭#35 旭カーボン(株)社製]
・加硫剤
硫黄:[商品名:レノグランS−80 ラインケミー(株)社製]
・加硫促進剤
MBT:[商品名:レノグランMBT80 ラインケミー(株)社製]
MBTS:[商品名:レノグランMBTS75 ラインケミー(株)社製]
TET:[商品名:レノグランTETD75 ラインケミー(株)社製]
・加硫促進助剤
酸化亜鉛:[商品名:酸化亜鉛二種 堺化学工業(株)社製]
ステアリン酸:[商品名:ルナックS20 花王(株)社製]
・発泡剤
OBSH:[商品名:EH−80 永和化成工業(株)社製]
ADCA:[商品名:HM−80A 永和化成工業(株)社製]
・発泡助剤(尿素)
尿素:[商品名:HM−80U 永和化成工業(株)社製]
次に、上記ゴム組成物の未加硫ゴムチューブを成形するために、外径φ1.6mmであるニップルと内径がφ7.0mmであるダイスをセットした三葉(株)社製50mm押出し機(不図示)を用いて、外径φ12mmの円筒状に成形し切断機により300mmの長さに切断した。更に切断した未加硫ゴムチューブの外周面にタルクを塗布した。
【0041】
次に、加熱手段である加硫缶について説明する。加熱トレーは内径40mmで長手方向が350mmある加熱トレーを用い、先に成形した未加硫ゴムチューブを該加熱トレーの内径に挿入した。次いで加硫缶に該加熱トレーを設置し、加硫缶の蓋を閉じ、160℃×30分の加硫発泡を行った。加熱時間終了後は水蒸気を排気弁により排出して加硫発泡したゴムチューブを取り出した。
【0042】
次に、上記ゴムチューブの全長が250mmとなるよう両端部を切断し、ゴムチューブの内径に導電性の接着剤が塗られた芯金を圧入・接着し、ローラ上の成形体を得た。この成形体を、研磨砥石GC80を取り付けたシギヤ精機(株)社製研磨機(不図示)にセットし、研磨条件として回転速度2000RPM、送り速度500m/分で外径14mmの円筒状に研磨し発泡導電性ゴムローラを得た。
【0043】
次に、上記の方法によって得られたゴムチューブの内径ばらつき、硬度ムラの測定方法について説明する。
【0044】
<ローラの内径ばらつきの測定方法>
内径は加硫発泡後のゴムチューブを5mm毎に切断し、通常用いられるピンゲージを用いて測定した。ピンゲージが用いることができない場合は、投影機(ニコン社製、プロファイルプロジェクターV−12B)にて、内径の最大部(a)と最小部(b)を測定し、その平均値を内径とした。測定は5本とし、内径ばらつきは上記測定値の最大値と最小値の差を平均値で除した値と定義し、内径ばらつきが10%以下を◎、20%以下を○、20%を超えるものを×とした。
【0045】
<硬度及び硬度ムラ>
硬度は、ローラをアスカーC(SRIS0101(日本ゴム協会標準規格))硬度計によってゴムチューブ長手方向中央部及び両端より50mmの3箇所を測定した。硬度についても測定本数は5本とした。硬度については、20度〜35度の範囲内であるものを○、それ以外を×とした。なお、硬度ムラは、測定結果の最大値と最小値の差と定義し、硬度差が3度以内のものを○、3度を超えるものを×とした。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
実施例1〜7は、本発明に従って製造した結果であり、低硬度で硬度ムラ、内径ばらつきが少ない導電性ゴムローラが得られた。特に、液状アクリロニトリルブタジエンゴムを配合したゴム組成物を用いた実施例5〜7中、実施例5及び6では内径ばらつきをより抑えることができた。
【0049】
実施例7は、液状アクリロニトリルブタジエンゴムを5.0質量部入れたものである。ニップル径を1としたときの押出されたゴムチューブの内径、ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4 100℃)共に本発明の要件を満たすが、液状アクリロニトリルブタジエンゴムの量が少ないため、液状アクリロニトリルブタジエンゴムを混合した効果が現れていない。
【0050】
比較例1は、ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4 100℃)が15度以上40度以下のゴム組成物を、押出し機にてニップル径を1としたときの押出されたゴムチューブの内径を2.86にして製造されたものである。ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4 100℃)は本発明の要件を満たすが、該ゴムチューブの外径が本発明の要件を満たしていない。そのため、押出し時に大きなストレスが該ゴムチューブに加えられるため、加硫後の該ゴムチューブの内径がばらつき好ましくない。
【0051】
比較例2及び3は、ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4 100℃)が51度で、ニップル径を1としたときの押出されたゴムチューブの内径がそれぞれ1.88、2.73で製造されたものである。
【0052】
比較例2は、ニップル径を1としたときの押出されたゴムチューブの内径は本発明の要件を満たすが、ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4 100℃)が本発明の要件を満たしていない。そのため、比較例2はムーニー粘度(ML1+4 100℃)が高すぎるため、硬度ムラが発生しローラ硬度が大きくなり好ましくない。
【0053】
比較例3は、ニップル径を1としたときの押出されたゴムチューブの内径及びゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4 100℃)共に本発明の要件を満たしていないため、硬度ムラ、内径ばらつきが大きくなり好ましくない。すなわち、比較例3はゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4 100℃)が高すぎるため、ローラ硬度が高くなり、押出されたゴムチューブに大きなストレスが掛かり、発泡ムラができるため、硬度ムラ、内径ばらつきが大きくなっている。
【0054】
比較例4は、液状アクリロニトリルブタジエンゴムを40質量部入れたものである。ニップル径を1としたときの押出されたゴムチューブの内径は、本発明の要件を満たすが、ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4 100℃)が本発明の要件を満たしていない。液状アクリロニトリルブタジエンゴムの量が多すぎるため、押出し加工後のゴムチューブが加硫時に形状を保てなかったため、硬度ムラ、内径ばらつきが生じている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも導電性芯材上に発泡ゴム層が形成されている導電性ゴムローラの製造方法において、
該ゴム層の材料となるゴム組成物を円筒状に成形する押出し工程、及び加硫発泡工程を有し、
該ゴム組成物が、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムの混合物をゴム主成分とし、更に100℃において15度以上40度以下のムーニー粘度(ML1+4 100℃)を有し、
該押出し工程において、該ゴム組成物を、押出し機にてニップル径を1としたときに押出された該円筒状のゴム成形物の内径が、1.0以上2.5以下となるように押し出すことを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項2】
前記ゴム組成物中に、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムからなるゴム主成分の100質量部に対し、液状アクリロニトリルブタジエンゴムを10質量部以上30質量部以下含有する事を特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項3】
発泡ゴム層が、アゾジカルボンアミド(ADCA)または4,4’‐オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)による化学発泡により形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項4】
画像形成装置に用いられる導電性芯材上にゴム層が形成されている導電性ゴムローラであって、請求項1乃至3のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造方法により製造されたものであることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項5】
画像形成装置の転写装置に搭載される転写ローラであって、請求項4に記載の導電性ゴムローラであることを特徴とする転写ローラ。

【公開番号】特開2010−83101(P2010−83101A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257400(P2008−257400)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】